(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
水銀圧入法で測定した細孔容積において、細孔直径3.5〜5000nmでの細孔容積が1.30〜2.50ml/gの範囲にあり、細孔直径3.5〜5000nmでの細孔容積に対して細孔直径3.5〜10nmでの細孔容積率が14.5%以上であり、且つ圧縮強度が1.5MPa以上の範囲にある請求項1に記載のアニオン吸着剤。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<アニオン吸着剤>
本発明のアニオン吸着剤は、シリカと酸化マグネシウム(マグネシア)とが一体化したシリカマグネシア複合粒子を焼成することにより得られたものである。
この複合粒子は、シリカとマグネシアとが原子の組み換えや交換を伴う化学結合によるものではなく、それぞれの微細な粒子が物理的に分離しないレベルに緊密に接触している状態を意味するものであり、単なる混合物とは全く異なっている。
【0013】
本発明において、アニオン吸着剤として使用される複合粒子の焼成物は、シリカ成分とマグネシア成分とを、下記式;
R=Sm/Mm
式中、Smは、SiO
2換算でのシリカ成分の含有量(質量%)であり、
Mmは、MgO換算でのマグネシア成分の含有量(質量%)である、
で表される質量比Rが0.2〜20、好ましくは0.2〜3.0、特に好ましくは1.3〜3.0となる範囲で含有していることが必要である。
この質量比Rが上記範囲よりも大きいと、マグネシア成分の含有量が少なくなるため、脱酸性能が不満足となってしまう。また、質量比Rが上記範囲よりも小さいと、シリカ成分の含有量が少なくなるため、シリカのバインダーとしての機能が低下する。この結果、マグネシアが脂肪酸と反応して石ケンが生成したとき、石ケンが分離し易くなってしまう。また、食用油の精製剤として使用したとき、脱色性能が低下する。即ち、質量比Rが上記範囲内にあることによって、本発明のアニオン吸着剤は、食用油の吸着剤として好適に使用し得る。
【0014】
また、本発明のアニオン吸着剤は、シリカマグネシア複合粒子を焼成して得られるものであるため、下記式;
オレンジII吸着量(mmol/g)/MgO含有率(質量%)×100
で算出されるアニオン吸着能が1.40〜3.00、好ましくは1.45〜2.75、特に好ましくは1.90〜2.45の範囲にある。オレンジIIはアニオン性色素であることから、この吸着能は、アニオン吸着性を示す指数となる。即ち、この吸着能が大きい程、脱酸性能が高く、例えば食用油中の遊離脂肪酸を有効に吸着できる。因みに、未焼成品でのアニオン吸着能は、1.40未満であり、本発明に比してかなり低い。
【0015】
尚、本発明において、上記複合粒子の焼成により脱酸性能が大きく向上する理由は明確に解明されているわけではないが、本発明者等は、次のように推定している。
即ち、シリカマグネシア複合粒子を焼成すると、シリカに比して体積量の少ないマグネシアが焼結し、粒子表面に偏析して分布するようになり、この結果、マグネシアの塩基性に由来する遊離脂肪酸吸着能(脱酸性能)が大きく向上すると思われる。
【0016】
従って、上記のアニオン吸着能は、焼成温度に大きく依存し、焼成温度が低すぎると、マグネシアの焼結が不十分であり、脱酸性能の大きな向上は望めない。また、焼成温度が高すぎると、細孔の消滅或いは相転移等が生じてしまい、逆に、脱酸性能が低下してしまう。このため、後述する複合粒子の焼成は、アニオン吸着能が上述した範囲内となるように焼成温度を設定して行う必要がある。
【0017】
また、本発明のアニオン吸着剤、即ち、シリカマグネシア複合粒子の焼成物は、焼成されていることに関連して、細孔直径3.5〜5000nmでの細孔容積が1.30〜2.50ml/gの範囲にあり、細孔直径3.5〜5000nmでの細孔容積に対して細孔直径3.5〜10nmでの細孔容積率が14.5%以上である。即ち、このような細孔容積を有するシリカマグネシア複合粒子は、焼成という熱処理を経て得られるものであり、この点において、例えば特許文献2に開示されている未焼成のシリカマグネシアとは明確に異なっている。以下、本発明のアニオン吸着剤として使用される複合粒子の焼成物を、シリカマグネシア複合焼成粒子と呼ぶことがある。
【0018】
例えば、このシリカマグネシア複合焼成粒子は、細孔直径3.5〜10nmでの細孔容積は未焼成品に比して大きくなっているが、細孔直径3.5〜5000nmでの細孔容積では未焼成品と同レベルである。このため、このような焼成により、食用油精製剤として使用したときに要求される脱色性能は低下していない。
即ち、このシリカマグネシア複合焼成粒子が有するは、トータルの細孔容積が焼成により変化していないため、焼成前と同等の色素吸着性(即ち、脱色性能)を示すものと思われる。
【0019】
さらに、本発明においてアニオン吸着剤として使用するシリカマグネシア複合焼成粒子は、焼成品であることに関連して、圧縮強度が1.5MPa以上、好ましくは2.0MPa以上の範囲にある。即ち、この焼成により粒子の収縮が生じ、結果として、圧縮強度が向上することとなる。因みに、従来公知のシリカマグネシア複合粒子の未焼成品の圧縮強度は、1.3MPa程度であり、本発明に比してかなり低い。
尚、圧縮強度が過度に高いと、必要以上に焼成が行われていることとなり、前述した細孔容積が大きく低下し、色素等に対する吸着性(即ち、脱色性能)が損なわれてしまい、食用油の精製剤としては不適当なものとなってしまう。従って、本発明においては、この圧縮強度は10MPa以下、特に5.0MPa以下の範囲に抑えられていることが好適である。
【0020】
本発明において、このシリカマグネシア複合焼成粒子の圧縮強度が向上していることは、粒子が崩壊し難いことを意味し、粒子の崩壊による性能低下を有効に回避できる。
例えば、シリカマグネシア複合焼成粒子の一定量を水に投入して超音波分散したとき、超音波分散後の平均粒子径(レーザ回折散乱法により測定したメジアン径(平均粒子径の変化率))は、超音波分散前を100%として最大でも約56%まで低下するが、未焼成粒子について同様の試験を行うと、平均粒子径の変化率は超音波分散後は約29%であり、焼成品に比して、大きく粒子径が低下していることが判る。
【0021】
このように、上記の複合焼成粒子からなる本発明のアニオン吸着剤は、非常に粒子崩壊し難いため、他の吸着剤と混合して使用する場合、混合操作に際して粒子崩壊による性能低下を有効に防止することができ、また、流水中で使用した場合においても、粒子崩壊による性能低下が有効に回避でき、長期に渡って、安定してアニオン吸着性を発揮することができる。
【0022】
また、焼成物であることに関連して、その強熱減量(1000℃×30分、150℃X2時間乾燥基準)は10質量%以下、好ましくは8.2質量%以下である。
さらに、シリカマグネシア複合焼成粒子は、シリカ成分とマグネシア成分が互いに遊離しておらず、緊密に複合化しているために、通常、その懸濁液のpHは6.0〜10.0の範囲にある。また、窒素吸着法で測定したBET比表面積は、100m
2/g以上、特に400m
2/g以上の範囲にある。
【0023】
<アニオン吸着剤(シリカマグネシア複合焼成粒子)の製造>
上述したアニオン吸着剤として使用するシリカマグネシア複合焼成粒子は、(A)シリカ(二酸化ケイ素)と、(B)マグネシア(酸化マグネシウム)もしくはその水和物とを、前述した質量比Rが所定の範囲となる量で使用し、これらを水分の存在下で均質に混合して水性スラリーとなし、次いで熟成を行い、さらに、水分を除去し、引き続いて焼成することにより、製造される。
【0024】
即ち、水分の存在下、例えば水中での均質混合により、原料の一つである(A)シリカがコロイド粒子乃至微細凝集粒子(1次乃至2次粒子)まで解れる(微細粒子化)。他方の(B)マグネシア(酸化マグネシウム)も、水中に投入されて撹拌もしくは粉砕されると、溶解は殆ど起こらないが、マグネシア粒子表面の部分的な水和により、その結晶(もしくは新たに生成した水和物の結晶)の一部分或いは全部が崩壊もしくは剥離して、マグネシア(酸化マグネシウム)及び/又は酸化マグネシウム水和物からなる微細な粒子となって水中に分散される(微細粒子化)。
【0025】
熟成工程において、これらの微細粒子が均質に分散したスラリーから水分が除去され、固形分濃度が上昇していくと、シリカの粒子(A)とマグネシアの粒子(B)とが徐々に或いは急激に接近し、原子の交換や組み換えを伴うような化学結合を伴うことなく、一体複合化した形態に至るのである(一体複合化完了)。即ち、本発明のシリカマグネシア複合焼成粒子は、物理的手段により分離しないように一体化された構造である。
【0026】
尚、原料として使用される(A)シリカ及び(B)酸化マグネシウム(マグネシア)もしくはその水和物は、何れも食品製造用のろ過助剤もしくは吸着剤として認可されており、従って、これらの使用により、例えば食品精製としての用途が制限されることはない。
【0027】
また、マグネシアの粒子(B)として、例えば、酸化マグネシウム以外のマグネシア原料(水酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウムなど)を用いる場合、焼成によってシリカ粒子(A)との間で原子の交換や組み換えを伴うような化学結合が生じる虞があり、また細孔構造が破壊されることがある。従って、酸化マグネシウム或いはその水和物(例えば、付着水の保持やマグネシアの粒子界面等の部分的水和の意味を含む)を使用することが好ましい。
【0028】
また、シリカ(A)及びマグネシアもしくはその水和物(B)としては、前述した微細粒子化が容易となるものを選択するのがよい。
例えば、シリカとしては非晶質の含水タイプのものが好適であり、ゲル法或いは沈降法の何れで製造されたものであってもよいが、一次粒子の小さいものが好適であり、比表面積が40m
2/g以上、特に140m
2/g以上であるものが好適である。
またマグネシアもしくはその水和物としては、結晶子の小さく且つ経時による炭酸化が進んでいないものがよい。例えば、比表面積が2m
2/g以上、好ましくは20m
2/g以上、特に好ましくは50m
2/g以上であるマグネシア粉末が使用される。
【0029】
一体複合化の度合いは、吸着剤中のシリカ成分とマグネシア成分の質量比(R)によって異なるが、質量比Rが前述した範囲では、シリカ成分とマグネシア成分が一体複合化にちょうどよい質量比となっており、所定の細孔容積やアニオン吸着能を示す焼成複合粒子を安定に得ることができる。
【0030】
水性スラリーの調製において、各原料(A)、(B)や水の投入順序等に制限はないが、凝集やゲル化現象(増粘)が起こると、前述した微細粒子化や一体複合化の進行が妨げられる虞がある。このため、水性スラリーの固形分濃度は低い方が好ましい。一方で、生産性や経済性の見地からは固形分濃度は高い方がよい。従って、固形分濃度は3〜15質量%、特に8〜13質量%であることが好ましい。
【0031】
また、上記の均質混合による水性スラリーの調製および引き続いて行われる熟成は、攪拌翼を備えた攪拌槽中で攪拌下に行うのが一般的であるが、湿式ボールミルやコロイドミルによる粉砕もしくは分散下で行うこともできる。
また、このような均質混合および熟成は、粒子同士の一体複合化を短時間で終了させるために加熱下で行うことが好ましいが、加熱温度が高いとゲル化が生じ、複合粒子が不均質となりやすい。したがって、この加熱温度は、通常、100℃以下で行い、50〜97℃で行うことが好ましく、50〜79℃で行うことが特に好ましく、例えば、0.5時間以上、特に1〜24時間、より好ましくは3〜10時間程度かけて均質混合および熟成を行うことにより、シリカ粒子とマグネシア粒子が一体複合化した粒状物を含む水性スラリーが得られる。
【0032】
熟成後の水分除去は、スプレー乾燥機やスラリー乾燥機等を用いての蒸発乾燥により行われるが、ろ過や遠心分離等の手段によりある程度の脱水を行った後に、箱形乾燥機、バンド乾燥機、流動層乾燥機等を用いて乾燥を行ってもよい。乾燥は110〜200℃の範囲の温度で行うことが好ましい。このとき、原料(B)の水和が少なくとも一部乃至は全部解消される。
【0033】
上記のようにして、例えば水分含有率が10質量%以下であり、脱水により原料粒子である二酸化ケイ素(シリカ)粒子とマグネシア粒子とが緊密に複合化し、少なくとも一部のシリカ粒子およびマグネシア粒子が一体複合化したシリカ・マグネシア複合粒子が、顆粒状、粉状、ケーキ状或いは団塊状で得られる。これらは、必要により、粉砕・分級を行ったのちに、焼成炉中で焼成を行うことにより、シリカ粒子とマグネシア粒子とが一体複合化した複合焼成粒子が得られる。
【0034】
上記の粉砕は、それ自体公知の乾式粉砕法により行うことができ、例えばアトマイザーの如き衝撃式粉砕機や、乾式ボールミル、ローラーミル、ジェットミルなどを用いて行なうことができる。
また、分級は、通常の乾式分級機を用い、重力分級、遠心分級、慣性分級等によって行われる。
このような粉砕及び分級によって、例えば5μm未満の微細粒子含有率が20体積%以下の粉末の形で、未焼成のシリカマグネシア複合粒子が得られる。
【0035】
最後に行われる焼成は、前述したオレンジII吸着量から算出されるアニオン吸着能が所定の範囲(1.40〜3.00、好ましくは1.45〜2.75、特に好ましくは1.90〜2.45)に達するように行われる。かかる焼成により、複合粒子中の分布しているマグネシア粒子同士が焼結し、粒子表面に偏析し、アニオン吸着能が大きく向上する。即ち、このアニオン吸着能は、焼成温度に大きく依存し、焼成温度が高い程、アニオン吸着能が向上するが、必要以上に焼成温度を高くすると、細孔構造の破壊を生じ、さらには、相転移等が生じ、アニオン吸着能が低下することもある。従って、この焼成温度は、通常、300〜830℃、特に550〜750℃の範囲とするのがよい。また、かかる焼成は、水分除去のために行うものではないため、例えば上記温度に設定されている炉内に複合粒子を適度な時間(一般に1〜4時間程度)保持することにより行われ、電子レンジ等により瞬時に高温に加熱する手段では、アニオン吸着能の向上はもたらされない。
また、このような焼成により、圧縮強度も前述した範囲に高められる。
【0036】
このようにして得られる複合焼成粒子は、顆粒状、粉状で得られるが、適宜の大きさの粒子に造粒して、アニオン吸着剤として使用に供される。
造粒手段としては、スプレー造粒、転動造粒等、公知の手段により行うことができるが、粒子に大きな負荷が加わると、前述した細孔分布が損なわれることがあるため、できるだけ負荷のかからない手段、例えば、スプレー造粒が特に好適である。
【0037】
本発明のアニオン吸着剤は、既に述べた通り、食品添加物として認可されているシリカ及びマグネシア成分とが一体化したシリカマグネシア複合粒子からなり、脱色性能をも有しているため、食品精製の用途に有効に適用できる。例えば、繰返し使用により劣化し、遊離脂肪酸や色素成分を多く含む揚油の再生をはじめ、同様に遊離脂肪酸や色素成分を多く含む魚貝類エキスや畜肉エキス等の濃縮調味液の原料・煮汁から不純物成分を除去し、加熱濃縮時の褐変反応(メイラード反応)を抑制し、風味や栄養価の低下を防止する目的など、有効に使用される。また、食品以外の広く有用な液状物等から不純物の吸着・除去による精製にも有効に使用することができる。
【実施例】
【0038】
本発明の優れた効果を、次の実験例により説明する。
【0039】
(1)オレンジII吸着量
本実施例におけるオレンジII吸着能は、10mmol/L濃度のオレンジII水溶液から、1gの試料が吸着できるオレンジIIのmmol数とし、下記の方法により測定し、算出した。
先ず、オレンジII(試薬特級、和光純薬工業(株)製)を水に溶かし、10mmol/L濃度のオレンジII水溶液を得る。この10mmol/L濃度のオレンジII水溶液20mlを50ml容の遠沈管に秤取し、吸着剤0.20gを加えて振とう機(ヤマト科学(株)製SA300、振とうスピード5)により7.5時間振とうする。振とう終了後、12時間以上静置する。次に遠心分離機((株)クボタ製 5200)により遠心加速度3000rpmで15分処理した液の上澄みを0.5mL採取し、これをイオン交換水により200倍に希釈した液の484nm波長光の吸光度を分光光度計(日本分光(株)製V−630)により測定した。そして、オレンジII水溶液のオレンジII含有量と484nm波長光の吸光度の関係を示す検量線を用いて試料液のオレンジII残存量を算出した。この値を、試料へのオレンジII添加量から差し引いた値をオレンジII吸着量とする。
【0040】
(2)細孔容積
Micromeritics社製AutoPore IV 9500を用いて水銀圧入法にて測定を行った。細孔直径が3.5〜10nmでの細孔容積は20000〜60000psiaの圧入量より、細孔直径が3.5〜5000nmでの細孔容積は30〜60000psiaの圧入量より求めた。
【0041】
(3)圧縮強度
(株)島津製作所製微小圧縮試験機MCT−510を用いて各吸着剤3点の粒子の圧縮強度を測定し、平均値を吸着剤の圧縮強度とした。
【0042】
(4)平均粒子径の変化率
Malvern社製レーザ回折散乱式粒度分布測定機マスターサイザー3000を用いて、超音波分散の有無による粒度の変化を用いて水中崩壊性を評価した。測定前分散(分散時間180秒)において超音波強度0%(超音波分散なし)でのメジアン径Dnと超音波強度100%でのメジアン径Dusから、粒子径の変化率ΔD%を下記式:
ΔD%=Dus/Dn×100
により算出した。
【0043】
(5)窒素吸着法によるBET比表面積
マイクロメリティクス社製TriStar 3000を用いて窒素吸着法により測定を行ない、BET法により算出した。なお、前処理は150℃で2時間行った。
【0044】
(6)pH
イオン交換水に吸着剤濃度が5質量%になるように吸着剤を添加し、10分間撹拌した後、東亜ディーケーケー製pHメーターHM−30Rにて測定を行った。
【0045】
(7)遊離脂肪酸吸着試験および脱色試験(透過率およびガードナー)
本実施例におけるアニオン吸着剤の性能は、粘土ハンドブック第三版 日本粘土学会編(技報堂出版)p570の図に示す脱色試験機を用いた。脱色試験機には硬質ガラス製大型試験管(容量230ml)が油浴にセットできる。各試験管には、下端が丸くなった波形の攪拌棒を入れ、その下端は試験管の底部に常に接触するようにゴム管で調節する。攪拌棒は中央の親歯車から分かれた子歯車によって回転するので、その回転速度は全く等しく保たれる。中央の親歯車の下には油浴を攪拌する攪拌羽根がついていて、油浴内の温度を均一に保っている。各試験管に使用済み油(透過率25.9%、酸価1.91、ガードナー9−)を50gずつ採取し、各吸着剤サンプルを1gずつ(油に対して2質量%)加えた。各試験管を110℃に保たれた前記の脱色試験機にセットし、20分間攪拌を行った後脱色試験機から取り出し、再生油と吸着剤の混合スラリーをろ過することにより各再生油を得た。
各再生油の酸価は、日本油化学会が制定する基準油脂分析法2.3.1−2013に準拠し測定した。供試油の酸価との差を酸価低減値(mgKOH/g)とし、遊離脂肪酸吸着能の指標とした。この値が大きいほど、遊離脂肪酸吸着量が多く、遊離脂肪酸の除去が効果的に行われていることを示す。
各再生油の白色光線透過率(蒸留水の透過率を100%としたときの相対値)を(株)平間理化研究所製光電光度型で測定し、その数値をもって各吸着剤の脱色能とした。透過率の数値が高いほど用いた吸着剤の脱色能が高いことを表している。
また、基準油脂分析法3.2.1.1−2013に準拠し、精製前の供試油および各吸着剤で処理した再生油の色味(ガードナー)を評価した。ポイントが高いほど色味が強く、ポイントが低いほど用いた吸着剤の脱色能が高いことを表している。
【0046】
下記の実施例および比較例に示す吸着剤について、物性および吸着試験結果を表1に示す。
【0047】
(比較例1)
水澤化学工業(株)製二酸化ケイ素 ミズカソーブC―1を吸着剤として使用した。
【0048】
(比較例2)
神島化学工業(株)製酸化マグネシウム スターマグUを吸着剤として使用した。
【0049】
(比較例3)
水澤化学工業(株)製シリカマグネシア製剤(R=2.1)を吸着剤として使用した。
【0050】
(実施例1)
比較例3の吸着剤を350℃で1時間焼成し、アニオン吸着剤を得た。
【0051】
(実施例2)
焼成を450℃で1時間とした他は実施例1と同様にしてアニオン吸着剤を得た。
【0052】
(実施例3)
焼成を550℃で1時間とした他は実施例1と同様にしてアニオン吸着剤を得た。
【0053】
(実施例4)
焼成を650℃で1時間とした他は実施例1と同様にしてアニオン吸着剤を得た。
【0054】
(実施例5)
焼成を750℃で1時間とした他は実施例1と同様にしてアニオン吸着剤を得た。
【0055】
(比較例4)
焼成を950℃で1時間とした他は実施例1と同様にして吸着剤を得た。
【表1】