(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2に記載のガラス繊維織物を硬化性樹脂板の内部に配置した透明不燃性シートは、ガラス繊維織物に硬化性樹脂をガラス繊維織物に含浸させる工程を経て製造される。このようにして得られた従来の透明不燃シートは、製造工程において上述の工程を必須とするため、工程が複雑であり、製造コストがかかるという課題があった。
【0006】
また、特許文献1及び2に開示されたような透明不燃性シートは、透明性と不燃性とを備え、機械的強度が高いという利点を備えているものの、柔軟性に乏しく、シートをロール状に巻き取ることが困難であり、供給の形態が限定される。さらに、シートが硬いため、加工の際の裁断時に何度も切り込みを入れる必要があり、作業性が悪いという課題があった。
【0007】
本発明は、上記の従来技術の課題を解決するためになされたものであり、容易に製造でき、柔軟性及び裁断性に優れた不燃性シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、所定の熱可塑性樹脂フィルムに所定の接着層を形成し、所定のガラスクロスとラミネートすることにより、従来品と同等の不燃性シートを製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、ガラスクロスの両面に接着層を介して熱可塑性樹脂層を積層してなる不燃性シートであって、前記ガラスクロス中のガラス繊維の番手が3〜20tex、経糸と緯糸の密度合計が80本/25mm〜190本/25mmであり、前記接着層が、ポリ塩化ビニル(PVC)ペーストレジンと、少なくとも1種の分子量が380以下の可塑剤とを含み、前記接着層の総質量に対する前記可塑剤の含有率が30〜80質量%であり、かつ、全光線透過率が75%以上とすることを特徴とする。
【0009】
本発明の不燃性シートは、前記可塑剤と前記ガラスクロス及び前記熱可塑性樹脂層を構成する樹脂組成物との屈折率の差が0.06以下であることが好ましい。
【0010】
また、本発明の不燃性シートは、前記可塑剤がフタル酸エステル系可塑剤を主成分とするとすることが好ましい。
【0011】
また、本発明の不燃性シートは、熱可塑性樹脂層が塩化ビニル系樹脂と可塑剤とを含む樹脂組成物で構成され、前記熱可塑性樹脂層の総質量に対する可塑剤の含有率が50質量%以下であることが好ましい。
【0012】
また、本発明の不燃性シートは、前記熱可塑性樹脂層の接着層側の表面粗さRaが0.5〜15.0μmであることが好ましい。
【0013】
また、本発明の不燃性シートは、前記熱可塑性樹脂層の厚みが0.05〜0.20mmであることが好ましい。
【0014】
また本発明の不燃性シートは、前記接着層の塗工量が10.0〜60.0g/m
2であることが好ましい。
【0015】
また、本発明の不燃性シートは、シート全体の厚みが0.45mm以下であることが好ましい。
【0016】
また本発明の不燃性シートは、防煙垂壁、遮煙スクリーン、防煙間仕切壁、及び防煙カーテンのいずれかに用いられることが好ましい。
【0017】
また、本発明の不燃性シートは、防煙垂壁、防煙スクリーン又は防煙カーテンに用いられること好ましい。
【0018】
また、本発明の不燃性シートは、熱可塑性樹脂層の片面に接着層を形成する工程1と、前記工程1で得られた接着層を形成した熱可塑性樹脂層の接着層上にガラスクロスを積層し、該ガラスクロスと前記熱可塑性樹脂層とを接着層を介してラミネートする工程2と、を有する製造方法で得られる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の不燃性シートによれば、製造が容易で低コストであり、透明性、不燃性、柔軟性及び裁断性に優れた透明不燃性シートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、ガラスクロスの両面に接着層を介して熱可塑性樹脂層を積層してなる不燃性シートであって、前記ガラスクロス中のガラス繊維の番手が3〜20tex、経糸と緯糸の密度合計が80本/25mm〜190本/25mmであり、前記接着層が、ポリ塩化ビニル(PVC)ペーストレジンと、少なくとも1種の分子量が380以下の可塑剤とを含み、前記接着層の総質量に対する前記可塑剤の含有率が30〜80質量%であり、かつ、全光線透過率が75%以上であることを特徴とする。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0022】
本発明の不燃性シート1は、例えば
図1に示されるように、ガラスクロス2の両面上に熱可塑性樹脂組成物の接着層3と、接着層3のガラスクロス2とは反対側の面上に設けられた熱可塑性樹脂層4とを備える。
【0023】
(ガラスクロス)
本発明で使用されるガラスクロス2は、ガラス繊維織物で構成されている。ガラス繊維織物としては、例えば、経糸と緯糸のガラス繊維で織成したもの、複数の一方向のガラス繊維を互いにガラス繊維が交差する方向に配置したもの、ガラス繊維直交積層ネットなどが挙げられる。これらの中でも、ガラス繊維の経糸と緯糸とで織成したものが好ましい。織成による織組織としては、例えば、平織、朱子織、綾織、斜子織、畦織などが挙げられる。織成による織組織としては、特に制限されないが、どの方向にも均一な引っ張り強さが得られるという点で平織が好ましい。
【0024】
また、ガラス繊維織物中のガラス繊維としては、汎用の無アルカリガラス繊維(Eガラス)、耐酸性の含アルカリガラス繊維(Cガラス)、高強度・高弾性率ガラス繊維(Sガラス、Tガラス等)、耐アルカリ性ガラス繊維(ARガラス)等が挙げられる。中でも汎用性の高い無アルカリガラス繊維の使用が好ましい。ガラスクロス2を構成するガラス繊維は、1種類のガラス材料からなるものであってもよいし、異なるガラス材料からなるガラス繊維を2種類以上組み合わせたものであってもよい。
【0025】
ガラス繊維織物は、一種類のガラス繊維で織られていてもよいし、2種類以上のガラス繊維で織られていてもよい。例えば、経糸と緯糸は別個のガラス繊維であってもよい。2種類以上のガラス繊維で織られている場合には、ガラス繊維番手は、それぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、ガラス繊維の組成が同じであり、ガラス繊維の直径及び番手が異なっていてもよい。
【0026】
本発明のガラスクロス2は、密着性能と透明性確保を目的として、ガラス繊維に開繊処理、ヒート処理、及びシランカップリング剤処理が施されている。開繊処理では、糸の扁平化、経糸と緯糸の編目を広げて樹脂を含浸しやすくする効果が期待できる。
【0027】
ガラス繊維織物におけるガラス繊維の密度は、経糸と緯糸密度合計が80本/25mm以上であり、90本/25mm以上が好ましく、95本/25mm以上であることが好ましい。ガラス繊維の密度は、高ければ高いほど不燃性が上がる反面、透明性が低下してしまう。そこで、密度の上限は190本/25mm以下が好ましく、180本/25mm以下であることがさらに好ましい。
【0028】
また、ガラス繊維の太さ(tex番手)は、3tex以上、好ましくは4tex以上、さらに好ましくは5tex以上であり、また上限は20tex以下、好ましくは15tex以下、さらに好ましくは12tex以下である。ガラス繊維の番手は、1種類単独であってもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。なお、ガラス繊維のtex番手は、1000m当たりのグラム数に相当する。
【0029】
ガラス繊維織物中の隣接する経糸の間の隙間が0.5mm以下であることが好ましく、0.3mm以下であることが更に好ましい。また、ガラス繊維織物中の隣接する緯糸の間の隙間が0.5mm以下であることが好ましく、0.3mm以下であることが更に好ましい。ガラス繊維織物の経糸又は緯糸の隙間が狭い場合には、炎がガラス繊維織物を通過し難くなる場合があるため、経糸及び緯糸の隙間は上記範囲が好ましい。
【0030】
ガラスクロス2の厚さは、特に制限されないが、通常は0.3mm以下であることが好ましい。ガラスクロス2の厚さが厚いほど、不燃性シート1の引裂き強度や剛性などの機械的強度が高くなり、不燃性を高められるが、一方で、ガラスクロス2が薄いほど、接着層3がガラス繊維織物に含浸しやすくなり、ガラス繊維間に含まれる気泡を容易に外部へ放出しやすくなり、不燃性シート1の透明性をより高めることができる。これらの観点から、不燃性シート1におけるガラスクロス2の厚さとしては、好ましくは0.06mm以下、より好ましくは0.04mm以下、さらに好ましくは0.03mm以下が挙げられる。特に、ガラスクロス2の厚さが0.03mm以下であると、不燃性シート1の柔軟性をより高めることができるため、例えば不燃性シート1を遮煙シートなどに用いた場合に、繰出し部へ容易に巻取ることができ、加工の際に用意に裁断できる。なお、ガラス繊維織物2の厚さの下限値としては、例えば0.01mm程度とすることができる。
【0031】
ガラスクロス2の表面には、シランカップリング剤処理を施すことが好ましい。シランカップリング剤処理としては、アミノシラン系のシランカップリング剤を用いた処理などが挙げられる。この処理により接着層を構成する熱可塑性樹脂組成物のガラスクロスへの含浸性を向上させることができる。なお、シランカップリング剤は、各ガラス繊維の表面に付着するので、ガラスクロス2の光透過特性や通気度等には実質上影響するものではない。
【0032】
ガラスクロス2を構成するガラス繊維の屈折率としては、特に制限されないが、透明性を向上させる観点からは、接着層である熱可塑性樹脂組成物の屈折率と近接させることが好ましい。具体的は、ガラスクロス2を構成するガラス繊維の屈折率は、1.40〜1.70程度、より好ましくは1.50〜1.60程度が挙げられる。
【0033】
(接着層)
本発明の不燃性シート1で用いられる接着層3は、ポリ塩化ビニル(PVC)ペーストレジンと、少なくとも1種の分子量が380以下の可塑剤とを含む熱可塑性樹脂組成物で構成されている。接着層3の材質は、特に限定することなく熱可塑性樹脂4とガラスクロス2を接着することができるものであれば使用することができるが、ポリ塩化ビニル(PVCペーストレジンを可塑剤に分散させたPVCペーストゾルを使用することが好ましい。
PVCペーストゾルは加熱することでPVC粒子への可塑剤吸収が進行しゾル状態からゲル状態へと変化する。更に加熱を続けると溶融が進行し、良好な接着層を形成することができる。
【0034】
また、本発明の不燃性シート1の接着層3で使用される少なくとも1種の分子量380以下の可塑剤としては、分子量が380以下であれば特に制限されない。例えば、フタル酸ブチルベンジル(BBP)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジメチル(DMP)、フタル酸ジエチル(DEP)などのフタル酸エステル化合物;フタル酸ジアリル(DAP)、イソフタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリルなどのフタル酸ジアリルエステル化合物;アジピン酸ジオクチル(DOA)などのアジピン酸エステル化合物、安息香酸グリコールエステル(DEDB)などの安息香酸エステル化合物、リン酸トリクレジル(TCP)、リン酸トリフェニル(TPP)、リン酸クレジルジフェニル(CDP)などのリン酸エステル化合物などが挙げられる。これらの可塑剤は1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0035】
接着層3で使用される分子量380以下の可塑剤と、ガラスクロス2や熱可塑性樹脂層4を構成する樹脂組成物との屈折率差は0.06以下であり、好ましくは0.05以下であり、さらに好ましくは0.03以下とすることが望ましい。このために、当該可塑剤の屈折率は、1.44〜1.66、好ましくは1.45〜1.65、さらに好ましくは1.47〜1.63とすることが望ましい。当該可塑剤の屈折率が上記範囲であれば、透明性を向上させることができる。
【0036】
接着層3の屈折率をガラスクロス2を構成するガラス繊維の屈折率及び熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂の屈折率に近づける目的で、分子量380以下の可塑剤としては、フタル酸ブチルベンジル(BBP)を用いることが好ましい。
【0037】
接着層3で使用される可塑剤は、分子量380以下の可塑剤以外に分子量が380より大きい可塑剤を含んでいてもよい。例えば、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、リン酸トリス(TXP)、レゾルシノールビスジフェニルホスフェート(RDP)、ビスフェノールAビスジフェニルホスフェート(BDP)、などが挙げられる。これらの可塑剤は1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0038】
接着層3を構成する熱可塑性樹脂組成物中に含まれるすべての可塑剤の含有量は特に制限されないが、接着層を構成する樹脂組成物の総量に対して、好ましくは30質量%以上、好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上であり、上限は80質量%以下、好ましくは70質量%以下である。接着層3に含まれる可塑剤の含有量が上記範囲であれば、接着層3を構成する熱可塑性樹脂組成物をゾルの状態として、ガラス繊維織物に容易に含浸させることができる。
【0039】
接着層3にはその他、本発明の効果を損なわない範囲で他の合成樹脂や必要に応じて安定化剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、酸化防止剤、スリップ剤、着色剤、充填剤、核剤、難燃材、抗菌剤、屈折率調整剤などを添加しても良い。
【0040】
接着層3の塗工量は10.0g/m
2以上、好ましくは20g/m
2以上、さらに好ましくは30g/m
2以上であり、60g/m
2以下、好ましくは50g/m
2以下、さらに好ましくは40g/m
2以下である。接着層3の塗工量が上記範囲内であれば、接着層がガラスクロスへ含浸され、かつ余剰分が溢れることを防ぐため好ましい。
【0041】
(熱可塑性樹脂層)
本発明の不燃性シート1の熱可塑性樹脂層4で用いる熱可塑性樹脂としては、接着層3を構成する熱可塑性樹脂組成物とガラスクロス2のガラス繊維の屈折率と近似させることができるものであれば、特に限定されない。好ましい熱可塑性樹脂としては、例えばポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリアリレート樹脂等が挙げられる。例えば、ガラス繊維織物を構成するガラス繊維として無アルカリガラス繊維を用いた場合、屈折率の観点からは、これらの中でもポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂が好ましく、ポリ塩化ビニル樹脂がより好ましい。熱可塑性樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、用いるガラス繊維の屈折率に近似させることなどを目的として、屈折率の異なる2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0042】
熱可塑性樹脂層4は、柔軟性付与のため、可塑剤を含んでいてもよい。熱可塑性樹脂層4で用いられる可塑剤は、特に限定されない。例えば、フタル酸エステル化合物、アジピン酸エステル化合物、トリメット酸エステル化合物、アジピン酸ポリエステル化合物、フタル酸ポリエステル化合物、テレフタル酸エステル化合物、リン酸エステル化合物などが挙げられるが、汎用性や耐寒性の点からアジピン酸ジイソノニル(DINA)が好ましい。
【0043】
熱可塑性樹脂層4に含まれる可塑剤は、使用する熱可塑性樹脂の特性を損なわない範囲で使用することができ、好ましくは熱可塑性樹脂層4の総量に対し、50質量%以下であり、不燃性シートのブロッキングを防止する観点からは35質量%以下であることが好ましい。
【0044】
また、熱可塑性樹脂層4には、本発明の効果を損なわない程度に可塑剤以外に、例えば、難燃剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、充填剤、帯電防止剤、着色剤、抗菌剤、安定剤、スリップ剤などの添加物がさらに含まれていてもよい。
【0045】
熱可塑性樹脂層4は、ガラスクロスとの接着性向上、接着層の熱可塑性樹脂組成物をガラスクロスに浸透させる目的で、接着層側の表面にエンボス加工を施すことが好ましい。具体的には熱可塑性樹脂層の接着層側の表面粗さRaを0.5μm以上、好ましくは 1.0μm以上、さらに好ましくは3.0μm以上であり、かつ、15.0μm以下、好ましくは12.0μm以下、さらに好ましくは10.0μm以下とすることが望ましい。
【0046】
熱可塑性樹脂層4の厚さは、特に制限されないが、透明性及び不燃性を維持する観点からは、0.05〜0.20mm程度、好ましくは0.08〜0.15mmである。熱可塑性樹脂層4が厚すぎると不燃性が低下し、一方で、薄すぎるとシワが入りやすく、また、ガラスクロスの凹凸形状が不燃性シートの表面に現れやすいという問題が生じる。
【0047】
(不燃性シート)
本発明の不燃性シート1全体の厚さとしては、特に制限されないが、透明性、柔軟性及び裁断性を維持する観点からは、0.45mm以下、好ましくは0.40mm以下、さらに好ましくは0.35mm以下である。
【0048】
本発明の不燃性シート1は、一部が透明であればよく、波長400nm〜700nmにおける全光線透過率の平均値が75%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上である。さらに透明性を向上させるためにはガラス繊維織物を構成するガラス繊維の屈折率と、熱可塑性樹脂組成物の接着層の屈折率との差が0.06以下であることが好ましい。
また、印刷や彩色によって一部が不透明であってもよい。また、ヘアライン処理、エンボス処理、ハードコート処理、防汚処理、帯電防止処理、遮熱処理等各種表面処理などを施してもよい。
【0049】
本発明の不燃性シート1の不燃性は、接着層3や熱可塑性樹脂層4の組成によっても異なるが、所望の不燃性及び透明性が得られるように、ガラスクロス2の厚さや織密度、接着層3の組成、熱可塑性樹脂層4の厚さなどを設定することができる。
【0050】
本発明の不燃性シート1には、シート表面に50kw/m
2の輻射熱を照射する発熱性試験で、加熱開始20分間の総発熱量が8MJ/m
2以下であり、且つ、加熱開始20分間に最高発熱速度が10秒以上継続して200kw/m
2未満の不燃性を付与し得る。このような不燃性を有する透明不燃性シートは、建築基準法等に規定する不燃材料としての認定を受けることができるため好ましい。
【0051】
本発明の不燃性シート1は、防煙垂壁、遮煙スクリーン、または防煙間仕切壁や防煙カーテン、倉庫・工場などの間仕切りに用いるシート、透明ブラインドなどとして使用することができる。本発明の不燃性シート1は、防煙垂壁、遮煙スクリーン、防煙間仕切壁又は防煙カーテンに好適に用いられる。
【0052】
本発明の不燃性シート1の製造方法は、熱可塑性樹脂層4の片面に接着層3を形成する工程1と、前記工程1で得られた接着層3を形成した熱可塑性樹脂層4の接着層3上にガラスクロス2を積層し、該ガラスクロス2と前記接着層3と前記熱可塑性樹脂層4とをラミネートする工程2と、を有することが好ましい。
具体例を示すと、熱可塑性樹脂層4としての熱可塑性樹脂フィルムの片面に、ポリ塩化ビニル(PVC)ペーストレジンと少なくとも1種の分子量380以下の可塑剤とを含むゾル状の樹脂組成物を塗布して接着層3を形成し(工程1)、ガラスクロス2の両面に接着層3が形成された熱可塑性樹脂層4の接着層3を積層し(工程2−1)、次いで、ガラスクロス2の両面に1対の熱可塑性樹脂層4,4を接着層3を介して加熱圧着して貼り合わせる(工程2−2)ことで不燃性シート1が得られる。
【0053】
また、貼り合わせる際の熱と圧力を利用することで、接着層3をガラスクロス2に含浸・ゲル状に固化させることができるため、別工程で熱エネルギーや光エネルギーの付与をして硬化させる必要がなく、電力コストを抑制することができる。また、ガラスクロス2に含まれる気泡を加熱と加圧により外部へ放出・除去できる。
【0054】
従来のガラス繊維織物を硬化性樹脂板の内部に配置した透明不燃性シートは、ポリエチレンテレフタレート製フィルムなどのプロセスフィルムの片方の面に硬化性樹脂を塗布し、形成された硬化性樹脂層上にガラス繊維織物を重ね、さらにこのガラス繊維織物の上に新たなプロセスフィルムを重ね、加圧して硬化性樹脂層の硬化性樹脂をガラス繊維織物に含浸させる。次いで硬化性樹脂を熱や光などにより硬化させた後、両面のプロセスフィルムを剥離し、その後、例えば難燃性の塩化ビニル樹脂から構成された補強シートを両面にウレタン系接着剤を用いて貼り付けるという方法で製造されていた。
【0055】
従来の製法で得られた透明不燃シートは、工程数が多く、プロセスフィルムを用いていたため、剥離したプロセスフィルムの処分が必要であった。そのため、従来の製法では製造コストと廃棄コストがかかるという問題があった。また、従来の製法では、熱エネルギーや光エネルギーを付与して硬化させる必要があったため電力コストがかかるという問題もあった。
【0056】
本発明においては、ガラスクロス2、接着層3、及び熱可塑性樹脂層4を上述した工程1と工程2を経て製造することができるため、プロセスフィルムを用いる必要がなく、製造コスト、及び、廃棄コストを抑制した透明不燃性シートを簡便に製造することができる。
【実施例】
【0057】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。
【0058】
<各層を構成する材料>
1.
熱可塑性樹脂層
[熱可塑性樹脂]:ポリ塩化ビニル樹脂(ZEST−1300Z;新第一塩ビ社製)
[可塑剤1]:ジイソノニルアジペート(DINA;ジェイプラス社製)
[難燃剤]:リン酸エステル(レオフォス−65;味の素ファインテクノ社製)
[安定剤]:Ba−Zn系安定剤 (ADEKA社製)
[紫外線吸収剤]:ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(キマソープ81;BASFジャパン社製)
[顔料]:MP MKV 073 ブルー(大日精化工業社製)
【0059】
2.
接着層で使用される材料
[ポリ塩化ビニル(PVC)ペーストレジン]:PSH−161(カネカ社製)
[可塑剤2]:ブチルベンジルフタレート(BBP)(フェロ・ジャパン社製)
[可塑剤3]:ジオクチルフタレート(DOP)(ジェイプラス社製)
[硬化性樹脂]:ビニルエステル樹脂(日本ユピカ社製)
[安定剤]:Ba−Zn系安定剤 (ADEKA社製)
【0060】
3.
ガラスクロス
1067(アリサワファイバーグラス社製)
1080(アリサワファイバーグラス社製)
2116(ユニチカ社製)
【0061】
<実施例>
[熱可塑性樹脂製フィルムの作製]
(フィルムA)
ポリ塩化ビニル樹脂を65.6質量%、可塑剤1を13.8質量%、安定剤を2.62質量%、紫外線吸収剤を0.66質量%、難燃剤を17.1質量%、帯電防止剤を0.07質量%、スリップ剤を0.03質量%、顔料を0.12質量%それぞれ添加し、ヘンシェルミキサー機を使用して混合し、カレンダー成形機にてポリ塩化ビニル樹脂フィルムAを作製した。
(フィルムB)
ポリ塩化ビニル樹脂を58.5質量%、可塑剤1を4.69質量%、安定剤を2.35質量%、紫外線吸収剤を0.24質量%、難燃剤を33.9質量%、帯電防止剤を0.07質量%、スリップ剤を0.13質量%、顔料を0.12質量%、それぞれ添加し、ヘンシェルミキサー機を使用して混合し、カレンダー成形機にてポリ塩化ビニル樹脂フィルムBを作製した。
【0062】
[接着層の塗工]
ポリ塩化ビニル(PVC)ペーストレジンと可塑剤2又は可塑剤2及び3とを表1に示す割合で配合する共に、Ba−Zn系安定剤を1質量%添加し、混合して接着層用の樹脂組成物を作製し、これを用いて接着層を形成した。
比較例2は、ポリ塩化ビニル(PVC)ペーストレジンと可塑剤2及び3を含まず、ビニルエステル樹脂(硬化性樹脂)を用いた樹脂組成物を接着層用の樹脂組成物として用いた。
【0063】
[透明不燃シートの作製]
上記フィルムA及びフィルムBに、表1に示す接着層を構成する樹脂組成物を塗布し、ガラス繊維織物の両面に接着層とフィルムA又はフィルムBを配した積層体を作製した。その後、160℃に設定した金属ロールとゴムロールでニップしてフィルムA又はフィルムBと接着層とガラス繊維織物を加熱圧着させて透明不燃シートを作製した。
得られた透明不燃シートについて下記の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0064】
<不燃性の評価>
作製した透明不燃性シートの表面に、輻射電気ヒータで50kw/m
2の輻射熱を照射し、加熱開始後20分間の総発熱量と、加熱開始後20分間に発熱量が200kw/m
2を超えた時間を測定した。そして総発熱量が8MJ/m
2以下であり、200kw/m
2を越えた時間が継続して10秒を超えない場合に、不燃性の評価を「〇」とし、超えた場合に「×」とした。
【0065】
<透明性の評価>
作製した透明不燃シートの全光線透過率(波長400〜700nmの平均値)を、日立製作所(株)製の分光光度計UV−3500を用いて測定した。全光線透過率の値が90%以上の場合に透明性の評価を「◎」とし、80%以上、90%未満の場合に「〇」、60%以上、80%未満の場合に「△」、60%未満の場合に「×」とした。
【0066】
<ブロッキング性の評価>
作製した透明不燃シートを10cm四方の大きさに2枚カットし、この2枚を重ね合せた状態で、3mm厚さ、10cm四方のステンレス板に挟んで試験片とした。この試験片に100cm
2あたり20kgの荷重をかけて、50℃恒温室中で24時間放置した後に、重ね合せた不燃シートを剥離し、ブロッキングの状態を評価した。抵抗なくシートを剥離できる場合に「◎」、抵抗があるが何とか剥離できる場合に「○」、抵抗が強く剥離できない場合に「×」とした。
【0067】
<柔軟性の評価>
JIS L 1096A法(45°カンチレバー法)により、作製した透明不燃シートの柔軟性を評価した。45°の斜面をもつ、なめらかな水平台の上に試験片を置き、試験片の一端を斜面との境界に合わせ、金属板で試験片をおさえて静かにすべらせ、試験片の先端中央が斜面に接したときの目盛りを読み取った。目盛りが40mm以下の場合に「◎」、40mmより大きく60mm以下の場合に「○」、60mmより大きく80mm以下の場合に「△」、80mmより大きい場合に「×」とした。
【0068】
【表1】
【0069】
表1に示すように、本発明で規定する範囲のガラスクロス、接着層を構成する樹脂組成物を用いれば、透明性、柔軟性、ブロッキング性及び不燃性を兼ね備えた低コストの不燃性シートを容易な製造方法で作製することができる(実施例1〜5)。これに対し、接着層を構成する樹脂組成物が分子量380以下の可塑剤を含まない場合と、本発明で規定する範囲外のガラスクロスを使用しない場合には、透明性が劣る不燃性シートとなった(比較例1及び3)。また、接着層がポリ塩化ビニル(PVC)ペーストレジンではない場合には、柔軟性に劣り、製造コストが上がる結果となった(比較例2)。