(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0010】
本発明は、式(I)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0012】
ただし、XはOまたはN(R
1)から選択され;
R
1は、以下の基から選択されるものであり、即ち、1、2または3個のRで任意に置換されていてもよい:C
1-6アルキル、C
1-6ヘテロアルキル、C
3-6シクロアルキル、3〜6員ヘテロシクロアルキル、5〜6員アリールまたはヘテロアリール;
Rは、F、Cl、Br、I、CN、OH、NH
2、COOHから選択されるものであり、または以下の基から選択されるものであり、即ち、1、2または3個のR'で任意に置換されていてもよい:C
1-6アルキル、C
1-6ヘテロアルキル、C
3-6シクロアルキル、3〜6員ヘテロシクロアルキル、フェニル、5〜6員ヘテロアリール;
R'はF、Cl、Br、I、OH、CN、NH
2、COOH、Me、Et、CF
3、CHF
2、CH
2F、NHCH
3、N(CH
3)
2からなる群から選択され;
「ヘテロ」との用語は、ヘテロ原子またはヘテロ原子団を指し、-C(=O)N(R)-、-N(R)-、-C(=NR)-、-S(=O)
2N(R)-、-S(=O)N(R)-、-O-、-S-、=O、=S、-O-N=、-C(=O)O-、-C(=O)-、-C(=S)-、-S(=O)-、-S(=O)
2-、-N(R)C(=O)N(R)-から選択され;
前記場合のいずれにおいても、ヘテロ原子またはヘテロ原子団の数はそれぞれに、1、2または3から独立して選択される。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態において、前記RはF、Cl、Br、I、CN、OH、NH
2、COOH、Me、Et、CF
3、CHF
2、CH
2F、NHCH
3、N(CH
3)
2とメトキシから選択されるものである。
本発明のいくつかの実施態様において、前記XはOから選択されるものである。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態において、前記Rは、F、Cl、Br、I、CN、OH、NH
2、COOH、Me、Et、CF
3、CHF
2、CH
2F、NHCH
3、N(CH
3)
2とメトキシから選択されるものであり、その他の変数は上述で定義した通りである。
【0015】
本発明のいくつかの実施態様において、前記XはOから選択され、その他の変数は上述で定義した通りである。
本発明のさらに他の実施態様は、前記変数を任意に組み合わせて得られるものである。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態において、前記化合物またはその薬学的に許容される塩は、
【0018】
から選択されるものである。
本発明はまた、治療有効量の前記請求項に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0019】
本発明はまた、細菌感染症を治療するためのβ-ラクタマーゼ阻害剤の製造における前記化合物またはその薬学的に許容される塩または前記医薬組成物の使用を提供する。
技術効果
本発明化合物の母核は、ジアザビシクロに基づいて新規オキシグアニジノ基(oxyguanidino)側鎖を導入したものである。先行技術と比較して、この基はより多くの水素結合部位を有し、したがって水溶性などより良好な物理化学的性質を有する。一方、オキシグアニジノ基の導入は、pKaを8.83にさせ、その値がアミノ基のpKa(例えば、リジンの末端側鎖のアミノ基のpKa=8.95)に近いが、グアニジノ基のpKaよりはるかに小さい(例えば、アルギニンのpKa=12.48)ので、化合物は良好な化学的性質の安定性を維持することができる。インビトロおよびインビボにおける活性実験において、試験データに基づき、オキシグアニジノ基の導入により、本発明の化合物が多種のβ-ラクタマーゼに対しても阻害し、抑菌活性が顕著に高まることを示した。本発明の化合物は、ますます深刻な薬剤耐性感染症と戦うために新しい臨床薬物が緊急に必要とされている現状において、この問題を解決するための有望かつ開発可能な薬物であり、臨床においてより良好な臨床効果を示す。
【0020】
定義と説明
別に説明しない限り、本明細書で使用される以下の用語およびフレーズは、以下の意味を有する。特定の用語またはフレーズは、特定の定義がない限り、定義されていないか、または不明瞭であると見なされるべきではなく、通常の意味で理解されるべきである。本明細書に商品名が記載されている場合、その商品またはその有効成分を表すことを意図する。
【0021】
ここで使用される「薬学的に許容される」という用語は、それらの化合物、材料、組成物および/または剤型に対する言うことであり、信用できる医学的判断の範囲内において、過剰な毒性、刺激性、アレルギー反応または他の問題または合併症が起きずに、ヒトおよび動物の組織と接触して使用するのに適しており、妥当な利益/リスク比に見合うものを意味する。
【0022】
用語「薬学的に許容される塩」という用語は、本発明で見出される特定の置換基を有する化合物および比較的非毒性の酸またはアルカリから調製された本発明の化合物の塩を指す。本発明の化合物に比較的酸性の官能基が含まれる場合には、純粋な溶液または適当な不活性溶媒中で、十分な量のアルカリをこのような化合物の中性形態と接触させることにより塩基付加塩を得ることができる。薬学的に許容される塩基付加塩には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アンモニアまたはマグネシウム塩または類似な塩が含まれる。本発明の化合物に比較的アルカリ性の官能基が含まれる場合、純粋な溶液または適切な不活性溶媒中で、十分な量の酸を、このような化合物の中性形態と接触させることにより酸付加塩を得ることができる。薬学的に許容される酸付加塩の例には、例えば塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、重炭酸イオン、リン酸、リン酸一水素イオン、リン酸二水素イオン、硫酸、硫酸水素イオン、ヨウ化水素酸、亜リン酸などを含む無機酸の塩;及び、例えば酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などの類似の酸と、アルギニンなどのアミノ酸とグルクロン酸などを含む有機酸の塩(Berge他、「Pharmaceutical Salts」、Journal of Pharmaceutical Science 66:1-19(1977)を参照)を含む。本発明のある特定の化合物は、アルカリ性および酸性官能基の両方を含むため、塩基付加塩または酸付加塩のいずれかに変換することができる。
【0023】
好ましくは、塩を常法によりアルカリまたは酸と接触させ、親化合物を分離することによって、化合物の中性形態を再生する。化合物の親形態は、極性溶媒への溶解度の差などの特定の物理的特性で、その様々な塩の形態と異なる。
【0024】
本明細書中で使用される「薬学的に許容される塩」は、親化合物が酸またはアルカリとの塩形成によって修飾される本発明の化合物の誘導体に属する。薬学的に許容される塩の例としては、アミンのような塩基がある無機酸塩または有機酸塩、カルボン酸のような酸基があるアルカリ金属または有機塩などが挙げられるが、これらに限定されない。薬学的に許容される塩には、通常の非毒性塩または親化合物の第四級アンモニウム塩、例えば非毒性無機酸または有機酸から形成される塩が含まれる。通常の非毒性塩としては、無機酸または有機酸から誘導される塩を含むが、これらに限定されない。前記無機酸または有機酸は2-アセトキシ安息香酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、酢酸、アスコルビン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、重炭酸イオン、炭酸、クエン酸、エデト酸、エタンジスルホン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトース、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸塩、ヒドロキシ、ヒドロキシナフタレン、イセチオン酸、乳酸、ラクトース、ドデシルスルホン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、硝酸、シュウ酸、パモ酸、パントテン酸、フェニル酢酸、リン酸、ポリガラクトースアルデヒド、プロピオン酸、サリチル酸、ステアリン酸、スバセチン酸、コハク酸、スルファミン酸、p-アミノベンゼンスルホン酸、硫酸、タンニン、酒石酸およびp-トルエンスルホン酸。
【0025】
本発明の薬学的に許容される塩は、酸基または塩基を含む親化合物から通常の化学的方法によって合成することができる。一般に、このような塩は、水または有機溶媒またはこれらの混合物中で、化学量論量の適切な塩基または酸と、遊離酸またはアルカリ形態にあるこれらの化合物を反応させることによって調製される。一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノールまたはアセトニトリルなどの非水性媒体が好ましい。
【0026】
塩の形態に加えて、本明細書で提供される化合物は、さらにプロドラッグの形態で存在する。本明細書に記載の化合物のプロドラッグは、生理学的条件下で化学変化を容易に発生し、本発明の化合物に変換する。さらに、プロドラッグは、体内環境で化学的または生化学的方法によって本発明の化合物に変換することができる。
【0027】
本発明のある化合物は、非溶媒和形態および溶媒和形態(水和形態を含む)で存在し得る。一般に、溶媒和形態は、非溶媒和形態と同等であり、本発明の範囲内に含まれる。
本発明のある化合物は、不斉炭素原子(光学中心)または二重結合を有していてもよい。ラセミ体、ジアステレオマー、幾何異性体およびそれぞれの異性体は、本発明の範囲内に含まれる。
【0028】
別に説明しない限り、別に説明しない限り、くさび形の実線キー(
【0032】
)で、ステレオセンターの絶対的な配置を示し、波線(
【0042】
)でステレオセンターの相対的な配置を表す。本明細書に記載の化合物がオレフィン性二重結合または他の幾何的非対称中心を含む場合、特に断らない限り、それらはEおよびZ幾何異性体を含む。同様に、全ての互変異性体は、本発明の範囲内に含まれる。
【0043】
本発明の化合物は、特定の幾何学的形態または立体異性形態で存在し得る。シス及びトランス異性体、(-)-及び(+)-エナンチオマー、(R)-及び(S)-エナンチオマー、ジアステレオマー、(D)-異性体、(L)-異性体、およびそのラセミ混合物、ならびに例えばエナンチオマーまたはジアステレオマーに富む混合物のような他の混合物が含まれる本発明で想定されるすべての化合物は、本発明の範囲内にある。他の不斉炭素原子がアルキル基などのような置換基に存在してもよい。これらの全ての異性体、及びそれらの混合物は、本発明の範囲内に含まれる。
【0044】
光学活性な(R)-および(S)-異性体ならびにDおよびL異性体は、キラル合成またはキラル試薬または他の従来の技術によって調製することができる。本発明のある化合物の一種のエナンチオマーが所望される場合、それは、不斉合成によって、または不斉補助剤を具備する誘導体化することによって調製することができ、それにおいて、得られたジアステレオマーの混合物を分離し、補助基を切断して純粋な所望のエナンチオマーを得る。あるいは、分子が塩基性官能基(例えば、アミノ基)または酸性官能基(例えばカルボキシル基)を含む場合、適切な光学活性酸またはアルカリとジアステレオマー塩を形成し、続いて当該分野では周知の通常方法でジアステレオマーの分割を行い、純粋なエナンチオマーを回収する。さらに、エナンチオマーおよびジアステレオマーの分離は、一般に、キラル固定相を用いたクロマトグラフィーの使用によって完成するが、任意に化学的誘導体化(例えば、アミンからのカルバメートの形成)と組み合わせをしてもよい。
【0045】
本発明の化合物は、化合物を構成する原子の1つ以上に不自然な割合の原子同位体を含むことができる。例えば、ヒドラジン(
3H)、ヨウ素-125(
125I)またはC-14(
14C)などの放射性同位元素で化合物を標識することができる。放射性に関わらず、本発明の化合物の全ての同位体組成変化は、本発明の範囲内に含まれる。
【0046】
「薬学的に許容される担体」という用語は、有効量の本発明の活性物質を送達することができ、活性物質の生物学的活性を妨げず、ホストまたは患者に対して毒・副作用を有さないあらゆる製剤または担体媒体を指す。代表的な担体として、水、油、野菜およびミネラル、クリーム基剤、ローション基剤、軟膏基剤などを含む。これらの基剤は、懸濁剤、粘着付与剤、経皮増強剤などを含む。それらの製剤は、化粧品または局所医薬品分野の当業者に周知である。担体に関するさらなる情報については、Remington:The Science and Practice of Pharmacy, 21st Ed., Lippincott, Williams & Wilkins(2005)を参照することができ、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0047】
「賦形剤」という用語は、通常に、有効な医薬組成物を調整するのに必要とされる担体、希釈剤および/または媒体を指す。
薬学的または薬理学的に活性な薬剤に関する「有効量」または「治療有効量」という用語は、毒性がならず所望の効果を達成するには薬物または薬剤の十分な量を指す。本発明の経口剤形について、組成物における一種の活性物質の「有効量」は、組成物における別の活性物質と組み合わせて使用する場合に所望の効果を達成するために必要な量を指す。有効量の確定は、人によって異なり、レシピエントの年齢および一般的な状態に依存し、また特定の活性物質に応じ、具体的な場合に、適切な有効量は、当業者によって通常実験で確定することができる。
【0048】
「活性成分」、「治療剤」、「活性物質」または「活性剤」という用語は、標的障害、疾患または病症の治療に有効な化学実体を指す。
「任意の」または「任意に」は、その後に記載される事象または状態が発生する可能性があるが、必ずしも起こらないことを意味し、その記載は、事象または状態が生じる例および事象または状態が生じない例を含むことを意味する。
【0049】
「置換された」という用語は、特定の原子の原子価が正常であって置換された化合物が安定である限り、特定の原子上のいずれの1つ以上の水素原子が重水素および水素の変種を含む置換基で置き換えられていることを意味する。置換基がオキシ(すなわち、=O)である場合は、2つの水素原子が置換されていることを意味する。オキシ置換はアリール基上には起こらない。「任意に置換された」という用語は、置換されていてもされていなくてもよいことを意味し、別に規定しない限り、化学上に実現できれば、置換基の種類および数は限定されない。
【0050】
変数のいずれか一つ(例えば、R)が化合物の組成または構造中に2回以上現れる場合、それぞれの場合にその定義は独立している。したがって、例えば、基が0〜2個のRで置換されている場合、その基は、多くとも2個のRで任意に置換されていてもよく、且つ、それぞれの場合にRが独立する選択肢を有する。さらに、置換基および/またはその変異体の組み合わせは、そのような組合せが安定な化合物をもたらす場合にのみ許容される。
【0051】
結合基の数が0である場合、例えば、-(CRR)
0-の場合、当該結合基が単結合であることを示す。
変数の1つが単結合から選択される場合、それが結合する2つの基が直接結合していることを意味する。例えば、A-L-Zにおいて、Lが単結合を表す場合、その構造は実際にはA-Zである。
【0052】
置換基が空きである場合、置換基が存在しないことを意味する。例えば、A-Xにおいて、Xが空きである場合、その構造は実際にAである。一つの置換基が一つの環の一つ以上の原子にクロスコネクトする場合、当該置換基は当該環の原子のいずれに結合することができる。例えば、構造単位
【0054】
は、置換基Rがシクロヘキシルまたはシクロヘキサジエン上のいずれか1つの位置で置換され得ることを示す。列挙された置換基に、当該置換基がどの原子を介して置換された基に結合しているかを明示していない場合、そのような置換基はその原子のいずれかを介して結合していてもよく、例えば、置換基としてのピリジル基がピリジン環のいずれか一つの炭素原子を介して置換された基に結合していてもよく。列挙された連結基がその結合方向を示さない場合、その連結方向は任意である。例えば、
【0056】
において連結基Lは-M-W-であり、この時、-M-W-は左から右への読み順と同じ方向で、リングAとリングBを連結して、
【0058】
を形成してもよく、左から右への読み順と反対する方向で、リングAとリングBを連結して、
【0060】
を形成してもよい。前記連結基、置換基および/またはその変異体の組み合わせは、そのような組み合わせが安定な化合物をもたらす場合にのみ許容される。
別に規定しない限り、「ヘテロ」という用語は、ヘテロ原子またはヘテロ原子団(即ち、ヘテロ原子を含む原子団)を指し、炭素(C)および水素(H)以外の原子およびこれらのヘテロ原子を含有する原子団を含み、例えば、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、-O-、-S-、=O、=S、-C(=O)O-、-C(=O)-、-C(=S)-、-S(=O)、-S(=O)
2-、及び、任意に置換された-C(=O)N(H)-、-N(H)-、-C(=NH)-、-S(=O)
2N(H)-または-S(=O)N(H)-が含まれる。
【0061】
別に規定しない限り、「環」は、置換または非置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルケニル、シクロアルキニル、ヘテロシクロアルキニル、アリールまたはヘテロアリールを意味する。いわゆる環には、単環、環集合、スピロ環、縮合環または架橋環がある。環上の原子数は、通常、環員数として定義され、例えば、「5〜7員環」とは、5〜7個の原子が環状配置されていることを意味する。別に規定しない限り、当該環は任意に1〜3個のヘテロ原子を含む。したがって、「5〜7員環」には、例えば、フェニル基、ピリジル基、およびピペリジニル基が含まれ、一方、「5〜7員ヘテロシクロアルキル環」には、ピリジル基およびピペリジニル基が含まれるが、フェニルは含まれない。「環」という用語は、さらに少なくとも1つの環を含有する環系を含み、ここで、それぞれの環は、前記定義に独立的に適合する。
【0062】
別に規定しない限り、「複素環」、「複素環基」または「ヘテロシクロ」という用語は、飽和、部分不飽和または不飽和(芳香族)であってもよい、ヘテロ原子またはヘテロ原子団を含む安定な単環式、二環式または三環式環を意味し、それらは炭素原子と、N、OおよびSから独立して選択される1、2、3または4個の環ヘテロ原子とを含み、前記複素環のいずれかは一つのフェニル環に縮合して二環式環を形成してもよい。窒素および硫黄ヘテロ原子は、任意に酸化されていてもよい(すなわち、NOおよびS(O)p、pは1または2である)。窒素原子は、置換されても置換されなくてもよい(すなわち、NまたはNR、ここでRは、Hまたは本明細書で既に定義した他の置換基である)。当該複素環は、いずれのヘテロ原子または炭素原子のペンダント基に結合して安定な構造を形成することができる。得られる化合物が安定である場合、本明細書に記載の複素環は、炭素または窒素部位で置換されることができる。複素環中の窒素原子は、任意に四級化されてもよい。好ましい実施形態は、複素環中のSおよびO原子の総数が1を超える場合、これらのヘテロ原子が互いに隣接しないことである。別の好ましい実施形態は、複素環中のSおよびO原子の総数が1を超えないことである。本明細書で使用する「芳香族複素環基」または「ヘテロアリール」という用語は、安定な5、6または7員単環式または二環式複素環基の芳香環或いは7、8、9または10員二環式複素環基の芳香環を意味し、これは、炭素原子およびN、OおよびSから独立して選択される1、2、3または4個の環ヘテロ原子を含む。窒素原子は、置換されても置換されなくてもよい(すなわち、NまたはNR、ここでRは、Hまたは本明細書で既に定義した他の置換基である)。窒素および硫黄ヘテロ原子は、任意に酸化されていてもよい(すなわち、NOおよびS(O)p、pは1または2である)。芳香族複素環上のSおよびO原子の総数が1を超えないことは留意すべきである。架橋環も複素環の定義に含まれる。1つ以上の原子(すなわち、C、O、NまたはS)が隣接しない2つの炭素原子または窒素原子に結合すると、架橋環が形成される。好ましい架橋環には、1個の炭素原子、2個の炭素原子、1個の窒素原子、2個の窒素原子、および1個の炭素-窒素基が含まれるが、これらに限定されない。一つのブリッジが常に単一の環を3つの環に変換することは留意すべきである。架橋環において、環上の置換基もブリッジに存在することができる。
【0063】
複素環式化合物の例には、アクリジニル、アゾシニル(azocinyl)、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾメルカプトフリル、ベンゾメルカプトフェニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサゾリニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾテトラゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾイミダゾリル、カルバゾリル、4aH-カルバゾリル、カルボリニル、クロマニル、クロメン、シンノリニル、デカヒドロキノリニル、2H、6H-1,5,2-ジチアジニル、ジヒドロフロ[2,3-b]テトラヒドロフラニル、フラニル、フラザニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、1H-インダゾリル、インド-ルアルケニル(indolealkenyl)、ジヒドロインドリル、インドリジニル、インドリル、3H-インドリル、イソベンゾフラニル、イソインドリル、イソジヒドロインドリル、イソキノリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、メチレンジオキシフェニル、モルホリニル、ナフチリジニル、オクタヒドロイソキノリル、オキサジアゾリル、1,2,3-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、1,2,5-オキサジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリル、インドキシル、ピリミジニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナジン、フェノチアジン、ベンゾキサンチル、フェノキサジニル、フタラジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピペリドニル、4-ピペリドニル、ピペロニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドオキサゾリル、ピリドイミダゾール、ピリドチアゾリル、ピリジニル、ピロリジニル、ピロリニル、2H-ピロリル、ピロリル、キナゾリニル、キノリル、4H-キノリジニル、キノキサリニル、キヌクリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロイソキノリル、テトラヒドロキノリル、テトラゾリル、 6H-1,2,5-チアジアジニル、1,2,3-チアジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、1,2,5-チアジアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、チアントレニル、チアゾリル、イソチアゾリルチエニル、チエノオキサゾリル、チエノチアゾリル、チエノイミダゾリル、チエニル、トリアジニル、1H-1,2,3-トリアゾリル、2H-1,2,3-トリアゾリル、1H-1,2,4-トリアゾリル、4H-1,2,4-トリアゾリルおよびキサンテニルが含まれるが、これらに限らなく、縮合環化合物およびスピロ化合物も含まれる。
【0064】
別に規定しない限り、用語「炭化水素基」またはその下位概念(アルキル、アルケニル、アルキニル、フェニルなど)は、それ自体または別の置換基の一部として直鎖状、分枝状または環状炭化水素原子団またはそれらの組み合わせを意味し、完全飽和(例えば、アルキル)、一価または多価不飽和(例えば、アルケニル、アルキニル、アリールなど)であってもよく、一置換または多置換されていてもよく、一価(例えば、メチル)、二価(例えば、メチレン)または多価(例えば、メチン)であってもよく、二価または多価原子団を含んでもよく、特定の数の炭素原子(例えば、C1〜C12が1乃至12個炭素原子を表し、C1〜C12は、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11およびC12から選択され、C3〜12は、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11およびC12から選択される)を有する。「炭化水素基」として、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基が含まれるが、これらに限らない。前記脂肪族炭化水素基として、鎖状と環状であるものが含まれ、具体的にはアルキル、アルケニル、アルキニル基が含まれるが、これらに限らない。前記芳香族炭化水素基として、6〜12員の芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、ナフタレン等)が含まれるが、これらに限らない、ある実施例において、「アルキル」という用語は、完全飽和、一価または多価不飽和であってもよく、二価および多価原子団を含んでもよい、直鎖または分枝鎖の原子またはそれらの組み合わせをいう。飽和炭化水素基の例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、イソブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル基、シクロプロピルメチル基、およびn-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチルなどの原子団の同族体または異性体が含まれるが、これらに限定されない。不飽和炭化水素基は、1つ以上の二重または三重結合を有し、例として、例えば、ビニル基、2-プロペニル基、ブテニル基、クロチル基、2-イソペンテニル基、2-(ブタジエニル基)、2,4-ペンタジエニル、3-(1,4-ペンタジエニル)、エチニル、1-および3-プロピニル、3-ブチニル、およびより高次の同族体および異性体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0065】
特に規定しない限り、用語である「ヘテロ炭化水素基」またはその下位概念(ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロアリールなど)は、それ自体、または別の用語と組み合わせて安定な直鎖状、分枝状または環状炭化水素原子団またはそれらの組み合わせを意味し、一定の数目の炭素原子および少なくとも1個のヘテロ原子から構成される。ある実施例において、「ヘテロ炭化水素基」という用語は、それ自体または別の用語と組み合わせて直鎖状、分枝鎖状炭化水素原子団またはその組成物を意味し、一定の数目の炭素原子および少なくとも1個のヘテロ原子から構成される。一つの典型的な実施形態では、ヘテロ原子はB、O、NおよびSから選択され、窒素および硫黄原子は任意に酸化され、窒素ヘテロ原子は任意に四級化されてもよい。ヘテロ原子またはヘテロ原子団は、ヘテロ炭化水素基の内部位置のいずれ(炭化水素基における分子と繋がった位置の他の位置を含む)に位置することができるが、「アルコキシ」、「アルキルアミノ」および「アルキルチオ」(またはチオアルコキシ)という用語は慣用表現に該当し、一つの酸素原子、アミノ基または硫黄原子を介して分子の残りの部分にそれぞれ結合しているアルキルを意味する。例としては、-CH
2-CH
2-O-CH
3、-CH
2-CH
2-NH-CH
3、-CH
2-CH
2-N(CH
3)-CH
3、-CH
2-S-CH
2-CH
3、-CH
2-CH
2、-S(O)-CH
3、-CH
2-CH
2-S(O)
2-CH
3、-CH=CH-O-CH
3、-CH
2-CH=N-OCH
3および-CH=CH-N(CH
3)-CH
3が挙げられるが、これらに限らない。-CH
2-NH-OCH
3のように、多くとも2個のヘテロ原子が連続していてもよい。
【0066】
別に規定しない限り、用語である「環式炭化水素基」、「複素環式炭化水素基」またはその下位概念(アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルケニル、シクロアルキニル、ヘテロシクロアルキニル等)は、それ自体、または他の用語と組み合わせて環化された「炭化水素基」または「ヘテロ炭化水素基」をそれぞれ意味する。さらに、ヘテロ炭化水素基または複素環式炭化水素基(例えば、ヘテロアルキルまたは複素環式炭化水素基)の場合、ヘテロ原子は、当該ヘテロ環における分子と繋がった位置の他の位置を占めることができる。シクロアルキルの例としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-シクロヘキセニル、3-シクロヘキセニル、シクロヘプチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。複素環式基の非限定的な例には、1-(1,2,5,6-テトラヒドロピリジニル)、1-ピペリジニル、2-ピペリジニル、3-ピペリジニル、4-モルホリニル、3-モルホリニル、テトラヒドロフラン-2-イル、テトラヒドロフランインドール-3-イル、テトラヒドロチオフェン-2-イル、テトラヒドロチオフェン-3-イル、1-ピペラジニルおよび2-ピペラジニルが含まれる。
【0067】
別に規定しない限り、「アルキル」という用語は、一置換(例えば、-CH2F)または多置換(例えば-CF3)されていてもよく、一価(例えば、メチル)、二価(例えばメチレン)または多価(例えばメチン)であってもよい直鎖または分枝鎖の飽和炭化水素基を示す。アルキルの例には、メチル(Me)、エチル(Et)、プロピル(例えば、n-プロピルおよびイソプロピル)、ブチル(例えば、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル)、ペンチル(例えば、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル)などが含まれる。
【0068】
特に規定しない限り、「アルケニル」は、鎖の位置のいずれに、1個以上の炭素-炭素二重結合を有するアルキルを指し、一置換または多置換されていてもよく、一価、二価または多価であってもよい。アルケニルの例としては、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ブタジエニル基、ペンタジエニル基、ヘキサジエニル基等が挙げられる。
【0069】
別に規定しない限り、「アルキニル」は、鎖の位置のいずれに、1つ以上の炭素-炭素三重結合を有するアルキルを指し、一置換または多置換されていてもよく、一価、二価または多価であってもよい。アルキニルの例としては、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニルなどが挙げられる。
【0070】
別に規定しない限り、シクロアルキルは、安定な環式または多環式炭化水素基のいずれを含み、炭素原子のいずれも飽和であり、一置換または多置換されていてもよく、一価、二価または多価であってもよい。このようなシクロアルキルの例としては、シクロプロピル、ノルボルニル、[2.2.2]ビシクロオクタン、[4.4.0]ビシクロノナンなどが挙げられるが、これらに限らない。
【0071】
別に規定しない限り、シクロアルケニルは、環の位置のいずれに1個以上の不飽和炭素-炭素二重結合を含み、一置換または多置換されていてもよく、一価、二価または多価であってもよい安定な環式または多環式炭化水素基のいずれを含む。そのようなシクロアルケニルの例としては、シクロペンテニル、シクロヘキセニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
別に規定しない限り、シクロアルキニルは、環の位置のいずれに1つ以上の炭素-炭素三重結合を含み、一置換または多置換されていてもよく、一価、二価または多価であってもよい安定な環式または多環式炭化水素基のいずれを含む。
【0073】
別に規定しない限り、「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、それ自体または別の置換基の一部として、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子を意味する。さらに、「ハロアルキル」という用語は、モノハロアルキルおよびポリハロアルキルの両方を含むことが意図される。例えば、「ハロ(C1〜C4)アルキル」という用語は、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、4-クロロブチル、3-ブロモプロピルなどを含むことが意図される。別に規定しない限り、ハロアルキルの例としては、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、ペンタフルオロエチルおよびペンタクロロエチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
「アルコキシ」は、酸素架橋を介して結合した特定の数の炭素原子数を有する前記アルキルを表し、別に規定しない限りC1〜C6のアルコキシにはC1、C2、C3、C4、C5、C6のアルコキシが含まれる。アルコキシの例には、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、n-ペンチルオキシおよびS-ペンチルオキシが含まれるが、これらに限定されない。
【0075】
別に規定しない限り、「アリール」という用語は、一置換、二置換または多置換されていてもよく、一価、二価または多価であってもよい多価不飽和芳香族炭化水素置換基を示し、単環式または多環式(例えば、1乃至3個環、そのうち少なく一つは芳香族環である)を意味し、これらは一緒に縮合しているかまたは共有結合している。「ヘテロアリール」という用語は、1〜4個のヘテロ原子を含むアリール(または環)を指す。例示的な例では、ヘテロ原子はB、N、OおよびSから選択され、窒素および硫黄原子は任意に酸化され、窒素原子は任意に四級化されてもよい。ヘテロアリールは、ヘテロ原子を介して分子の残りに結合することができる。アリールまたはヘテロアリールの非限定的な例には、フェニル、ナフチル、ビフェニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、ピラジニル、オキサゾリル、フェニル-オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、フリル、チエニル、ピリジン、ピリミジニル、ベンゾチアゾリル、プリニル、ベンゾイミダゾリル、インドリル、イソキノリル、キノキサリニル、キノリル、1-ナフチル、2-ナフチル、4-ビフェニル、1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル、3-ピラゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、ピラジニル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、2-フェニル-4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、3-イソオキサゾリル、4-イソオキサゾリル、5-イソオキサゾリル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、2-フリル、3-フリル、2-チエニル、3-チエニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-ピリミジニル、4-ピリミジニル、5-ベンゾチアゾリル、プリニル、2-ベンズイミダゾリル、5-インドリル、1-イソキノリニル、5-イソキノリニル、2-キノキサリニル、5-キノキサリニル、3-キノリニルおよび6-キノリニルが含まれる。前記のアリールおよびヘテロアリール環系のいずれかの置換基は、下記する受容可能な置換基の群から選択される。
【0076】
別に規定しない限り、アリールは、他の用語(例えば、アリールオキシ、アリールチオ、アラルキル)と共に使用される場合、前記に定義したアリールおよびヘテロアリール環を含む。したがって、「アラルキル」という用語は、アリールがアルキル基に結合している基(例えば、ベンジル、フェネチル、ピリジルメチルなど)を含むことを意味し、炭素原子(例えば、メチレン)が例えば酸素原子で置換されたアルキル基を含み、例えば、フェノキシメチル、2-ピリジルオキシメチル、3-(1-ナフチルオキシ)プロピルなどである。
【0077】
「脱離基」という用語は、置換反応(例えば、親和性置換反応)によって別の官能基または原子で置換されていてもよい官能基または原子を意味する。例えば、代表的な脱離基としては、トリフルオロメタンスルホネート;塩素、臭素、ヨウ素;メシラート、トシラート、p-ブロモベンゼンスルホネート、p-トルエンスルホネートなどのスルホネート基;アセトキシ、トリフルオロアセトキシ基などのアシルオキシ基等が挙げられる。
【0078】
「保護基」という用語には、「アミノ保護基」、「ヒドロキシ保護基」または「チオール保護基」が含まれるが、これらに限定されない。「アミノ保護基」という用語は、アミノ基の窒素位での副反応を防止するのに適した保護基を意味する。代表的なアミノ保護基としては、限定されないが、ホルミル;アルカノイル(例えば、アセチル、トリクロロアセチルまたはトリフルオロアセチル)のようなアシル;tert-ブトキシカルボニル(Boc)のようなアルコキシカルボニル;ベンジルオキシカルボニル(Cbz)および9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)のようなアリールメトキシカルボニル;ベンジル(Bn)、トリチル(Tr)、1,1-ジ-(4'-メトキシフェニル)メチルのようなアリールメチル;トリメチルシリル(TMS)およびtert-ブチルジメチルシリル(TBS)のようなシリル基などが挙げられる。「ヒドロキシ保護基」という用語は、ヒドロキシル基の副反応を防止するのに適した保護基を意味する。代表的なヒドロキシ保護基には、限定されないが、メチル基、エチル基およびtert-ブチル基のようなアルキル基;アルカノイル基(例えば、アセチル)のようなアシル基;ベンジル(Bn)、p-メトキシベンジル基(PMB)、9-フルオレニルメチル(Fm)およびジフェニルメチル(ジフェニルメチル、DPM)のようなアリールメチル基;トリメチルシリル(TMS)およびtert-ブチルジメチルシリル(TBS)のようなシリル基などが挙げられる。
【0079】
本発明に用いられる溶媒は市販で購入できる。
本発明は、以下の略語を用いる。aqは水;HATUはO-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N、N、N'、N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート;EDCはN-(3-ジメチルアミノプロピル)-N'-エチルカルボジイミド塩酸塩;m-CPBAは3-クロロペルオキシ安息香酸;eqは等価物、当量;CDIはカルボニルジイミダゾール;DCMはジクロロメタン;PEは石油エーテル;DIADはアゾジカルボン酸ジイソプロピル;DMFはN、N-ジメチルホルムアミド;DMSOはジメチルスルホキシド;EtOAcは酢酸エステル;EtOHはエタノール;MeOHはメタノール; CBzはアミン保護基であるベンジルオキシカルボニル;BOCはアミン保護基であるt-ブチルカルボニル; HOAcは酢酸;NaCNBH
3はシアノ水素化ホウ素ナトリウム;r.t.は室温;O/Nは一晩過ごす;THFはテトラヒドロフラン;Boc
2Oはジ-tert-ブチルジカーボネート;TFAはトリフルオロ酢酸;DIPEAはジイソプロピルエチルアミン;SOCl
2は塩化チオニル;CS
2は二硫化炭素;TsOHはp-トルエンスルホン酸;NFSIは、N-フルオロ-N-(フェニルスルホニル)ベンゼンスルホンアミド;NCSは1-クロロピロリジン-2,5-ジオン;n-Bu
4NFはテトラブチルアンモニウムフルオライド;iPrOHは2-プロパノール;mpは融点;LDAはリチウムジイソプロピルアミドを表す。
【0080】
化合物は、手作業またはChemDraw<登録商標>ソフトウェアによって命名され、市販の化合物について、サプライヤのカタログ名を用いる。
【発明を実施するための形態】
【0082】
[具体的な実施形態]
本発明は、以下の実施例により詳細に記載されるが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。以上、本発明を詳細に説明し、本発明の実施形態も開示したが、本発明の実施形態に対して本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形、変更を行ることは明らかである。
【0085】
ステップ1:
原料である1-A(50g、26.62mmol)、N-ヒドロキシフタルイミド(8.69g、53.24mmol)およびトリエチルアミン(6.73g、66.55mmol)を100mLのN,N-ジメチルホルムアミド中に溶解し、50℃に加熱し、16時間攪拌した。反応液を室温まで冷却し、氷水100mL中に撹拌しながら注ぎ込んた後、吸引ろ過しを行い、固体物を冷水10mLで3回洗浄し、乾燥して、化合物1-B(9.3g、収率97%)を得た。
【0086】
ステップ2:
化合物1-B(6.0g、17.03mmol)をジクロロメタン400mLとメタノール150mLに懸濁し、85%ヒドラジン水和物(1.71g、34.06mmol、1.66mL)を加えた。反応溶液を25℃で18時間攪拌し、濾過し、濾過ケーキを50mLの酢酸エチルで洗浄し、濾液を乾固まで濃縮し、残渣を40mLの石油エーテル/酢酸酢酸(3:1)でスラリー化した後、ろ過し、スラリー化を2回繰り返し行い、濾液を合わせ、濃縮して、化合物1-C(980mg、収率62%)を得た。
【0087】
ステップ3:
化合物1-C(980mg、10.64mmol)をジクロロメタン50mLに溶解し、-10℃に冷却し、トリエチルアミン(1.08g、10.64mmol、1.47mL)をシリンジで添加し、ジ-tert-ブチルジカーボネート(2.32g、10.64mmol)のジクロロメタン30mL溶液に加えた。反応液を室温(25℃)までゆっくりと加温し、20時間攪拌した。濃縮を行い、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/石油エーテル、勾配30%〜50%)で精製し、化合物1-D(700mg、収率34%)を得た。
【0088】
ステップ4:
化合物1-D(300mg、1.56mmol)、(2S、5R)-6-ベンジルオキシ-7-オキシ-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクト-2-カルボン酸(431.23mg、1.56mmol)(合成方法について、特許WO2012172368A1を参照)、EDCI(388.77mg、2.03mmol)、HOBt(274.02mg、2.03mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(201.62mg、1.56mmol、272.46μL)をこの順にジクロロメタン20mLに加えた。反応溶液を室温(25℃)で20時間攪拌した後、ジクロロメタン30mLの加えにより希釈させ、水15mLで2回、ブライン15mLで1回洗浄し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した。ろ液を乾燥まで濃縮し、粗生成物をシリカゲルカラム(酢酸エチル/石油エーテル混合物、勾配30%〜50%)で精製し、化合物1-E(262mg、収率67%)を得た。
【0089】
ステップ5:
化合物1-E(760.00mg、1.69mmol)をジクロロメタン(7.00mL)に溶解し、トリフルオロ酢酸(3.08g、27.01mmol、2.00mL)を20℃で加え、3時間撹拌し、反応混合物を濃縮し、酢酸エチル(50mL)より希釈させ、且つ、飽和重炭酸ナトリウム(50mL)で洗浄した後、ブライン(50mL)で一回洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過と濃縮を経て化合物1-F(410.00mg、収率65.68%)を得た。
【0090】
ステップ6:
化合物1-F(200.00mg、570.83μmol)および(E)-tert-ブチル(tert-ブトキシカルボニル)アミノ(メチレン)カルバメート(177.16mg、570.83μmol)をアセトニトリル(2mL)に溶解し、20℃で16時間攪拌し、反応終了後、反応物を濃縮し、残渣に対してシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/石油エーテル=0〜2/1勾配溶出)を行い、化合物1-G(300.00mg、収率86.91%)を得た。
【0091】
ステップ7:
化合物1-G(300.00mg、506.21μmol)をイソプロパノール(3.00mL)/水(3.00mL)に溶液し、次いで湿パラジウム炭素(50.00mg、10%)を加えた。混合物を水素雰囲気において18〜28℃で2時間攪拌した後、ろ過を行い、化合物1-Hの1-イソプロピルアルコール/水ろ液を得、これをそのまま次の反応に用いた。
【0092】
ステップ8:
化合物1-H(250.00mg、497.49μmol)のイソプロパノール(3.00mL)/水(3.00mL)中に、三酸化硫黄トリメチルアミン錯体(69.24mg、497.49μmol)およびトリエチルアミン(10.07mg、99.50μmol、13.79μL)を加え、この混合物を18〜28℃で16時間撹拌した。反応終了後、酢酸エチル/石油エーテル(2/1、6mL、2回)で洗浄し、回収した水相に、硫酸水素テトラブチルアンモニウム(168.43mg、496.07μmol)を加え、室温で0.5時間攪拌した後、酢酸エチル(15mL、2回)で抽出し、抽出液を飽和食塩水(10mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過と濃縮を経て化合物1-I(400.00mg、475.71μmol、収率95.89%)を得た。
【0093】
ステップ9:
化合物1-I(200.00mg、242.71μmol)を無水ジクロロメタン(2mL)に溶解し、窒素保護下0℃まで冷却し、トリフルオロ酢酸(1.54g、13.51mmol、1.00mL)を加え、2時間攪拌し、さらに25℃で4時間撹拌した後、空気中で濃縮し、残渣をアセトニトリル(2mL)で3回スラリー化して、粗化合物を得、この粗化合物に対して高速液体クロマトグラフィーで分離し、化合物1(35.00mg、収率:18.91%)を得た。1H NMR(400MHz,D2O)4.15(s,1H),4.10〜4.08(m,2H),4.03-3.99(m,3H),3.26(d,J=12Hz,1H),3.09(d,J=12Hz,1H),2.13-1.99(m,2H),1.94-1.74(m,2H);LCMS(ESI)m/z:383.1(M+1)
【0094】
実験例1:インビトロ相乗的阻害濃度(SIC)試験法
相乗的阻害濃度試験は、臨床検査標準化協会(CLSI)方法M7に基づいて確立された。併用抗生物質の初期濃度を128μg/mLに設定し、合計11系の連続希釈濃度で連続希釈を行い、活性β-ラクタム阻害剤試験濃度は4μg/mLに固定した。
実験目的:
この実験は、実施例の化合物がインビトロ活性において参照化合物OP-0595と比較して利点を有するかどうかを評価することを目的とし、この一連の実験は、二つの方面から検討した。一つの方面は、実施例の化合物が抗生物質の抗菌活性を回復させる、または抗生物質と相乗効果を生じることであり、もう一つは、抗生物質に対する化合物自体の抗菌力であった。
【0095】
実験方法:
1)被検化合物をジメチルスルホキシドに溶解し(不溶性の場合は懸濁する)、12.8mg/mLの濃度になるように希釈した後、原液とした。セフタジジム(CAZ)を水に溶解し、25.6mg/mLになるように希釈し、エルタペネム(ETP)をリン酸緩衝溶液(PBS)に溶解し、25.6mg/mLに希釈した。
【0096】
2)96-Vウェルプレートの第2-12列目にジメチルスルホキシド30μLを添加した。調製されたセフタジジム60μLを第1列目に添加した。セフタジジム30μLを第1列目から取り第2列目に加え、マルチチャンネルモデルピペットで混合した。第11列まで同じ操作を続け、第11列目の混合物30μLを捨てた。これは化合物マザープレートであった。
【0097】
3)濃度が12.8mg/mLである被検化合物をDMSOで0.8mg/mLに希釈した後、30μLを取り、マザープレートの1列に添加した。マルチチャンネルモデルピペットでマザープレート内の液体を混合した。
【0098】
4)実験の1日前に、-80℃の冷蔵庫に保存されたグリセロール細菌一つ白金耳分量を取り、トリプシン大豆寒天プレート(TSA)上に画線し、プレートを37℃インキュベーターに一晩置いた。実験の日に、細菌モノクローナルを生理食塩水に懸濁させ、濁度を1×108CFU/mLに相当する0.5標準マクファーランド比濁度に調整した。この懸濁液を、接種材料であるカチオン調節Mueller-Hnton Broth(CAMHB)で1×106CFU/mLまで100倍に希釈し、接種液とした。
【0099】
5)96-U字型プレートを実験プレートとした。まず、98μLのCAMHBを実験プレートの全てのウェルに加えた。マスタープレートの溶液2μLを実験プレートに移した。接種液100μLを実験プレートの全てのウェルに添加した。実験プレートの各列に含まれるセフタジジム/被験化合物またはエルタペネム/被験化合物の濃度がそれぞれ128/4、64/4、32/4、16/4、8/4、4/4、2/4、1/4、0.5/4、0.25/4、0.125/4、0/4μg/mLであった。
【0100】
6)実験プレートを37℃で20時間インキュベートした。セフタジジムの最小抑制濃度は、細菌増殖を完全または有意に阻害し得る最低濃度であった。
被検化合物または抗生物質単独の抗菌活性の測定にも前記の方法が使用された。表1は当該本実験に用いたβ-ラクタマーゼを産生する細菌株の具体的な情報であった。
【0102】
注1:表1において、細菌株によって産生されるβ-ラクタマーゼの種類は、サプライヤの公式ネットワーク情報から得られるものであった。
注2:「ATCC」は「American Type Culture Colletcion」の略語、「CCUG」は「Culture Collection University of Goteborg」の略語、「NCTC」は「“NCTC - National Collection of Type Culture」の略語であった。
【0106】
結論:化合物1がセフタジジムの抗菌活性を回復させる能力は非常に高く、抗生物質セフタジジムに対して良好な相乗的抗菌効果を示した。抗生物質エルタペネムと併用する化合物1は、エルタペネムの活性を有意に増加させ、良好な相乗的抗菌効果を示した。
【0107】
実験例2:インビトロ酵素実験法
実験目的:
この試験は、β-ラクタマーゼに対する阻害活性に対して、OP-0595と比較して、実施例の化合物の利点を評価することを目的とした。
【0110】
1)化合物をDMSOに溶解し母液(12.8mg/mL、実験例1の方法)を調製し、ストレージした;
2)酵素試験のために緩衝液A(1×PBS、pH7.4,0.1mg/mLBSA)を調製した;
3)化合物母液に対して、96-ウェルV底プレート中でDMSO中で4倍の勾配希釈を11回行って得た液を作業溶液とした。96ウェル平底プレートを試験ウェルプレートとして使用し、対応する反応緩衝液を予め各ウェルに添加し、続いて対応する容量の作業溶液(100μM-0.095nMおよび0nM)をウェルごとに添加した。ここで、EDTA-Na
2はNDM-1試験の対照として使用した時の初濃度が20mMであった;
4)対応するβ-ラクタマーゼを加え、試験ウェルプレートを37℃で5分間インキュベートした;
5)5μLのニトロセフィン(最終反応容量は100μL)を加え、マイクロプレートリーダーを用いてプレート内の反応液の吸光度OD490を経過記録し、1min毎に吸光度を読み取り、30分間引き続いた;
6)マイクロプレートリーダーは、時間経過に応じるOD490の増長曲線を与えることができた。曲線の線性範囲内の2つのデータ点(Abs1およびAbs2)を取って曲線の勾配((Abs2-Abs1)/(T2-T1))を計算した;
7)相対阻害率の計算公式は以下のようであった。Slope(EC)は阻害剤の非存在下での勾配であり、Slop(S)はある阻害剤濃度での勾配であった。
【0112】
相対阻害率および対応する阻害剤濃度がβ-ラクタマーゼ阻害剤のIC50値の計算に用いられた。この実験では、GraphPad Prism5.0に付けられた公式であるlog(inhibitor) vs. normalized response-Variable slope を用いてIC50を計算した。
【0113】
備考:PBSはリン酸塩緩衝液を指した。BSAは、ウシ血清アルブミンを指した。
実験結果:表5を参照した。
【0114】
【表5】
結論:化合物1はAクラスのβ-ラクタマーゼに対してもCクラスβ-ラクタマーゼに対しても良好な阻害効果を有した。
【0115】
実験例3:中国における臨床分離株のインビトロ相乗的阻害濃度(SIC)試験方法
実験目的:
主要なカルバペネマーゼの活性に対するBLI(β-ラクタマーゼ阻害剤)化合物1の阻害効果を調べた。
【0116】
実験方法:
ブロス微量希釈法を用いて、抗菌剤(BLIリード化合物有りおよび無し)の臨床分離されたカルバペネマーゼ産生株に対する最小阻害濃度(MIC)を測定した。
【0117】
1.薬物感受性試験:2016年版の米国Clinical and Laboratory Standards Institute(CLSI)に記載されている抗微生物感受性試験の方法に基づき行って、マイクロブロス希釈法により臨床的に単離された細菌に対する一般的に使用される抗菌薬のMICを測定した。
【0118】
2.菌株:KPC-2型カルバペネマーゼ産生株とNDM-1型金属酵素産生株 各8菌株、OXA-181型カルバペネマーゼ産生株 6株。全ての株は臨床的に単離されたクレブシエラ・ニューモニエ菌であった。
【0119】
3.濃度:抗菌剤濃度範囲:0.06μg/mL-128μg/mL、合計12濃度;酵素阻害剤濃度:4μg/mLに固定した。
4.品質管理株:薬剤感受性試験品質管理株には、大腸菌(E.coli)ATCC 25922およびATCC 35218が含まれた。
【0122】
結論:化合物1と抗生物質との組み合わせは、KPC-2、NDM-1またはOXA-181型カルバペネマーゼを産生する臨床的に単離したクレブシエラ菌に対する強い抗菌活性を有した。特に、NDM-1型カルバペネマーゼを産生する細菌に対して、化合物1の阻害効果は、アビバクタムより有意に良好であった。
【0123】
実験例4:マウス肺感染モデル
実験目的:
この試験は、実施例の化合物がマウス肺感染モデルにおいて薬理学的効果を有するか否かを検討し、その薬理学的効果が参照化合物OP-0595に対して有意な利点を有するかどうかをさらに評価するように設計された。
【0124】
実験材料:
約7週齢のメスCD-1マウス(体重約26〜28グラム)を使った。シクロホスファミド感染の4日前に150mg/kgを注射し、1日前に100mg/kgを注射した。感染細菌はクレブシエラ・ニューモニエ(ATCCBAA-1705、KPC-2)であった。化合物1、参照化合物OP-0595のいずれも実験室で合成されたものであった。
【0125】
実験プロセス:
メスCD-1マウスに鼻腔内注入によりクレブシエラ・ニューモニエを感染させた。各マウスに、1匹あたり3.14E+07CFUの用量で鼻腔を通して50μlの細菌液を滴入した。感染後2h、4h、6hおよび8h、各群のマウスに腹腔内注射により対応する化合物または組み合わせ化合物をそれぞれに投与した。
【0126】
感染後10h、群1、2および3のマウスを安楽死させ、肺を10mLの滅菌生理食塩水を含む50mLの遠心管に入れ、湿った氷上に置き、CFU計数のためにBSL-2実験室に移した。感染の20h後、群4、5および6のマウスを安楽死させ、手順は以前と同じであった。
【0127】
肺をIKA T10ホモジナイザー(最高速度20S、1回繰り返す)を用いて粉砕した。ホモジネートを勾配で希釈した後、トリプトン大豆寒天プレート上に植菌した。細胞を37℃のインキュベーターに入れ、細菌培養を行った。24h後、プレートを取り出し、プレート上で各希釈勾配ホモジネート中で増殖した単一のコロニーの数を計数し、かつこれにより、各マウスの肺における細菌量を計算した。
【0130】
実験結果:
図1を参照した。
結論:薬効結果から、マウスモデルにおける化合物1のインビボ有効性は、2つの異なる用量で参照化合物OP-0595と比較して細菌量が0.5〜1.5log減少したことが分かった。化合物1は効果が参照化合物OP-0595と比べて有意に優れている。