(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の参照データそれぞれは、前記初期時点からの、前記液体タンクの前記所定領域内の液体の粘度の予測推移に関連するデータであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の好適な実施形態に係るインクジェットプリンタ1の概略構成について説明する。このプリンタ1は、
図1に示す姿勢で使用される。そして、プリンタ1は、プラテン2、キャリッジ3、インクジェットヘッド4(以下、単にヘッド4とも称す)、4つのタンク装着部5、4つのサブタンク6、給紙ローラ7、排紙ローラ8、パージ装置9、フラッシング受け10、温度センサ160、タッチパネル161(
図2参照)、及び制御装置100等を備えている。尚、以下では、
図1の紙面手前側をプリンタ1の「上方」、紙面向こう側をプリンタ1の「下方」と定義する。また、
図1に示す前後方向及び左右方向を、プリンタ1の「前後方向」及び「左右方向」と定義する。以下、前後、左右、上下の各方向語を適宜使用して説明する。
【0013】
プラテン2の上面には、被記録媒体である用紙Pが載置される。また、プラテン2の上方には、左右方向(走査方向)に平行に延びる2本のガイドレール15,16が設けられる。
【0014】
キャリッジ3は、2本のガイドレール15,16に取り付けられ、プラテン2と対向する領域において2本のガイドレール15,16に沿って左右方向に移動可能である。また、キャリッジ3には、駆動ベルト17が取り付けられている。駆動ベルト17は、2つのプーリ18,19に巻き掛けられた無端状のベルトである。一方のプーリ18はキャリッジ駆動モータ20(
図2参照)に連結されている。キャリッジ駆動モータ20によってプーリ18が回転駆動されることで駆動ベルト17が走行し、これにより、キャリッジ3が左右方向に往復移動する。また、このとき、キャリッジ3上に搭載されたヘッド4は、このキャリッジ3とともに左右方向に往復移動することになる。
【0015】
4つのタンク装着部5は、キャリッジ3(ヘッド4)よりも前方において、左右方向に並んで配置されている。各タンク装着部5には、メインタンク30が着脱可能に装着される。4つのタンク装着部5に装着される4つのメインタンク30には、それぞれ、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタの顔料インクが貯溜されている。また、4つのタンク装着部5それぞれには、メインタンク30がタンク装着部5に装着されているか否かを検知するための装着検知センサ130(
図2参照)が設けられている。
【0016】
4つのサブタンク6は、キャリッジ3よりも前方、且つ、4つのタンク装着部5の後方において、左右方向に並んで配置されている。4つのサブタンク6は、4つのタンク装着部5に対応している。各サブタンク6は、気液分離用のタンクであり、対応するタンク装着部5にメインタンク30が装着されると、メインタンク30と連通して当該メインタンク30からインクが供給されるようになっている。また、サブタンク6は、可撓性の供給チューブ22を介して、ヘッド4に接続されている。メインタンク30及びサブタンク6の構成については後述する。
【0017】
ヘッド4は、キャリッジ3に搭載されている。このヘッド4は、ヘッド本体13と、バッファタンク14とを有する。バッファタンク14にはチューブジョイント21が一体的に設けられている。そして、チューブジョイント21には、4本の供給チューブ22それぞれの一端が着脱可能に接続されている。4本の供給チューブ22それぞれの他端は、4つのサブタンク6のそれぞれに接続されている。タンク装着部5に装着された4つのメインタンク30内のインクは、サブタンク6及び供給チューブ22を経て、バッファタンク14に供給される。
【0018】
ヘッド本体13は、バッファタンク14の下部に取り付けられている。ヘッド本体13は、流路ユニット44とアクチュエータ45とを有する。流路ユニット44には、その下面であるノズル面44a(
図3参照)に形成された複数のノズル46を含む内部流路が形成されている。この内部流路は、バッファタンク14と連通しており、複数のノズル46は、バッファタンク14から内部流路を介して供給されたインクを吐出する。複数のノズル46は、前後方向に配列されることによってノズル列47を形成しており、ノズル面44aには、4列のノズル列47が左右方向に並んでいる。4列のノズル列47からは、右側に位置するノズル列47から順に、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが吐出される。アクチュエータ45は、各ノズル46内のインクに個別に、吐出エネルギーを付与するためのものである。例えば、アクチュエータ45は、ノズル46に連通する図示しない圧力室の容量を変化させてインクに圧力を付与するものや、加熱により圧力室内に気泡を発生させてインクに圧力を付与するものである。ただし、アクチュエータ45の構成自体は公知のものであるため、ここではこれ以上の詳細な説明は省略する。
【0019】
また、ヘッド4は、タンク装着部5に装着されたメインタンク30及びサブタンク6よりも、上側に配置されている。これにより、ノズル46内のインクと、メインタンク30内のインクの液面やサブタンク6内のインクの液面との間に水頭差が生じることで、ノズル46内のインクにメインタンク30側への負圧が付与される。その結果、印刷時以外のときに、ノズル46から、インクが吐出されるのを防止することができる。
【0020】
給紙ローラ7と排紙ローラ8は、搬送モータ29(
図2参照)によってそれぞれ同期して回転駆動される。給紙ローラ7と排紙ローラ8は協働して、プラテン2に載置された用紙Pを前方(搬送方向)に搬送する。
【0021】
そして、プリンタ1は、給紙ローラ7と排紙ローラ8によって用紙Pを搬送方向に搬送する動作と、キャリッジ3とともにヘッド4を左右方向に移動させながらインクを吐出させる吐出動作とを交互に繰り返し行うことにより、用紙Pに所望の画像等を印刷する。即ち、本実施形態のプリンタ1は、シリアル式のインクジェットプリンタである。
【0022】
フラッシング受け10は、プラテン2よりも左側に配置されている。キャリッジ3を移動させてヘッド4をフラッシング位置に位置付けさせたとき、複数のノズル46が、フラッシング受け10と上下に対向する。そして、プリンタ1では、ヘッド4をフラッシング位置に位置付けさせた状態で、ヘッド4のアクチュエータ45を駆動して、ノズル46からフラッシング受け10に向けて増粘したインク等を吐出して排出させるフラッシングを行わせることができる。
【0023】
パージ装置9は、ヘッド4のノズル46の吐出性の低下の抑制や、吐出性の回復のためのメンテナンス動作を行うためのものであり、キャップユニット50、吸引ポンプ51、及び廃液タンク52等を備えている。
【0024】
キャップユニット50は、プラテン2よりも右側に配置されている。キャリッジ3がプラテン2よりも右側に移動したときにはこのキャップユニット50と上下に対向する。また、キャップユニット50は、キャップ昇降モータ53(
図2参照)により駆動されて、上下方向に昇降可能である。このキャップユニット50は、ヘッド4に接触して装着可能な、キャップ55を備えている。キャップ55は、例えばゴム材料によって構成されている。
【0025】
ヘッド4がキャップユニット50と対向した状態では、キャップ55がヘッド本体13の下面と対向する。この状態で、ヘッド4から下方に離間した離間位置に位置しているキャップユニット50を、キャップ昇降モータ53により、離間位置よりも上方のキャッピング位置まで上昇させると、キャップユニット50がヘッド4に装着される。このとき、キャップ55により、4列のノズル列47に属する全てのノズル46が共通に覆われる。また、キャップ55は、ロータリーポンプである吸引ポンプ51に接続されている。
【0026】
プリンタ1では、キャップ55がヘッド本体13に装着されて複数のノズル46を覆った状態で、制御装置100の制御により、吸引ポンプ51を駆動して、キャップ55内を減圧(吸引)することで、複数のノズル46からそれぞれインクを吸引して排出させる、吸引パージを行なうことができる。これにより、ノズル46内の高粘度化したインクがノズル46から強制的に排出されて、ノズル46の吐出性の回復等を行うことができる。吸引パージによって排出されたインクは、廃液タンク52に貯留される。
【0027】
温度センサ160は、タンク装着部5の近傍に配置されており、周囲温度を計測する。タッチパネル161は、ユーザからの各種操作入力の受け付けや、各種の設定画面や動作状態等をユーザに対して表示することが可能なユーザインターフェースである。
【0028】
制御装置100は、
図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、不揮発性メモリ104、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)105等を含む。ROM102には、CPU101が実行するプログラム、各種固定データ等が記憶されている。RAM103には、プログラム実行時に必要なデータ(印刷データ等)が一時的に記憶される。不揮発性メモリ104には、後述する総流出量カウント情報121等が記憶される。ASIC105には、ヘッド4、キャリッジ駆動モータ20等、プリンタ1の様々な装置あるいは駆動部と接続されている。また、ASIC105は、通信インターフェース110を介してPC等の外部装置200と接続されている。さらに、ASIC105は、USBインターフェース111が接続されている。制御装置100は、このUSBインターフェース111を介して、USBメモリ250に記憶されているプログラム250a等をインストールすることが可能に構成されている。
【0029】
CPU101は、外部装置200から受信した印刷指示に基づいて、ヘッド4やキャリッジ駆動モータ20等を制御して、用紙Pに画像等を印刷する印刷処理を実行する。また、CPU101は、パージ装置9に吸引パージを行なわせたり、ヘッド4のアクチュエータ45にフラッシングを行なわせたりして、ヘッド4のノズル46からインクを排出させる排出処理を実行する。
【0030】
尚、上の説明では、制御装置100が行う各種処理は、CPU101が行うものとして説明したが、CPUと、ASICとの協動で行ってもよい。また、制御装置100が複数のCPUを備え、複数のCPUによって処理を分担して行ってもよい。また、制御装置100が複数のASICを備え、複数のASICによって処理を分担してもよい。あるいは、1つのASIC単独で処理を行ってもよい。
【0031】
次に、メインタンク30、及びサブタンク6の構成について順に説明する。
【0032】
図3に示すように、タンク装着部5に装着された状態のメインタンク30は、水平方向に関してサブタンク6と並んで配置される。より詳細には、メインタンク30は、サブタンク6と、水平方向に関して前後に隣接して配置されている。メインタンク30は、略直方体形状をなしており、その内部にインクを貯溜する内部空間31が形成されている。
【0033】
メインタンク30内には、この内部空間31を、上側のインク室31aと、下側のインク流路31bとに仕切る、水平方向に延びる仕切板32が設けられている。この仕切板32の前端部には、上下に貫通する接続孔32aが形成されている。この接続孔32aにより、インク室31aとインク流路31bとが互いに連通する。
【0034】
メインタンク30の後壁30aにおける、仕切板32よりも下側の位置には、後壁30aを前後に貫通する供給口33が形成されている。つまり、インク流路31bに供給口33が形成されている。この供給口33は、内部空間31に貯溜されているインクを外部へ供給するための開口である。また、後壁30aにおける当該供給口33の形成部分には、後方に突出する円筒形状のインク供給部34が設けられている。インク供給部34の内部空間は、供給口33を介して内部空間31と連通する。インク供給部34の内部空間31の先端は、後述するニードル65が挿入される挿入孔34aである。この挿入孔34aは、メインタンク30がタンク装着部5に装着されていない状態では、図示しないバルブにより閉じられている。メインタンク30がタンク装着部5に装着されると、サブタンク6の後述するニードル65がバルブを押し動かすことにより、挿入孔34aが開放される。
【0035】
メインタンク30の後壁30aの上部には、後壁30aを前後に貫通する大気連通口35が形成されている。大気連通口35は、インク室31a内のインクの液面よりも上側の気体層と外部(大気)と連通するものである。図示されていないが、大気連通口35には、メインタンク30の外部からインク室31aへの流体の流れを許容しつつ、インク室31aからメインタンク30の外部への流体の流れを規制する逆止弁が設けられていてもよい。また、大気連通口35に、気体を通過させる一方でインク等の液体の透過を阻止する気体透過膜が設けられていてもよい。また、大気連通口35より外部側にラビリンス構造の流路が設けられており、大気連通口35から外部へインクが漏れにくくされていてもよい。
【0036】
ところで、プリンタ1を搬送する際などに、プリンタ1が
図1に示す使用姿勢とは異なる姿勢にされ得る。例えば、プリンタ1の姿勢が、プリンタ1の後面を下側にした姿勢にされる場合もある。つまり、プリンタ1の後面が前面よりも下方に位置する場合がある。そうすると、タンク装着部5に装着されたメインタンク30におけるインク室31aのインクの液面が、ヘッド4よりも上側に位置することとなり、使用姿勢のときのように、ノズル46内のインクにメインタンク30側への負圧が付与されない。その結果として、ヘッド4のノズル46より上方に存在するメインタンク30内のインクがノズル46から多量に漏れ出す可能性がある。しかしながら、本実施形態では、メインタンク30内には、仕切板32が設けられており、インク室31aとインク流路31bとを連通する接続孔32aは、仕切板32の前端部に形成されている。このため、プリンタ1の後面を下側にした姿勢にされたときには、接続孔32aは、インク室31aで最も上方に位置することとなる。その結果、インク室31a内のインクが、インク流路31bに流出することを抑制することができ、ノズル46からインクが多量に漏れ出すことを抑制することができる。
【0037】
次に、サブタンク6について説明する。サブタンク6は、直方体形状の本体部分61と、本体部分61の上部から上方へ延びる直方体形状の上側部分62とから主に構成されている。本体部分61には下側貯溜室61aが形成され、上側部分62には上側貯溜室62aがそれぞれ形成されている。下側貯溜室61aと上側貯溜室62aとは互いに連通して内部空間60を形成している。このサブタンク6の内部空間60の容量は、メインタンク30の内部空間31の容量よりも小さい。また、サブタンク6の内部空間60の各高さの水平断面積は、メインタンク30の内部空間60の底面積や各高さの水平断面積よりも小さい。
【0038】
上側貯溜室62aは、メインタンク30がタンク装着部5に装着された際に、当該メインタンク30の仕切板32よりも上側に位置する。上側貯溜室62aの左右方向の幅は、下側貯溜室61aの左右方向の幅と同じである一方で、上側貯溜室62aの上下方向の幅は、下側貯溜室61aの左右方向の幅よりも短い。従って、上側貯溜室62aの各高さの水平断面積は、下側貯溜室61aの各高さの水平断面積よりも小さい。加えて、上側貯溜室62aの各高さの水平断面積は、メインタンク30のインク室31aの各高さの水平断面積よりも大幅に小さい(例えば、上側貯溜室62aの水平断面積は、メインタンク30のインク室31aの水平断面積の5%程度である)。
【0039】
上側部分62の前壁62bの上部には、前壁62bを前後に貫通する大気連通口63が形成されている。大気連通口63は、内部空間60に貯溜されているインクの液面よりも上側の気体層と外部(大気)と連通するものである。図示されていないが、大気連通口63に、気体を通過させる一方でインク等の液体の透過を阻止する気体透過膜が設けられていてもよい。また、大気連通口63より外部側にラビリンス構造の流路が設けられており、大気連通口63から外部へインクが漏れにくくされていてもよい。
【0040】
本体部分61の前壁61bには、前壁61bを前後に貫通する流入口64が形成されている。つまり、下側貯溜室61aに流入口64が形成されている。この流入口64は、サブタンク6の外部からのインクが流入する開口である。また、前壁61bにおける当該流入口64の形成部分には、前方に突出する円筒状のニードル65が設けられている。このニードル65の内部空間は、流入口64を介して、サブタンク6の内部空間60と連通している。タンク装着部5にメインタンク30が装着された際に、このニードル65がメインタンク30の挿入孔34aに挿入されることで、ニードル65を介して、メインタンク30の供給口33と、サブタンク6の流入口64とが連通する。その結果として、メインタンク30の内部空間31に貯溜されているインクを、供給口33及び流入口64を介して、サブタンク6の内部空間60へと供給することが可能となる。
【0041】
本体部分61の後壁61cの下部には、後壁61cを前後に貫通する流出口66が形成されている。つまり、下側貯溜室61aに流出口66が形成されている。この流出口66は、サブタンク6の内部空間60の貯溜されているインクを外部に流出するための開口である。この流出口66には供給チューブ22が接続されており、メインタンク30やサブタンク6に貯溜されているインクを、供給チューブ22を介してヘッド4に供給することが可能に構成されている。
【0042】
流出口66は、流入口64よりも下側に配置されている。また、この流出口66は、タンク装着部5に装着されたメインタンク30の内部空間31よりも下側に配置されている。
【0043】
本体部分61の前壁61bにおける、ニードル65よりも下方の位置には、前方に突出した凸部67が設けられている。この凸部67には、その内部に、内部空間60の一部を構成する検出室67aが形成されている。また、凸部67は、光透過性を有する樹脂部材で構成されている。
【0044】
下側貯溜室61a内には、本体部分61に設けられた支持軸68を中心に回動可能なフロート機構69が設けられている。フロート機構69は、支持軸68から前側に延在するアーム部69aと、支持軸68から後ろ側に延在するフロート部69bと、アーム部69aの先端に設けられた遮蔽部69cとを有している。
【0045】
フロート部69bは、その平均比重がインクの比重よりも軽くなるように中空状に成形されている。アーム部69aは、フロート部69bよりも重量が小さく、且つインクに浸漬されたときにはフロート部69bより作用する浮力が小さくなるように設定されている。
【0046】
以上の構成において、下側貯溜室61aに貯溜されているインクの液面位置が、所定の検出位置以上の高さ位置である場合には、フロート部69bがインクに浸漬され、浮力によってフロート部69bとアーム部69aとの重量の均衡が逆転し、フロート機構69は支持軸68を中心にフロート部69bが上昇する方向に回動する。その際、遮蔽部69cは、検出室67a内に進入するように斜め下方に移動する。
【0047】
一方で、下側貯溜室61aに貯溜されているインクの液面が、上記検出位置未満の高さ位置である場合には、フロート機構69は支持軸68を中心にフロート部69bが降下する方向に回動し、その際、遮蔽部69cは、検出室67aから斜め上方に退くように移動する。このように、遮蔽部69cは、下側貯溜室61a内のインクの液面の上下方向の変位に応じて、変位することになる。
【0048】
また、プリンタ1には、残量検出センサ120が設けられている。残量検出センサ120は、サブタンク6の凸部67を左右に挟んで対向配置された図示しない発光素子及び受光素子を備えた、透過型の光センサである。凸部67内の検出室67aは、この残量検出センサ120の発光素子と受光素子との間の光路に配置されている。従って、フロート機構69の遮蔽部69cが検出室67a内に位置するときには受光素子は発光素子から照射された光を受光できず、遮蔽部69cが変位して検出室67aから退くと受光可能となる。残量検出センサ120は、受光素子の発光素子から照射された光の受光の有無によって遮蔽部69cの位置、即ち、下側貯溜室61aに貯溜されているインクの液面レベルに関する情報を制御装置100に出力する。これにより、制御装置100のCPU101は、残量検出センサ120からの出力結果に基づいて、下側貯溜室61aのインクの液面が検出位置未満となる状態(以下、ニアエンプティ状態)か否かを判断することができる。本実施形態では、この検出位置は、流出口66よりも高い位置であり、且つ、流入口64よりも低い位置に設定されている。
【0049】
変形例として、凸部67が本体部分61の前壁61bに設けられておらず、本体部分61の上壁61dから上方に突設されていてもよい。この場合、フロート機構69のアーム部69aは、支持軸68から上側に延在させる。その結果、アーム部69aの先端部に設けられた遮蔽部69cは、下側貯溜室61a内のインクの液面の上下方向の変位に応じて、左右方向に変位することになる。この構成の場合でも、CPU101は、残量検出センサ120からの出力結果に基づいて、ニアエンプティか否かを判断することは可能である。また、この構成の場合、凸部67が本体部分61の前壁61bに設けられていない分、ニードル65とインク供給部34との接続箇所の下方にスペースが生じるため、当該接続箇所から漏れ出たインクを受容可能なインク受けなどを配置することが可能である。
【0050】
次に、メインタンク30がタンク装着部5に装着されてからの、インクの流れについて説明する。メインタンク30がタンク装着部5に装着されると、サブタンク6のニードル65がメインタンク30の挿入孔34aに挿入されて、メインタンク30の供給口33と、サブタンク6の流入口64とが互いに連通する。これにより、メインタンク30の内部空間31内のインクが、サブタンク6の内部空間60へと供給される。
【0051】
ここで、メインタンク30の内部空間31は大気連通口35により大気開放されている。また、サブタンク6の内部空間60は大気連通口63により大気開放されている。従って、メインタンク30からサブタンク6へのインクの供給は、メインタンク30内のインクの液面と、サブタンク6内のインクの液面とが、互いの水頭圧により同一高さに揃うまで行われる。これ以降、印刷処理や排出処理等によりノズル46からインクが吐出又は排出されることで、サブタンク6から流出口66を介してヘッド4にインクが供給されると、メインタンク30内のインクの液面と、サブタンク6内のインクの液面とは、同じ高さを保った状態で、下降することになる。
【0052】
ところで、メインタンク30の供給口33が供給チューブ22に直接接続されている構成の場合には、メインタンク30内のインクがなくなった以降においても、ノズル46からインクが吐出又は排出されると、供給チューブ22内にエアが侵入する。その結果、このエアによりノズル46の吐出性が悪化する問題が生じる。この問題の対策として、供給チューブ22内にエアが侵入することを抑制すべく、メインタンク30内のインク残量が、零よりも多い或る所定量未満となったときに、タッチパネル161にメインタンク30の交換を促す交換画面等を表示して、ユーザにメインタンク30を交換させる方法も考えられる。しかしながら、この場合、タンク装着部5に装着されたメインタンク30内にインクが残った状態で交換されることになる。
【0053】
これに対して、本実施形態では、メインタンク30と供給チューブ22の間に、気液分離用のサブタンク6が介在されているため、上記の問題は解決している。
【0054】
上述したように、サブタンク6の流出口66は、流入口64よりも下側に配置されている。即ち、タンク装着部5に装着されたメインタンク30よりも下側に配置されている。従って、メインタンク30内のインクがなくなったときにも、サブタンク6の下側貯溜室61a内(流出口66よりも上側)にはインクが貯溜されていることになる。その結果として、メインタンク30内のインクがなくなったとしても、供給チューブ22内にエアが直ちに侵入することはない。
【0055】
その後、CPU101は、残量検出センサ120からの出力結果に基づいて、サブタンク6内のインクの液面が検出位置未満となるニアエンプティ状態になったと判断したときに、タッチパネル161にメインタンク30の交換を促す交換画面を表示する。尚、上記検出位置は、流出口66よりも上側の位置であるため、このときに、供給チューブ22内にはエアが侵入していない。従って、本実施形態では、供給チューブ22内にエアが侵入することを抑制しつつ、メインタンク30内のインクを有効に利用することができる。
【0056】
ところで、吸引パージやフラッシング等の排出処理を行う際において、ノズル46の吐出性を回復させるためには、ノズル46内のインクの粘度に応じて、ノズル46から排出させるインクの排出量等を変更する必要がある。従って、例えば、吸引パージでは、ノズル46内のインクの粘度が高いほど、排出量が多くなるように吸引ポンプ51の回転時間や回転速度等の駆動条件を変更する必要がある。また、フラッシングでは、ノズル46内のインクの粘度が高いほど、インクを吐出させる吐出回数が多くなるようにアクチュエータ45の駆動条件を変更したり、1吐出当たりの吐出量が多くなるように駆動条件を変更したりする必要がある。従って、ノズル46内のインクの粘度を精度良く推定する必要がある。
【0057】
ここで、ノズル46内のインクの粘度は、サブタンク6の流出口66から流出される際のインクの粘度(流出口66内のインクの粘度)によって変わる。この流出口66内のインクの粘度は、常に一定ではなく、変化する。このため、ノズル46内のインクの粘度を精度良く推定するためには、流出口66内のインクの粘度を精度よく推定する必要がある。以下、流出口66内のインクの粘度が変化する理由について、説明する。
【0058】
上述したように、メインタンク30に貯溜されているインクは顔料インクである。顔料インクは、顔料が溶媒中に分散された状態で存在しており、長時間静置状態にあると比重の大きい顔料がメインタンク30の底部に沈降する。このため、メインタンク30内においては、長時間静置状態にあると、メインタンク30の底部に顔料が多量に沈降する。その結果として、メインタンク30の底部において顔料インクの顔料濃度が局所的に高くなり、その粘度も局所的に非常に高くなる。一方で、メインタンク30において、液面付近の顔料インクは、顔料が少なくなる分、その粘度が低くなる。従って、メインタンク30内では、底部においてインクの粘度が最も高く、上に向かうに従い粘度が減少する粘度分布が生じる。
【0059】
このように、メインタンク30内の底部のインクの粘度は、供給口33からサブタンク6へインクが流出されない限り、時間の経過とともに顔料の沈降量が増えるため、上昇する。一方で、供給口33からインクが流出されると、メインタンク30内の底部の増粘したインクが流出することになる。従って、供給口33からインクが流出されるのに伴い、メインタンク30内の底部のインクの粘度は下降することになる。また、顔料インクは、メインタンク30内の温度が高いほど、粘度が低くなるため、顔料の沈降が促進される。従って、メインタンク30内におけるインクの粘度分布は、供給口33から流出されるインクの流出量、メインタンク30内の温度、タンク装着部5に装着された装着時点以降の経過時間等により変化することになる。その結果として、メインタンク30内から供給口33を介してサブタンク6へと流出されるインクの粘度が変化することになる。
【0060】
また、サブタンク6内においても、メインタンク30内と同様に、底部においてインクの粘度が最も高く、上に向かうに従い粘度が減少する粘度分布が生じる。ここで、或るタンク内において単位時間当たりに沈降する顔料の沈降量は、そのタンクの容量が大きいほど多く、又、タンクの各高さの水平断面積が大きいほど多い。上述したように、サブタンク6の内部空間60の容量は、メインタンク30の内部空間31の容量よりも小さい。また、サブタンク6の内部空間60の各高さの水平断面積は、メインタンク30の底面積や各高さの水平断面積よりも小さい。このため、サブタンク6内において、単位時間当たりに沈降する顔料の沈降量は、メインタンク30内において、単位時間当たりに沈降する顔料の沈降量よりも少ない。このように、サブタンク6は、メインタンク30と異なる形状をしているため、サブタンク6内の粘度分布は、メインタンク30の粘度分布とは異なる分布となる。
【0061】
また、メインタンク30の供給口33からサブタンク6内に供給されたインクは、サブタンク6内のインクと混じり合って、その粘度が下がった後に、最終的にサブタンク6の流出口66からヘッド4へと流出されることになる。より詳細には、或る所定期間に流出口66から所定量のインクが流出する場合、その流出する所定量のインクは、当該或る所定期間の開始時において、メインタンク30内に存在したインクと、サブタンク6内に存在したインクとが、所定の混合比率で混じり合ったインクである。
【0062】
以上の構成により、流出口66内のインクの粘度は、流出口66から流出したインクの流出量、メインタンク30内の温度、装着時点以降の経過時間等によって変化することになる。以下、
図4(a)〜(c)を参照して、その一例について説明する。
【0063】
図4(a),(b)は、それぞれ、メインタンク30内の温度を25℃に固定し、且つ、サブタンク6の流出口66から流出されるインクの単位時間(本実施形態では1か月)当たりの流出量を固定量としたときの、流出口66内のインクの粘度と、総流出量との関係を示す粘度推移データである。この粘度推移データは、装着時点(初期時点とも称す)から、メインタンク30のインクがなくなるまでの間の、1か月ごとの粘度推移を示している。ここで、装着時点(初期時点)とは、メインタンク30がタンク装着部5に装着されることで、メインタンク30内に貯溜されていたインクをサブタンク6の流出口66を介してヘッド4に供給可能となった最初の時点である。従って、この装着時点においては、メインタンク30内に貯溜されているインク及びサブタンク6内に貯溜されているインクの総量は、新品のメインタンク30がタンク装着部5に装着される前において、当該新品のメインタンク30に貯溜されているインクの量と同じとなる。なお、本実施形態では、CPU101は、この装着時点については、装着検知センサ130からの検知結果に基づいて判断する。
【0064】
流出口66内のインクの初期粘度は、メインタンク30内のインクの初期粘度である「4.0cps」に設定されている。
図4(a)は、1か月当たりの印刷枚数(以下、PVと称す)が100枚のときの概算流出量である「4ml」を上記固定量としたときの粘度推移データ(以下、PV100粘度推移データ)である。また、
図4(b)は、PVが500枚のときの概算流出量である「18ml」を上記固定量としたときの粘度推移データ(以下、PV500粘度推移データ)である。これらの粘度推移データは、実験又はシミュレーション等により取得したデータである。
図4(c)は、これら粘度推移データをグラフ化したものである。即ち、
図4(c)は、各粘度推移データについて、流出口66内のインクの粘度と、総流出量との関係を、1か月ごとにプロットした図である。
【0065】
図4(c)から分かるように、PV100粘度推移データ及びPV500粘度推移データ何れの場合も、装着時点以降、総流出量が40ml付近に到達するまでの期間(以下、粘度上昇期間)は、1か月経過する毎に、流出口66内のインクの粘度が上昇する。これは、メインタンク30内のインクの残量が多い場合には、時間経過に伴う顔料沈降に起因した粘度上昇の影響の方が、流出口66からインクが流出することに起因した粘度下降の影響よりも大きいためである。また、PV100粘度推移データの方が、流出口66から流出されるインクの単位時間当たりの流出量が少ないため、PV500粘度推移データと比べて、時間経過に伴う流出口66内のインクの粘度の上昇度合は大きい。このため、流出口66内のインクの粘度のピーク値も、PV100粘度推移データの方がPV500粘度推移データよりも高い。
【0066】
一方で、PV100粘度推移データ及びPV500粘度推移データ何れの場合も、総流出量が40ml付近で流出口66内のインクの粘度がピーク値となった以降の期間(以下、粘度下降期間)は、1か月が経過する毎に、流出口66内のインクの粘度が下降する。これは、メインタンク30内のインクの残量が所定量以下となると、メインタンク30内に残留するインクのうちの、粘度が低い(顔料が少ない)上澄み部分のインクが混在して、供給口33からサブタンク6へ供給されるようになるためである。つまり、流出口66からインクが流出することに起因した粘度下降の影響の方が、時間経過に伴う顔料沈降に起因した粘度上昇の影響よりも大きくなるためである。また、PV100粘度推移データ及びPV500粘度推移データ何れの場合においても、メインタンク30内のインクがなくなったときの、流出口66内のインクの最終粘度は、初期粘度である「4.0cps」よりも低い値を採る。これは、メインタンク30内のインクがなくなる直前には、粘度が「4.0cps」よりも低い上澄み部分のインクが供給口33からヘッド4へ供給されるためである。また、PV100粘度推移データの方が、PV500粘度推移データと比べて、上澄み部分のインクの粘度が低いため、流出口66内の最終粘度も低い。
【0067】
以上のように、流出口66から流出されるインクの単位時間当たりの流出量が異なると、流出口66内のインクの粘度も異なることになる。
【0068】
ここで、PV100粘度推移データやPV500粘度推移データのような粘度推移データを、PV毎に不揮発性メモリ104に記憶しておけば、PVが毎月同じである場合には、そのPVに対応する1つの粘度推移データを参照して流出口66内のインクの粘度を精度よく推定することは可能である。しかしながら、この場合、多量の粘度推移データを不揮発性メモリ104に記憶する必要があるため、不揮発性メモリ104を逼迫する。加えて、上述したように、メインタンク30内の温度によっても流出口66内のインクの粘度は変化するため、各温度それぞれについて、PV毎の粘度推移データが必要となる。
【0069】
また、実際は、プリンタ1のPVが毎月同じとならない場合が多く、流出口66から流出されるインクの単位時間当たりの流出量も、毎月同じ量とはならない。従って、1つの粘度推移データを参照して流出口66内のインクの粘度を推定する方法の場合、その推定精度は低いものとなる。
【0070】
そこで、この問題を解決すべく、本実施形態では、
図2に示すように、不揮発性メモリ104には、総流出量カウント情報121、前回流出量カウント情報122、温度履歴情報123、流出口粘度情報124、及び4種類の参照データ125が記憶されている。そして、所定時間(本実施形態では1か月)経過する毎に、不揮発性メモリ104に記憶されたこれら情報に基づいて、流出口66内のインクの粘度を推定する粘度推定処理を実行する。以下、詳細に説明する。
【0071】
総流出量カウント情報121は、装着時点からの、流出口66から流出したインクの総流出量を示すカウント情報である。CPU101は、印刷処理、及び排出処理等を実行することにより、流出口66からインクが流出される毎に、その流出量を算出して、総流出量カウント情報121のカウント値に加算する。なお、印刷処理やフラッシングの際にノズル46から吐出されるインクの吐出量については、アクチュエータ45の駆動条件により算出することは可能である。また、吸引パージの際に、ノズル46から排出されるインクの排出量については、吸引ポンプ51の回転速度や回転時間などの駆動条件から算出することができる。従って、流出口66から流出したインクの流出量についても算出することができる。
【0072】
前回流出量カウント情報122は、粘度推定処理の前回実行時点及び装着時点の何れか遅い方の時点である基準時点における、総流出量カウント情報121のカウント値を示す情報である。
【0073】
温度履歴情報123は、基準時点から温度センサ160により計測された温度の履歴情報である。CPU101は、内部時計により一定時間(本実施形態では1時間)を計時する毎に、そのときに温度センサ160により計測されていた温度を温度履歴情報123に追加する。流出口粘度情報124は、流出口66内の現在のインクの粘度を示す情報である。なお、装着時点においては、流出口粘度情報124には、不揮発性メモリ104に記憶された初期粘度データ129が示す、流出口66内のインクの初期粘度である「4.0cps」が記憶される。
【0074】
4種類の参照データ125は、流出口66から流出されるインクの単位時間当たりの流出量を固定量としたときの、流出口66内のインクの粘度の予想推移に関する参照データである。4種類の参照データ125は、PV100(25℃)参照データ125a、PV500(25℃)参照データ125b、PV100(40℃)参照データ125c、及びPV100(40℃)参照データ125dから構成されている。
【0075】
各参照データ125は、
図4(d)及び(e)に示すように、装着時点以降の各期間(本実施形態では1か月間:以下、使用期間と称す)と、総流出量EX、第1粘度変化量ΔV1、及び第2粘度変化量ΔV2との対応関係を示すデータである。総流出量EXは、装着時点から、対応する使用期間の開始時点までの間に、流出口66から流出したインクの総流出量を示している。第1粘度変化量ΔV1は、対応する使用期間中における単位時間(1か月)当たりの流出口66内のインクの粘度の変化量を示している。また、第2粘度変化量ΔV2は、対応する使用期間中における単位流出量(本実施形態では1ml)当たりの流出口66内のインクの粘度の変化量を示している。詳細は後述するが、粘度推定処理では、第1粘度変化量ΔV1及び第2粘度変化量ΔV2の何れか一方を用いて、流出口66内のインクの粘度を推定する。
【0076】
これら、4種類の参照データ125は、実験やシミュレーション等により取得した粘度推移データに基づいて生成されたデータである。例えば、
図4(d)に示すPV100(25℃)参照データ125aは、上記
図4(a)に示す粘度推移データに基づいて生成された参照データである。以下、
図4(d)に示すPV100(25℃)参照データ125aについて詳細に説明する。尚、以下では、装着時点からnか月目の時点からn+1か月目の時点までの使用期間を使用期間nとする。即ち、使用期間4は、装着時点から4か月目の時点から5か月目の時点までの期間を示す。また、使用期間nに対応する、総流出量EX、第1粘度変化量ΔV1、及び第2粘度変化量ΔV2を、それぞれ、総流出量EX(n)、第1粘度変化量ΔV1(n)、第2粘度変化量ΔV2(n)と表す。PVが100枚のときの1か月当たりの概算流出量を「PV100固定量」、PVが500枚のときの1か月当たりの概算流出量を「PV500固定量」とも称す。
【0077】
上述したように、PV100固定量は「4ml」である。従って、各使用期間nに対応する総流出量EX(n)それぞれは、4mlに「n」を乗算した量となる。例えば、使用期間9に対応する総流出量EX(9)は、36ml(=4ml×9)となる。
【0078】
第1粘度変化量ΔV1(n)は、対応する使用期間nの終了時点の流出口66内のインクの粘度から、開始時点の流出口66内のインクの粘度を減算した減算量を単位時間で除算した量である。ここで、
図4(a)に示すPV100粘度推移データにおいて、流出口66内のインクの粘度の取得間隔は、上記単位時間の長さ(使用期間の長さ)と同じ1か月である。従って、第1粘度変化量ΔV1は、PV100粘度推移データにおける、対応する使用期間の終了時点に該当する粘度から、開始時点に該当する粘度を減算した減算粘度量そのものとなる。例えば、使用期間2に対応する第1粘度変化量ΔV1(2)は、使用期間2の終了時点である3か月目の粘度(5.4cps)から、使用期間2の開始時点である2か月目の粘度(5.0cps)を減算した粘度変化量(0.4cps/月)となる。
【0079】
第2粘度変化量ΔV2(n)は、対応する使用期間nに係る上記減算粘度量を、当該PV100固定量(4ml)で除算した量である。例えば、使用期間2に対応する第2粘度変化量ΔV2(2)は、上記減算粘度量である0.4cpsを4mlで除算した量の0.10cps/mlとなる。
【0080】
図4(e)に示すPV500(25℃)参照データ125bについても、同様に、上記
図4(b)に示す粘度推移データに基づいて生成された参照データである。尚、詳細は省略するが、PV100(40℃)参照データ125c、及びPV500(40℃)参照データ125dも、メインタンク30内の温度を40℃に固定したときにおける、PVを100枚に固定した場合の粘度推移データ、及びPVを500枚に固定した場合の粘度推移データそれぞれに基づいて生成されたデータである。
【0081】
以下、CPU101が所定時間(1か月)毎に実行する粘度推定処理について、詳細に説明する。各粘度推定処理では、装着時点及び粘度推定処理の前回実行時点のうちの何れか遅い方である上記基準時点からの流出口66内のインクの粘度変化量ΔVcを推定する。そして、推定した粘度変化量ΔVcを、流出口粘度情報124が示す粘度に累積加算して得られる粘度を、現在の流出口66内のインクの粘度Vと推定する。
【0082】
尚、以下では、装着時点以降、a回目の粘度推定処理の実行時点に関するデータ名の後に、「(a)」の文字を適宜付加する。例えば、後述するように、a回目の粘度推定処理の実行時点における総流出量Qは、総流出量Q(a)と表す。なお、この「a」の値は、装着時点以降最初の粘度推定処理の実行時点では「1」となり、これ以降、各粘度推定処理の実行時点に到達する毎に1ずつ加算される値である。
【0083】
CPU101は、a回目の粘度推定処理において、総流出量カウント情報121のカウント情報が示す値を、総流出量Q(a)として取得する。また、CPU101は、前回流出量カウント情報122に基づいて、上記基準時点のときの総流出量Qを総流出量Q(a−1)として取得する。そして、以下の式(1)に示すように、総流出量Q(a)から総流出量Q(a−1)を減算した減算量を、基準時点からの、流出口66から流出したインクの単位時間(1か月)当たりの流出量ΔQ(a)として算出する。
【0084】
ΔQ(a)=Q(a)−Q(a−1)・・・(式1)
【0085】
また、CPU101は、温度履歴情報123から、基準時点から現在時点までの平均温度である温度temp(a)を取得する。
【0086】
そして、複数の参照データ125それぞれに基づいて推定される粘度変化量、取得した流出量ΔQ(a)、及び取得した温度tempに基づいて、今回の粘度変化量ΔVc(a)を補間により推定する。ここで、装着時点から、流出口66内のインクの粘度がピーク値をとるまでの粘度上昇期間と、ピーク値をとった以降の粘度下降期間とでは、粘度変化量ΔVc(a)の推定方法が異なる。以下、それぞれの期間における推定方法について詳細に説明する。
【0087】
まず、粘度上昇期間に実行する粘度推定処理について説明する。この粘度上昇期間では、先に触れたように、流出口66からのインクの流出に起因した粘度下降の影響と比べて、時間経過に伴う顔料沈降に起因した粘度上昇の影響の方が大きい。このため、各参照データ125における、第1粘度変化量ΔV1及び第2粘度変化量ΔV2のうちの、単位時間当たりの粘度変化量である第1粘度変化量ΔV1を用いた方が、単位流出量当たりの粘度変化量である第2粘度変化量ΔV2を用いる場合と比べて、推定精度は高くなる。従って、粘度上昇期間では、第1粘度変化量ΔV1を用いて粘度推定を行う。
【0088】
CPU101は、各参照データ125から、取得した総流出量Q(a)に応じた第1粘度変化量ΔV1を第1変化量ΔVis(a)としてそれぞれ抽出する。
【0089】
具体的には、参照データ125に含まれる複数の総流出量EXのうち、その量が総流出量Q(a)以下の量であり、且つ総流出量Q(a)に最も量が近い総流出量EXの使用期間に対応する第1粘度変化量ΔV1を粘度変化量ΔVis(a)として抽出する。例えば、総流出量Q(a)が38mlである場合には、PV100(25℃)参照データ125aからは使用期間9に対応する第1粘度変化量ΔV1である「0.2cps/月」を粘度変化量ΔVis(a)として抽出する。また、PV500(25℃)参照データ125bからは使用期間2に対応する第1粘度変化量ΔV1である「0.1cps/月」を粘度変化量ΔVis(a)として抽出する。
【0090】
なお、以下では、温度が25℃に関するデータについてはデータ名の後に25℃を表す「25」を付記し、温度が40℃に関するデータについてはデータ名の後に40℃を表す「40」を付記する。さらに、PV100に関するデータについては、温度に関する上記付記の後に「_100」をさらに付記し、PV500に関するデータについては、温度に関する上記付記の後に「_500」をさらに付記する。例えば、粘度変化量ΔVis25_100(a)は、温度25℃、且つPV100に関する粘度変化量ΔVis(a)であることを示す。
【0091】
この後、CPU101は、温度25度における、流出量ΔQ(a)に応じた粘度変化量ΔVis25(a)を、以下の式(2)により推定する。即ち、ΔVis25_100(a)、ΔVis25_500(a)、PV100固定量(4ml)、及びPV500固定量(18ml)に基づく比例配分(直線補間)により、粘度変化量ΔVis25(a)を推定する。
【0092】
ΔVis25(a)=ΔVis25_100(a)+(ΔVis25_500(a)−ΔVis25_100(a))/(18−4)×(ΔQ(a)−4)・・・(式2)
【0093】
例えば、ΔVis25_100(a)が「0.2」、ΔVis25_500(a)が「0.1」、ΔQ(a)が「7」である場合には、ΔVis25(a)は0.18(=0.2+(0.1−0.2)/(18−4)×(7−4))となる。
【0094】
同様に、温度40℃における、流出量ΔQ(a)に応じた粘度変化量ΔVis40(a)を、以下の式(3)により推定する。
【0095】
ΔVis40(a)=ΔVis40_100(a)+(ΔVis40_500(a)−ΔVis40_100(a))/(18−4)×(ΔQ(a)−4)・・・(式3)
【0096】
なお、式2及び式3から分かるように、今回の流出量ΔQ(a)が、PV100固定量である「4ml」に等しい場合には、PV100に係る参照データ125a,125cから抽出したΔVis25_100(a)及びΔVis40_100(a)の値そのものが、ΔVis25(a)及びΔVis40(a)それぞれの値となる。同様に、今回の流出量ΔQが、PV500固定量である「18ml」に等しい場合には、PV500の参照データ125b,125dから抽出したΔVis25_500(a)及びΔVis40_500(a)の値そのものが、ΔVis25(a)及びΔVis40(a)それぞれの値となる。そこで、本実施形態では、今回の流出量ΔQが、PV100固定量及びPV500固定量の何れかの固定量に等しい場合には、4種類の参照データ125からΔVis(a)をそれぞれ抽出するのではなく、固定量が流出量ΔQと等しい2種類の参照データ125からのみΔVis(a)を抽出する。
【0097】
次に、CPU101は、取得した温度temp(a)に応じた粘度変化量ΔVc(a)を、ΔVis25(a)、及び、ΔVis40(a)に基づいて、以下の式(4)により推定する。即ち、ΔVis25(a)、ΔVis40(a)、温度25℃、及び温度40℃に基づく比例配分により、粘度変化量ΔVc(a)を推定する。
【0098】
ΔVc(a)=ΔVis25(a)+(ΔVis40(a)−ΔVis25(a))/(40−25)×(temp(a)−25)・・・(式4)
【0099】
例えば、ΔVis25(a)が「0.18」、ΔVis40(a)が「0.21」、temp(a)が30℃の場合には、ΔVc(a)は0.19(=0.18+(0.21−0.18)/(40−25)×(30−25))となる。
【0100】
CPU101は、この粘度変化量ΔVc(a)を、流出口66内のインクの粘度の基準時点から現在時点までの粘度変化量として、流出口粘度情報124の粘度に加算する。これにより、流出口粘度情報124が示す粘度が更新される。より詳細には、以下の式5に示すように、基準時点における流出口66内のインクの粘度V(a−1)(今回の粘度推定処理の実行前の流出口粘度情報124が示す最新の粘度V(a−1))に、推定した粘度変化量ΔVc(a)を加算した値を、今回の粘度推定処理の実行時点における流出口66内のインクの粘度V(a)と推定する。
【0101】
V(a)=V(a−1)+ΔVc(a)・・・(式5)
【0102】
従って、流出口粘度情報124が示す粘度V(a)は、初期粘度である「4.0cps」に対して、装着時点以降に実行された粘度推定処理により推定した粘度変化量ΔVcを累積加算した量となる。
【0103】
以上により、粘度上昇期間における流出口66内のインクの粘度を精度よく推定することができる。次に、粘度下降期間に実行する粘度推定処理について説明する。この粘度下降期間では、時間経過に伴う顔料沈降に起因した粘度上昇と比べて、流出口66からのインクの流出に起因した粘度下降の影響の方が大きい。このため、各参照データ125における、第1粘度変化量ΔV1及び第2粘度変化量ΔV2のうちの、単位流出量当たりの粘度変化量である第2粘度変化量ΔV2を用いた方が、単位時間当たりの粘度変化量である第1粘度変化量ΔV1を用いる場合と比べて、推定精度は高くなる。従って、粘度下降期間では、第2粘度変化量ΔV2を用いて粘度推定を行う。
【0104】
CPU101は、まず、各参照データ125から、粘度推定処理の前回実行時点である基準時点における第2粘度変化量ΔV2を、ΔVde(a−1)として抽出する。具体的には、参照データ125に含まれる複数の総流出量EXのうち、その量が総流出量Q(a−1)以下の量であり、且つ総流出量Q(a−1)に最も量が近い総流出量EXの使用期間に対応する第2粘度変化量ΔV2を、粘度変化量ΔVde(a−1)として抽出する。例えば、基準時点での総流出量Q(a−1)が47mlである場合には、PV100(25℃)参照データ125aからは使用期間11に対応する第2粘度変化量ΔV2である「−0.03cps/ml」を粘度変化量ΔVde25_100(a−1)として抽出する。また、PV500(25℃)参照データ125bからは使用期間2に対応する第2粘度変化量ΔV2である「−0.01cps/ml」を粘度変化量Vde25_500(a−1)として抽出する。
【0105】
本実施形態では、これら取得したΔVde(a−1)を、基準時点から現在時点までの単位時間当たりの流出量であると仮定する。従って、下記の式6に示すように、各参照データ125から抽出した4つのΔVde(a−1)それぞれに対して、取得した流出量ΔQ(a)を乗算すると、参照データ125毎の4つの粘度変化量ΔVei(a)を取得することができる。この4つの粘度変化量ΔVei(a)それぞれは、各参照データ125に基づいて推定された、基準時点から現在時点までの流出口66内のインクの粘度変化量である。
【0106】
ΔVei(a)=ΔVde(a−1)×ΔQ(a)・・・(式6)
【0107】
従って、粘度上昇期間時の粘度推定方法と同様に、これら4つの粘度変化量ΔVei(a)に基づいて、単位時間当たりの流出量に関する補間、及び温度に関する補間を行うことで、取得した流出量ΔQ(a)及び温度temp(a)に応じた粘度変化量を推定することは可能である。しかしながら、この推定した粘度変化量は、実際の粘度変化量と大きく異なる場合がある。以下、その理由について説明する。
【0108】
図4(c)のグラフからも分かるように、流出口66内のインクの粘度のピーク値の大きさは一定ではない。従って、粘度下降期間の開始時点においては、粘度上昇期間の開始時点とは異なり、流出口66内のインクの粘度の起点は一定とはならない。一方で、メインタンク30内のインクがなくたったときの流出口66内のインクの粘度は、いずれも初期粘度の「4.0cps」よりも低い値となる。
【0109】
このため、例えば、
図5(a)に示すように、粘度上昇期間においては、PV100固定量で流出口66から単位時間当たりにインクが流出されると、流出口66内のインクの粘度のピーク値は、8.2cps近傍となる。この後、粘度下降期間においては、PV500固定量で単位時間当たりにインクが流出された場合、粘度推定処理では、PV500に係る参照データ125b,125dの第2粘度変化量ΔV2のみに基づいて粘度変化量ΔVei(a)が推定されることになる。その結果として、推定した粘度変化量ΔVei(a)は実際の粘度変化量と比べて小さくなる。
【0110】
そこで、本実施形態では、不揮発性メモリ104には、流出口66内のインクの下限粘度Bmを示す下限粘度データ126が記憶されている。そして、粘度下降期間の粘度推定処理では、
図5(b)に示すように、今回以降の粘度推定処理それぞれにより推定される流出口66内のインクの粘度Vが、次第に、下限粘度Bmに収束するように、上記推定した粘度変化量ΔVei(a)に対して所定の補正係数Kを乗算する。
【0111】
以下、補正係数Kの算出処理について説明する。なお、この補正係数Kの算出処理は、4つの参照データ125それぞれに関して行う処理であるが、参照する参照データ125が異なる以外は同様な処理であるため、ここでは4つの参照データ125を区別せずに説明する。
【0112】
まず、CPU101は、参照データ125に含まれる複数の総流出量EXのうち、その量が、基準時点での総流出量Q(a−1)以下の量であり、且つ総流出量Q(a−1)に最も量が近い総流出量EX(a−1)を抽出する。
【0113】
その後、CPU101は、この総流出量EX(a−1)に対応する、流出口66内のインクの粘度Vas(a−1)を、参照データ125から算出する。具体的には、まず、装着時点から、総流出量EX(a−1)に係る使用期間までの間の、第1粘度変化量ΔV1の合計量であるΣΔV1(a−1)を算出する。そして、下記の式7に示すように、ΣΔV1(n−1)に初期粘度である「4.0cps」を加算した値を、粘度Vas(a−1)として算出する。
【0114】
Vas(a−1)=4.0+ΣV1(a−1)・・・(式7)
【0115】
次に、CPU101は、流出口66から流出したインクの総流出量が総流出量EX(a−1)である時点から、総流出量Q(a−1)となる時点までの期間において、単位流出量当たりの粘度変化量が粘度変化量ΔVde(a−1)であるとして、基準時点における流出口66内のインクの粘度Vat(a−1)を推定する。即ち、以下の式8に示すように、粘度Vas(a−1)、粘度変化量ΔVde(a−1)、総流出量Q(a−1)、総流出量EX(a−1)に基づいて、粘度変化量ΔVde(a−1)を推定する。
【0116】
Vat(a−1)=Vas(a−1)+ΔVde(a−1)×(Q(a−1)−Ex(a−1))・・・(式8)
【0117】
この粘度Vat(a−1)は、参照データ125が示す流出口66内のインクの粘度の予想推移において、総流出量EX(a−1)に対応する粘度を示している。例えば、PV100(25℃)参照データ125aに基づいて推定した粘度Vat(a−1)の場合には、温度を25℃に固定し、且つ単位時間当たりの流出量をPV100固定量に固定したときの、流出口66から流出したインクの総流出量が総流出量EX(a−1)である時点での粘度を示している。
【0118】
この後、以下の式9及び式10に示すように、粘度Vat(a−1)と下限粘度Vbmとの差As、及び基準時点における流出口66内のインクの推定粘度V(a−1)と下限粘度Vbmとの差Bsをそれぞれ算出する。
【0119】
As=Vat(a−1)−Vbm・・・(式9)
Bs=V(a−1)−Vbm・・・(式10)
【0120】
そして、以下の式11に示すように、差Bsを差Asで除算した値を補正係数Kとする。
【0122】
以上のようにして、補正係数Kを算出する。そして、以下の式12に示すように、粘度変化量ΔVei(a)に対して、補正係数Kを乗算して、粘度変化量ΔVea(a)を算出する。
【0123】
ΔVea(a)=ΔVei(a)×K・・・(式12)
【0124】
このΔVea(a)は、4種類の参照データ125に対応して、ΔVea25_100(a)、ΔVea25_500(a)、ΔVea40_100(a)、ΔVea40_500(a)の4種類ある。
【0125】
以下は粘度上昇期間と同様に、4つのΔVea(a)を用いて、単位時間当たりの流出量に関する補間、及び温度に関する補間を行うことで、取得した流出量ΔQ(a)及び温度temp(a)に応じた粘度変化量ΔVc(a)を推定する。
【0126】
即ち、温度25度における粘度変化量ΔVea25(a)を以下の式13により、温度40度における粘度変化量ΔVea40(a)を以下の式14によりそれぞれ推定する。
【0127】
ΔVea25(a)=ΔVea25_100(a)+(ΔVea25_500(a)−ΔVea25_100(a))/(18−4)×(ΔQ(a)−4)・・・(式13)
ΔVea40(a)=ΔVea40_100(a)+(ΔVea40_500(a)−ΔVea40_100(a))/(18−4)×(ΔQ(a)−4)・・・(式14)
【0128】
その後、粘度変化量ΔVc(a)を、ΔVea25(a)、及び、ΔVea40(a)を用いて、以下の式15により推定する。
【0129】
ΔVc(a)=ΔVea25(a)+(ΔVea40(a)−ΔVea25(a))/(40−25)×(temp(a)−25)・・・(式15)
【0130】
以上により、粘度下降期間においても、流出口66内のインクの粘度を精度よく推定することが可能となる。なお、粘度下降期間における粘度推定処理についても、粘度上昇期間における粘度推定処理と同様に、今回の流出量ΔQが、PV100固定量及びPV500固定量の何れかの固定量に等しい場合には、4種類の参照データ125からΔVea(a)を推定するのではなく、固定量が流出量ΔQと等しい2種類の参照データ125からのみΔVea(a)を推定する。
【0131】
次に、粘度推定処理に係るプリンタ1の一連の処理動作について、
図6を参照しつつ説明する。
【0132】
まず、CPU101は、基準時点から1か月経過したか否かを判断する(A1)。そして、1か月経過したと判断した場合(A1:YES)には、CPU101は、不揮発性メモリ104の総流出量カウント情報121及び前回流出量カウント情報122を参照して、単位時間当たりの流出量ΔQ(a)、今回の粘度推定処理の実行時点における総流出量Q(a)、及び基準時点における総流出量Q(a-1)を取得する(A2)。また、このとき、温度履歴情報123に基づいて温度temp(a)を取得する。
【0133】
この後、CPU101は、不揮発性メモリ104に記憶された粘度下降フラグ127がオン状態か否かを判断する(A3)。この粘度下降フラグ127は、現在時点が、粘度上昇期間である場合にはオフ状態、粘度下降状態である場合にはオン状態となるフラグである。粘度下降フラグ127がオン状態であると判断した場合(A3:YES)には、A11の処理に移る。
【0134】
一方で、粘度下降フラグ127がオフ状態であると判断した場合(A3:NO)には、取得した流出量ΔQ(a)と、固定量が等しい参照データ125が不揮発性メモリ104に記憶されているか否かを判断する(A4)。固定量が等しい参照データ125が記憶されていると判断した場合(A4:YES)には、固定量が流出量ΔQ(a)と等しい2つの参照データ125から総流出量Q(a)に対応する、第1粘度変化量ΔV1を求め、この第1粘度変化量ΔV1、温度temp(a)、及び流出量ΔQ(a)等を用いて、基準時点からの流出口66内のインクの粘度変化量ΔVcを推定する(A5)。一方で、固定量が流出量ΔQと等しい参照データ125が記憶されていないと判断した場合(A4:NO)には、4つの参照データ125から総流出量Q(a)に対応する第1粘度変化量ΔV1を求め、この第1粘度変化量ΔV1、温度temp(a)、及び流出量ΔQ(a)等を用いて、基準時点からの流出口66内のインクの粘度変化量ΔVcを推定する(A6)。
【0135】
A5の処理、又はA6の処理の後、CPU101は、推定した粘度変化量ΔVcの値が負であるか否かを判断する(A7)。粘度変化量ΔVcの値が負ではないと判断した場合(A7:NO)には、CPU101は、現在時点は粘度上昇期間内にあると判断し、流出口粘度情報124が示す粘度に、A6の処理で推定した粘度変化量ΔVcを加算する(A8)。これにより、流出口粘度情報124が示す粘度が、更新される。また、このとき、流出口粘度情報124が示す、粘度変化量ΔVcを加算後の粘度V(a)と、総流出量Q(a)とを関連付けて、不揮発性メモリ104の粘度テーブル128に記憶する。この粘度テーブル128は、装着時点以降実行された粘度推定処理それぞれにより推定した粘度Vと、その推定時の総流出量カウント情報121のカウント値とを関連付けたテーブルである。このA8の処理が終了すると、A1の処理に戻る。
【0136】
一方で、粘度変化量ΔVcの値が負であると判断した場合(A7:YES)には、CPU101は、現在時点は粘度下降期間内であると判断し、不揮発性メモリ104に記憶されている粘度下降フラグ127をオフ状態からオン状態に遷移させる(A9)。次に、CPU101は、流出口粘度情報124が示す現在の粘度がピーク値であるとし、このピーク値に基づいて、不揮発性メモリ104の下限粘度データ126が示す下限粘度Vbmの値を調整する(A10)。具体的には、ピーク値が大きいほど、メインタンク30内のインクがなくなったときの、流出口66内のインクの最終粘度が低くなる。このため、ピーク値が大きいほど、下限粘度Vbmが小さくなるように調整する。これにより、粘度変化量ΔVcの推定精度を向上させることができる。このA10の処理が終了すると、A11の処理に移る。
【0137】
A11の処理では、CPU101は、固定量が、A2で取得した流出量ΔQ(a)と等しい参照データ125が不揮発性メモリ104に記憶されているか否かを判断する。固定量が等しい参照データ125が記憶されていると判断した場合(A11:YES)には、CPU101は、固定量が流出量ΔQ(a)と等しい2つの参照データ125から総流出量Q(a−1)に対応する第2粘度変化量ΔV2を求め、この第2粘度変化量ΔV2及び流出量ΔQ(a)等を用いて、2つの参照データ125それぞれについての粘度変化量ΔVei(a)を推定する(A12)。また、CPU101は、2つの参照データ125それぞれから2つ粘度Vat(a−1)を算出し、この2つの粘度Vat(a−1)、流出口粘度情報124が示す粘度V(a−1)、下限粘度データ126が示す下限粘度Vbmに基づいて2つの補正係数Kを算出する(A13)。この後、2つの参照データ125それぞれの粘度変化量ΔVeiに対して、対応する補正係数Kを乗算して2つの粘度変化量ΔVea(a)を算出し、この2つの粘度変化量ΔVeaに対して、温度に関する補間を行うことにより、粘度変化量ΔVc(a)を推定する(A14)。このA14の処理で推定した粘度変化量ΔVc(a)を、流出口粘度情報124が示す粘度に加算する(A15)。また、このとき、流出口粘度情報124が示す粘度V(a)と、取得した総流出量Q(a)とを関連付けて、粘度テーブル128に記憶する。このA15の処理が終了すると、A1の処理に戻る。
【0138】
A11の処理において、固定量が流出量ΔQ(a)と等しい参照データ125が記憶されていないと判断した場合(A11:NO)には、4つの参照データ125から総流出量Q(a−1)に対応する第2粘度変化量ΔV2を求め、この第2粘度変化量ΔV2及び流出量ΔQ(a)等を用いて、4つの参照データ125それぞれについての粘度変化量ΔVei(a)を推定する(A16)。また、CPU101は、4つの参照データ125から4つ粘度Vat(a−1)を算出し、この4つの粘度Vat(a−1)、流出口粘度情報124が示す粘度V(a−1)、下限粘度データ126が示す下限粘度Vbmに基づいて4つの補正係数Kを算出する(A17)。この後、4つの参照データ125それぞれの粘度変化量ΔVeiに対して、対応する補正係数Kを乗算して4つの粘度変化量ΔVea(a)を算出し、この4つの粘度変化量ΔVeaに対して、単位時間当たりの流出量に関する補間、及び温度に関する補間を行うことにより、粘度変化量ΔVc(a)を推定する(A18)。このA18の処理が終了すると、このA18の処理で推定した粘度変化量ΔVc(a)を、流出口粘度情報124が示す粘度に加算するA15の処理に移る。
【0139】
次に、プリンタ1の処理動作の一例について、
図7を参照しつつ説明する。尚、以下では、印刷指令を受信した後、印刷処理を実行する前において、排出処理としてアクチュエータ45にフラッシングを行わせる態様について説明するが、特にこれに限定されるものでなく、排出処理としてパージ装置9に吸引パージを行なわせる態様であってもよい。
【0140】
CPU101は、まず、外部装置200から印刷指令を受信したか否かを判断する(S1)。印刷指令を受信したと判断した場合(S1:YES)には、CPU101は、粘度テーブル128、及び、総流出量カウント情報121が示す現在の総流出量に基づいて、ノズル46内のインクの粘度を推定する(S2)。具体的には、総流出量カウント情報121が示す現在の総流出量から、流出口66からノズル46に至るインク流路の流路容量だけ減算した減算量を算出する。そして、粘度テーブル128において、この減算量に最も近い総流出量に関連付けられた粘度(流出時粘度)を、ノズル46内の現在の粘度と推定する。なお、インクが流出口66からノズル46に至るまでのインク流路内における乾燥による粘度上昇量も推定し、その粘度上昇量を上記流出時粘度に加算した粘度を、ノズル46内のインクの粘度と推定してもよい。
【0141】
次に、CPU101は、推定したノズル46内のインクの粘度に応じて、フラッシングを行わせる際のアクチュエータ45の駆動条件(フラッシング条件)を決定する(S3)。そして、CPU101は、決定したフラッシング条件に従って、アクチュエータ45にフラッシングを行わせるフラッシング処理を実行する(S4)。この後、CPU101は、キャリッジ駆動モータ20、ヘッド4等を制御して、外部装置200から受信した印刷指令に従って、用紙Pに画像を印刷する印刷処理を実行する(S5)。次に、CPU101は、S1の処理で印刷指令を受信してから、当該印刷指令に係る印刷処理が終了するまでの間に、ノズル46から吐出又は排出されたインクの消費量を算出し、算出した消費量を、流出口66から流出したインクの流出量として、総流出量カウント情報121のカウント値に加算する(S6)。
【0142】
次に、CPU101は、残量検出センサ120の出力結果に基づいて、サブタンク6内のインクの液面が検出位置未満となるニアエンプティ状態か否かを判断する(S7)。ニアエンプティ状態ではないと判断した場合(S7:NO)には、S1の処理に戻る。一方で、ニアエンプティ状態と判断した場合(S7:YES)には、CPU101は、メインタンク30の交換を促す交換画面をタッチパネル161に表示する(S8)。この後、装着検知センサ130の検知結果に基づいて、メインタンク30の交換がユーザにより行われて新たなメインタンク30がタンク装着部5に装着されたと判断した場合(S9:YES)には、CPU101は、不揮発性メモリ104に記憶された、総流出量カウント情報121、前回流出量カウント情報122、温度履歴情報123、流出口粘度情報124、下限粘度データ126、粘度下降フラグ127、粘度テーブル128等を初期化する(S10)。これにより、例えば、流出口粘度情報124が示す粘度が、初期粘度である「4.0cps」に初期化される。このS10の処理が終了すると、S1の処理に戻る。
【0143】
以上、本実施形態によると、PV100に係る参照データ125a,125c、及び、PV500に係る参照データ125b,125dは、互いに固定量が異なる参照データである。このため、取得した流出量ΔQと、総流出量Qと、複数の参照データ125とに基づいて、取得した流出量ΔQに応じた、流出口66内のインクの粘度を推定することができる。
【0144】
以上説明した実施形態において、メインタンク30及びサブタンク6を合わせたものが「液体タンク」に相当する。メインタンク30が「第1貯溜室」に相当し、サブタンク6が「第2貯溜室」に相当する。流出口66が「供給口」に相当する。不揮発性メモリ104が「記憶部」に相当し、CPU101が「制御部」に相当する。流出量ΔQが「単位時間当たりの供給量」に相当し、総流出量Qが「累積供給量」に相当する。参照データ125a,125cが「第1参照データ」に相当し、参照データ125b,125dが「第2参照データ」に相当する。粘度上昇期間において実行される粘度推定処理により推定される粘度変化量ΔVc(a)が「第1変化量」に相当する。粘度下降期間において実行される粘度推定処理において算出される粘度変化量ΔVde(a−1)が「第2変化量」に相当する。パージ装置9、及び、ヘッド4のアクチュエータ45それぞれが「液体排出部」に相当する。
【0145】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、メインタンク30に貯溜されているインクは、顔料インクである必要はなく、例えば、染料インクであってもよい。染料インクの場合、メインタンク30内やサブタンク6内に滞在する間、インクの水分は時間の経過とともに蒸発するため、その粘度は次第に上昇する。従って、流出口66内のインクの粘度も変化することになる。従って、上記実施形態と同様に、4種類の参照データを不揮発性メモリ104に記憶しておく。そして、粘度推定処理において、この4種類の参照データ、及び取得した流出量ΔQを用いることで、流出口66内のインクの粘度を精度よく推定することができる。
【0146】
また、上述の実施形態では4種類の参照データ125が不揮発性メモリ104に記憶されていたが、これに限定されるものではなく、固定量が互いに異なる少なくとも2種類の参照データが不揮発性メモリ104に記憶されていればよい。例えば、対応する温度が等しいPV100(25℃)参照データ125a、及びPV500(25℃)参照データ125bのみが不揮発性メモリ104に記憶されていてもよい。また、参照データ125は、総流出量EX、第1粘度変化量ΔV1、及び第2粘度変化量ΔV2との対応関係を示すデータであったが、これに限定されるものではなく、流出口66内のインクの粘度の予測推移に関するデータであればよい。従って、例えば、参照データは、
図4(a)等に示すように、経過月数と流出口66内のインクの粘度との関係を示すデータであってもよい。この場合でも、この参照データから、総流出量EX、第1粘度変化量ΔV1、及び第2粘度変化量ΔV2との対応関係を算出することは可能であるため、上述のように流出口66内のインクの粘度を推定することは可能である。
【0147】
また、上述の実施形態では、粘度推定処理により推定した粘度のうち最も高い粘度であるピーク値に応じて、下限粘度データ126の下限粘度Vbmを調整していたが、調整せずに下限粘度Vbmを固定してもよい。また、粘度下降期間において実行される粘度推定処理において、推定した粘度変化量ΔVei(a)に対して補正係数Kを乗算せずに、粘度変化量ΔVei(a)に基づいて粘度変化量ΔVcを推定してもよい。例えば、メインタンク30に貯溜されている顔料インクが、顔料粒子の粒子径が小さくて軽く、且つその顔料粒子の含有量が少ないインクである場合には、顔料の沈降量は少なく、流出口66内のインクの粘度ピーク値は左程大きくならない。従って、この場合には、上記粘度変化量ΔVei(a)を補正係数Kで補正する必要は必ずしもない。
【0148】
また、流出口66内のインクの粘度を推定するまでの算出順序は、上記実施形態の算出順序に限定されるものではない。例えば、上述の実施形態では、単位時間当たりの流出量に関する補間、及び温度に関する補間は、4種類の参照データ125それぞれから推定した4つの粘度変化量に対して行っていたが、4つの粘度変化量に、基準時点の流出口66内のインクの粘度をそれぞれ加算した4つの粘度に対して補間を行ってもよい。
【0149】
また、上述の実施形態では、粘度推定処理では、サブタンク6の流出口66内のインクの粘度を推定していたが、これに限定されるものではなく、メインタンク30内の所定領域内のインクの粘度や、サブタンク6内の所定領域内のインクの粘度を推定するように構成されていてもよい。この場合、不揮発性メモリ104に記憶する参照データは、推定する領域内のインクの粘度の予測推移に関する参照データである必要がある。また、参照データ125には、第1粘度変化量ΔV1及び第2粘度変化量ΔV2のうちの何れか一方の粘度変化量のみを含むデータであってもよい。この場合、粘度上昇期間及び粘度下降期間の何れの期間においても、参照データ125に含まれる1種類の粘度変化量に基づいて粘度を推定することになる。従って、第1粘度変化量ΔV1に基づいて粘度を推定する態様の場合には、粘度推定処理それぞれでは、今回の粘度推定処理の実行時点における総流出量Q(a)のみ取得すればよい。また、第2粘度変化量ΔV2に基づいて粘度を推定する態様の場合には、粘度推定処理それぞれでは、前回の粘度推定処理の実行時点等の基準時点における総流出量Q(a−1)のみを取得すればよい。
【0150】
また、
図8に示すように、メインタンク30とヘッド4の間に、サブタンクが介在しない構成であってもよい。即ち、メインタンク30が装着されるタンク装着部205に、上述のニードル65と同様なニードル265が設けられており、このニードル265に、供給チューブ22を介してヘッド4が接続されていてもよい。この場合、粘度推定処理において、メインタンク30の供給口33内のインクの粘度を推定してもよい。
【0151】
また、粘度推定処理は、上記単位時間と同じ所定時間毎(1か月)ごとに実行していたが、これに限定されるものではなく、例えば、2か月ごとに実行してもよい。この場合、上述の実施形態で推定した粘度変化量ΔVcに対して、粘度推定処理の実行間隔である所定時間を乗算した量が、基準時点から現在時点までの流出口66内のインクの粘度変化量となる。
【0152】
パージ装置9により実行されるインク排出動作は、ノズル46に吸引力を作用させる吸引パージであったが、例えば、供給チューブ22の途中部位に加圧ポンプを設け、この加圧ポンプを駆動して、ヘッド4にインクを供給することで、ノズル46からインクを排出させる加圧パージであってもよい。また、パージ装置が、これら吸引パージ及び加圧パージの両方を実行可能にされていてもよい。
【0153】
また、メインタンクが装着されるタンク装着部は、サブタンクも収容可能に構成されていてもよい。つまり、サブタンクが、タンク装着部内に設けられていてもよい。
【0154】
また、本発明は、インクジェットヘッドを固定した状態で、搬送機構により搬送される用紙に画像を印刷する、所謂ライン式のインクジェットプリンタにも適用されうる。また、以上では、ノズルからインクを吐出して用紙Pに印刷を行うプリンタに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。例えば、配線基板に印刷する配線パターンの材料等のインク以外の液体を吐出して印刷を行う液体吐出装置に本発明を適用することも可能である。