特許第6930711号(P6930711)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6930711
(24)【登録日】2021年8月16日
(45)【発行日】2021年9月1日
(54)【発明の名称】錠剤測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/85 20060101AFI20210823BHJP
   A61J 3/06 20060101ALI20210823BHJP
   B65G 47/86 20060101ALI20210823BHJP
【FI】
   G01N21/85 A
   A61J3/06 R
   A61J3/06 G
   B65G47/86 G
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-222919(P2017-222919)
(22)【出願日】2017年11月20日
(65)【公開番号】特開2019-95236(P2019-95236A)
(43)【公開日】2019年6月20日
【審査請求日】2020年6月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112912
【氏名又は名称】フロイント産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102853
【弁理士】
【氏名又は名称】鷹野 寧
(72)【発明者】
【氏名】今井 聖
(72)【発明者】
【氏名】磯部 重実
(72)【発明者】
【氏名】中村 卓也
(72)【発明者】
【氏名】味園 隼人
(72)【発明者】
【氏名】武内 優貴
(72)【発明者】
【氏名】山田 翔平
【審査官】 小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0297590(US,A1)
【文献】 特開2017−133953(JP,A)
【文献】 特開2015−218027(JP,A)
【文献】 特開2015−087147(JP,A)
【文献】 特開2010−243439(JP,A)
【文献】 特表平10−509796(JP,A)
【文献】 特開2009−075069(JP,A)
【文献】 特開2007−199044(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/083001(WO,A1)
【文献】 ROSA,Silvia S et al.,Development and validation of a method for activedrug identification and content determination of ranitidine inpharmaceutical products using near-infrared reflectance spectroscopy:A parametric release approach,Talanta,2008年 月 日,Vol.75,No.3,pp.725-733
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 − G01N 21/01
G01N 21/17 − G01N 21/61
G01N 21/84 − G01N 21/958
A61J 1/00 − A61J 19/06
B65G 47/80
B65G 47/84 − B65G 47/86
B01J 2/00 − B01J 2/30
G01B 11/00 − G01B 11/30
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Science Direct
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング処理中の錠剤コーティング装置からサンプリングされた錠剤の物性をリアルタイムで測定する錠剤測定装置であって、
該錠剤測定装置は、
前記錠剤が導入される錠剤受け入れ部と、
前記錠剤を搬送しつつ、該錠剤の物性を測定する測定部と、
前記錠剤受け入れ部に導入された前記錠剤を前記測定部に供給する錠剤供給部と、を備え、
前記測定部は、前記錠剤を吸着支持して搬送する円盤状に形成された単一の搬送ディスクと、前記搬送ディスクの近傍に配置され前記錠剤の物性を非接触状態にて測定可能な光学センサと、を有し、
前記搬送ディスクは、その端面に周方向に沿って設けられ前記錠剤の側面を吸着する吸着孔を備え、前記錠剤は、水平姿勢かつ表裏面全体が露出した状態にて前記搬送ディスクに吸着支持され、該搬送ディスクの回転に伴って周方向に搬送されて前記水平姿勢のまま前記光学センサの位置に運ばれ、
前記光学センサは、前記水平姿勢の前記錠剤の表面に対向するように配置され、表面が全面的に露出した状態の前記錠剤を測定することを特徴とする錠剤測定装置。
【請求項2】
請求項1記載の錠剤測定装置において、
前記測定部は、異なる種類の前記錠剤においても前記光学センサと前記錠剤との間の距離が一定の距離となるよう、前記光学センサと前記錠剤との間の距離を調整可能なセンサ位置調整機構を有することを特徴とする錠剤測定装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の錠剤測定装置において、
前記光学センサがNIRセンサであることを特徴とする錠剤測定装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の錠剤測定装置において、
前記測定部と接続され、前記光学センサによって測定された前記錠剤の吸光度の値と、前記物性に関する検量線とから前記錠剤の物性を算出するコンピュータを備えることを特徴とする錠剤測定装置。
【請求項5】
請求項4記載の錠剤測定装置において、
前記コンピュータは、コーティング処理前における前記錠剤の反射光のデータと、コーティング処理中の前記錠剤の反射光のデータとを比較することにより、前記錠剤のコーティング膜厚を算出することを特徴とする錠剤測定装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の錠剤測定装置において、
前記測定部の後段に配置され、前記測定部における物性測定により規格内と判定された前記錠剤を回収する回収部と、
前記測定部と前記回収部との間に配置され、前記測定部における物性測定により規格外と判定された前記錠剤を前記搬送ディスクから除去する不良品排出部と、を備えることを特徴とする錠剤測定装置。
【請求項7】
請求項6記載の錠剤測定装置において、
前記回収部にて回収された前記錠剤は、該回収部から前記錠剤コーティング装置に戻されることを特徴とする錠剤測定装置。
【請求項8】
請求項1〜6の何れか1項に記載の錠剤測定装置において、
前記錠剤が外部に対し封じ込められた状態で前記物性の算出が実施されるよう、前記測定部、前記錠剤供給部は、筐体内に気密状態にて配置されていることを特徴とする錠剤測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤の膜厚や有効成分の含量等の物性を測定する錠剤測定技術に関し、特に、光学センサを用いて錠剤の物性を測定する錠剤測定装置に関する
【背景技術】
【0002】
医薬品製造においては、安定した物性の錠剤を製造するため、近年、工程分析技術(PAT:Process Analytical Technology)が重要になっている。たとえば、錠剤では、表面をコーティングすることにより、マスキングや腸溶性などの機能が付与されるが、工程分析のひとつとして、コーティング被膜の膜厚管理が必要となる場合がある。そこで、従来より、錠剤のコーティング膜厚の管理手法として、コーティング処理中または処理後の錠剤を一定量サンプリングし、コーティング前の素錠との重量差により膜厚を算出したり、近赤外線(NIR)センサなどの光学センサを用いた測定装置によって、錠剤を1個ずつ測定したりする方法が知られている。また、特許文献2のように、錠剤コーティング装置の一部に透光部材を配し、この透光部材を介して、センサによりコーティング中の錠剤を測定する試みもなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−96717号公報
【特許文献2】特開2011−136311号公報
【特許文献3】特開2017−38908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、膜厚の管理手法として、コーティング前後の重量差による方法は、個々の錠剤を測定しているわけではないため、正確さに欠けるという問題があった。また、光学センサを用いた方法は、錠剤を1個ずつ測定することが可能であり、正確な測定値は得られるものの、作業が煩雑で非効率であるという問題があった。さらに、錠剤コーティング装置の一部に透光部材を配する方式では、リアルタイムの測定が可能ではあるが、錠剤表面とセンサとの間の距離が一定ではなく、錠剤の姿勢も一定ではないため、測定結果が常に正確であるとは言い切れないという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、光学センサを用いて、個々の錠剤の正確な物性を連続的に測定し得る錠剤測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の錠剤測定装置は、コーティング処理中の錠剤コーティング装置からサンプリングされた錠剤の物性をリアルタイムで測定する錠剤測定装置であって、該錠剤測定装置は、前記錠剤が導入される錠剤受け入れ部と、前記錠剤を搬送しつつ、該錠剤の物性を測定する測定部と、前記錠剤受け入れ部に導入された前記錠剤を前記測定部に供給する錠剤供給部と、を備え、前記測定部は、前記錠剤を吸着支持して搬送する円盤状に形成された単一の搬送ディスクと、前記搬送ディスクの近傍に配置され前記錠剤の物性を非接触状態にて測定可能な光学センサと、を有し、前記搬送ディスクは、その端面に周方向に沿って設けられ前記錠剤の側面を吸着する吸着孔を備え、前記錠剤は、水平姿勢かつ表裏面全体が露出した状態にて前記搬送ディスクに吸着支持され、該搬送ディスクの回転に伴って周方向に搬送されて前記水平姿勢のまま前記光学センサの位置に運ばれ、前記光学センサは、前記水平姿勢の前記錠剤の表面に対向するように配置され、表面が全面的に露出した状態の前記錠剤を測定することを特徴とする。
【0007】
本発明にあっては、錠剤受け入れ部にて錠剤コーティング装置から錠剤を導入し、錠剤供給部によって測定部に錠剤を供給する。測定部に供給された錠剤は、搬送されつつその物性が測定される。これにより、当該錠剤測定装置では、個々の錠剤の正確な物性を連続的に測定することができ、錠剤のコーティング膜厚等を正確かつリアルタイムで把握し、製品品質の向上を図ることが可能となる。
【0008】
前記錠剤測定装置において、前記測定部に、異なる種類の前記錠剤においても前記光学センサと前記錠剤との間の距離が一定の距離となるよう、前記光学センサと前記錠剤との間の距離を調整可能なセンサ位置調整機構を設けても良い。これにより、光学センサを錠剤に応じた最適な位置に調整し、測定を実施することができる。したがって、常に錠剤を等距離で測定することができ、安定した物性測定を行うことが可能となる。また、前記光学センサとして、NIRセンサを用いても良い。
【0009】
さらに、前記錠剤測定装置に、前記測定部と接続され、前記光学センサによって測定された前記錠剤の吸光度の値と、前記物性に関する検量線とから前記錠剤の物性を算出するコンピュータを設けても良く、前記コンピュータにより、コーティング処理前における前記錠剤の反射光のデータと、コーティング処理中の前記錠剤の反射光のデータとを比較することにより、前記錠剤のコーティング膜厚を算出するようにしても良い。
【0010】
加えて、前記測定部の後段に配置され、前記測定部における物性測定により規格内と判定された前記錠剤を回収する回収部と、前記測定部と前記回収部との間に配置され、前記測定部における物性測定により規格外と判定された前記錠剤を前記搬送ディスクから除去する不良品排出部と、を設けても良い。この場合、前記回収部にて回収された前記錠剤を、該回収部から前記錠剤コーティング装置に戻すようにしても良い。
【0011】
また、前記錠剤測定装置にて、前記錠剤が外部に対し封じ込められた状態で前記物性の算出が実施されるよう、前記測定部、前記錠剤供給部を筐体内に気密状態にて配置しても良く、前記回収部も筐体内に気密状態にて配置しても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明の錠剤測定装置によれば、錠剤が導入される錠剤受け入れ部と、錠剤を搬送しつつ錠剤の物性を測定する測定部と、錠剤受け入れ部に導入された錠剤を測定部に供給する錠剤供給部と、を設けたので、個々の錠剤の正確な物性を連続的に測定することが可能となる。したがって、錠剤のコーティング膜厚等を正確かつリアルタイムで把握することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施の形態である錠剤測定装置の外観を示す説明図である。
図2図1の錠剤測定装置の内部構成を示す説明図である。
図3】測定部と錠剤供給部の間に錠剤姿勢調整部として錠剤供給ディスクを配した変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の一実施の形態である錠剤測定装置10の外観を示す説明図、図2は、錠剤測定装置10の内部構成を示す説明図であり、本発明による錠剤測定方法は、図1の錠剤測定装置10にて実施される。錠剤測定装置10は、錠剤コーティング装置(以下、コーティング装置と略記する)に接続され、コーティング装置内から取り出された錠剤3の膜厚等(物性)をリアルタイムで測定する。
【0017】
図1,2に示すように、錠剤測定装置10は、ステンレス製の筐体21内に、円盤状の搬送ディスク1と光学センサ2を備えた測定部30と、測定部30に錠剤3を供給する錠剤供給部40、測定済みの錠剤3をコーティング装置に戻す回収部50を収容した構成となっている。錠剤測定装置10では、錠剤3の物性測定は、錠剤3が装置外部に対して封じ込められた状態(コンテインメント環境)で実施される。このため、錠剤3が物理的に移動する過程、すなわち、コーティング装置から錠剤測定装置10に至る経路や、錠剤測定装置10内の測定部30等の各部、錠剤測定装置10からコーティング装置に至る経路は全て、外部に対し気密状態に封じ込められている。
【0018】
筐体21上には、制御測定装置として、コンピュータ(PC)4が載置されている。コンピュータ4は、錠剤測定装置10の動作を制御するとともに、光学センサ2から各錠剤3に関する物性データがリアルタイムで入力され、適宜表示される。筐体21の下面にはキャスター22が取り付けられており、錠剤測定装置10を必要に応じて移動できるようになっている。筐体21の上面21aには、錠剤受け入れ部20として、錠剤投入口23が開口形成されており、コーティング装置から取り出された錠剤3が導入される。また、筐体21の側面21bには、回収部50の錠剤回収口24が開口形成されている。
【0019】
錠剤供給部40には、回転フィーダ41が配されている。回転フィーダ41には、図示しないコーティング装置から取り出された錠剤3が、錠剤投入口23を介して供給される。なお、錠剤投入口23と回転フィーダ41との間に、錠剤3を貯留し回転フィーダ41に供給するホッパを設けても良い。回転フィーダ41に供給された錠剤3は、測定部30の搬送ディスク1に供給される。搬送ディスク1は、端面1aにて錠剤3を吸着搬送する。搬送中の錠剤3は、光学センサ2によって、コーティング被膜の膜厚や有効成分の含量等の物性が測定される。測定されたデータは、コンピュータ4に送られる。測定済みの錠剤3は、測定部30の後段に配された回収部50にて回収され、錠剤回収口24から図示しないコーティング装置に還送される。
【0020】
図2に示すように、錠剤測定装置10ではまず、サンプリングされた錠剤3が錠剤投入口23から錠剤供給部40に供給される。錠剤供給部40の回転フィーダ41は、いわゆる無振動タイプの回転式パーツフィーダであり、円筒状の筐体42内に回転円盤43と環状回転板44を同軸状に設けた構成となっている。錠剤3は、錠剤投入口23から回転する回転円盤43上に供給され、回転円盤43の回転に伴って周方向に移動し、環状回転板44側に移動する。環状回転板44上の錠剤3は、環状回転板44の回転に伴って周方向に移動し、錠剤取得部45に送られる。錠剤取得部45に送られた錠剤3は、測定部30の回転する搬送ディスク1に吸着される。
【0021】
搬送ディスク1の端面1aには、真空ポンプ等の吸引装置(図示せず)と接続された吸着孔(吸着部)31が形成されている。錠剤3は、その側面3cを吸着孔31に吸着される形で、搬送ディスク1の端面1aに保持される。すなわち、錠剤3は、水平姿勢(表面3a,裏面3bを垂直方向上下に向けた状態)にて端面1aに吸着され、その状態のまま搬送ディスク1の回転とともに、周方向に搬送される。
【0022】
搬送ディスク1に吸着された錠剤3は、搬送ディスク1の回転に伴い、水平姿勢のまま光学センサ2の位置に運ばれ、錠剤3の膜厚や有効成分の含量等の物性が測定される。光学センサ2には、近赤外線を検査光として使用するNIRセンサが用いられており、錠剤3の物性値を非破壊かつリアルタイムに測定する。光学センサ2は、所定波長の近赤外光(たとえば、波長800〜3000nm程度)を照射し、錠剤3によるその反射光を受光する。反射光のデータはコンピュータ4に送付され、錠剤3の吸光度や透過率等の化学特性値が算出される。コンピュータ4では、当該錠剤における吸光度等の物性に関する検量線が予め格納されており、この検量線と測定した吸光度等の値から、膜厚等の錠剤3の物性を算出する。また、コーティング前の錠剤(素錠)表面を予め光学センサを測定し、その反射光のデータをコンピュータに格納しておき、そのデータと、コーティング処理を行った錠剤の表面を光学センサにて測定した反射光のデータを比較することにより膜厚を予測することも可能である。
【0023】
錠剤測定装置10では、種々の錠剤3の物性が正確に測定できるように、錠剤3の厚みに応じて光学センサ2の高さ位置を調整可能な高さ調整機構(センサ位置調整機構)32が設けられている。光学センサ2は、高さ調整機構32によって図2のX方向(錠剤表面に対し垂直方向)に沿って移動し、錠剤3のサイズに応じて、光学センサ2の高さ位置を調整できるようになっている。高さ調整機構32は、たとえば、図示しないモータとボールねじによって構成され、ロータリエンコーダやポテンショメータなどを用いた位置センサによって、光学センサ2の高さ位置を検出する。位置センサにて検出されたデータはコンピュータ4に送られ、光学センサ2と錠剤3との距離が所望の値となるようにフィードバック制御される。これにより、錠剤3のサイズが変わっても、錠剤3と光学センサ2との間の距離を一定に保持することが可能となる。したがって、異なる種類の錠剤3の物性を最適な条件で測定することができ、正確で信頼性の高い測定データを得ることが可能となる。なお、図2では、光学センサ2は、搬送ディスクの水平面の上位に設置して錠剤の上部表面を測定するようにしているが、搬送ディスクの水平面の下位に位置して錠剤の下部表面を測定するようにしても良い。光学センサを上位に設置すれば、トラブル時のメンテナンスが容易となり、下位に設置すれば、筐体をコンパクトにすることができる。
【0024】
また、錠剤測定装置10では、錠剤3の表面3a又は裏面3bが全面的に露出した状態で光学センサ2と対向する。このため、錠剤測定装置10では、錠剤3の全面を余すことなく測定が可能であり、錠剤周囲に測定不能な領域が生じることがない。したがって、この点においても、錠剤3に関する正確で信頼性の高い測定データを得ることが可能となる。なお、図1,2では、光学センサ2とコンピュータ4を接続ケーブル33にて接続した構成を示したが、両者をワイヤレスの通信手段によって接続しても良い。
【0025】
光学センサ2によって物性が測定された錠剤3は、測定部30の後段に配された回収部50に送られる。回収部50の前段には、物性測定により規格外(不良品)と判定された錠剤3を除外する不良品排出部60が設けられている。不良品排出部60には、不良品を搬送ディスク1上から除去する排出器61が配されている。排出器61は歯車状に形成されており、外周には、径方向に延びる係合突起62が複数設けられている。膜厚等が規格外と判断された錠剤3が不良品排出部60に来ると、排出器61が回動し、その錠剤3は係合突起62によって搬送ディスク1から落とされ、不良品排出口63に導入され製造ラインから排除される。一方、良品の錠剤3は、回収部50に向かう。
【0026】
物性測定により規格内(良品)と判定された錠剤3は、錠剤離脱部34に搬送され、吸着が解除される。すなわち、吸着孔31による吸引が停止し、錠剤3は、搬送ディスク1の端面1aから離脱する。搬送ディスク1から離脱した錠剤3は、回収部50の回収管51内に収容される。回収部50は、図示しないエジェクタと接続された本体部52を有しており、本体部52の上流側は回収管51と、また、下流側は錠剤回収口24と連通している。錠剤3は、錠剤離脱部34から回収管51内に吸引されるように取り込まれ、本体部52を通り、錠剤回収口24に運ばれる。錠剤回収口24に運ばれた錠剤3は、図示しない管路を通ってコーティング装置に戻される。
【0027】
このように、本発明による錠剤測定装置10は、搬送ディスク1によって錠剤3を吸着し、一定の状態に整列した形で測定部30に搬送する。そして、測定部30では、光学センサ2によって、錠剤3の物性を非接触状態で測定する。その際、高さ調整機構32によって、光学センサ2を錠剤に応じた最適な位置に調整し、測定を実施する。このため、常に錠剤3の表面全体を等距離で測定することができ、安定した物性測定を行うことが可能となる。したがって、個々の錠剤の正確な物性を連続的に測定することができ、錠剤のコーティング膜厚等を正確かつリアルタイムで把握し、製品品質の向上を図ることが可能となる。
【0028】
また、物性を測定した錠剤3も、不良品は不良品排出部60によって排除され、良品は回収部50からコーティング装置に戻される。したがって、不良品は確実に取り除かれる一方、良品も迅速に処理装置に戻される。当該錠剤測定装置10は、検査速度が速いため、処理中の錠剤の一部をサンプリングして物性測定を行うことは勿論、錠剤を全数検査することも可能であり、これにより、処理時間や工数を増大させることなく、製品品質をより確実に向上させることが可能となる。
【0029】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
たとえば、前述の実施形態では、錠剤測定装置10の処理対象を円形の錠剤としたが、本発明による測定装置は、円形錠剤以外にも、オブロング錠やキャブレット錠、多角形錠剤など種々の形状の錠剤に対応可能である。また、前述の実施の形態では錠剤供給部40に無振動タイプの回転フィーダ41を配しているが、振動タイプのフィーダを使用することも可能である。さらに、高さ調整機構32も、モータとボールねじによる構成以外も採用可能であり、たとえば、駆動源として空圧や油圧のアクチュエータや、動力伝達機構としてラックアンドピニオンなどを使用しても良い。なお、モータも回転駆動するものには限定されず、リニアモータも適用可能である。また、前述の全数検査の実施においては、使用する光学センサをNIRに替えて、ラマン分光やTHzを用いることも可能である。
【0030】
加えて、測定部30では、円盤状の搬送ディスク1に錠剤3を吸着搬送させているが、錠剤の搬送手段はこれには限られず、吸着孔を設けたベルトコンベア状の搬送手段にて錠剤を吸引搬送しても良い。また、図3に示すように、搬送ディスク1と回転フィーダ41の間に、錠剤姿勢調整部として、錠剤3を吸着搬送する錠剤供給ディスク71を配しても良く、これにより、錠剤3をより安定した姿勢で搬送ディスク1に吸着させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、医薬品錠剤の以外にも、錠剤状に作られた菓子等の食品にも適用可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 搬送ディスク(搬送手段)
1a 端面
2 光学センサ
3 錠剤
3a 表面
3b 裏面
3c 側面
4 コンピュータ
10 錠剤測定装置
20 錠剤受け入れ部
21 筐体
21a 上面
21b 側面
22 キャスター
23 錠剤投入口
24 錠剤回収口
30 測定部
31 吸着孔
32 高さ調整機構(センサ位置調整機構)
33 接続ケーブル
34 錠剤離脱部
40 錠剤供給部
41 回転フィーダ
42 筐体
43 回転円盤
44 環状回転板
45 錠剤取得部
50 回収部
51 回収管
52 本体部
60 不良品排出部
61 排出器
62 係合突起
63 不良品排出口
71 錠剤供給ディスク
図1
図2
図3