特許第6930617号(P6930617)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6930617
(24)【登録日】2021年8月16日
(45)【発行日】2021年9月1日
(54)【発明の名称】電装品、および電装品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/28 20060101AFI20210823BHJP
【FI】
   H05K3/28 G
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-20633(P2020-20633)
(22)【出願日】2020年2月10日
(65)【公開番号】特開2021-128947(P2021-128947A)
(43)【公開日】2021年9月2日
【審査請求日】2021年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 三博
【審査官】 齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/075401(WO,A1)
【文献】 特開平11−17318(JP,A)
【文献】 特開昭56−78185(JP,A)
【文献】 特開2001−44333(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0098505(US,A1)
【文献】 特開2000−4075(JP,A)
【文献】 特開平8−148845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K1/00―7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面が部品実装面(12a,12b)であるプリント基板(12)を備え、
それぞれの部品実装面(12a,12b)では、当該部品実装面(12a,12b)の所定の領域(A,B)において、電子部品が樹脂(P)によってコーティングされ、
前記領域(A,B)内の所定の電子部品は、前記部品実装面(12a,12b)から所定高さ(H)以上が、前記樹脂(P)に覆われておらず、
前記プリント基板(12)には、ネジ穴(12e)が形成され、
前記ネジ穴(12e)への前記樹脂(P)の流入をせき止める栓として、パイプ(12f)が設けられている
ことを特徴とする電装品。
【請求項2】
請求項1において、
前記樹脂(P)でコーティングされた電子部品は、当該電子部品と、前記プリント基板(12)上の配線パターン(12d)との接合部(X)が、前記樹脂(P)で覆われていることを特徴とする電装品。
【請求項3】
電装品(4)の製造方法において、
前記電装品(4)は、両面が部品実装面(12a,12b)であるプリント基板(12)を備え、
一方の部品実装面(12a)の所定領域(A)に、流動性を有した樹脂材料(M)を供給して硬化させることによって、当該領域(A)、および当該領域(A)内の電子部品を樹脂(P)でコーティングする第1工程と、
他方の部品実装面(12b)の所定領域(B)に、流動性を有した樹脂材料(M)を供給して硬化させることによって、当該領域(B)、および当該領域(B)内の電子部品を前記樹脂(P)でコーティングする第2工程と、
を順に行い、
前記第1工程、および前記第2工程のそれぞれでは、前記領域(A,B)内の所定の電子部品に対しては、前記部品実装面(12a,12b)から所定高さ(H)以上が、前記樹脂(P)に覆われないように、前記樹脂材料(M)を供給するものであり、
前記プリント基板(12)には、ネジ穴(12e)が形成され、
前記ネジ穴(12e)への前記樹脂(P)の流入をせき止める栓として、パイプ(12f)が設けられている
ことを特徴とする電装品の製造方法。
【請求項4】
請求項3の製造方法において、
前記第1工程、および前記第2工程のそれぞれでは、前記プリント基板(12)として、前記領域(A,B)外への前記樹脂材料(M)の流動をせき止める堰堤(50)が形成されたものを用いることを特徴とする電装品の製造方法。
【請求項5】
請求項3の製造方法において、
前記領域(A,B)外への前記樹脂材料(M)の流動をせき止める治具(60)を、前記プリント基板(12)に装着する工程を含んでいることを特徴とする電装品の製造方法。
【請求項6】
請求項3から請求項5の何れかにおいて、
前記プリント基板(12)には、貫通孔(12c,12e)が形成されており、
前記プリント基板(12)として、前記貫通孔(12c,12e)への前記樹脂材料(M)の流入をせき止める栓が設けられたものを用いることを特徴とする電装品の製造方法。
【請求項7】
請求項3から請求項5の何れかにおいて、
前記プリント基板(12)は、貫通孔(12c,12e)が形成されており、
前記樹脂材料(M)が前記領域(A,B)に供給される前に、前記貫通孔(12c,12e)を塞ぐ栓を、前記プリント基板(12)に治具として取り付ける工程と、
前記樹脂材料(M)が前記領域(A)に供給された後の所定タイミングで、前記栓を取り除く工程と、
含み、
前記栓として、前記樹脂(P)の前記部品実装面(12a,12b)からの高さ(H)よりも高く形成されたものを用いることを特徴とする電装品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電装品、および電装品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電装品が備えるプリント基板は、水分、塵埃等から電子部品を保護するために、その電子部品が樹脂でコーティングされる場合がある(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1の例では、プリント基板および部品をホットメルトモールディングによって、一体成形している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−254809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子部品によっては、全体が樹脂でコーティングされていると不都合な場合がある。例えば、電解コンデンサの圧力弁は、樹脂でコーティングしない方がよい。
【0005】
本開示の目的は、電子部品の所定箇所を樹脂コーティングから露出させることができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、両面が部品実装面(12a,12b)であるプリント基板(12)を備え、
それぞれの部品実装面(12a,12b)では、当該部品実装面(12a,12b)の所定の領域(A,B)において、電子部品が樹脂(P)によってコーティングされ、
前記領域(A,B)内の所定の電子部品は、前記部品実装面(12a,12b)から所定高さ(H)以上が、前記樹脂(P)に覆われていないことを特徴とする電装品である。
【0007】
第1の態様では、所定の電子部品は、その一部が樹脂コーティングから露出する。
【0008】
本開示の第2の態様は、第1の態様において、
前記樹脂(P)でコーティングされた電子部品は、当該電子部品と、前記プリント基板(12)上の配線パターン(12d)との接合部(X)が、前記樹脂(P)で覆われていることを特徴とする電装品である。
【0009】
第2の態様では、接合部(X)が樹脂(P)によって確実に保護される。
【0010】
本開示の第3の態様は、電装品(4)の製造方法において、
前記電装品(4)は、両面が部品実装面(12a,12b)であるプリント基板(12)を備え、
一方の部品実装面(12a)の所定領域(A)に、流動性を有した樹脂材料(M)を供給して硬化させることによって、当該領域(A)、および当該領域(A)内の電子部品を樹脂(P)でコーティングする第1工程と、
他方の部品実装面(12b)の所定領域(B)に、流動性を有した樹脂材料(M)を供給して硬化させることによって、当該領域(B)、および当該領域(B)内の電子部品を前記樹脂(P)でコーティングする第2工程と、
を順に行い、
前記第1工程、および前記第2工程のそれぞれでは、前記領域(A,B)内の所定の電子部品に対しては、前記部品実装面(12a,12b)から所定高さ(H)以上が、前記樹脂(P)に覆われないように、前記樹脂材料(M)を供給することを特徴とする電装品の製造方法である。
【0011】
第3の態様では、所定の電子部品は、その一部が樹脂コーティングから露出する。
【0012】
本開示の第4の態様は、第3の態様の製造方法において、
前記第1工程、および前記第2工程のそれぞれでは、前記プリント基板(12)として、前記領域(A,B)外への前記樹脂材料(M)の流動をせき止める堰堤(50)が形成されたものを用いることを特徴とする電装品の製造方法である。
【0013】
第4の態様では、堰堤(50)によって、樹脂材料(M)の流動範囲が制御される。
【0014】
本開示の第5の態様は、第3の態様の製造方法において、
前記領域(A,B)外への前記樹脂材料(M)の流動をせき止める治具(60)を、前記プリント基板(12)に装着する工程を含んでいることを特徴とする電装品の製造方法である。
【0015】
第5の態様では、治具(60)によって、樹脂材料(M)の流動範囲が制御される。
【0016】
本開示の第6の態様は、第3から第5の態様の何れかにおいて、
前記プリント基板(12)には、貫通孔(12c,12e)が形成されており、
前記プリント基板(12)として、前記貫通孔(12c,12e)への前記樹脂材料(M)の流入をせき止める栓が設けられたものを用いることを特徴とする電装品の製造方法である。
【0017】
第6の態様では、栓によって、貫通孔(12c,12e)への前記樹脂材料(M)の流入がせき止められる。
【0018】
本開示の第7の態様は、第3から第5の態様の何れかにおいて、
前記プリント基板(12)は、貫通孔(12c,12e)が形成されており、
前記樹脂材料(M)が前記領域(A,B)に供給される前に、前記貫通孔(12c,12e)を塞ぐ栓を、前記プリント基板(12)に治具として取り付ける工程と、
前記樹脂材料(M)が前記領域(A)に供給された後の所定タイミングで、前記栓を取り除く工程と、
含み、
前記栓として、前記樹脂(P)の前記部品実装面(12a,12b)からの高さ(H)よりも高く形成されたものを用いることを特徴とする電装品の製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、電力変換装置の構成例を示すブロック図である。
図2図2は、プリント基板の断面図である。
図3図3は、電子部品の端子と、配線パターンとの接合部を示す。
図4図4は、パイプをプリント基板に取り付けた状態を示す。
図5図5は、プリント基板に治具を装着した状態を示す。
図6図6は、第2工程において、樹脂材料を供給した状態を示す。
図7図7は、実施形態2の電力変換装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
《実施形態1》
以下では、電装品の実施形態として、電力変換装置の例を説明する。電力変換装置は、例えば、空気調和装置に搭載される。
【0021】
〈電装品の構成〉
図1は、電力変換装置(4)の構成例を示すブロック図である。電力変換装置(4)は、コンバータ回路(41)、平滑コンデンサ(42)、及びインバータ回路(43)を備えている。電力変換装置(4)は、モータ(3)に交流電力を供給する。
【0022】
コンバータ回路(41)は、交流電源(2)が出力した交流を整流する。コンバータ回路(41)は、複数のダイオード(41a)を備えている。これらのダイオード(41a)は、ひとつのパッケージに封入されている。
【0023】
平滑コンデンサ(42)は、コンバータ回路(41)に並列接続されている。平滑コンデンサ(42)は、コンバータ回路(41)の出力を平滑化する。
【0024】
平滑コンデンサ(42)は、電解コンデンサによって構成されている。平滑コンデンサ(42)は、円筒状の電子部品である。平滑コンデンサ(42)の一端(円筒の一端)には、端子(図示は省略)が形成されている。平滑コンデンサ(42)の他端の面には、圧力弁(42a)が形成されている。
【0025】
インバータ回路(43)も、コンバータ回路(41)に並列接続されている。インバータ回路(43)は、コンバータ回路(41)の出力を所定電圧の交流に変換する。インバータ回路(43)は、前記交流を負荷(この例ではモータ(3))に出力する。
【0026】
インバータ回路(43)は、複数のスイッチング素子(43a)を備えている。各スイッチング素子(43a)には、還流ダイオード(43b)が逆並列接続されている。これらのスイッチング素子(43a)は、駆動回路(図示は省略)によって、オンオフが切り替えられる。インバータ回路(43)は、スイッチング素子(43a)のオンオフ動作によって、コンバータ回路(41)の出力を所定電圧の交流に変換する。
【0027】
インバータ回路(43)は、前記駆動回路等の周辺回路とともに、ひとつのパッケージに封入されている。以下では、このパッケージをパワーモジュール(1)と呼ぶ。パワーモジュール(1)は、所定の面が放熱面(1a)である。放熱面(1a)は、内部の電子部品(スイッチング素子(43a)等)の熱をパッケージの外部に放熱させるための面である。放熱面(1a)には、ヒートシンク(16)が取り付けられる。
【0028】
〈電装品における素子の実装〉
パワーモジュール(1)、平滑コンデンサ(42)、ダイオード(41a)等の電子部品は、プリント基板(12)に実装されている。図2に、プリント基板(12)の断面図を示す。プリント基板(12)は、両面が部品実装面(12a,12b)である。
【0029】
プリント基板(12)には、各種コネクタ(44)も実装されている。コネクタ(44)は、例えば、インバータ回路(43)の出力(交流電力)と、負荷(モータ(3))との結線に用いられる。プリント基板(12)には、更に他の電子部品(30)も実装されている(図2参照)。
【0030】
プリント基板(12)には、複数の貫通孔(以下、スルーホール(12c)という)が形成されている。スルーホール(12c)は、部品実装面(12a,12b)間を導通させるため等の目的で形成される。
【0031】
ダイオード(41a)のパッケージ、および平滑コンデンサ(42)は、それぞれの端子がプリント基板(12)の配線パターン(12d)に、半田付けされている。パワーモジュール(1)も、各端子(1b)がプリント基板(12)の配線パターン(12d)に、半田付けされている。
【0032】
パワーモジュール(1)は、ネジ(13)によって、パッケージが、プリント基板(12)に固定されている。プリント基板(12)には、ネジ(13)を通すための貫通孔(以下、ネジ穴(12e)ともいう)が形成されている。
【0033】
それぞれの部品実装面(12a,12b)の所定の領域(A,B)には、全体がコーティング樹脂(P)によってコーティングされた電子部品(図示は省略)と、一部分のみがコーティング樹脂(P)によってコーティングされた電子部品(一部分がコーティング樹脂(P)から露出した電子部品)とがある。
【0034】
電子部品の一部分をコーティング樹脂(P)から露出させるのは、電子部品の中には、全体をコーティングしない方が都合のよいものがあるからである。例えば、平滑コンデンサ(42)の圧力弁(42a)は、コーティング樹脂(P)で覆わない方がよい。圧力弁(42a)を適切に機能させるためである。パワーモジュール(1)の放熱面(1a)もコーティング樹脂(P)で覆わない方がよい。放熱面(1a)には、ヒートシンク(16)が取り付けられるからである。電子部品の一部分をコーティング樹脂(P)から露出させる理由には、コーティングに要する樹脂の量を最小限にすることによって、電装品を低コストに製造したいという理由もある。
【0035】
本実施形態では、一部分がコーティング樹脂(P)から露出した電子部品は、所定高さ(H)以上が、コーティング樹脂(P)によって覆われていない。高さ(H)は、部品実装面(12a,12b)からの高さである。
【0036】
高さ(H)は、圧力弁(42a)、および放熱面(1a)がコーティング樹脂(P)から露出するように決定している。ここで、平滑コンデンサ(42)の部品実装面(12a)から、圧力弁(42a)までの高さをh2とする。パワーモジュール(1)の部品実装面(12a)から、放熱面(1a)までの高さをh1とする。この寸法定義の下で圧力弁(42a)、および放熱面(1a)を、コーティング樹脂(P)から露出させるには、H<h1且つH<h2とすればよい。
【0037】
領域(A,B)では、プリント基板(12)の表面がコーティング樹脂(P)によって覆われている。具体的に、領域(A,B)内では、電子部品と配線パターン(12d)との接合部(X)が、コーティング樹脂(P)で覆われている。こうすることで、腐食の起きやすい異種金属間が、効果的に保護される。図3に、電子部品(30)の端子(31)と、配線パターン(12d)との接合部(X)を示す。
【0038】
〈製造工程の例〉
電力変換装置(4)(電装品)は、一例として、以下の工程によって製造できる。以下の工程を実施する前提として、プリント基板(12)には、電子部品(パワーモジュール(1)等)が、半田付けされているものとする。各領域(A,B)内のスルーホール(12c)は、半田(S)で埋められているものとする。半田(S)は、スルーホール(12c)を塞ぐ栓である。
【0039】
プリント基板(12)には、ネジ穴(12e)への樹脂材料(後述の樹脂材料(M))の流入をせき止める栓が設けられたものを用いる。この例では、栓は、パイプ(12f)によって構成されている。図4に、パイプ(12f)をプリント基板(12)に取り付けた状態を示す。
【0040】
図4に示すように、栓(パイプ(12f))には、部品実装面(12a,12b)からの、コーティング樹脂(P)の高さ(H)よりも高く形成されたものを用いている。パイプ(12f)の内径は、ネジ(13)を通せるように設定されている。パイプ(12f)の外径は、ネジ穴(12e)の直径と概ね同じである。
【0041】
−第1工程−
第1工程では、コーティング樹脂(P)用の樹脂材料(M)を準備する。樹脂材料(M)には、製造段階では流動性を有し、且つそれを硬化させることができる材料を用いる。樹脂材料(M)としては、一例として、ウレタン系の樹脂を挙げることができる。本実施形態では、ウレタン系樹脂の主剤に硬化剤を混ぜたもの(液状の材料)を準備する。
【0042】
第1工程では、治具(60)をプリント基板(12)に装着する。治具(60)は、領域(A)の外への、樹脂材料(M)の流動をせき止めるために用いる。図5に、プリント基板(12)に治具(60)を装着した状態を示す。
【0043】
治具(60)は、プリント基板(12)の外周に嵌め込めるようになっている(図5参照)。治具(60)は、領域(A)を取り囲む枠である。治具(60)は、領域(A)の外側において、部品実装面(12a)に接している。治具(60)は、部品実装面(12a)からの高さが、コーティング樹脂(P)の高さ(H)よりも、やや高く設定されている。以上の構成によって、治具(60)は、樹脂材料(M)の流動を部品実装面(12a)においてせき止める堰堤として機能する。
【0044】
治具(60)は、一例として、金属で形成することが考えられる。治具(60)には、必要に応じて、離型剤を塗布しておくとよい。
【0045】
第1工程では、一方の部品実装面(ここでは、部品実装面(12a)とする)の領域(A)に、液状の樹脂材料(M)を供給する。樹脂材料(M)の供給量は、コーティング樹脂(P)が目標の高さ(H)以下となり、且つコーティング樹脂(P)が接合部(X)を覆うように調整する。この調整は、僅かな試行錯誤で実現できる。
【0046】
第1工程では、供給した樹脂材料(M)を硬化させる。樹脂材料(M)を硬化させるには、樹脂材料(M)の特性に応じて、例えば、室内に放置したり、加熱炉によって加熱したりする。
【0047】
−第2工程−
第2工程は、第1工程にて供給した樹脂材料(M)が硬化した後に実施する。第1工程で取り付けた治具(60)は、部品実装面(12b)からの高さが、コーティング樹脂(P)の高さ(H)よりも、やや高く設定されている。治具(60)は、領域(B)の外側において、部品実装面(12b)に接している。以上の構成によって、治具(60)は、樹脂材料(M)の流動を、部品実装面(12b)においてせき止める堰堤としても機能する(図5参照)。
【0048】
第2工程では、部品実装面(12b)が上向きとなるように、プリント基板(12)を第1工程における作業状態から、上下を反転させる(図6)。その後、第2工程では、部品実装面(12b)の領域(B)に、流動性を有した樹脂材料(M)を供給する。樹脂材料(M)の供給量は、コーティング樹脂(P)が目標の高さ(H)以下となり、且つコーティング樹脂(P)が接合部(X)を覆うように調整する。この調整も、僅かな試行錯誤で実現できる。
【0049】
第2工程でも、供給した樹脂材料(M)を硬化させる。第2工程でも、樹脂材料(M)を硬化させるには、樹脂材料(M)の特性に応じて、例えば、室内に放置したり、加熱炉によって加熱したりする。
【0050】
治具(60)は、第2工程における樹脂材料(M)の供給が終了した後の所定タイミングで取り除く。治具(60)の除去は、必ずしも、樹脂材料(M)が完全に硬化した後でなくてもよい。本実施形態では、パイプ(12f)は、取り除く必要はない。パワーモジュール(1)を固定するネジ(13)は、パイプ(12f)を通す。
【0051】
以上の通り、本開示は、両面が部品実装面(12a,12b)であるプリント基板(12)を備え、それぞれの部品実装面(12a,12b)では、当該部品実装面(12a,12b)の所定の領域(A,B)において、電子部品が樹脂(P)によってコーティングされ、前記領域(A,B)内の所定の電子部品は、前記部品実装面(12a,12b)から所定高さ(H)以上が、前記樹脂(P)に覆われていないことを特徴とする電装品である。
【0052】
〈本実施形態における効果〉
以上の通り、本実施形態では、領域(A,B)内の所定の電子部品は、部品実装面(12a,12b)から所定高さ(H)以上が、コーティング樹脂(P)によって覆われていない。本実施形態では、平滑コンデンサ(42)の圧力弁(42a)は、コーティング樹脂(P)から露出する。本実施形態では、圧力弁(42a)を適切に機能させることができる。
【0053】
本実施形態では、パワーモジュール(1)の放熱面(1a)がコーティング樹脂(P)によって覆われていない。本実施形態では、コーティング樹脂(P)がヒートシンク(16)の取付の邪魔にならない。本実施形態では、パワーモジュール(1)にヒートシンク(16)を容易に取り付けることができる。
【0054】
本実施形態のプリント基板(12)は、ネジ穴(12e)の部分にパイプ(12f)が設けられている。パイプ(12f)は、ネジ穴(12e)への樹脂材料(M)の流入をせき止めている。本実施形態では、コーティング樹脂(P)がネジ(13)を塞ぐことがない。本実施形態では、ネジ(13)によって、パワーモジュール(1)をプリント基板(12)に容易に固定できる。
【0055】
本実施形態では、治具(60)によって、樹脂材料(M)を所望の領域(A,B)内にとどめている。本実施形態では、治具(60)によって、コーティングの範囲(対象の電子部品)を容易に設定できる。治具(60)の高さを設定することによって、コーティング樹脂(P)の高さ(H)を容易に調整でき、樹脂材料コストを低減できる。
【0056】
《実施形態2》
図7に、実施形態2の電力変換装置(4)を示す。本実施形態でも電力変換装置(4)を構成する電子部品は、実施形態1の例と同様である。本実施形態は、プリント基板(12)の構成が、実施形態1と異なっている。本実施形態では、プリント基板(12)として、領域(A,B)外への樹脂材料(M)の流動をせき止める堰堤(50)が形成されたものを用いる。
【0057】
堰堤(50)は、両方の部品実装面(12a,12b)に設けられている。堰堤(50)は、概ね、プリント基板(12)の外周沿いに設けられている。堰堤(50)の、部品実装面(12a,12b)からの高さは、コーティング樹脂(P)の高さ(H)よりも、やや高く設定されている。
【0058】
〈製造工程の例〉
本実施形態の電力変換装置(4)も、実施形態1と同様に、第1工程、および第2工程を実施することによって、コーティング樹脂(P)を形成できる。本実施形態では、堰堤(50)を有したプリント基板(12)を用いているので、治具(60)を取り付ける作業、および取り外す作業は、不要である。
【0059】
〈本実施形態における効果〉
本実施形態でも、実施形態1と同様の効果を得ることができる。本実施形態では、治具(60)の取付、および取り外しが不要である。治具(60)を使用しない分、本実施形態では、製造工程が簡略になる。
【0060】
《その他の実施形態》
スルーホール(12c)用の栓は、半田(S)には限定されない。一般的に、プリント基板(12)には、ソルダーレジストが塗布される。ソルダーレジストをスルーホール(12c)に塗布することによって、栓として使用することが考えられる。
【0061】
スルーホール(12c)の栓は必須ではない。樹脂材料(M)の粘度などの諸条件によっては、樹脂材料(M)が流動状態であっても、スルーホール(12c)内に入り込まない場合がある。このような場合には、スルーホール(12c)に栓を設ける必要はない。
【0062】
ネジ穴(12e)用の栓は、パイプ(12f)には限定されない。例えば、中実の栓をパイプ(12f)の代わりに用いることができる。この場合、中実の栓は、治具として用いる。この治具(中実の栓)は、樹脂材料(M)を供給した後の所定のタイミングで除去すればよい。
【0063】
治具(60)は、必須ではない。例えば、樹脂材料(M)の供給量や供給位置を調整することによって、樹脂材料(M)の流動範囲を制御できる場合がある。流動範囲を制御できる場合には、治具(60)を設ける必要はない。同様に、プリント基板(12)の堰堤(50)も必須ではない。
【0064】
電子部品は、必要なもののみを、コーティング樹脂(P)から露出させればよい。例えば、一方の部品実装面では、全ての電子部品が露出部を有さないという構成も考えられる。
【0065】
電力変換装置(4)は、電装品の一例にすぎない。その他の装置のプリント基板にも、本開示のコーティング技術を適用できる。
【0066】
治具(60)の形状は、実施形態で示したものには限定されない。樹脂材料(M)の流動をせき止める機能を有していればよい。治具(60)の材料も例示にすぎない。例えば、樹脂によって、治具(60)を構成してもよい。
【0067】
樹脂材料(M)として挙げたウレタン系の樹脂も例示にすぎない。樹脂材料(M)には、例えば、ナイロン系樹脂を採用することが考えられる。
【0068】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。以上の実施形態および変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上説明したように、本開示は、電装品、および電装品の製造方法について有用である。
【符号の説明】
【0070】
4 電力変換装置(電装品)
12 プリント基板
12a 部品実装面
12b 部品実装面
12c スルーホール(貫通孔)
12d 配線パターン
50 堰堤
60 治具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7