特許第6930734号(P6930734)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6930734
(24)【登録日】2021年8月16日
(45)【発行日】2021年9月1日
(54)【発明の名称】基板保持装置及び基板検査装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20210823BHJP
   B65G 49/06 20060101ALI20210823BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20210823BHJP
   G03F 1/84 20120101ALI20210823BHJP
   G01N 21/956 20060101ALI20210823BHJP
【FI】
   H01L21/68 N
   B65G49/06 A
   H01L21/68 A
   G03F1/84
   G01N21/956 A
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-10998(P2018-10998)
(22)【出願日】2018年1月25日
(65)【公開番号】特開2019-129267(P2019-129267A)
(43)【公開日】2019年8月1日
【審査請求日】2020年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】500171707
【氏名又は名称】株式会社ブイ・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100170070
【弁理士】
【氏名又は名称】坂田 ゆかり
(72)【発明者】
【氏名】米澤 良
(72)【発明者】
【氏名】岩田 匡弘
【審査官】 内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/133149(WO,A1)
【文献】 特開2016−92361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
B65G 49/06
H01L 21/677
G03F 1/84
G01N 21/956
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周縁に平面又は曲面の面取部が形成された透明な略板状の基板を略鉛直方向に保持する基板保持装置であって、
略鉛直に延設された略棒状の第1縦枠部及び第2縦枠部を有するフレームと、
前記第1縦枠部及び前記第2縦枠部に設けられた複数のクランプ部と、
を備え、
前記クランプ部は、前記基板と当接する当接位置と、前記基板と当接しない退避位置との間で略水平方向に移動可能であり、
前記第1縦枠部及び前記第2縦枠部は、前記基板の表面と略直交する方向からみて前記基板の周縁と重なる部分を有し、当該重なる部分は、前記クランプ部が前記当接位置にあるときに前記基板の裏面が当接する基準面を有し、
前記クランプ部は、前記当接位置において前記基板の側面と前記面取部との稜線に当接する第1先端面を有する第1ユニットと、前記第1ユニットと前記フレームとの間に略水平方向に移動可能に設けられた第2ユニットと、を備え、
前記第1ユニットは、前記第2ユニットと当接する第1後端面を有し、
前記第2ユニットは、前記第1後端面と当接する第2先端面を有し、
前記第1先端面と、前記基準面と略直交する面とのなす角度は略45度より小さく、
前記第1後端面及び前記第2先端面と、前記基準面と略直交する面とのなす角度は、前記第1先端面と、前記基準面と略直交する面とのなす角度より大きく、
前記第2ユニットが前記退避位置から前記当接位置に向けて移動すると、前記第1先端面が前記基板の側面と前記面取部との稜線に当接し、かつ前記第1ユニットが前記第2先端面に沿って前記基準面側へ摺動する
ことを特徴とする基板保持装置。
【請求項2】
前記第1先端面は、前記基準面と略直交する面に対して略10度傾いており、
前記第1後端面及び前記第2先端面は、前記基準面と略直交する面に対して略45度傾いている
ことを特徴とする請求項1に記載の基板保持装置。
【請求項3】
前記クランプ部は、前記基準面から遠ざける方向の力を前記第1ユニットに付勢する弾性部材を有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の基板保持装置。
【請求項4】
前記第1ユニットは、鉛直上方向又は鉛直下方向から見たときの形状が略台形形状であり、前記基準面から遠い側の上底は前記基準面に近い側の下底より短く、前記上底の長さが略1mmである
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の基板保持装置。
【請求項5】
鉛直上方向又は鉛直下方向から見たときに、前記第1先端面と前記基板とが当接する位置を通り、前記第1先端面と略直交する線と、前記第1後端面及び前記第2先端面とが交差する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の基板保持装置。
【請求項6】
前記基板の下端面と当接する複数の保持ブロックと、前記保持ブロック毎に高さを変化させる調整機構と、を有する保持ユニットと、
前記調整機構を制御して前記保持ブロックを前記基板の下端面と当接させてから、前記クランプ部を前記当接位置へ移動させる制御部と、
を備えたことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の基板保持装置。
【請求項7】
前記クランプ部は、前記第1縦枠部に設けられた第1クランプ部及び第2クランプ部と、前記第2縦枠部に設けられた第3クランプ部及び第4クランプ部と、を有し、
前記第1クランプ部と前記第3クランプ部とが対向し、前記第2クランプ部と前記第4クランプ部とが対向し、
前記制御部は、前記第1クランプ部、前記第2クランプ部、前記第3クランプ部及び前記第4クランプ部が前記当接位置にある状態から、前記第1クランプ部と前記第3クランプ部を前記当接位置に配置したまま前記第2クランプ部と前記第4クランプ部を前記当接位置から前記退避位置へと同時に移動させ、その後、前記第2クランプ部と前記第4クランプ部を前記退避位置から前記当接位置に向けて同時に移動させ、かつ前記第1クランプ部と前記第3クランプ部を前記当接位置から前記退避位置へと同時に移動させる
ことを特徴とする請求項6に記載の基板保持装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記クランプ部を連続して複数回略水平方向に往復移動させる
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の基板保持装置。
【請求項9】
前記保持ブロックは、前記基板の下端面と当接する第1保持ブロックと、前記第1保持ブロックの下側に設けられた第2保持ブロックと、を有し、
前記第1保持ブロックは、略水平方向に移動可能である
ことを特徴とする請求項6に記載の基板保持装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の基板保持装置と、
前記基板を撮像する撮像部と、
前記基板へ光を照射する照明部であって、前記基板を挟んで前記撮像部と対向するように設けられた照明部と、
を備えたことを特徴とする基板検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板保持装置及び基板検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基板の側辺を保持する複数のロック付シリンダがフレームに設けられており、ロック付シリンダの先端が基板のエッジに対して10度前後傾斜するように形成されている基板保持装置が開示されている。この基板保持装置では、ロック付シリンダ先端の斜面で基板の面取り部を斜め前方から押さえ、基板の裏面をフレームの面(基準面)に当接させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−147099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、クリーンルームの天井には、清浄な空気を送風するために、HEPAフィルタ (High Efficiency Particulate Air Filter)やファンを備えたファンフィルタユニットが設けられている。このファンフィルタユニットには、例えば送風能力の高いファンシロッコファンが設けられていることがあるが、シロッコファンからは20Hz程度の低周波の圧力振動が発生し、この振動がクリーンルーム内にある設備や基板に伝わる。
【0005】
特許文献1に記載の発明では、ロック付シリンダの推力(基準面と略平行な向きの力)に対する基準面方向の分力成分が小さいため、基板を基準面へ押圧する力が不足し、基板の裏面が基準面から微小量(例えば0.2mm程度)浮いてしまうおそれがある。基板の裏面とフレームとが離れると、ファンから発生する低周波の音響振動により基板が振動してしまう。この振動は、最も振幅が大きい基板の中央部分において略2μm以上と大きな値となり、検査時に擬似欠陥が発生するおそれがある。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、基板を基準面に押圧して基板の振動を抑えることができる基板保持構造、基板保持装置及び基板検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るマスク保持装置は、例えば、周縁に平面又は曲面の面取部が形成された透明な略板状の基板を略鉛直方向に保持する基板保持装置であって、略鉛直に延設された略棒状の第1縦枠部及び第2縦枠部を有するフレームと、前記第1縦枠部及び前記第2縦枠部に設けられた複数のクランプ部と、を備え、前記クランプ部は、前記基板と当接する当接位置と、前記基板と当接しない退避位置との間で略水平方向に移動可能であり、前記第1縦枠部及び前記第2縦枠部は、前記基板の表面と略直交する方向からみて前記基板の周縁と重なる部分を有し、当該重なる部分は、前記クランプ部が前記当接位置にあるときに前記基板の裏面が当接する基準面を有し、前記クランプ部は、前記当接位置において前記基板の側面と前記面取部との稜線に当接する第1先端面を有する第1ユニットと、前記第1ユニットと前記フレームとの間に略水平方向に移動可能に設けられた第2ユニットと、を備え、前記第1ユニットは、前記第2ユニットと当接する第1後端面を有し、前記第2ユニットは、前記第1後端面と当接する第2先端面を有し、前記第1先端面と、前記基準面と略直交する面とのなす角度は略45度より小さく、前記第1後端面及び前記第2先端面と、前記基準面と略直交する面とのなす角度は、前記第1先端面と、前記基準面と略直交する面とのなす角度より大きく、前記第2ユニットが前記退避位置から前記当接位置に向けて移動すると、前記第1先端面が前記基板の側面と前記面取部との稜線に当接し、かつ前記第1ユニットが前記第2先端面に沿って前記基準面側へ摺動することを特徴とする。
【0008】
本発明に係るマスク保持装置によれば、クランプ部は、基板と当接する当接位置と、基板と当接しない退避位置との間で略水平方向に移動可能であり、当接位置において基板と当接する第1先端面を有する第1ユニットと、第1ユニットとフレームとの間に略水平方向に移動可能に設けられた第2ユニットと、を有する。第1先端面と、基板の裏面が当接する基準面と略直交する面とのなす角度(角度θ1)は略45度より小さいため、当接位置において第1先端面が基板の側面と面取部との稜線に当接する。第1ユニットと第2ユニットとが当接する面である第1後端面及び第2先端面と、基準面と略直交する面とのなす角度(角度θ2)は、角度θ1より大きいため、第2ユニットが退避位置から当接位置に向けて移動するときに第1ユニットに下向きの力が加わる。このため、第1先端面が基板の側面と面取部との稜線に当接し、第1ユニットが第2ユニットの第2先端面に沿って基準面側へ摺動する。これにより、基板を基準面に押圧して基板の振動を抑えることができる。特に、クランプ部を第1ユニットと第2ユニットの2部品構成とすることで、基板に加わる力は角度θ2に依存し、角度θ1に依存しない。したがって、角度θ1を小さくすることが可能である。
【0009】
ここで、前記第1先端面は、前記基準面と略直交する面に対して略10度傾いており、
前記第1後端面及び前記第2先端面は、前記基準面と略直交する面に対して略45度傾いていてもよい。これにより、第1ユニットと基板とが重なる距離を小さくしつつ、第2ユニットが退避位置から当接位置に向けて移動するときに、第2ユニットが第1ユニットを水平方向に押圧する力と、第1ユニットに加わる下向きの力とを略同一とすることができる。なお、第1ユニットと基板とが重なる距離を小さくすることで、基板検査用の撮像部の視野を遮る範囲を狭め、基板の検査に支障をきたさないようにすることができる。また、第2ユニットが第1ユニットを水平方向に押圧する力と、第1ユニットに加わる下向きの力とを略同一とすることで、基板を基準面にしっかりと押圧して、基板の振動を抑えることができる。
【0010】
ここで、前記クランプ部は、前記基準面から遠ざける方向の力を前記第1ユニットに付勢する弾性部材を有してもよい。これにより、クランク部と基板とが離れた時に、第1ユニットを元の位置に戻すことができる。
【0011】
ここで、前記第1ユニットは、鉛直上方向又は鉛直下方向から見たときの形状が略台形形状であり、前記基準面から遠い側の上底は前記基準面に近い側の下底より短く、前記上底の長さが略1mmであってもよい。これにより、第2ユニットに加えられた付勢力によって、第1ユニットを第2ユニットの第2先端面に沿って移動させる(第1ユニットが回転しない)ことができる。
【0012】
ここで、鉛直上方向又は鉛直下方向から見たときに、前記第1先端面と前記基板とが当接する位置を通り、前記第1先端面と略直交する線と、前記第1後端面及び前記第2先端面とが交差してもよい。これにより、第2ユニットに加えられた付勢力よって、第1ユニットを第2ユニットの第2先端面に沿って移動させる(第1ユニットが回転しない)ことができる。
【0013】
ここで、前記基板の下端面と当接する複数の保持ブロックと、前記保持ブロック毎に高さを変化させる調整機構と、を有する保持ユニットと、前記調整機構を制御して前記保持ブロックを前記基板の下端面と当接させてから、前記クランプ部を前記当接位置へ移動させる制御部とを備えてもよい。これにより、基板の両側面と下端面とを押さえることで、基板を略鉛直方向に保持することができる。
【0014】
ここで、前記クランプ部は、前記第1縦枠部に設けられた第1クランプ部及び第2クランプ部と、前記第2縦枠部に設けられた第3クランプ部及び第4クランプ部と、を有し、前記第1クランプ部と前記第3クランプ部とが対向し、前記第2クランプ部と前記第4クランプ部とが対向し、前記制御部は、前記第1クランプ部、前記第2クランプ部、前記第3クランプ部及び前記第4クランプ部が前記当接位置にある状態から、前記第1クランプ部と前記第3クランプ部を前記当接位置に配置したまま前記第2クランプ部と前記第4クランプ部を前記当接位置から前記退避位置へと同時に移動させ、その後、前記第2クランプ部と前記第4クランプ部を前記退避位置から前記当接位置に向けて同時に移動させ、かつ前記第1クランプ部と前記第3クランプ部を前記当接位置から前記退避位置へと同時に移動させてもよい。これにより、基板を保持したときに基板と基準面とが離れていても、基板を少しずつ基準面に向けて移動させて、基板を基準面に押圧することができる。
【0015】
ここで、前記制御部は、前記クランプ部を連続して複数回略水平方向に往復移動させてもよい。これにより、基板と基準面とが離れていても、基板を少しずつ基準面に向けて移動させて、基板を基準面に押圧することができる。
【0016】
ここで、前記保持ブロックは、前記基板の下端面と当接する第1保持ブロックと、前記第1保持ブロックの下側に設けられた第2保持ブロックと、を有し、前記第1保持ブロックは、略水平方向に移動可能であってもよい。これにより、基板が基準面に向けて移動するときに、基板と第1保持ブロックとが擦れず、基板の下端面を第1保持ブロックで傷つけないようにすることができる。
【0017】
上記課題を解決するために、本発明に係るマスク検査装置は、例えば、請求項1から9のいずれか一項に記載の基板保持装置と、前記基板を撮像する撮像部と、前記基板へ光を照射する照明部であって、前記基板を挟んで前記撮像部と対向するように設けられた照明部と、を備えたことを特徴とする。これにより、基板を基準面に押圧して基板の振動を抑え、検査時に擬似欠陥が発生しないようにすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、基板を基準面に当接させて、基板の振動を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1の実施の形態に係るマスク保持装置1の概略を示す斜視図である。
図2】マスク保持装置1におけるマスク保持部10の概略を示す平面図である。
図3図1のA−A断面図であり、クランプ部12aの概略を示す図である。
図4】クランプ部12aにおけるクランプ121を+y方向から見た図である。
図5】クランプ部12aにおけるクランプ121を+z方向から見た図である。
図6】クランプ部12aにおけるクランププレート122の斜視図である。
図7】クランプ部12aにおけるクランププレート122を+y方向から見た図である。
図8】保持ブロック21の概略を示す図である。
図9】マスク保持装置1の電気的な構成を示すブロック図である。
図10】マスクMを略鉛直方向に保持する処理の流れを示すフローチャートである。
図11】(A)は本実施の形態におけるクランプ部12がマスクMを押圧する力を説明する図であり、(B)は従来の形態におけるクランプ部120がマスクMを押圧する力を説明する図である。
図12】クランプ部12と、マスク保持装置1が把持する複数種類のマスクM1、M2、M3、M4との関係を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。本発明は、周縁に平面又は曲面の面取部が形成された透明な略板状の基板を略鉛直方向に保持する基板保持装置であり、基板を検査する基板検査機等の内部に設けられる。
【0021】
本発明では、基板としてマスクMを用いる。マスクMは、石英等により形成された透明な略板状の部材であり、例えば有機ELや液晶表示装置の表示装置用の基板を製造するために用いられる露光用マスクである。マスクMは、一辺が1m程度の大型な略矩形形状の基板上に、1個または複数個のイメージデバイス用転写パターンが形成されるものである。また、マスクMには、マスクエッジが欠けないようにするため、周縁に面取部が形成されている。
【0022】
面取部は、平面の面取部(いわゆるC面)であってもよいし、曲面の面取部(いわゆるR面)であってもよい。また、C面は、角度が略45度の通常面取りであってもよいし、角度が略30度の特別面取りであってもよい。以下、面取部として、角度が略45度、辺の長さが1mmの面取り(C1)を有する場合を例に説明する。
【0023】
図1は、第1の実施の形態に係るマスク保持装置1の概略を示す斜視図である。以下、水平方向のうちのフレーム11の長手方向に略沿った方向をx方向と定義し、鉛直方向をy方向とし、x方向及びy方向と直交する方向をz方向と定義する。
【0024】
マスク保持装置1は、ステージ(図示せず)に載置されており、主として、マスク保持部10と、保持ユニット20と、撮像部30と、照明部40と、を有する。
【0025】
マスク保持部10は、主として、略枠状のフレーム11と、マスクMを把持するクランプ部12と、を有する。フレーム11は、鉛直に保持されるマスクMの外周を囲むよう、略枠状に形成される。フレーム11は、略鉛直に延設された略棒状の縦枠部11a、11bを有する。縦枠部11a、11bは、マスクMの表面と略直交する方向(z方向)からみて、マスクMの周縁と重なる部分を有する。
【0026】
フレーム11は、マスクMの表面m1(パターンが形成される面)がxy平面と略平行となるようにマスクMを保持する。異なる大きさのマスクに対応するため、縦枠部11a、11bは、下枠部11eに沿って水平方向(x方向)に移動可能である。縦枠部11a、11bを移動可能に設ける形態及び移動機構については、既に公知の様々な技術を用いることができる。
【0027】
縦枠部11a、11bには、クランプ部12が設けられる。クランプ部12は、クランプ部12a〜12jを有する。縦枠部11aには、クランプ部12a、12b、12c、12d、12eが設けられ、縦枠部11bには、クランプ部12f、12g、12h、12i、12jが設けられる。クランプ部12aとクランプ部12fは対向し、クランプ部12bとクランプ部12gは対向し、クランプ部12cとクランプ部12hは対向し、クランプ部12dとクランプ部12iは対向し、クランプ部12eとクランプ部12jは対向する。
【0028】
なお、本実施の形態では、縦枠部11aに5個のクランプ部12が設けられ、縦枠部11bに5個のクランプ部12が設けられているが、クランプ部12の位置及び数はこれに限られない。クランプ部12については、後に詳述する。
【0029】
クランプ部12a〜12jは、マスクMと当接する当接位置とマスクMと当接しない退避位置との間で、先端が略水平方向(x方向)に移動可能である。
【0030】
マスク保持部10の下端近傍には、保持ユニット20が設けられる。保持ユニット20は、ステージ(図示せず)に載置されており、マスクMの下端面と当接する複数の保持ブロック21と、保持ブロック21毎に保持ブロック21の下側に設けられる調整機構22と、を有する。保持ブロック21及び調整機構22は、x方向に沿って複数設けられている。調整機構22は、上面がxz平面に対して傾いている第1ブロック22aと、下面がxz平面に対して傾いている第2ブロック22bとを有し、第1ブロック22aと第2ブロック22bとの相対的な位置関係を変えることで、保持ブロック21の高さ方向(y方向)の位置を保持ブロック21毎に変更する。調整機構22はすでに公知であるため、詳細な説明は省略する。
【0031】
撮像部30は、マスク保持部10に保持されたマスクMを撮像する。照明部40は、マスクMへ光を照射する。撮像部30及び照明部40は、マスクMを挟んで対向するように設けられる。照明部40から光を照射しながら、撮像部30でパターンの画像を撮像する。撮像部30、照明部40は既に公知であるため、詳細な説明は省略する。
【0032】
次に、マスク保持部10について詳細に説明する。図2は、マスク保持装置1におけるマスク保持部10の概略を示す平面図である。図2では、一部の構成について図示を省略している。
【0033】
図2では、クランプ部12a〜12j(図2ではクランプ部12b〜12e、12g〜12jは視認できず)は、マスクMと当接する当接位置にある。縦枠部11a、11bは、それぞれ、クランプ部12a〜12jが当接位置にあるときに、マスクMの裏面m2が当接する基準面11c、11dを有する。クランプ部12a〜12jがマスクMを押圧すると、裏面m2が基準面11c、11dに押圧される。
【0034】
マスクMの表面m1にはパターンが形成されており、撮像部30及び照明部40を用いてパターンの検査を行う。パターンは、マスクMの周縁から10mm〜20mm程度内側の領域に形成されている。したがって、マスクMの周縁からの距離が距離x1(距離x1は略10mm)の部分を除いた領域について、撮像部30及び照明部40がx方向及びy方向に移動しながら検査を行う。
【0035】
照明部40の開口数は、撮像部30の開口数の0.7倍程度であるため、撮像部30に入射する光の経路を考慮すると、マスクMと基準面11c、11dとが当接する距離x2は、距離x1より小さく、略3〜5mm程度である。また、撮像部30に影が撮像されるのを防止するため、クランプ部12とマスクMとが重なる距離x3は、距離x2より小さくする。距離x3を小さくすることで、撮像部30の視野を遮る範囲を狭め、マスクMの検査に支障をきたさないようにすることができる。
【0036】
図3は、図1のA−A断面図であり、クランプ部12aの概略を示す図である。図3において、二点鎖線は、クランプ部12aが退避位置にある状態を示し、実線は、クランプ部12aが当接位置にある状態を示す。なお、クランプ部12a〜12jは、同一の構成である。ただし、クランプ部12a〜12eとクランプ部12f〜12jとは左右対称である。
【0037】
クランプ部12aは、主として、クランプ121と、クランププレート122と、ストリッパーボルト123と、弾性部材124と、を有する。
【0038】
クランプ121は、クランプ部12aの先端に設けられる。クランププレート122は、クランプ121とフレーム11(図3では図示省略)との間に設けられている。クランププレート122は、フレーム11に対して移動可能に設けられ、図示しない駆動部により略水平方向に移動される。クランププレート122が略水平方向に移動してクランプ部12aが当接位置に移動すると、クランプ121がマスクMと当接する。
【0039】
図示しない駆動部は、図示しないアクチュエータ(例えば、空気圧アクチュエータ)に接続されており、圧縮空気が第1の封入口からシリンダ内に給気され、第2の封入口からから排気されると、クランププレート122が図3における左側に移動し、圧縮空気が第2の封入口からシリンダ内に給気され、第1の封入口からから排気されると、クランププレート122が図3における右側に移動する。ただし、駆動部の形態はこれに限られない。
【0040】
図4は、クランプ部12aにおけるクランプ121を+y方向から見た図であり、図5は、クランプ部12aにおけるクランプ121を+z方向から見た図である。
【0041】
クランプ121は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)等の耐熱性、機械的強度に優れた樹脂で形成される。クランプ121は、鉛直上方向(+y方向)又は鉛直下方向(−y方向)から見たときの形状が略台形形状である本体部121aと、略中央に形成された取付部121bと、を有する。
【0042】
本体部121aの先端面121cは、マスクMと当接する面である。先端面121cは、基準面11cと略直交する面に対して斜めであり、基準面11cから遠い側が基準面11cに近い側よりマスクMの内側寄りに位置する。本体部121aの先端面121cの反対側の面は、クランププレート122と当接し、クランプ121とクランププレート122との摺動面である摺動面121dである。
【0043】
先端面121cと、基準面11cと略直交する面Pとのなす角度θ1は略45度より小さい。先端面121cと面Pとのなす角度θ1を略45度より小さくすることで、マスクMの稜線eを先端面121cと当接させて先端面121cがマスクMの表面m1にふれないようにし、表面m1に形成されたパターン情報を損なう異物が表面m1に付着しないようにすることができる。本実施の形態では、角度θ1は略10度である。これは、図3に示すように距離x3を距離x2より小さくし、かつ距離x3をできるだけ小さくするためである。
【0044】
摺動面121dと面Pとのなす角度θ2は、角度θ1より大きい。本実施の形態では、角度θ2は略45度である。クランププレート122がクランプ121を下向きに押す力は、角度θ2が大きくなるにつれて強くなる。
【0045】
本体部121aの基準面11cから遠い側の上底121eの長さは略1mmである。角度θ1が略10度であり、角度θ2が略45度であるため、上底121eと略平行、かつ基準面11cから近い側の下底121fの長さは、上底121eよりも長い。
【0046】
上底121eと先端面121cとの間には、角がナイフエッジ形状とならないように、上底121eと略同じ長さの平面121gが形成されている。ただし、平面121gは必須ではない。
【0047】
取付部121bは、本体部121aの略中央に、先端面121cと反対側に突出するように形成されている。取付部121bの先端面121cの反対側の面は、クランププレート122と当接し、クランプ121とクランププレート122との摺動面である摺動面121hである。摺動面121hは摺動面121dと略平行であり、摺動面121hと面Pとのなす角度は角度θ2と等しい。
【0048】
クランプ121(本体部121a)の±y側の端面には、穴121i、121jが形成される。穴121iと穴121jとは一体であり、穴121jは穴121iより太く、穴121iは穴121jより長い。穴121i、121jには、弾性部材124が挿入される(図3参照)。弾性部材124を挿入した後に、クランプ121の±y側の端面に粘着性のシール等を貼付してもよい。これにより、穴121i、121jと弾性部材124との摩擦により弾性部材124の表面が削れて異物が発生しても、シールにより異物を効率よく捉えることができる。
【0049】
また、クランプ121には、ねじ孔121kと、穴121lとが形成される。ねじ孔121kと穴121lとは一体であり、穴121lは摺動面121hに開口する。穴121lには、ストリッパーボルト123が挿入される(図3参照)。また、ねじ孔121kには、ストリッパーボルト123のねじ部が螺合される(図3参照)。
【0050】
図6は、クランプ部12aにおけるクランププレート122の斜視図であり、図7は、クランプ部12aにおけるクランププレート122を+y方向から見た図である。
【0051】
クランププレート122は、鉄等の金属で形成され、クランプ121とクランププレート122との摺動面である摺動面122a、122bを有する。摺動面122aは、摺動面121dと当接し、摺動面122bは、摺動面121hと当接する。摺動面122a、122bは、摺動面121d、摺動面121hと略平行であり、摺動面122a、122bと面Pとのなす角度は角度θ2と等しい。
【0052】
クランププレート122の+y側の端面には、穴122c、122dが形成される。穴122cと穴122dとは一体であり、穴122cは穴122dより太く、穴122dは穴122cより長い。穴122c、122dには、弾性部材124が挿入される(図3参照)。弾性部材124を挿入した後に、クランププレート122の+y側の端面にシール等を貼付してもよい。
【0053】
また、クランププレート122には、長孔122e及びザグリ穴122fが形成される。長孔122eは、クランププレート122を貫通する。長孔122e及びザグリ穴122fは、一体であり、一端は上面122gに開口し、他端は摺動面122bに開口する。長孔122e及びザグリ穴122fは、摺動面122bと略直交する。長孔122e及びザグリ穴122fには、ストリッパーボルト123が挿入される(図3参照)。
【0054】
図3の説明に戻る。ストリッパーボルト123を上面122g側から穴121l、長孔122e及びザグリ穴122fに挿入し、ストリッパーボルト123の先端のねじ部をねじ孔121kに螺合する。その結果、クランプ121がクランププレート122から離脱しないように、クランプ121とクランププレート122とがストリッパーボルト123により連結される。このとき、ストリッパーボルト123の頭部123aがザグリ穴122fの内部に位置し、頭部123aの下面がザグリ穴122fの底面に当接する。
【0055】
長孔122e及びザグリ穴122fは直線部を有するため、ストリッパーボルト123は、長孔122e及びザグリ穴122fの長手方向に沿って長孔122e及びザグリ穴122fの内部を摺動可能である。
【0056】
なお、本実施の形態では、ストリッパーボルト123を用いてクランプ121とクランププレート122とを摺動可能に連結するが、クランプ121とクランププレート122とを摺動可能に連結する方法はこれに限られない。
【0057】
弾性部材124は、例えばピアノ線等の弾性変形が可能な線材である。弾性部材124は、±y側から穴121j、穴121i、穴122c及び穴122dに挿入され、図示しないビスによりクランププレート122に固定される。穴121i、122dの幅は、弾性部材124の直径と略同一であり、穴121j、122cの幅は、弾性部材124の直径より大きい。
【0058】
クランププレート122が待機位置から当接位置に向けて移動(図3では、−x方向へ移動、図3黒矢印参照)すると、先端面121cがマスクMの側面sと面取部cとの稜線eに当接する。クランププレート122には、先端面121cが稜線eと当接したあとも、図示しない駆動部により−x方向へ移動する方向の力が付勢される。
【0059】
鉛直上方向又は鉛直下方向から見たときに、先端面121cと稜線eとが当接する位置を通り、先端面121cと略直交する線(図3一点鎖線参照)は、摺動面121d、122aと交差する。そのため、クランププレート122に加えられた付勢力によりクランプ121が平行移動する(クランプ121は回転しない)。
【0060】
本実施の形態では、角度θ2が略45度である(図4、7参照)ため、クランププレート122が図示しない駆動部により−x方向に付勢される力を力Fとすると、クランプ121は、クランププレート122から下向きの力Fが付勢される。
【0061】
このようにして、クランプ121は、摺動面122a、122bに沿って先端面121c側へ摺動する(図3黒矢印参照)。先端面121cと稜線eとの摩擦により、クランプ121がクランププレート122に対して摺動しても、先端面121cと稜線eとの位置関係は変化しない。そのため、マスクMはクランプ121により−z方向に押し込まれ、マスクMの裏面m2が基準面11cに力Fで押圧される。
【0062】
穴121i、122dの幅が弾性部材124の直径と略同一であり、穴121j、122cの幅が弾性部材124の直径より大きいため、弾性部材124は、クランプ121がクランププレート122に対して移動するのにともない弾性変形する。
【0063】
弾性部材124が弾性変形することで、クランプ121には、弾性部材124により基準面11cから遠ざける方向の力が付勢される。図示しない駆動部によりクランププレート122が当接位置から待機位置に向けて移動(図3では、+x方向へ移動)すると、先端面121cが稜線eから離れ、弾性部材124によりクランプ121が+z方向へ押し上げられる。弾性部材124がクランプ121及びクランププレート122の±y側に設けられ、クランプ121がy方向の両側からバランスよく力を受けるため、クランプ121は平行移動する。
【0064】
図8は、保持ブロック21の概略を示す図である。保持ブロック21は、マスクMと当接する保持ブロック21aと、保持ブロック21aの下側に設けられた保持ブロック21bと、を有する。保持ブロック21bは、調整機構22の第1ブロック22aと当接する。説明のため、図8では保持ブロック21aと保持ブロック21bとを少し離して図示しているが、実際には保持ブロック21aと保持ブロック21bとは当接している。
【0065】
保持ブロック21aは、略水平方向、ここではマスクMの厚さ方向(z方向)に移動可能である。保持ブロック21a、21bは、それぞれ、保持ブロック21aと保持ブロック21bとの摺動面である摺動面21c、21dを有する。摺動面21c、21dとの間に給油等を行うため、摺動面21c、21dにおける摺動抵抗は、マスクMと保持ブロック21aとの摩擦力より小さい。
【0066】
保持ブロック21は、保持ブロック21aを+z方向へ押圧する弾性部材(図示せず)を有する。
【0067】
図9は、マスク保持装置1の電気的な構成を示すブロック図である。マスク保持装置1は、主として、制御部101、記憶部102、入力部103、出力部104を含んで構成される。
【0068】
制御部101は、演算装置であるCPU(Central Processing Unit)等のプログラム制御デバイスであり、記憶部102に格納されたプログラムにしたがって動作する。制御部101の詳しい動作の内容については、後に詳述する。
【0069】
記憶部102は、不揮発性メモリ、揮発性メモリ等であり、制御部101によって実行されるプログラム等を保持するとともに、制御部101のワークメモリとして動作する。入力部103は、キーボードやマウス等の入力デバイスを含む。出力部104は、ディスプレイ等である。
【0070】
制御部101が行う処理の流れについて説明する。図10は、マスクMを略鉛直方向に保持する処理の流れを示すフローチャートである。処理を始める前には、クランプ部12は待機位置にある。
【0071】
まず、制御部101は、調整機構22及び図示しない駆動部を制御して保持ブロック21を下方(−y方向)に移動させる(ステップS1)。次に、制御部101は、ローダ(図示せず)でマスクMを把持し、マスクMをマスク保持装置1の内部へと挿入する(ステップS2)。
【0072】
これにより、フレーム11の手前側(+z側)にマスクMが配置される。制御部101は、調整機構22及び図示しない駆動部を制御して保持ブロック21を上方(+y方向)に移動させ、保持ブロック21とマスクMの下端面とを当接させる(ステップS3)。
【0073】
次に、制御部101は、クランプ部12を待機位置から当接位置へと移動させる(ステップS4)。このときには、全てのクランプ部12を同時に移動させる。これにより、クランプ部12がマスクMを把持し、クランプ121、すなわちマスクMが−z方向へ移動し、マスクMの裏面m2が基準面11cに押圧される。
【0074】
マスクMが−z方向へ移動するときに、保持ブロック21aが保持ブロック21bに対して摺動し、保持ブロック21aが−z方向へ移動する。これにより、マスクMを−z方向へ移動させるときに、マスクMの下端面を保持ブロック21aで傷つけないようにすることができる。
【0075】
ステップS4において、制御部101は、クランプ部12を連続して複数回略水平方向に往復移動させてもよい。つまり、制御部101は、クランプ部12でマスクMを把持し、クランプ部12をマスクMから離し、再度クランプ部12でマスクMを把持する、という処理を繰り返してもよい。これにより、ステップS2で挿入されたマスクMと基準面11cとが数mm程度離れていても、クランプ部12で把持したマスクMの裏面m2を基準面11cに押圧することができる。
【0076】
制御部101は、図示しない在荷センサにより、クランプ部12がマスクMを把持しているか否かを判定する(ステップS5)。クランプ部12がマスクMを把持していない(ステップS5でNO)場合には、制御部101は、再度クランプ部12を当接位置へ向けて移動させる(ステップS4)。クランプ部12がマスクMを把持している(ステップS5でNO)場合には、マスクMの両側面と下端面とが押さえられており、マスクMを略鉛直方向に保持している。したがって、制御部101は、マスクMからローダを外し、マスクMを保持する処理を終了する。
【0077】
なお、マスクMからローダを外した後で、マスクMとフレーム11とが数mm程度離れていた場合には、クランプ部12がマスクMを把持したとしても、マスクMの裏面m2が基準面11cに十分押圧されていない場合がありうる。このような場合には、制御部101は、マスクMの位置を修正する修正処理を行う。
【0078】
例えば、基準面11cに図示しないセンサを設け、センサ等を用いて基準面11cを押圧する力を検知する。その結果、クランプ部12が全て当接位置にあったとしても裏面m2が基準面11cに十分押圧されていないことが検知されたら、制御部101は、クランプ部12a、12c、12e、12f、12h、12j(奇数番目に配置されたもの)と、クランプ部12b、12d、12g、12i(偶数番目に配置されたもの)とを異なるタイミングで水平移動させる。
【0079】
制御部101は、当接位置にある全てのクランプ部12のうち、クランプ部12a、12c、12e、12f、12h、12jを当接位置に配置したまま、クランプ部12b、12d、12g、12iを当接位置から退避位置へと同時に移動させる。その後、制御部101は、クランプ部12b、12d、12g、12iを退避位置から当接位置に向けて同時に移動させてクランプ部12b、12d、12g、12iをマスクMと当接させるとともに、クランプ部12a、12c、12e、12f、12h、12jを当接位置から退避位置へと同時に移動させる。つまり、制御部101は、クランプ部12a、12c、12e、12f、12h、12jのみでマスクMを把持することと、クランプ部12b、12d、12g、12iのみでマスクMを把持することを交互に繰り返すことで、マスクMを少しずつ基準面11cに向けて移動させる。これにより、裏面m2を基準面11cに十分押圧することができる。
【0080】
このようにして、マスクMを略鉛直方向に保持したら、制御部101は、撮像部30及び照明部40を用いて検査処理を行う。検査処理は、既に公知であるため説明を省略する。
【0081】
検査処理の終了後、制御部101は、マスクMをフレーム11から外し、マスク保持装置1の外へ搬出する。この搬出処理では、制御部101は、ローダ(図示せず)でマスクMを把持し、クランプ部12を退避位置に移動させるとともに、保持ブロック21を下方に移動させて、マスクMをフレーム11から取り外す。その後、制御部101は、ローダ(図示せず)を移動させてマスクMをマスク保持装置1の外へ搬出する。
【0082】
クランプ部12には弾性部材124が設けられているため、クランプ部12が退避位置に移動するときに、クランププレート122に対して移動しているクランプ121が弾性部材124の付勢力により元の位置に戻る。また、保持ブロック21に設けられた図示しない弾性部材の付勢力により、保持ブロック21aが+z方向に移動し、保持ブロック21aが元の位置に戻る。
【0083】
本実施の形態によれば、クランプ部12がクランプ121とクランププレート122とを有し、摺動面121d、121h、122a、122bと面Pとのなす角度θ2を先端面121cと面Pとのなす角度θ1より大きくしたため、クランププレート122が退避位置から当接位置に向けて移動するときに、クランプ121に加わる下向きの力が大きくなる。したがって、クランプ121が基準面11c側へ摺動し、先端面121cが当接しているマスクMを基準面11cに押圧することができる。これにより、マスクMの振動を抑えることができる。
【0084】
図11(A)は本実施の形態におけるクランプ部12がマスクMを押圧する力を説明する図であり、図11(B)は従来の形態におけるクランプ部120がマスクMを押圧する力を説明する図である。図示しない駆動部により、クランプ部12、120には、マスクMに向けて大きさFの付勢力が加えられているものとする。
【0085】
図11(A)に示す本実施の形態では、クランププレート122はクランプ121を大きさFの力で水平方向に押圧する。クランプ121とクランププレート122との摺動面と面Pとのなす角度θ2は略45度であるため、クランプ121には大きさFの下向きの力が加わる。先端面121cに対する稜線eの位置は変化しないため、マスクMにも大きさFの下向きの力が加わる。これにより、マスクMを基準面11cにしっかりと押圧することができる。また、マスクMに加わる力は角度θ2に依存し、角度θ1に依存しないため、角度θ1を小さくすることが可能である。
【0086】
それに対し、図11(B)に示す従来の形態では、クランプ部120が直接マスクMを押圧するため、クランプ部120の先端面と面Pとのなす角度θ1とすると、マスクMに加わる下向きの力はF×tanθ1となる。角度θ1を小さくすると、マスクMに加わる下向きの力、すなわちクランプ部12の推力(マスクMに向けて大きさFの付勢力)に対する基準面11c方向の分力成分F×tanθ1も小さくなり、マスクMを基準面11cに押圧できないおそれがある。
【0087】
したがって、本実施の形態のように、クランプ部12をクランプ121とクランププレート122との2部品構成とすることで、角度θ2を大きくすることができ、これによりマスクMを基準面11cに押圧してマスクMと基準面11cとが離れないようにすることができる。そして、マスクMと基準面11cとが離れないようにすることで、最も振幅が大きい基板の中央部分において1μmより小さい振幅とし、基板の振動を抑えることができる。そのため、検査時に擬似欠陥が発生しないようにすることができる。
【0088】
また、本実施の形態によれば、クランプ部12はクランプ121とクランププレート122との2部品構成であり、角度θ1はマスクMの押圧力と関係しないため、角度θ1を小さくすることができる。
【0089】
なお、本実施の形態(図2、3等)では、マスクMの稜線eが先端面121cの略中央に当接するような厚さのマスクMを把持していたが、マスク保持装置1は様々な厚さのマスクを把持することができる。図12は、クランプ部12と、マスク保持装置1が把持する複数種類のマスクM1、M2、M3、M4との関係を示す模式図である。マスクM1は厚さt1が略10mmであり、マスクM2は厚さt2が略14mmであり、マスクM3は厚さt3が略17mmであり、マスクM4は厚さt4が略20mmである。
【0090】
クランププレート122に加えられた付勢力によりクランプ121が平行移動する(クランプ121が回転しない)ためには、先端面121cとマスクMとが当接する位置を通り、先端面121cと略直交する線(図12の一点鎖線参照)が、摺動面121d、122aと交差する必要がある。マスクM1〜M4のうち最も厚いマスクM4が最も条件が厳しいため、本発明では、先端面121cとマスクM4とが当接する位置を通り、先端面121cと略直交する線Lが摺動面121d、122aと交差するようにクランプ121の形状を設定する。
【0091】
例えば、クランプ121およびクランププレート122の基準面11cから最も遠い面までの距離t5が21mm〜22mmであるとすると、上底121eの長さを略1mm以上とすれば、線Lを摺動面121d、122aと交差させることができる。
【0092】
また、本実施の形態では、弾性部材124が基準面11cから遠ざける方向の力をクランプ121に付勢したが、基準面11cから遠ざける方向の力をクランプ121に付勢する形態はこれに限られない。例えば、摺動面121d、122aを挟むように、クランプ121の+y側の面の基準面11c寄りの位置と、クランププレート122の+y側の面の基準面11cから離れた位置とにそれぞれピンを設け、2本のピンに引っ張りばねの両端を設けるようにしてもよい。また例えば、長孔122e又はザグリ穴122fとストリッパーボルト123との間に圧縮ばねを設け、圧縮ばねでストリッパーボルト123を基準面11cから遠ざける方向に押し上げるようにしてもよい。
【0093】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0094】
本発明において、「略」とは、厳密に同一である場合のみでなく、同一性を失わない程度の誤差や変形を含む概念である。例えば、略立方体形状とは、厳密に立方体形状の場合に限られない。また、例えば、単に鉛直、一致等と表現する場合において、厳密に鉛直、一致等の場合のみでなく、略鉛直、略一致等の場合を含むものとする。また、本発明において「近傍」とは、例えばAの近傍であるときに、Aの近くであって、Aを含んでもいても含んでいなくてもよいことを示す概念である。
【符号の説明】
【0095】
1 :マスク保持装置
10 :マスク保持部
11 :フレーム
11a、11b:縦枠部
11c、11d:基準面
11e :下枠部
12、12a、12b、12c、12d、12e、12f、12g、12h、12i、12j:クランプ部
20 :保持ユニット
21、21a、21b:保持ブロック
21c、21d:摺動面
22 :調整機構
22a :第1ブロック
22b :第2ブロック
30 :撮像部
40 :照明部
101 :制御部
102 :記憶部
103 :入力部
104 :出力部
120 :クランプ部
121 :クランプ
121a :本体部
121b :取付部
121c :先端面
121d、121h:摺動面
121e :上底
121f :下底
121g :平面
121i、121j:穴
121k :ねじ孔
121l :穴
122 :クランププレート
122a、122b:摺動面
122c、122d:穴
122e :長孔
122f :ザグリ穴
122g :上面
123 :ストリッパーボルト
123a :頭部
124 :弾性部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12