(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
操作パネルを回動させないで使うユーザーも存在しているため、特許文献1の方法では、ユーザーの意図に反して搬送装置が移動してしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、搬送装置が移動することをより適切に抑制することができる搬送装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の搬送装置は、搬送装置であって、搬送装置の移動に用いられるキャスターと、排出口から排出された搬送対象物を受ける受け位置と、排出口から排出された搬送対象物を受けない非受け位置と、に変位可能な受け部と、受け部が受け位置に変位した場合に、搬送装置の移動を制動し、受け部が非受け位置に変位した場合に、搬送装置の制動を解除する制動部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
ユーザーは一般的に搬送対象物を床に落とすことを嫌うため、搬送時には受け部を受け位置に変位させる。この構成によれば、受け部を受け位置に変位させると、これに連動して、搬送装置の移動が制動される。したがって、搬送対象物が排出口から排出される際に、ユーザーの意図に反して搬送装置が移動することを抑制することができる。
【0008】
この場合、受け部は、受け軸を中心に回転することで、受け位置と非受け位置とに変位することが好ましい。
【0009】
この構成によれば、受け部を回転させることにより、受け部を受け位置と非受け位置とに容易に変位させることができる。
【0010】
この場合、制動部は、受け部が受け位置に変位した場合に、キャスターに接触して搬送装置の移動を制動するキャスター接触位置に変位し、受け部が非受け位置に変位した場合に、キャスターから離間して搬送装置の制動を解除するキャスター離間位置に変位するキャスター離接部、を有することが好ましい。
【0011】
この構成によれば、受け部が受け位置に変位した場合には、キャスター離接部がキャスター接触位置に変位してキャスターに接触することで、搬送装置の移動が制動される。また、受け部が非受け位置に変位した場合には、キャスター離接部がキャスター離間位置に変位してキャスターから離間することで、搬送装置の制動が解除される。
【0012】
この場合、キャスター離接部は、ユーザーが受け部を変位させる力により、キャスター接触位置とキャスター離間位置とに変位することが好ましい。
【0013】
この構成によれば、簡易な構成により、キャスター離接部をキャスター接触位置とキャスター離間位置とに変位させることができる。
【0014】
この場合、受け部は、受け軸を中心に回転することで、受け位置と非受け位置とに変位し、制動部は、受け部とキャスター離接部とを連結する連結部、をさらに有することが好ましい。
【0015】
この構成よれば、受け部が受け位置に回転した場合には、連結部を介して受け部に連結されたキャスター離接部が、受け軸を中心にキャスター接触位置側に回転する。その結果、キャスター離接部が、キャスター接触位置に変位してキャスターに接触する。これにより、搬送装置の移動が制動される。また、受け部が非受け位置に回転した場合には、連結部を介して受け部に連結されたキャスター離接部が、受け軸を中心にキャスター離間位置側に回転する。その結果、キャスター離接部が、キャスター離間位置に変位してキャスターから離間する。これにより、搬送装置の制動が解除される。
【0016】
この場合、受け部は、受け軸を中心に回転することで、受け位置と非受け位置とに変位し、キャスター離接部は、離接軸を中心に回転可能に設けられ、制動部は、受け部の回転に連動して、キャスター離接部を回転させる回転部、をさらに有することが好ましい。
【0017】
この構成によれば、受け部が受け位置に回転した場合には、回転部により、キャスター離接部がキャスター接触位置側に回転する。その結果、キャスター離接部が、キャスター接触位置に変位してキャスターに接触する。これにより、搬送装置の移動が制動される。また、受け部が非受け位置に回転した場合には、回転部により、キャスター離接部がキャスター離間位置側に回転する。その結果、キャスター離接部が、キャスター離間位置に変位してキャスターから離間する。これにより、搬送装置の制動が解除される。
【0018】
この場合、制動部は、キャスター離接部をキャスター接触位置側に付勢する離接部付勢部材、をさらに有し、回転部は、受け部の回転に連動して回転し、キャスター離接部のキャスター接触位置側で、キャスター離接部と接していることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、回転部がキャスター離接部と接する側とは反対側に回転すると、離接部付勢部材により付勢されたキャスター離接部が、キャスター接触位置側に回転する。一方、回転部がキャスター離接部と接する側に回転すると、回転部に押されたキャスター離接部が、離接部付勢部材に抗して、キャスター離間位置側に回転する。
【0020】
この場合、受け部は、受け軸を中心に回転することで、受け位置と非受け位置とに変位し、キャスター離接部は、昇降可能に設けられ、制動部は、受け部の回転に連動して、キャスター離接部を昇降させる第1昇降部、をさらに有することが好ましい。
【0021】
この構成よれば、受け部が受け位置に回転した場合には、第1昇降部により、キャスター離接部が下降する。その結果、キャスター離接部が、キャスター接触位置に変位してキャスターに接触する。これにより、搬送装置の移動が制動される。また、受け部が非受け位置に回転した場合には、第1昇降部により、キャスター離接部が上昇する。その結果、キャスター離接部が、キャスター離間位置に変位してキャスターから離間する。これにより、搬送装置の制動が解除される。
【0022】
この場合、第1昇降部は、受け部に設けられた第1係合突起と、キャスター離接部に設けられ、第1係合突起が係合する第1係合開口と、により構成されるカム機構、を有することが好ましい。
【0023】
この構成によれば、カム機構により、受け部の回転動作を、キャスター離接部の昇降動作に変換することができる。
【0024】
この場合、キャスター離接部には、複数のキャスターに対応して、キャスターと接触するキャスター接触部が複数設けられていることが好ましい。
【0025】
この構成によれば、複数のキャスターがロックされるため、搬送装置の移動を効果的に制動することができる。
【0026】
この場合、キャスター離接部は、キャスターの外周面と接触するキャスター接触部を有し、キャスター接触部は、キャスターの外周面に倣った円弧状に形成されていることが好ましい。
【0027】
この構成によれば、キャスターに対してキャスター接触部を適切に接触させることができる。
【0028】
この場合、制動部は、受け部が受け位置に変位した場合に、搬送装置の設置面に接触して搬送装置の移動を制動する設置面接触位置に変位し、受け部が非受け位置に変位した場合に、設置面から離間して搬送装置の制動を解除する設置面離間位置に変位する設置面離接部、を有することが好ましい。
【0029】
この構成によれば、受け部が受け位置に変位した場合には、設置面離接部が設置面接触位置に変位して設置面に接触することで、搬送装置の移動が制動される。また、受け部が非受け位置に変位した場合には、設置面離接部が設置面離間位置に変位して設置面から離間することで、搬送装置の制動が解除される。
【0030】
この場合、設置面離接部は、ユーザーが受け部を変位させる力により、設置面接触位置と設置面離間位置とに変位することが好ましい。
【0031】
この構成によれば、簡易な構成により、設置面離接部を設置面接触位置と設置面離間位置とに変位させることができる。
【0032】
この場合、受け部は、受け軸を中心に回転することで、受け位置と非受け位置とに変位し、設置面離接部は、昇降可能に設けられ、制動部は、受け部の回転に連動して、設置面離接部を昇降させる第2昇降部、をさらに有することが好ましい。
【0033】
この構成よれば、受け部が受け位置に回転した場合には、第2昇降部により、設置面離接部が下降する。その結果、設置面離接部が、設置面接触位置に変位して設置面に接触する。これにより、搬送装置の移動が制動される。また、受け部が非受け位置に回転した場合には、第2昇降部により、設置面離接部が上昇する。その結果、設置面離接部が、設置面離間位置に変位して設置面から離間する。これにより、搬送装置の制動が解除される。
【0034】
この場合、第2昇降部は、受け部に設けられた第2係合突起と、設置面離接部に設けられ、第2係合突起が係合する第2係合開口と、により構成されるカム機構、を有することが好ましい。
【0035】
この構成によれば、カム機構により、受け部の回転動作を、設置面離接部の昇降動作に変換することができる。
【0036】
この場合、搬送対象物に対して処理を行う処理部、をさらに備えたことが好ましい。
【0037】
この構成によれば、ユーザーの意図に反して搬送装置が移動することが抑制されるため、処理部により搬送対象物に対して適切に処理を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の搬送装置の一実施形態である印刷装置について説明する。
図1は印刷装置の斜視図であり、
図2は印刷装置の右側面図である。なお、以下の説明において、「上下」とは、
図2の紙面における上下をいい、「前後」とは、
図2の紙面における左右をいい、「左右」とは、
図2の紙面に垂直な方向をいうものとする。もちろん、これらの方向は、説明の便宜上のものにすぎず、本発明を何ら限定するものではない。
【0040】
図1および
図2に基づいて、印刷装置Aの概略構成について説明する。印刷装置Aは、2つの支持脚1と、装置本体2と、受け部3と、制動機構4とを備えている。
【0041】
2つの支持脚1は、装置本体2の左右に設けられ、装置本体2および受け部3を支持している。支持脚1は、略長方形の板状に形成されている。各支持脚1には、2つのキャスター11が前後に設けられている。すなわち、印刷装置Aには、合計4つのキャスター11が設けられている。もちろん、キャスター11の個数は、特に限定されるものではない。キャスター11は、印刷装置Aの移動に用いられる。
【0042】
装置本体2は、筐体21と、操作パネル22と、ロール体セット部23と、搬送機構24と、印刷機構25と、カット機構26とを備えている。また、筐体21の前面には、排出口211が設けられている。
【0043】
操作パネル22は、ユーザーインターフェースとして機能する。操作パネル22には、各種表示を行うディスプレー221と、複数の操作ボタン222とが設けられている。
【0044】
ロール体セット部23には、ロール紙Pがロール状に巻かれたロール体Rがセットされる。
【0045】
搬送機構24は、ロール体セット部23にセットされたロール体Rからロール紙Pを繰り出し、排出口211に向けて搬送する。搬送機構24は、複数の搬送ローラー対241を備えている。
【0046】
印刷機構25は、搬送されるロール紙Pに対して、印刷を行う。印刷機構25は、ロール紙Pに対してインクジェット方式でインクを吐出する複数の印刷ヘッド251を備えている。なお、印刷機構25の印刷方式については、インクジェット方式に限定されるものではなく、例えば、電子写真方式、サーマル方式或いはドットインパクト方式でもよい。
【0047】
カット機構26は、印刷機構25と排出口211との間に設けられている。カット機構26は、ロール紙Pをロール紙Pの幅方向に切断し、印刷機構25による印刷済み部分を切り離す。カット機構26は、ロール紙Pの幅方向に移動可能に設けられたカッター261を備えている。
【0048】
受け部3は、受け部3に装着された受け材31を介して、排出口211から排出されたロール紙Pを受ける。受け部3は、装着バー32と、左右2つのバー支持部33とを備えている。
【0049】
装着バー32には、受け材31の一端が着脱可能に装着される。なお、受け材31の他端は、図示しない受け材装着部に着脱可能に装着される。受け材31は、装着バー32と受け材装着部との間に、下方に撓んだ状態で装着され、排出口211から排出されたロール紙Pを受ける。なお、受け材31の材質は特に限定されないが、例えば布製のものを用いることができる。
【0050】
バー支持部33は、バー支持部33の一方の端部すなわち上端部において、装着バー32を支持している。また、バー支持部33は、バー支持部33の他方の端部すなわち下端部において、受け軸34を中心に回転可能に、支持脚1に支持されている。バー支持部33が受け軸34を中心に回転すると、装着バー32がバー支持部33と一体となって回転する。換言すれば、受け部3は、受け軸34を中心に回転可能に設けられている。
【0051】
受け部3は、受け軸34を中心に回転することで、排出口211から排出されたロール紙Pを受ける受け位置と、排出口211から排出されたロール紙Pを受けない非受け位置とに変位可能である。すなわち、受け軸34を図示反時計回りに回転させると受け位置に変位し、排出口211から排出されたロール紙Pを受け部3が受けて床に落とさないようにすることが可能になる。そして、受け軸34を図示時計回りに回転させると非受け位置に変位し、排出口211から排出されたロール紙Pを受け部3が受けることが不可能になり、排出口211から排出されたロール紙Pが床に落ちるようになる。なお、
図2は、受け位置にある受け部3を実線で、非受け位置にある受け部3を二点鎖線で示す。ユーザーは、例えば装着バー32を手で持って受け部3を回転させることにより、受け部3を受け位置と非受け位置とに容易に変位させることができる。受け部3が受け位置にある状態では、バー支持部33は上端部が前方に傾斜した傾斜姿勢となり、受け部3の上端部が支持脚1よりも前方に突出する。一方、受け部3が非受け位置に有る状態では、バー支持部33は略垂直姿勢となり、受け部3は両支持脚1の間に収まっている。
【0052】
ユーザーは、印刷装置Aが印刷処理を行う際には、排出口211から排出されるロール紙Pが床に落ちずに受け部3に受けられるように、受け部3を受け位置に回転させる。一方、ユーザーは、印刷装置Aを移動させる際には、受け部3が受け位置に位置していると、受け部3の上端部が支持脚1よりも前方に突出して移動の邪魔になるため、受け部3を非受け位置に回転させる。
【0053】
図3および
図4を参照して、制動機構4について説明する。なお、
図3、
図5、
図7および
図9は、受け部3が受け位置にあるときの受け部3および制動機構4を実線で、受け部3が非受け位置にあるときの受け部3および制動機構4を二点鎖線で示す。逆に、
図4、
図6、
図8および
図10は、受け部3が受け位置にあるときの受け部3および制動機構4を二点鎖線で、受け部3が非受け位置にあるときの受け部3および制動機構4を実線で示す。また、
図3ないし
図10では、装置本体2を省略して示す。
【0054】
制動機構4は、印刷装置Aの移動を制動するものであるが、受け部3の回転に連動して、印刷装置Aの移動を制動する状態と、印刷装置Aの制動を解除する状態とが切り替わるようになっている。すなわち、制動機構4は、受け部3が受け位置に回転した場合に、印刷装置Aの移動を制動し、受け部3が非受け位置に回転した場合に、印刷装置Aの制動を解除する。ここで、制動とは、制動が解除された状態に比べ、印刷装置Aを移動し難くすることを意味する。すなわち、制動とは、印刷装置Aを完全に移動不可とする場合に限定されず、制動されていない状態よりも強い力を印刷装置Aに加えれば印刷装置Aが移動する場合も含む概念である。
【0055】
制動機構4は、左右の支持脚1のそれぞれ前側に設けられた2つのキャスター11に対応して、左右に2つ設けられている。制動機構4は、キャスター離接部41と、連結部42とを備えている。
【0056】
キャスター離接部41は、支持脚1の前後に設けられた2つのキャスター11のうち、前方に設けられたキャスター11に対して離接する。キャスター離接部41がキャスター11と接触することで、キャスター11がロックされ、印刷装置Aの移動が制動される。なお、キャスター離接部41は、前後に設けられた2つのキャスター11のうち、後方に設けられたキャスター11に対して離接する構成でもよく、2つのキャスター11の双方に対して離接する構成でもよい。
【0057】
キャスター離接部41のうち、キャスター11と接するキャスター接触部411は、平坦状に形成されている。キャスター接触部411は、キャスター11との間に適度な摩擦力を生じさせる摩擦係数を有している。なお、キャスター接触部411の形状は、平坦状に限定されるものではなく、例えば、キャスター11の外周面に倣った円弧状でもよい。
【0058】
キャスター離接部41は、
図3に示すように、図示反時計回りに回転することで、キャスター11と接触するキャスター接触位置に変位し、
図4に示すように、図示時計回りに回転することで、キャスター11から離間するキャスター離間位置に変位する。
【0059】
キャスター離接部41は、連結部42を介して受け部3と連結されており、受け部3を回転させると、受け部3と一体となって受け軸34を中心に回転する。すなわち、キャスター離接部41は、受け部3の回転に連動して、受け部3と同じ方向に回転する。
【0060】
連結部42は、受け部3とキャスター離接部41とを連結している。連結部42は、バー支持部33の下端部から、バー支持部33の長さ方向に対して交差する方向(例えば、直交する方向)に延びている。なお、連結部42とバー支持部33とを、一部材により構成してもよく、別部材により構成してもよい。同様に、連結部42とキャスター接触部411とを、一部材により構成してもよく、別部材により構成してもよい。
【0061】
このように構成された制動機構4では、
図3に示すように、ユーザーが受け部3を受け位置側、すなわち図示反時計回りに回転させると、キャスター離接部41が受け部3と同じ図示反時計回りに、すなわちキャスター接触位置側に回転する。その結果、キャスター離接部41が、キャスター接触位置に変位してキャスター11に接触する。そして、受け部3および制動機構4の自重により、キャスター離接部41がキャスター11を押圧する。これにより、キャスター接触部411とキャスター11との間に摩擦力が生じ、キャスター11がロックされて回転不能或いは回転困難な状態となり、印刷装置Aの移動が制動される。なお、受け部3および制動機構4の自重に加えて、付勢部材によりキャスター離接部41をキャスター接触位置側に付勢することにより、キャスター離接部41がキャスター11を押圧する構成でもよい。
【0062】
一方、
図4に示すように、ユーザーが受け部3を非受け位置側、すなわち図示時計回りに回転させると、キャスター離接部41が受け部3と同じ図示時計回りに、すなわちキャスター離間位置側に回転する。その結果、キャスター離接部41が、キャスター離間位置に変位してキャスター11から離間する。これにより、キャスター11が回転可能な状態となり、印刷装置Aの制動が解除される。
【0063】
このように、キャスター離接部41は、ユーザーが受け部3を変位させる力により、キャスター接触位置とキャスター離間位置とに変位する。このため、簡易な構成により、キャスター離接部41をキャスター接触位置とキャスター離間位置とに変位させることができる。
【0064】
以上のように、本実施形態の印刷装置Aは、キャスター11と、受け部3と、制動機構4とを備えている。キャスター11は、印刷装置Aの移動に用いられる。受け部3は、排出口211から排出されたロール紙Pを受ける受け位置と、排出口211から排出されたロール紙Pを受けない非受け位置とに変位可能である。制動機構4は、受け部3が受け位置に変位した場合に、印刷機構25の移動を制動し、受け部3が非受け位置に変位した場合に、印刷機構25の制動を解除する。
【0065】
この構成よれば、ロール紙Pが排出口211から排出される際に、ユーザーが、排出口211から排出されるロール紙Pが受け部3に受けられるように、受け部3を受け位置に変位させると、これに連動して、印刷装置Aの移動が制動される。したがって、ロール紙Pが排出口211から排出される際に、ユーザーの意図に反して印刷装置Aが移動することを抑制することができる。換言すれば、受け部3を受け位置に変位させる操作が、印刷装置Aの移動を制動するための操作を兼ねているため、ユーザーが印刷装置Aの移動を制動するための操作を行わないまま印刷装置Aがロール紙Pの搬送を開始することを抑制することができる。これにより、ロール紙Pが排出口211から排出される際、すなわちロール紙Pに印刷が行われる際に、印刷装置Aが自身の振動或いは外力により移動してしまうことを抑制することができ、印刷ズレ等の不具合が生じることを抑制することができる。
【0066】
また、印刷装置Aを移動させる際には、受け部3が移動の邪魔とならないように、ユーザーは、受け部3を非受け位置に変位させる。これにより、印刷装置Aの制動が解除される。したがって、ユーザーは、受け部3を移動の邪魔とならない位置に変位させるための操作と、印刷装置Aの制動を解除するための操作とを、一つの操作で行うことができる。
【0067】
さらに、印刷装置Aでは、受け部3を操作することで、印刷装置Aの移動が制動された状態と、印刷装置Aの制動が解除された状態とを切り替えることができるため、キャスター11に設けられたレバー等を操作してキャスター11のロック・アンロックを切り替える構成に比べ、操作性を向上させることができる。本実施形態では、キャスター11が、デザイン性の観点から、印刷装置Aの左方或いは右方からは、支持脚1に隠されて見えにくいようになっており、キャスター11をロック・アンロックするためのレバー等をキャスター11に設けても、支持脚1が邪魔となってそのレバー等を操作することが難しいため、本発明が特に有効である。
【0068】
続いて、印刷装置Aの変形例について説明する。なお、以下の各変形例では、上記の実施形態と同様の内容については、適宜説明を省略し、上記の実施形態とは異なる点を中心に説明する。
【0069】
図5および
図6に基づいて、第1変形例の印刷装置Aにおける制動機構4について説明する。第1変形例の制動機構4は、キャスター離接部41と、回転部43とを備えている。
【0070】
キャスター離接部41のうち、キャスター11と接触するキャスター接触部411は、キャスター11の外周面に倣った円弧状に形成されている。キャスター接触部411の形状は、キャスター11の外周面に倣った円弧状に限定されるものではなく、例えば、平坦状でもよい。
【0071】
キャスター離接部41は、離接軸48を中心に回転可能に設けられている。キャスター離接部41は、
図5に示すように、図示時計回りに回転することで、キャスター11と接触するキャスター接触位置に変位し、
図6に示すように、図示反時計回りに回転することで、キャスター11から離間するキャスター離間位置に変位する。さらに、キャスター離接部41は、離接部付勢部材44により、キャスター接触位置側に付勢されている。なお、離接部付勢部材44としては、例えば、圧縮コイルばね或いは板ばねを用いることができる。
【0072】
回転部43は、上記の実施形態における連結部42と同様に、バー支持部33の下端部から、バー支持部33の長さ方向に対して交差する方向に延びている。そのため、回転部43は、受け部3が回転すると、受け部3と一体になって回転する。また、回転部43は、キャスター離接部41のキャスター接触位置側で、キャスター離接部41と接している。
【0073】
受け部3が受け位置側に回転すると、回転部43が図示反時計回りに、すなわちキャスター離接部41と接する側とは反対側に回転し、離接部付勢部材44により付勢されたキャスター離接部41が、キャスター接触位置側に回転する。一方、受け部3が非受け位置側に回転すると、回転部43が図示時計回りに、すなわちキャスター離接部41と接する側に回転し、回転部43に押されたキャスター離接部41が、離接部付勢部材44に抗して、キャスター離間位置側に回転する。このように、回転部43は、受け部3の回転に連動して、キャスター離接部41を回転させる。
【0074】
このように構成された制動機構4では、
図5に示すように、ユーザーが受け部3を受け位置側に回転させると、回転部43がキャスター離接部41と接する側とは反対側に回転し、離接部付勢部材44に付勢されたキャスター離接部41がキャスター接触位置側に回転する。その結果、キャスター離接部41が、キャスター接触位置に変位してキャスター11に接触する。そして、離接部付勢部材44の付勢力により、キャスター離接部41がキャスター11を押圧する。これにより、キャスター接触部411とキャスター11との間に摩擦力が生じ、キャスター11がロックされて回転不能或いは回転困難な状態となり、印刷装置Aの移動が制動される。
【0075】
一方、
図6に示すように、ユーザーが受け部3を非受け位置側に回転させると、回転部43がキャスター離接部41と接する側に回転し、キャスター離接部41が離接部付勢部材44に抗してキャスター離間位置側に回転する。その結果、キャスター離接部41が、キャスター離間位置に変位してキャスター11から離間する。これにより、キャスター11が回転可能な状態となり、印刷装置Aの制動が解除される。なお、非受け位置に変位した受け部3の受け位置側に、受け部3を押える押さえ部材を設けてもよい。この押さえ部材により、受け部3が離接部付勢部材44の付勢力によって受け位置側に回転することが抑制され、キャスター離接部41が離接部付勢部材44の付勢力によってキャスター接触位置側に回転することが抑制される。
【0076】
図7および
図8に基づいて、第2変形例の印刷装置Aにおける制動機構4について説明する。第2変形例の制動機構4は、キャスター離接部41と、第1昇降部45とを備えている。
【0077】
キャスター離接部41は、支持脚1の前後に設けられた2つのキャスター11に対して離接し、2つのキャスター11の双方をロックする。このため、キャスター離接部41には、前後2つのキャスター11に対応して、円弧状のキャスター接触部411が2つ設けられている。なお、キャスター離接部41は、前後に設けられた2つのキャスター11のうち、いずれか一方のみをロックする構成でもよい。
【0078】
キャスター離接部41は、昇降可能に設けられている。キャスター離接部41は、
図7に示すように、下降することで、2つのキャスター11と接触するキャスター接触位置に変位し、
図8に示すように、上昇することで、2つのキャスター11から離間するキャスター離間位置に変位する。なお、印刷装置Aには、図示しないが、キャスター離接部41の昇降をガイドするガイド部材が設けられていることが好ましい。
【0079】
第1昇降部45は、第1係合突起451と、第1係合開口452とを備えている。第1係合突起451は、バー支持部33の側面に設けられ、受け軸34よりも上端部側、すなわち装着バー32側に位置している。そのため、第1係合突起451は、受け部3が回転すると、受け部3と一体になって回転する。第1係合開口452は、キャスター離接部41に設けられ、第1係合突起451が係合している。第1係合開口452および第1係合突起451は、受け部3の回転動作を、キャスター離接部41の昇降動作に変換するカム機構(より具体的には、反対カム)を構成している。
【0080】
受け部3が非受け位置側に回転し、第1係合突起451が図示時計回りに回転すると、その途中で、第1係合突起451が第1係合開口452の上辺に当たり、さらに第1係合突起451が図示時計回りに回転すると、第1係合突起451により第1係合開口452の上辺が押されるようにして、キャスター離接部41が上昇する。一方、受け部3が受け位置側に回転し、第1係合突起451が図示反時計回りに回転すると、第1係合突起451上に第1係合開口452の上辺が支持された状態で、キャスター離接部41が下降し、キャスター接触位置に変位する。その後、さらに第1係合突起451が図示反時計回りに回転すると、第1係合突起451が第1係合開口452の上辺から離れる。このように、第1昇降部45は、受け部3の回転に連動して、キャスター離接部41を昇降させる。
【0081】
このように構成された制動機構4では、
図7に示すように、ユーザーが受け部3を受け位置側に回転させると、受け部3に設けられた第1係合突起451が図示反時計回りに回転し、キャスター離接部41が下降する。その結果、キャスター離接部41が、キャスター接触位置に変位してキャスター11に接触する。そして、キャスター離接部41の自重により、キャスター離接部41がキャスター11を押圧する。これにより、キャスター接触部411とキャスター11との間に摩擦力が生じ、キャスター11がロックされて回転不能或いは回転困難な状態となり、印刷装置Aの移動が制動される。なお、キャスター離接部41の自重に加え、付勢部材によりキャスター離接部41をキャスター接触位置側に付勢することにより、キャスター離接部41がキャスター11を押圧する構成でもよい。
【0082】
一方、
図8に示すように、ユーザーが受け部3を非受け位置側に回転させると、受け部3に設けられた第1係合突起451が図示時計回りに回転し、キャスター離接部41が上昇する。その結果、キャスター離接部41が、キャスター離間位置に変位してキャスター11から離間する。これにより、キャスター11が回転可能な状態となり、印刷装置Aの制動が解除される。
【0083】
図9および
図10に基づいて、第3変形例の印刷装置Aにおける制動機構4について説明する。第3変形例の制動機構4は、設置面離接部46と、第2昇降部47とを備えている。
【0084】
設置面離接部46は、印刷装置Aの設置面Fに対して離接する。設置面離接部46が設置面Fと接触することで、印刷装置Aの移動が制動される。なお、設置面離接部46が設置面Fと接触した状態では、キャスター11が設置面Fから浮いた状態となってもよい。
【0085】
設置面離接部46のうち、設置面Fと接する設置面接触部461は、平坦状に形成されている。設置面接触部461は、設置面Fとの間に適度な摩擦力を生じさせる摩擦係数を有している。なお、設置面接触部461の形状は、平坦状に限定されるものではなく、例えば、複数の溝或いは凸部が形成された凹凸状でもよい。
【0086】
設置面離接部46は、昇降可能に設けられている。設置面離接部46は、
図9に示すように、下降することで、設置面Fと接触する設置面接触位置に変位し、
図10に示すように、上昇することで、設置面Fから離間する設置面離間位置に変位する。なお、印刷装置Aには、図示しないが、設置面離接部46の昇降をガイドするガイド部材が設けられていることが好ましい。
【0087】
第2昇降部47は、第1昇降部45と同様に構成されている。第2昇降部47は、第2係合突起471と、第2係合開口472とを備えている。第2係合突起471は、バー支持部33の側面に設けられ、受け軸34よりも上端部側、すなわち装着バー32側に位置している。そのため、第2係合突起471は、受け部3が回転すると、受け部3と一体になって回転する。第2係合開口472は、設置面離接部46に設けられ、第2係合突起471が係合している。第2係合開口472および第2係合突起471は、第1係合開口452および第1係合突起451と同様に、受け部3の回転動作を、設置面離接部46の昇降動作に変換するカム機構を構成している。このカム機構により、第2昇降部47は、受け部3の回転に連動して、設置面離接部46を昇降させる。
【0088】
このように構成された制動機構4では、
図9に示すように、ユーザーが受け部3を受け位置側に回転させると、受け部3に設けられた第2係合突起471が図示反時計回りに回転し、設置面離接部46が下降する。その結果、設置面離接部46が、設置面接触位置に変位して設置面Fに接触する。そして、設置面離接部46の自重により、設置面離接部46が設置面Fを押圧する。これにより、設置面接触部461と設置面Fとの間に摩擦力が生じ、印刷装置Aの移動が制動される。なお、設置面離接部46の自重に加え、付勢部材により設置面離接部46を設置面接触位置側に付勢することにより、設置面離接部46が設置面Fを押圧する構成でもよい。
【0089】
一方、
図10に示すように、ユーザーが受け部3を非受け位置側に回転させると、受け部3に設けられた第2係合突起471が図示時計回りに回転し、設置面離接部46が上昇する。その結果、設置面離接部46が、設置面離間位置に変位して設置面Fから離間する。これにより、印刷装置Aの制動が解除される。
【0090】
このように、設置面離接部46は、ユーザーが受け部3を変位させる力により、設置面接触位置と設置面離間位置とに変位する。このため、簡易な構成により、設置面離接部46を設置面接触位置と設置面離間位置とに変位させることができる。
【0091】
なお、ロール紙Pは、「搬送対象物」の一例である。制動機構4は、「制動部」の一例である。印刷機構25は、「処理部」の一例である。
【0092】
本発明は、上記の実施形態およびその変形例に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採用可能であることは言うまでもない。例えば、上記の実施形態は、上述した、受け部3の変位と制動とを連動させるために様々な機構を採用することのほかに、以下のような形態に変更することができる。
【0093】
受け部3は、受け軸34を中心に回転することで、受け位置と非受け位置とに変位する構成に限定されるものではなく、例えば、平行移動することで、受け位置と非受け位置とに変位する構成でもよい。
【0094】
受け部3は、手動で受け位置と非受け位置とに変位させる構成に限定されるものではなく、モーター等の駆動部により受け部3を受け位置と非受け位置とに変位させる構成でもよい。
【0095】
キャスター離接部41は、ユーザーが受け部3を変位させる力により、キャスター接触位置とキャスター離間位置とに変位する構成に限定されるものではない。例えば、受け部3が受け位置および非受け位置に変位したことを検出する検出部と、キャスター離接部41をキャスター接触位置とキャスター離間位置とに変位させる駆動部と、検出部の検出結果に基づいて駆動部を制御する制御部と、を備えた構成でもよい。この場合、検出部により受け部3が受け位置に変位したことが検出されると、制御部により駆動部を制御し、キャスター離接部41をキャスター接触位置に変位させる。また、検出部により受け部3が非受け位置に変位したことが検出されると、制御部により駆動部を制御し、キャスター離接部41がキャスター離間位置に変位させる。設置面離接部46についても同様である。
【0096】
キャスター離接部41や設置面離接部46は、受け部3が受け位置に変位した際に、自重や付勢部材によってキャスター11や設置面Fを押圧する構成に限定されるものではない。ユーザーが受け部3を変位させる力によりキャスター離接部41や設置面離接部46がキャスター11や設置面Fに接触をし、接触した状態でキャスター離接部41や設置面離接部46がロックされることにより接触状態を維持し、キャスター11や設置面Fを押圧する構成を採用することも可能である。接触した状態でキャスター離接部41や設置面離接部46をロックするための機構も様々な機構を採用可能であるが、受け部3を変位させる際にユーザーが操作しやすいように受け部3の前側にロックを操作する機構を設けることが望ましい。
【0097】
キャスター離接部41がキャスター11に接触する態様としては、キャスター11の外周面に接触する態様に限定されるものではなく、例えば、キャスター11の一方の側面若しくは両側面又はキャスター11の回動軸に接触する態様でもよい。また、キャスター離接部41に設けられた凸部或いは凹部と、キャスター11又はキャスター11の回動軸に設けられた凹部或いは凸部とが接触する、すなわち嵌合することにより、キャスター11をロックする態様でもよい。さらに、キャスター接触部411とキャスター11との間の摩擦力により、キャスター11をロックする構成に限定されるものではなく、例えば、キャスター接触部411とキャスター11との間の磁力により、キャスター11をロックする構成でもよい。
【0098】
搬送対象物は、ロール紙Pに限定されず、例えばカット紙であってもよい。搬送対象物の形状、サイズおよび厚さは特に限定されるものではない。また、搬送対象物の材質についても、特に限定されるものではなく、紙のほか、例えば、樹脂、木材或いは金属でもよい。
【0099】
処理部が搬送対象物に行う処理は、印刷処理に限定されるものではなく、例えば、搬送対象物に印刷された画像を読み取るスキャン処理、搬送対象物を切り抜くレーザー加工処理、或いは搬送対象物を所定の形状に打ち抜くダイカット処理でもよい。同様に、搬送装置は、印刷装置Aに限定されるものではなく、例えば、スキャナー装置、レーザー加工装置、或いはダイカット装置でもよい。また、搬送装置は、異なる処理(例えば印刷処理とスキャン処理)を行う複数の処理部を備えた複合機でもよい。さらに、搬送装置は、このような処理部を備えず、搬送対象物を搬送するだけの構成でもよい。