(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の方法では、インク吸収体が吸収したインクが増粘して機能不良を起こすというリスクがある。
【0007】
また、他の方法として、ワイパーのゴム板をクリーナー(かき取り部材)に当接させながら移動させ、付着したインクをかきとる方法もあるが、その場合には、ワイパーがクリーナーを通過する際のインクの飛散が問題となる。当該インクの飛散から他の部分を守るため、ワイパーの移動方向の全方位にカバーを設ける、ワイパーの復路においては、クリーナーと当接させないような機構を設ける、といった手段が講じられているが、いずれも、装置の大型化や複雑化を招き好ましくない。
【0008】
そこで、本発明の目的は、ノズル面をワイピングする機構を備えるインクジェット方式の印刷装置であって、装置を大型化、複雑化させずに、ワイパーブレードに付着したインクをかき取る際のインク飛散から装置を適切に防御することのできる印刷装置、を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の一つの側面は、インクをノズルから噴射して印刷を行う印刷装置が、前記ノズルの開口が形成されるノズル面に当接して第1方向に移動し、前記ノズル面に付着した前記インクを拭き取るワイパーブレードと、前記移動するワイパーブレードと当接し、前記ワイパーブレードに付着した前記インクをかき取るクリーナーと、を有し、前記ワイパーブレードは、前記第1方向と略直交する第2方向に突き出したブレード部材を備え、前記クリーナーは、前記第2方向と反対方向である第3方向に突き出したかき取り部材を備え、前記ブレード部材の前記第2方向の先端面と前記かき取り部材の前記第3方向の先端面の形状が、前記ワイパーブレードが前記クリーナーに当接して前記クリーナーを通過する際に、前記ブレード部材がその前記先端面における前記第1方向と略直交する第4方向の一端から他端へ向けて順番に前記かき取り部材から離れるように形成される、ことである。
【0010】
当該側面により、ブレード部材が、一方向に順番にかき取り部材から離れていくので、ワイパーブレードがクリーナーを通過する際のインクの飛散方向を規定(制御)できる。従って、ブレード部材の先端面とかき取り部材の先端面の形状を適切に設計することにより、印刷領域などインクを飛散させたくない領域をインクの飛散から確実に防御することができる。よって、装置の大型化、複雑化を招くことなくインクの飛散をさせたくない領域をインク飛散から確実に防御することができる。
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明の別の側面は、インクをノズルから噴射して印刷を行う印刷装置でが、前記ノズルの開口が形成されるノズル面に当接して第1方向に移動し、前記ノズル面に付着した前記インクを拭き取るワイパーブレードと、前記移動するワイパーブレードと当接し、前記ワイパーブレードに付着した前記インクをかき取るクリーナーと、を有し、前記ワイパーブレードは、前記第1方向と略直交する第2方向に突き出したブレード部材を備え、前記クリーナーは、前記第2方向と反対方向である第3方向に突き出したかき取り部材を備え、前記ブレード部材の前記第2方向の先端面と前記かき取り部材の前記第3方向の先端面の形状が、前記ブレード部材と前記かき取り部材との前記第1方向における離間距離が、前記ブレード部材の前記先端面における前記第1方向と略直交する第4方向の一端から他端へ向けて、減少することなく増加する、あるいは、増加することなく減少する、ように形成される、ことである。
【0012】
当該側面により、ブレード部材が、一方向に順番にかき取り部材から離れていくので、ワイパーブレードがクリーナーを通過する際のインクの飛散方向を規定(制御)できる。従って、ブレード部材の先端面とかき取り部材の先端面の形状を適切に設計することにより、印刷領域などインクを飛散させたくない領域をインクの飛散から確実に防御することができる。よって、装置の大型化、複雑化を招くことなくインクの飛散をさせたくない領域をインク飛散から確実に防御することができる。
【0013】
更に、上記発明において、一つの態様は、前記ブレード部材の先端面は、前記第4方向の両端に位置する2つの傾斜部と当該傾斜部をつなぐ略前記第4方向に沿った水平部を備え、前記かき取り部材の先端面は、前記第4方向の一端から位置する1つの傾斜部と当該傾斜部と前記第4方向の他端をつなぐ略前記第4方向に沿った水平部を備え、前記ブレード部材の1つの前記傾斜部と前記かき取り部材の前記傾斜部は、前記第1方向において略同位置に配置され、前記ブレード部材の前記2つの傾斜部の前記第4方向に対する傾斜角は、前記かき取り部材の前記傾斜部の前記第4方向に対する傾斜角よりも小さい、ことを特徴とする。
【0014】
上記の目的を達成するために、本発明の更に別の側面は、インクをノズルから噴射して印刷を行う印刷装置が、前記ノズルの開口が形成されるノズル面に当接して第1方向に移動し、前記ノズル面に付着した前記インクを拭き取るワイパーブレードと、前記移動するワイパーブレードと当接し、前記ワイパーブレードに付着した前記インクをかき取るクリーナーと、を有し、前記クリーナーは、前記第1方向と略直交する方向に突き出したかき取り部材を備え、前記かき取り部材の前記第1方向における前後面の、前記かき取り部材が突き出した方向に略直交する面に対する傾斜角が互いに異なる、ことである。
【0015】
当該側面により、かき取り部材の上記傾斜角を適切に設計することで、ワイパーブレードの往路と復路のインク飛散量を制御できる。具体的には、印刷領域へのインク飛散を防止することができる。この側面においても、装置の大型化、複雑化を招くことなくインクの飛散をさせたくない領域をインク飛散から確実に防御することができる。
【0016】
更に、上記発明において、好ましい態様は、前記かき取り部材の前面の前記傾斜角であって前記第1方向側の傾斜角は、前記かき取り部材の後面の前記傾斜角であって前記第1方向側の傾斜角よりも大きい、ことを特徴とする。
【0017】
当該態様により、前記第1方向にワイパーブレードがクリーナーを通過する際のインクの飛散量を多くできる。
【0018】
上記の目的を達成するために、本発明の更に別の側面は、インクをノズルから噴射して印刷を行う印刷装置が、前記ノズルの開口が形成されるノズル面に当接して第1方向に移動し、前記ノズル面に付着した前記インクを拭き取るワイパーブレードと、前記移動するワイパーブレードと当接し、前記ワイパーブレードに付着した前記インクをかき取るクリーナーと、を有し、前記ワイパーブレードは、前記第1方向と略直交する第2方向に突き出したブレード部材を備え、前記クリーナーは、前記第2方向と反対方向である第3方向に突き出したかき取り部材を備え、前記かき取り部材の前記第1方向における前後面が、前記ワイパーブレードが前記クリーナーに当接して前記クリーナーを通過する際に、前記通過の方向により、前記ブレード部材が前記かき取り部材から離れる前記第3方向の位置が異なる、ように形成される、ことである。
【0019】
当該側面により、当該側面により、かき取り部材の形状を適切に設計することで、ワイパーブレードの往路と復路のインク飛散量を制御できる。具体的には、印刷領域へのインク飛散を防止することができる。この側面においても、装置の大型化、複雑化を招くことなくインクの飛散をさせたくない領域をインク飛散から確実に防御することができる。
【0020】
本発明の更なる目的及び、特徴は、以下に説明する発明の実施の形態から明らかになる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態例を説明する。しかしながら、かかる実施の形態例が、本発明の技術的範囲を限定するものではない。なお、図において、同一又は類似のものには同一の参照番号又は参照記号を付して説明する。
【0023】
図1及び
図2は、本発明を適用した印刷装置の実施の形態例に係る斜視図である。
図1には、当該印刷装置における筐体内部の機構部全体が示され、
図2には、
図1に示される図から印刷機構2などを除いた部分が示されている。
【0024】
図1及び
図2に示すプリンター1が本発明を適用した印刷装置であり、プリンター1は、ノズル面を清掃するワイパーユニット5を備える。本プリンター1では、ワイパーユニットを構成するワイパーブレード51とクリーナー52の形状に特徴があり、その形状により、ワイパーブレード51のブレード51Bがクリーナー52のかき取り部52Bを通過した際のインクの飛散方向と量を規制(制御)する。これにより、装置を大型化、複雑化させずに、かかるインクの飛散から装置を適切に防御することができる。
【0025】
本プリンター1は、いわゆるインクジェットプリンターであり、一例として、2方向からの給紙が可能な縦型のプリンターである。縦型とは、ノズル面が印刷装置の接地面に垂直なことを意味し、本実施の形態例においては、後述するノズルプレート(ノズル面)222がプリンター1の接地面に概ね垂直に設けられている。
【0026】
なお、
図1及び
図2の矢印X1‐X2で示すX方向は、プリンター1を水平な接地面に置いた場合の左右方向(X1:右方向、X2:左方向)を表し、同様に矢印Y1‐Y2で示すY方向は、プリンター1を水平な接地面に置いた場合の前後方向(Y1:前方向、Y2:後方向)を表し、同様に矢印Z1‐Z2で示すZ方向は、プリンター1を水平な接地面に置いた場合の上下方向(Z1:上方向、Z2:下方向)を表す。
【0027】
本プリンター1は、
図1及び
図2に示す矢印Bの方向に装置外部から印刷媒体(例えば、小切手などの用紙)を挿入し、当該印刷媒体を搬送して当該印刷媒体に印刷を行うことができる。また、プリンター1の内部にロール状の印刷媒体(例えば、ロール紙など)を収容し、当該印刷媒体を搬送して当該印刷媒体に印刷を行うことができる。なお、
図1及び
図2において指し示される用紙収容部31にロール状の印刷媒体が収められ、矢印Bと反対の方向(概ねY1方向)に印刷媒体が供給される。また、これら両方の印刷媒体に対して搬送機構3が備えられている。
【0028】
また、プリンター1は印刷機構2を備える。印刷機構2は、搬送機構3によって搬送された印刷媒体に対して印刷を施す部分であり、印刷ヘッド22、キャリッジ21などを備える。
図3は、印刷ヘッド22の斜視図である。
【0029】
キャリッジ21は、印刷ヘッド22を搭載して印刷ヘッド22を走査方向に移動させる部分である。キャリッジ21は、
図20に示すように、図示していない駆動源(モーター等)、伝動装置(ベルト21B等)により、X方向(
図1、2、20の矢印Aの方向)に、キャリッジフレーム21Aに沿って、往復移動可能に構成されている。
【0030】
印刷ヘッド22は、インクを吐出(噴射)する複数のノズルからなるノズル列221を備える。本実施の形態例では、一例として、2列のノズル列221を備える。各ノズル列221は、Z方向に沿って設けられている。これらのノズル列221は、ノズルプレート222に貫通孔が設けられることによって形成されている。また、
図3に示される様に、印刷ヘッド22は、ノズルプレート222を囲うカバーヘッド223を備える。カバーヘッド223は板状の部材で形成されている。なお、ノズルプレート222とカバーヘッド223の前面(
図3で見えている面、Y2方向を向いた面、以降、ノズル面と称す)の高さ(Y方向の位置)は、概ね同じであるが、ここでは、カバーヘッド223の方が前(Y1方向)に出ている。また、印刷ヘッド22は、図示していないが、内部にノズルへインクを供給する機構を備える。
【0031】
かかる印刷ヘッド22は、キャリッジ21によって移動し、
図2のCで指し示される範囲(印刷領域C)に供給された印刷媒体に印刷を実施するが、印刷を行っていない時及びメンテナンスが行われる時には、メンテナンス装置(キャップユニット4、ワイパーユニット5)が配置される位置までX1方向へ移動する。
【0032】
プリンター1は、
図2に示す位置に、キャップユニット4とワイパーユニット5を備える。キャップユニット4は、ノズル面(ノズルの吐出口、開口部)を覆い、ノズルの吐出口における乾燥防止と不要なインクの吸引を行う装置である。
【0033】
ワイパーユニット5は、ノズル面(ノズルプレート222)の不要なインクを清掃する装置である。本プリンター1は、このワイパーユニット5に特徴があり、以下、その構成と作用について具体的に説明する。
【0034】
図4、5、及び7は、それぞれ、ワイパーユニット5の部分を示す斜視図である。
図6は、ワイパーユニット5の部分を示す側面図である。
図5−7においては、一つのワイパーブレード51について、上の位置(Z1方向)にある場合と下の位置(Z2方向)にある場合の両方を示している。
【0035】
ワイパーユニット5は、ワイパーブレード51、クリーナー52、及び、駆動機構53を備える。
【0036】
駆動機構53は、ワイパーブレード51をノズルプレート(ノズル面)222に沿ってZ方向(
図6、7における矢印Dの方向)に移動させる機構であり、図示していないモーターなどの駆動源、伝動装置(駆動輪、ベルト等)を備える。ノズルの開口が形成されるノズル面222を清掃する場合には、印刷ヘッド22がX方向のワイパーユニット5の位置まで移動され、起動機構53が上記上の位置(Z1方向)にあるワイパーブレード51を上記下の位置(Z2方向)に移動させる。
【0037】
ワイパーブレード51は、ノズルプレート(ノズル面)222に当接しながら移動してノズル面222に付着した(残った)インクを拭き取る部分である。
図8は、ワイパーブレード51の部分を示す斜視図である。
図9は、ワイパーブレード51とクリーナー52を示す斜視図である。
図10は、ワイパーブレード51とクリーナー52を示す側面図である。
【0038】
図6、8−10に示されるように、ワイパーブレード51は、基部51Aとブレード51B(ブレード部材)を備える。基部51Aは、ブレード51Bを搭載して上述した駆動機構53により移動する部分である。
【0039】
ブレード51Bは、ゴムなどの柔軟性のある材料で形成され、基部51AからY1方向に突き出す様に基部51Aに取り付けられている。ブレード51Bは、板状であり、そのY1方向(第2方向)の端面(上端面、突起の先端面)及びY1方向に垂直な平面で切った断面は、V字形状(正確には、
図8のaaに示されるように底部のあるV字形状)をしている。当該ブレード51Bがノズル面222に当接してインクを拭き取る。従って、ブレード51Bの長さ(Y1方向の寸法)は、基部51Aとノズル面222との間隔よりも長い。
【0040】
クリーナー52は、ブレード51Bが拭き取りブレード51Bに付着したインクを除去するための部分である。
図6などに示される様に、クリーナー52は、ワイパーブレード51の移動軌道上の下部(Z2方向)であって、Z2方向において、印刷ヘッド22(ノズル面222)の下側に配置(固定)される。
図11は、クリーナー52をY1方向に見た図である。
【0041】
クリーナー52は、
図10などに示されるように、フレーム52Aとかき取り部52B(かき取り部材)を備える。フレーム52Aは、プリンター1の骨格を成す部材に固定して取り付けられている部材である。
【0042】
かき取り部52Bは、フレーム52AからY2方向(第3方向)に突き出した部材であり、ワイパーブレード51がクリーナー52の位置を通過する際に、ブレード51Bと接触(当接)する部分である。従って、かき取り部52Bは、
図10に示されるように、Y方向においてブレード51Bと重なるように位置する(
図10のE)。かき取り部52Bは、
図9、11に示されるように、壁状の形状をしており、その端面(Y2方向の端面、突起の先端面)の形状に特徴がある。
【0043】
以上のように構成される本プリンター1のワイパーユニット5は、ワイパーブレード51のブレード51Bとクリーナー52のかき取り部52Bの形状に特徴があり、以下、その点について説明する。
【0044】
まず、ブレード51BのY1方向の端面(突起の先端面、以下、aa面と称す)とかき取り部52BのY2方向の端面(突起の先端面、以下、bb面と称す)の形状に特徴がある。具体的には、ブレード51Bとかき取り部52Bが離間している状態の時に、aa面とbb面のZ方向(
図6などにおける矢印Dの方向)の距離、すなわち、ワイパーブレード51の移動方向(第1方向)の離間距離が、aa面におけるX方向(第4方向)の一方の端から他方の端に向かって、順次、減少することなく増加する、あるいは、増加することなく減少する、形状となっている。換言すれば、aa面とbb面の形状が、aa面におけるX方向の一端から他端へ向けて、順番に、aa面がbb面から離れる形状となっている。上記離間距離は、より正確には、aa面のワイパーブレード51の移動方向における後端と、bb面のワイパーブレード51の移動方向における先端との距離である。
【0045】
図12は、上記離間距離を説明するための模式図である。
図12において、矢印Fで示す方向がZ2方向であり、ワイパーブレード51がノズル面222のインクを拭き取る際の移動方向(往路)であり、矢印Gで示す方向がZ1方向であり、ワイパーブレード51がノズル面222のインクを拭き取るための準備位置へ戻る方向(復路)である。また、
図12においては、aa面の移動方向における後端(以下、aa線と称す)と、bb面のaa面の移動方向における先端(以下、bb線と称す)を線で表現している。
【0046】
図12に示されるように、aa線は、X方向に傾斜部(X座標B1からB2)と水平部(X座標B2からB3)と傾斜部(X座標B3からB4)を有する。一方、bb線は、X方向に傾斜部(X座標C1からC2)と水平部(X座標C2からB3)を有する。なお、X座標B1とC1、B2とC2、及び、B4とC3は、それぞれ同じ値(X方向に同位置)である。また、aa線の傾斜部のX方向に対する傾斜は、bb線における傾斜部のX方向に対する傾斜よりも緩やかである。換言すれば、
図12におけるM1とM2は、M1<M2の関係にある。
【0047】
図12において、上述したブレード51Bとかき取り部52Bの離間距離は、L(X)で表現される。そして、
図12に示すX座標の方向に、B1からB4の範囲において、L(X)の値は、順次、減少することなく増加する。すなわち、B1≦X≦B4で、L´(X)≧0である。すなわち、離間距離のX方向の変化率が0以上である。
【0048】
次に、本ワイパーユニット5では、クリーナー52のかき取り部52Bの側面(X方向から見た側面、以下、cc面と称す)の形状に特徴がある。具体的には、概ね台形形状をしたcc面のZ方向(ワイパーブレード51の移動方向)に対峙する辺の角度が互いに異なる。換言すれば、かき取り部52BのZ方向における前後面のY方向に垂直な面に対する傾斜角が互いに異なる。
【0049】
図13は、cc面の形状を説明するための概略図である。本実施の形態例では、cc面のZ2方向(
図13の矢印F方向)の辺(
図13に示す辺a)がワイパーブレード51の移動方向に対してほぼ直角であり、
図13に示す角度αがほぼ90度である。一方、cc面のZ1方向(
図13の矢印G方向)の辺(
図13に示す辺b)がワイパーブレード51の移動方向に対して傾斜しており、
図13に示す角度βがβ<αの関係にある。
【0050】
次に、以上説明したワイパーユニット5の形状による作用について説明する。
【0051】
図14、15、及び16は、上述したaa面とbb面の形状による作用を説明するための図である。
図14−16は、
図12に基づいて説明したaa面(aa線)を有するブレード51Bが往路で(
図12等の矢印Fの方向に移動して)、
図12に基づいて説明したbb面(bb線)を有するかき取り部52Bに当接して通過する際の推移を示している。
【0052】
図14は、Z1方向に離間していたブレード51Bがかき取り部52Bに接近して当接し、上述した離間距離L(X)が最も短いB1の部分がかき取り部52Bを通過する状態、すなわち、ブレード51BのB1の部分がかき取り部52Bから離れる(リリースされる)状態を示している。
【0053】
このように、ブレード51Bが往路の移動をすると、まず、aa面(aa線)の右端(X1方向の端)からかき取り部52Bを通過する。
【0054】
その後、上述したL(X)の変化により、X2方向に、順次、かき取り部52Bを通過していく。
図15は、B1とB2間の傾斜部の途中まで(R2の地点まで)、通過した状態を示している。
【0055】
図16は、更に移動が進んで、B3とB4間の傾斜部の途中まで(R3の地点まで)、通過した状態を示している。
【0056】
その後、移動が進むと、B4の部分が通過し、ブレード51Bが全てかき取り部52Bを通過する。
【0057】
このように、ブレード51Bと取り部52Bの先端面(aa面とbb面)の形状により、ブレード51Bがかき取り部52Bを通過する際には、X方向の一端から他端に向かって(
図14等の矢印Iの方向に)、順次、ブレード51Bがかき取り部52Bから離れていく。従って、ブレード51Bに残留しているインクがかき取り部52Bから離れる際に飛散する方向を一定の方向に規制する(狭める)ことができる。
【0058】
次に、上述したかき取り部52Bの側面(cc面)の形状による作用を説明する。
図17は、かき取り部52Bの側面形状による作用を説明するための図である。
図17には、
図13に基づいて説明したかき取り部52Bの側面形状等がX方向から見た側面図として示される。
【0059】
図17のddで指し示す部分は、往路を(
図17の矢印Fの方向に)移動中のブレード51Bがかき取り部52Bから離れる直前の状態を示している。この場合には、ブレード51Bがかき取り部52Bを通過する際、クリーナー52のフレーム52Aから高さ(Y2方向の長さ)h1の地点からブレード51Bが元の形状に戻る。
【0060】
一方、
図17のeeで指し示す部分は、復路を(
図17の矢印Gの方向に)移動中のブレード51Bがかき取り部52Bから離れる直前の状態を示している。この場合には、ブレード51Bがかき取り部52Bを通過する際、クリーナー52のフレーム52Aから高さ(Y2方向の長さ)h2の地点からブレード51Bが元の形状に戻る。
【0061】
両者の、ブレード51Bが元の形状に戻る際の挙動を比較すると、前者(往路)の場合の方が、振幅が大きく、振れる速度も速い。従って、前者の場合の方がブレード51Bから多くのインクが取れて飛散する。このように、かき取り部52Bの側面(cc面)の形状により、より具体的は、当該側面のZ方向に対峙する辺の角度により、ブレード51Bから飛散するインクの量をコントロールできる。
図13、17に示す本実施の形態例の場合には、往路におけるインクの飛散量を多くし、印刷領域Cの方向に飛ぶ可能性のある復路におけるインクの飛散量を抑えている。
【0062】
なお、ブレード51B及びかき取り部52Bの先端面(aa面及びbb面)の形状と、かき取り部52Bの側面形状(cc面)の形状は、
図12、13に示した形状に限らず、上述した作用を発揮できる形状であれば他のものでも構わない。すなわち、aa面とbb面については、aa面におけるX方向の一端から他端へ向けて、順番に、aa面がbb面から離れる形状となっているものであればよい。また、aa面とbb面の形状が、ワイパーブレード51の移動方向での離間距離が、aa面におけるX方向の一方の端から他方の端に向かって、順次、減少することなく増加する、あるいは、増加することなく減少する、形状となっているものであればよい。より正確には、aa面とbb面の形状が、aa面におけるX方向の一端から他方の端に向かって、上記離間距離が増加し続ける、又は、上記離間距離が一部に変化をしない部分を含んで増加し続ける、形状となっているものであればよい。あるいは、aa面とbb面の形状が、aa面におけるX方向の一端から他端に向かって、上記離間距離が減少し続ける、又は、上記離間距離が一部に変化をしない部分を含んで減少し続ける、形状となっているものであればよい。換言すれば、
図12に示した離間距離L(X)のX方向の変化率L´(X)の値が、aa面におけるX方向の一端から他端において、L´(X)>0である、又は、一部においてL´(X)=0でその他の部分でL´(X)>0である、形状となっているものであればよい。あるいは、aa面におけるX方向の一端から他端において、L´(X)<0である、又は、一部においてL´(X)=0でその他の部分でL´(X)<0である、形状となっているものであればよい。また、cc面については、概ね台形形状をしたcc面のZ方向(ワイパーブレード51の移動方向)に対峙する辺の角度が、上記飛散量が変化する原理に基づいて、インクを飛散させたくない方向に応じて設定されたものであればよい。
【0063】
また、aa面及びbb面については、その装置のインクを飛散させたくない方向に応じて、往路と復路の形状を設定することができる。
図18及び
図19は、往路と復路におけるインクの飛散方向を考慮したかき取り部52Bの形状を例示した図である。
【0064】
図18及び
図19には、
図8、12に示したブレード51Bのaa面の形状の場合におけるかき取り部52Bのbb面形状を示している。
図18に示す場合には、上述した作用により、ブレード51Bに付いていたインクは、往路(
図18の矢印F)において矢印S1の方向に飛散し、復路(
図18の矢印G)において矢印S2の方向に飛散する。
【0065】
一方、
図19に示す場合には、上述した作用により、ブレード51Bに付いていたインクは、往路(
図19の矢印F)において矢印S3の方向に飛散し、復路(
図19の矢印G)において矢印S4の方向に飛散する。
【0066】
図18においては、往路と復路でX方向に関してインクの飛散方向が異なるが、かき取り部52BのZ方向の寸法を小さくでき、ワイパーブレード51の移動量を短くできる。一方、
図19においては、かき取り部52BのZ方向の寸法が長くなるが、往路と復路でX方向に関してインクの飛散方向を同じにできる。
【0067】
以上説明したように、本プリンター1においては、ワイパーユニット5の上述したブレード51Bとかき取り部52Bの先端面(aa面とbb面)の形状により、ブレード51Bがかき取り部52Bを通過する際のインクの飛散方向を規定(制御)できる。従って、aa面とbb面の形状を適切に設計することにより、印刷領域Cなどインクを飛散させたくない領域をインクの飛散から確実に防御することができる。具体的には、aa面とbb面の形状を
図8、12、18に示した形状とすることにより、印刷領域Cへのインクの飛散を防止できるとともに、ワイパーブレード51の移動量を短くできる。
【0068】
このように、本プリンター1では、装置の大型化、複雑化を招くことなくインクの飛散をさせたくない領域をインク飛散から確実に防御することができる。
【0069】
また、ブレード51Bとかき取り部52Bの先端面(aa面とbb面)における、移動方向の前端と後端の形状により、ワイパーブレード51の往路と復路におけるインクの飛散方向をそれぞれ制御できる。従って、装置の構造に合わせて柔軟に適用することができる。
【0070】
また、本プリンター1においては、かき取り部52Bの側面形状(cc面の形状)を適切に設計することで、ワイパーブレード51の往路と復路のインク飛散量を制御できる。具体的には、
図13に示す形状とすることにより、復路のインク飛散量を少なくでき、本プリンター1では、印刷領域Cへのインク飛散を防止することができる。さらに、この場合、往路ではインク飛散量が多くなり、十分にブレード51Bのインクを除去することができ、ブレード51Bの固化を防止できる。
【0071】
この側面においても、本プリンター1では、装置の大型化、複雑化を招くことなくインクの飛散をさせたくない領域をインク飛散から確実に防御することができる。
【0072】
本発明の保護範囲は、上記の実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶものである。