特許第6930109号(P6930109)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6930109-バリア性フィルム 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6930109
(24)【登録日】2021年8月16日
(45)【発行日】2021年9月1日
(54)【発明の名称】バリア性フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 9/00 20060101AFI20210823BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20210823BHJP
【FI】
   B32B9/00 A
   B65D65/40 D
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-4579(P2017-4579)
(22)【出願日】2017年1月13日
(65)【公開番号】特開2018-111296(P2018-111296A)
(43)【公開日】2018年7月19日
【審査請求日】2019年11月27日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100158964
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 和郎
(72)【発明者】
【氏名】田 口 洋 介
(72)【発明者】
【氏名】塩 田 聡
【審査官】 加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−076288(JP,A)
【文献】 特開2014−097623(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/051288(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 9/00
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基材と、中間層と、バリア層とをこの順に備えるバリア性フィルムであって、
前記中間層が、ケイ素、酸素、および炭素を含む蒸着膜であり、前記蒸着膜中のケイ素、酸素、および炭素の3元素の合計100%に対して、炭素の割合Cが13%以上23%以下であり、
前記バリア層が、金属酸化物とリン化合物との反応生成物と、ポリビニルアルコール及びエチレン−ビニルアルコール共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の重合体と、を含むコーティング層である、バリア性フィルム。
【請求項2】
前記樹脂基材が、ポリオレフィン樹脂基材またはポリエステル樹脂基材である、請求項1に記載のバリア性フィルム。
【請求項3】
前記金属酸化物が、アルミニウム酸化物である、請求項1または2に記載のバリア性フィルム。
【請求項4】
前記リン化合物が、リン酸、ポリリン酸、亜リン酸、ホスホン酸およびそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のバリア性フィルム。
【請求項5】
前記蒸着膜が、化学気相蒸着膜である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のバリア性フィルム。
【請求項6】
水蒸気透過度が、9.0×10−2g/m/day以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のバリア性フィルム。
【請求項7】
温度60℃および湿度90%の環境下で500時間保存後の水蒸気透過度が、9.0×10−2g/m/day以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のバリア性フィルム。
【請求項8】
包装材料用である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のバリア性フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バリア性フィルムに関し、さらに詳細には、樹脂基材と、中間層と、バリア層とをこの順に備えるバリア性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、酸素あるいは水蒸気等に対するバリア性材料として、フィルム基材に酸化ケイ素、酸化アルミニウム等の無機酸化物を、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学気相成長法等で形成してなる透明ガスバリア性フィルムが注目されている。従来のポリ塩化ビニリデンを積層したバリア性フィルムは、ガス遮断性には優れるが、包装材の廃棄時に塩素が発生することが問題となる。また、アルミ箔等を積層したバリア性フィルムは、ガス遮断性には優れるが、不透明であるため、内容物の誤認による事故を避けるために、医薬品用等の内容物の視認性が要求される用途では用いることができない。
【0003】
上記の技術的課題に対して、プラスチックス材と、その上に設けた少なくともケイ素、酸素、炭素を含む有機ケイ素化合物の重合体で形成された第1層と、第1層の上に設けたケイ素酸化物の第2層とからなるガス遮断性積層プラスチックス材が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載のプラスチックス材は、水蒸気透過率が約0.2〜0.4g/m/day程度であったため、依然として、更に水蒸気バリア性に優れるバリア性フィルムが望まれている。また、耐湿熱性が要求される用途でのバリア性フィルムの使用も望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−345383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、耐水密着性に優れ、かつ高温高湿環境下での保存後であっても水蒸気バリア性に優れたバリア性フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、樹脂基材上に、特定組成の蒸着膜からなる中間層を形成した上で、金属酸化物とリン化合物との反応生成物を含むバリア層をさらに形成することで、耐水密着性に優れ、かつ高温高湿環境下での保存後であっても水蒸気バリア性に優れたバリア性フィルムを提供できることを知見した。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
【0007】
すなわち、本発明の一態様によれば、
樹脂基材と、中間層と、バリア層とをこの順に備えるバリア性フィルムであって、
前記中間層が、ケイ素、酸素、および炭素を含む蒸着膜であり、前記蒸着膜中のケイ素、酸素、および炭素の3元素の合計100%に対して、炭素の割合Cが5%以上30%以下であり、
前記バリア層が、金属酸化物とリン化合物との反応生成物を含む、バリア性フィルムが提供される。
【0008】
本発明の態様においては、前記樹脂基材が、ポリオレフィン樹脂基材またはポリエステル樹脂基材であることが好ましい。
【0009】
本発明の態様においては、前記金属酸化物が、アルミニウム酸化物であることが好ましい。
【0010】
本発明の態様においては、前記リン化合物が、リン酸、ポリリン酸、亜リン酸、ホスホン酸およびそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
【0011】
本発明の態様においては、前記バリア層が、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、多糖類、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸の塩、ポリメタクリル酸およびポリメタクリル酸の塩からなる群より選択される少なくとも1種の重合体をさらに含むことが好ましい。
【0012】
本発明の態様においては、前記蒸着膜が、化学気相蒸着膜であることが好ましい。
【0013】
本発明の態様においては、前記バリア性フィルムは、水蒸気透過度が、9.0×10−2g/m/day以下であることが好ましい。
【0014】
本発明の態様においては、前記バリア性フィルムは、温度60℃および湿度90%の環境下で500時間保存後の水蒸気透過度が、9.0×10−2g/m/day以下であることが好ましい。
【0015】
本発明の態様においては、前記バリア性フィルムが、包装材料用であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、耐水密着性に優れ、かつ高温高湿環境下での保存後であっても水蒸気バリア性に優れたバリア性フィルムを提供することができる。このようなバリア性フィルムは、包装材料等に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明のバリア性フィルムの一実施形態を示した概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<バリア性フィルム>
本発明によるバリア性フィルムは、樹脂基材と、中間層と、バリア層とをこの順に備えるバリア性フィルムである。
【0019】
バリア性フィルムは、水蒸気バリア性に優れ、水蒸気透過度が、好ましくは9.0×10−2g/m/day以下であり、より好ましくは8.0×10−2g/m/day以下であり、さらに好ましくは7.0×10−2g/m/day以下であり、さらにより好ましくは6.0×10−2g/m/day以下である。水蒸気透過度が上記数値範囲を満たせば、高度な水蒸気バリア性を要求される用途であっても、包装材料として用いることができる。なお、水蒸気透過度は、水蒸気透過度測定機(MOCON社製:PERMATRAN)を用いて、JIS K7129Bに準拠して、または、Tecnolox製DELTA PARMを用いて、ISO 15106−5に準拠して測定することができる。
【0020】
バリア性フィルムは、温度60℃および湿度90%の環境下で500時間保存後の水蒸気透過度が、好ましくは9.0×10−2g/m/day以下であり、より好ましくは8.0×10−2g/m/day以下であり、さらに好ましくは7.0×10−2g/m/day以下、さらにより好ましくは6.0×10−2g/m/day以下である。上記条件の保存後の水蒸気透過度が上記数値範囲を満たせば、高温高湿環境下に曝される用途であっても、包装材料として好適に用いることができる。
【0021】
バリア性フィルムの層構成を、図面を参照しながら説明する。図1に示すバリア性フィルム10は、樹脂基材11と、中間層12と、バリア層13とをこの順に備える。以下、本発明のバリア性フィルムを構成する各層について説明する。
【0022】
<樹脂基材>
本発明によるバリア性フィルムを構成する樹脂基材としては、下記の中間層(蒸着膜)を担持できるものであれば特に限定されず、公知の種々の樹脂基材を用いることができる。例えば、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂のフィルムを用いることができる。
【0023】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ユリア・メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチル・1−ペンテン、およびポリブテン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、およびポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ナイロン−6、ナイロン−66、およびポリメタキシレンアジパミド等のポリアミド、ポリ塩化ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体もしくはその鹸化物、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、アイオノマー、フッ素樹脂あるいはこれらの混合物等が挙げられる。特に、ポリオレフィン樹脂およびポリエステル樹脂等の、延伸性、透明性が良好な熱可塑性樹脂が好ましい。これら熱可塑性樹脂からなる樹脂基材はバリア性フィルムの用途に応じて、単層であっても、二種以上の熱可塑性樹脂からなる積層体であってもよい。また、これらの樹脂基材は、下記の蒸着膜との接着性を改良するために、その表面を、例えば、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、アンダーコート処理、プライマーコート処理、フレーム処理等の表面活性化処理を行っておいてもよい。
【0024】
<中間層>
本発明によるバリア性フィルムを構成する中間層は、下記の組成を有する蒸着膜である。蒸着膜は単層であってもよいし、複層であってもよい。本発明において、蒸着膜は、化学気相成長法(CVD法)により形成される化学気相蒸着膜であることが好ましい。化学気相蒸着膜は、物理気相成長法(PVD法)により得られる蒸着膜に比べて、厚膜な蒸着層を形成し易く、また屈曲性に優れ、樹脂基材と下記のバリア層との密着性を向上させることができる。
【0025】
蒸着膜は、ケイ素、酸素、および炭素を含むものである。蒸着膜は、ケイ素、酸素、および炭素の3元素の合計100%に対して、炭素の割合Cは、5%以上30%以下であり、好ましくは7%以上28%以下であり、より好ましくは10%以上25%以下であり、さらに好ましくは13%以上23%以下である。ケイ素の割合Siは、好ましくは10%以上35%以下であり、より好ましくは15%以上34%以下であり、さらに好ましくは20%以上33%以下であり、さらに好ましくは22%以上32%以下である。酸素の割合Oは、好ましくは35%以上60%以下であり、より好ましくは40%以上57%以下であり、さらに好ましくは45%以上55%以下である。蒸着膜中の炭素の割合Cが上記条件を満たすことで、加熱処理時における樹脂基材の熱伸びに対する追従性が向上し、特に高温高湿環境下での保存後であっても水蒸気バリア性に優れる。さらにはケイ素の割合Siおよび酸素の割合Oが上記条件を満たすことで、水蒸気バリア性にさらに優れる。
【0026】
蒸着膜の厚さTは、好ましくは5nm以上100nm以下であり、より好ましくは10nm以上50nm以下である。蒸着膜の厚さが上記条件を満たすことで、バリア性フィルムは、高温高湿環境下での保存後であっても水蒸気バリア性に優れる。蒸着膜の厚さは、蒸着の際のフィルム搬送速度を調節することで、所望の範囲に調節することができる。
【0027】
化学気相成蒸着膜は、一例として以下のようにして形成することができる。具体的には、樹脂基材上に、有機珪素化合物の1種以上を含む製膜用モノマーガスを原料とし、キャリアガスとして、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスを使用し、更に、酸素供給ガスとして、酸素ガス等を使用し、かつ、プラズマ発生装置等を利用するプラズマ化学気相成長法を用いて珪素酸化物を含む化学気相蒸着膜を形成することができる。
【0028】
上記において、プラズマ発生装置としては、例えば、高周波プラズマ、パルス波プラズマ、マイクロ波プラズマ等の従来公知のプラズマ発生装置を使用することができる。本発明においては、高活性の安定したプラズマを得るためには、高周波プラズマ方式による発生装置を使用することが望ましい。
【0029】
製膜用混合ガス組成物の各ガス成分の混合比としては、例えば、製膜用モノマーガス: 酸素ガス:不活性ガス=1:0〜20:0〜5(単位:slm、スタンダードリッターミニットの略)のガス組成比からなる製膜用混合ガス組成物等を使用することができる。このような製膜用混合ガス組成物を用いることで、珪素酸化物を主体とし、これに、更に、炭素、水素、珪素または酸素の1種類以上の元素からなる化合物の少なくとも1種類を化学結合等により含有する蒸着膜を形成することができる。製膜用混合ガス組成物の各ガス成分の混合比を調整することで、化学気相蒸着膜に含まれるケイ素、酸素、および炭素の割合を適宜調整することができる。
【0030】
製膜用モノマーガスを構成する有機珪素化合物としては、例えば、1.1.3.3−テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、その他等を使用することができる。これらの有機珪素化合物の中でも、取り扱い性、形成された連続膜の特性等の観点から、1.1.3.3−テトラメチルジシロキサンやヘキサメチルジシロキサンを原料として使用することが特に好ましい。また、不活性ガスとしては、例えば、アルゴンガス、ヘリウムガス等を使用することができる。
【0031】
樹脂基材と下記のバリア層との密着性をさらに向上させるために、中間層の表面を、例えば、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、アンダーコート処理、プライマーコート処理、フレーム処理等の表面活性化処理を行っておいてもよい。
【0032】
<バリア層>
本発明によるバリア性フィルムを構成するバリア層は、金属酸化物(A)とリン化合物(B)との反応生成物(R)を含むものである。バリア層は、下記の重合体(C)をさらに含んでもよい。これらのバリア層に含まれる各成分について、以下、詳述する。
【0033】
上記の金属酸化物(A)は、加水分解可能な特性基が結合した金属原子(M)を含有する化合物(L)の加水分解縮合物であってもよい。当該特性基の例には、後述する式(I)のXが含まれる。
【0034】
なお、上記の化合物(L)の加水分解縮合物は、実質的に金属酸化物とみなすことが可能である。そのため、この明細書では、化合物(L)の加水分解縮合物を「金属酸化物(A)」という場合がある。すなわち、この明細書において、「金属酸化物(A)」を、「化合物(L)の加水分解縮合物」と読み替えることが可能であり、「化合物(L)の加水分解縮合物」を「金属酸化物(A)」と読み替えることが可能である。
【0035】
バリア層は、金属酸化物(A)の粒子同士が、リン化合物(B)に由来するリン原子を介して結合された構造を有する。リン原子を介して結合している形態には、リン原子を含む原子団を介して結合している形態が含まれる。なお、バリア層は、反応に関与していない金属酸化物(A)および/またはリン化合物(B)を、部分的に含んでいてもよい。
【0036】
金属化合物とリン化合物とが反応すると、金属化合物を構成する金属原子(M)とリン化合物に由来するリン原子(P)とが酸素原子(O)を介して結合したM−O−Pで表される結合が生成する。
【0037】
バリア層において、金属酸化物(A)の各粒子の形状は特に限定されず、例えば、球状、扁平状、多面体状、繊維状、針状などの形状を挙げることができ、繊維状または針状の形状であることが水蒸気バリア性により優れることから好ましい。バリア層は単一の形状を有する粒子のみを有していてもよいし、2種以上の異なる形状を有する粒子を有していてもよい。また、金属酸化物(A)の粒子の大きさも特に限定されず、ナノメートルサイズからサブミクロンサイズのものを例示することができるが、水蒸気バリア性と透明性により優れることから、金属酸化物(A)の粒子のサイズは、平均粒径として1〜100nmの範囲にあることが好ましい。バリア層が上記のような微細構造を有することにより、バリア性フィルムの水蒸気バリア性が向上する。
【0038】
なお、バリア層における上記のような微細構造は、透過型電子顕微鏡(TEM)により当該バリア層の断面を観察することにより確認することができる。また、バリア層における金属酸化物(A)の各粒子の粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)によって得られたバリア層の断面観察像において、各粒子の最長軸における最大長さと、それと垂直な軸における当該粒子の最大長さの平均値として求めることができ、断面観察像において任意に選択した10個の粒子の粒径を平均することにより、上記平均粒径を求めることができる。
【0039】
バリア層において、金属酸化物(A)の各粒子とリン原子との結合形態としては、例えば、金属酸化物(A)を構成する金属原子(M)とリン原子(P)とが酸素原子(O)を介して結合された形態を挙げることができる。金属酸化物(A)の粒子同士は1分子のリン化合物(B)に由来するリン原子(P)を介して結合していてもよいが、2分子以上のリン化合物(B)に由来するリン原子(P)を介して結合していてもよい。結合している2つの金属酸化物(A)の粒子間の具体的な結合形態としては、結合している一方の金属酸化物(A)の粒子を構成する金属原子を(Mα)と表し、他方の金属酸化物(A)の粒子を構成する金属原子を(Mβ)と表すと、例えば、(Mα)−O−P−O−(Mβ)の結合形態;(Mα)−O−P−[O−P]−O−(Mβ)の結合形態;(Mα)−O−P−Z−P−O−(Mβ)の結合形態;(Mα)−O−P−Z−P−[O−P−Z−P]−O−(Mβ)の結合形態などが挙げられる。なお上記結合形態の例において、nは1以上の整数を表し、Zはリン化合物(B)が分子中に2つ以上のリン原子を有する場合における2つのリン原子間に存在する構成原子群を表し、リン原子に結合しているその他の置換基の記載は省略している。バリア層において、1つの金属酸化物(A)の粒子は複数の他の金属酸化物(A)の粒子と結合していることが、得られるバリア性フィルムの水蒸気バリア性の観点から好ましい。
【0040】
(金属酸化物(A))
金属酸化物(A)を構成する金属原子(それらを総称して「金属原子(M)」という場合がある)としては、原子価が2価以上(たとえば、2〜4価や3〜4価)の金属原子を挙げることができ、具体的には、例えば、マグネシウム、カルシウム等の周期表第2族の金属;亜鉛等の周期表第12族の金属;アルミニウム等の周期表第13族の金属;ケイ素等の周期表第14族の金属;チタン、ジルコニウム等の遷移金属などを挙げることができる。なお、ケイ素は半金属に分類される場合があるが、本明細書ではケイ素を金属に含めるものとする。金属酸化物(A)を構成する金属原子(M)は1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。これらの中でも、金属酸化物(A)を製造するための取り扱いの容易さや得られるバリア性フィルムの水蒸気バリア性がより優れることから、金属酸化物(A)を構成する金属原子(M)は、アルミニウム、チタンおよびジルコニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、アルミニウムであることが特に好ましい。
【0041】
金属原子(M)に占める、アルミニウム、チタンおよびジルコニウムの合計の割合は、60モル%以上、70モル%以上、80モル%以上、90モル%以上、95モル%以上、または100モル%であってもよい。また、金属原子(M)に占める、アルミニウムの割合は、60モル%以上、70モル%以上、80モル%以上、90モル%以上、95モル%以上、または100モル%であってもよい。
【0042】
金属酸化物(A)としては、液相合成法、気相合成法、固体粉砕法などの方法により製造されたものを使用することができるが、得られる金属酸化物(A)の形状や大きさの制御性や製造効率などを考慮すると、液相合成法により製造されたものが好ましい。
【0043】
液相合成法においては、加水分解可能な特性基が金属原子(M)に結合した化合物(L)を原料として用いてこれを加水分解縮合させることで、化合物(L)の加水分解縮合物として金属酸化物(A)を合成することができる。また化合物(L)の加水分解縮合物を液相合成法で製造するにあたっては、原料として化合物(L)そのものを用いる方法以外にも、化合物(L)が部分的に加水分解してなる化合物(L)の部分加水分解物、化合物(L)が完全に加水分解してなる化合物(L)の完全加水分解物、化合物(L)が部分的に加水分解縮合してなる化合物(L)の部分加水分解縮合物、化合物(L)の完全加水分解物の一部が縮合したもの、あるいはこれらのうちの2種以上の混合物を原料として用いてこれを縮合または加水分解縮合させることによっても金属酸化物(A)を製造することができる。このようにして得られる金属酸化物(A)も、本明細書では「化合物(L)の加水分解縮合物」ということとする。上記の加水分解可能な特性基(官能基)の種類に特に制限はなく、例えば、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I等)、アルコキシ基、アシロキシ基、ジアシルメチル基、ニトロ基等が挙げられるが、反応の制御性に優れることから、ハロゲン原子またはアルコキシ基が好ましく、アルコキシ基がより好ましい。
【0044】
化合物(L)は、反応の制御が容易で、得られるバリア性フィルムのバリア性が優れることから、以下の式(I)で示される少なくとも1種の化合物(L)を含むことが好ましい。
(n−m) (I)
[式(I)中、Mは、Al、TiおよびZrからなる群より選ばれる金属原子である。Xは、F、Cl、Br、I、RO−、RC(=O)O−、(RC(=O))CH−およびNOからなる群より選ばれる。R、R、RおよびRはそれぞれ、アルキル基、アラルキル基、アリール基およびアルケニル基からなる群より選ばれる。式(I)において、複数のXが存在する場合には、それらのXは互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。式(I)において、複数のRが存在する場合には、それらのRは互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。式(I)において、複数のRが存在する場合には、それらのRは互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。式(I)において、複数のRが存在する場合には、それらのRは互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。式(I)において、複数のRが存在する場合には、それらのRは互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。nはMの原子価に等しい。mは1〜nの整数を表す。]
【0045】
、R、RおよびRが表すアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。R、R、RおよびRが表すアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、トリチル基等が挙げられる。R、R、RおよびRが表すアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基等が挙げられる。R、R、RおよびRが表すアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基等が挙げられる。Rは、例えば、炭素数が1〜10のアルキル基であることが好ましく、炭素数が1〜4のアルキル基であることがより好ましい。Xは、F、Cl、Br、I、RO−であることが好ましい。化合物(L)の好ましい一例では、Xがハロゲン原子(F、Cl、Br、I)または炭素数が1〜4のアルコキシ基(RO−)であり、mはn(Mの原子価)と等しい。金属酸化物(A)を製造するための取り扱いの容易さや得られるバリア性フィルムの水蒸気バリア性がより優れることから、MはAl、TiまたはZrであることが好ましく、Alであることが特に好ましい。化合物(L)の一例では、Xがハロゲン原子(F、Cl、Br、I)または炭素数が1〜4のアルコキシ基(RO−)であり、mはn(Mの原子価)と等しく、MはAlである。
【0046】
化合物(L)の具体例としては、例えば、塩化アルミニウム、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリノルマルプロポキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリノルマルブトキシド、アルミニウムトリs−ブトキシド、アルミニウムトリt−ブトキシド、アルミニウムトリアセテート、アルミニウムアセチルアセトネート、硝酸アルミニウム等のアルミニウム化合物;チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラノルマルブトキシド、チタンテトラ(2−エチルヘキソキシド)、チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンアセチルアセトネート等のチタン化合物;ジルコニウムテトラノルマルプロポキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート等のジルコニウム化合物が挙げられる。これらの中でも、化合物(L)としては、アルミニウムトリイソプロポキシドおよびアルミニウムトリs−ブトキシドから選ばれる少なくとも1つの化合物が好ましい。化合物(L)は1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0047】
本発明の効果が得られる限り、化合物(L)に占める化合物(L)の割合に特に限定はない。化合物(L)以外の化合物が化合物(L)に占める割合は、例えば、20モル%以下や10モル%以下や5モル%以下や0モル%である。一例では、化合物(L)は化合物(L)のみからなる。
【0048】
また、化合物(L)以外の化合物(L)としては、本発明の効果が得られる限り特に限定されないが、例えばマグネシウム、カルシウム、亜鉛、ケイ素等の金属原子に、上述の加水分解可能な特性基が結合した化合物などが挙げられる。なお、ケイ素は半金属に分類される場合があるが、本明細書ではケイ素を金属に含めるものとする。
【0049】
化合物(L)が加水分解されることによって、化合物(L)が有する加水分解可能な特性基の少なくとも一部が水酸基に置換される。さらに、その加水分解物が縮合することによって、金属原子(M)が酸素原子(O)を介して結合された化合物が形成される。この縮合が繰り返されると、実質的に金属酸化物とみなしうる化合物が形成される。なお、このようにして形成された金属酸化物(A)の表面には、通常、水酸基が存在する。
【0050】
本明細書においては、金属原子(M)のモル数に対する、M−O−Mで表される構造における酸素原子(O)のように、金属原子(M)のみに結合している酸素原子(例えば、M−O−Hで表される構造における酸素原子(O)のように金属原子(M)と水素原子(H)に結合している酸素原子は除外する)のモル数の割合([金属原子(M)のみに結合している酸素原子(O)のモル数]/[金属原子(M)のモル数])が0.8以上となる化合物を金属酸化物(A)に含めるものとする。金属酸化物(A)は、上記割合が0.9以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましく、1.1以上であることがさらに好ましい。上記割合の上限は特に限定されないが、金属原子(M)の原子価をnとすると、通常、n/2で表される。
【0051】
上記の加水分解縮合が起こるためには、化合物(L)が加水分解可能な特性基(官能基)を有していることが重要である。それらの基が結合していない場合、加水分解縮合反応が起こらないか極めて緩慢になるため、目的とする金属酸化物(A)の調製が困難になる。
【0052】
加水分解縮合物は、例えば、公知のゾルゲル法で採用される手法により特定の原料から製造することができる。当該原料には、化合物(L)、化合物(L)の部分加水分解物、化合物(L)の完全加水分解物、化合物(L)の部分加水分解縮合物、および化合物(L)の完全加水分解物の一部が縮合したものからなる群より選ばれる少なくとも1種(以下、「化合物(L)系成分」と称する場合がある)を用いることができる。これらの原料は、公知の方法で製造してもよいし、市販されているものを用いてもよい。特に限定はないが、例えば、2〜10個程度の化合物(L)が加水分解縮合することによって得られる縮合物を原料として用いることができる。具体的には、例えば、アルミニウムトリイソプロポキシドを加水分解縮合させて2〜10量体の縮合物としたものを原料の一部として用いることができる。
【0053】
化合物(L)の加水分解縮合物において縮合される分子の数は、化合物(L)系成分を縮合または加水分解縮合する際の条件によって制御することができる。例えば、縮合される分子の数は、水の量、触媒の種類や濃度、縮合または加水分解縮合する際の温度や時間などによって制御することができる。
【0054】
上記したように、バリア層は、反応生成物(R)を含み、前記反応生成物(R)は、少なくとも金属酸化物(A)とリン化合物(B)とが反応してなる反応生成物である。このような反応生成物は金属酸化物(A)とリン化合物(B)とを混合し反応させることにより形成することができる。リン化合物(B)との混合に供される(混合される直前の)金属酸化物(A)は、金属酸化物(A)そのものであってもよいし、金属酸化物(A)を含む組成物の形態であってもよい。好ましい一例では、金属酸化物(A)を溶媒に溶解または分散することによって得られた液体(溶液または分散液)の形態で、金属酸化物(A)がリン化合物(B)と混合される。
【0055】
金属酸化物(A)の溶液または分散液を製造するための好ましい方法を以下に記載する。ここでは、金属酸化物(A)が酸化アルミニウム(アルミナ)である場合を例にとってその分散液を製造する方法を説明するが、他の金属酸化物の溶液や分散液を製造する際にも類似の製造方法を採用することができる。好ましいアルミナの分散液は、アルミニウムアルコキシドを必要に応じて酸触媒でpH調整した水溶液中で加水分解縮合してアルミナのスラリーとし、これを特定量の酸の存在下に解膠することにより得ることができる。
【0056】
アルミニウムアルコキシドを加水分解縮合する際の反応系の温度は特に限定されない。当該反応系の温度は、通常2〜100℃の範囲内である。水とアルミニウムアルコキシドが接触すると液の温度が上昇するが、加水分解の進行に伴いアルコールが副生し、当該アルコールの沸点が水よりも低い場合に当該アルコールが揮発することにより反応系の温度がアルコールの沸点付近以上には上がらなくなる場合がある。そのような場合、アルミナの成長が遅くなることがあるため、95℃付近まで加熱して、アルコールを除去することが有効である。反応時間は反応条件(酸触媒の有無、量や種類など)に応じて相違する。反応時間は、通常、0.01〜60時間の範囲内であり、好ましくは0.1〜12時間の範囲内であり、より好ましくは0.1〜6時間の範囲内である。また、反応は、空気、二酸化炭素、窒素、アルゴンなどの各種気体の雰囲気下で行うことができる。
【0057】
加水分解縮合の際に用いる水の量は、アルミニウムアルコキシドに対して1〜200モル倍であることが好ましく、10〜100モル倍であることがより好ましい。水の量が1モル倍未満の場合には加水分解が充分進行しないため好ましくない。一方200モル倍を超える場合には製造効率が低下したり粘度が高くなったりするため好ましくない。水を含有する成分(例えば塩酸や硝酸など)を使用する場合には、その成分によって導入される水の量も考慮して水の使用量を決定することが好ましい。
【0058】
加水分解縮合に使用する酸触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸、p−トルエンスルホン酸、安息香酸、酢酸、乳酸、酪酸、炭酸、シュウ酸、マレイン酸等を用いることができる。これらの中でも、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、乳酸、酪酸が好ましく、硝酸、酢酸がより好ましい。加水分解縮合時に酸触媒を使用する場合には、加水分解縮合前のpHが2.0〜4.0の範囲内となるように酸の種類に応じて適した量を使用することが好ましい。
【0059】
加水分解縮合により得られたアルミナのスラリーをそのままアルミナ分散液として使用することもできるが、得られたアルミナのスラリーを、特定量の酸の存在下に加熱して解膠することで、透明で粘度安定性に優れたアルミナの分散液を得ることができる。
【0060】
解膠時に使用される酸としては、硝酸、塩酸、過塩素酸、蟻酸、酢酸、プロピオン酸などの1価の無機酸や有機酸を使用することができる。これらの中でも、硝酸、塩酸、酢酸が好ましく、硝酸、酢酸がより好ましい。
【0061】
解膠時の酸として硝酸または塩酸を使用する場合、その量はアルミニウム原子に対して0.001〜0.4モル倍であることが好ましく、0.005〜0.3モル倍であることがより好ましい。0.001モル倍未満の場合には解膠が充分に進行しない、または非常に長い時間を要するなどの不具合を生じる場合がある。また0.4モル倍を超える場合には得られるアルミナの分散液の経時安定性が低下する傾向がある。
【0062】
一方、解膠時の酸として酢酸を使用する場合、その量はアルミニウム原子に対して0.01〜1.0モル倍であることが好ましく、0.05〜0.5モル倍であることがより好ましい。0.01モル倍未満の場合には解膠が充分に進行しない、または非常に長い時間を要するなどの不具合を生じる場合がある。また1.0モル倍を超える場合には得られるアルミナの分散液の経時安定性が低下する傾向がある。
【0063】
解膠時に存在させる酸は、加水分解縮合時に添加されてもよいが、加水分解縮合で副生するアルコールを除去する際に酸が失われた場合には、前記範囲の量になるように、再度、添加することが好ましい。
【0064】
解膠を40〜200℃の範囲内で行うことによって、適度な酸の使用量で短時間に解膠させ、所定の粒子サイズを有し、粘度安定性に優れたアルミナの分散液を製造することができる。解膠時の温度が40℃未満の場合には解膠に長時間を要し、200℃を超える場合には温度を高くすることによる解膠速度の増加量は僅かである一方、高耐圧容器等を必要とし経済的に不利なので好ましくない。
【0065】
解膠が完了した後、必要に応じて、溶媒による希釈や加熱による濃縮を行うことにより、所定の濃度を有するアルミナの分散液を得ることができる。ただし、増粘やゲル化を抑制するため、加熱濃縮を行う場合は、減圧下に、60℃以下で行うことが好ましい。
【0066】
リン化合物(B)(組成物として用いる場合にはリン化合物(B)を含む組成物)との混合に供される金属酸化物(A)はリン原子を実質的に含有しないことが好ましい。しかしながら、例えば、金属酸化物(A)の調製時における不純物の影響などによって、リン化合物(B)(組成物として用いる場合にはリン化合物(B)を含む組成物)との混合に供される金属酸化物(A)中に少量のリン原子が混入する場合がある。そのため、本発明の効果が損なわれない範囲内で、リン化合物(B)(組成物として用いる場合にはリン化合物(B)を含む組成物)との混合に供される金属酸化物(A)は少量のリン原子を含有していてもよい。リン化合物(B)(組成物として用いる場合にはリン化合物(B)を含む組成物)との混合に供される金属酸化物(A)に含まれるリン原子の含有率は、水蒸気バリア性とその安定性により優れるバリア性フィルムが得られることから、当該金属酸化物(A)に含まれる全ての金属原子(M)のモル数を基準(100モル%)として、30モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましく、5モル%以下であることがさらに好ましく、1モル%以下であることが特に好ましく、0モル%であってもよい。
【0067】
バリア層においては、金属酸化物(A)の粒子同士が、リン化合物(B)に由来するリン原子を介して結合された特定の構造を有するが、当該バリア層における金属酸化物(A)の粒子の形状やサイズと、リン化合物(B)(組成物として用いる場合にはリン化合物(B)を含む組成物)との混合に供される金属酸化物(A)の粒子の形状やサイズとは、それぞれ同一であってもよいし異なっていてもよい。すなわち、バリア層の原料として用いられる金属酸化物(A)の粒子は、バリア層を形成する過程で、形状やサイズが変化してもよい。特に、後述するコーティング液(U)を用いてバリア層を形成する場合には、コーティング液(U)中やそれを形成するために使用することのできる後述する液体(S)中において、あるいはコーティング液(U)を基材(X)上に塗布した後の各工程において、形状やサイズが変化することがある。
【0068】
(リン化合物(B))
リン化合物(B)は、金属酸化物(A)と反応可能な部位を含有し、典型的には、そのような部位を複数含有する。好ましい一例では、リン化合物(B)は、そのような部位(原子団または官能基)を2〜20個含有する。そのような部位の例には、金属酸化物(A)の表面に存在する官能基(たとえば水酸基)と反応可能な部位が含まれる。たとえば、そのような部位の例には、リン原子に直接結合したハロゲン原子や、リン原子に直接結合した酸素原子が含まれる。それらのハロゲン原子や酸素原子は、金属酸化物(A)の表面に存在する水酸基と縮合反応(加水分解縮合反応)を起こすことができる。金属酸化物(A)の表面に存在する官能基(たとえば水酸基)は、通常、金属酸化物(A)を構成する金属原子(M)に結合している。
【0069】
リン化合物(B)としては、例えば、ハロゲン原子または酸素原子がリン原子に直接結合した構造を有するものを用いることができ、このようなリン化合物(B)を用いることにより金属酸化物(A)の表面に存在する水酸基と(加水分解)縮合することで結合することができる。リン化合物(B)は、1つのリン原子を有するものであってもよいし、2つ以上のリン原子を有するものであってもよい。
【0070】
リン化合物(B)は、リン酸、ポリリン酸、亜リン酸、ホスホン酸およびそれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であってもよい。ポリリン酸の具体例としては、ピロリン酸、三リン酸、4つ以上のリン酸が縮合したポリリン酸などが挙げられる。上記の誘導体の例としては、リン酸、ポリリン酸、亜リン酸、ホスホン酸の、塩、(部分)エステル化合物、ハロゲン化物(塩化物等)、脱水物(五酸化ニリン等)などが挙げられる。また、ホスホン酸の誘導体の例には、ホスホン酸(H−P(=O)(OH))のリン原子に直接結合した水素原子が種々の官能基を有していてもよいアルキル基に置換されている化合物(例えば、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、N,N,N’,N’−エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)等)や、その塩、(部分)エステル化合物、ハロゲン化物および脱水物も含まれる。さらに、リン酸化でんぷんなど、リン原子を有する有機高分子も、前記リン化合物(B)として使用することができる。これらのリン化合物(B)は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。これらのリン化合物(B)の中でも、後述するコーティング液(U)を用いてバリア層を形成する場合におけるコーティング液(U)の安定性と得られるバリア性フィルムの水蒸気バリア性がより優れることから、リン酸を単独で使用するか、またはリン酸とそれ以外のリン化合物とを併用することが好ましい。
【0071】
上記したように、前記バリア層は反応生成物(R)を含み、前記反応生成物(R)は、少なくとも金属酸化物(A)とリン化合物(B)とが反応してなる反応生成物である。このような反応生成物は金属酸化物(A)とリン化合物(B)とを混合し反応させることにより形成することができる。金属酸化物(A)との混合に供される(混合される直前の)リン化合物(B)は、リン化合物(B)そのものであってもよいしリン化合物(B)を含む組成物の形態であってもよく、リン化合物(B)を含む組成物の形態が好ましい。好ましい一例では、リン化合物(B)を溶媒に溶解することによって得られる溶液の形態で、リン化合物(B)が金属酸化物(A)と混合される。その際の溶媒は任意のものが使用できるが、水または水を含む混合溶媒が好ましい溶媒として挙げられる。
【0072】
金属酸化物(A)との混合に供されるリン化合物(B)またはリン化合物(B)を含む組成物では金属原子の含有率が低減されていることが、水蒸気バリア性とその安定性により優れるバリア性フィルムが得られることから好ましい。金属酸化物(A)との混合に供されるリン化合物(B)またはリン化合物(B)を含む組成物に含まれる金属原子の含有率は、当該リン化合物(B)またはリン化合物(B)を含む組成物に含まれる全てのリン原子のモル数を基準(100モル%)として、100モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であることがより好ましく、5モル%以下であることがさらに好ましく、1モル%以下であることが特に好ましく、0モル%であってもよい。
【0073】
(反応生成物(R))
反応生成物(R)には、金属酸化物(A)およびリン化合物(B)のみが反応することによって生成される反応生成物が含まれる。また、反応生成物(R)には、金属酸化物(A)とリン化合物(B)とさらに他の化合物とが反応することによって生成される反応生成物も含まれる。反応生成物(R)は、後述する製造方法で説明する方法によって形成できる。
【0074】
(金属酸化物(A)とリン化合物(B)との比率)
バリア層において、金属酸化物(A)を構成する金属原子のモル数Nとリン化合物(B)に由来するリン原子のモル数Nとが、1.0≦(モル数N)/(モル数N)≦3.6の関係を満たすことが好ましく、1.1≦(モル数N)/(モル数N)≦3.0の関係を満たすことがより好ましい。(モル数N)/(モル数N)の値が3.6を超えると、金属酸化物(A)がリン化合物(B)に対して過剰となり、金属酸化物(A)の粒子同士の結合が不充分となり、また、金属酸化物(A)の表面に存在する水酸基の量が多くなるため、水蒸気バリア性とその安定性が低下する傾向がある。一方、(モル数N)/(モル数N)の値が1.0未満であると、リン化合物(B)が金属酸化物(A)に対して過剰となり、金属酸化物(A)との結合に関与しない余剰なリン化合物(B)が多くなり、また、リン化合物(B)由来の水酸基の量が多くなりやすく、やはり水蒸気バリア性とその安定性が低下する傾向がある。
【0075】
なお、上記比は、バリア層を形成するためのコーティング液における、金属酸化物(A)の量とリン化合物(B)の量との比によって調整できる。バリア層におけるモル数Nとモル数Nとの比は、通常、コーティング液における比であって金属酸化物(A)を構成する金属原子のモル数とリン化合物(B)を構成するリン原子のモル数との比と同じである。
【0076】
(重合体(C))
バリア層は、特定の重合体(C)をさらに含んでもよい。重合体(C)は、水酸基、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、およびカルボキシル基の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基(f)を有する重合体である。バリア層において重合体(C)は、それが有する官能基(f)によって金属酸化物(A)の粒子およびリン化合物(B)に由来するリン原子の一方または両方と直接的にまたは間接的に結合していてもよい。またバリア層において反応生成物(R)は、重合体(C)が金属酸化物(A)やリン化合物(B)と反応するなどして生じる重合体(C)部分を有していてもよい。なお、本明細書において、リン化合物(B)としての要件を満たす重合体であって官能基(f)を含む重合体は、重合体(C)には含めずにリン化合物(B)として扱う。
【0077】
重合体(C)としては、官能基(f)を有する構成単位を含む重合体を用いることができる。このような構成単位の具体例としては、ビニルアルコール単位、アクリル酸単位、メタクリル酸単位、マレイン酸単位、イタコン酸単位、無水マレイン酸単位、無水フタル酸単位などの、官能基(f)を1個以上有する構成単位が挙げられる。重合体(C)は、官能基(f)を有する構成単位を1種類のみ含んでいてもよいし、官能基(f)を有する構成単位を2種類以上含んでいてもよい。
【0078】
より優れた水蒸気バリア性およびその安定性を有するバリア性フィルムを得るために、重合体(C)の全構成単位に占める、官能基(f)を有する構成単位の割合は、10モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましく、40モル%以上であることがさらに好ましく、70モル%以上であることが特に好ましく、100モル%であってもよい。
【0079】
官能基(f)を有する構成単位とそれ以外の他の構成単位とによって重合体(C)が構成されている場合、当該他の構成単位の種類は特に限定されない。当該他の構成単位の例には、アクリル酸メチル単位、メタクリル酸メチル単位、アクリル酸エチル単位、メタクリル酸エチル単位、アクリル酸ブチル単位、およびメタクリル酸ブチル単位等の(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位;ギ酸ビニル単位および酢酸ビニル単位等のビニルエステルから誘導される構成単位;スチレン単位およびp−スチレンスルホン酸単位等の芳香族ビニルから誘導される構成単位;エチレン単位、プロピレン単位、およびイソブチレン単位等のオレフィンから誘導される構成単位などが含まれる。重合体(C)が2種類以上の構成単位を含む場合、当該重合体(C)は、交互共重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体、およびテーパー型共重合体のいずれであってもよい。
【0080】
水酸基を有する重合体(C)の具体例としては、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルの部分けん化物、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、でんぷん等の多糖類、多糖類から誘導される多糖類誘導体などが挙げられる。カルボキシル基、カルボン酸無水物基またはカルボキシル基の塩を有する重合体(C)の具体例としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(アクリル酸/メタクリル酸)およびそれらの塩などを挙げることができる。また、官能基(f)を含有しない構成単位を含む重合体(C)の具体例としては、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸交互共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体のけん化物などが挙げられる。より優れた水蒸気バリア性およびその安定性を有するバリア性フィルムを得るために、重合体(C)は、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、多糖類、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸の塩、ポリメタクリル酸、およびポリメタクリル酸の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体であることが好ましい。
【0081】
重合体(C)の分子量に特に制限はない。より優れた水蒸気バリア性および力学的物性(落下衝撃強さ等)を有するバリア性フィルムを得るために、重合体(C)の数平均分子量は、5,000以上であることが好ましく、8,000以上であることがより好ましく、10,000以上であることがさらに好ましい。重合体(C)の数平均分子量の上限は特に限定されず、例えば、1,500,000以下である。
【0082】
水蒸気バリア性をより向上させるために、バリア層における重合体(C)の含有率は、バリア層の質量を基準(100質量%)として、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましく、20質量%以下であってもよい。重合体(C)は、バリア層中の他の成分と反応していてもよいし、反応していなくてもよい。なお、本明細書では、重合体(C)が他の成分と反応している場合も、重合体(C)と表現する。たとえば、重合体(C)が、金属酸化物(A)、および/または、リン化合物(B)に由来するリン原子と結合している場合も、重合体(C)と表現する。この場合、上記の重合体(C)の含有率は、金属酸化物(A)および/またはリン原子と結合する前の重合体(C)の質量をバリア層の質量で除して算出する。
【0083】
バリア層は、少なくとも金属酸化物(A)とリン化合物(B)とが反応してなる反応生成物(R)(ただし、重合体(C)部分を有するものを含む)のみから構成されていてもよいし、当該反応生成物(R)と、反応していない重合体(C)のみから構成されていてもよいが、その他の成分をさらに含んでいてもよい。
【0084】
上記の他の成分としては、例えば、炭酸塩、塩酸塩、硝酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、硫酸水素塩、ホウ酸塩、アルミン酸塩等の無機酸金属塩;シュウ酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、ステアリン酸塩等の有機酸金属塩;アセチルアセトナート金属錯体(アルミニウムアセチルアセトナート等)、シクロペンタジエニル金属錯体(チタノセン等)、シアノ金属錯体等の金属錯体;層状粘土化合物;架橋剤;重合体(C)以外の高分子化合物;可塑剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;難燃剤などが挙げられる。
【0085】
バリア層における上記の他の成分の含有率は、50質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましく、5質量%以下であることが特に好ましく、0質量%(他の成分を含まない)であってもよい。
【0086】
バリア層の厚さ(2層以上のバリア層を有する場合には各バリア層の厚さの合計)は、4.0μm以下であることが好ましく、2.0μm以下であることがより好ましく、1.0μm以下であることがさらに好ましく、0.9μm以下であることが特に好ましい。バリア層を薄くすることによって、印刷、ラミネート等の加工時におけるバリア性フィルムの寸法変化を低く抑えることができ、さらにバリア性フィルムの柔軟性が増し、その力学的特性を、基材自体の力学的特性に近づけることができる。バリア層の厚さは、バリア層の形成に用いられる後述するコーティング液(U)の濃度や、その塗布方法によって制御することができる。
【0087】
<用途>
本発明によるバリア性フィルムは、高度なバリア性を要求される様々な分野の製品に適用することができる。例えば、包装製品や、太陽電池、有機発光ダイオード、および表示装置等の電気・電子製品に用いることができる。
【0088】
<包装材料>
本発明によるバリア性フィルムは、包装材料として特に好適に用いることができる。例えば、医薬品、化粧品、化学品、飲食品等の用途に用いることができる。バリア性フィルムは、透明性に優れ、かつ高温高湿環境下での保存後であっても水蒸気バリア性に優れたものであるため、内容物の視認性や高度な水蒸気バリア性が要求される、医薬品用包装材料として特に好適に用いることができる。
【実施例】
【0089】
<バリア性フィルムの製造>
[実施例1]
(コーティング液の調整)
蒸留水230質量部を撹拌しながら70℃に昇温した。その蒸留水に、アルミニウムイソプロポキシド(東京化成工業(株)製)88質量部を30分かけて滴下し、液温を徐々に95℃まで上昇させ、発生するイソプロパノールを留出させることによって加水分解縮合を行った。得られた液体に、60質量%の硝酸水溶液4.0質量部を添加し、95℃で30分撹拌することによって加水分解縮合物の粒子の凝集体を解こうさせた後に、固形分濃度がアルミナ換算で10質量%になるように濃縮した。こうして得られた分散液16.79質量部に対して、蒸留水30.89質量部、メタノール19.00質量部、および4質量%のポリビニルアルコール水溶液0.61質量部を加え、均一になるように撹拌することによって、分散液Aを得た。また、8.5質量%に希釈したリン酸水溶液32.72質量部を、溶液Bとして使用した。続いて、分散液Aを撹拌しながら、溶液Bを室温(23℃)にて滴下することでコーティング液Cを得た。
【0090】
次に、樹脂基材として二軸延伸PETフィルム(東洋紡(株)製:A4100、厚さ100μm、表面粗さRa1.2nm)を用意した。該PETフィルムの一方の面上に、プラズマCVD装置を用いて、下記の条件で蒸着膜組成比Si:O:Cが30:52:18である化学気相蒸着膜を形成した。
(蒸着条件)
・投入電力 0.3kW
・原料ガス組成 HMDSO
・He/Mn/O 100/100/1500sccm
・電極用Ar 100sccm
・成膜圧力 5Pa
・膜厚 22nm
・フィルム搬送速度 2m/min
次に上記化学気相蒸着膜の面上に対してコーティング液Cを塗工し、120℃で5分乾燥後、180℃で5分の熱処理を行うことで、乾燥後の塗工膜の厚さが0.3μmとなるバリア層を形成し、バリア性フィルムを得た。
【0091】
[実施例2]
実施例1の化学気相蒸着膜面に対して、プラズマによる表面処理を実施後にコーティング液Cを塗工した以外は、実施例1と同様にしてバリア性フィルムを得た。
(プラズマ処理条件)
・投入電力 0.3kW
・ガス組成 O
・ガス流量 900sccm
・チャンバー圧力 3Pa
・フィルム搬送速度 2m/min
【0092】
[比較例1]
市販のシリカ蒸着フィルム(シリカ蒸着の炭素割合5%未満)を用意し、該フィルムのシリカ蒸着面にコーティング液Cを塗工した以外は、実施例1と同様にしてバリア性フィルムを得た。
【0093】
[比較例2]
化学気相蒸着膜を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にしてバリア性フィルムを得た。
【0094】
<バリア性フィルムの性能評価>
上記の実施例および比較例で製造したバリア性フィルムに下記の測定を行った。
【0095】
(水蒸気透過度の測定)
バリア性フィルムの水蒸気透過度を、水蒸気透過度測定機(MOCON社製:PERMATRAN)を用いて、JIS K7129Bに準拠して、または、Tecnolox製DELTA PARMを用いて、ISO 15106−5に準拠して、初期状態で測定し、また温度60℃および湿度90%の環境下で500時間保存後に測定した。
【0096】
(耐水密着性評価方法)
バリア性フィルムのバリア層面とナイロンフィルムを貼り合わせ、ナイロンフィルム上に無延伸ポリプロピレンフィルムをさらに貼り合わせて、下記層構成の耐水密着性評価用ラミネートフィルムを作成した。
層構成:バリア性フィルム/DL/ONY15μm/DL/CPP60μm
(DL:ドライラミネート、ONY:ナイロンフィルム、CPP:無延伸ポリプロピレンフィルム)
得られたラミネートフィルムを用いて、剥離界面に水を垂らしながらT字剥離、測定速度50mm/minで耐水ラミ強度(N/15mm)を測定し、下記の基準で評価した。
[評価基準]
◎:2.5N/mm以上
○:2〜2.5N/15mm
×:2N/15mm以下
【0097】
【表1】
【符号の説明】
【0098】
10 バリア性フィルム
11 樹脂基材
12 中間層
13 バリア層
図1