特許第6930565号(P6930565)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6930565
(24)【登録日】2021年8月16日
(45)【発行日】2021年9月1日
(54)【発明の名称】電気光学装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/12 20060101AFI20210823BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20210823BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20210823BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20210823BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20210823BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20210823BHJP
【FI】
   H05B33/12 E
   H05B33/14 A
   H05B33/12 B
   H05B33/02
   H01L27/32
   G02B5/20 101
   G09F9/30 365
   G09F9/30 349B
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-184212(P2019-184212)
(22)【出願日】2019年10月7日
(62)【分割の表示】特願2017-128228(P2017-128228)の分割
【原出願日】2017年6月30日
(65)【公開番号】特開2020-9782(P2020-9782A)
(43)【公開日】2020年1月16日
【審査請求日】2020年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125689
【弁理士】
【氏名又は名称】大林 章
(74)【代理人】
【識別番号】100128598
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 聖一
(74)【代理人】
【識別番号】100121108
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 太朗
(72)【発明者】
【氏名】腰原 健
【審査官】 小久保 州洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−037622(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/060075(WO,A1)
【文献】 特開2017−073268(JP,A)
【文献】 特開2015−222645(JP,A)
【文献】 特開2015−072459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/02
H01L 51/50 − 51/56
H05B 33/12
G02B 5/20
H01L 27/32
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の波長域を含む光を出射する第1の発光素子と、
前記第1の波長域よりも波長な第2の波長域を含む光を出射する第2の発光素子と、
前記第2の波長域よりも波長な第3の波長域を含む光を出射する第3の発光素子と、
前記第1の発光素子に対応して配置される第1の着色層と、
前記第2の発光素子に対応して配置される第2の着色層と、
前記第3の発光素子に対応して配置される第3の着色層と、を備え、
前記第1の着色層、前記第2の着色層及び前記第3の着色層のうち、前記第3の着色層のみ開口部を有する
ことを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
平面視において、前記開口部は、前記第3の発光素子の画素電極と重なることを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記第3の発光素子は、青色光を出射することを特徴とする請求項1または2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記第3の着色層は、前記第1の着色層および前記第2の着色層と接していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記第1の発光素子に対応して配置される第1の反射電極と、
前記第2の発光素子に対応して配置される第2の反射電極と、
前記第3の発光素子に対応して配置される第3の反射電極と、
前記第1の着色層の前記第1の反射電極とは反対側に配置される透明部材と、
を備え、
前記透明部材の厚み方向からの平面視において、前記第2の反射電極と前記第3の反射電極との間の領域の一点と、前記開口部の端部のうち前記第2の発光素子に近い端部と、を通り、前記透明部材と空気との界面に至る直線の入射角が臨界角以上である、
ことを特徴とする請求項1乃至のうちいずれか1項に記載の電気光学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL(electro luminescent)素子等の発光素子を含む電気光学装置において、カラー表示を実現するために、発光素子を覆う封止層の上に、所望の波長領域の光を透過するカラーフィルターが設けられた構成が知られている。例えば、特許文献1には、発光素子を覆う封止層上に、赤色(以下、Rと表記)の光を透過させる赤色のカラーフィルターと、緑色(以下、Gと表記)の光を透過させる緑色のカラーフィルターと、青色の光を透過させる青色(以下、Bと表記)のカラーフィルターと、が設けられた電気光学装置が開示されている。この電気光学装置のRGBの各画素の中央部分には、カラーフィルターがない構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−173003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、発光素子は、基板上に反射電極、画素電極、発光層、および対向電極等の各部材を積層して構成される。画素電極は発光素子ごとに設けられ、発光素子間では分離されている。さらに、発光色に応じて反射電極から対向電極までの距離を調整する調整層が設けられることがある。このように基板上に積層される各部材は均一ではなく、凹凸がある。各部材の段差、または各部材が均一でない箇所に、発光層が発光した光が入射すると、散乱光(以下、「内部散乱光)と称する)が発生する。
しかしながら、上述した従来の電気光学装置では、内部散乱光がカラーフィルターの開口部から電気光学装置の外部に射出されてしまい、表示画像の品質の低下を招くという問題がある。
【0005】
本発明は、画素の輝度を高める場合であっても表示画像の品質の低下を抑制することを解決課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る電気光学装置は、基板上に配置された第1の画素と、前記基板上に配置された前記第1の画素とは異なる色の第2の画素と、前記基板の法線方向からの平面視において、前記第1の画素に重なる第1のカラーフィルターと、前記平面視において、前記第2の画素に重なり、かつ開口部を有する第2のカラーフィルターと、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様では、第2のカラーフィルターの開口部によって、第2の画素の輝度を高めつつ、第2のカラーフィルターの開口部以外の領域によって、内部散乱光を吸収するため、表示画像の品質の低下を抑制することが可能になる。特に、第1の画素と第2の画素の境界付近にある散乱構造物によって発生する散乱光のうち、第1のカラーフィルターに向かう散乱光は、第1のカラーフィルターによって抑制することができる。従って、第2の画素の輝度を高めつつ、表示画像の品質を高めることができる。なお、本発明において「重なる」とは、全部が重なる場合のみならず、一部が重なる場合を含む。
【0008】
また、上述した態様によれば、前記平面視において、前記開口部は、前記第2の画素の中心と重なることが好ましい。
【0009】
一般に、光を散乱させる構造は、画素の端部に多く存在し、画素の中心付近には少ない。このため、第2の画素の中心付近において、内部散乱光が射出される可能性は、第2の画素の端部に比べて少なくなる。従って、平面視において、開口部が第2の画素の中心と重なることにより、内部散乱光が射出される可能性が低い箇所を開口することになる。よって、第2の画素の輝度を高めつつ、表示画像の品質の低下を抑制することが可能になる。
【0010】
また、上述した態様によれば、前記第1の画素および前記第2の画素の各々は、発光素子を含み、前記平面視において、前記第2のカラーフィルターの前記開口部以外の領域と、前記第1の画素と前記第2の画素とのうち少なくとも一方の発光素子から射出する光を散乱させる構造の一部または全部とが重なることが好ましい。
【0011】
この態様によれば、前述した構造から内部散乱光が射出され易く、平面視において、第2のカラーフィルターの開口部以外の領域が、前述した構造の一部または全部と重なるため、内部散乱光が射出され易い可能性が高い箇所から射出する光は、第2のカラーフィルターに吸収され易くなる。よって、表示画像の品質の低下を抑制することが可能になる。
【0012】
また上述した態様によれば、前記第1の画素および前記第2の画素の各々は、前記発光素子と、前記発光素子に電流を供給する供給回路と、前記供給回路および前記発光素子を電気的に接続するコンタクトと、反射電極とを含み、前記構造は、前記第1の画素の反射電極と前記第2の画素の反射電極との間、および前記第2の画素のコンタクトのうち少なくとも一方であることが好ましい。
【0013】
この態様によれば、2つの画素の反射電極の間、およびコンタクトの少なくとも一方から発生する内部散乱光が、カラーフィルターに吸収されやすくなる。よって、表示画像の品質の低下を抑制することが可能になる。
【0014】
また、上述した態様によれば、前記第1のカラーフィルターおよび前記第2のカラーフィルターを保護する透明部材を備え、前記法線を含み前記開口部の端部および前記構造を含む断面において、前記構造で散乱された光のうち、前記開口部の端部を通り前記透明部材と空気との界面に至る光の前記界面に対する入射角が臨界角以上であることが好ましい。
【0015】
この態様によれば、入射角が臨界角以上であれば、内部散乱光は、透明部材の境界面において全反射し、電気光学装置の外部に射出されなくなる。よって、表示画像品質の低下を抑制することが可能になる。
【0016】
また、上述した態様によれば、前記第2の画素の発光素子の寿命は、前記第1の画素の発光素子の寿命より短いことが好ましい。
【0017】
一般に、発光素子の寿命は駆動電流が大きいほど短くなり、駆動電流が最も大きい発光素子の寿命が、電気光学装置の寿命となる。そこで、寿命が短い第2の画素のカラーフィルターが開口部を有することにより、開口部がない場合と比較して、小さな駆動電流で同じ輝度の光を取り出すことができる。よって、第2の画素の寿命が延びることにより、電気光学装置の寿命を延ばすことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態に係る電気光学装置1の構成の一例を示すブロック図。
図2】画素Pxの構成の一例を示す等価回路図。
図3】表示部12の構成の一例を示す平面図(その1)。
図4】表示部12の構成の一例を示す平面図(その2)。
図5】表示部12の構成の一例を示す部分断面図(その1)。
図6】表示部12の構成の一例を示す部分断面図(その2)。
図7】第1の変形例における表示部12の構成の一例を示す平面図。
図8】第2の変形例における表示部12の構成の一例を示す平面図。
図9】第3の変形例における表示部12の構成の一例を示す平面図。
図10】本発明に係るヘッドマウントディスプレイ300の斜視図。
図11】本発明に係るパーソナルコンピューター400の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。ただし、各図において、各部の寸法および縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0020】
A.実施形態
以下、本実施形態に係る電気光学装置1を説明する。
【0021】
A.1.電気光学装置の概要
図1は、本実施形態に係る電気光学装置1の構成の一例を示すブロック図である。
図1に例示するように、電気光学装置1は、複数の画素Pxを有する表示パネル10と、表示パネル10の動作を制御する制御回路20とを備える。
【0022】
制御回路20には、図示省略された上位装置より、デジタルの画像データVideoが同期信号に同期して供給される。ここで、画像データVideoとは、表示パネル10の各画素Pxが表示すべき階調レベルを規定するデジタルデータである。また、同期信号とは、垂直同期信号、水平同期信号、およびドットクロック信号等を含む信号である。
制御回路20は、同期信号に基づいて、表示パネル10の動作を制御するための制御信号Ctrを生成し、生成した制御信号Ctrを表示パネル10に対して供給する。また、制御回路20は、画像データVideoに基づいて、アナログの画像信号Vidを生成し、生成した画像信号Vidを表示パネル10に対して供給する。ここで、画像信号Vidとは、各画素Pxが画像データVideoの指定する階調を表示するように、当該画素Pxが備える発光素子の輝度を規定する信号である。
【0023】
図1に例示するように、表示パネル10は、+X方向に延在するM本の走査線13と、+Y方向に延在する3N本のデータ線14と、M本の走査線13と3N本のデータ線14との交差に対応して配列された「M×3N」個の画素Pxを有する表示部12と、表示部12を駆動する駆動回路11と、を備える(Mは1以上の自然数。Nは1以上の自然数)。
以下では、複数の画素Px、複数の走査線13、および複数のデータ線14を互いに区別するために、+Y方向から−Y方向(以下、+Y方向およびY方向を「Y軸方向」と総称する)に向けて順番に、第1行、第2行、…、第M行と称し、−X方向から+X方向(以下、+X方向およびX方向を「X軸方向」と総称する)に向けて順番に、第1列、第2列、…、第3N列と称する。また、以下では、X軸方向およびY軸方向に交差する+Z方向(上方向)およびZ方向(下方向)を「Z軸方向」と総称する。
【0024】
表示部12に設けられる複数の画素Pxには、Rを表示可能な画素PxRと、Gを表示可能な画素PxGと、Bを表示可能な画素PxBと、が含まれる。そして、本実施形態では、nを「1≦n≦Nを満たす自然数」として、第1列〜第3N列のうち、第(3n−2)列には画素PxRが配置され、第(3n−1)列には画素PxGが配置され、第3n列には画素PxBが配置される場合を、一例として想定する。
また、以下では、mを「1≦m≦Mを満たす自然数」とし、kを「1≦k≦3Nを満たす自然数」として、第m行第k列の画素Pxを、画素Px[m][k]と表現する場合がある。すなわち、本実施形態では、例えば、画素PxRを、画素PxR[m][3n-2]と表現することができ、画素PxGを、画素PxG[m][3n-1]と表現することができ、画素PxBを、画素PxB[m][3n]と表現することができる。
また、本実施形態では、X軸方向に隣り合う3つの画素PxR、PxG、およびPxBを、画素ブロックBLと称することがある。すなわち、本実施形態では、表示部12において、M行×N列の画素ブロックBLがマトリクス状に配列されている場合を想定する。以下では、画素PxR[m][3n-2]、画素PxG[m][3n-1]、および画素PxB[m][3n]を含む画素ブロックBLを、画素ブロックBL[m][n]と称する場合がある。
【0025】
図1に例示するように、駆動回路11は、走査線駆動回路111と、データ線駆動回路112と、を備える。
【0026】
走査線駆動回路111は、第1行〜第M行の走査線13を順番に走査(選択)する。具体的には、走査線駆動回路111は、1フレームの期間において、第1行〜第M行の走査線13のそれぞれに対して出力する走査信号Gw[1]〜Gw[M]を、水平走査期間ごとに順番に所定の選択電位に設定することにより、走査線13を行単位に水平走査期間ごとに順番に選択する。換言すれば、走査線駆動回路111は、1フレームの期間のうち、m番目の水平走査期間において、第m行の走査線13に出力する走査信号Gw[m]を、所定の選択電位に設定することにより、第m行の走査線13を選択する。なお、1フレームの期間とは、電気光学装置1が1個の画像を表示する期間である。
【0027】
データ線駆動回路112は、制御回路20より供給される画像信号Vidおよび制御信号Ctrに基づいて、各画素Pxが表示すべき階調を規定するアナログのデータ信号Vd[1]〜Vd[3N]を生成し、生成したデータ信号Vd[1]〜Vd[3N]を、水平走査期間ごとに、3N本のデータ線14に対して出力する。換言すれば、データ線駆動回路112は、各水平走査期間において、第k列のデータ線14に対して、データ信号Vd[k]を出力する。
なお、本実施形態では、制御回路20が出力する画像信号Vidはアナログの信号であるが、制御回路20が出力する画像信号Vidはデジタルの信号であってもよい。この場合、データ線駆動回路112は、画像信号VidをD/A変換し、アナログのデータ信号Vd[1]〜Vd[3N]を生成する。
【0028】
図2は、各画素Pxと1対1に対応して設けられる画素回路100の構成の一例を示す等価回路図である。なお、本実施形態では、複数の画素Pxに対応する複数の画素回路100は、電気的には互いに同一の構成であることとする。図2では、第m行第k列の画素Px[m][k]に対応して設けられる画素回路100を例示して説明する。
【0029】
画素回路100は、発光素子3と、発光素子3に対して電流を供給する供給回路40と、を備える。
【0030】
発光素子3は、画素電極31と、発光機能層32と、対向電極33とを備える。画素電極31は、発光機能層32に正孔を供給する陽極として機能する。対向電極33は、画素回路100の低電位側の電源電位である電位Vctに設定された給電線16に電気的に接続され、発光機能層32に電子を供給する陰極として機能する。そして、画素電極31から供給される正孔と、対向電極33から供給される電子とが発光機能層32で結合し、発光機能層32が白色に発光する。
なお、詳細は後述するが、画素PxRが有する発光素子3(以下、発光素子3Rと称する)には、赤色のカラーフィルター81Rが重ねて配置される。画素PxBが有する発光素子3(以下、発光素子3Bと称する)には、青色のカラーフィルター81Bが重ねて配置される。そして、画素PxGが有する発光素子3(以下、発光素子3Gと称する)には、緑色のカラーフィルター81Gが重ねて配置される。このため、画素PxR、PxG、およびPxBにより、フルカラーの表示が可能となる。
【0031】
供給回路40は、Pチャネル型のトランジスター41および42と、保持容量44と、を備える。なお、トランジスター41および42の一方または両方は、Nチャネル型のトランジスターであってもよい。また、本実施形態では、トランジスター41および42が、薄膜トランジスターの場合を例示して説明するが、トランジスター41および42は、MOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)等の電界効果トランジスターであってもよい。
【0032】
トランジスター41は、ゲートが、第m行の走査線13に電気的に接続され、ソースまたはドレインの一方が、第k列のデータ線14に電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方が、トランジスター42のゲートと、保持容量44が有する2つの電極のうち一方の電極と、に電気的に接続されている。
トランジスター42は、ゲートが、トランジスター41のソースまたはドレインの他方と、保持容量44の一方の電極と、に電気的に接続され、ソースまたはドレインの一方が、画素電極31に電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方が、画素回路100の高電位側の電源電位である電位Velに設定された給電線15に電気的に接続されている。
保持容量44は、保持容量44が有する2つの電極のうち一方の電極が、トランジスター41のソースまたはドレインの他方と、トランジスター42のゲートと、に電気的に接続され、保持容量44が有する2つの電極のうち他方の電極が、給電線15に電気的に接続されている。保持容量44は、トランジスター42のゲートの電位を保持する保持容量として機能する。
【0033】
走査線駆動回路111が、走査信号Gw[m]を所定の選択電位に設定し、第m行の走査線13を選択すると、第m行第k列の画素Px[m][k]に設けられたトランジスター41がオンする。そして、トランジスター41がオンすると、第k列のデータ線14から、トランジスター42のゲートに対して、データ信号Vd[k]が供給される。この場合、トランジスター42は、発光素子3に対して、ゲートに供給されたデータ信号Vd[k]の電位(正確には、ゲートおよびソース間の電位差)に応じた電流を供給する。つまり、トランジスター42は発光素子3へ電流を供給する駆動トランジスターである。発光素子3は、トランジスター42から供給される電流の大きさに応じた輝度、すなわち、データ信号Vd[k]の電位に応じた輝度で発光する。
その後、走査線駆動回路111が、第m行の走査線13の選択を解除して、トランジスター41がオフした場合、トランジスター42のゲートの電位は、保持容量44により保持される。このため、発光素子3は、トランジスター41がオフした後も、データ信号Vd[k]に応じた輝度で発光することができる。
【0034】
なお、図2では図示省略するが、発光素子3が有する画素電極31と供給回路40とを電気的に接続する構成要素を、コンタクト7(図4参照)と称する。コンタクト7は、画素Pに含まれる。より具体的には、コンタクト7は、発光素子3が有する画素電極31と、供給回路40とを電気的に接続する。以下では、画素PxRに設けられたコンタクト7を、コンタクト7Rと称し、画素PxGに設けられたコンタクト7を、コンタクト7Gと称し、画素PxBに設けられたコンタクト7を、コンタクト7Bと称する場合がある。
【0035】
A.2.表示部の構成
以下、図3図6を参照しつつ、本実施形態に係る表示部12の構成の一例を説明する。
【0036】
図3は、本実施形態に係る表示部12の一部を、電気光学装置1が光を射出する方向である+Z方向から平面視した場合の、表示部12の概略的な構成の一例を示す平面図である。ただし、図3に示す平面図は、図を見易くするために、カラーフィルター81を除いて表示してある。
【0037】
具体的には、図3は、表示部12のうち、画素ブロックBL[m][n]を示している。画素ブロックBL[m][n]は、画素PxR、画素PxG、および画素PxBを含む。
【0038】
本実施形態では、図3に示すように、各画素ブロックBLにおいて、画素PxRに設けられた発光素子3Rが、画素PxBに設けられた発光素子3Bの+Y方向に位置し、画素PxGに設けられた発光素子3Gが、画素PxBに設けられた発光素子3Bの+Y方向に位置し、かつ、画素PxRに設けられた発光素子3Rの+X方向に位置する場合を想定する。そして、本実施形態では、各画素ブロックBLが有する発光素子3R、3G、および3Bにより、+Z方向に向けて光を射出する場合を想定する。また、本実施形態では、+Z方向からの平面視において、発光素子3Bは、発光素子3Rよりも面積が大きく、かつ、発光素子3Bは、発光素子3Gよりも面積が大きい場合を想定する。本実施形態において、+Z方向から平面視した場合の発光素子3R、3G、および3Bは、矩形形状とする。
【0039】
また、図3において、コンタクト7Rは、画素PxRにおいて画素電極31と供給回路40とを電気的に接続する構成要素である。コンタクト7Gは、画素PxGにおいて画素電極31と供給回路40とを電気的に接続する構成要素である。コンタクト7Bは、画素PxBにおいて画素電極31と供給回路40とを電気的に接続するための構成要素である。
【0040】
また、本実施形態では、図3に示すように、画素ブロックBLに属する各画素Pxが有するコンタクト7Gは、各画素Pxが有する発光素子3の+X方向に位置する。
【0041】
図4は、本実施形態に係る表示部12の一部を、+Z方向から平面視した場合の、表示部12の概略的な構成の一例を示す平面図である。図4に示す平面図は、図3に示した平面図に、カラーフィルター81を加えた図である。
【0042】
カラーフィルター81Rは、発光素子3Rの+Z側において、+Z方向からの平面視において画素PxRと重なるように形成されている。同様に、カラーフィルター81Gは、発光素子3Gの+Z側において、+Z方向からの平面視において画素PxGと重なるように形成されている。カラーフィルター81Bは、発光素子3Bの+Z側において、+Z方向からの平面視において画素PxBと重なり、かつ開口部82Bを有するように形成されている。
ここで、発光素子3R、3G、および3Bのうち発光素子3Bが最も寿命が短いため、発光素子3Bの寿命が、電気光学装置1の寿命となる。発光素子3の寿命は駆動電流が大きいほど短くなる。そこで、カラーフィルター81Bに開口部82Bを設けることにより、開口部82Bを設けない場合と比較して、小さな駆動電流で同じ輝度のBの光を取り出すことできる。このように、画素PxBに開口部82Bを設けることにより、電気光学装置1の寿命を延ばすことができる。
【0043】
図5は、表示部12を、図4におけるE−e線で破断した部分断面図の一例であり、画素PxRの断面と画素PxGの断面と画素PxBの断面とを含む。
【0044】
図5に示すように、表示部12は、素子基板5と、保護基板9と、素子基板5および保護基板9の間に設けられた接着層90と、を備える。なお、本実施形態では、電気光学装置1が保護基板9側(+Z側)から光を射出するトップエミッション方式である場合を想定する。また、以下の説明では、波長610nmの光における表示部12内において使用される材料の屈折率と、材料の膜厚とを記載する。
【0045】
接着層90は、素子基板5および保護基板9を接着するための透明な樹脂層である。接着層90は、例えば、屈折率1.54のエポキシ樹脂といった透明な樹脂材料を用いて形成される。接着層90の膜厚は、2〜3μmとする。
保護基板9は、接着層90の+Z側に配置される透明な基板である。保護基板9は、カラーフィルター81といった、保護基板9より−Z側に配置される部材を保護する。保護基板9は、例えば、屈折率1.46の石英基板を用いて形成される。保護基板9の膜厚は、1.1mmとする。
【0046】
素子基板5は、基板50と、基板50上に積層された層間絶縁層51と、反射層52と、増反射層53と、第1の絶縁層54と、第2の絶縁層55と、発光層30と、封止層60と、カラーフィルター層8と、を備える。詳細は後述するが、発光層30は、上述した発光素子3(3R、3G、3B)を含む。発光素子3は、+Z方向およびZ方向に対して光を射出する。また、カラーフィルター層8は、上述したカラーフィルター81R、カラーフィルター81G、およびカラーフィルター81Gを含む。
【0047】
基板50には、走査線13やデータ線14等の各種配線と、駆動回路11や画素回路100等の各種回路とが形成されている。基板50は、各種配線および各種回路を実装可能な基板であればよい。基板50は、例えば、シリコン基板、石英基板、または、ガラス基板等を採用することができる。基板50の+Z側には、層間絶縁層51が積層される。
【0048】
層間絶縁層51は、例えば酸化シリコン(SiO)などの絶縁材料が用いられている。層間絶縁層51の+Z側には、反射層52が積層される。
反射層52は、発光層30の発光素子3から射出された光を+Z方向側に反射するための構成要素である。反射層52は、画素Pxに含まれる。反射層52として、例えば、チタン(Ti)膜の上に、膜厚0.15μmのアルミニウム(Al)と銅(Cu)との合金(AlCu)膜が形成される。
【0049】
増反射層53は、反射層52による反射特性を高めるためのものであり、例えば光透過性を有する絶縁材料から形成される。増反射層53は、反射層52の面上を覆うように配置されている。増反射層53として、例えば、屈折率1.46の酸化シリコン膜が形成される。増反射層53の膜厚は、0.035μmとする。
【0050】
第1の絶縁層54は、増反射層53の面上に設けられており、間隙52CTに沿って形成されている。従って、第1の絶縁層54は、間隙52CTに対応した凹部54aを有している。埋め込み絶縁膜56は、凹部54aを埋めるように形成されている。第2の絶縁層55は、第1の絶縁層54の面上に設けられる。第1の絶縁層54および第2の絶縁層55として、例えば、屈折率1.8の窒化シリコン(SiN)膜が形成される。第1の絶縁層54および第2の絶縁層55の合計の膜厚は、画素PxRにおいて0.055μm、画素PxGにおいて0.05μm、画素PxBにおいて0.045μmとする。
【0051】
第1の距離調整層57および第2の距離調整層58は、画素PxR、PxG、PxBごとに、発光層30の発光素子3と反射層52との間の光学的距離を調整するための、絶縁性の透明層である。本実施形態では、第1の距離調整層57および第2の距離調整層58として、屈折率1.46の酸化シリコン膜が形成される。さらに、形成される酸化シリコンの膜厚は、画素PxRにおいて第1の距離調整層57および第2の距離調整層58の膜厚を合計しておおよそ0.1μm、画素PxGにおいて第2の距離調整層58の膜厚が0.05μmとなる。画素PxGについては、第1の距離調整層57および第2の距離調整層58が積層されない。
【0052】
発光層30は、画素電極31と、画素分離層34と、画素電極31および画素分離層34を覆うように積層された発光機能層32と、発光機能層32上に積層された対向電極33と、を有する。
【0053】
画素電極31は、画素Pxごとに個別に島状に形成された、導電性を有する透明層である。画素電極31は、第2の絶縁層55、第1の距離調整層57および第2の距離調整層58上に積層される。画素電極31は、導電性の透明材料、例えば、屈折率1.7から1.8までのITO(Indium Tin Oxide)を用いて形成される。画素電極31の膜厚は、0.02μmとする。
対向電極33は、複数の画素Pxに跨るように配置された、光透過性と光反射性とを有する導電性の構成要素である。対向電極33は、例えば、MgとAgとの合金等を用いて形成される。対向電極33の膜厚は、0.02μmとする。
画素分離層34は、各画素電極31の周縁部を覆うように配置された、絶縁性の構成要素である。画素分離層34は、第2の距離調整層58、第2の絶縁層55および画素電極31上に積層される。画素分離層34は、絶縁性の材料、例えば、酸化シリコン等を用いて形成される。
発光機能層32は、正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層、および電子輸送層を備え、複数の画素Pxに跨るように配置されている。発光機能層32の屈折率は、1.7から1.8までの間とし、発光機能層32の膜厚は、おおよそ0.1μmとする。
【0054】
上述のとおり、発光機能層32は、画素電極31のうち画素分離層34により覆われていない部分から正孔が供給され、白色に発光する。すなわち、平面視した場合に、発光層30のうち、画素電極31が画素分離層34により覆われていない部分が、発光素子3に該当する。換言すれば、画素分離層34は、互いに隣り合う2個の発光素子3を区画する「区画部」として機能する。
また、本実施形態では、平面視した場合に、発光素子3が設けられる部分を、画素Pxと看做すこととする。換言すれば、平面視した場合に、画素分離層34は、表示部12の有する複数の画素Pxを互いに区画するように配置される。なお、発光素子3から射出される白色の光とは、赤色の光、緑色の光、および青色の光を含む光である。
【0055】
本実施形態では、反射層52と対向電極33とにより、光共振構造が形成されるように、第1の距離調整層57および第2の距離調整層58の膜厚が調整される。そして、発光機能層32から射出された光は、反射層52と対向電極33との間で繰り返し反射され、反射層52と対向電極33との間の光学的距離に対応する波長の光の強度が強められ、当該強められた光が、対向電極33〜保護基板9を介して+Z側に射出される。
本実施形態では、一例として、画素PxRにおいては、610nmの波長の光の強度が強められ、画素PxGにおいては、540nmの波長の光の強度が強められ、画素PxBにおいては、470nmの波長の光の強度が強められるように、画素Pxごとに第1の距離調整層57および第2の距離調整層58の膜厚が設定される。このため、本実施形態において、画素PxRからは、610nmの波長の光の輝度が最大となる赤色光が射出され、画素PxGからは、540nmの波長の光の輝度が最大となる緑色光が射出され、画素PxBからは、470nmの波長の光の輝度が最大となる青色光が射出されることになる。
【0056】
封止層60は、対向電極33上に積層された下側封止層61と、下側封止層61上に積層された平坦化層62と、平坦化層62上に積層された上側封止層63と、を備える。
下側封止層61および上側封止層63は、複数の画素Pxに跨るように配置された、絶縁性を有する透明層である。下側封止層61および上側封止層63は、水分や酸素等の発光層30への侵入を抑止するための構成要素である。下側封止層61および上側封止層63として、例えば、屈折率が1.75から1.8までの間の酸化窒化シリコン(SiON)膜が形成される。下側封止層61の膜厚は、0.4μmとする。また、上側封止層63の膜厚は、0.8μmとする。
平坦化層62は、複数の画素Pxに跨るように配置された透明層であり、平坦な上面(+Z側の面)を提供するための構成要素である。平坦化層62は、例えば、屈折率が1.54のエポキシ樹脂といった無機材料を用いて形成される。平坦化層62の膜厚は、画素PxRにおいておおよそ2.6μmとし、画素PxGにおいておおよそ2.6μmとし、画素PxBにおいておおよそ2.65μmとする。
【0057】
カラーフィルター層8は、カラーフィルター81R、81G、および81Bを含む。
図5に示すように、カラーフィルター81R、81G、および81Bは、上側封止層63上に形成される。
カラーフィルター81R、81G、81Bは、例えば赤、緑、青の異なる色の光を透過させるような顔料を含む感光性樹脂を塗布してパターン加工を行うことにより形成する。カラーフィルター81R、81G、81Bの屈折率は、おおよそ1.65とする。また、カラーフィルター81Rの膜厚は、1.6μmとし、カラーフィルター81Gの膜厚は、1.0μmとし、カラーフィルター81Bの膜厚は、1.3μmとする。
【0058】
図6は、表示部12を、図4におけるF−f線で破断した部分断面図の一例であり、コンタクト7Rの断面を含む。図6では、コンタクト7Rに関する部材について説明し、図5で説明した部材については説明を省略する。
【0059】
表示部12は、コンタクト電極71と、保護層72とを含む。コンタクト電極71は、反射層52および保護層72上に積層される。コンタクト電極71には、例えば、タングステン(W)やチタン(Ti)、窒化チタン(TiN)などの導電材料を用いることができる。保護層72は、第2の絶縁層55に積層される。保護層72には、酸化シリコンなどの絶縁材料が用いられている。
【0060】
A.3.実施形態の効果
発光素子3から射出された光が、散乱構造物に入射することにより散乱すると、内部散乱光となる。散乱構造物は、基板50上に積層された各部材の段差、または各部材が均一でない箇所である。例えば、図5に示すように、第1の距離調整層57および第2の距離調整層58が発光層30の−Z方向に積層されることにより、発光層30は、凹凸がある。従って、発光層30に関して、散乱構造物は、画素PxRと画素PxGとの間、および画素PxGと画素PxBとの間となる。本実施形態では、カラーフィルター81Bの構造により、+Z方向からの平面視において、カラーフィルター81Bは画素PxBと重なるため、散乱構造物による内部散乱光がカラーフィルター81Bに吸収され、表示画像の品質を向上させることが可能になる。さらに、開口部82Bにより、発光素子3Bから射出された光の一部がカラーフィルター81Bに吸収されないため、画素RxBの輝度を高めることが可能になる。
【0061】
また、図4に示すように、+Z方向からの平面視において、開口部82Bは、画素RxBの中心Pと重なることが好ましい。散乱構造物は、画素Pの端部に多く存在し、画素Pの中心付近には少ない。このため、中心P付近において、内部散乱光が射出される量は、画素PxBの端部に比べて少なくなる。従って、+Z方向からの平面視において、開口部82Bが中心Pと重なることにより、内部散乱光でない正しい光がカラーフィルター81Bに吸収されにくくなるため、画素RxBの輝度を高めることが可能になる。
【0062】
また、図4に示すように、+Z方向からの平面視において、カラーフィルター81Bの開口部82B以外の領域と、発光素子3xR、3xG、および3xBのうち少なくとも一方の発光素子から射出する光を散乱させる散乱構造物の一部または全部とが重なることが好ましい。ここで、散乱構造物は、例えば、コンタクト7Bである。散乱構造物から内部散乱光が射出され易く、図4に示すように、平面視において、カラーフィルター81Bの開口部82B以外の領域が、コンタクト7Bと重なる。従って、コンタクト7Bから射出する内部散乱光は、カラーフィルター81Bに吸収され易くなる。よって、表示画像の品質の低下を抑制することが可能になる。
【0063】
また、散乱構造物は、画素PxRの反射層52または画素PxGの反射層52と、画素PxBの反射層52との間、およびコンタクト7Rのうち少なくとも一方であることが好ましい。図5には、散乱構造物の一例として、画素PxGの反射層52と、画素PxBの反射層52との間の領域52SCを示す。これにより、内部散乱光が発生し易い、2つの画素の反射層52の間、およびコンタクト7Bの少なくとも一方から発生する内部散乱光が、カラーフィルター81Bに吸収されやすくなる。よって、表示画像の品質の低下を抑制することが可能になる。
【0064】
また、Z方向を含み開口部82Bの端部および散乱構造物を含む断面において、内部散乱光のうち、開口部82Bの端部を通り保護基板9と空気との界面に至る光の界面に対する入射角が臨界角以上であることが好ましい。角度θが臨界角θc以上であれば、内部散乱光は、保護基板9の境界面において全反射し、電気光学装置1の外部に射出されなくなる。全反射した内部散乱光は、カラーフィルター81で吸収される。従って、表示画像の品質の低下を抑制することが可能になる。
【0065】
ここで、開口部82Bの端部を通り保護基板9と空気との界面に至る光は、屈折率の異なる複数の層を通過するため、各層を透過するたびに屈折し、直線とはならない。図5では、説明を簡略化するため、保護基板9と空気との界面の屈折のみを考慮し、保護基板9より−Z側の屈折を考慮しないものと想定する。この場合には、開口部82Bの端部を通り保護基板9と空気との界面に至る光が直線となる。この直線とZ軸との成す角度は、保護基板9の臨界角以上であることが好ましい。図5を用いて説明すると、開口部82Bの端部の点82Pおよび領域52SCの点52SCPを結ぶ直線とZ軸との成す角度θが、保護基板9の臨界角θc以上であればよい。そして、θは、下記(1)式を満たす。
【0066】
θ=tan−1(x/d) (1)
【0067】
ただし、xは、点52SCPを通るZ軸に平行な線と、カラーフィルター81Bとが重なる点81BPから、点82Pまでの距離を示す。また、dは、点52SCPから点81BPまでの距離を示す。また、保護基板9の臨界角θcは、保護基板9の屈折率および空気の屈折率から求めることができる。
【0068】
また、開口部82Bを有するカラーフィルター81に対応する画素PxBの寿命が、他の画素Pxの寿命より短いことが好ましい。ここで、発光素子3R、3G、および3Bのうち発光素子3Bが最も寿命が短いため、発光素子3Bの寿命が、電気光学装置1の寿命となる。発光素子3の寿命は駆動電流が大きいほど短くなる。そこで、図4に示すように、カラーフィルター81Bに開口部82Bを設けることにより、開口部82Bを設けない場合と比較して、小さな駆動電流で同じ輝度のBの光を取り出すことできる。このように、画素PxBに開口部82Bを設けることにより、電気光学装置1の寿命を延ばすことができる。
【0069】
なお、本実施形態において、例えば、画素PxRおよび画素PxGが、「第1の画素」に相当し、画素PxBが、「第2の画素」に相当する。また、カラーフィルター81Rおよびカラーフィルター81Gの少なくともいずれか一方が、「第1のカラーフィルター」に相当し、カラーフィルター81Bが、「第2のカラーフィルター」に相当する。また、散乱構造物が、「第1の画素と第2の画素とのうち少なくとも一方の発光素子から射出する光を散乱させる構造」に相当する。また、反射層52は、「反射電極」の一例である。また、保護基板9は、「透明部材」の一例である。また、Z軸は、「基板50の法線方向」の一例である。また、+Z方向からの平面視は、「基板50の法線方向からの平面視」の一例である。
【0070】
B.変形例
以上の各形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲内で適宜に併合され得る。なお、以下に例示する変形例において作用や機能が実施形態と同等である要素については、以上の説明で参照した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0071】
B.1.第1の変形例
図7に、第1の変形例における表示部12の一部を、+Z方向から平面視した場合の、表示部12の概略的な構成の一例を示す平面図を示す。本実施形態では、カラーフィルター81Bは、+Z方向からの平面視において、画素PxBの全ての辺と重なる。一方、第1の変形例におけるカラーフィルター81Bは、+Z方向からの平面視において、画素PxBの中心から見て−Y方向にある辺、および+Y方向の辺とは全て重なるが、−X方向にある辺および+X方向にある辺とは重ならない箇所がある。第1の変形例におけるカラーフィルター81Bによれば、本実施形態におけるカラーフィルター81Bに比べて、青色の光の取り出し効率を向上させることが可能である。
【0072】
B.2.第2の変形例
図8に、第2の変形例における表示部12の一部を、+Z方向から平面視した場合の、表示部12の概略的な構成の一例を示す平面図を示す。第2の変形例は、第1の変形例における表示部12に、透明の障壁材83を設けた形態である。ここで、図8に示す平面図は、図を見易くするため、カラーフィルター81を除いて表示してある。障壁材83は、開口部84R、84G、および84Rを有する。+Z方向からの平面視において、開口部84Rは、画素PxRの中心と重なる。また、開口部84Gは、画素PxGの中心と重なる。また、開口部84Bは、画素PxBの中心と重なる。図7および図8に示すように、表示部12は、障壁材83を有してもよいし有さなくてもよい。
【0073】
B.3.第3の変形例
図9に、第3の変形例における表示部12の一部を、+Z方向から平面視した場合の、表示部12の概略的な構成の一例を示す平面図を示す。第3の変形例におけるカラーフィルター81Bは、+Z方向からの平面視において、画素PxBの中心から見て−X方向にある辺、および+X方向の辺とは全て重なるが、−Y方向にある辺および+Y方向にある辺とは重ならない箇所がある。第3の変形例におけるカラーフィルター81Bによれば、本実施形態におけるカラーフィルター81Bに比べて、青色の光の取り出し効率を向上させることが可能である。
【0074】
B.4.第4の変形例
上述した実施形態においては、開口部82Bを有するカラーフィルター81に対応する画素PxBは、青色の画素であったが、本発明は、これに限定されるものではなく、どのような色の画素であってもよい。要は、開口部を有する色のカラーフィルターと開口部を有さない色のカラーフィルターが混在する電気光学装置であればよい。さらに、開口部を有るカラーフィルターの開口部以外の領域が、平面視において散乱構造部と重なることによって、内部散乱光が外部に漏れることを抑制しつつ、開口部を有するカラーフィルターの画素の輝度を向上させることができる。
【0075】
C.応用例
上述した実施形態および変形例に係る電気光学装置1は、各種の電子機器に適用することができる。以下、本発明に係る電子機器について説明する。
【0076】
図10に、本発明の電気光学装置1を採用した電子機器としてのヘッドマウントディスプレイ300の外観を示す斜視図を示す。図10に示されるように、ヘッドマウントディスプレイ300は、テンプル310、ブリッジ320、投射光学系301L、および投射光学系301Rを備える。そして、図11において、投射光学系301Lの奥には左眼用の電気光学装置1(図示省略)が設けられ、投射光学系301Rの奥には右眼用の電気光学装置1(図示省略)が設けられる。
図11に、電気光学装置1を採用した可搬型のパーソナルコンピューター400の斜視図を示す。パーソナルコンピューター400は、各種の画像を表示する電気光学装置1と、電源スイッチ401およびキーボード402が設けられた本体部403と、を備える。
なお、本発明に係る電気光学装置1が適用される電子機器としては、図10および図11に例示した機器のほか、携帯電話機、スマートフォン、携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistants)、デジタルスチルカメラ、テレビ、ビデオカメラ、カーナビゲーション装置、車載用の表示器(インパネ)、電子手帳、電子ペーパー、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末等が挙げられる。さらに、本発明に係る電気光学装置1は、プリンター、スキャナー、複写機、およびビデオプレーヤー等の電子機器に設けられる表示部として適用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1…電気光学装置、3…発光素子、5…素子基板、7…コンタクト、8…カラーフィルター層、9…保護基板、12…表示部、30…発光層、31…画素電極、32…発光機能層、33…対向電極、40…供給回路、41…トランジスター、42…トランジスター、44…保持容量、50…基板、52…反射層、81…カラーフィルター、81R…カラーフィルター、81G…カラーフィルター、81B…カラーフィルター、82B…開口部、Px…画素、PxR…画素、PxG…画素、PxB…画素。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11