(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記インダクタの下方に配置され、前記基板平面に対して平行な方向に沿ってスリットが形成された下層スリット付きシールドをさらに具備する請求項1記載の半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本技術を実施するための形態(以下、実施の形態と称する)について説明する。説明は以下の順序により行う。
1.第1の実施の形態(インダクタと回路との間にスリット付きのシールドを挿入した例)
2.第2の実施の形態(差動信号を生成するインダクタと回路との間にスリット付きのシールドを挿入した例)
3.第3の実施の形態(渦巻き状のインダクタと回路との間にスリット付きのシールドを挿入した例)
4.第4の実施の形態(インダクタと回路との間にスリット付きのシールドを挿入し、下層シールドおよび外周シールドを設けた例)
【0022】
<1.第1の実施の形態>
[半導体装置の構成例]
図1は、本技術の実施の形態における半導体装置100の一構成例を示すブロック図である。この半導体装置100として、例えば、撮像素子やLSI(Large Scale Integration)などを搭載した装置が想定される。半導体装置100には、上側チップ110および下側チップ150などの、積層された複数の半導体チップが設けられる。この上側チップ110には、論理回路111が配置される。また、下側チップ150には、論理回路151および位相同期回路200が配置される。
【0023】
なお、2枚の半導体チップを積層しているが、積層する半導体チップの枚数は2枚に限定されず、3枚以上であってもよい。
【0024】
論理回路111は、所定の処理を実行するものである。この論理回路111は、下側の論理回路151との間で信号線119を介してデータを送受信する。論理回路111としては、例えば、画素回路や、その画素回路を駆動する垂直駆動回路が想定される。
【0025】
論理回路151は、位相同期回路200からのクロック信号CLK
outに同期して、所定の処理を実行するものである。論理回路151としては、例えば、AD(Analog to Digital)変換器や、そのAD変換器を駆動する水平駆動回路が想定される。
【0026】
位相同期回路200には、外部の水晶発振器などにより生成された所定の周期のクロック信号CLK
inが入力される。位相同期回路200は、そのクロック信号CLK
inを所定の逓倍比で逓倍してクロック信号CLK
outとして論理回路151に信号線209を介して出力する。
【0027】
[位相同期回路の構成例]
図2は、第1の実施の形態における位相同期回路200の一構成例を示すブロック図である。この位相同期回路200は、位相比較器210、チャージポンプ220、分周器230および電圧制御発振器240を備える。
【0028】
位相比較器210は、水晶発振器152からのクロック信号CLK
inと、分周器230からのクロック信号CLK
fbとの位相を比較するものである。この位相比較器210は、比較結果に基づいて、それらの信号の位相差を示す検出信号UPおよびDNを生成してチャージポンプ220に供給する。例えば、検出信号UPおよびDNのパルス幅の差が、クロック信号CLK
inとクロック信号CLK
fbとの位相差を示す。
【0029】
チャージポンプ220は、検出信号UPおよびDNの示す位相差に応じた電圧の制御信号Vcを生成するものである。このチャージポンプ220は、制御信号Vcを電圧制御発振器240に供給する。
【0030】
電圧制御発振器240は、制御信号Vcの電圧に応じた周波数のクロック信号CLK
outを生成し、分周器230および論理回路151に供給するものである。このクロック信号CLK
outは、例えば、シングルエンド信号である。
【0031】
分周器230は、電圧制御発振器240からのクロック信号CLK
outを所定の分周比で分周するものである。この分周器230は、分周した信号をクロック信号CLK
fbとして位相比較器210に帰還させる。このように電圧制御発振器240からのクロック信号CLK
outを分周した信号を帰還させることにより、位相同期回路200は、クロック信号CLK
inを逓倍した信号を生成することができる。
【0032】
[電圧制御発振器の構成例]
図3は、第1の実施の形態における電圧制御発振器240および電磁シールドの一構成例を示す回路図である。この電圧制御発振器240は、増幅回路241、インダクタ250および可変容量242を備える。可変容量242およびインダクタ250は、増幅回路241に並列に接続される。また、下側チップ150から上側チップ110に向かう方向を上方向として、インダクタ250の上方に上層シールド260が積層される。
【0033】
可変容量242は、チャージポンプ220からの制御信号Vcの電圧に応じて電気容量が変化するキャパシタである。例えば、バリキャップダイオードが、可変容量242として用いられる。なお、可変容量242は、特許請求の範囲に記載の容量の一例である。
【0034】
インダクタ250は、可変容量242と共振してクロック信号を生成するものである。また、このインダクタ250は、上方向または下方向への磁界を生成する。
【0035】
増幅回路241は、可変容量242およびインダクタ250からなるLC共振回路により生成された信号を増幅し、クロック信号CLK
outとして分周器230および論理回路151に供給するものである。
【0036】
上層シールド260は、上側チップ110および下側チップ150のそれぞれの基板平面に対して平行な方向に沿ってスリットが形成された電磁シールドである。また、上層シールド260には、所定の固定電位(例えば、グランド電位)が印加される。この上層シールド260により、上側の論理回路111で発生した磁界による電磁ノイズが遮蔽され、その電磁ノイズから下側のインダクタ250が保護される。
【0037】
なお、上層シールド260の電位を固定電位としているが、浮動電位としてもよい。この場合には、上層シールド260は、電磁誘導による電磁ノイズのみを遮蔽する磁界シールドとして機能する。静電誘導による電磁ノイズも遮蔽する必要がある場合には、上層シールド260に固定電位が印加される。
【0038】
また、上層シールド260を電圧制御発振器240内のインダクタ250の上方に配置しているが、電圧制御発振器240以外の回路(バッファ回路やクロック分配回路など)に設けられたインダクタの上方に配置してもよい。
【0039】
図4は、第1の実施の形態における半導体装置の斜視図の一例である。同図におけるaは、上側チップ110および下側チップ150の斜視図の一例である。同図におけるbは、上層シールド260を拡大した斜視図の一例であり、同図におけるcは、インダクタ250を拡大した斜視図の一例である。
【0040】
図4におけるaに例示するように、下側チップ150にインダクタ250が配置され、その上方に、上層シールド260が積層される。言い換えれば、上層シールド260は、インダクタ250と上側チップ110との間に挿入される。そして、上層シールド260の上方の上側チップ110に論理回路111が配置される。この論理回路111において、インダクタ250の上方には、インダクタ250と同じ形状のインダクタが設けられないものとする。
【0041】
なお、上側チップ110は、特許請求の範囲に記載の回路配置基板の一例であり、下側チップ150は、特許請求の範囲に記載のインダクタ配置基板の一例である。また、上層シールド260は、特許請求の範囲に記載の上層スリット付きシールドの一例である。
【0042】
また、上層シールド260をインダクタ250と上側チップ110との間に挿入しているが、インダクタ250と、それ以外の回路との間に上層シールド260が配置されるのであれば、この構成に限定されない。例えば、上層シールド260を上側チップ110に設け、その上方に論理回路111を積層してもよい。
【0043】
また、
図4におけるbに例示するように、上層シールド260には、上側チップ110および下側チップ150の基板平面に対して平行な方向に沿って、所定数のスリットが形成される。
【0044】
また、
図4におけるcに例示するように、インダクタ250は、接続された配線251および配線252から構成される。これらの配線251および配線252は、基板平面に垂直な中心軸を中心として円形に巻かれている。また、これらの配線251および252は、複数層に積層されている。なお、これらの配線を複数層とせずに単層としてもよい。
【0045】
そして、配線251および配線252のそれぞれの中心は同一でなく、一定の距離を空けて配置されている。これらの中心を結ぶ直線に平行な方向を以下、X方向とする。また、基板平面に対して平行で、X方向に垂直な方向を以下、Y方向とする。基板平面に垂直な方向を以下、Z方向とする。上述の上層シールド260のスリットは、X方向に沿って形成される。
【0046】
[インダクタの構成例]
図5は、第1の実施の形態におけるインダクタ250の平面図の一例である。このインダクタ250は、接続された配線251および配線252から構成される。ここで、配線251の両端のうち配線252と接続されていない方の一端を始点501とし、他端を接続点502とする。また、配線252の両端のうち配線251と接続されていない方の一端を終点503とする。
【0047】
配線251は、Z方向に平行な中心軸を中心として始点501から接続点502まで時計回りに巻かれている。一方、配線252は、Z方向に平行な中心軸を中心として接続点502から終点503まで反時計回りに巻かれている。配線251および252のそれぞれの巻き数は例えば、2回である。なお、巻き数は2回に限定されない。
【0048】
そして、配線251および配線252のそれぞれの中心は同一でなく、これらの中心は、X方向に平行な直線上に配置されている。このような8の字型のインダクタ250において、始点501および終点503の一方から他方へ電流を流すと、配線251と、配線252とで互いに逆方向の磁界が生じる。例えば、配線251で上方向の磁界が生じるときには、配線252で下方向の磁界が生じる。
【0049】
[上層シールドの構成例]
図6は、第1の実施の形態における上層シールド260の平面図の一例である。この上層シールド260には、X方向に沿って所定数のスリットが形成されている。また、上層シールド260には、所定の固定電位(グランド電位など)が印加される。
【0050】
図7は、第1の実施の形態におけるインダクタ250に流れる電流の方向の一例を示す図である。始点501から終点503の方向に電流を流すと、配線251において、時計回りに電流が流れ、配線252において反時計回りに電流が流れる。
【0051】
図8は、第1の実施の形態における上層シールド260内の誘導電流の方向の一例を示す図である。同図において、太い点線は、配線251に流れる電流を示し、細い点線は、配線251で生じた磁界により上層シールド260に誘導される渦電流を示す。また、太い実線は、配線252に流れる電流の経路を示し、細い実線は、配線252で生じた磁界により上層シールド260に誘導される渦電流を示す。
【0052】
配線251では時計回りに電流が流れて、その電流により下方向の磁界が生じる。この磁界により、電磁誘導の法則に従って、上層シールド260に反時計回りの渦電流(点線)が流れる。一方、配線252では、反時計回りに電流が流れて、その電流により上方向の磁界が生じる。この磁界により、電磁誘導の法則に従って、上層シールド260に時計回りの渦電流(実線)が流れる。
【0053】
前述したように上層シールド260においてスリットは、X方向に沿って形成されている。また、インダクタ250において配線251および252はX方向に沿って並んでいる。したがって、配線251側を左側、配線252側を右側として、上層シールド260の右側で誘導された渦電流がスリットに沿って左側に流れ、左側で誘導された渦電流はスリットに沿って右側に流れこむ。これらの渦電流は、互いに向きが逆であるため、打ち消しあう。このため、上層シールド260全体では渦電流がほとんど生じず、その渦電流により生成された磁界によってインダクタ250に逆起電力が生じるおそれが無くなる。したがって、その逆起電力によるインダクタ250のインダクタンスの低下を抑制することができる。また、インダクタンスの低下を抑制することにより、インダクタ250のQ値の低下を抑制することができる。ここで、Q値は、例えば、次の式により表される。
Q=2πfL/R
上式において、Lは、インダクタ250のインダクタンスを示し、単位は例えば、ヘンリー(H)である。fは、インダクタ250が可変容量242などと共振する際の発振周波数を示し、単位は例えば、ヘルツ(Hz)である。Rは、インダクタンス250の内部抵抗を示し、単位は例えば、オーム(Ω)である。
【0054】
また、インダクタ250の上方の論理回路111で生じた磁界によっても上層シールド260に渦電流が生じるが、前述したように、インダクタ250の上方には、インダクタ250と同じ形状の素子は設けられていない。このため、論理回路111からの磁界により生じた渦電流は打ち消されることが無く、その渦電流により生じた逆方向の磁界により、論理回路111からの磁界が打ち消される。これにより、上方からの電磁ノイズが遮蔽される。したがって、インダクタ250のインダクタンスの低下を抑制しつつ、インダクタ250以外の回路で生じた磁界による電磁ノイズを低減して、その電磁ノイズからインダクタ250を保護することができる。
【0055】
ここで、X方向で無く、Y方向に沿ってスリットが形成された比較例の上層シールド260を仮定する。この比較例では、スリットに沿ってY方向に渦電流が流れる。しかし、配線251および252はX方向に配置されているため、上層シールド260の右側で誘導された渦電流が左側に流れず、左側で誘導された渦電流が右側に流れることもなくなる。したがって、中央付近を除いて、渦電流が打ち消されず、その渦電流により生じた磁界により、インダクタ250のインダクタンスが低下するおそれがある。
【0056】
また、方向に関わらず、スリット自体を上層シールド260に設けない場合には、スリットにより渦電流の方向が制限されることが無いため、渦電流の電流値の合計が、スリットを設けた場合よりも大きくなる。このため、スリットを設けた場合と比較して、インダクタンスの低下量が大きくなってしまう。
【0057】
図9は、第1の実施の形態における絶縁レベルの測定方法を説明するための図である。上層シールド260の上方に、インダクタ250と異なる形状(渦巻き形状など)のインダクタ302を配置し、そのインダクタ302に、交流電源301を接続する。交流電源301からの交流信号の周波数がfであるときの交流電源301の供給電流は、i
in(f)として測定される。周波数fの単位は、例えば、ヘルツ(Hz)である。また、インダクタンス250の両端は接地される。インダクタ302が生成した磁界により、インダクタ250に誘導される正相信号の電流は、i
p(f)として測定され、逆相信号の電流は、i
n(f)として測定される。これらの電流の単位は、例えば、アンペア(A)である。そして、これらの測定値に基づいて次の式により、絶縁レベルLV
ISOが算出される。
【数1】
【0058】
この絶縁レベルLV
ISOは、インダクタ250の上方の回路(インダクタ302など)で生じた電磁ノイズを遮蔽する効果の高さを示す。絶縁レベルLV
ISOの値が小さいほど、電磁ノイズの遮蔽効果が高いことを意味する。絶縁レベルLV
ISOの単位は、デシベル(dB)である。
【0059】
図10は、第1の実施の形態における周波数毎の絶縁レベルを示すグラフである。同図において縦軸は、絶縁レベルLV
ISO(dB)を示し、横軸は交流信号の周波数f(Hz)を示す。また、同図において点線の曲線は、上層シールド260を設けない場合の絶縁レベルLV
ISOの特性を示し、実線の曲線は、上層シールド260を設けた場合の絶縁レベルLV
ISOの特性を示す。
【0060】
図10に例示するように、上層シールド260を設けることにより、上層シールド260を設けない場合よりも絶縁レベルLV
ISOを小さくすることができる。すなわち、インダクタ250以外の回路からの電磁ノイズの遮蔽効果を向上させることができる。
【0061】
図11は、第1の実施の形態における周波数毎のインダクタンスを示すグラフである。同図における縦軸は、インダクタ250のインダクタンスL(H)を示し、横軸は交流信号の周波数f(Hz)を示す。また、同図において点線の曲線は、上層シールド260を設けない場合のインダクタンスLの特性を示し、実線の曲線は、上層シールド260を設けた場合のインダクタンスLの特性を示す。
【0062】
図11に例示するように、上層シールド260を設けても上層シールド260を設けない場合と比較してインダクタンスLの値はほとんど低下(劣化)しない。
【0063】
図12は、第1の実施の形態における周波数毎のQ値を示すグラフである。同図における縦軸は、インダクタ250のQ値を示し、横軸は交流信号の周波数f(Hz)を示す。また、同図において点線の曲線は、上層シールド260を設けない場合のQ値の特性を示し、実線の曲線は、上層シールド260を設けた場合のQ値の特性を示す。
【0064】
図12に例示するように、上層シールド260を設けても上層シールド260を設けない場合と比較してQ値はほとんど低下(劣化)しない。
【0065】
図10乃至12に例示したように、上層シールド260を設けることにより、インダクタンスLおよびQ値の劣化を抑制しつつ、電磁ノイズを低減することができる。
【0066】
このように、本技術の第1の実施の形態によれば、スリットを形成した上層シールド260をインダクタ250と論理回路111との間に挿入したため、論理回路111で生じた磁界による電磁ノイズを低減することができる。また、上層シールド260のスリットにより、渦電流が低減するため、インダクタ250のインダクタンスの低下を抑制することができる。
【0067】
<2.第2の実施の形態>
上述の第1の実施の形態では、8の字型のインダクタ250の上方に上層シールド260を配置して、インダクタ250を電磁ノイズから保護していたが、8の字型以外の形状のインダクタを保護対象とすることもできる。例えば、クロック信号を差動信号とする場合には、中心が同一の渦巻き状の2つの配線を接続した、特殊な形状のインダクタが用いられる。この第2の実施の形態の半導体装置100は、中心が同一の渦巻き状の2つの配線からなるインダクタ265を保護対象とする点において第1の実施の形態と異なる。
【0068】
図13は、第2の実施の形態におけるインダクタ265の平面図の一例である。このインダクタ265の上方に上層シールド260が配置される。第2の実施の形態では、上層シールド260のスリットの方向は基板平面に対して平行な方向であればよく、X方向に限定されない。
【0069】
インダクタ265は、接続された配線266および配線267から構成される。ここで、配線266の両端のうち配線267と接続されていない方の一端を始点511とし、他端を接続点512とする。また、配線267の両端のうち配線266と接続されていない方の一端を終点513とする。
【0070】
配線266は、Z軸方向に平行な中心軸を中心として、始点511から接続点512まで複数回に亘って時計回りに旋回する渦巻き状の経路に沿って巻かれている。一方、配線267は、配線266と同一の中心軸を中心として、接続点512から終点513まで複数回に亘って時計回りに旋回する渦巻き状の経路に沿って巻かれている。また、配線266は、始点511から接続点512に対して旋回するたびに旋回半径が小さくなり、配線267は、接続点512から終点513に対して旋回するたびに旋回半径が大きくなる。始点511には正相信号が入出力され、終点513には逆相信号が入出力される。このように、配線266と配線267とは対照的な形状を有するため、正相信号と逆相信号とのそれぞれのデューティ比を同程度にすることできる。
【0071】
上述の形状のインダクタ265を上層シールド260で保護する場合、第1の実施の形態の8の字型のインダクタ250と異なり、配線266および配線267で流れる電流の方向が同一であるため、上層シールド260で発生する渦電流が打ち消されない。このため、インダクタンスの低下を抑制する効果はスリットのない板状の電磁シールドよりは高いものの、第1の実施の形態と比較して低くなる。しかし、その代わりに、その渦電流によりインダクタ265で生じた磁界を打ち消すことができるため、上方の論理回路111に生じる電磁ノイズを低減することができる。すなわち、上層シールド260は、インダクタ265に加えて、論理回路111も電磁ノイズから保護することができる。
【0072】
このように、本技術の第2の実施の形態によれば、中心が同一の渦巻き状の2つの配線からなるインダクタ265と論理回路111との間に上層シールド260を挿入したため、インダクタ265に加えて論理回路111も電磁ノイズから保護することができる。また、渦巻き状の2つの配線からなるインダクタ265を用いることにより、差動信号を出力する際に、その差動信号内の正相信号および逆相信号のそれぞれのデューティ比を同程度に揃えることができる。
【0073】
<3.第3の実施の形態>
上述の第1の実施の形態では、8の字型のインダクタ250の上方に上層シールド260を配置して、インダクタ250を電磁ノイズから保護していたが、8の字型以外の形状のインダクタを保護対象とすることもできる。例えば、クロック信号をシングルエンド信号とする場合には、8の字型の代わりに渦巻き状のインダクタを用いることもできる。この第3の実施の形態の半導体装置100は、渦巻き状のインダクタ270を保護対象とする点において第1の実施の形態と異なる。
【0074】
図14は、第3の実施の形態におけるインダクタ270の平面図の一例である。このインダクタ270の上方に上層シールド260が配置される。第3の実施の形態では、上層シールド260のスリットの方向は基板平面に対して平行な方向であればよく、X方向に限定されない。
【0075】
インダクタ270は、Z方向に平行な中心軸を中心として、始点521から終点522へ渦巻き状に巻かれた配線から構成される。
【0076】
上述の形状のインダクタ270を上層シールド260で保護する場合、インダクタンスの低下を抑制する効果はスリットのない板状の電磁シールドよりは高いものの、第1の実施の形態と比較して低くなる。しかし、その代わりに、上方の論理回路111に生じる電磁ノイズを上層シールド260が遮蔽することができる。
【0077】
このように、本技術の第3の実施の形態によれば、渦巻き状のインダクタ270と論理回路111との間に上層シールド260を挿入したため、インダクタ270に加えて論理回路111も電磁ノイズから保護することができる。また、8の字形状と比較して単純な渦巻き状のインダクタ270により、シングルエンド信号を出力することができる。
【0078】
<4.第4の実施の形態>
上述の第1の実施の形態では、インダクタ250の上方にのみ電磁シールド(上層シールド260)を配置していたが、インダクタ250の下方や同一基板(下側チップ150)上の回路で生じた磁界により電磁ノイズが発生することもある。このような電磁ノイズを上層シールド260のみでは低減することが困難である。この第4の実施の形態の半導体装置100は、インダクタ250の下方や同一基板上の回路による電磁ノイズを低減する点において第1の実施の形態と異なる。
【0079】
図15は、第4の実施の形態における電圧制御発振器240および電磁シールドの一構成例を示す回路図である。この第4の実施の形態では、電磁シールドとして、上層シールド260に加えて、外周シールド280および下層シールド290がさらに設けられる。
【0080】
外周シールド280は、下側チップ150において、インダクタ250の外周を囲む電磁シールドである。例えば、インダクタ250を囲む導電性の配線が外周シールド280として用いられる。この外周シールド280の電位は例えば、浮動電位である。なお、外周シールド280の電位を固定電位としてもよい。
【0081】
下層シールド290は、インダクタ250の下方に配置された電磁シールドである。この下層シールド290は、例えば、下側チップ150とインダクタ250との間に挿入される。また、下層シールド290には、固定電位(グランド電位など)が印加される。なお、下層シールド290の電位を浮動電位としてもよい。
【0082】
図16は、第4の実施の形態におけるインダクタ250および電磁シールドの斜視図の一例である。同図におけるaは、上層シールド260の斜視図の一例であり、同図におけるbは、インダクタ250の斜視図の一例である。また、同図におけるcは、外周シールド280の斜視図の一例である。この外周シールド280は、インダクタ250の高さに合わせて積層されている。同図におけるdは、下層シールド290の斜視図の一例である。下層シールド290として、例えば、一定のパターン(Xに類似した形状など)を有するPGS(patterned ground shield)などが用いられる。なお、PGSの代わりに、上層シールド260と同じ形状のシールドを下層シールド290として配置してもよい。
【0083】
なお、外周シールド280および下層シールド290の両方を配置しているが、これらの一方のみを配置してもよい。
【0084】
図17は、第4の実施の形態におけるインダクタ250および電磁シールドの断面図の一例である。同図に例示するように、インダクタ250の側面は、外周シールド280で覆われ、上面は上層シールド260で覆われ、下面は下層シールド290で覆われる。このため、インダクタ250の上方、下方および下側チップ150上の回路で生じた磁界による電磁ノイズから、インダクタ250を保護することができる。また、インダクタ250で生じた磁界による電磁ノイズから、インダクタ250の下方の回路と下側チップ150上の回路とを保護することができる。
【0085】
このように、本技術の第4の実施の形態によれば、インダクタ250の外周および下方に外周シールド280および下層シールド290をさらに配置したため、インダクタ250と同一基板上および下方の回路からの磁界による電磁ノイズを低減することができる。
【0086】
なお、上述の実施の形態は本技術を具現化するための一例を示したものであり、実施の形態における事項と、特許請求の範囲における発明特定事項とはそれぞれ対応関係を有する。同様に、特許請求の範囲における発明特定事項と、これと同一名称を付した本技術の実施の形態における事項とはそれぞれ対応関係を有する。ただし、本技術は実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において実施の形態に種々の変形を施すことにより具現化することができる。
【0087】
なお、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって、限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
【0088】
なお、本技術は以下のような構成もとることができる。
(1)インダクタが配置された基板と、
前記基板の基板平面に垂直な所定方向を上方向として前記インダクタの上方に配置され、前記基板平面に対して平行な方向に沿ってスリットが形成された電磁シールドである上層スリット付きシールドと
を具備する半導体装置。
(2)回路が配置された回路配置基板をさらに備え、
前記回路配置基板は、前記基板に積層される
前記(1)記載の半導体装置。
(3)前記インダクタは、
前記基板平面に垂直な第1の中心軸を中心として所定の始点から所定の接続点まで時計回りに巻かれた第1の配線と、
前記基板平面に垂直な軸であって前記第1の中心軸とは異なる第2の中心軸を中心として前記所定の接続点から所定の終点まで反時計回りに巻かれた第2の配線と
を備える
前記(1)記載の半導体装置。
(4)前記スリットは、前記第1の中心軸と前記第2の中心軸とを結ぶ直線に平行な方向に沿って形成される
前記(3)記載の半導体装置。
(5)前記インダクタは、
前記基板平面に垂直な所定の中心軸を中心として所定の始点から所定の接続点まで複数回に亘って旋回する渦巻き状の経路に沿って巻かれた第1の配線と、
前記所定の中心軸を中心として前記所定の接続点から所定の終点まで複数回に亘って旋回する渦巻き状の経路に沿って巻かれた第2の配線と
を備え、
前記第1の配線は、前記所定の始点から前記所定の接続点に対して旋回するたびに旋回半径が小さくなり、
前記第2の配線は、前記所定の接続点から前記所定の終点に対して旋回するたびに旋回半径が大きくなる
請求項1記載の半導体装置。前記(1)記載の半導体装置。
(6)前記インダクタは、渦巻き状の経路に沿って巻かれた配線を備える
前記(1)記載の半導体装置。
(7)前記インダクタの外周を囲む電磁シールドである外周シールドをさらに具備する
前記(1)から(6)のいずれかに記載の半導体装置。
(8)前記インダクタの下方に配置された電磁シールドである下層シールドをさらに具備する前記(1)から(7)のいずれかに記載の半導体装置。
(9)前記インダクタの下方に配置され、前記基板平面に対して平行な方向に沿ってスリットが形成された下層スリット付きシールドをさらに具備する前記(1)から(8)のいずれかに記載の半導体装置。
(10)前記上層スリット付きシールドには固定電位が印加される
前記(1)から(9)のいずれかに記載の半導体装置。
(11)前記インダクタに接続された容量をさらに具備し、
前記インダクタおよび前記容量は共振する
前記(1)から(10)のいずれかに記載の半導体装置。
(12)入力信号と帰還信号との位相を比較して位相差を示す検出信号を出力する位相比較器と、
前記検出信号の示す前記位相差に応じた電圧の電圧信号を生成するチャージポンプと、
前記インダクタおよび前記容量を含む共振回路により生成された発振信号を分周して前記帰還信号として前記位相差検出器に帰還させる分周器と
をさらに具備し、
前記容量は、前記電圧信号に応じて容量値が変化する可変容量である
前記(11)記載の半導体装置。
(13)前記入力信号は、クロック信号である
前記(12)記載の半導体装置。