(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6930812
(24)【登録日】2021年8月16日
(45)【発行日】2021年9月1日
(54)【発明の名称】孔部を有するワークの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/26 20060101AFI20210823BHJP
B29C 45/17 20060101ALI20210823BHJP
【FI】
B29C45/26
B29C45/17
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-227794(P2017-227794)
(22)【出願日】2017年11月28日
(65)【公開番号】特開2019-98521(P2019-98521A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2020年8月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100207181
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 朋
(72)【発明者】
【氏名】永井 真
(72)【発明者】
【氏名】前田 明伸
(72)【発明者】
【氏名】東 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】高實 大輔
【審査官】
今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−205580(JP,A)
【文献】
特開2012−223977(JP,A)
【文献】
特開2003−285351(JP,A)
【文献】
特開2005−324516(JP,A)
【文献】
特開2014−162097(JP,A)
【文献】
特開2012−219917(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/26
B29C 45/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
孔部を有するワークを射出成形により成形するワークの製造方法において、
前記ワークの形状部分および孔部を成形すると共に、前記孔部に、前記ワークの形状部分と連続する不要部を成形する工程と、
前記不要部を前記ワークから取り除く工程とを含み、
前記ワークの形状部分および孔部を成形する工程において、射出材は、前記ワークを成形する成形型のキャビティ内において、前記孔部の前記射出材の流れる方向の上流側から、前記孔部を挟んで互いに反対側である一方側と他方側とへ分流し、当該上流側に対して前記孔部を挟んで反対側である下流側へ流れ、
前記不要部は、前記孔部の前記一方側と前記下流側とを橋架することを特徴とするワークの製造方法。
【請求項2】
前記不要部は、前記ワークの射出成形時に、ワークの形状部分の側から流入した射出材によって成形される請求項1記載のワークの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、孔部を有するワークの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の安全技術の向上のために、センサーやバックソナー等を搭載した車両が増加傾向にある。そして、これらのセンサーやバックソナーは、バンパーに設けられた取付孔を介して車両に取り付けられる。従来、この取付孔は、バンパーを射出成形した後、例えば油圧式の孔明け装置によりバンパーに穴明けをして形成する等、後加工により形成されていた。
【0003】
しかし、このように射出成形後に別途孔明け工程を設けた場合、バンパー製造時のコストアップにつながってしまう。このため、センサーやバックソナーを搭載した車両が増加していることもあり、射出成形によってバンパーの形状部分と共に孔形状を成形することが望まれていた。
【0004】
ところが、取付孔を射出成形により形成する場合、バンパーの取付孔周辺にウェルドラインが形成されるという課題があった。つまり、
図8に示すように、バンパー100の射出成形時に、射出ゲートから取付孔101の側へ流れてきた樹脂材は、取付孔101を隔てて一方側102と他方側103のバンパー形状部分にそれぞれ分流し(
図8の矢印参照)、取付孔101の反対側で再び合流する。この合流位置において、一方側102と他方側103の樹脂材が面接触してウェルドライン104が形成されてしまうという課題があった。さらに、バンパー100射出成形時に、ウェルドライン104とは別に内部ウェルド105が形成されてしまう。バンパー100のように車両の意匠面を構成するワークの場合、内部ウェルド105の形成が、外観品質上、問題となってしまう。
【0005】
特に近年では、部材の軽量化や低コスト化等の要請により、バンパーの肉厚が薄くなる方向にある。この場合、射出成形時に、射出材が金型のキャビティ内を流れににくくなるため、ウェルドラインや内部ウェルドが発生しやすくなり、上記の課題が顕著になる。
【0006】
そこで、このような孔部周辺に形成されるウェルド対策として、例えば特許文献1の発明が開示されている。特許文献1では、
図9に示すように、樹脂成形部品に他部材への取付部111が設けられている。取付部111には、他部材に取り付けるための貫通孔112が設けられている。そして、取付部111の貫通孔112を隔てて一方側113には、薄肉部115が形成されている。これにより、射出成形時に、薄肉部115を設けた一方側113の圧力が他方側114の圧力に比べて小さくなる。これにより、左右分岐した一方側113と他方側114の樹脂材が再び合流した際に、他方側114の樹脂材が一方側113の樹脂材を押し込む形になり、ウェルドライン116が斜め方向に形成される。従って、ウェルドライン116が垂直(
図9の上下方向)に形成される場合と比較すると、ウェルドライン116における取付部111の割れを抑制でき、取付部111の強度を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014−162097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1のように、ワークに部分的な薄肉部を形成する方法は、厚みによって剛性を持たせるようなワークにはその適用が難しいという課題があった。また、特許文献1のように取付部の先端に貫通孔が設けられた構成の場合、貫通孔周辺の一部を薄肉にするだけで上記のような効果を得ることができるが、ワークに形成された孔の位置によっては、その周辺の広範囲に亘って薄肉部を形成する必要があり、ワークの剛性等の特性に与える影響が特に無視できなくなってしまう。このように、ウェルド対策として特許文献1の方法を必ずしも採用することができず、成り行きで成形するしかない場合も多いため、射出成形によってワークの形状部分と孔部とを一体的に成形することに困難が伴う状況にあった。
【0009】
このような事情から、本願発明は、孔部を有するワークを射出成形により成形する製造方法において、ワークに必要とされる剛性等の特性に影響を与えることなく、ウェルドラインの形成を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明は、孔部を有するワークを射出成形により成形するワークの製造方法において、前記ワークの形状部分および孔部を成形すると共に、前記孔部に、前記ワークの形状部分と連続する不要部を成形する工程と、前記不要部を前記ワークから取り除く工程とを含
み、前記ワークの形状部分および孔部を成形する工程において、射出材は、前記ワークを成形する成形型のキャビティ内において、前記孔部の前記射出材の流れる方向の上流側から、前記孔部を挟んで互いに反対側である一方側と他方側とへ分流し、当該上流側に対して前記孔部を挟んで反対側である下流側へ流れ、前記不要部は、前記孔部の前記一方側と前記下流側とを橋架することを特徴とするものである。
【0011】
かかる方法では、射出成形により、ワークの孔部に相当する位置に、ワークに連続した不要部を成形する。これにより、射出成形時に、孔部周辺において射出材が流れ込む経路を変化させることができ、ワークに薄肉部を設けることなく、射出材の流路や流入する圧力を調整することができる。従って、ウェルドラインの形成を抑制したり、ウェルドラインの形成される方向を変化させることができる。また、内部ウェルドの形成を抑制したり、内部ウェルドが形成される方向を調整することもできる。さらに、後工程で不要部をワークから取り除くことができるので、ワークの製品としての特性に影響を与えることもない。
【0012】
上記方法として、不要部は、ワークの射出成形時に、ワークの形状部分の側から流入した射出材によって成形することができる。これにより、射出成形時に、孔部の一方側に回り込んだ射出材と他方側に回り込んだ射出材のうち、不要部が設けられた側において、射出材の一部が不要部の側へ流入することで射出材の圧力がもう一方の側よりも小さくなる。従って、分流した射出材が再度合流する際に、不要部を設けた側の射出材が、もう一方の側の射出材に押し込まれる形になり、ウェルドラインの形成を抑制したり、その形成方向を一方側に傾斜させたりすることができる。
【0013】
上記方法として、射出成形のための金型の不要部に相当するキャビティの位置に、射出ゲートを設けることができる。これにより、射出成形時に、不要部の側からワークの側へ樹脂材を流し込むことができ、ウェルドラインの形成位置において樹脂材を押し流し、ウェルドラインの形成を抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ワークの製品としての特性に影響を与えることなく、ウェルドラインの形成を抑制したり、その形成方向を変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】不要部が設けられた中間成形品を示す断面図である。
【
図3】バンパーの射出成形時の様子を示す図である。
【
図7】異なる実施形態のバンパーにおける中間成形品を示す断面図である。
【
図8】取付孔周辺に形成されるウェルドラインを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示すように、車両に取り付けられるバンパー(ワーク)1には、バックソナーやコーナーセンサ等を取り付けるための複数の取付孔(孔部)2が設けられる。一例として、取付孔2の直径は25mm程度で形成される。
【0017】
バンパー1は、射出成形により成形される。射出成形時には、複数のゲート位置から金型のキャビティ内に流体状の樹脂材(射出材)が流れ込み、キャビティ内に充填された樹脂材が冷却固化されることで、取付孔2を含めたバンパー1の形状が形成される。
【0018】
図2に示すように、射出成形により成形される中間成形品1aには、取付孔2の位置に不要部3が設けられる。不要部3は、最終的なワーク1の製品形状を構成しない部分である。不要部3は、切り取り部3aで、バンパーの本体部分に部分的に連続して設けられている。なお、本実施形態では取付孔2が円形状の場合を例示しているが、これに限らず、適宜その形状を選択することができる。
【0019】
図3に示すように、射出成形時には、ゲート位置から取付孔2の側へ流れ込んできた樹脂材が、取付孔2を隔てて一方側20と他方側30にそれぞれ分流する(
図3の矢印参照)。そして、これらの一方側20と他方側30へ分流した樹脂材(以下、単に一方側20の樹脂材、他方側30の樹脂材とも呼ぶ)は、取付孔2の周囲を回り込むようにして流れ込み、取付孔2周辺のバンパー形状および取付孔2を成形する。
【0020】
この際、本実施形態では、一方側20の樹脂材の一部が、不要部3に相当する金型キャビティ内へ流れ込み、不要部3を形成する。これにより、取付孔2の一方側20を流れる樹脂材の、金型のキャビティ内における圧力が、他方側30の樹脂材の圧力と比較して小さくなる。従って、一方側20と他方側30の樹脂材が再び合流する際に、他方側30の樹脂材が、一方側20の樹脂材を押し込むようにして一方側20へ入り込んでいく。従って、ウェルドラインの形成を抑制することができる。また、ウェルドラインの形成位置を、
図3の点線L1に示すように、一方側20に傾斜して形成することができる。
【0021】
以上のように、不要部3を設けることによって、射出成形時に樹脂材の流れる方向やその圧力を調整することができ、ウェルドラインを抑制したり、その形成方向を調整することができる。従って、バンパー1の見栄えを改善し、その品質を向上させることができる。また、本実施形態の製造方法は、ウェルドラインのみならず、内部ウェルド(
図8参照)を抑制したり、その形成方向を変化させることもできる。
【0022】
射出成形によって中間成形品1aを成形した後、不要部3をバンパー形状から取り除く。これにより、所望の形状のバンパー1を得ることができる。不要部3は、例えば手作業により切り取り部3aの部分で切り取って、バンパー本体から取り除くことができる。このように、最終的に不要部3をバンパー1から取り除くことができるので、最終的な製品形状に影響を与えることなく、射出成形によって取付孔2を成形し、ウェルドラインの形成を抑制することができる。
【0023】
ところで、不要部3は、一方側20の樹脂材と他方側30の樹脂材が合流する際に、両者に圧力差を生じさせることで、ウェルドラインの形成を抑制することを目的としている(
図3参照)。従って、切り取り部3aは、一方側20のうち、特にウェルドライン形成位置の近傍に設けることが好ましい。
【0024】
図4に示すように、不要部3は、バンパー1よりも垂直方向に厚みを持たせて形成することができる。これにより、不要部3の体積を大きくすることができ、射出成形時に、不要部3に相当するキャビティ内に樹脂材が充填されて冷却固化するまでの時間を長くすることができる。
【0025】
上記のように、不要部3の体積を変化させることにより、樹脂材をより好ましいタイミングで不要部3へ流すことができる。つまり、一方側20の樹脂材と他方側30の樹脂材が取付孔2の周囲を回り込んで合流するまでの間に、不要部3に相当するキャビティ内に樹脂材が充填されてしまうと、一方側20と他方側30の樹脂材の合流時に、両者に十分な圧力差を生じさせることができず、ウェルドラインの形成を十分に抑制することができない。従って、上記のように不要部3の体積を稼ぐことにより、不要部3に相当する金型のキャビティ内への樹脂材の充填が完了するタイミングを遅らせ、一方側20と他方側30の樹脂材の合流時に、両者に圧力差を生じさせることができる。なお、本実施形態では不要部3の断面形状を円形としたが、これに限らず、必要な不要部3の体積や樹脂材の流れ込み方を考慮して、最適な形状を選択することができる。
【0026】
不要部3は、切り取り部3aを部分的に薄肉にしたり、切り取り部3aの幅を小さく設けることができる。これにより、不要部3をバンパー1から切り取る作業が容易になる。このように、切り取り部3aの厚みや幅を小さくすると、一方側20の樹脂材が不要部3に相当するキャビティの側へ流れ込む際の入口部分の面積が小さくなることになり、樹脂材が不要部3の側へ充填される速度が遅くなる。従って、不要部3に相当するキャビティ内に樹脂材が充填されるタイミングが遅くなると共に、一方側の樹脂材と他方側の樹脂材の圧力差が生じにくくなる。
【0027】
このように、切り取り部3aの厚みおよび幅は、必要とされる樹脂材の圧力差や不要部3に相当するキャビティ内への樹脂材の充填のタイミング、および、不要部3の切り取りの容易さ等を考慮して、最適な値で設計することが必要である。言い換えると、切り取り部3aの厚みおよび幅を調整することにより、不要部3に相当するキャビティ内への樹脂材が流入するタイミングを調整することができる。例えば、切り取り部3aの厚みおよび幅を小さく設けることにより、不要部3に相当するキャビティ内へ樹脂材が流入するタイミングを遅らせて、一方側の樹脂材と他方側の樹脂材が合流するタイミングで不要部3への樹脂材の流れ込み量を最大にし、ウェルドラインの形成をより効果的に抑制することもできる。
【0028】
また、本実施形態では、切り取り部3aを1箇所に設けた。つまり、一方側20の樹脂材が不要部3の側へ流入する入口を1箇所にのみ設けた。しかし、これに限らず、一方側20の複数箇所に、不要部3に連続する切り取り部3aを設けてもよい。
【0029】
ところで、前述のように、切り取り部3aは、後工程で手作業等により切り取られる部分である。従って、
図4に示すように、バンパー1の切り取り面X1は、その表面が不要部3の切り取りによって粗くなるため、センサーやバックソナーの取付面(例えば、ツメ等が嵌合する面)を避けて設定することが好ましい。例えば、不要部3をバンパー1の下面X2に連続するように設け、面X1を不要部3の切り取り面としないこともできる。
【0030】
図5に不要部の構成の変形例を示す。
図5に示すように、本実施形態の不要部3は、2箇所の切り取り部3a1,3a2を有する。一方の切り取り部3a1は、射出成形時に樹脂材が取付孔2の側へ流れ込んでくる位置周辺に設けられる。また、他方の切り取り部3a2は、取付孔2の中心位置を挟んで、切り取り部3a1に対向する位置に設けられる。
【0031】
本実施形態では、射出成形時に、取付孔2の側へ流れ込んできた樹脂材が、取付孔2を隔てて一方側20と他方側30、および、切り取り部3a1を介して不要部3の側、の三方へ分流する。そして、一方側20と他方側30に流れた樹脂材は、取付孔2を挟んで反対側の合流位置(以下、単に合流位置とも呼ぶ)で合流する。一方、切り取り部3a1を介して不要部3の側へ流れた樹脂材(以下、第三の樹脂材とも呼ぶ)は、切り取り部3a2を介して再びバンパーの形状部分の側へ流れ込み、上記合流位置に合流する。
【0032】
本実施形態では、一方側20と他方側30の樹脂材が衝突する位置において、衝突する方向と交差する方向から、不要部3の側を介して第三の樹脂材が流入する。これにより、一方側20と他方側30の樹脂材が衝突する方向と交差する方向へ樹脂材を押し出す形になり、合流位置においてウェルドラインの形成を抑制したり、その形成方向を変化させることができる。なお、本実施形態では、一方側20と他方側30の樹脂材が衝突するタイミングで、第三の樹脂材が合流する必要がある。このタイミングは、前述の実施形態と同様、切り取り部3a1、3a2の厚みや幅、および、不要部3の体積を変更することによって調整することができる。
【0033】
また、第三の樹脂材は、一方側から流入して合流位置で合流する構成であってもよい。つまり、
図6に示すように、不要部3は、一方側20に切り取り部3a1を、一方側20と他方側30の合流位置付近に切り取り部3a2を有する。本実施形態では、一方側20の樹脂材の一部が切り取り部3a1の側へ分流して不要部3の側へ流れ込む。そして、分流した樹脂材は、切り取り部3a2を介して再びバンパーの形状部分の側へ流れ込み、上記合流位置に合流する。
【0034】
本実施形態では、
図3で示した実施形態と同様に、一方側20の樹脂材が途中で分流することにより、一方側20の樹脂材の圧力が他方側30の樹脂材の圧力よりも小さくなる。従って、合流位置において、他方側30の樹脂材が一方側20の樹脂材を押し込む形になる。また、一方側20で分流して不要部3の側へ流れた樹脂材が、再び合流位置で合流することにより、
図6で示した実施形態のように、一方側20と他方側30の樹脂材が衝突する方向と交差する方向へ樹脂材を押し出す効果も得ることができる。
【0035】
図7に示す実施形態の構成では、不要部3に相当する位置に、樹脂材の射出ゲート4が設けられる。そして、不要部3には切り取り部3aが1箇所に設けられており、切り取り部3aは、取付孔2を隔てて一方側20と他方側30から流れてきた樹脂材の合流位置に対向する位置、あるいはその近傍に設けられる。
【0036】
本実施形態では、一方側20と他方側30の樹脂材の合流位置において、不要部3の側から第三の樹脂材が流入する。従って、合流位置において、一方側20と他方側30の樹脂材が衝突する方向と交差する方向へ樹脂材を押し流すことができ、ウェルドラインの形成を抑制したり、その形成方向を変化させることができる。特に本実施形態では、不要部3に相当する位置に射出ゲート4を設けることにより、積極的に合流位置の側へ樹脂材を流すことができる。また、射出ゲート4付近から流し込まれた樹脂材は、より遠方の射出ゲートから射出されて、取付孔2の周囲を回り込んできた一方側20と他方側30の樹脂材よりも高圧である。従って、合流位置において、一方側20と他方側30の樹脂材をより強く押し流すことができ、ウェルドラインの形成をより効果的に抑制することができる。また、射出ゲート4からの樹脂材の射出のタイミングを任意に調整することができるため、一方側20と他方側30の樹脂材が合流するタイミングで、第三の樹脂材を流し込むことも容易である。
【0037】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0038】
以上の説明では、孔部を有するワークの一例として、取付孔を有するバンパーを示したが、これに限らず、孔部を有するワークを射出成形する際には、本発明の製造方法を適用可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 バンパー(ワーク)
1a 中間成形品
2 取付孔(孔部)
3 不要部
3a1、3a2 切り取り部
4 射出ゲート