特許第6929754号(P6929754)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6929754
(24)【登録日】2021年8月13日
(45)【発行日】2021年9月1日
(54)【発明の名称】ガス供給装置
(51)【国際特許分類】
   F17C 11/00 20060101AFI20210823BHJP
   C01B 3/00 20060101ALI20210823BHJP
【FI】
   F17C11/00 C
   C01B3/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-201535(P2017-201535)
(22)【出願日】2017年10月18日
(65)【公開番号】特開2019-74164(P2019-74164A)
(43)【公開日】2019年5月16日
【審査請求日】2020年2月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】中川 慶一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 栄基
(72)【発明者】
【氏名】大本 節男
【審査官】 植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−232497(JP,A)
【文献】 特開2009−144901(JP,A)
【文献】 特開2004−360728(JP,A)
【文献】 特開2003−227598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/00−13/12
C01B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを吸蔵することにより発熱するガス吸蔵材を内部に収容する吸蔵材容器と、
加熱により分解して前記ガスを放出するガス放出材を内部に収容すると共に前記吸蔵材容器を内部に収納する放出材容器と、
前記吸蔵材容器の内部へ前記ガスを送給するガス送給手段と、
前記放出材容器の内部の前記ガスを外部へ向けて送り出すガス送出手段と、
前記ガス送出手段で送り出される前記ガスの一部を前記ガス送給手段へ送り込む分岐手段と
前記吸蔵材容器を内部に収納した前記放出材容器を格納容器の内部の内寄りと外寄りとに位置させるように複数格納した本体部を備え、
前記ガス送給手段は、前記本体部の内寄りの前記吸蔵材容器へ前記ガスを送給し、前記本体部の内寄りの前記吸蔵材容器の圧力が前記ガスを吸蔵可能な上限容量に達した場合の圧力である基準圧力値を超えると、前記本体部の外寄りの前記吸蔵材容器へ前記ガスを送給することを特徴とするガス供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載のガス供給装置において
記ガス送出手段が、
前記本体部の複数の前記放出材容器からの前記ガスを集合させて外部へ向けて送り出す集合ラインと、
前記集合ラインに設けられて集合された前記ガスの送出を制御する送出用操作弁と
を備え、
前記ガス送給手段が、
前記本体部の内寄りの前記吸蔵材容器に接続された内寄り分配ラインと、
前記本体部の外寄りの前記吸蔵材容器に接続された外寄り分配ラインと、
前記内寄り分配ラインに設けられて前記ガスの送給を制御する内寄り分配用操作弁と、
前記外寄り分配ラインに設けられて前記ガスの送給を制御する外寄り分配用操作弁と
を備え、
前記分岐手段が、前記ガス送出手段の前記送出用操作弁で制御された前記ガスの一部を前記ガス送給手段の前記内寄り分配ライン及び前記外寄り分配ラインへ送り込む分岐ラインを備えていることを特徴とするガス供給装置。
【請求項3】
請求項2に記載のガス供給装置において、
前記本体部を複数有し、
前記ガス送出手段が、各前記本体部の前記集合ラインで集合されて前記送出用操作弁で制御された前記ガスをまとめるように当該集合ライン間を連結する連結ラインをさらに備え、
各前記本体部の内寄りの前記放出材容器同士を連絡するバイパスラインと、
前記バイパスラインに設けられて前記本体部ごとの前記放出材容器に対する前記ガスの流通を制御するバイパス用操作弁と
を備えていることを特徴とするガス供給装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のガス供給装置において、
前記ガスが、水素ガスであり、
前記ガス吸蔵材が、水素吸蔵合金であり、
前記ガス放出材が、水素化物又は水素吸蔵合金であることを特徴とするガス供給装置。
【請求項5】
ガスを吸蔵することにより発熱するガス吸蔵材を内部に収容する吸蔵材容器と、
加熱により分解して前記ガスを放出するガス放出材を内部に収容すると共に前記吸蔵材容器を内部に収納する放出材容器と、
前記吸蔵材容器の内部へ前記ガスを送給するガス送給手段と、
前記放出材容器の内部の前記ガスを外部へ向けて送り出すガス送出手段と、
前記ガス送出手段で送り出される前記ガスの一部を前記ガス送給手段へ送り込む分岐手段と
前記吸蔵材容器を内部に収納した前記放出材容器を格納容器の内部の内寄りと外寄りとに位置させるように複数格納した本体部を備え、
前記ガス送出手段が、
前記本体部の複数の前記放出材容器からの前記ガスを集合させて外部へ向けて送り出す集合ラインと、
前記集合ラインに設けられて集合された前記ガスの送出を制御する送出用操作弁と
を備え、
前記ガス送給手段が、
前記本体部の内寄りの前記吸蔵材容器に接続された内寄り分配ラインと、
前記本体部の外寄りの前記吸蔵材容器に接続された外寄り分配ラインと、
前記内寄り分配ラインに設けられて前記ガスの送給を制御する内寄り分配用操作弁と、
前記外寄り分配ラインに設けられて前記ガスの送給を制御する外寄り分配用操作弁と
を備え、
前記分岐手段が、前記ガス送出手段の前記送出用操作弁で制御された前記ガスの一部を前記ガス送給手段の前記内寄り分配ライン及び前記外寄り分配ラインへ送り込む分岐ラインを備え、
前記本体部を複数有し、
前記ガス送出手段が、各前記本体部の前記集合ラインで集合されて前記送出用操作弁で制御された前記ガスをまとめるように当該集合ライン間を連結する連結ラインをさらに備え、
各前記本体部の内寄りの前記放出材容器同士を連絡するバイパスラインと、
前記バイパスラインに設けられて前記本体部ごとの前記放出材容器に対する前記ガスの流通を制御するバイパス用操作弁と
を備えていることを特徴とするガス供給装置。
【請求項6】
請求項5に記載のガス供給装置において、
前記ガスが、水素ガスであり、
前記ガス吸蔵材が、水素吸蔵合金であり、
前記ガス放出材が、水素化物又は水素吸蔵合金であることを特徴とするガス供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素ガスや酸素ガスを供給するガス供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、水素ガスを供給する水素ガス供給装置としては、下記特許文献1,2に記載されているものが知られている。
【0003】
下記特許文献1に記載されている装置は、第一の反応容器内の水素化物に水を供給することにより、水素化物を加水分解して当該第一の反応容器から水素ガスを送出すると共に、加水分解により生じた熱を第二の反応容器内の水素化物に伝導させることにより、水素化物を加熱分解して当該第二の反応容器からも水素ガスを送出することができるようになっている。
【0004】
下記特許文献2に記載されている装置は、水素エンジンの冷却水を当該水素エンジンの排ガスで加熱し、当該冷却水で水素タンク内の水素化金属を加熱することにより、水素化金属を加熱分解して当該水素タンクから水素ガスを送出することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−001451号公報
【特許文献2】特開平2−095760号公報
【特許文献3】特開2004−204309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1に記載の装置においては、水素化物に水を供給するポンプ等の動力源が必要となってしまうため、補機での消費電力量が大きく、二次電池の電力をかなり消費してしまう。
【0007】
前記特許文献2に記載の装置においては、水素エンジンであることから、水素化金属から水素ガスを発生させる高温の熱(200℃前後)を排ガスにより得ることができるものの、固体高分子形燃料電池であると、排ガスが低温(80℃前後)であることから、電気ヒータ等の加熱源が必要となってしまうため、補機での消費電力量が大きく、二次電池の電力をかなり消費してしまう。
【0008】
このような問題は、水素ガスを供給する水素ガス供給装置に限らず、酸素ガスを供給する酸素ガス供給装置等のような他のガス供給装置でも同様にして起こり得ることであった。
【0009】
このようなことから、本発明は、消費電力量を大きく抑制することができるガス供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した課題を解決するための、第一番目の発明に係るガス供給装置は、ガスを吸蔵することにより発熱するガス吸蔵材を内部に収容する吸蔵材容器と、加熱により分解して前記ガスを放出するガス放出材を内部に収容すると共に前記吸蔵材容器を内部に収納する放出材容器と、前記吸蔵材容器の内部へ前記ガスを送給するガス送給手段と、前記放出材容器の内部の前記ガスを外部へ向けて送り出すガス送出手段と、前記ガス送出手段で送り出される前記ガスの一部を前記ガス送給手段へ送り込む分岐手段と、前記吸蔵材容器を内部に収納した前記放出材容器を格納容器の内部の内寄りと外寄りとに位置させるように複数格納した本体部を備え、前記ガス送給手段は、前記本体部の内寄りの前記吸蔵材容器へ前記ガスを送給し、前記本体部の内寄りの前記吸蔵材容器の圧力が前記ガスを吸蔵可能な上限容量に達した場合の圧力である基準圧力値を超えると、前記本体部の外寄りの前記吸蔵材容器へ前記ガスを送給することを特徴とする。
【0012】
また、第二番目の発明に係るガス供給装置は、第一番目の発明において、前記ガス送出手段が、前記本体部の複数の前記放出材容器からの前記ガスを集合させて外部へ向けて送り出す集合ラインと、前記集合ラインに設けられて集合された前記ガスの送出を制御する送出用操作弁とを備え、前記ガス送給手段が、前記本体部の内寄りの前記吸蔵材容器に接続された内寄り分配ラインと、前記本体部の外寄りの前記吸蔵材容器に接続された外寄り分配ラインと、前記内寄り分配ラインに設けられて前記ガスの送給を制御する内寄り分配用操作弁と、前記外寄り分配ラインに設けられて前記ガスの送給を制御する外寄り分配用操作弁とを備え、前記分岐手段が、前記ガス送出手段の前記送出用操作弁で制御された前記ガスの一部を前記ガス送給手段の前記内寄り分配ライン及び前記外寄り分配ラインへ送り込む分岐ラインを備えていることを特徴とする。
【0013】
また、第番目の発明に係るガス供給装置は、第番目の発明において、前記本体部を複数有し、前記ガス送出手段が、各前記本体部の前記集合ラインで集合されて前記送出用操作弁で制御された前記ガスをまとめるように当該集合ライン間を連結する連結ラインをさらに備え、各前記本体部の内寄りの前記放出材容器同士を連絡するバイパスラインと、前記バイパスラインに設けられて前記本体部ごとの前記放出材容器に対する前記ガスの流通を制御するバイパス用操作弁とを備えていることを特徴とする。
【0014】
また、第四番目の発明に係るガス供給装置は、第一番目から第三番目の発明のいずれかにおいて、前記ガスが、水素ガスであり、前記ガス吸蔵材が、水素吸蔵合金であり、前記ガス放出材が、水素化物又は水素吸蔵合金であることを特徴とする。
また、第五番目の発明に係るガス供給装置は、ガスを吸蔵することにより発熱するガス吸蔵材を内部に収容する吸蔵材容器と、加熱により分解して前記ガスを放出するガス放出材を内部に収容すると共に前記吸蔵材容器を内部に収納する放出材容器と、前記吸蔵材容器の内部へ前記ガスを送給するガス送給手段と、前記放出材容器の内部の前記ガスを外部へ向けて送り出すガス送出手段と、前記ガス送出手段で送り出される前記ガスの一部を前記ガス送給手段へ送り込む分岐手段と前記吸蔵材容器を内部に収納した前記放出材容器を格納容器の内部の内寄りと外寄りとに位置させるように複数格納した本体部を備え、前記ガス送出手段が、前記本体部の複数の前記放出材容器からの前記ガスを集合させて外部へ向けて送り出す集合ラインと、前記集合ラインに設けられて集合された前記ガスの送出を制御する送出用操作弁とを備え、前記ガス送給手段が、前記本体部の内寄りの前記吸蔵材容器に接続された内寄り分配ラインと、前記本体部の外寄りの前記吸蔵材容器に接続された外寄り分配ラインと、前記内寄り分配ラインに設けられて前記ガスの送給を制御する内寄り分配用操作弁と、前記外寄り分配ラインに設けられて前記ガスの送給を制御する外寄り分配用操作弁とを備え、前記分岐手段が、前記ガス送出手段の前記送出用操作弁で制御された前記ガスの一部を前記ガス送給手段の前記内寄り分配ライン及び前記外寄り分配ラインへ送り込む分岐ラインを備え、前記本体部を複数有し、前記ガス送出手段が、各前記本体部の前記集合ラインで集合されて前記送出用操作弁で制御された前記ガスをまとめるように当該集合ライン間を連結する連結ラインをさらに備え、各前記本体部の内寄りの前記放出材容器同士を連絡するバイパスラインと、前記バイパスラインに設けられて前記本体部ごとの前記放出材容器に対する前記ガスの流通を制御するバイパス用操作弁とを備えていることを特徴とする。
また、第六番目の発明に係るガス供給装置は、第五番目の発明において、前記ガスが、水素ガスであり、前記ガス吸蔵材が、水素吸蔵合金であり、前記ガス放出材が、水素化物又は水素吸蔵合金であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るガス供給装置によれば、ガス送給手段で吸蔵材容器の内部へガスを送給すると、吸蔵材容器の内部のガス吸蔵材が当該ガスを吸蔵するに伴って発熱し、放出材容器の内部のガス放出材が加熱されてガスを放出し、当該ガスをガス送出手段で放出材容器の外部へ向けて送り出すことができるので、ポンプ等の動力源や電気ヒータ等の加熱源等のような消費電力の大きい補機を使用することなく上記ガスを取り出して送給することができ、二次電池の消費電力量を大きく抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係るガス供給装置を水素ガス供給装置に適用した場合の第一番目の実施形態の概略構成図である。
図2図1のII−II線断面矢線視図である。
図3図1の水素ガス供給装置の要部のブロック図である。
図4A図1〜3の水素ガス供給装置の作動フロー図である。
図4B図4Aに続く作動フロー図である。
図5】本発明に係るガス供給装置を水素ガス供給装置に適用した場合の第二番目の実施形態の概略構成図である。
図6図5の水素ガス供給装置の要部のブロック図である。
図7A図5,6の水素ガス供給装置の作動フロー図である。
図7B図7Aに続く作動フロー図である。
図7C図7Bに続く作動フロー図である。
図7D図7Cに続く作動フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係るガス供給装置の実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明は、図面に基づいて説明する以下の実施形態のみに限定されるものではない。
【0018】
〈第一番目の実施形態〉
本発明に係るガス供給装置を水素ガス供給装置に適用した場合の第一番目の実施形態を図1〜3に基づいて説明する。
【0019】
図1,2に示すように、円筒型をなす本体部110の格納容器111の内部の径方向内寄りには、水素化金属等の水素化物等からなる粉体状やペレット状等の水素ガス放出材102を収容すると共に水素ガス101を充填された断面扇形をなす筒状の放出材容器112αが当該格納容器111の軸方向に沿って長手方向を向けるようにして当該格納容器111の周方向へ複数(本実施形態では4つ)配設されている。
【0020】
前記格納容器111の内部の径方向外寄りには、水素ガス放出材102を収容すると共に水素ガス101を充填された断面虹形をなす筒状の放出材容器112βが当該格納容器111の軸方向に沿って長手方向を向けるようにして周方向へ複数(本実施形態では8つ)配設されている。
【0021】
前記放出材容器112αの内部の中央部分には、水素吸蔵合金等からなる粉体状やペレット状等の水素ガス吸蔵材103を収容した円筒状の吸蔵材容器113αが当該放出材容器112αの長手方向に沿って軸方向を向けるようにしてそれぞれ配設されている。前記放出材容器112βの内部の、前記格納容器111の径方向内寄りには、水素ガス吸蔵材103を収容した円筒状の吸蔵材容器113βが当該放出材容器112βの長手方向に沿って軸方向を向けるようにしてそれぞれ配設されている。
【0022】
前記格納容器111の内部の、隣り合う前記放出材容器112α,112βの間には、グラスウール等の保持材114が充填されている。前記格納容器111の外周は、断熱材115で覆われている。
【0023】
前記放出材容器112α,112β及び前記吸蔵材容器113α,113βは、その両端側が閉塞している。前記放出材容器112α,112βの先端側(図1中、左端側)には、当該放出材容器112α,112βからの水素ガス101を集合させて外部(水素供給先)へ向けて送り出す集合ライン141の基端側(図1中、右端側)が接続されている。前記集合ライン141の先端側(図1中、左端側)には、水素ガス101を外部(水素供給先)へ供給する供給ライン149の基端側(図1中、右端側)が接続されている。
【0024】
前記集合ライン141には、集合された水素ガス101の送出を制御する送出用操作弁121が設けられている。前記集合ライン141の、前記送出用操作弁121よりも水素ガス101の流通方向下流側には、減圧弁128が設けられている。前記供給ライン149には、流量調整装置129が設けられている。
【0025】
各前記吸蔵材容器113αの基端側(図1中、右端側)には、内寄り分配ライン143αの先端側(図1中、左端側)がそれぞれ接続している。各前記吸蔵材容器113βの基端側(図1中、右端側)には、外寄り分配ライン143βの先端側(図1中、左端側)がそれぞれ接続している。
【0026】
各前記内寄り分配ライン143αには、前記吸蔵材容器113αへの水素ガス101の送給を制御する内寄り分配用操作弁122αがそれぞれ設けられている。各前記外寄り分配ライン143βには、前記吸蔵材容器113βへの水素ガス101の送給を制御する外寄り分配用操作弁122βがそれぞれ設けられている。
【0027】
前記集合ライン141の先端側(図1中、左端側)には、分岐ライン142の基端側が接続している。前記分岐ライン142の先端側は、各前記分配ライン143α,143βの基端側(図1中、右端側)にそれぞれ接続しており、当該分岐ライン142は、前記集合ライン141の前記送出用操作弁121で制御された水素ガス101の一部を各前記分配ライン143α,143βのそれぞれへ送り込むことができるようになっている。
【0028】
前記放出材容器112α,112βと前記送出用操作弁121との間の当該送出用操作弁121の近傍には、当該放出材容器112α,112β内の水素ガス101の圧力を検出する放出材容器内圧力検出手段である圧力センサ131が設けられている。この圧力センサ131は、図3に示すように、制御手段である制御装置130の入力部に電気的に接続している。
【0029】
前記制御装置130の入力部には、さらに、前記吸蔵材容器113αの内部の温度を検出する内寄り吸蔵材容器内温度検出手段である温度センサ132αと、前記吸蔵材容器113αの内部の圧力を検出する内寄り吸蔵材容器内圧力検出手段である圧力センサ133αと、前記吸蔵材容器113βの内部の温度を検出する外寄り吸蔵材容器内温度検出手段である温度センサ132βと、前記吸蔵材容器113βの内部の圧力を検出する外寄り吸蔵材容器内圧力検出手段である圧力センサ133βとが電気的に接続している。
【0030】
前記制御装置130の出力部は、前記操作弁121,122α,122βへ電気的に接続しており、当該制御装置130は、前記センサ131,132α,132β,133α,133βからの情報に基づいて、上記操作弁121,122α,122βの作動を制御することができるようになっている(詳細には後述する)。
【0031】
このような本実施形態においては、前記集合ライン141、前記送出用操作弁121等によりガス送出手段を構成し、前記分配ライン143α,143β、前記分配用操作弁122α,122β等によりガス送給手段を構成し、前記分岐ライン142等により分岐手段を構成し、前記温度センサ132α,132β等により吸蔵材容器内温度検出手段を構成し、前記圧力センサ133α,133β等により吸蔵材容器内圧力検出手段を構成している。
【0032】
次に、上述した本実施形態に係る水素ガス供給装置100の作動を図4A,4Bに基づいて説明する。
【0033】
当初、上記水素ガス供給装置100は、前記本体部110の前記放出材容器112α,112βの内部に、水素ガス放出材102が収容されると共に水素ガス101が上限圧力値Pt(例えば3MPa)まで充填され、前記本体部110の前記吸蔵材容器113α,113βの内部に、水素を吸蔵していない水素ガス吸蔵材103が収容され、前記操作弁121,122α,122βが閉鎖した状態となっている。
【0034】
そして、前記制御装置130は、作動が開始されると、前記放出材容器112α,112β内に充填されている水素ガス101を予め設定された規定流量Fs1で送出するように前記操作弁121を制御する(S111)。
【0035】
このようにして前記放出材容器112α,112β内に充填された水素ガス101を送出して、当該放出材容器112α,112β内の水素ガス101の圧力Ph1が下限圧力値Pb(例えば0.6MPa)未満(Ph1<Pb)になると(S112)、前記制御装置130は、前記圧力センサ131からの情報に基づいて、前記格納容器111の径方向内寄りに位置する前記放出材容器112α内の前記吸蔵材容器113αへ水素ガス101を予め設定された規定流量Fs2で供給するように前記操作弁122αを制御する(S113)。
【0036】
前記吸蔵材容器113α内へ水素ガス101が供給されると、水素ガス吸蔵材103は、水素ガス101を吸蔵すると同時に発熱(約250〜350℃)し、当該吸蔵材容器113αを介して前記放出材容器112α内の水素ガス放出材102を加熱する。これにより、前記放出材容器112α内の水素ガス放出材102は、加熱分解(約100〜350℃)して水素ガス101を発生する。
【0037】
そして、前記制御装置130は、前記圧力センサ133αからの情報に基づいて、前記吸蔵材容器113α内の圧力Ph2が基準圧力値Ps(例えば0.1MPa)以下(Ph2≦Ps)であるか否か確認し(S114)、当該吸蔵材容器113α内の圧力Ph2が基準圧力値Ps以下であると、前記圧力センサ131からの情報に基づいて、前記放出材容器112α内の水素ガス101の圧力Ph1が上限圧力値Ptと下限圧力値Pbとの間となるように(Pb≦Ph1≦Pt)、前記操作弁121,122αを制御する(S115)。
【0038】
このように前記吸蔵材容器113α内への水素ガス101の送給を行っているときに、当該吸蔵材容器113α内の温度Th1が上限温度値Tt(例えば250℃)を超えてしまうと(Tt<Th1)(S116)、前記制御装置130は、前記温度センサ132αからの情報に基づいて、当該吸蔵材容器113α内への水素ガス101の送給を停止するように前記操作弁122αを閉鎖制御する(S117)。
【0039】
そして、前記吸蔵材容器113α内の温度Th1が下限温度値Tb(例えば100℃)未満(Th1<Tb)になると(S118)、前記制御装置130は、前記温度センサ132αからの情報に基づいて、当該吸蔵材容器113α内への水素ガス101の送給を再開するように前記操作弁122αを制御し(S119)、前記ステップS114に戻る。
【0040】
このような前記吸蔵材容器113α内への水素ガス101の送給により、当該吸蔵材容器113α内の水素ガス吸蔵材103が水素101を吸蔵可能な上限容量にまで達すると、当該吸蔵材容器113α内の圧力Ph2が次第に上昇して、基準圧力値Ps(例えば0.1MPa)を超えるようになるので(Ps<Ph2)、前記制御装置130は、前記圧力センサ133αからの情報に基づいて、前記格納容器111の径方向外寄りに位置する前記放出材容器112β内の前記吸蔵材容器113βへ水素ガス101を予め設定された規定流量Fs2で供給するように前記操作弁122βを制御する(S123)。
【0041】
前記吸蔵材容器113β内へ水素ガス101が供給されると、前記吸蔵材容器113αの場合と同様に、水素ガス吸蔵材103が、水素ガス101を吸蔵すると同時に発熱(約250〜350℃)し、当該吸蔵材容器113βを介して前記放出材容器112β内の水素ガス放出材102を加熱する。これにより、前記放出材容器112αの場合と同様に、前記放出材容器112β内の水素ガス放出材102は、加熱分解(約100〜350℃)して水素ガス101を発生する。
【0042】
そして、前記制御装置130は、前記吸蔵材容器113αの場合と同様に、前記圧力センサ133βからの情報に基づいて、前記吸蔵材容器113β内の圧力Ph3が基準圧力値Ps(例えば0.1MPa)以下(Ph3≦Ps)であるか否か確認し(S124)、当該吸蔵材容器113β内の圧力Ph3が基準圧力値Ps以下であると、前記放出材容器112αの場合と同様に、前記圧力センサ131からの情報に基づいて、前記放出材容器112β内の水素ガス101の圧力Ph1が上限圧力値Pt(例えば3MPa)と下限圧力値Pb(例えば0.6MPa)との間となるように(Pb≦Ph1≦Pt)、前記操作弁121,122βを制御する(S125)。
【0043】
このように前記吸蔵材容器113β内への水素ガス101の送給を行っているときに、当該吸蔵材容器113β内の温度Th2が上限温度値Tt(例えば250℃)を超えてしまうと(Tt<Th2)(S126)、前記吸蔵材容器113αの場合と同様に、前記制御装置130は、前記温度センサ132βからの情報に基づいて、上記吸蔵材容器113β内への水素ガス101の送給を停止するように前記操作弁122βを閉鎖制御する(S127)。
【0044】
そして、前記吸蔵材容器113β内の温度Th2が下限温度値Tb(例えば100℃)未満(Th2<Tb)になると(S128)、前記吸蔵材容器113αの場合と同様に、前記制御装置130は、前記温度センサ132βからの情報に基づいて、上記吸蔵材容器113β内への水素ガス101の送給を再開するように前記操作弁122βを制御し(S129)、前記ステップS124に戻る。
【0045】
このような前記吸蔵材容器113β内への水素ガス101の送給により、当該吸蔵材容器113β内の水素ガス吸蔵材103が水素101を吸蔵可能な上限容量にまで達すると、当該吸蔵材容器113β内の圧力Ph3が次第に上昇して、基準圧力値Ps(例えば0.1MPa)を超えるようになるので(Ps<Ph3)、前記制御装置130は、前記圧力センサ133βからの情報に基づいて、運転を終了する。
【0046】
つまり、本実施形態に係る水素ガス供給装置100においては、放出材容器112β,112β内からの水素ガス101の一部を吸蔵材容器113α,113β内の水素ガス吸蔵材103に吸蔵させることにより熱を発生させ、この熱を利用して、放出材容器112α,112β内の水素ガス放出材102を加熱して水素ガス101を発生させるようにしたのである。
【0047】
このため、本実施形態に係る水素ガス供給装置100において、水素ガス放出材102として、例えば、水素化金属である水素化アルミニウム(AlH3)を適用し、水素ガス吸蔵材103として、例えば、水素吸蔵合金である五酸化ニオブ(Nb25)添加マグネシウム(Mg)を適用すると、水素ガス吸蔵材103に吸蔵される水素ガス101の有する熱エネルギに対して10倍以上となる熱エネルギを、水素ガス放出材102から放出される水素ガス101によって得ることができる。
【0048】
したがって、本実施形態に係る水素ガス供給装置100によれば、ポンプ等の動力源や電気ヒータ等の加熱源等のような消費電力の大きい補機を使用することなく、操作弁121,122α,122β等の消費電力の小さい補機だけで、必要十分な熱エネルギ量の水素ガス101を取り出して送給することができるので、二次電池の消費電力量を大きく抑制することができる。
【0049】
また、前記格納容器111の内部の径方向内寄りに前記放出材容器112αを配設すると共に、当該格納容器111の内部の径方向外寄りに前記放出材容器112βを配設することにより、まず、上記放出材容器112α内の前記吸蔵材容器113αに水素ガス101を供給して当該吸蔵材容器113α内の水素ガス吸蔵材103に吸蔵させて当該水素ガス吸蔵材103を発熱させ、当該水素ガス吸蔵材103の水素吸蔵上限容量に達してから、上記放出材容器112β内の前記吸蔵材容器113βに水素ガス101を供給して当該吸蔵材容器113β内の水素ガス吸蔵材103に吸蔵させて当該水素ガス吸蔵材103を発熱させるようにしたことから、上記放出材容器112αの内部から外部へ伝達する熱エネルギを利用して上記放出材容器112βを予熱することができるので、当該放出材容器112βを加熱する上記吸蔵材容器113β内の水素ガス吸蔵材103の量を減らすことができ、コストダウンを図ることができる。
【0050】
なお、前記水素ガス吸蔵材103としては、Mg2Ni,ZrMn2,Nb25添加Mg等の水素吸蔵合金等を挙げることができ、前記水素ガス放出材102としては、水素化アルミニウム,水素化アルミリチウム,水素化アルミナトリウム(チタン触媒添加),活性マグネシウム(前記特許文献3(特に「実施例1,2」)に記載のもの),水素化ホウ素リチウム,水素化マグネシウム,水素化ホウ素ナトリウム等の水素化金属等の水素化物等や、Mg2Ni,ZrMn2,Nb25添加Mg等の水素吸蔵合金等を挙げることができる。
【0051】
このとき、前記水素ガス吸蔵材103においては、水素ガス101の吸蔵に伴う発熱温度が、前記水素ガス放出材102の水素ガス101の放出温度以上のものを選定、言い換えると、前記水素ガス放出材102においては、水素ガス101の放出温度が、前記水素ガス吸蔵材103の水素ガス101の吸蔵に伴う発熱温度以下のものを選定するようにする。
【0052】
〈第二番目の実施形態〉
本発明に係るガス供給装置を水素ガス供給装置に適用した場合の第二番目の実施形態を図5,6に基づいて説明する。なお、前述した実施形態の場合と同様な部分については、前述した実施形態の説明で用いた符号と同様な符号を用いることにより、前述した実施形態での説明と重複する説明を省略する。
【0053】
図5に示すように、本実施形態に係る水素ガス供給装置200は、前述した実施形態に係る水素ガス供給装置100の前記本体部110と同様な構造をなす本体部110A,110Bを複数(本実施形態では2つ)備えている。
【0054】
また、前記本体部110Aに接続する集合ライン141Aと、前記本体部110Bに接続する集合ライン141Bとは、前記送出用操作弁121A,121Bの水素ガス流通方向下流側部分の間が、連結ライン244で連結されており、当該連結ライン244は、上記集合ライン141A,141Bで集合されて上記送出用操作弁121A,121Bで制御された水素ガス101をまとめて前記供給ライン149へ一括して送り出すことができるようになっている。
【0055】
そして、前記分岐ライン142の先端側は、各本体部110A,110Bの各内寄り分配ライン143αA,143αB及び各外寄り分配ライン143βA,143βBの基端側(図5中、右端側)にそれぞれ接続している。各前記内寄り分配ライン143αA,143αBには、内寄り分配用操作弁122αA,122αBがそれぞれ設けられている。各前記外寄り分配ライン143βA,143βBには、外寄り分配用操作弁122βA,112βBがそれぞれ設けられている。
【0056】
つまり、前記本体部110Bの前記集合ライン141Bは、前記分岐ライン142に対して、直接接続されることなく前記連結ライン244及び前記集合ライン141Aを介して接続されることにより、減圧弁が省略されている。
【0057】
また、各前記本体部110A,110Bの前記放出材容器112αの基端側(図5中、右側)は、相互に連絡するようにバイパスライン245で接続されている。前記バイパスライン245には、各本体部110A,110Bごとの前記放出材容器112αに対する水素ガス101の流通を制御するバイパス用操作弁223A,223Bが設けられている。
【0058】
そして、各前記本体部110A,110Bの前記放出材容器112α,112βと各前記送出用操作弁121A,121Bとの間の当該送出用操作弁121A,121Bの近傍には、当該本体部110A,110Bの当該放出材容器112α,112β内の水素ガス101の圧力を検出する放出材容器内圧力検出手段である圧力センサ131A,131Bがそれぞれ設けられている。これら圧力センサ131A,131Bは、図6に示すように、制御手段である制御装置230の入力部に電気的に接続している。
【0059】
前記制御装置230の入力部には、さらに、各前記本体部110A,110Bの各前記吸蔵材容器113αの内部の温度をそれぞれ検出する内寄り吸蔵材容器内温度検出手段である温度センサ132αA,132αBと、各前記本体部110A,110Bの各前記吸蔵材容器113αの内部の圧力をそれぞれ検出する内寄り吸蔵材容器内圧力検出手段である圧力センサ133αA,133αBと、各前記本体部110A,110Bの各前記吸蔵材容器113βの内部の温度をそれぞれ検出する外寄り吸蔵材容器内温度検出手段である温度センサ132βA,132βBと、各前記本体部110A,110Bの各前記吸蔵材容器113βの内部の圧力をそれぞれ検出する外寄り吸蔵材容器内圧力検出手段である圧力センサ133βA,133βBとが電気的に接続している。
【0060】
前記制御装置230の出力部は、前記操作弁121A,121B,122αA,122αB,122βA,122βB,223A,223Bへ電気的に接続しており、当該制御装置230は、前記センサ131A,131B,132αA,132αB,132βA,132βB,133αA,133αB,133βA,133βBからの情報に基づいて、上記操作弁121A,121B,122αA,122αB,122βA,122βB,223A,223Bの作動を制御することができるようになっている(詳細には後述する)。
【0061】
このような本実施形態においては、前記集合ライン141A,141B、前記送出用操作弁121A,121B、前記連結ライン244等によりガス送出手段を構成し、前記分配ライン143αA,143αB,143βA,143βB、前記分配用操作弁122αA,122αB,122βA,122βB等によりガス送給手段を構成し、前記分岐ライン142等により分岐手段を構成し、前記バイパスライン245、前記バイパス用操作弁223A,223B等によりバイパス手段を構成し、前記温度センサ132αA,132αB,132βA,132βB等により吸蔵材容器内温度検出手段を構成し、前記圧力センサ133αA,133αB,133βA,133βB等により吸蔵材容器内圧力検出手段を構成している。
【0062】
次に、上述した本実施形態に係る水素ガス供給装置200の作動を図7A〜7Dに基づいて説明する。
【0063】
当初、上記水素ガス供給装置200は、各前記本体部110A,110Bの前記放出材容器112α,112βの内部に、水素ガス放出材102がそれぞれ収容されると共に水素ガス101が上限圧力値Pt(例えば3MPa)までそれぞれ充填され、各前記本体部110A,110Bの前記吸蔵材容器113α,113βの内部に、水素を吸蔵していない水素ガス吸蔵材103がそれぞれ収容され、前記操作弁121A,121B,122αA,122αB,122βA,122βB,223A,223Bが閉鎖した状態となっている。
【0064】
そして、前記制御装置230は、作動が開始されると、前述した実施形態の場合と同様に、前記本体部110A内の前記放出材容器112α,112β内に充填されている水素ガス101を予め設定された規定流量Fs1で送出するように前記操作弁121Aを制御する(S111)。
【0065】
このようにして前記本体部110Aの前記放出材容器112α,112β内に充填された水素ガス101を送出して、当該本体部110Aの当該放出材容器112α,112β内の水素ガス101の圧力Ph1が下限圧力値Pb(例えば0.6MPa)未満(Ph1<Pb)になると(S112)、前記制御装置230は、前記圧力センサ131Aからの情報に基づいて、前記本体部110Aからの水素ガス101の送出を停止するように前記操作弁121Aを閉鎖制御すると共に、前記本体部110B内の前記放出材容器112α,112β内に充填されている水素ガス101を予め設定された規定流量Fs1で引き続き送出するように前記操作弁121Bを制御する(S221)。
【0066】
このようにして前記本体部110Bの前記放出材容器112α,112β内に充填された水素ガス101を送出して、当該本体部110Bの当該放出材容器112α,112β内の水素ガス101の圧力Ph1が下限圧力値Pb(例えば0.6MPa)未満(Ph1<Pb)になると(S222)、前記制御装置230は、前記圧力センサ131Bからの情報に基づいて、前記本体部110Aの前記格納容器111の径方向内寄りに位置する前記放出材容器112α内の前記吸蔵材容器113αへ水素ガス101を予め設定された規定流量Fs2で供給するように前記操作弁122αAを制御すると共に、当該本体部110Aの前記放出材容器112α内の水素ガス放出材102から発生した水素ガス101を前記本体部110Bの前記格納容器111の径方向内寄りに位置する前記放出材容器112α内へ送給するように前記操作弁223A,223Bを制御する(S213)。
【0067】
これにより、前記本体部110Aの前記放出材容器112α内の水素ガス放出材102から発生した水素ガス101は、前記本体部110Bの前記放出材容器112α内を流通することにより、その熱を当該本体部110Bの当該放出材容器112α内の水素ガス放出材102の予熱に使用されてから、外部へ送出される。
【0068】
そして、前記制御装置230は、前述した実施形態の場合と同様に、前記圧力センサ133αAからの情報に基づいて、前記本体部110Aの前記吸蔵材容器113α内の圧力Ph2が基準圧力値Ps(例えば0.1MPa)以下(Ph2≦Ps)であるか否か確認し(S114)、当該本体部110Aの当該吸蔵材容器113α内の圧力Ph2が基準圧力値Ps以下であると、前記圧力センサ131Bからの情報に基づいて、当該本体部110Bの前記放出材容器112α内の水素ガス101の圧力Ph1が上限圧力値Pt(例えば3MPa)と下限圧力値Pb(例えば0.6MPa)との間となるように(Pb≦Ph1≦Pt)、前記操作弁121B,122αAを制御する(S115)。
【0069】
このように前記本体部110Aの前記吸蔵材容器113α内への水素ガス101の送給を行っているときに、当該本体部110Aの当該吸蔵材容器113α内の温度Th1が上限温度値Tt(例えば250℃)を超えてしまうと(Tt<Th1)(S116)、前記制御装置230は、前述した実施形態の場合と同様に、前記温度センサ132αAからの情報に基づいて、当該本体部110Aの当該吸蔵材容器113α内への水素ガス101の送給を停止するように前記操作弁122αAを閉鎖制御する(S117)。
【0070】
そして、前記本体部110Aの前記吸蔵材容器113α内の温度Th1が下限温度値Tb(例えば100℃)未満(Th1<Tb)になると(S118)、前記制御装置230は、前述した実施形態の場合と同様に、前記温度センサ132αAからの情報に基づいて、当該本体部110Aの当該吸蔵材容器113α内への水素ガス101の送給を再開するように前記操作弁122αAを制御し(S119)、前記ステップS114に戻る。
【0071】
このような前記本体部110Aの前記吸蔵材容器113α内への水素ガス101の送給により、当該本体部110Aの当該吸蔵材容器113α内の水素ガス吸蔵材103が水素101を吸蔵可能な上限容量にまで達すると、当該本体部110Aの当該吸蔵材容器113α内の圧力Ph2が次第に上昇して、基準圧力値Ps(例えば0.1MPa)を超えるようになるので(Ps<Ph2)、前記制御装置230は、前述した実施形態の場合と同様に、前記圧力センサ133αAからの情報に基づいて、前記本体部110Aの前記格納容器111の径方向外寄りに位置する前記放出材容器112β内の前記吸蔵材容器113βへ水素ガス101を予め設定された規定流量Fs2で供給するように前記操作弁122βAを制御する(S123)。
【0072】
これにより、前記本体部110Aの前記放出材容器112β内の水素ガス放出材102から発生した水素ガス101は、当該本体部110Aの前記放出材容器112α内を経由して前記本体部110Bの前記放出材容器112α内を流通することにより、その熱を当該本体部110Bの当該放出材容器112α内の水素ガス放出材102の予熱に使用されてから、外部へ送出される。
【0073】
そして、前記制御装置230は、前記本体部110Aの前記吸蔵材容器113αの場合と同様、すなわち、前述した実施形態の場合と同様に、前記圧力センサ133βAからの情報に基づいて、当該本体部110Aの前記吸蔵材容器113β内の圧力Ph3が基準圧力値Ps(例えば0.1MPa)以下(Ph3≦Ps)であるか否か確認し(S124)、当該本体部110Aの当該吸蔵材容器113β内の圧力Ph3が基準圧力値Ps以下であると、当該本体部110Aの前記放出材容器112αの場合と同様、すなわち、前述した実施形態の場合と同様に、前記圧力センサ131Bからの情報に基づいて、前記本体部110Bの前記放出材容器112β内の水素ガス101の圧力Ph1が上限圧力値Pt(例えば3MPa)と下限圧力値Pb(例えば0.6MPa)との間となるように(Pb≦Ph1≦Pt)、前記操作弁121B,122βAを制御する(S125)。
【0074】
このように前記本体部110Aの前記吸蔵材容器113β内への水素ガス101の送給を行っているときに、当該本体部110Aの当該吸蔵材容器113β内の温度Th2が上限温度値Tt(例えば250℃)を超えてしまうと(Tt<Th2)(S126)、当該本体部110Aの前記吸蔵材容器113αの場合と同様、すなわち、前述した実施形態の場合と同様に、前記制御装置230は、前記温度センサ132βAからの情報に基づいて、上記本体部110Aの上記吸蔵材容器113β内への水素ガス101の送給を停止するように前記操作弁122βAを閉鎖制御する(S127)。
【0075】
そして、前記本体部110Aの前記吸蔵材容器113β内の温度Th2が下限温度値Tb(例えば100℃)未満(Th2<Tb)になると(S128)、当該本体部110Aの前記吸蔵材容器113αの場合と同様、すなわち、前述した実施形態の場合と同様に、前記制御装置230は、前記温度センサ132βAからの情報に基づいて、上記本体部110Aの上記吸蔵材容器113β内への水素ガス101の送給を再開するように前記操作弁122βAを制御し(S129)、前記ステップS124に戻る。
【0076】
このような前記本体部110Aの前記吸蔵材容器113β内への水素ガス101の送給により、当該本体部110Aの当該吸蔵材容器113β内の水素ガス吸蔵材103が水素101を吸蔵可能な上限容量にまで達すると、当該本体部110Aの当該吸蔵材容器113β内の圧力Ph3が次第に上昇して、基準圧力値Ps(例えば0.1MPa)を超えるようになるので(Ps<Ph3)、前記制御装置230は、前記圧力センサ133βAからの情報に基づいて、前記本体部110Bの前記格納容器111の径方向内寄りに位置する前記放出材容器112α内の前記吸蔵材容器113αへ水素ガス101を予め設定された規定流量Fs2で供給するように前記操作弁122αBを制御する(S233)。
【0077】
そして、前記制御装置230は、前記本体部110Aの前記放出材容器112α及び前記吸蔵材容器113αの場合と同様に、前記ステップS114〜S119と同様なステップS234〜S239を前記本体部110Bの前記放出材容器112α及び前記吸蔵材容器113αに行うことにより、当該本体部110Bの当該放出材容器112α内の水素ガス放出材102から水素ガス101を発生させて、当該本体部110Bから外部へ直接的に送出する。
【0078】
このような前記本体部110Bの前記放出材容器112α内の水素ガス放出材102からの水素ガス101の外部への直接的な送出を行い、当該本体部110Bの前記吸蔵材容器113α内の水素ガス吸蔵材103が水素101を吸蔵可能な上限容量にまで達すると、前記制御装置230は、前記圧力センサ133αBからの情報に基づいて、前記本体部110Bの前記格納容器111の径方向外寄りに位置する前記放出材容器112β内の前記吸蔵材容器113βへ水素ガス101を予め設定された規定流量Fs2で供給するように前記操作弁122βBを制御する(S243)。
【0079】
そして、前記制御装置230は、前記本体部110Aの前記放出材容器112β及び前記吸蔵材容器113βの場合と同様に、前記ステップS124〜S129と同様なステップS244〜S249を行うことにより、当該本体部110Bの当該放出材容器112β内の水素ガス放出材102から水素ガス101を発生させて、当該本体部110Bから外部へ直接的に送出する。
【0080】
このような前記本体部110Bの前記放出材容器112β内の水素ガス放出材102からの水素ガス101の外部への直接的な送出を行い、当該本体部110Bの前記吸蔵材容器113β内の水素ガス吸蔵材103が水素101を吸蔵可能な上限容量にまで達すると、前記制御装置230は、前記圧力センサ133βBからの情報に基づいて、運転を終了する。
【0081】
つまり、本実施形態に係る水素ガス供給装置200においては、複数の本体部110A,110Bを接続して、一つの本体部110Aの放出材容器112α,112β内の水素ガス放出材102から発生した水素ガス101を、他の本体部110Bの放出材容器112α内に流通させてから外部へ送出するようにしたのである。
【0082】
このため、本実施形態に係る水素ガス供給装置200では、本体部110Aの放出材容器112α,112β内の水素ガス放出材102から発生した水素ガス101の熱を利用して本体部110Bの放出材容器112α内の水素ガス放出材102を予熱することができる。
【0083】
したがって、本実施形態に係る水素ガス供給装置200によれば、前述した実施形態に係る水素ガス供給装置100と同様な効果を得ることができるのはもちろんのこと、さらに、本体部110Bの放出材容器112α内の水素ガス放出材102を加熱する当該本体部110Bの吸蔵材容器113α内の水素ガス吸蔵材103の量を減らすことができ、コストダウンをより図ることができる。
【0084】
〈他の実施形態〉
なお、前述した実施形態においては、水素ガス放出材102を収容した放出材容器112α,112βに水素ガス101を予め充填し、当該放出材容器112α,112β内の水素ガス101の一部を前記集合ライン141,141A,141Bから前記分岐ライン142を介して前記分配ライン143α,143αA,143αB,143β,143βA,143βBへ送り込むことにより前記吸蔵材容器113α,113β内の水素ガス吸蔵材103を発熱反応させるようにしたが、他の実施形態として、例えば、水素ガス放出材102を収容した放出材容器112に水素ガス101を予め充填せずに、水素ガス101を充填した水素ガスボンベを別途用意して前記分配ライン143α,143αA,143αB,143β,143βA,143βBへ接続すると共に、前記分岐ライン142を省略して、上記水素ガスボンベ内の水素ガス101を当該分配ライン143α,143αA,143αB,143β,143βA,143βBへ送り込むことにより前記吸蔵材容器113α,113β内の水素ガス吸蔵材103を発熱反応させるようにすることも可能である。
【0085】
しかしながら、前述した実施形態のように、水素ガス放出材102を収容した放出材容器112α,112βに水素ガス101を予め充填し、当該放出材容器112α,112β内の水素ガス101の一部を前記集合ライン141,141A,141Bから前記分岐ライン142を介して前記分配ライン143α,143αA,143αB,143β,143βA,143βBへ送り込むことにより前記吸蔵材容器113α,113β内の水素ガス吸蔵材103を発熱反応させるようにすれば、大容量の水素ガスボンベを別途用意する必要がないので、省スペース化を図ることができ、非常に好ましい。
【0086】
また、前述した実施形態においては、前記格納容器111の内部で周方向に複数配列されている前記吸蔵材容器113α,113βに対して、水素ガス101を周方向で一括して送給するようにしたが、他の実施形態として、例えば、前記格納容器111の内部で周方向に複数配列されている前記吸蔵材容器113α,113βに対して、水素ガス101を周方向に一つずつ順次送給するようにすることも可能である。
【0087】
また、前述した実施形態においては、前記格納容器111の内部の径方向内寄りに、円筒形の前記吸蔵材容器113αを収納した断面扇形の前記放出材容器112αを周方向に複数配設すると共に、当該格納容器111の内部の径方向外寄りに、円筒形の前記吸蔵材容器113βを収納した断面虹形の前記放出材容器112βを周方向に複数配設する、すなわち、前記放出材容器112α,112β及び前記吸蔵材容器113α,113βを前記格納容器111の径方向び周方向に複数配列するようにしたが、他の実施形態として、例えば、円筒形の吸蔵材容器を軸心位置に収納した円筒形の放出材容器を格納容器の内部の径方向内寄りに同軸をなして配設すると共に、円環形の吸蔵材容器を同軸上に収納した円環形の放出材容器を格納容器の内部の径方向外寄りに配設することにより、放出材容器及び吸蔵材容器を格納容器の径方向に複数配列する一方、周方向に単一配置するようにすることや、円筒形の吸蔵材容器を軸心位置に収納した円筒形の放出材容器を格納容器に格納することなく格納容器を省略することにより、放出材容器及び吸蔵材容器を径方向及び周方向に単一配置するようにすることも可能である。
【0088】
しかしながら、前述した実施形態のように、前記格納容器111の内部の径方向内寄りに前記放出材容器112αを配設すると共に、当該格納容器111の内部の径方向外寄りに前記放出材容器112βを配設し、上記放出材容器112αの内部から外部へ伝達する熱エネルギを利用して上記放出材容器112βを予熱するようにすれば、当該放出材容器112βを加熱する上記吸蔵材容器113β内の水素ガス吸蔵材103の量を減らすことができ、コストダウンを図ることができるので、非常に好ましい。
【0089】
また、前述した第二番目の実施形態においては、二つの本体部110A,110Bを連結した水素ガス供給装置200の場合について説明したが、本発明はこれに限らず、三つ以上の本体部を前述した第二番目の実施形態の場合と同様に連結することにより、前述した第二番目の実施形態の場合と同様に作動させて、前述した第二番目の実施形態の場合と同様な効果を得ることができる。
【0090】
また、前述した実施形態において、水素ガス放出材102として水素化金属を適用した場合には、加熱分解反応終了後に水等を添加することにより、できるだけ多くの水素ガス101を発生させることができ、水素ガス放出材102を有効活用することができる。
【0091】
また、前述した実施形態においては、水素ガス101を供給する水素ガス供給装置100,200に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限らず、他のガスを供給するガス供給装置、例えば、水素ガス吸蔵材103に代えて、リチウムやナトリウムやカリウム等のアルカリ金属,アルミニウム粉,白リン等を酸素ガス吸蔵材として適用し、水素ガス放出材102に代えて、塩素酸カリウム,塩素酸ナトリウム,過塩素酸カリウム,過塩素酸ナトリウム,過塩素酸アンモニウム,次亜塩素酸カルシウム,亜塩素酸ナトリウム,臭素酸カリウム,硝酸カリウム,硝酸ナトリウム等を酸素ガス放出材として適用することにより、酸素ガスを供給する酸素ガス供給装置として適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明に係るガス供給装置は、消費電力量を大きく抑制することができるので、産業上、極めて有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0093】
100,200 水素ガス供給装置
101 水素ガス
102 水素ガス放出材
103 水素ガス吸蔵材
110,110A,110B 本体部
111 格納容器
112α,112β 放出材容器
113α,113β 吸蔵材容器
114 保持材
115 断熱材
121,121A,121B 送出用操作弁
122α,122αA,122αB 内寄り分配用操作弁
122β,122βA,122βB 外寄り分配用操作弁
128 減圧弁
129 流量調整装置
130,230 制御装置
131,131A,131B 圧力センサ
132α,132αA,132αB,132β,132βA,132βB 温度センサ
133α,133αA,133αB,133β,133βA,133βB 圧力センサ
141,141A,141B 集合ライン
142 分岐ライン
143α,143αA,143αB 内寄り分配ライン
143β,143βA,143βB 外寄り分配ライン
149 供給ライン
244 連結ライン
245 バイパスライン
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D