【実施例】
【0094】
先述のことは、例示の目的のために与えられ、かつ本発明の範囲を制限しない、次の実施例を参照することによって、より良く理解することができる。
【0095】
実施例1
方法および材料−活性化因子
細胞株および遺伝子導入。HEK293T細胞は、Duke University Cell Culture Facilityを通じて、American Tissue Collection Center(ATCC,Manassas VA)から入手した。細胞を、10% FBSおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシンを添加して37℃および5% CO
2に維持したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)内で培養した。遺伝子導入は、製造業者の説明書の通りに、375ngのそれぞれのdCas9発現ベクターおよび125ngの等モルのプールされたまたは個々のgRNA発現ベクター(Lipofectamine 2000(Life Technologies,cat.#11668019)と混合)を使用して、24ウェルプレートにおいて実施した。ChIP−qPCR実験については、HEK293T細胞を、製造業者の説明書の通りに、Lipofectamine 2000、および30μgのそれぞれのdCas9発現ベクター、および10μgの等モルのプールされたgRNA発現ベクターを含む15cmディッシュ内で遺伝子導入させた。
【0096】
プラスミドコンストラクト。pcDNA−dCas9
VP64(dCas9
VP64;Addgene、プラスミド#47107)を使用した(Perez−Pinera,P.et al,Nature methods 10:973−976(2013))。AscI/PacI制限酵素部位を介してdCas9
VP64からVP64エフェクタードメインを除去し、等温構築(isothermal assembly)(Gibson et al.Nat.Methods 6:343−345(2009))を使用し、製造業者の説明書(NEB cat.#2611)の通りに、適切な配列を含有するアニーリングされたオリゴのセットを含めることによって、dCas9(エフェクターなし)に、HAエピトープタグを添加した。pcDNA−dCas9
FLp300(dCas9
FLp300)を、pcDNA3.1−p300(Addgene、プラスミド#23252)(Chen et al.EMBO J.21:6539−6548(2002))からの完全長p300を2つの別の断片で増幅させ、これらの断片を等温構築を介してdCas9
VP64骨格にクローン化することによって作製した。dCas9
FLp300中の、また、前駆体(前駆物質)pcDNA3.1−p300中の、HAT Core領域の外側に位置する完全長p300タンパク質(L553M)内の置換を、配列検証中に特定した。pcDNA−dCas9
p300 Core(dCas9
p300 Core)を、最初にcDNAからのヒトp300のアミノ酸1048〜1664を増幅させ、次いで、得られたアンプリコンをpCR−Blunt(pCR−Blunt
p300 Core)(Life Technologies cat.#K2700)にサブクローン化することによって産生した。AscI部位、HA−エピトープタグ、およびPmeI部位を、pCR−Blunt
p300 Coreからのp300 CoreのPCR増幅によって付加し、その後、このアンプリコンを、pCR−Blunt(pCR−Blunt
p300 Core+HA)(Life Technologies cat.#K2700)にクローン化した。HAタグされたp300 Coreを、pCR−Blunt
p300 Core+HAからdCas9
VP64骨格に、共通のAscI/PmeI制限酵素部位を介してクローン化した。pcDNA−dCas9
p300 Core(D1399Y)(dCas9
p300 Core(D1399Y))を、特定の核酸変異を含むプライマーセットを用いるdCas9
p300 Coreからのp300 Coreの増幅によって、オーバーラップ断片で産生し、連結(linkage)PCRに引き続いて、共通のAscI/PmeI制限酵素部位を使用してdCas9
p300 Core骨格にクローン化した。すべてのPCR増幅は、Q5ハイフィデリティDNAポリメラーゼ(NEB cat.#M0491)を使用して実施した。すべてのdCas9コンストラクトのタンパク質配列を、
図15A〜15Jに示す。
【0097】
IL1RN、MYOD、およびOCT4プロモーターgRNAプロトスペーサーは、これまでに記載されている(Perez−Pinera,P.et al,Nature methods 10:973−976 (2013);Hu,J.et al.,Nucleic Acids Res 42:4375−4390 (2014))。髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)dCas9
VP64(Nm−dCas9
VP64)は、Addgene(プラスミド#48676)から入手した。Nm−dCas9
p300 Coreは、プライマーを用いてdCas9
p300 CoreからHAタグされたp300 Coreを増幅させて、等温構築(NEB cat.# 2611)を使用するAleI/AgeI消化Nm−dCas9
VP64骨格にサブクローン化することを容易にすることによって作製した。IL1RN TALE
p300 CoreTALEは、dCas9
p300 Core由来のHAタグされたp300 Coreドメインを、以前に公表された(Perez−Pinera,P.et al,Nature methods 10:973−976 (2013))IL1RN TALE
VP64コンストラクトに、共通のAscI/PmeI制限酵素部位を介してサブクローン化することによって産生した。IL1RN TALE標的部位を、表1に示す。
【0098】
【表1】
【0099】
ICAM1 ZF
VP64およびICAM1 ZF
p300 Coreは、pMX−CD54−31Opt−VP64
54由来のICAM1 ZFを、等温構築(NEB cat.# 2611)を使用してdCas9
VP64およびdCas9
p300 Core骨格それぞれにサブクローン化することによって構築した。ICAM1 ZFコンストラクトのタンパク質配列を、
図16に示す。導入効率は、すべての実験において、PL−SIN−EF1α−EGFP(Addgeneプラスミド#21320)とgRNA空(empty)ベクターとの同時導入によって分析した場合に、決まって90%超であった。すべての化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)gRNAを、NEB BbsIおよびT4リガーゼ(Cat.#s R0539 and M0202)を使用して、わずかな改変を伴う発現(Cong,L.et al.,Science 339:819−823(2013))のためにpZdonor−pSPgRNA(Addgeneプラスミド#47108)にアニーリングおよびクローン化した。Nm−dCas9 gRNAオリゴを、公開されているPAM要件(requirement)(Esvelt,K.M.et al.,Nature Methods 10:1116−1121(2013))を使用して合理的に設計し、次いで、pZDonor−Nm−Cas9−gRNA−hU6(Addgene、プラスミド#61366)に、BbsI部位を介してクローン化した。プラスミドは、Addgeneを通じて入手可能である(表2)。
【0100】
【表2】
【0101】
すべてのgRNAプロトスペーサー標的を、表3および4に列挙する。
【0102】
【表3】
【0103】
【表4】
【0104】
ウエスタンブロッティング。SDS PAGEのために20μgのタンパク質を乗せ、ウエスタンブロットのためにニトロセルロース膜に転写させた。一次抗体(α−FLAG;Sigma−Aldrich cat.#F7425およびα−GAPDH;Cell Signaling Technology cat.#14C10)は、TBST+5%ミルクでの1:1000希釈で使用した。二次α−ウサギHRP(Sigma−Aldrich cat.#A6154)は、TBST+5%ミルクでの1:5000希釈で使用した。ECL(Bio−Rad cat.#170−5060)の添加後に膜を露光させた。
【0105】
定量逆転写PCR。遺伝子導入細胞から、RNeasy Plus mini kit(Qiagen cat.#74136)を使用してRNAを単離し、500ngの精製されたRNAを、cDNA合成(Life Technologies、cat.#11754)のための鋳型として使用した。リアルタイムPCRを、PerfeCTa SYBR Green FastMix(Quanta Biosciences、cat.#95072)と、C1000サーマルサイクラーを備えたCFX96リアルタイムPCR検出システム(Bio−Rad)を使用して実施した。ベースライン減算曲線適合分析モード(baseline subtraction curve fit analysis mode)を使用してベースライン値を引き、Bio−Rad CFX Managerソフトウェアversion 2.1を使用して閾値を自動的に算出した。結果は、ΔΔCt法(Schmittgen et al.、Nat.Protoc.3:1101−1108(2008))を使用するGAPDH発現に対する標準化後の、対照mock導入細胞(DNAなし)を超える変化(倍)として表す。すべてのqPCRプライマーおよび条件を、表5に列挙する。
【0106】
【表5】
【0107】
RNA−seq。1実験条件あたり3反復実験を使用して、RNA−seqを実施した。遺伝子導入細胞から、RNeasy Plus mini kit(Qiagen cat.#74136)を使用してRNAを単離し、1μgの精製されたmRNAを、cDNA合成およびライブラリ構築(PrepX RNA−Seq Library Kit(Wafergen Biosystems、cat.#400039)を使用)のための鋳型として使用した。ライブラリは、製造業者の説明書の通りに、Apollo 324リキッドハンドリングプラットフォーム(liquid handling platform)を使用して調製した。インデックス付加されたライブラリを、Tapestation 2200(Agilent)を使用して、品質およびサイズ分布について確認し、KAPA Library Quantification Kit(KAPA Biosystems;KK4835)を使用するqPCRによって数量化し、その後、Duke University Genome Sequencing Shared Resource施設で多重(multiplex)プーリングおよび配列決定を行った。ライブラリをプールし、次いで、50bpシングルエンドリードをHiseq 2500(Illumina)で配列決定し、脱多重化(de−multiplex)し、次いでBowtie 2を使用してHG19トランスクリプトームと整列させた(Langmead et al.Nat.Methods 9:357−359(2012))。SAMtools(Li et al.Bioinformatics 25:2078:2079(2009))スイートを使用して、転写物量を算出し、DESeq2解析パッケージを使用して差次的発現をRで決定した。多重仮説補正は、<5%のFDRを用いるBenjamini and Hochbergの方法を使用して実施した。RNA−seqデータは、NCBI’s Gene Expression Omnibusに寄託されており、GEO Seriesアクセッション番号GSE66742でアクセス可能である。
【0108】
ChIP−qPCR。HEK293T細胞に、試験される各条件について生物学的3回反復試験で、15cmプレート中で、4種のHS2エンハンサーgRNAコンストラクトと指示されたdCas9融合体発現ベクターを同時導入した。細胞を、1%ホルムアルデヒド(最終濃度;Sigma F8775−25ML)で室温で10分間クロスリンクさせ、次いで、グリシンの添加(125mMの最終濃度まで)によって反応を停止させた。H3K27ac ChIP濃縮のために、各プレートから、〜2.5e7細胞を使用した。クロマチンを、Bioruptor XL(Diagenode)を使用して、250bpという中間の断片サイズに剪断した。H3K27ac濃縮は、5μgのAbcam ab4729および200μlのヒツジ抗ウサギIgG磁気ビーズ(Life Technologies 11203D)と共に、4℃で16時間インキュベートすることによって実施した。ドデシル硫酸ナトリウムとの65℃での一晩のインキュベーションによって、クロスリンクを反転させ、MinElute DNA精製カラム(Qiagen)を使用して、DNAを精製した。C1000サーマルサイクラー(Bio−Rad)を備えたCFX96リアルタイムPCR検出システムを使用するその後のqPCR反応のために、10ngのDNAを使用した。ベースライン減算曲線適合分析モード(baseline subtraction curve fit analysis mode)を使用してベースライン値を引き、Bio−Rad CFX Managerソフトウェアversion 2.1を使用して閾値を自動的に算出した。結果は、ΔΔCt法(Schmittgen et al.、Nat.Protoc.3:1101−1108(2008))を使用するβ−アクチン濃縮に対する標準化後の、dCas9と4種のHS2 gRNAを同時導入した細胞を超える変化(倍)として表す。すべてのChIP−qPCRプライマーおよび条件を、表5に列挙する。
【0109】
実施例2
p300 HATドメインとのdCas9融合体は、標的遺伝子を活性化する。
完全長p300タンパク質を、dCas9(dCas9
FLp300;
図1A〜1B)と融合させ、IL1RN、MYOD1(MYOD)、およびPOU5F1/OCT4(OCT4)の内在性プロモーターを標的にする4種のgRNAとのヒトHEK293T細胞の一過性同時導入によるトランス活性化に関するその能力について分析した(
図1C)。各プロモーターを標的にする4種のgRNAの組み合わせを使用した。dCas9
FLp300は、十分に発現され、VP64酸性活性化ドメイン(dCas9
VP64)と融合された基本のdCas9活性化因子と比較して、バックグラウンドを超える中程度の活性化を誘発した(
図1A〜1C)。完全長p300タンパク質は、主としてその終端を介して多数の内在性タンパク質と相互作用する、見境なしのアセチルトランスフェラーゼである。これらの(these)相互作用を弱めるために、p300 HAT coreドメイン(p300 Core)として公知である、もっぱら固有のHAT活性のためだけに必要とされる完全長p300(2414 aa)の近接領域(アミノ酸1048〜1664)を単離した。dCas9のC末端と融合される場合(dCas9
p300 Core、
図1A〜1B)、p300 Coreドメインは、内在性gRNAに標的にされるプロモーターからの高レベルの転写を誘発した(
図1C)。IL1RNおよびMYODプロモーターを標的にする場合、dCas9
p300 Core融合体は、dCas9
VP64よりも有意に高いレベルのトランス活性化を呈した(P値 それぞれ0.01924および0.0324;
図1)。これらのdCas9−エフェクター融合タンパク質は、同様のレベルで発現され(
図1B、
図7)、これは、観察される差の原因が、トランス活性化能力の差であったことを示している。さらに、エフェクター融合体が、gRNAなしで導入された場合には、標的遺伝子発現に対する変化は観察されなかった(
図8)。
図8については、dCas9融合タンパク質は、空のgRNAベクター骨格を一過的に同時導入し、IL1RN、MYOD、およびOCT4のmRNA発現を、本文に示すように分析した。赤い破線は、DNAなし−遺伝子導入細胞からのバックグラウンド発現レベルを示す。n=2(独立した実験)、エラーバー:s.e.m.、分析されたいずれの標的遺伝子についても、有意な活性化は認められなかった。
【0110】
p300 Coreアセチルトランスフェラーゼ活性が、dCas9
p300 Core融合体を使用する遺伝子トランス活性化の原因であったことを確かめるために、一団のdCas9
p300 CoreHATドメイン変異体融合タンパク質をスクリーニングした(
図7)。dCas9
p300 Core(dCas9
p300 Core(D1399Y)のHAT coreドメイン内の単一の不活性化アミノ酸置換(完全長p300のWT残基D1399)(
図1A)は、融合タンパク質のトランス活性化能力をなくし(
図1C)、これは、インタクトなp300 Coreアセチルトランスフェラーゼ活性が、dCas9
p300 Core介在性のトランス活性化に必要とされることを示した。
【0111】
実施例3
dCas9
p300 Coreは、近位および遠位エンハンサーから遺伝子を活性化する
p300が、内在性エンハンサーで役割を果たし、内在性エンハンサーに局在するので、dCas9
p300 Coreは、適切に標的化されるgRNAと共に、遠位調節領域からの転写を効率的に誘発することができる。ヒトMYOD遺伝子座の遠位調節領域(DRR)およびコアエンハンサー(CE)は、各領域を標的にする4種のgRNAとdCas9
VP64またはdCas9
p300 Coreのいずれかとの同時導入によって標的化される(
図2A)。mock導入対照と比較して、dCas9
VP64は、MYOD DRRまたはCE領域を標的にする場合に、いかなる誘発も示さなかった。対照的に、dCas9
p300 Coreは、対応するgRNAと共に、いずれかのMYOD調節エレメントを標的にする場合に、有意な転写を誘発した(P値 CEおよびDRR領域についてそれぞれ0.0115および0.0009)。ヒトOCT4遺伝子の、上流の近位(PE)および遠位(DE)エンハンサー領域も、6種のgRNAとdCas9
VP64またはdCas9
p300 Coreのいずれかとの同時導入によって標的化した(
図2B)。dCas9
p300 Coreが、これらの領域からの有意な転写を誘発した(P値 DEおよびPEについてそれぞれ≦0.0001およびP値≦0.003)のに対して、dCas9
VP64は、PEまたはDE領域のいずれかを標的にする場合に、バックグラウンドレベルを超えてOCT4を活性化することができなかった。
【0112】
十分に特徴付けられた哺乳類のβ−グロビン遺伝子座制御領域(LCR)は、下流のヘモグロビン遺伝子;ヘモグロビンε1(HBE、〜11kbから)、ヘモグロビンγ1および2(HBG、〜30kbから)、ヘモグロビンδ(HBD、〜46kbから)、およびヘモグロビンβ(HBB、〜54kbから)の転写を統制する(
図2C)。β−グロビンLCR内のDNase高感受性領域は、遠位標的遺伝子発現を調整する、p300を含めた転写モディファイヤーおよびクロマチンモディファイヤーのためのドッキング部位として働く。LCRエンハンサー領域(HS2エンハンサー)内のDNase高感受性領域2を標的にする4種のgRNAを産生した。これらのHS2を標的にする4種のgRNAを、dCas9、dCas9
VP64、dCas9
p300 Core、またはdCas9
p300 Core(D1399Y)と同時導入し、HBE、HBG、HBD、およびHBBからの得られたmRNA産生を分析した(
図2C)。dCas9、dCas9
VP64、およびdCas9
p300 Core(D1399Y)は、HS2エンハンサーを標的にする場合に、いずれの下流遺伝子もトランス活性化することができなかった。対照的に、dCas9
p300 CoreのHS2エンハンサーへの標的化は、下流HBE、HBG、およびHBD遺伝子の有意な発現をもたらした(P値 HBE、HBG、およびHBDについて、それぞれ≦0.0001、0.0056、および0.0003( dCas9
p300 Coreとmock導入細胞との間))。まとめると、HBDおよびHBEは、HS2エンハンサーからの合成p300 Core介在性活性化に対する反応性が比較的に低いように見え;発見は、いくつかの細胞株にわたるこれらの2遺伝子からの、より低い速度の一般的な転写と一致している(
図9A〜9E)。
【0113】
それにもかかわらず、最も遠位のHBB遺伝子を除いて、dCas9
p300 Coreは、分析されるすべての特徴付けられたエンハンサー領域を標的にする場合、下流遺伝子からの転写を活性化する能力、すなわちdCas9
VP64については認められない能力を示した。まとめると、これらの結果は、dCas9
p300 Coreが、様々なプロモーター−近位およびプロモーター−遠位位置からの遺伝子発現を調節するために使用することができる、強力なプログラム可能な転写因子であることを実証する。
【0114】
実施例4
dCas9
p300 Coreによる遺伝子活性化は、高度に特異的である。
最近の報告によれば、dCas9は、いくつかのgRNAと組み合わせて、遺伝子発現のオフターゲット変化を潜在的にもたらす可能性がある、哺乳類細胞における広範なオフターゲット結合事象を有する可能性があることが示されている。dCas9
p300 Core融合タンパク質の転写特異性を評価するために、4種のIL1RN標的化gRNAと、dCas9、dCas9
VP64、dCas9
p300 Core、またはdCas9
p300 Core(D1399Y)のいずれかとを同時導入した細胞におけるRNA−seqによって、トランスクリプトームプロファイリングを実施した。ゲノムワイドの転写変化を、エフェクタードメインが融合されていないdCas9と、dCas9
VP64、dCas9
p300 Core、またはdCas9
p300 Core(D1399Y)のいずれかとの間で比較した(
図3)。dCas9
VP64とdCas9
p300 Coreは、どちらも、4種すべてのIL1RNアイソフォームを上方調節したが、dCas9
p300 Coreの効果のみが、ゲノムワイドの有意性に到達した(
図3A〜3B、表6;dCas9
VP64についてはP値 1.0×10
-3〜5.3×10
-4;dCas9
p300 CoreについてはP値 1.8×10
-17〜1.5×10
-19)。
【0115】
【表6】
【0116】
対照的に、dCas9
p300 Core(D1399Y)は、いずれのIL1RN発現も有意には誘発しなかった(
図3C;4種すべてのIL1RNアイソフォームについてP値>0.5)。dCas9との比較分析により、偽陽性率(FDR)<5%:KDR(FDR=1.4×10
-3);およびFAM49A(FDR=0.04)で、2つの転写物のみがバックグラウンドを超えて有意に誘発、限定されたdCas9
p300 Coreオフターゲット遺伝子導入が明らかにされた(
図3B、表6)。dCas9
p300 CoreおよびdCas9
p300 Core(D1399Y)を導入した細胞において、p300 mRNAの発現の増大が認められた。この発見は、一過的に導入したp300 core融合ドメインからのmRNAに対するRNA−seqリードマッピングによって説明される可能性が高い。このように、dCas9
p300 Core融合体は、高いゲノムワイドの標的化転写特異性と、4種すべての標的化IL1RNアイソフォームの頑強な遺伝子導入を呈した。
【0117】
実施例5
dCas9
p300 Coreは、H3K27をエンハンサーおよびプロモーターでアセチル化する
調節エレメントの活性は、アセチル化およびメチル化などの共有結合性のヒストン修飾と相関する。これらのヒストン修飾のうち、ヒストンH3上でのリジン27のアセチル化(H3K27ac)は、エンハンサー活性の最も広く記録された指標の一つである。H3K27のアセチル化は、p300によって触媒され、また、内在性p300結合プロフィールと相関する。したがって、H3K27ac濃縮を、ゲノム上の標的部位での相対的dCas9
p300 Core介在性アセチル化の尺度として使用した。dCas9
p300 CoreによるH3K27アセチル化を数量化するために、4種のHS2エンハンサー標的化gRNAと、dCas9、dCas9
VP64、dCas9
p300 Core、またはdCas9
p300 Core(D1399Y)のいずれかとを同時導入したHEK293T細胞において、抗H3K27ac抗体を用いるクロマチン免疫沈降、それに続いて定量PCR(ChIP−qPCR)を実施した(
図4)。3つのアンプリコンを、HBEおよびHBG遺伝子のHS2エンハンサー内またはプロモーター領域内の標的部位でまたは標的部位の周囲で、分析した(
図4A)。注目すべきことには、高レベルのグロビン遺伝子発現を有するヒトK562赤血球細胞株において、H3K27acは、これらの領域のそれぞれにおいて濃縮される(
図4A)。HS2エンハンサー標的遺伝子座で、dCas9
VP64(ChIP領域1についてP値0.0056、およびChIP領域3についてP値 0.0029)を同時導入された試料と、dCas9
p300 Core(ChIP領域1についてP値 0.0013、およびChIP領域3についてP値 0.0069)を同時導入された試料との両方で、dCas9での処理と比較して有意なH3K27ac濃縮が認められた(
図4B)。
【0118】
dCas9
VP64またはdCas9
p300 Coreを用いてIL1RNプロモーターを標的にする場合に、H3K27ac濃縮の同様の傾向が認められた(
図10)。
図10は、GRCh37/hg19上のIL1RN遺伝子座を、IL1RN gRNA標的部位と共に示す。さらに、7細胞株(GM12878、H1−hESC、HSMM、HUVEC、K562、NHEK、およびNHLF)からのENCODE H3K27ac濃縮の重ね合わせは、50に設定した垂直範囲設定を用いて示す。GRCh37/hg19上の対応する位置に、タイル状のIL1RN ChIP qPCRアンプリコン(1〜13)も示す。4種のIL1RN標的化gRNAを同時導入し、4種のIL1RN標的化gRNAを同時導入したdCas9に対して標準化したdCas9
VP64およびdCas9
p300 CoreについてのH3K27ac濃縮を、分析される各ChIP qPCR遺伝子座について示す。各反応のために、5ngのChIP調製DNAを使用した(n=3(独立した実験)、エラーバー:s.e.m.)。
【0119】
dCas9
VP64とdCas9
p300 Coreの両方による、標的部位でのH3K27acのこれらの増大とは対照的に、HS2調節されるHBEおよびHBGプロモーターでのH3K27acの強い濃縮は、dCas9
p300 Core処理でのみ観察された(
図4C〜D)。まとめると、これらの結果は、dCas9
p300 Coreが、gRNAに標的にされる遺伝子座での、またエンハンサーに標的にされる遠位プロモーターでのH3K27ac濃縮を特異的に触媒することを実証する。したがって、HS2でdCas9
p300 Coreによって確立されるアセチル化は、dCas9
p300 CoreによるがdCas9
VP64によらないHS2エンハンサーからのHBE、HBG、およびHBD遺伝子の遠位活性化によって示される通り、dCas9
VP64による転写開始前複合体成分の直接的動員とは別の方式で、エンハンサー活性を触媒することができる(
図2C、
図9A〜9E)。
【0120】
実施例6
dCas9
p300 Coreは、単一のgRNAと共に遺伝子を活性化する
dCas9−エフェクター融合タンパク質を使用する頑強なトランス活性化は、現在、複数のgRNA、複数のエフェクタードメイン、またはこれらの両方の適用に依存している。転写活性化は、単一のdCas9−エフェクター融合体と連携する、単一のgRNAを使用して単純化することができるであろう。これはまた、別の標的遺伝子の多重化、および系への追加的機能性の組み込みを容易にするであろう。単一のgRNAを伴うdCas9
p300 Coreのトランス活性化の可能性を、IL1RN、MYOD、およびOCT4プロモーターを標的にする4種のプールされたgRNAを伴うdCas9
p300 coreのトランス活性化の可能性と比較した(
図5A〜5B)。dCas9
p300 Coreと、試験される各プロモーターでの単一のgRNAとの同時導入時に、実質的な活性化が認められた。IL1RNおよびMYODプロモーターについては、プールされたgRNAと最も良い個々のgRNAとの間に有意差はなかった(
図5A〜5B;IL1RN gRNA「C」、P値 0.78;MYOD gRNA「D」、P値 0.26)。4種のgRNAが、dCas9
p300 Coreと共にプールされた場合、OCT4プロモーターの活性化は、相加効果を生じたが、最も強力な単一のgRNA(gRNA「D」)は、dCas9
VP64と4種すべてのプロモーターgRNAの等モルのプールとの同時導入時に認められる量に統計的に匹敵する量の遺伝子発現を誘発した(P値 0.73;
図5C)。dCas9
p300 Coreと比較して、dCas9
VP64および単一のgRNAでの遺伝子活性化のレベルは、実質的に低かった。また、dCas9
p300 Coreと対照的に、dCas9
VP64は、あらゆる場合において、gRNAとの組み合わせで相乗効果を示した(
図5A〜5C)。
【0121】
エンハンサー領域での、また、プロモーター領域での単一のgRNAを伴う、dCas9
p300 Coreのトランス活性化能力に基づくと、dCas9
p300 Coreが、単一の標的化gRNAを介してエンハンサーをトランス活性化できる可能性もあることが仮定される。MYOD(DRRおよびCE)、OCT4(PEおよびDE)、ならびにHS2エンハンサー領域を、等モル濃度のプールまたは単一のgRNAと共に試験した(
図5D〜5G)。両MYODエンハンサー領域については、dCas9
p300 Coreと単一のエンハンサーを標的にするgRNAとの同時導入は、dCas9
p300 Coreと4種のプールされたエンハンサーgRNAとを同時導入した細胞と同様のレベルまで遺伝子発現を活性化するのに十分であった(
図5D)。同様に、OCT4遺伝子発現も、6種のPEに標的にされるgRNAのプールを伴って局在化されたdCas9
p300 Coreと同様のレベルまで、単一のgRNAを伴うdCas9
p300 Core局在化を介して、PEから活性化された(
図5E)。DEからのOCT4(
図5E)の、およびHS2エンハンサーからのHBEおよびHBG遺伝子(
図5F〜5G)の、dCas9
p300 Core介在性の誘発は、単一のgRNAと比較して、プールされたgRNAを用いた場合に、発現の増大を示した。それでも、これらのエンハンサーで、いくつかの単一のgRNAについて、対照を超える標的遺伝子発現の活性化が存在した(
図5E〜5G)。
【0122】
実施例7
p300 HATドメインは、他のDNA結合タンパク質に移植可能である。
化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)由来のdCas9/gRNA系は、その頑強で、汎用性があり、かつ容易にプログラム可能な性質のおかげで、広く採用されている。しかし、他の種由来の直交性(orthogonal)dCas9系、TALE、およびジンクフィンガータンパク質を含めたいくつかの他のプログラム可能なDNA結合タンパク質も、様々な用途のために開発中であり、特定の用途にとって好ましいものであり得る。p300 Core HATドメインが、これらの他の系に移植可能であるかどうかを決定するために、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)由来のdCas9(Nm−dCas9)、4つの異なるTALEを標的にするIL1RNプロモーター、およびジンクフィンガータンパク質を標的にするICAM1との融合体を作製した(
図6)。Nm−dCas9
p300 CoreとHBEまたはHBGプロモーターを標的にする5種のNm−gRNAとの同時導入は、mock導入対照と比較して、有意な遺伝子導入をもたらした(P値 HBEおよびHBGについて、それぞれ0.038および0.0141)(
図6B〜6C)。HS2エンハンサーを標的にする5種のNm−gRNAを同時導入した場合、Nm−dCas9
p300 Coreはまた、mock導入対照と比較して、遠位HBEおよびHBG、グロビン遺伝子を有意に活性化した(それぞれp=0.0192およびp=0.0393)(
図6D〜6E)。dCas9
p300 Coreと同様に、Nm−dCas9
p300 Coreも、単一のgRNAを介してプロモーターおよびHS2エンハンサーからの遺伝子発現を活性化した。Nm−dCas9
VP64は、単一のまたは複数のgRNAと共に、プロモーター領域への、またはHS2エンハンサーへの局在化にかかわらず、HBEまたはHBGをトランス活性化する無視できる能力を呈した(
図6B〜6E)。IL1RNプロモーターを標的にする4種のTALE
p300 Core融合タンパク質(IL1RN TALE
p300 Core)の組み合わせに対する発現プラスミドの導入も、4種の対応するTALE
VP64融合体(IL1RN TALE
VP64)よりも低い程度ではあるが、下流遺伝子発現を活性化した(
図6F〜6G)。しかし、単一のp300 Coreエフェクターは、IL1RN TALEと融合された場合、単一のVP64ドメインよりもはるかに強力であった。興味深いことに、いずれかの単一の結合部位に誘導されるdCas9
p300 Coreは、単一のまたはプールされたIL1RN TALEエフェクターに匹敵するIL1RN発現をもたらし、直接的比較は、dCas9が、より大きなp300 Core 融合ドメインと融合された場合に、TALEよりも頑強な活性化因子であり得ることを示唆した(
図11A〜11C)。p300 Coreエフェクタードメインは、追加的なgRNAまたはTALEとの相乗作用も(
図5、6、9、および11参照)、VP64との組み合わせでの相乗作用も(
図13A〜13B参照)呈さなかった。dCas9
p300 Core標的遺伝子座の基本的クロマチン状況を、
図14A〜14Eに示す。
【0123】
ICAM1プロモーターを標的にするZF
p300 Core融合体(ICAM1 ZF
p300 Core)も、対照と比較して、かつ、ZF
VP64(ICAM1 ZF
VP64)と同様のレベルで、その標的遺伝子を活性化した(
図6H−6I)。複数の標的ドメインを有するp300 Core融合体の汎用性は、これが、標的化されたアセチル化および遺伝子調節のための確固たる手法であるという証拠である。ウエスタンブロットによって決定された通り、種々のp300 core融合タンパク質が十分に発現されたが(
図12A〜12B)、異なる融合タンパク質間のp300 Core活性の差は、結合親和性またはタンパク質フォールディングに起因する可能性がある。
【0124】
実施例8
ミオカルディン(Myocardin)
MYOCD遺伝子の−2000bpから+250bp(TSSに対する座標)領域にわたる、36種のgRNAを設計した(表7)。
【0125】
【表7】
【0126】
これらのgRNAを、hU6プロモーターとBbsI制限酵素部位とを含有するspCas9 gRNA発現ベクターにクローン化した。これらのgRNAを、HEK293T細胞に、dCas9
p300 Coreと共に一過的に同時導入した。ミオカルディン(Myocardin)に対する得られたmRNA産生を、導入の3日後に回収した試料において分析した(
図17)。Cr32、Cr13、Cr30、Cr28、Cr31、およびCr34とdCas9
p300 Coreとの組み合わせを分析した(表8;
図18)。
【0127】
【表8】
【0128】
実施例9
Pax7
PAX7遺伝子を取り囲む領域にわたるgRNAを設計した(表9)。これらのgRNAを、hU6プロモーターとBbsI制限酵素部位とを含有するspCas9 gRNA発現ベクターにクローン化した。これらのgRNAを、HEK293T細胞に、dCas9
p300 CoreまたはdCas9
VP64と共に一過的に同時導入した。Pax7に対する得られたmRNA産生を、導入の3日後に回収した試料において分析した(
図19)。さらなる実験においてgRNA19(「g19」)を使用し、これが、DNase高感受性領域(DHS)に局在することが示された(
図20)。
【0129】
【表9】
【0130】
実施例10
FGF1
FGF1A、FGF1B、およびFGF1C遺伝子について、gRNAを設計した(表10および11)。25nMのこれらのgRNAを、HEK293T細胞に、dCas9
p300 CoreまたはdCas9
VP64と共に一過的に同時導入した。FGF1発現に対する得られたmRNA産生を決定した(
図21〜23)。
図23では、レンチウイルスベクターを導入した安定な細胞株の数は、n=1であるFGF1Aを除いて、2であった。
【0131】
【表10】
【0132】
【表11】
【0133】
前述の詳細な説明および付随する実施例は、単に実例に過ぎず、本発明の範囲への制限と受け取るべきではなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲およびその等価物によってのみ定義されることが理解されよう。
【0134】
開示された実施態様に対する様々な変更および改変は、当業者には明らかであろう。限定はされないが、本発明の化学構造、置換基、誘導体、中間体、合成物、組成物、製剤、または使用の方法に関するものを含めた、こうした変更および改変を、その趣旨および範囲から逸脱せずに行うことができる。
【0135】
完全性の理由から、本発明の種々の態様を、次の番号付けした条項で提示する:
【0136】
第1項.第1のポリペプチドドメインが、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat)関連(Cas)タンパク質を含み、かつ第2のポリペプチドドメインが、ヒストンアセチル化酵素活性を有するペプチドを含む、2つの異種のポリペプチドドメインを含む融合タンパク質。
【0137】
第2項.標的遺伝子の転写を活性化する、第1項に記載の融合タンパク質。
【0138】
第3項.Casタンパク質が、Cas9を含む、第1項または2項に記載の融合タンパク質。
【0139】
第4項.Cas9が、Cas9のヌクレアーゼ活性をノックアウトする少なくとも1つのアミノ酸変異を含む、第3項に記載の融合タンパク質。
【0140】
第5項.Casタンパク質が、配列番号1または配列番号10を含む、第4項に記載の融合タンパク質。
【0141】
第6項.第2のポリペプチドドメインが、ヒストンアセチル化酵素エフェクタードメインを含む、第1〜5項のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【0142】
第7項.ヒストンアセチル化酵素エフェクタードメインが、p300ヒストンアセチル化酵素エフェクタードメインである、第6項に記載の融合タンパク質。
【0143】
第8項.第2のポリペプチドドメインが、配列番号2または配列番号3を含む、第1〜7項のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【0144】
第9項.第1のポリペプチドドメインが、配列番号1または配列番号10を含み、かつ第2のポリペプチドドメインが、配列番号2または配列番号3を含む、第1〜8項のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【0145】
第10項.第1のポリペプチドドメインが、配列番号1を含み、かつ第2のポリペプチドドメインが、配列番号3を含む、または、第1のポリペプチドドメインが、配列番号10を含み、かつ第2のポリペプチドドメインが、配列番号3を含む、第1〜9項のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【0146】
第11項.第1のポリペプチドドメインを第2のポリペプチドドメインと連結させるリンカーをさらに含む、第1〜10項のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【0147】
第12項.配列番号140、141、または149のアミノ酸配列を含む、第1〜11項のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【0148】
第13項.第1〜12項のいずれか一項に記載の融合タンパク質と、少なくとも1つのガイドRNA(gRNA)とを含む、DNAターゲティング系。
【0149】
第14項.少なくとも1つのgRNAが、プロトスペーサー隣接モチーフが後続する標的DNA配列の12〜22塩基対の相補的ポリヌクレオチド配列を含む、第13項に記載のDNAターゲティング系。
【0150】
第15項.少なくとも1つのgRNAが、標的領域を標的にし、標的領域が、標的エンハンサー、標的調節エレメント、標的遺伝子のシス調節領域、または標的遺伝子のトランス調節領域を含む、第13または14項に記載のDNAターゲティング系。
【0151】
第16項.標的領域が、標的遺伝子の遠位または近位のシス調節領域である、第15項に記載のDNAターゲティング系。
【0152】
第17項.標的領域が、標的遺伝子のエンハンサー領域またはプロモーター領域である、第15または16項に記載のDNAターゲティング系。
【0153】
第18項.標的遺伝子が、内在性遺伝子または導入遺伝子である、第15〜17項のいずれか一項に記載のDNAターゲティング系。
【0154】
第19項.標的領域が、標的エンハンサーまたは標的調節エレメントを含む、第15項に記載のDNAターゲティング系。
【0155】
第20項.標的エンハンサーまたは標的調節エレメントが、2つ以上の標的遺伝子の遺伝子発現を制御する、第19項に記載のDNAターゲティング系。
【0156】
第21項.DNAターゲティング系が、1から10個の異なるgRNAを含む、第15〜20項のいずれか一項に記載のDNAターゲティング系。
【0157】
第22項.DNAターゲティング系が、1個のgRNAを含む、第15〜21項のいずれか一項に記載のDNAターゲティング系。
【0158】
第23項.標的領域が、標的遺伝子と同じ染色体上に位置する、第15〜22項のいずれか一項に記載のDNAターゲティング系。
【0159】
第24項.標的領域が、標的遺伝子の転写開始点の約1塩基対から約100,000塩基対上流に位置する、第23項に記載のDNAターゲティング系。
【0160】
第25項.標的領域が、標的遺伝子の転写開始点の1000塩基対から約50,000塩基対上流に位置する、第24項に記載のDNAターゲティング系。
【0161】
第26項.標的領域が、標的遺伝子と異なる染色体上に位置する、第15〜22項のいずれか一項に記載のDNAターゲティング系。
【0162】
第27項.異なるgRNAが、異なる標的領域に結合する、第15〜28項のいずれか一項に記載のDNAターゲティング系。
【0163】
第28項.異なるgRNAが、異なる標的遺伝子の標的領域に結合する、第27項に記載のDNAターゲティング系。
【0164】
第29項.2つ以上の標的遺伝子の発現が、活性化される、第27項に記載のDNAターゲティング系。
【0165】
第30項.標的遺伝子が、IL1RN、MYOD1、OCT4、HBE、HBG、HBD、HBB、MYOCD、PAX7、FGF1A、FGF1B、およびFGF1Cからなる群から選択される、第15〜29項のいずれか一項に記載のDNAターゲティング系。
【0166】
第31項.標的領域が、ヒトβ−グロビン遺伝子座のHS2エンハンサー、MYOD遺伝子の遠位調節領域(DRR)、MYOD遺伝子のコアエンハンサー(CE)、OCT4遺伝子の近位(PE)エンハンサー領域、またはOCT4遺伝子の遠位(DE)エンハンサー領域のうちの少なくとも1つである、第30項に記載のDNAターゲティング系。
【0167】
第32項.gRNAが、配列番号23〜73、188〜223、または224〜254のうちの少なくとも1つを含む、第13〜31項のいずれか一項に記載のDNAターゲティング系。
【0168】
第33項.第1〜12項のいずれか一項に記載の融合タンパク質または第13〜32項のいずれか一項に記載のDNAターゲティング系をコードする単離されたポリヌクレオチド。
【0169】
第34項.第33項に記載の単離されたポリヌクレオチドを含むベクター。
【0170】
第35項.第33項に記載の単離されたポリヌクレオチドまたは第34項のベクターを含む細胞。
【0171】
第36項.第1〜12項のいずれか一項に記載の融合タンパク質、第13〜32項に記載のDNAターゲティング系、第33項に記載の単離されたポリヌクレオチド、第34項に記載のベクター、または第35項に記載の細胞を含むキット。
【0172】
第37項.細胞における標的遺伝子の遺伝子発現を活性化する方法であって、細胞を、第1〜12項のいずれか一項に記載の融合タンパク質、第13〜32項に記載のDNAターゲティング系、第33項に記載の単離されたポリヌクレオチド、または第34項に記載のベクターと接触させることを含む方法。
【0173】
第38項.細胞における標的遺伝子の遺伝子発現を活性化する方法であって、細胞を、DNAターゲティング系をコードするポリヌクレオチドと接触させることを含み、ここで、DNAターゲティング系は、第1〜12項のいずれか一項に記載の融合タンパク質と、少なくとも1つのガイドRNA(gRNA)とを含む、方法。
【0174】
第39項.少なくとも1つのgRNAが、プロトスペーサー隣接モチーフが後続する標的DNA配列の12〜22塩基対の相補的ポリヌクレオチド配列を含む、第38項の方法。
【0175】
第40項.少なくとも1つのgRNAが、標的領域を標的にし、標的領域が、標的遺伝子のシス調節領域またはトランス調節領域である、第38または39項に記載の方法。
【0176】
第41項.標的領域が、標的遺伝子の遠位または近位のシス調節領域である、第40項に記載の方法。
【0177】
第42項.標的領域が、標的遺伝子のエンハンサー領域またはプロモーター領域である、第40または41項に記載の方法。
【0178】
第43項.標的遺伝子が、内在性遺伝子または導入遺伝子である、第40〜42項に記載の方法。
【0179】
第44項.DNAターゲティング系が、1から10個の異なるgRNAを含む、第43項に記載の方法。
【0180】
第45項.DNAターゲティング系が、1個のgRNAを含む、第43項に記載の方法。
【0181】
第46項.標的領域が、標的遺伝子と同じ染色体上に位置する、第40〜45項に記載の方法。
【0182】
第47項.標的領域が、標的遺伝子の転写開始点の約1塩基対から約100,000塩基対上流に位置する、第46項に記載の方法。
【0183】
第48項.標的領域が、標的遺伝子の転写開始点の1000塩基対から約50,000塩基対上流に位置する、第46項に記載の方法。
【0184】
第49項.標的領域が、標的遺伝子と異なる染色体上に位置する、第40〜45項に記載の方法。
【0185】
第50項.異なるgRNAが、異なる標的領域に結合する、第40〜45項に記載の方法。
【0186】
第51項.異なるgRNAが、異なる標的遺伝子の標的領域に結合する、第50項に記載の方法。
【0187】
第52項.2つ以上の標的遺伝子の発現が、活性化される、第51項に記載の方法。
【0188】
第53項.標的遺伝子が、IL1RN、MYOD1、OCT4、HBE、HBG、HBD、HBB、MYOCD、PAX7、FGF1A、FGF1B、およびFGF1Cからなる群から選択される、第40〜52項に記載の方法。
【0189】
第54項.標的領域が、ヒトβ−グロビン遺伝子座のHS2エンハンサー、MYOD遺伝子の遠位調節領域(DRR)、MYOD遺伝子のコアエンハンサー(CE)、OCT4遺伝子の近位(PE)エンハンサー領域、またはOCT4遺伝子の遠位(DE)エンハンサー領域のうちの少なくとも1つである、第53項に記載の方法。
【0190】
第55項.gRNAが、配列番号23〜73、188〜223、または224〜254のうちの少なくとも1つを含む、第37〜54項に記載の方法。
【0191】
第56項.DNAターゲティング系が、ウイルス的または非ウイルス的に細胞に送達される、第37〜55項のいずれか一項に記載の方法。
【0192】
第57項.細胞が、哺乳類細胞である、第37〜56項のいずれか一項に記載の方法。
【0193】
付属書類−配列
【0194】
化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)Cas 9(D10A、H849Aを伴う)(配列番号1)
【0195】
ヒトp300(L553M変異を伴う)(配列番号2)
【0196】
p300 Coreエフェクター(配列番号2のaa 1048〜1664)(配列番号3)
【0197】
p300 Coreエフェクター(D1399Y変異を伴う配列番号2のaa 1048〜1664)(配列番号4)
【0198】
p300 Coreエフェクター(1645/1646 RR/EE変異を伴う配列番号2のaa 1048〜1664)(配列番号5)
【0199】
p300 Coreエフェクター(C1204R変異を伴う配列番号2のaa 1048〜1664)(配列番号6)
【0200】
p300 Coreエフェクター(Y1467F変異を伴う配列番号2のaa 1048〜1664)(配列番号7)
【0201】
p300 Coreエフェクター(1396/1397 SY/WW変異を伴う配列番号2のaa 1048−1664)(配列番号8)
【0202】
p300 Coreエフェクター(H1415A、E1423A、Y1424A、L1428S、Y1430A、およびH1434A変異を伴う配列番号2のaa 1048〜1664)(配列番号9)
【0203】
髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)Cas9(D16A、D587A、H588A、およびN611A変異を伴う)(配列番号10)
【0204】
3X「Flag」エピトープ(配列番号11)
DYKDHDGDYKDHDIDYKDDDDK
【0205】
核局在化配列(配列番号12)
PKKKRKVG
【0206】
HAエピトープ(配列番号13)
YPYDVPDYAS
【0207】
VP64エフェクター(配列番号14)
DALDDFDLDMLGSDALDDFDLDMLGSDALDDFDLDMLGSDALDDFDLDML