(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6931008
(24)【登録日】2021年8月16日
(45)【発行日】2021年9月1日
(54)【発明の名称】ハフニウムを含まないニッケル系単結晶超合金部品を腐食及び酸化から保護する方法
(51)【国際特許分類】
C23C 28/00 20060101AFI20210823BHJP
C23C 10/28 20060101ALI20210823BHJP
C23C 12/00 20060101ALI20210823BHJP
C23C 14/06 20060101ALI20210823BHJP
C23C 14/14 20060101ALI20210823BHJP
C23C 14/58 20060101ALI20210823BHJP
F02C 7/00 20060101ALN20210823BHJP
【FI】
C23C28/00 B
C23C10/28
C23C12/00
C23C14/06 N
C23C14/14 B
C23C14/14 D
C23C14/58 A
!F02C7/00 C
!F02C7/00 D
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-564342(P2018-564342)
(86)(22)【出願日】2017年6月9日
(65)【公表番号】特表2019-524983(P2019-524983A)
(43)【公表日】2019年9月5日
(86)【国際出願番号】FR2017051473
(87)【国際公開番号】WO2017212193
(87)【国際公開日】20171214
【審査請求日】2020年6月4日
(31)【優先権主張番号】1655338
(32)【優先日】2016年6月10日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】306047664
【氏名又は名称】サフラン
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ザブーンジ,アマール
(72)【発明者】
【氏名】ジャッケ,ビルジニー
【審査官】
▲来▼田 優来
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−247803(JP,A)
【文献】
特開昭51−065040(JP,A)
【文献】
特開2002−194531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C10/28−10/58,12/00
C23C14/06,14/14,14/34,14/58
C23C28/00−28/04
F02C7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腐食及び酸化から、ハフニウムを含まないニッケル系単結晶超合金部品(1)を保護する方法であって、該方法は、少なくとも以下の工程:
− ハフニウムを含まないニッケル系単結晶超合金部品(1)の製造工程、
− 部品(1)の上に、ハフニウムを含む第1の層(2)、次いで少なくとも10原子%のアルミニウムを含む合金のアンダーコート及びハフニウムを含む第2の層を同時に又は交互に部品上に堆積させて、混合層(3)を形成し、最後にハフニウムを含む第3の層(4)を堆積させる工程、
− ハフニウムを含む第1の層(2)を拡散させて、ハフニウムを含まないニッケル系単結晶超合金部品(1)の上部に第1の相互拡散領域(21)を形成し、ハフニウムを含む第3の層(4)を拡散させて、混合層(3)の表面に第2の相互拡散領域(41)を形成する工程、
− 拡散処理の後に、第2の相互拡散領域(41)の酸化処理を行い、第2の相互拡散領域(41)の表面にハフニウムをドープしたアルミナの層(42)を得る工程
を含むことを特徴とする該方法。
【請求項2】
該方法が、拡散処理を実施する前に、様々な層及びアンダーコートを堆積させる第1の堆積工程を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該方法が、少なくとも以下の工程:
− ハフニウムを含まないニッケル系単結晶超合金部品(1)を製造する工程、
− 部品(1)の上に、ハフニウムを含む第1の層(2)を堆積させる工程、
− ハフニウムを含む第1の層を拡散させて、ハフニウムを含まないニッケル系単結晶超合金部品(1)の表面に第1の相互拡散領域(21)を形成する工程、
− 第1の相互拡散領域(21)の上に、少なくとも10原子%のアルミニウムを含む合金のアンダーコートと、ハフニウムを含む第2の層とを同時に又は交互に堆積させて、混合層(3)を形成する工程、
− 混合層(3)の上に、ハフニウムを含む第3の層(4)を堆積させる工程、
− ハフニウムを含む第3の層(4)を拡散させて、混合層(3)の表面に第2の相互拡散領域(41)を形成する工程、
− 第2の相互拡散領域(41)の酸化処理を行って、第2の相互拡散領域(41)の表面にハフニウムをドープしたアルミナの層(42)を得る工程
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
該方法が、ハフニウムをドープしたアルミナ(3)の層上に熱障壁層(5)を堆積させる工程を含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
堆積工程の少なくとも1つが、物理気相成長(PVD)によって実施されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
堆積工程の少なくとも1つが、陰極スパッタリングによって実施されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
堆積が、100℃〜900℃の間に含まれる温度で、0.1Pa〜1Paの間に含まれる圧力下で、2〜15W/cm2の間に含まれ電力密度で、−500V〜―150Vの間に含まれる負の分極で、−200V〜500Vの間のイオン衝撃下で10〜30分間の陰極スパッタリングによって実施されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
拡散処理が、真空下又はアルゴンと5体積%のヘリウムとの混合物の存在下での熱処理によって実施され、この熱処理は、800℃〜1200℃の間に含まれる温度に達するまで昇温する工程、この温度を1時間〜4時間維持する工程、及び室温に達するまで温度を下げて冷却する工程を含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
第2の相互拡散領域(41)の酸化処理が、酸素又はアルゴンの分圧下での熱処理によって実施され、この熱処理は、900℃〜1200℃の間に含まれる温度に達するまで昇温する工程、この温度を1時間未満維持する工程及び室温に達するまで冷却する工程を含むことを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ハフニウムを含む前記第1の層(2)が、50nm〜800nmの間に含まれる厚さを有することを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ハフニウムを含む前記第1の層(2)が、50nm〜300nmの間に含まれる厚さを有することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも10原子%のアルミニウムを含む合金のアンダーコートが、NiAlCrSi、NiAlCrSiPt、NiCoAlCrSiPt、NiAl、NiPtAl又はMCrAlYから選択され、式中、Mは、コバルト、ニッケル又はコバルト−ニッケルに等しいことを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも10原子%のアルミニウムを含む合金のアンダーコートが、5μm〜30μmの間に含まれる厚さを有することを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ハフニウムを含む第2の層が、20nm〜700nmの間に含まれる厚さを有することを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ハフニウムを含む第3の層(4)が、10nm〜100nmの間に含まれる厚さを有することを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケル系単結晶超合金の分野にある。
【0002】
より詳細には、本発明は、ハフニウムを含まないニッケル系単結晶超合金部品を腐食及び酸化から保護する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
「超合金」という用語は、高温高圧で、酸化、腐食、クリープ及び周期的な応力(特に機械的又は熱的)に対する非常に良好な耐性を示す複合合金を指す。これらの超合金の特定の用途は、航空分野で使用される部品の製造にある。
【0004】
内側から外側へ連続的にニッケル系単結晶超合金基材、アンダーコート及び熱障壁を含む部品は、従来技術で既に知られている。
【0005】
ハフニウムの添加は、超合金の耐食性及び耐酸化性並びに熱障壁の接着性を改善することが知られている。
【0006】
上記の部品にハフニウムを添加する技術はいくつかある。
【0007】
第1の技術は、少量のハフニウムを直接基板に添加すること、即ち、基板を構成する超合金の製造中に添加することからなる。
しかし、これはこの超合金の溶解をより困難にする。
【0008】
超合金は、溶解段階及び焼き戻し段階をはじめとする熱処理を受ける。そのような処理は、合金を共晶温度未満の適切な温度に加熱し、その成分の元素濃度を均質化し、金属間化合物の析出物の大きさを制御するのに十分に長くこの温度を維持することにある。これにより材料の微細構造特性が最適化される。
【0009】
しかし、超合金中にハフニウムが存在すると、共晶の完全又はほぼ完全な溶解がより困難になり、燃焼型の欠陥が生じる。
【0010】
また、この第1の技術では、超合金に含まれるハフニウムの量が少なく、アンダーコート中に拡散するハフニウムの量がより少ないため、基板に対する熱障壁の接着性は改善されない。しかし、この第1の技術は、こうして得られた部品の耐酸化性を改善する。
【0011】
第2の技術は、アンダーコートを堆積させている間にアンダーコートにハフニウムを添加することにある。しかし、この技術は、基板に対する熱障壁の接着性を改善するだけである。実際に、ハフニウムは、主としてアンダーコートの粒界に拡散し、したがって、腐食及び酸化からの超合金基材の保護を改善しない。
【0012】
最後に、第3の既知の技術は、基材に、及びアンダーコートの堆積中の両方に少量のハフニウムを添加することにある。
【0013】
しかし、この解決策は、第1の技術で述べたものと同じ問題を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の目的は、従来技術の上記欠点を克服することである。
【0015】
特に、本発明の目的は、ハフニウムを含まないニッケル系単結晶超合金から製造された部品の腐食及び酸化からの保護を改善することである。
【0016】
さらに、部品が遮熱コーティングで被覆される場合、本発明はまた、部品への後者の接着性を改善し、このように形成された部品全体の寿命を延ばすという目的も有する。
【0017】
その目的のために、本発明は、腐食及び酸化から、ハフニウムを含まないニッケル系単結晶超合金部品を保護する方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に従って、この方法は、少なくとも以下の工程を含む。
− ハフニウムを含まないニッケル系単結晶超合金部品の製造工程、
− 部品の上に、ハフニウムを含む第1の層、次いで少なくとも10原子%のアルミニウムを含む合金のアンダーコート及びハフニウムを含む第2の層を同時に又は交互に堆積させて、混合層を形成し、最後にハフニウムを含む第3の層を堆積させる工程、
− ハフニウムを含む第1の層を拡散させて、ハフニウムを含まないニッケル系単結晶超合金部品の上部に第1の相互拡散領域を形成し、ハフニウムを含む第3の層を拡散させて、混合層の表面に第2の相互拡散領域を形成する工程、
− 拡散処理の後に、第2の相互拡散領域の酸化処理を行い、第2の相互拡散領域の表面上にハフニウムをドープしたアルミナの層を得る工程。
【0019】
本発明のこれらの特徴のおかげで、得られる部品は、腐食及び酸化に対してより良好な耐性を有する。
【0020】
本発明の他の有利かつ非限定的な特徴によれば、単独又は組み合わせて
− この方法は、拡散処理を行う前に、様々な層及びアンダーコートを堆積させる第1の堆積工程を有し、
− この方法が、少なくとも以下の工程:
・ ハフニウムを含まないニッケル系単結晶超合金部品を製造する工程、
・ 部品上に、ハフニウムを含む第1の層を堆積させる工程、
・ ハフニウムを含むこの第1の層を拡散させて、ハフニウムを含まないニッケル系単結晶超合金部品の表面に第1の相互拡散領域を形成する工程、
・ 第1の相互拡散領域上に、少なくとも10原子%のアルミニウムを含む合金のアンダーコートと、ハフニウムを含む第2の層とを同時に又は交互に堆積させて、混合層を形成する工程、
・ 混合層上に、ハフニウムを含む第3の層を堆積させる工程、
・ ハフニウムを含むこの第3の層を拡散させて、混合層の表面に第2の相互拡散領域を形成する工程、
・ 第2の相互拡散領域の酸化処理を行って、第2の相互拡散領域の表面にハフニウムをドープしたアルミナの層を得る工程
を含み、
− この方法は、ハフニウムをドープしたアルミナの層上に遮熱コーティングを堆積させる工程を含み、
− 堆積工程の少なくとも1つは、物理気相成長(PVD)によって、好ましくは陰極スパッタリングによって実施され、
− 堆積は、100℃〜900℃の間に含まれる温度で、0.1Pa〜1Paの間に含まれる圧力下で、2〜15W/cm
2の間に含まれる電力密度で、−150V〜―500Vの間に含まれる負の分極で、−200V〜500Vの間のイオン衝撃下で10〜30分間の陰極スパッタリングによって実施され、
− 拡散処理は、真空下又はアルゴンと5体積%のヘリウムの混合物の存在下での熱処理によって実施され、この熱処理は、800℃〜1200℃の間に含まれる温度に達するまで昇温する工程、この温度を1時間〜4時間維持する工程、及び室温に達するまで温度を下げて冷却する工程を含み、
− 第2の相互拡散領域(41)の酸化処理は、酸素又はアルゴンの分圧下での熱処理によって実施され、この熱処理は、900℃〜1200℃の間に含まれる温度に達するまで昇温する工程、
この温度を1時間未満維持する工程及び室温に達するまで冷却する工程を含む。
【0021】
本発明の他の特徴及び利点は、非限定的な例示として、1つの考えられる実施形態を表す添付の図面を参照して、以下に行われる説明から明らかになるであろう。
これらの図面に関して、
−
図1〜8は、本発明に従った方法の第1の実施形態の様々な工程を表す図である。
−
図9〜15は、本発明に従った方法の第2の実施形態の様々な工程を表す図である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に従った方法の第1の実施形態の第1の工程を表す図である。
【
図2】本発明に従った方法の第1の実施形態の第2の工程を表す図である。
【
図3】本発明に従った方法の第1の実施形態の第3の工程を表す図である。
【
図4】本発明に従った方法の第1の実施形態の第4の工程を表す図である。
【
図5】本発明に従った方法の第1の実施形態の第5の工程を表す図である。
【
図6】本発明に従った方法の第1の実施形態の部品に拡散処理を施す工程を表す図である。
【
図7】本発明に従った方法の第1の実施形態の部品に酸化処理を施す工程を表す図である。
【
図8】本発明に従った方法の第1の実施形態のハフニウムをドープしたアルミナの層上に熱障壁層を堆積させる工程を表す図である。
【
図9】本発明に従った方法の第2の実施形態の第1の工程を表す図である。
【
図10】本発明に従った方法の第2の実施形態の第2の工程を表す図である。
【
図11】本発明に従った方法の第2の実施形態のハフニウムを含む第1の層2の上に混合層3を直接形成する工程を表す図である。
【
図12】本発明に従った方法の第2の実施形態の混合層の上にハフニウムを含む第3の層を堆積させる工程を表す図である。
【
図13】本発明に従った方法の第2の実施形態の層2、3及び4の全てが形成又は堆積された後、拡散処理が実施され、第1の層を部品の上部に拡散させ、第1の相互拡散領域を形成し、混合層の表面上のハフニウムを含む第3の層を拡散させ、第2の相互拡散領域を形成する工程を表す図である。
【
図14】本発明に従った方法の第2の実施形態の第2の相互拡散領域の酸化処理を施す工程を表す図である。
【
図15】本発明に従った方法の第2の実施形態のアルミナの層上に熱障壁層を堆積させる工程を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
これから、本発明に従った方法の様々な工程を、図面を参照して説明する。
【0024】
図1は、ハフニウムを含まないニッケル系単結晶超合金部品1を製造することにある方法の第1の工程を示す。
【0025】
この部品1は、例えば、鋳造又は付加的な製造によって得られ、所望の形状を有する。
【0026】
以下の表1は、本発明に従った方法において有用ないくつかの例示的な超合金を示す。
それらは文字A〜Fによって識別される。
【0028】
「残部」という用語は、各超合金について、言及された様々な他の成分と共に100%に達する残留質量百分率に対応する。
【0029】
図2に示す方法の第2の工程は、部品1上に、ハフニウムを含む第1の層2を堆積させることにある。好ましくは、それは、50nm〜800nmの間に含まれる、より好ましくは50nm〜300nmの間に含まれる厚さを有する。
【0030】
ハフニウムの第1の層2の堆積は、化学気相成長(CVD)によって実施することができる。
【0031】
しかし、好ましくは堆積は物理気相成長(PVD)により、より好ましくは堆積された厚さの良好な制御を可能にする陰極スパッタリングによって実施される。
【0032】
PVDは、部品1と、堆積される材料に対応する1つ以上のターゲット(ここでは特にハフニウムである)とを含む筐体内で実施される。反応器壁とターゲットとの間に電位差を印加すると、プラズマが形成され、その正の種が陰極(ターゲット)に引き付けられ、それと衝突する。ターゲットの原子はスパッタリングされ、次に部品1上で凝縮する。
【0033】
好ましくは、堆積条件は以下の通りである。
− 堆積中の加熱:100℃〜900℃、
− 圧力:0.1Pa〜1Pa、
− 電力密度:2〜15W/cm
2、
− 分極:−500V〜−150V。
【0034】
イオン衝撃は、−200V〜500Vの間で10〜30分間実施される。
【0035】
次いで、ハフニウムのこの第1の層2の拡散工程が実施され(
図3参照)、部品1の表面に、ハフニウムが存在する第1の相互拡散領域21が形成される。これらの図には示されないが、ハフニウムの層全体が拡散しておらず、ハフニウムの薄い層が相互拡散層21の上に残ることも可能である。
【0036】
好ましくは、拡散処理は、ハフニウム2の第1の層で被覆された部品1を筐体内に配置し、筐体を真空にするか又は筐体内にアルゴンと5体積%のヘリウムの混合物を含む雰囲気を導入することによって実施される。
【0037】
この筐体は、堆積のために使用される筐体とは異なることが好ましいが、同じであってもよい。
【0038】
次いで、以下のようにして拡散を実施することが好ましい。
【0039】
次に、800℃〜1200℃の間に含まれる温度に達するまで昇温する段階を含む熱処理を行い、この温度段階を1時間〜4時間維持する。
【0040】
次いで、この段階の後に、室温に戻るまで筐体内の温度を低下させることにある冷却工程が続く。
【0041】
このように形成された第1の相互拡散領域21は、ハフニウムを含まないニッケル系単結晶超合金部品1を腐食及び酸化から保護する。
【0042】
図4に示す方法の第4の工程は、第1の相互拡散領域21上に同時に又は交互に、好ましくはNiAlCrSi、NiAlCrSiPt、NiCoAlCrSiPt、NiAl、NiPtAl又はMCrAlY(Mは、コバルト、ニッケル又はコバルト−ニッケルに等しい)から選択される少なくとも10原子%のアルミニウム、好ましくは50原子%未満のアルミニウムを含む合金のアンダーコートと、ハフニウムを含む第2の層とを堆積させ、混合層3を形成することにある。
【0043】
好ましくは、少なくとも10原子%のアルミニウムを含むアンダーコートは、5μm〜30μmの間に含まれる厚さを有する。また好ましくは、ハフニウムを含む第2の層は、20nm〜700nmの間に含まれる厚さを有する。
【0044】
堆積が同時である場合は、合金が得られる。したがって、例えば、アンダーコートがNiAlPtである場合、得られる混合層3はNiAlPtHfである。
【0045】
この堆積は、上記の堆積技術の1つによって実施することができる。
【0046】
好ましくは、それは上記の条件で陰極スパッタリングによって実施される。
【0047】
この同時堆積は、アンダーコートを形成するために、ハフニウムの層を堆積するためのハフニウムターゲットと、堆積すべき合金の様々な成分を含む合金ターゲットとを用いて実施することができる。
【0048】
別の実施形態によれば、この堆積は、堆積すべき化学元素毎に1つのターゲット、例えば、NiCrAlYとハフニウムの同時堆積(同時スパッタ堆積)のための5つのターゲットを用いて実施することができる。
【0049】
下の表は、使用可能なアンダーコートとハフニウムの厚さのペアの様々な例を示す。
【0051】
アンダーコートの堆積中のハフニウムの第2の堆積は、アンダーコートに含まれる金属カチオンの拡散をブロックし、その中の酸素の拡散を遅らせ、アンダーコートの酸化速度を遅くすることによってアンダーコート粒界を強化する。この混合層3の役割は、アルミニウムリザーバの寿命及びその後に形成される場合熱障壁層の寿命を延ばすことである。
【0052】
図5に示す方法の第5の工程は、混合層3上に、好ましくは10nm〜100nmの間に含まれる厚さを有する、ハフニウムを含む第3の層4を堆積させることにある。
【0053】
好都合なことに、この堆積は、ハフニウムの第1の層2の堆積について上記したものと同じ技術及び同じ条件を用いて実施される。
【0054】
最後に、
図6に示すように、この方法は、部品1に拡散処理を施し、次に酸化処理を施すことにある。
【0055】
ハフニウム4の第3の層の拡散により、第2の相互拡散領域41が生じる。拡散処理は、ハフニウムの第1の層2の拡散処理について上記した条件と同じ条件で実施するのが有利である。
【0056】
図7に示す酸化処理により、アルミナとハフニウムとの層42が生じる。
【0057】
その厚さは、好ましくは200nm〜700nmの間に含まれる。
【0058】
より正確には、それはその粒界にハフニウムを含むアルミナの層、即ち、粒界においてハフニウムをドープしたアルミナの層である。
【0059】
この酸化処理は、酸素又はアルゴンの分圧下の筐体内で実施される。
【0060】
酸化処理の様々な工程は、好ましくは以下の通りである。
− 昇温:好ましくは80℃〜100℃/分、
− 酸化段階:900℃〜1200℃の間に含まれる温度で0.5時間〜1時間、
− 冷却、降温:好ましくは80℃〜100℃/分。
【0061】
最後に、ハフニウムをドープしたアルミナ42の層上に、熱障壁層5の堆積(
図8参照)を進めることも可能である。この層5は、例えば、イットリア化ジルコニア、又はセラミックとイットリア化ジルコニアを含む多層である。
【0062】
ハフニウムの堆積及び拡散及び酸化アンダーコートの様々な工程は、同じ蒸着装置で実施することができ、これにより製造が単純化されることに留意されたい。
【0063】
これから、本発明に従った方法の第2の実施形態を、
図9〜
図15に関連して説明する。これは第1の実施形態の変形例である。したがって、同じ層又はアンダーコートは同じ数値の参照番号を有する。
【0064】
図9〜
図10に示す方法の最初の2つの工程は、
図1及び
図2に示す第1の実施形態の最初の2つの工程と同一である。
【0065】
次は上記の混合層3の形成であるが、これはハフニウムを含む第1の層2の上に直接形成される(
図11に示す工程)。
【0066】
次は、
図12に示すように、混合層3の上に前の実施形態で説明したハフニウムを含む第3の層4を堆積させることである。
【0067】
層2、3及び4の全てが形成又は堆積された後、拡散処理が実施され、第1の層2を部品1の上部に拡散させ、そこに第1の相互拡散領域21を形成し、混合層3の表面上のハフニウムを含む第3の層4を拡散させ、第2の相互拡散領域41を形成する(
図13参照)。拡散処理は、第1の実施形態において上記した拡散処理と同じである。この工程を
図13に示す。
【0068】
最後に、第2の相互拡散領域41の酸化処理と、先に形成されたアルミナ層42への熱障壁層5の任意の堆積とに関する方法の最後の2つの工程を、第1の実施形態の工程に対し記載したものに従って実施した。これらの工程をそれぞれ
図14及び15に示す。
【0069】
したがって、一般に、本発明に従う法は、様々な層2、3、4を堆積又は形成し、上記の拡散処理を行うことにある。この拡散処理は、第1の層2の堆積後に実施され、その後第3の層4の堆積後に繰り返されるか、又は全ての層の堆積後に単一の工程で実施される。