(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6930877
(24)【登録日】2021年8月16日
(45)【発行日】2021年9月1日
(54)【発明の名称】綾巻きパッケージを製造する繊維機械の作業ユニット用の糸スプライシング装置
(51)【国際特許分類】
B65H 69/06 20060101AFI20210823BHJP
【FI】
B65H69/06
【請求項の数】8
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-161173(P2017-161173)
(22)【出願日】2017年8月24日
(65)【公開番号】特開2018-30722(P2018-30722A)
(43)【公開日】2018年3月1日
【審査請求日】2020年6月9日
(31)【優先権主張番号】10 2016 115 732.5
(32)【優先日】2016年8月24日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513209338
【氏名又は名称】ザウラー ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Saurer Germany GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ズィークフリート シャットン
【審査官】
國武 史帆
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−174764(JP,A)
【文献】
特表2008−516869(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 69/00 − 69/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
綾巻きパッケージを製造する繊維機械(1)の作業ユニット(2)のための糸スプライシング装置(10)であって、空気分配体(18)を有していて、該空気分配体(18)は、圧縮空気管路(26,27)用の接続孔(19,23)、保持兼解撚管(17)用の収容孔(30)およびスプライシング角柱体(34)を備えており、該スプライシング角柱体(34)は、圧縮空気を供給可能なスプライシング通路(47)を有しており、前記スプライシング角柱体(34)に対して間隔をおいて、特に糸切断装置(36A,36B)、糸クランプ装置(37A,37B)および糸寄せ器(38)のような糸ハンドリング装置が、配置されており、該糸ハンドリング装置は駆動装置を介して駆動制御可能である、糸スプライシング装置(10)において、
前記空気分配体(18)の外周部に、それぞれ個別駆動装置(39,40)によって確定されて駆動可能でかつ該空気分配体(18)の周方向に回転可能に支持された少なくとも2つの環状の制御エレメント(41,42)が同心的に配置されており、該制御エレメント(41,42)を用いて、特に前記糸切断装置(36A,36B)、前記糸クランプ装置(37A,37B)および/または前記糸寄せ器(38)のような前記糸ハンドリング装置は、必要に応じて駆動制御可能であることを特徴とする、綾巻きパッケージを製造する繊維機械(1)の作業ユニット(2)のための糸スプライシング装置(10)。
【請求項2】
前記制御エレメント(41,42)はそれぞれ歯列(51,52)を有しており、該歯列(51,52)は、ステップモータとして形成された前記個別駆動装置(39,40)のピニオン(45)と噛み合っている、請求項1記載の糸スプライシング装置(10)。
【請求項3】
第1の制御エレメント(41)が、確定されて対応配置された前記糸ハンドリング装置を作動させる第1および第2の切換え突子(43,44)を有しており、このとき特に前記第1の切換え突子(43)は、前記糸切断装置(36A,36B)を作動させるために、かつ前記第2の切換え突子(44)は、前記糸クランプ装置(37A,37B)を作動させるために配置されかつ構成されている、請求項1または2記載の糸スプライシング装置(10)。
【請求項4】
前記第1の制御エレメント(41)は、前記スプライシング角柱体(34)をスプライシング工程中に閉鎖するカバーエレメントを作動させる切換え突子を有している、請求項3記載の糸スプライシング装置(10)。
【請求項5】
第2の制御エレメント(42)に、前記糸寄せ器(38)が接続されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の糸スプライシング装置(10)。
【請求項6】
ステップモータとして形成された前記個別駆動装置(39,40)がそれぞれ、制御ライン(46A,46B)を介して前記作業ユニット(2)の作業ユニット計算機(29)に接続されていて、該作業ユニット計算機(29)によって確定されて駆動制御可能である、請求項1から5までのいずれか1項記載の糸スプライシング装置(10)。
【請求項7】
前記空気分配体(18)は、前記スプライシング角柱体(34)の前記スプライシング通路(47)内にスプライシング空気を供給する中央に配置された圧縮空気管路(26)と、前記保持兼解撚管(17)に空気を供給する圧縮空気供給管路(27)とに接続されており、かつ前記保持兼解撚管(17)用の収容孔(30)を有している、請求項1記載の糸スプライシング装置(10)。
【請求項8】
前記空気分配体(18)および前記制御エレメント(41,42)は、スリーブ形状の取付けエレメント(48)の内部に保護されて配置されており、該取付けエレメント(48)は、収容装置(50)を介して作業ユニットハウジング(33)に固定されている、請求項1記載の糸スプライシング装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、綾巻きパッケージを製造する繊維機械の作業ユニットのための糸スプライシング装置であって、空気分配体を有していて、該空気分配体は、圧縮空気管路用の接続孔、保持兼解撚管用の収容孔およびスプライシング角柱体を備えており、該スプライシング角柱体は、圧縮空気を供給可能なスプライシング通路を有しており、スプライシング角柱体に対して間隔をおいて、特に糸切断装置、糸クランプ装置および糸寄せ器のような糸ハンドリング装置が、配置されており、該糸ハンドリング装置は駆動装置を介して駆動制御可能である、糸スプライシング装置に関する。
【0002】
このような糸スプライシング装置は、公知のように、糸端部を空気力によって接合するために働き、つまりこのような糸スプライシング装置を用いて、本来の糸とほぼ同じ接合箇所が得られるように、2つの糸端部を空気力によって再び接合することができる。このような糸スプライシング装置は、特に、自動綾巻きワインダの作業ユニットにおいて使用され、通常、例えば糸切れ後またはコントロールされた糸クリアリング切断後のような巻取り工程中断後に使用される。
【0003】
このような糸スプライシング装置において得られた糸継ぎ部が、本来の糸とほぼ同じ外観およびほぼ同じ糸強度を有するようにするために、両方の糸端部はそれぞれ、これらの糸端部が空気力によってスプライシングされる前に、正確に所定長さに切断され、適正に準備され、かつ最終的に規定通りにスプライシング角柱体内に位置決めされねばならない。すなわち、このような糸スプライシング装置は、糸クランプ装置、糸切断装置および糸寄せ器を備えていて、さらに好ましくは空気を供給可能な保持兼解撚管および空気を供給可能なスプライシング角柱体を有している。
【0004】
このような糸スプライシング装置の使用は、特に、自動綾巻きワインダの運転との関連において、以前から公知であり、かつ様々な特許明細書において部分的に極めて詳しく記載されている。
【0005】
しかしながら公知の糸スプライシング装置は、特に、糸クランプ装置、糸切断装置、糸寄せ器またはスプライサカバーのような糸ハンドリング装置の駆動装置に関して、部分的に著しく異なっていることがある。
【0006】
例えば独国特許出願公開第10224080号明細書(DE 102 24 080 A1)および独国特許出願公開第10224081号明細書(DE 102 24 081 A1)に記載された糸スプライシング装置は、それぞれ圧縮空気を供給可能なスプライシング角柱体および同様に圧縮空気を供給可能な保持兼解撚管を有しており、このとき保持兼解撚管は、通常のように、スプライシング角柱体のスプライシング通路の出口に対して幾分間隔をおいてかつ側方にずらされて位置決めされている。
【0007】
それ自体良好であるとの評価を得ているこれらの公知の糸スプライシング装置では、糸スプライシング装置の種々様々な糸ハンドリングエレメントの駆動は、外部の駆動装置に連結されるカム板駆動装置を介して行われる。つまりスプライサの駆動装置ハウジング内には、カム板セットが取り付けられており、このカム板セットの個々のカム板は、それぞれレバーロッドを介して、糸スプライシング装置の上に述べた糸ハンドリングエレメントに接続されている。
【0008】
カム板セット自体は、差込みカップリングを介して、該当する作業ユニットの駆動装置に接続可能である。
【0009】
したがってこれらの公知の糸スプライシング装置では、糸ハンドリングエレメントの駆動は、作業ユニット固有の駆動装置によって行われ、単に糸寄せ器だけは、好ましくはステップモータとして形成された、駆動ユニット計算機に接続された固有の駆動装置を有している。
【0010】
同等の糸スプライシング装置は、独国特許出願公開第4420979号明細書(DE 44 20 979 A1)にも記載されている。この公知の糸スプライシング装置においても、制限されて回転可能に支持された糸寄せ器だけが固有の駆動装置に接続されており、これに対して糸スプライシング装置の他の糸ハンドリングエレメントは、本願の優先日時点において一般的であるように、作業ユニット固有の駆動装置に接続されている。
【0011】
しかしながら作業ユニット固有の駆動装置に接続された糸スプライシング装置には、その糸ハンドリングエレメントの運動実行に関してフレキシビリティが僅かしかないという重大な欠点がある。
【0012】
独国特許出願公開第19610818号明細書(DE 196 10 818 A1)に基づいて公知の糸スプライシング装置は、制限されて回転可能に支持された、スプライサの駆動ハウジング内に配置された制御ドラムを備えており、この制御ドラムは、接続された可逆回転可能なステップモータを用いて、確定されて回転可能である。
【0013】
制御ドラムは、種々様々に形成された複数の溝軌道を有しており、これらの溝軌道には、それぞれ切換え突子を有する切換えレバーを介して、糸スプライシング装置の糸ハンドリングエレメントが接続されている。
【0014】
すなわちこの公知の糸スプライシング装置では、糸ハンドリングエレメントの切換え機能は、溝軌道の形成によって設定されていて、ステップモータの相応の駆動制御によって、必要に応じて呼び出すことができる。
【0015】
しかしながら上記の糸スプライシング装置は、その構造上の構成が、かなり複雑であり、かつ何と言っても、その比較的高価な制御ドラムに基づいて、製造コストが極めて高い。
【0016】
欧州特許第1805094号明細書(EP 1 805 094 B1)に記載された別の糸スプライシング装置は、一方では糸ハンドリングエレメントの動作の正確な測定が可能であり、かつ他方では製造コストが、独国特許出願公開第19610818号明細書に基づいて公知の糸スプライシング装置の製造コストよりも明らかに安価であるように構成されている。
【0017】
欧州特許第1805094号明細書によって公知の糸スプライシング装置は、例えば制御エレメントを有しており、この制御エレメントは、旋回可能に支持されていて、外歯を備えており、この外歯は、確定されて駆動制御可能な個別駆動装置の駆動ピニオンと噛み合っている。制御エレメントは、レバーロッドを介して糸スプライシング装置の糸ハンドリングエレメントに結合されていて、これによって個別駆動装置の駆動モーメントはいつでも直接、糸ハンドリングエレメントに伝達可能である。
【0018】
すなわち公知の糸スプライシング装置では、糸ハンドリングエレメントの運動実行は、必要な場合に如何なる位置においても、例えば別の作業工程を実施するために、予め設定可能な時間、中断され、かつ次いで正確に続けられることができる。
【0019】
さらに独国特許出願公開第102015204469号明細書(DE 10 2015 204 469 A1)によって公知の糸スプライシング装置では、糸ハンドリングエレメントは個々に駆動制御可能な複数のステップモータによって駆動される。
【0020】
この公知の糸スプライシング装置においても、糸ハンドリングエレメントの運動実行は、必要な場合に正確に調節可能である。しかしながらこの公知の糸スプライシング装置には、その構造が幾分嵩張っているので、このような糸スプライシング装置の設置は、自動綾巻きワインダの作業ユニットにおける制限された提供空間を考慮するとしばしば極めて困難であるという欠点がある。
【0021】
上記の公知の糸スプライシング装置は、特に自動綾巻きワインダにおいて使用され、この自動綾巻きワインダの作業ユニットは、ほとんど開放された糸走路を有しており、つまりこのような自動綾巻きワインダでは、好ましくは紡績コップである繰出しボビンから引き出された糸は、収容パッケージへの途中において、保護装置によって覆われておらず、つまり自由に接近可能である。
【0022】
このような作業ユニットでは、巻取り中断後に、作業ユニットのパッケージフレームにおいて保持された巻取りパッケージ、好ましくは綾巻きパッケージの表面に巻き上げられているいわゆる上糸は、作業ユニット固有の吸込みノズルを用いて収容され、糸スプライシング装置に引き渡され、かつ糸スプライシング装置のスプライシング角柱体のスプライシング通路内に挿入される。
【0023】
このような作業ユニットではさらに、ほぼ同時に、いわゆるグリッパ管によって、下糸が、繰出し箇所に位置決めされた繰出しボビンから取り出され、同様にスプライシング角柱体のスプライシング通路内に挿入され、このスプライシング通路内において上糸と下糸とは、所定長さへの切断および準備の後で、空気力によって接合される。
【0024】
しかしながら自動綾巻きワインダとの関連において、作業ユニットが閉鎖された糸案内通路を有していることも公知である。
【0025】
独国特許出願公開第102010049515号明細書(DE 10 2010 049 515 A1)には、例えば綾巻きパッケージを製造する繊維機械の作業ユニットが記載されており、この作業ユニットは、糸走路を取り囲む複数部分から成る糸案内通路を有しており、この糸案内通路は、種々様々な糸監視装置および糸ハンドリング装置のための収容ハウジングもしくは収容部分を備えている。
【0026】
このとき完全に閉鎖された糸案内通路は、繰出し箇所に位置決めされた繰出しボビンと、巻取りパッケージが回転可能に支持されている巻取り装置との間において延びている。糸案内通路には、必要な場合に部分的に負圧を供給することができ、これによって糸案内通路内においては、確定して設定可能な流れ方向を有する負圧流が発生する。
【0027】
糸案内通路内には、糸スプライシング装置のための収容ハウジングが組み込まれており、この収容ハウジングには、繰出しボビンに接続された下糸を吸い込む第1の吸込み空気管片と、綾巻きパッケージの表面に巻き上げられた上糸を吸い込む第2の吸込み空気管片とが接続されている。
【0028】
しかしながら自動綾巻きワインダの作業ユニットの領域における極めて狭められたスペース状況を考慮すると、閉鎖された糸案内通路を備えた作業ユニットにおける糸スプライシング装置の使用は、開放した糸走路を有する作業ユニットにおけるよりもさらに困難になる。
【0029】
上記形式の糸スプライシング装置を出発点として、本発明の根底を成す課題は、規定通りに作動し、かつ所要空間が比較的僅かである糸スプライシング装置を開発すること、つまり作業ユニットの糸走路の構成とは無関係に、巻取り中断後に、上糸と下糸との規定通りの確実な接合を可能にする糸スプライシング装置を構成することである。
【0030】
この課題は本発明によれば、空気分配体を有していて、該空気分配体に、それぞれ個別駆動装置によって確定されて駆動可能でかつ回転可能に支持された少なくとも2つの制御エレメントが配置されており、該制御エレメントを用いて、特に糸切断装置、糸クランプ装置および/または糸寄せ器のような糸ハンドリング装置が、必要に応じて駆動制御可能である糸スプライシング装置によって、解決される。それぞれの糸ハンドリング装置は、好ましくは上糸および下糸を処理する各1つの装置を有している。そのために例えば糸切断装置は、上糸を切断する第1の糸切断装置と下糸を切断する第2の糸切断装置とを有していてよい。糸クランプ装置および糸寄せ器は、相応な形式で構成されていてよい。
【0031】
本発明の好適な構成は、従属請求項に記載されている。
【0032】
糸スプライシング装置の本発明に係る構成には、特に、回転可能に支持された装置として制御エレメントを構成および配置することによって、糸スプライシング装置の所要スペースは極めて制限されるという利点がある。すなわち、糸切断装置および糸クランプ装置もしくは糸寄せ器を駆動制御する、従来汎用の嵩張った駆動機構の代わりに、極めて空間を節約する装置が使用される。
【0033】
本発明のように構成された糸スプライシング装置は、このとき開放した糸走路を備えた作業ユニットにおいても、閉鎖された糸案内通路を有する作業ユニットにおいても、好適に使用することができる。
【0034】
好適な実施形態では、制御エレメントはそれぞれ歯列を有しており、該歯列は、ステップモータとして形成された個別駆動装置のピニオンと噛み合っている。
【0035】
このように形成された制御エレメントは、ステップモータによって正確に位置決めされることができ、その結果接続された装置をいつでも確実に駆動制御することができる。さらに使用される制御エレメントは、その構造が単純で、ひいては比較的安価に製造することができる。さらに使用される制御エレメントは、長い耐用寿命を有し、かつ汚れに対して比較的鈍感である。
【0036】
好ましくは、第1の制御エレメントが、確定されて対応配置された糸ハンドリング装置を作動させる第1および第2の切換え突子を有しており、このときさらに好ましくは、第1の切換え突子は、糸切断装置を作動させるために、かつ第2の切換え突子は、糸クランプ装置を作動させるために配置されかつ構成されていてよい。制御突子を用いて、糸切断装置もしくは糸クランプ装置は常に、後続のスプライシング工程のために準備すべき糸端部を、常に規定通りに固定しかつ規定通りに所定長さに切断するように駆動制御可能である。
【0037】
別のまたは択一的に好適な実施形態では、第1の制御エレメントは、スプライシング角柱体をスプライシング工程中に閉鎖するカバーエレメントを作動させる切換え突子を有している。
【0038】
スプライシング工程中におけるスプライシング角柱体のこのような閉鎖は、幾分重い特定の糸材料において、および/または僅かな糸太さにおいて有利であることが判明している。それというのは、設置されたカバーエレメントによって、スプライシング空気流がスプライシングすべき糸端部を上方に向かってスプライシング角柱体から外に吹き出すおそれが阻止されるからである。
【0039】
好ましくは、第2の制御エレメントに、糸寄せ器が接続されており、この糸寄せ器は、予め、糸切断装置および糸クランプ装置によって所定長さに切断されて保持兼解撚管内において処理された両方の糸端部が、規定通りスプライシング角柱体のスプライシング通路内に位置決めされるように働く。
【0040】
すなわち糸寄せ器は、両方の糸端部をスプライシング通路内に引き込み、両方の糸端部が逆向きの方向付けで、しかしながら互いに平行に並んで、かつ予め設定可能な重なりをもって、スプライシング通路内に位置し、空気力によってスプライシングされ得るようにする。
【0041】
別の好適な実施形態では、ステップモータはそれぞれ、制御ラインを介して作業ユニットの作業ユニット計算機に接続されていて、該作業ユニット計算機によって確定されて駆動制御可能である。すなわちステップモータを用いて、制御エレメントの回転運動はいつでも正確に予め設定可能であり、これによって糸ハンドリング装置は常に規定通りに作動する。
【0042】
別の好適な実施形態では、空気分配体は、スプライシング角柱体のスプライシング通路内にスプライシング空気を供給する中央に配置された圧縮空気管路と、保持兼解撚管に空気を供給する圧縮空気供給管路とに接続されており、かつ保持兼解撚管用の収容孔を有している。すなわち中央に配置された圧縮空気管路は、所属の接続孔を介してスプライシング角柱体のスプライシング通路に接続されており、これに対して圧縮空気供給管路は、接続孔を介して保持兼解撚管用のリング通路に接続されている。空気分配体内に配置された圧縮空気管路もしくは圧縮空気供給管路は、取付け状態において常に正確に、空気分配体の所属の接続孔に対応している。すなわち、課せられた要求にもはや相当しない糸スプライシング装置を、新しい糸スプライシング装置と交換することは、操作員にとって大きな手間ではない。
【0043】
好ましくは、空気分配体および制御エレメントは、スリーブ形状の取付けエレメントの内部に保護されて配置されており、該取付けエレメントは、収容装置を介して作業ユニットハウジングに固定されている。このような構成には特に、例えばうっかりとした機械的な接触のような外的な影響による制御エレメントの損傷を、十分に排除することができ、これによって糸スプライシング装置の整然とした作動を保証することができるという利点がある。
【0044】
次に図面に示した実施形態を参照しながら、本発明をさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】巻取り中断中における自動綾巻きワインダの作業ユニットであって、本発明のように構成された糸スプライシング装置を備えている作業ユニットを概略的に示す側面図である。
【
図2】本発明に係る糸スプライシング装置を部分的に断面して示す側面図である。
【
図3】
図2に示した糸スプライシング装置の平面図である。
【0046】
図1には、自動綾巻きワインダの実施形態において、綾巻きパッケージを製造する繊維機械1の作業ユニット2が概略的に側面図で示されている。
【0047】
公知のように、このような自動綾巻きワインダ1はその両端部フレーム(図示せず)の間に、互いに列をなして並んで配置された同一形式の多数の作業ユニット2を有している。
【0048】
これらの作業ユニット2において、例えば、製造プロセスにおいて前置されたリング精紡機(図示せず)において製造された紡績コップ9である繰出しボビンが、大きな体積の綾巻きパッケージ15に巻き返され、綾巻きパッケージ15はその完成後に、自動作動式のサービスアセンブリ(同様に図示せず)を用いて、機械長さの綾巻きパッケージ搬送装置21に引き渡される。
【0049】
このような自動綾巻きワインダ1は、通常さらに中央制御ユニット11を有しており、この中央制御ユニット11は、例えば機械バス16を介して、個々の作業ユニット2の作業ユニット計算機29に接続されている。
【0050】
実施形態において自動綾巻きワインダ1は、さらに、紡績コップ・空管搬送システム3として形成された機械固有の補給装置(Logistikeinrichtung)を備えており、この補給装置のうち、しかしながら
図1には単に、コップ供給区間4、可逆式に駆動可能な貯え区間5、巻取りユニット2に通じる横搬送区間6および巻管戻し区間7だけが示されている。
【0051】
このコップ・巻管搬送システム3において、搬送皿8上に鉛直に方向付けられて位置決めされた紡績コップ9もしくは空管は循環する。
【0052】
コップ供給区間4を介して供給されまずは貯え区間5において中間貯蔵されている紡績コップ9は、このとき、それぞれ横搬送区間6の領域において作業ユニット2の高さに位置している繰出し位置ASにおいて、大きな体積の綾巻きパッケージ15に巻き返される。
【0053】
個々の作業ユニット2は、そのために、自体公知のようにゆえに略示だけするが、この作業ユニット2の整然とした運転を保証する種々様々な装置を有している。
【0054】
これらの装置は例えば、吸込みノズル12、グリッパ管25および糸スプライシング装置10である。
【0055】
このとき旋回軸線13を中心にして制限されて回転可能に支持された吸込みノズル12によって、巻取り中断後に綾巻きパッケージ15の表面に巻き上げられた上糸31を収容し、糸スプライシング装置10に引き渡すことができる。
【0056】
旋回軸線20を中心にして制限されて回転可能なグリッパ管25は、巻取り中断時に紡績コップ9に接続された下糸32を取り扱うために、つまり同様に糸スプライシング装置10に引き渡すために使用される。
【0057】
糸スプライシング装置10は、相応の収容装置50を介して作業ユニットハウジング33に接続されており、かつ通常のように、正規の糸走路に対して幾分後退させられて配置されている。
【0058】
糸スプライシング装置10は、以下において
図2および
図3を参照しながら詳説するように、特に、上糸31の糸端部と下糸32の糸端部とを糸継ぎする空気力式に作動可能なスプライシング角柱体(Spleisspisma)34と、上糸31もしくは下糸32の糸端部を機械式に準備する保持兼解撚管17とを有している。
【0059】
さらに糸スプライシング装置10の領域には、糸クランプ装置37A,37B、糸切断装置36A,36Bおよび糸寄せ器38のような糸ハンドリング装置が配置されている。
【0060】
通常、このような作業ユニット2はさらに、糸テンショナ、接続された糸切断装置を備えた糸クリアラ、パラフィン塗布装置、糸張力センサおよび下糸センサのような、
図1には詳しく示されていない別の装置を備えている。
【0061】
綾巻きパッケージ15の巻成は、それぞれ巻取り装置24において行われ、この巻取り装置24は、特にパッケージフレーム28を有しており、このパッケージフレーム28は、旋回軸線22を中心に可動に支持されていて、かつ綾巻きパッケージ15の巻管を回転可能に保持する装置を有している。
【0062】
巻取りプロセス中にパッケージフレーム28において自由回転可能に保持された綾巻きパッケージ15は、その表面が例えばいわゆる糸ガイドドラム14に接触していて、この糸ガイドドラム14によって摩擦により連行される。
【0063】
このような糸ガイドドラム14は、糸ガイド溝を有しており、この糸ガイド溝内において、巻き上げられる糸は巻取りプロセス中に案内されて、互いに交差する巻き層を形成しながら巻取りパッケージに巻き上げられる。
【0064】
しかしながらこのような糸ガイドドラムは、かなり高価であり、しかも「ランダムワインディング(Wilde Wicklung)」という巻成形式での綾巻きパッケージの製造しか可能でないので、糸ガイドドラムの代わりに、比較的安価な、溝のないパッケージ駆動ローラを使用することができる。
【0065】
このような場合に、綾巻きパッケージは巻取りプロセス中に、パッケージ駆動ローラによって単に摩擦により回転させられ、つまり巻き上げられる糸の綾振りは、別体の糸綾振り装置を用いて行われる。
【0066】
例えばフィンガ糸ガイドを備えた、このような糸綾振り装置は、以前より、様々な実施形態において公知であり、例えば独国特許出願公開第102004025519号明細書(DE 10 2004 025 519 A1)、独国特許出願公開第19858548号明細書(DE 198 58 548 A1)および/または独国特許出願公開第19820464号明細書(DE 198 20 464 A1)に詳しく記載されている。
【0067】
図2には、本発明のように構成された糸スプライシング装置10が、部分的に断面されて側面図で示されており、この糸スプライシング装置10は、中央の構成部材として、空気分配体18を有しており、この空気分配体18は、圧縮空気管路26,27のための接続孔19,23と、保持兼解撚管17のための収容孔30とを備えている。
【0068】
空気分配体18は、スリーブ状に形成された取付けエレメント48の取付けプレート49に固定されていて、収容装置50を介して作業ユニット2の作業ユニットハウジング33に接続されている。
【0069】
中央に配置された接続孔23と所属の圧縮空気管路26とを介して、このとき必要な場合に、スプライシング空気をスプライシング角柱体34のスプライシング通路47内に吹き込むことができ、これに対して接続孔19および圧縮空気供給管路27を介して、収容孔30内に配置された保持兼解撚管17に空気が供給される。すなわち後続のスプライシングプロセスにおいて本来の糸とほぼ同じように糸継ぎされることが望まれている、保持兼解撚管17内に配置された糸端部は、圧縮空気供給管路27を介して圧縮空気の吹込みによってスプライシングプロセスのために整然と準備される。
【0070】
特に
図3から良く分かるように、糸スプライシング装置10の空気分配体18には、回転可能に支持された少なくとも2つの制御エレメント41,42が配置されており、これらの制御エレメント41,42はそれぞれ、個別駆動装置39;40によって確定されて駆動可能である。すなわち制御エレメント41,42はそれぞれ歯列51;52を有しており、これらの歯列は、所属の個別駆動装置39;40のモータ軸に配置されたピニオン45A,45Bと噛み合う。
【0071】
好ましくはステップモータとして形成された個別駆動装置39;40は、このときそれ自体それぞれ制御ライン46A,46Bを介して、該当する作業ユニット2の作業ユニット計算機29に接続されていて、この作業ユニット計算機29によって必要に応じて制御可能である。
【0072】
制御エレメント41はさらに、糸スプライシング装置10の領域に設置された糸ハンドリング装置(
図2においては図面を見易くするために図示せず)を作動させる切換え突子43,44を有している。
【0073】
制御エレメント42には糸寄せ器38が配置されている。
【0074】
第1の制御エレメント41は例えば、それぞれ1つの糸切断装置36A;36Bを接続されている2つの第1の切換え突子43を備えており、かつ2つの第2の切換え突子44を有していて、この両方の第2の切換え突子44を介してそれぞれ1つの接続された糸クランプ装置37A;37Bが作動可能である。
【0075】
任意選択的な実施形態では、すなわち、糸スプライシング装置10が、スプライシング角柱体をスプライシング工程中に閉鎖することができるカバーエレメントを有している場合に、第1の制御エレメント41は、さらに別の切換え突子を備えていてよい。
【0076】
この別の切換え突子(図示せず)によって、このスプライシング角柱体のカバーエレメントを、必要に応じて、スプライシング角柱体がスプライシング工程中に閉鎖されているように制御することができる。
【0077】
第2の制御エレメント42に接続された糸寄せ器38は、スプライシングプロセス中に保持兼解撚管17内において準備された糸端部が、糸寄せ器38のアームによって、必要に応じてスプライシング角柱体34のスプライシング通路47内において位置決め可能であるように、形成されかつ配置されている。
【0078】
図2に示されているように、空気分配体18および制御エレメント41,42は、スリーブ状の取付けエレメント48の内部に保護されて配置されており、この取付けエレメント48は、収容装置50を介して作業ユニットハウジング33に固定可能である。
【0079】
図3には、本発明に係る糸スプライシング装置10が平面図で示されている。
【0080】
図面から分かるように、糸スプライシング装置10は、中央の構成部材として空気分配体18を有しており、この空気分配体18は、特に、保持兼解撚管17用の収容孔30と、圧縮空気を供給する接続孔19,23とを備えている。
【0081】
円形の外周部を有する空気分配体18には、スプライシング角柱体34が配置されており、このスプライシング角柱体34は、接続孔23を介して空気を供給することができるスプライシング通路47を有している。
【0082】
空気分配体18の外周部には、制限されて回転可能に、制御エレメント41,42が支持されており、これらの制御エレメント41,42は、その外周部の一部にそれぞれ歯列51;52を有している。制御エレメント42の歯列52は、例えば、ステップモータ40として形成された個別駆動装置のモータ軸に配置されたピニオン45Bと噛み合っている。このときステップモータ40自体は、制御ライン46Bを介して該当する作業ユニット2の作業ユニット計算機29に接続されている。制御エレメント42はさらに、糸寄せ器38を備えており、この糸寄せ器38は、必要な場合に、スプライシングすべき両方の糸端部を、スプライシング角柱体34のスプライシング通路47内において整然と位置決めする。
【0083】
制御エレメント41は、歯列51を有しており、この歯列51は、ステップモータ39のモータ軸に配置されたピニオン45Aと噛み合い、ステップモータ39自体は、制御ライン46Aを介して、作業ユニット2の作業ユニット計算機29に接続されている。
【0084】
制御エレメント41は、さらに第1および第2の切換え突子43,44を備えており、これらの切換え突子43,44は、糸切断装置36A,36Bを作動させるためもしくは糸クランプ装置37A,37Bを作動させるために働く。
【0085】
このとき両方の第1の切換え突子43を介して、糸切断装置36A;36Bが駆動制御され、これに対して両方の第2の切換え突子44は、糸クランプ装置37A;37Bを作動するのに用いられる。
【0086】
本発明に係る糸スプライシング装置の機能
公知のようにゆえに詳しくは説明しないが、自動綾巻きワインダ1の作業ユニット2において、走行する糸は巻取り作業中に連続的に糸クリアラによって監視され、糸クリアラは、各糸不規則性を検知して、作業ユニット計算機29に通知する。
【0087】
作業ユニット計算機29は、必要な場合に直ちに、確定された糸切断を開始し、この糸切断時に走行する糸は、糸クリアラの領域に配置された糸切断装置によって、上糸31と下糸32とに切り離される。次いで上糸31は、パッケージフレームに回転可能に保持された、制動モーメントを加えられた綾巻きパッケージ15に巻き上げられ、これに対して下糸32は通常、いわゆる糸テンショナにおいて保持される。
【0088】
欠陥のある糸部分のクリアリング除去のためおよび新しい糸継ぎ部の形成のために、次いで、綾巻きパッケージ15に巻き上げられた上糸31が再び収容される。つまり吸込みノズル12が上方に向かって旋回させられ、負圧供給可能なその開口が、綾巻きパッケージ15の表面の領域において位置決めされ、このとき綾巻きパッケージ15は同時にゆっくりと繰出し方向に回転させられる。
【0089】
吸込みノズル12が上糸31を収容するや否や、吸込みノズル12の領域に配置された糸切断装置(図示せず)を用いて、欠陥のある糸部分が切り離されて処分される。
【0090】
次いでいまや欠陥のない上糸31が、吸込みノズル12によって糸スプライシング装置10のスプライシング角柱体34のスプライシング通路47内に挿通され、このとき上糸31は、切離しもしくは糸ガイド金属薄板によって案内されて、さらに上側の糸クランプ装置37B内に、かつ下側の糸切断装置36Aの工具の間を挿通される。
【0091】
上糸31の収容と同時にまたは時間的に幾分遅らされて、下糸32の収容も行われる。つまりグリッパ管25が、コントロールされた糸切断後に通常糸テンショナにおいて固定されている下糸32を、糸テンショナのところに取りに行き、そして同様に下糸32を糸スプライシング装置10のスプライシング角柱体34のスプライシング通路47内に挿入する。このとき下糸32はさらに、下側の糸クランプ装置37A内と上側の糸切断装置36B内とに挿通されている。
【0092】
両方の糸31,32がスプライシング角柱体34のスプライシング通路47内に挿入されるや否や、両方の糸31,32は、糸クランプ装置37A,37Bによって機械式に固定され、かつ糸切断装置36A,36Bによって整然と所定長さで切断される。
【0093】
すなわち作業ユニット計算機29は、ステップモータ39がピニオン45Aを介して制御エレメント41の切換え歯環51を作動させ、これによって制御エレメント41が幾分方向Rに回転させられるようにするために働く。制御エレメント41のこの回転運動時に、第1および第2の切換え突子43,44も移動させられ、両方の切換え突子43,44はこのとき糸クランプ装置37A,37Bと糸切断装置36A,36Bを作動させる。
【0094】
次いで弁の相応の制御によって、保持兼解撚管17には、接続孔19を介して圧縮空気が供給され、これにより上糸31および下糸32の自由な糸端部が、保持兼解撚管17内に吸い込まれる。接線方向孔を介して保持兼解撚管17のリング通路内に流入する圧縮空気は、さらに、糸端部を規定通りに空気力によって準備するために働く。すなわち、上糸31および下糸32の、保持兼解撚管17内に吸い込まれた糸端部は、十分にその糸撚りを解されかつ短繊維を除去される。
【0095】
次いで、準備された糸端部は、糸寄せ器38によって保持兼解撚管17から引き出され、そして両方の糸端部が適正な方向付けおよび規定通りの合致部を有するようにスプライシング角柱体34のスプライシング通路47内に位置決めされる。すなわち作業ユニット計算機29は、制御エレメント42が幾分方向Aに回転させられるように、ステップモータ40を駆動制御する。この回転運動時に、糸寄せ器38のアームはそれぞれ、糸クランプ装置37A;37Bとスプライシング角柱体34との間において延びる、上糸31および下糸32の糸ストランドと交差し、このとき自由な糸端部を保持兼解撚管17から引き出す。
【0096】
スプライシング角柱体34のスプライシング通路47内に適正に位置決めされた、上糸31および下糸32の糸端部は、次いで空気によって、本来の糸とほぼ等しく糸継ぎされる。すなわち作業ユニット計算機29は、信号ラインを介して電磁弁(図示せず)を駆動制御し、これによって圧縮空気管路26のうちの1つおよび接続孔23を介してスプライシング空気がスプライシング通路47内に吹き込まれ、このスプライシング空気は、最初はほぼ平行に配置されていた、両方の糸端部の繊維を互いに交絡させ、そして本来の糸とほぼ同じ糸継ぎ部を形成する。
【0097】
糸継ぎ工程は、これによって終了し、該当する作業ユニット2は巻取りプロセスを開始することができる。