特許第6930334号(P6930334)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6930334液体吐出装置、及び、液体吐出装置に設けられた駆動回路
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6930334
(24)【登録日】2021年8月16日
(45)【発行日】2021年9月1日
(54)【発明の名称】液体吐出装置、及び、液体吐出装置に設けられた駆動回路
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20210823BHJP
   B41J 2/14 20060101ALI20210823BHJP
【FI】
   B41J2/01 301
   B41J2/14 611
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-184255(P2017-184255)
(22)【出願日】2017年9月26日
(65)【公開番号】特開2019-59061(P2019-59061A)
(43)【公開日】2019年4月18日
【審査請求日】2020年8月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125689
【弁理士】
【氏名又は名称】大林 章
(74)【代理人】
【識別番号】100128598
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 聖一
(74)【代理人】
【識別番号】100121108
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 太朗
(72)【発明者】
【氏名】山田 智仁
(72)【発明者】
【氏名】西分 一宏
(72)【発明者】
【氏名】松山 徹
【審査官】 長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−085550(JP,A)
【文献】 特開2007−301844(JP,A)
【文献】 特開2017−147259(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0058695(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第106469693(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
H05K 1/18
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、
前記フレームに固定され、第1面及び第2面を有する基板と、
前記第1面に設けられた第1回路と、
前記第2面に設けられた第2回路と、
熱伝導シートと、
駆動信号により駆動されて液体を吐出可能なヘッドユニットと、
を備え、
前記第1回路は、
第1トランジスター及び第2トランジスターを用いて前記駆動信号を生成する駆動信号生成回路を含み、
前記熱伝導シートは、
前記フレームと、前記第1面と、前記第1トランジスターと、前記第2トランジスターと、に接し、
前記第1回路のうち前記第1面から最も離れた部分と、前記第1面との距離は、
前記第2回路のうち前記第2面から最も離れた部分と、前記第2面との距離よりも短い、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記第1回路は、
前記駆動信号の波形を指定する波形指定信号を生成する波形指定回路を含み、
前記第1トランジスター及び前記第2トランジスターは、
前記波形指定信号により指定される波形を有する前記駆動信号を生成する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記第1トランジスター及び前記第2トランジスターは、
バイポーラトランジスターである、
ことを特徴とする、請求項1または2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記第2回路は、
前記駆動信号生成回路に電源を供給する電源回路を含み、
前記電源回路は、
交流電圧が入力され、前記交流電圧を平滑化する平滑化コンデンサを備える、
ことを特徴とする、請求項1乃至3のうち何れか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記熱伝導シートの厚みは、
前記第1回路のうち前記第1面から最も離れた部分と前記第1面との距離以上である、
ことを特徴とする、請求項1乃至4のうち何れか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記熱伝導シートは、
伸縮性を有する、
ことを特徴とする、請求項1乃至5のうち何れか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記基板を前記フレームに固定するためのネジを備え、
前記熱伝導シートは、
前記ネジにより前記フレームに固定されている、
ことを特徴とする、請求項1乃至6のうち何れか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記ヘッドユニットは、
720個以上の吐出部を備え、
前記吐出部は、
前記駆動信号により駆動されて、前記液体を吐出可能である、
ことを特徴とする、請求項1乃至7のうち何れか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
フレームと、
前記フレームに固定され、第1面及び第2面を有する基板と、
熱伝導シートと、
駆動信号により駆動されて液体を吐出可能なヘッドユニットと、
を具備する液体吐出装置に設けられた駆動回路であって、
前記第1面に設けられた第1回路と、
前記第2面に設けられた第2回路と、
を備え、
前記第1回路は、
第1トランジスター及び第2トランジスターを用いて前記駆動信号を生成する駆動信号生成回路を含み、
前記熱伝導シートは、
前記フレームと、前記第1面と、前記第1トランジスターと、前記第2トランジスターと、に接し、
前記第1回路のうち前記第1面から最も離れた部分と、前記第1面との距離は、
前記第2回路のうち前記第2面から最も離れた部分と、前記第2面との距離よりも短い、
ことを特徴とする駆動回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、及び、液体吐出装置に設けられた駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンター等の液体吐出装置は、駆動信号によりヘッドユニットを駆動して、ヘッドユニットからインク等の液体を吐出させることで、記録媒体に画像を形成する。
一般的に、ヘッドユニットを駆動するための駆動信号は、大振幅の信号である。よって、駆動信号を生成する駆動信号生成回路は、駆動信号を生成する際に発熱する。そこで、液体吐出装置には、駆動信号生成回路の温度上昇を抑制するために、駆動信号生成回路において発生する熱を逃がすためのヒートシンクまたは冷却ファンが設けられることがある(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−294705号公報
【特許文献1】特開2001−144474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、液体吐出装置の小型化が進んでいる。しかし、液体吐出装置に対して、ヒートシンクまたは冷却ファンを備える場合、液体吐出装置の小型化に支障を来たすことがあった。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、駆動信号生成回路において発生する熱を逃がすための放熱機構を設ける場合に、従来と比較して、液体吐出装置の小型化を容易とする技術の提供を、解決課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、本発明に係る液体吐出装置は、フレームと、前記フレームに固定され、第1面及び第2面を有する基板と、前記第1面に設けられた第1回路と、前記第2面に設けられた第2回路と、熱伝導シートと、駆動信号により駆動されて液体を吐出可能なヘッドユニットと、を備え、前記第1回路は、第1トランジスター及び第2トランジスターを用いて前記駆動信号を生成する駆動信号生成回路を含み、前記熱伝導シートは、前記フレームと、前記第1面と、前記第1トランジスターと、前記第2トランジスターと、に接し、前記第1回路のうち前記第1面から最も離れた部分と、前記第1面との距離は、前記第2回路のうち前記第2面から最も離れた部分と、前記第2面との距離よりも短い、ことを特徴とする。
【0007】
この態様によれば、第1トランジスター及び第2トランジスタを用いて駆動信号を生成する駆動信号生成回路において発生する熱を、熱伝導シートを介してフレームへと放熱することができる。熱伝導シートは、シート状の放熱部材である。このため、熱伝導シートを設けるために確保すべき空間は小さい。ヒートシンクは、放熱効率を高めるために、十分な表面積の確保が必要となる。このため、ヒートシンクを設けるために確保すべき空間は大きくなる。冷却ファンは、十分な量の空気を送風するために、十分な大きさのファンとモーターとを備える。このため、冷却ファンを設ける為に確保すべき空間は大きくなる。従って、この態様によれば、駆動信号生成回路において発生する熱を熱伝導シートにより放熱するため、ヒートシンクまたは冷却ファンにより放熱する場合と比較して、放熱機構を設けるために確保すべき空間を小さくすることができる。このため、この態様によれば、液体吐出装置の小型化が容易となる。
また、この態様によれば、駆動信号生成回路を含む第1回路の基板からの高さが、第2回路の基板からの高さよりも低い。このため、この態様によれば、第1回路の基板からの高さが、第2回路の基板からの高さよりも高い場合と比較して、基板の第1面と熱伝導シートとの密着性を高くすることが可能となる。これにより、この態様によれば、熱伝導シートによる放熱の効率性を高くすることが可能となる。
【0008】
上述した液体吐出装置において、前記第1回路は、前記駆動信号の波形を指定する波形指定信号を生成する波形指定回路を含み、前記第1トランジスター及び前記第2トランジスターは、前記波形指定信号により指定される波形を有する前記駆動信号を生成する、ことを特徴としてもよい。
【0009】
この態様によれば、熱伝導シートを介する放熱により温度上昇が抑制されている第1面に波形指定回路が設けられる。このため、この態様によれば、波形指定回路が高温となることで誤作動を起こす可能性を抑制することが可能となる。
【0010】
上述した液体吐出装置において、前記第1トランジスター及び前記第2トランジスターは、バイポーラトランジスターである、ことを特徴としてもよい。
【0011】
この態様によれば、第1及び第2トランジスターとして電界効果トランジスターが採用される場合と比較して、所望の波形を正確に再現した波形を有する駆動信号の生成が可能となる。このため、この態様によれば、ヘッドユニットを正確に制御し、高品質な印刷を実行することが可能となる。
【0012】
上述した液体吐出装置において、前記第2回路は、前記駆動信号生成回路に電源を供給する電源回路を含み、前記電源回路は、交流電圧が入力され、前記交流電圧を平滑化する平滑化コンデンサを備える、ことを特徴としてもよい。
【0013】
この態様によれば、基板からの高さが高い平滑化コンデンサーが第2面に設けられるため、平滑化コンデンサーが第1面に設けられる場合と比較して、熱伝導シートと基板の第1面との密着性を高めることが可能となる。このため、この態様によれば、駆動信号生成回路で発せられた熱の効率的な放熱が可能となる。
【0014】
上述した液体吐出装置において、前記熱伝導シートの厚みは、前記第1回路のうち前記第1面から最も離れた部分と前記第1面との距離以上である、ことを特徴としてもよい。
【0015】
この態様によれば、熱伝導シートが、第1回路の基板からの高さ以上の厚みを有するため、熱伝導シートの厚みが、第1回路の基板からの高さ未満である場合と比較して、熱伝導シートと基板の第1面との密着性を高めることが可能となる。このため、この態様によれば、駆動信号生成回路で発せられた熱の効率的な放熱が可能となる。
【0016】
上述した液体吐出装置において、前記熱伝導シートは、伸縮性を有する、ことを特徴としてもよい。
【0017】
この態様によれば、熱伝導シートが伸縮性を有するため、熱伝導シートが伸縮性を有さない場合と比較して、熱伝導シートの配置における自由度を高くすることができる。このため、この態様によれば、熱伝導シートを設けるために確保すべき空間を小さくすること可能となり、液体吐出装置の小型化が容易となる。
【0018】
上述した液体吐出装置は、前記基板を前記フレームに固定するためのネジを備え、前記熱伝導シートは、前記ネジにより前記フレームに固定されている、ことを特徴としてもよい。
【0019】
この態様によれば、基板をフレームに固定するネジと、熱伝導シートをフレームに固定するネジとが同一であるため、基板をフレームに固定するネジと、熱伝導シートをフレームに固定するネジとが異なる場合と比較して、熱伝導シートのフレームに対する密着性と、熱伝導シートの基板に対する密着性と、を高くすることができる。このため、この態様によれば、駆動信号生成回路で発せられた熱の効率的な放熱が可能となる。
【0020】
上述した液体吐出装置において、前記ヘッドユニットは、720個以上の吐出部を備え、前記吐出部は、前記駆動信号により駆動されて、前記液体を吐出可能である、ことを特徴としてもよい。
【0021】
この態様によれば、高解像度の画像を印刷することが可能となる。
【0022】
また、本発明に係る駆動回路は、フレームと、前記フレームに固定され、第1面及び第2面を有する基板と、熱伝導シートと、駆動信号により駆動されて液体を吐出可能なヘッドユニットと、を具備する液体吐出装置に設けられた駆動回路であって、前記第1面に設けられた第1回路と、前記第2面に設けられた第2回路と、を備え、前記第1回路は、第1トランジスター及び第2トランジスターを用いて前記駆動信号を生成する駆動信号生成回路を含み、前記熱伝導シートは、前記フレームと、前記第1面と、前記第1トランジスターと、前記第2トランジスターと、に接し、前記第1回路のうち前記第1面から最も離れた部分と、前記第1面との距離は、前記第2回路のうち前記第2面から最も離れた部分と、前記第2面との距離よりも短い、ことを特徴とする。
【0023】
この態様によれば、駆動信号生成回路において発生する熱を熱伝導シートにより放熱するため、ヒートシンクまたは冷却ファンにより放熱する場合と比較して、放熱機構を設けるために確保すべき空間を小さくすることができる。このため、この態様によれば、液体吐出装置の小型化が容易となる。
また、この態様によれば、駆動信号生成回路を含む第1回路の基板からの高さが、第2回路の基板からの高さよりも低い。このため、この態様によれば、第1回路の基板からの高さが、第2回路の基板からの高さよりも高い場合と比較して、基板の第1面と熱伝導シートとの密着性を高くすることが可能となる。これにより、この態様によれば、熱伝導シートによる放熱の効率性を高くすることが可能となる。
【0024】
上述した液体吐出装置において、前記第1回路は、温度を検出するためのサーミスタを含む、ことを特徴としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に係るインクジェットプリンター1の構成の一例を示すブロック図である。
図2】インクジェットプリンター1の概略的な内部構造の一例を示す斜視図である。
図3】吐出部Dの構造の一例を説明するための説明図である。
図4】記録ヘッドHDにおけるノズルNの配置の一例を示す平面図である。
図5】駆動信号生成回路5の構成の一例を示すブロック図である。
図6】電源回路9の構成の一例を示すブロック図である。
図7】基板200上の回路配置の一例を示す平面図である。
図8】基板200上の回路配置の一例を示す平面図である。
図9】基板200と熱伝導シートSHとの位置関係の一例を説明するための説明図である。
図10】基板200と熱伝導シートSHとの位置関係の一例を説明するための説明図である。
図11】ヘッドユニットHUの構成の一例を示すブロック図である。
図12】印刷処理における動作の一例を説明するためのタイミングチャートである。
図13】接続状態指定信号SL[m]の一例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。ただし、各図において、各部の寸法及び縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0027】
<<A.実施形態>>
本実施形態では、インク(「液体」の一例)を吐出して記録用紙P(「媒体」の一例)に画像を形成するインクジェットプリンターを例示して、液体吐出装置を説明する。
【0028】
<<1.インクジェットプリンターの概要>>
以下、図1及び図2を参照しつつ、本実施形態に係るインクジェットプリンター1の構成について説明する。
【0029】
図1は、インクジェットプリンター1の構成の一例を示す機能ブロック図である。インクジェットプリンター1には、パーソナルコンピューターまたはデジタルカメラ等のホストコンピューター(図示省略)から、インクジェットプリンター1が形成すべき画像を示す印刷データImgが供給される。インクジェットプリンター1は、ホストコンピューターから供給される印刷データImgの示す画像を記録用紙Pに形成するための印刷処理を実行する。
【0030】
図1に例示するように、インクジェットプリンター1は、制御モジュール2と、インクを吐出する吐出部Dが設けられたヘッドユニットHUと、ヘッドユニットHUに対する記録用紙Pの相対位置を変化させるための搬送機構7と、を備える。このうち、制御モジュール2は、インクジェットプリンター1の各部の動作を制御する制御回路6と、吐出部Dを駆動するための駆動信号Comを生成する駆動信号生成回路5と、各種情報を記憶する記憶回路4と、インクジェットプリンター1の各部に電力を供給する電源回路9と、温度検出回路81と、報知回路82と、を備える。なお、本実施形態では、一例として、制御モジュール2の各構成要素(制御回路6、駆動信号生成回路5、記憶回路4、電源回路9、温度検出回路81、及び、報知回路82)が、基板200(図2参照)上に形成される場合を想定する。
【0031】
温度検出回路81は、インクジェットプリンター1の温度を検出するサーミスタTM(図7参照)を備え、サーミスタTMによる検出結果を示す検出信号XSを出力する。
報知回路82は、検出信号XSの示す温度が所定の温度以上であるか否かを示す報知信号XHを出力する。例えば、報知回路82は、サーミスタTMから出力される電流値または電圧値等の電気信号と、他の基準となる電気信号とを比較して、2つの電気信号の示す値の大小関係により出力を変化させるものであってもよい。例えば、報知回路82としては、コンパレーターを採用することができる。
【0032】
ヘッドユニットHUは、4M個の吐出部Dを具備する記録ヘッドHDと、駆動信号生成回路5が出力する駆動信号Comを記録ヘッドHDに供給するか否かを切り替える供給回路10と、を備える(本実施形態において、Mは、1≦Mを満たす自然数)。
以下では、記録ヘッドHDに設けられた4M個の吐出部Dの各々を区別するために、順番に、1段、2段、…、4M段と称することがある。また、m段の吐出部Dを、吐出部D[m]と称する場合がある(変数mは、1≦m≦4Mを満たす自然数)。また、インクジェットプリンター1の構成要素や信号等が、吐出部D[m]の段数mに対応するものである場合には、当該構成要素や信号等を表わすための符号に、段数mに対応していることをを示す添え字[m]を付して表現することがある。
また、以下では、駆動信号Comのうち、吐出部Dに供給される駆動信号Comを、供給駆動信号Vinと称する場合がある。また、吐出部D[m]に供給される供給駆動信号Vinを、供給駆動信号Vin[m]と称する場合がある。
【0033】
記憶回路4は、例えば、RAM(Random Access Memory)等の揮発性のメモリーと、ROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、または、PROM(Programmable ROM)等の不揮発性メモリーと、の一方または両方を含んで構成され、ホストコンピューターから供給される印刷データImg、及び、インクジェットプリンター1の制御プログラム等の各種情報を記憶する。
【0034】
制御回路6は、CPU(Central Processing Unit)を含んで構成される。但し、制御回路6は、CPUの代わりに、または、CPUに加えて、FPGA(field-programmable gate array)等のプログラマブルロジックデバイスを備えるものでよい。
制御回路6は、制御回路6に設けられたCPUが、記憶回路4に記憶されている制御プログラムを実行し、当該制御プログラムに従って動作することで、インクジェットプリンター1の各部の動作を制御する。具体的には、制御回路6は、ヘッドユニットHUに設けられた供給回路10を制御するための印刷信号SI、駆動信号生成回路5を制御するための波形指定信号dCom、及び、搬送機構7を制御するための信号等の、インクジェットプリンター1の各部の動作を制御するための信号を生成する。
【0035】
ここで、波形指定信号dComとは、駆動信号Comの波形を指定するデジタルの信号である。つまり、制御回路6は、駆動信号Comの波形を指定する波形指定信号dComを生成する「波形指定回路」の一例である。
また、駆動信号Comとは、吐出部Dを駆動するためのアナログの信号である。駆動信号生成回路5は、デジタルの波形指定信号dComにより規定される波形を有する駆動信号Comを生成する。
また、印刷信号SIとは、吐出部Dの動作の種類を指定するためのデジタルの信号である。具体的には、印刷信号SIは、吐出部Dに対して駆動信号Comを供給するか否かを指定することで、吐出部Dの動作の種類を指定する。ここで、吐出部Dの動作の種類の指定とは、例えば、吐出部Dを駆動するか否かを指定したり、吐出部Dを駆動した際に当該吐出部Dからインクが吐出されるか否かを指定したり、また、吐出部Dを駆動した際に当該吐出部Dから吐出されるインク量を指定したりすることである。
【0036】
印刷処理が実行される場合、制御回路6は、まず、ホストコンピューターから供給される印刷データImgを、記憶回路4に記憶させる。次に、制御回路6は、記憶回路4に記憶されている印刷データImg等の各種データに基づいて、印刷信号SI、波形指定信号dCom、及び、搬送機構7を制御するための信号等の各種制御信号を生成する。そして、制御回路6は、印刷信号SI等の各種制御信号や、記憶回路4に記憶されている各種データに基づいて、ヘッドユニットHUに対する記録用紙Pの相対位置を変化させるように搬送機構7を制御しつつ、吐出部Dが駆動されるように供給回路10を制御する。これにより、制御回路6は、吐出部Dからのインクの吐出の有無、インクの吐出量、及び、インクの吐出タイミング等を調整し、印刷データImgに対応する画像を記録用紙Pに形成する印刷処理が実行されるように、インクジェットプリンター1の各部を制御する。
【0037】
図2は、インクジェットプリンター1の概略的な内部構造の一例を示す斜視図である。
図2に示すように、本実施形態では、インクジェットプリンター1がシリアルプリンターである場合を想定する。具体的には、インクジェットプリンター1は、印刷処理を実行する場合、副走査方向に記録用紙Pを搬送しつつ、副走査方向に交差する主走査方向にヘッドユニットHUを往復動させながら、吐出部Dからインクを吐出させることで、記録用紙P上に印刷データImgに応じたドットを形成する。
以下では、+X方向とその逆方向である−X方向とを「X軸方向」と総称し、+Y方向とその逆方向である−Y方向とを「Y軸方向」と総称し、+Z方向とその逆方向である−Z方向とを「Z軸方向」と総称する。本実施形態では、図2に示すように、−X側(上流側)から+X側(下流側)に向かう方向を副走査方向とし、Y軸方向を主走査方向とする。なお、本実施形態では、一例として、X軸方向、Y軸方向、及び、Z軸方向が、互いに直交する方向である場合を想定するが、X軸方向、Y軸方向、及び、Z軸方向は、互いに交差する方向であればよい。
【0038】
図2に例示するように、本実施形態に係るインクジェットプリンター1は、少なくとも一部が金属製の部材で形成された筐体100と、筐体100の内部に設けられ、筐体100に固定された金属部材と、筐体100の内部においてY軸方向に往復動可能であり、ヘッドユニットHUを搭載するキャリッジ110と、を備える。なお、以下では、筐体100のうち金属製の部材で形成された部分と、筐体100に固定された金属部材と、を「フレームFR」と総称する場合がある。
【0039】
図2に例示するように、本実施形態に係るインクジェットプリンター1は、制御モジュール2の各構成要素が形成された基板200と、基板200及びフレームFRに接するように設けられた熱伝導シートSHと、を備える。
本実施形態では、説明の便宜上、図2に示すように、基板200が、基板200に垂直な直線とY軸方向とが平行となり、基板200がXZ平面に平行となるように設けられる場合を、一例として想定する。
本実施形態では、熱伝導シートSHが、熱伝導性を有し伸縮性を有する平坦なシート状の部材である場合を想定する。また、本実施形態では、図2に示すように、熱伝導シートSHの一部または全部が、基板200とフレームFRとの間に設けられる場合を、一例として想定する。熱伝導シートSHは、制御モジュール2において発生した熱を、フレームFRへと放熱するための構成要素である。
【0040】
また、上述のとおり、本実施形態に係るインクジェットプリンター1は、搬送機構7を備える。
搬送機構7は、印刷処理が実行される場合に、キャリッジ110をY軸方向に往復動させるとともに、記録用紙Pを+X方向に搬送することで、記録用紙PのヘッドユニットHUに対する相対位置を変化させ、記録用紙Pの全体に対するインクの着弾を可能とする。
搬送機構7は、図1に示すように、キャリッジ110を往復動させるための駆動源となる搬送モーター71と、搬送モーター71を駆動するためのモータードライバー72と、記録用紙Pを搬送するための駆動源となる給紙モーター73と、給紙モーター73を駆動するためのモータードライバー74と、を具備する。また、搬送機構7は、図2に示すように、Y軸方向に延在するキャリッジガイド軸76と、搬送モーター71により回転駆動されるプーリー711と回転自在なプーリー712との間に掛け渡されY軸方向に延在するタイミングベルト710と、を具備する。キャリッジ110は、キャリッジガイド軸76によりY軸方向に往復自在に支持されるとともに、固定具120を介してタイミングベルト710の所定箇所に固定されている。このため、搬送機構7は、搬送モーター71によりプーリー711を回転駆動させることで、キャリッジ110をヘッドユニットHUと共に、キャリッジガイド軸76に沿ってY軸方向に往復動させることができる。
【0041】
また、図2に示すように、搬送機構7は、キャリッジ110の下側(−Z側)に設けられたプラテン75と、給紙モーター73の駆動に応じて回転し記録用紙Pを1枚ずつプラテン75上に供給するための給紙ローラ(図示省略)と、給紙モーター73の駆動に応じて回転しプラテン75上の記録用紙Pを排紙口へと搬送する排紙ローラ730と、を備える。このため、搬送機構7は、図2に示すように、記録用紙Pをプラテン75上において−X側(上流側)から+X側(下流側)へと搬送することができる。
【0042】
本実施形態では、図2に例示するように、インクジェットプリンター1のキャリッジ110に、4個のインクカートリッジ31が登載されている。より具体的には、本実施形態では、一例として、シアン、マゼンタ、イエロー、及び、ブラックの、4色(CMYK)のインクと1対1に対応する4個のインクカートリッジ31が、キャリッジ110に搭載されている場合を想定する。
また、本実施形態では、一例として、4M個の吐出部Dが、4個のインクカートリッジ31と1対1に対応する4個のグループに区分されている場合を想定する。そして、各吐出部Dは、当該吐出部Dの属するグループに対応するインクカートリッジ31からインクの供給を受ける。これにより、各吐出部Dは、供給されたインクを内部に充填し、充填したインクをノズルN(図3参照)から吐出することができる。つまり、ヘッドユニットHUが具備する合計4M個の吐出部Dは、全体としてCMYKの4色のインクを吐出することができる。
なお、本実施形態では、一例として、各グループに、M個の吐出部Dが属している場合を想定する。
また、図2は一例に過ぎず、インクカートリッジ31は、キャリッジ110の外部に設けられるものであってもよい。
【0043】
<<2.記録ヘッド及び吐出部の概要>>
図3及び図4を参照しつつ、記録ヘッドHDと、記録ヘッドHDに設けられる吐出部Dと、について説明する。
【0044】
図3は、吐出部Dを含むように記録ヘッドHDを切断した、記録ヘッドHDの概略的な一部断面図である。
図3に示すように、吐出部Dは、圧電素子PZと、内部にインクが充填されたキャビティ320と、キャビティ320に連通するノズルNと、振動板310と、を備える。吐出部Dは、圧電素子PZに供給駆動信号Vinが供給されて当該圧電素子PZが供給駆動信号Vinにより駆動されることにより、キャビティ320内のインクをノズルNから吐出させる。キャビティ320は、キャビティプレート340と、ノズルNが形成されたノズルプレート330と、振動板310と、により区画される空間である。キャビティ320は、インク供給口360を介してリザーバー350と連通している。リザーバー350は、インク取入口370を介して、当該吐出部Dに対応するインクカートリッジ31と連通している。
【0045】
本実施形態では、圧電素子PZとして、図3に示すようなユニモルフ(モノモルフ)型を採用する。なお、圧電素子PZは、ユニモルフ型に限らず、バイモルフ型や積層型等を採用してもよい。
圧電素子PZは、上部電極Zuと、下部電極Zdと、上部電極Zu及び下部電極Zdの間に設けられた圧電体Zmと、を有する。下部電極Zdは、低電位側の電源電位VBSに設定された給電線LHd(図11参照)と電気的に接続される。そして、上部電極Zuに駆動信号Com(供給駆動信号Vin)が供給されて、上部電極Zu及び下部電極Zdの間に電圧が印加されると、当該印加された電圧に応じて圧電素子PZが+Z方向または−Z方向に変位し、その結果、圧電素子PZが振動する。
【0046】
キャビティプレート340の上面開口部には、振動板310が設置される。振動板310には、下部電極Zdが接合されている。このため、圧電素子PZが供給駆動信号Vinにより駆動されて変位すると、振動板310も変位する。そして、振動板310の変位によりキャビティ320の容積が変化し、キャビティ320内に充填されたインクがノズルNより吐出される。
【0047】
図4は、+Z方向または−Z方向からインクジェットプリンター1を平面視した場合の、記録ヘッドHDに設けられた4M個のノズルNの配置の一例を説明するための説明図である。
【0048】
図4に示すように、記録ヘッドHDには、4列のノズル列Lnが設けられる。ここで、ノズル列Lnとは、所定方向に列状に延在するように設けられた複数のノズルNである。本実施形態では、各ノズル列Lnが、M個のノズルNをX軸方向に列状に延在するように配置して構成される場合を想定する。
以下では、記録ヘッドHDに設けられる4列のノズル列Lnを、それぞれ、ノズル列Ln-BK、Ln-CY、Ln-MG、Ln-YLと称する。ここで、ノズル列Ln-BKは、ブラックのインクを吐出する吐出部DのノズルNを配列したノズル列Lnであり、ノズル列Ln-CYは、シアンのインクを吐出する吐出部DのノズルNを配列したノズル列Lnであり、ノズル列Ln-MGは、マゼンタのインクを吐出する吐出部DのノズルNを配列したノズル列Lnであり、ノズル列Ln-YLは、イエローのインクを吐出する吐出部DのノズルNを配列したノズル列Lnである。
【0049】
但し、図4に示すノズル列Lnは一例であり、各ノズル列Lnに属するM個のノズルNは、ノズル列Lnの延在する方向と交差する方向に所定の幅を有して配置されていてもよい。つまり、各ノズル列Lnにおいて、+X側から偶数番目のノズルNと奇数番目のノズルNのY軸方向の位置が相違するように、各ノズル列Lnに属する複数のノズルNが千鳥状に配置されてもよい。また、各ノズル列LnはX軸方向とは異なる方向に延在してもよい。また、本実施形態では、記録ヘッドHDに設けられるノズル列Lnの列数が「4」である場合を例示しているが、記録ヘッドHDには、1列以上のノズル列Lnが設けられていればよい。
【0050】
<<3.駆動信号生成回路の概要>>
次に、図5を参照しつつ、駆動信号生成回路5について説明する。
【0051】
図5は、駆動信号生成回路5の構成を示すブロック図である。
図5に示すように、駆動信号生成回路5は、DA変換回路51と、電圧増幅回路52と、電流増幅回路53と、を備える。
【0052】
DA変換回路51は、波形指定信号dComに基づいて、駆動信号Comの波形を規定する信号Q0を出力する。
電圧増幅回路52は、信号Q0に基づいて、信号Q1及び信号Q2を出力する。具体的には、電圧増幅回路52は、例えば、低電位側の電源電位VBS等の基準となる電位と信号Q0との間の電圧を増幅することで、駆動信号Comの電位に応じた電位を示す信号Q1及び信号Q2を出力する。
【0053】
電流増幅回路53は、トランジスターTr1(「第1トランジスター」の一例)と、トランジスターTr2(「第2トランジスター」の一例)とを含む、所謂プッシュプル回路である。
具体的には、トランジスターTr1は、例えば、NPN型のバイポーラトランジスターであり、ベース(B)に信号Q1が供給され、コレクタ(C)が高電位側の電源電位VHVを供給する給電線LHuに電気的に接続され、エミッタ(E)が駆動信号Comを供給するための配線LHaに電気的に接続されている。
また、トランジスターTr2は、例えば、PNP型のバイポーラトランジスターであり、ベース(B)に信号Q2が供給され、コレクタ(C)が低電位側の電源電位VBSを供給する給電線LHdに電気的に接続され、エミッタ(E)が駆動信号Comを供給するための配線LHaに電気的に接続されている。
【0054】
電流増幅回路53は、信号Q1及び信号Q2に基づいて、駆動信号Comを生成する。
具体的には、電流増幅回路53のうちトランジスターTr1は、信号Q1の電位が上昇する場合にオンし、その結果、駆動信号Comの電位を上昇させる。なお、トランジスターTr1は、信号Q1の電位が一定である場合、及び、信号Q1の電位が下降する場合に、オフする。
他方、電流増幅回路53のうちトランジスターTr2は、信号Q2の電位が下降する場合にオンし、その結果、駆動信号Comの電位を下降させる。なお、トランジスターTr2は、信号Q2の電位が一定である場合、及び、信号Q2の電位が上昇する場合に、オフする。
【0055】
<<4.電源回路の概要>>
次に、図6を参照しつつ、電源回路9について説明する。
【0056】
図6は、電源回路9の構成の概略の一例を示す回路図である。
図6に示すように、電源回路9は、電圧変換回路91と、平滑化回路92と、を備える。
【0057】
電圧変換回路91は、商用交流電源900から供給される交流電圧を変圧し、変圧後の交流電圧を平滑化回路92に対して出力する。具体的には、電圧変換回路91は、入力端子Tx1と、トランスTRSと、を備える。このうち、入力端子Tx1は、電源ケーブル910と電気的に接続することができる端子Tx1Aと端子Tx1Bとを備える。そして、入力端子Tx1には、電源ケーブル910を介して商用交流電源900から交流電圧Vacが入力される。また、トランスTRSは、入力端子Tx1に入力された交流電圧Vacを変圧し、変圧後の交流電圧を平滑化回路92に対して出力する。
【0058】
平滑化回路92は、電圧変換回路91から出力される交流電圧を平滑化して直流電圧に変換する。具体的には、平滑化回路92は、整流回路BDと、平滑化コンデンサHCと、出力端子Tn1と、を備える。このうち、整流回路BDは、例えば、複数のダイオードを含んで構成されるブリッジダイオードであり、電圧変換回路91から入力された交流電圧を整流する。そして、平滑化コンデンサHCは、電圧変換回路91が整流した後の電圧を平滑化して直流電圧Vdcに変換し、当該直流電圧Vdcを、出力端子Tn1に供給する。出力端子Tn1は、内部電源配線920に接続された端子Tn1Aと端子Tn1Bとを備える。端子Tn1Bは、低電位側の電源電位VBSに設定され、給電線LHdに電気的に接続される。端子Tn1Aは、電源電位VBSよりも電位Vdcだけ高電位の高電位側の電源電位VHVに設定され、給電線LHuに電気的に接続される。
【0059】
<<5.基板及び熱伝導シート>>
次に、図7乃至図10を参照しつつ、基板200における回路の配置と、基板200及び熱伝導シートSHの位置関係と、について説明する。
【0060】
図7は、+Y側から基板200を平面視した基板200の平面図の一例である。また、図8は、−Y側から基板200を平面視した基板200の平面図の一例である。本実施形態では、図2に示すように、基板200と、基板200の+Y方向に位置するフレームFRと、の間に、熱伝導シートSHが設けられている場合を想定する。すなわち、図7は、基板200のうち、熱伝導シートSH側の面(以下、「面G1」と称する)の一例を示す図であり、また、図8は、基板200のうち、熱伝導シートSHとは反対側の面(以下、「面G2」と称する)の一例を示す図である。なお、基板200のうち熱伝導シートSH側の面G1は、「第1面」の一例であり、基板200のうち熱伝導シートSHとは反対側の面G2は、「第2面」の一例である。
【0061】
本実施形態では、図7に例示するように、基板200の面G1において、トランジスターTr1、トランジスターTr2、DA変換回路51、及び、電圧増幅回路52を含む、駆動信号生成回路5と、サーミスタTMを含む温度検出回路81と、報知回路82と、制御回路6と、記憶回路4と、が設けられる場合を想定する。但し、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、基板200の面G1には、少なくとも、駆動信号生成回路5が設けられていればよい。なお、以下では、基板200の面G1に設けられる回路を、「第1回路」と称する場合がある。
【0062】
本実施形態では、図8に例示するように、基板200の面G2において、平滑化コンデンサHC、整流回路BD、及び、トランスTRSを含む、電源回路9と、入力端子Tx1と、入力端子Tx2と、出力端子Tn1と、出力端子Tn2と、が設けられる場合を想定する。ここで、入力端子Tx2とは、ホストコンピューターから印刷データImg等の情報が供給される、USB(Universal Serial Bus)ケーブルまたはLAN(Local Area Network)ケーブル等の外部配線210と接続するための端子である。また、出力端子Tn2とは、制御モジュール2において生成された、印刷信号SI、及び、駆動信号Com等の各種制御信号を、ヘッドユニットHUまたは搬送機構7等の各種構成要素に供給するための内部配線220と接続するための端子である。なお、以下では、基板200の面G2に設けられる回路を、「第2回路」と称する場合がある。また、以下では、基板200に設けられる第1回路及び第2回路を、「駆動回路」と称する場合がある。
【0063】
なお、基板200には、ネジSCを挿通するためのネジ穴HLが設けられている。本実施形態では、図7及び図8に例示するように、ネジ穴HLが、トランジスターTr1及びTr2の間に設けられている場合を、一例として想定する。
【0064】
図9は、図7及び図8における線分E−e線を通る平面により、インクジェットプリンター1を破断した、部分断面図の一例である。
図9に例示するように、熱伝導シートSHは、基板200の面G1と、フレームFRとの間において、少なくとも、基板200の面G1と、トランジスターTr1及びTr2と、フレームFRと、に接するように設けられている。
【0065】
以下では、図9に例示するように、第1回路のうち面G1から最も離れた部分と、面G1との間の距離を、「距離W1」と称する。また、以下では、第2回路のうち面G2から最も離れた部分と、面G2との間の距離を、「距離W2」と称する。そして、本実施形態では、距離W1が、距離W2よりも短くなるように、第1回路及び第2回路が設けられる。換言すれば、本実施形態では、制御モジュール2に含まれる各種回路のうち、平滑化コンデンサHC等のように、基板200からの高さが高い構成要素を有する回路を、面G2に設ける。また、本実施形態では、制御モジュール2に含まれる各種回路のうち、トランジスターTr1及びTr2のように、基板200からの高さが距離W1以下である構成要素のみを、面G1に設ける。このため、本実施形態では、面G1上に設けられる第1回路の高さが距離W1よりも高い場合と比較して、熱伝導シートSHと面G1との密着性を高くすることができる。
なお、本実施形態において、熱伝導シートSHの幅Wsは、距離W1以上であることが好ましく、距離W1の1.5倍以上であることがより好ましい。また、本実施形態において、熱伝導シートSHの幅Wsが、距離W1以上であり且つ距離W2以下となるようしてもよい。
【0066】
また、本実施形態では、図9に例示するように、基板200をフレームFRに固定するためのネジSCを用いて、熱伝導シートSHをフレームFRに固定する。換言すれば、本実施形態では、基板200と熱伝導シートSHとを、同一のネジを用いてフレームFRに固定する。
【0067】
なお、図9では、熱伝導シートSHが厚さ方向において一定の幅Wsを有する場合を例示しているが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、熱伝導シートSHを弾性体により形成し、熱伝導シートSHの厚さ方向の幅を変動可能としてもよい。この場合、熱伝導シートSHは、図10に例示するように、面G1のうち第1回路が設けられていない部分では、幅Ws1となり、面G1に接触し、面G1のうち第1回路が設けられている部分では、幅Ws2となり、第1回路に接触してもよい。ここで、幅Ws1は、少なくとも、「W1<Ws1」を満たし、幅Ws2は、少なくとも、「0<Ws2<Ws1」を満たす。
【0068】
<<6.ヘッドユニットの概要>>
以下、図11乃至図13を参照しつつ、ヘッドユニットHUの構成及び動作について説明する。
【0069】
図11は、ヘッドユニットHUの構成の一例を示すブロック図である。上述のように、ヘッドユニットHUは、記録ヘッドHDと、供給回路10と、配線LHaと、給電線LHdと、を備える。
供給回路10は、4M個のスイッチSW(SW[1]〜SW[4M])と、各スイッチSWの接続状態を指定する接続状態指定回路11と、を備える。なお、各スイッチSWとしては、例えば、トランスミッションゲートを採用することができる。なお、図11では、簡単のために、スイッチSWを3個のみ示している。
接続状態指定回路11は、制御回路6から供給されるクロック信号CLK、印刷信号SI、ラッチ信号LAT、及び、チェンジ信号CNGの少なくとも一部の信号に基づいて、スイッチSW[1]〜SW[4M]のオンオフを指定する接続状態指定信号SL[1]〜SL[4M]を生成する。
スイッチSW[m]は、接続状態指定信号SL[m]に応じて、配線LHaと、吐出部D[m]に設けられた圧電素子PZ[m]の上部電極Zu[m]と、の導通及び非導通を切り替える。例えば、スイッチSW[m]は、接続状態指定信号SL[m]がハイレベルの場合にオンし、ローレベルの場合にオフする。上述のとおり、駆動信号Comのうち、スイッチSW[m]を介して、吐出部D[m]の圧電素子PZ[m]に実際に供給される信号が供給駆動信号Vin[m]である。
【0070】
本実施形態において、インクジェットプリンター1の動作期間は、1または複数の単位期間Tuを含む。インクジェットプリンター1は、各単位期間Tuにおいて、印刷処理のために各吐出部Dを駆動することができる。そして、インクジェットプリンター1は、連続的または間欠的に設けられた複数の単位期間Tuにおいて印刷処理を実行することで、各吐出部Dから例えば1または複数回ずつインクを吐出させて、印刷データImgの示す画像を形成する。
【0071】
図12は、単位期間Tuにおけるインクジェットプリンター1の動作の一例を示すタイミングチャートである。
図12に示すように、制御回路6は、パルスPlsLを有するラッチ信号LATを出力する。これにより、制御回路6は、パルスPlsLの立ち上がりから次のパルスPlsLの立ち上がりまでの期間として、単位期間Tuを規定する。また、制御回路6は、パルスPlsCを有するチェンジ信号CNGを出力する。これにより、制御回路6は、単位期間Tuを、パルスPlsLの立ち上がりからパルスPlsCの立ち上がりまでの制御期間Tu1と、パルスPlsCの立ち上がりからパルスPlsLの立ち上がりまでの制御期間Tu2と、に区分する。
また、印刷信号SIは、各単位期間Tuにおける吐出部D[1]〜D[4M]の動作の種類を指定する個別指定信号Sd[1]〜Sd[4M]を含む。そして、制御回路6は、単位期間Tuにおいて印刷処理が実行される場合、当該単位期間Tuに先立って、個別指定信号Sd[1]〜Sd[4M]を含む印刷信号SIを、クロック信号CLKに同期させて接続状態指定回路11に供給する。この場合、接続状態指定回路11は、当該単位期間Tuにおいて、個別指定信号Sd[m]に基づいて接続状態指定信号SL[m]を生成する。
【0072】
図12に示すように、駆動信号Comは、制御期間Tu1に設けられた波形PXと、制御期間Tu2に設けられた波形PYと、を有する。本実施形態では、波形PXの最高電位VHXと最低電位VLXとの電位差が、波形PYの最高電位VHYと最低電位VLYとの電位差よりも大きくなるように、波形PX及び波形PYを定める。具体的には、波形PXを有する駆動信号Comにより吐出部D[m]を駆動する場合、吐出部D[m]から中ドットに相当する量(中程度の量)のインクが吐出されるように、波形PXの波形を定める。また、波形PYを有する駆動信号Comにより吐出部D[m]を駆動する場合、吐出部D[m]から小ドットに相当する量(小程度の量)のインクが吐出されるように、波形PYの波形を定める。なお、波形PX及び波形PYは、開始時及び終了時の電位が基準電位V0に設定されている。
【0073】
図13は、個別指定信号Sd[m]と、接続状態指定信号SL[m]と、の関係を説明するための説明図である。
図13に示すように、本実施形態では、個別指定信号Sd[m]が、2ビットのデジタル信号である場合を想定する。具体的には、個別指定信号Sd[m]は、各単位期間Tuにおいて、吐出部D[m]に対して、大ドットに相当する量(大程度の量)のインクの吐出(「大ドットの形成」と称する場合がある)を指定するする値(1,1)、中程度の量のインクの吐出(「中ドットの形成」と称する場合がある)を指定する値(1,0)、小程度の量のインクの吐出(「小ドットの形成」と称する場合がある)を指定する値(0,1)、及び、インクの非吐出を指定する値(0,0)、の4値のうち、何れか一つの値に設定される。
【0074】
個別指定信号Sd[m]が、大ドットの形成を指定する値(1,1)に設定されている場合、接続状態指定回路11は、接続状態指定信号SL[m]を、制御期間Tu1及びTu2においてハイレベルに設定する。この場合、吐出部D[m]は、制御期間Tu1において波形PXの駆動信号Comにより駆動されて中程度の量のインクを吐出し、また、制御期間Tu2において波形PYの駆動信号Comにより駆動されて小程度の量のインクを吐出する。これにより、吐出部D[m]は、単位期間Tuにおいて、合計で大程度の量のインクを吐出し、記録用紙Pには大ドットが形成される。
個別指定信号Sd[m]が、中ドットの形成を指定する値(1,0)に設定されている場合、接続状態指定回路11は、接続状態指定信号SL[m]を、制御期間Tu1においてハイレベルに、制御期間Tu2においてローレベルに、それぞれ設定する。この場合、吐出部D[m]は、単位期間Tuにおいて中程度の量のインクを吐出し、記録用紙Pには中ドットが形成される。
個別指定信号Sd[m]が、小ドットの形成を指定する値(0,1)に設定されている場合、接続状態指定回路11は、接続状態指定信号SL[m]を、制御期間Tu1においてローレベルに、制御期間Tu2においてハイレベルに、それぞれ設定する。この場合、吐出部D[m]は、単位期間Tuにおいて小程度の量のインクを吐出し、記録用紙Pには小ドットが形成される。
個別指定信号Sd[m]が、インクの非吐出を指定する値(0,0)に設定されている場合、接続状態指定回路11は、接続状態指定信号SL[m]を制御期間Tu1及びTu2においてローレベルに設定する。この場合、吐出部D[m]は、単位期間Tuにおいて、インクを吐出せず、記録用紙Pにドットを形成しない。
【0075】
<<7.実施形態の結論>>
以上において説明したように、本実施形態では、熱伝導シートSHが、基板200の面G1と、トランジスターTr1及びTr2と、フレームFRとに接するように設けられる。このため、本実施形態によれば、駆動信号生成回路5において生じた熱、特に、トランジスターTr1及びTr2において生じた熱を、熱伝導シートSH及びフレームFRを介して、インクジェットプリンター1の外部へと、放熱することが可能となる。
【0076】
また、本実施形態では、基板200における熱を放熱するための放熱機構として、伸縮性を有する平坦なシート状の部材である熱伝導シートSHを採用する。このため、本実施形態によれば、例えば、放熱機構として、ヒートシンクまたは冷却ファン等を採用する場合と比較して、放熱機構を設けるために確保すべき筐体100内の空間を小さくすることが可能となる。これにより、本実施形態によれば、放熱機構として、ヒートシンクまたは冷却ファン等を採用する場合と比較して、インクジェットプリンター1の小型化が容易となる。
【0077】
また、本実施形態では、面G1に設けられる第1回路の面G1からの高さを、面G2に設けられる第2回路の面G2からの高さよりも低く抑える。このため、本実施形態によれば、例えば、面G1に設けられる第1回路の高さが、面G2に設けられる第2回路の高さよりも高い場合と比較して、熱伝導シートSHと面G1との密着性を高くすることが可能となる。これにより、本実施形態によれば、基板200における熱を、熱伝導シートSHを介して、効率的に放熱することが可能となる。
【0078】
<<B.変形例>>
以上の各形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲内で適宜に併合され得る。なお、以下に例示する変形例において作用や機能が実施形態と同等である要素については、以上の説明で参照した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0079】
<<変形例1>>
上述した実施形態において、Mは1以上の自然数としたが、Mは180以上の自然数であってもよい。すなわち、記録ヘッドHDには、720個以上の吐出部Dが設けられていてもよい。この場合、記録ヘッドHDに設けられた720個以上の吐出部Dは、駆動信号生成回路5が生成する駆動信号Comにより駆動されてもよい。
【0080】
<<変形例2>>
上述した実施形態及び変形例では、インクジェットプリンター1において、基板200における熱を放熱するための放熱機構として、1枚の熱伝導シートSHが設けられたが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、放熱機構として、2枚以上の熱伝導シートSHが設けられてもよい。例えば、インクジェットプリンター1は、基板200の面G1と第1回路とフレームFRとに接触する一の熱伝導シートSHと、基板200の面G2と第2回路とフレームFRとに接触する他の熱伝導シートSHと、を備えてもよい。
【0081】
<<変形例3>>
上述した実施形態及び変形例において、トランジスターTr1及びTr2の間には、1個のネジ穴HLが設けられるが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、トランジスターTr1及びTr2の間には、複数のネジ穴HLが設けられてもよい。
【0082】
<<変形例4>>
上述した実施形態及び変形例において、インクジェットプリンター1は、1個の駆動信号生成回路5と、1個のヘッドユニットHUとを備えるが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、インクジェットプリンター1は、複数の駆動信号生成回路5を備えてもよいし、複数のヘッドユニットHUを備えてもよい。
例えば、インクジェットプリンター1は、ヘッドユニットHUが備える各吐出部Dに対して、互いに異なる波形を有する複数の駆動信号Comを選択的に供給することで、当該吐出部Dを駆動してもよい。この場合、基板200には、複数の駆動信号Comと1対1に対応するように、複数の駆動信号生成回路5が設けられてもよい。
また、例えば、インクジェットプリンター1は、複数のヘッドユニットHUを備えてもよい。この場合、基板200には、複数のヘッドユニットHUと1対1に対応するように、複数の駆動信号生成回路5が設けられてもよい。
そして、本変形例において、基板200上に複数の駆動信号生成回路5が設けられる場合、熱伝導シートSHは、各駆動信号生成回路5が具備するトランジスターTr1及びTr2に接触するように設けられる。
【0083】
<<変形例5>>
上述した実施形態及び変形例では、インクジェットプリンター1がシリアルプリンターである場合を想定したが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、インクジェットプリンター1は、記録ヘッドHDにおいて、複数のノズルNが記録用紙Pの幅よりも広く延在するように設けられた、所謂ラインプリンターであってもよい。
【符号の説明】
【0084】
1…インクジェットプリンター、2…制御モジュール、4…記憶回路、5…駆動信号生成回路、6…制御回路、7…搬送機構、9…電源回路、10…供給回路、51…DA変換回路、52…電圧増幅回路、53…電流増幅回路、100…筐体、200…基板、D…吐出部、FR…フレーム、HC…平滑化コンデンサ、HD…記録ヘッド、HU…ヘッドユニット、SC…ネジ、SH…熱伝導シート、Tr1…トランジスター、Tr2…トランジスター。
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