特許第6931300号(P6931300)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6931300
(24)【登録日】2021年8月17日
(45)【発行日】2021年9月1日
(54)【発明の名称】プリンタおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 17/08 20060101AFI20210823BHJP
   B41J 17/24 20060101ALI20210823BHJP
   B41J 33/16 20060101ALI20210823BHJP
   B41J 33/34 20060101ALI20210823BHJP
   B41J 33/44 20060101ALI20210823BHJP
   B41J 17/36 20060101ALI20210823BHJP
   B41J 2/325 20060101ALI20210823BHJP
【FI】
   B41J17/08
   B41J17/24
   B41J33/16
   B41J33/34
   B41J33/44
   B41J17/36 B
   B41J2/325 A
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-122431(P2017-122431)
(22)【出願日】2017年6月22日
(65)【公開番号】特開2019-5971(P2019-5971A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2020年4月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松内 智宏
【審査官】 牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−045744(JP,U)
【文献】 特開2006−312289(JP,A)
【文献】 特開平06−155876(JP,A)
【文献】 特開平07−089202(JP,A)
【文献】 特開昭63−160869(JP,A)
【文献】 特開2004−167890(JP,A)
【文献】 特開2009−113228(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0116891(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 17/08
B41J 2/325
B41J 17/24
B41J 17/36
B41J 33/16
B41J 33/34
B41J 33/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字ヘッドとプラテンとが対向して配置され、前記印字ヘッドと前記プラテンとの間を搬送される印字媒体に前記印字ヘッドで印字する印字部と、
印字前のインクリボンを巻装したリボン保持軸と、
印字後のインクリボンを巻き取って回収するリボン巻取軸と、
前記リボン保持軸を回転駆動する送りモータと、
前記リボン巻取軸を回転駆動する巻取モータと、
前記印字部と前記リボン保持軸との間のインクリボンの搬送経路に設けられ、インクリボンと当接してインクリボンを前記印字部へ案内する案内ローラと、
前記印字部と前記案内ローラとの間のインクリボンの搬送経路に沿って設けられ、前記リボン保持軸と前記リボン巻取軸との間に張架されたインクリボンの弛みを検出する光学センサと、
前記巻取モータを正回転させて、インクリボンを前記リボン保持軸から前記印字部に引き出し、さらに、当該インクリボンを前記リボン巻取軸に巻き取るリボン送り制御手段と、
前記光学センサが前記インクリボンの弛みを検出すると、前記送りモータを逆回転させて、前記リボン保持軸と前記リボン巻取軸との間のインクリボンを張る逆回転制御手段と、
を備え
前記光学センサとして、インクリボンの端部を検出するリボンエンドセンサを用いた、
プリンタ。
【請求項2】
印字ヘッドとプラテンとが対向して配置され、前記印字ヘッドと前記プラテンとの間を搬送される印字媒体に前記印字ヘッドで印字する印字部と、
印字前のインクリボンを巻装したリボン保持軸と、
印字後のインクリボンを巻き取って回収するリボン巻取軸と、
前記リボン保持軸を回転駆動する送りモータと、
前記リボン巻取軸を回転駆動する巻取モータと、
前記印字部と前記リボン保持軸との間のインクリボンの搬送経路に設けられ、インクリボンと当接してインクリボンを前記印字部へ案内する案内ローラと、
前記印字部と前記案内ローラとの間のインクリボンの搬送経路に沿って設けられ、前記リボン保持軸と前記リボン巻取軸との間に張架されたインクリボンの弛みを検出する光学センサと、
前記巻取モータを正回転させて、インクリボンを前記リボン保持軸から前記印字部に引き出し、さらに、当該インクリボンを前記リボン巻取軸に巻き取るリボン送り制御手段と、
印字動作が停止した後であって次の印字動作が開始するまでの間のいずれかのタイミングで、前記光学センサの受光量が弛み検出用の閾値以下となったか判定する判定手段と、
前記判定手段が閾値以下と判定した場合に、前記送りモータを逆回転させて、前記リボン保持軸と前記リボン巻取軸との間のインクリボンを張る逆回転制御手段と、
を備えたプリンタ。
【請求項3】
前記光学センサとして、インクリボンからの反射光を検出する反射光センサを用いる、請求項1又は2に記載のプリンタ。
【請求項4】
印字ヘッドとプラテンとが対向して配置され、前記印字ヘッドと前記プラテンとの間を搬送される印字媒体に前記印字ヘッドで印字する印字部と、
印字前のインクリボンを巻装したリボン保持軸と、
印字後のインクリボンを巻き取って回収するリボン巻取軸と、
前記リボン保持軸を回転駆動する送りモータと、
前記リボン巻取軸を回転駆動する巻取モータと、
前記印字部と前記リボン保持軸との間のインクリボンの搬送経路に設けられ、インクリボンと当接してインクリボンを前記印字部へ案内する案内ローラと、
前記印字部と前記案内ローラとの間のインクリボンの搬送経路に沿って設けられ、前記リボン保持軸と前記リボン巻取軸との間に張架されたインクリボンの弛みを検出する光学センサと、
を備え
前記光学センサとして、インクリボンの端部を検出するリボンエンドセンサを用いた、プリンタを制御するコンピュータを、
前記巻取モータを正回転させて、インクリボンを前記リボン保持軸から前記印字部に引き出し、さらに、当該インクリボンを前記リボン巻取軸に巻き取るリボン送り制御手段と、
前記光学センサが前記インクリボンの弛みを検出すると、前記送りモータを逆回転させて、前記リボン保持軸と前記リボン巻取軸との間のインクリボンを張る逆回転制御手段と、
して機能させるためのプログラム。
【請求項5】
印字ヘッドとプラテンとが対向して配置され、前記印字ヘッドと前記プラテンとの間を搬送される印字媒体に前記印字ヘッドで印字する印字部と、
印字前のインクリボンを巻装したリボン保持軸と、
印字後のインクリボンを巻き取って回収するリボン巻取軸と、
前記リボン保持軸を回転駆動する送りモータと、
前記リボン巻取軸を回転駆動する巻取モータと、
前記印字部と前記リボン保持軸との間のインクリボンの搬送経路に設けられ、インクリボンと当接してインクリボンを前記印字部へ案内する案内ローラと、
前記印字部と前記案内ローラとの間のインクリボンの搬送経路に沿って設けられ、前記リボン保持軸と前記リボン巻取軸との間に張架されたインクリボンの弛みを検出する光学センサと、
を備えたプリンタを制御するコンピュータを、
前記巻取モータを正回転させて、インクリボンを前記リボン保持軸から前記印字部に引き出し、さらに、当該インクリボンを前記リボン巻取軸に巻き取るリボン送り制御手段と、
印字動作が停止した後であって次の印字動作が開始するまでの間のいずれかのタイミングで、前記光学センサの受光量が弛み検出用の閾値以下となったか判定する判定手段と、
前記判定手段が閾値以下と判定した場合に、前記送りモータを逆回転させて、前記リボン保持軸と前記リボン巻取軸との間のインクリボンを張る逆回転制御手段と、
して機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、プリンタおよびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ラベルプリンタ等のプリンタでは、サーマルヘッドでインクリボンに塗布されたインクを熱で溶かして転写する、熱転写式のサーマルプリンタが広く用いられている。このようなプリンタでインクリボンに弛みがあると、印字品質が低下してしまう。しかしながら、印刷動作の停止時に駆動モータの惰性でインクリボンが多めに送られてしまうこと等により、インクリボンに弛みが発生しやすい状況となっていた。
【0003】
従来技術としては、トリガ信号を入力することにより、インクリボン供給軸をバックフィードさせてインクリボンにテンションを加え、インクリボンの弛みを解消するサーマルプリンタに関する技術が開示されている。これに対して、トリガ入力を介さずに、自動的にインクリボンの弛みを解消できる技術が望まれていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、インクリボンの弛みを自動的に解消することができるプリンタおよびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のプリンタは、印字ヘッドとプラテンとが対向して配置され、前記印字ヘッドと前記プラテンとの間を搬送される印字媒体に前記印字ヘッドで印字する印字部と、印字前のインクリボンを巻装したリボン保持軸と、印字後のインクリボンを巻き取って回収するリボン巻取軸と、前記リボン保持軸を回転駆動する送りモータと、前記リボン巻取軸を回転駆動する巻取モータと、前記印字部と前記リボン保持軸との間のインクリボンの搬送経路に設けられ、インクリボンと当接してインクリボンを前記印字部へ案内する案内ローラと、前記印字部と前記案内ローラとの間のインクリボンの搬送経路に沿って設けられ、前記リボン保持軸と前記リボン巻取軸との間に張架されたインクリボンの弛みを検出する光学センサと、前記巻取モータを正回転させて、インクリボンを前記リボン保持軸から前記印字部に引き出し、さらに、当該インクリボンを前記リボン巻取軸に巻き取るリボン送り制御手段と、前記光学センサが前記インクリボンの弛みを検出すると、前記送りモータを逆回転させて、前記リボン保持軸と前記リボン巻取軸との間のインクリボンを張る逆回転制御手段と、を備え、前記光学センサとして、インクリボンの端部を検出するリボンエンドセンサを用いる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、本実施形態のプリンタの外観斜視図である。
図2図2は、プリンタの内部の構成を示す概略断面図である。
図3図3は、リボンエンドセンサとして、反射光センサを用いた場合の構成例を示す模式図である。
図4図4は、プリンタのハードウェア構成を示すブロック図である。
図5図5は、プリンタが実行する弛み解消制御の手順例を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付図面を参照して、本実施の形態に係るプリンタおよびプログラムを詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により、この発明が限定されるものではない。
【0008】
図1は、本実施形態のプリンタ1の外観斜視図である。図1に示すように、プリンタ1は、左側のケース2と、ヒンジ7でケース2の右側に連結されたケース8とを備えている。ケース2のフロントパネル3は、表示部4と、操作部5とを備えている。表示部4は、バックライト付きの液晶ディスプレイで構成されるが、その他のタイプの表示デバイスを用いてもよい。操作部5は、複数の操作ボタン6を備えている。
【0009】
右側のケース8は、ヒンジ7を回動することで筐体(即ち、ケース2、8)の内部を大きく開放できる構造となっている。図2とともに後述するが、プリンタ1は筐体内部に、ロール状に巻装されたラベル用紙20と、2つの軸に架け渡されたインクリボン30と、インクリボンに印字する印字部23とを有している。従って、ヒンジ7を回動してケース8を上部に上げることで、インクリボン30やラベル用紙20の交換、あるいは内部のメンテナンスを容易にできる構造となっている。ケース8のフロントパネル9には、ラベル発行口10が設けられている。プリンタ1は、印字後のラベルをラベル発行口10から発行する。
【0010】
図2は、プリンタ1の内部の構成を示す概略断面図である。図2に示すように、プリンタ1はその筐体内部に、用紙保持部21、用紙搬送部22、印字部23、フレーム26、インクリボン供給装置27を主に備えている。
【0011】
用紙保持部21は、ラベル用紙20をロール状に巻装して保持する軸である。ラベル用紙20は、用紙保持部21から引き出され、用紙搬送部22を経て印字部23で印字された後、ラベル発行口10から排出される。ラベル用紙20の例としては、台紙上にラベルが貼り付けられたものを用いることができる。
【0012】
用紙搬送部22は、用紙搬送ローラ41、ピンチローラ42、フレーム43、支持部44、板バネ45を主に備えている。ピンチローラ42は、支持部44に回転自在に支持されている。用紙搬送ローラ41およびピンチローラ42は、搬送経路24を搬送されるラベル用紙20を介して当接する。用紙搬送ローラ41は、フレーム26に回転可能に取り付けられ、図示しない駆動構造に駆動されて回転する。
【0013】
支持部44は、フレーム43に揺動自在に取り付けられている。また、フレーム43には、板バネ45の一端が取り付けられており、板バネ45の他端はピンチローラ42に当接している。然るに、ピンチローラ42は板バネ45に付勢され、用紙搬送ローラ41に当接するよう構成されている。
【0014】
ラベル用紙20の搬送経路24は、用紙保持部21からラベル用紙20が引き出される箇所に始まる。そして搬送経路24は、用紙搬送部22においてピンチローラ42と用紙搬送ローラ41が当接する位置を経る。更に搬送経路24は、印字部23の印字ヘッド32とプラテン31とが当接する位置を経て、ラベル発行口10が終端となる。
【0015】
また、搬送経路24において、印字部23よりの搬送方向の下流側には、ラベル剥離板25が設けられている。ラベル剥離板25は、搬送中のラベル用紙20を屈曲させて、ラベルと台紙とを剥離する。剥離された台紙は、図示しない巻取軸に巻き取られる一方、台紙から剥離されたラベルは、ラベル発行口10から発行される。
【0016】
印字部23は、プラテン31と、ライン型のサーマルプリンタヘッドである印字ヘッド32とを主に備えている。尚、印字ヘッド32の構成は印字方法に対応した構成とする。例えば、ドットインパクト方式のプリンタであれば、ドットインパクト方式の印字ヘッド32とする。プラテン31は、フレーム26に回転可能に取り付けられており、図示しない駆動部により回転駆動する。
【0017】
印字ヘッド32は、図示しないフレームに回動可能に取り付けられたヘッド保持部33に固定されている。
【0018】
インクリボン供給装置27は、リボン保持軸35と、リボン巻取軸36と、リボンエンドセンサ34と、案内フレーム37とを主に有している。リボン保持軸35は、未使用のインクリボン30をロール状に巻装している。案内フレーム37のリボン保持軸35側の端部には、リボン保持軸35から引き出されたインクリボン30を案内する案内ローラ38が設けられている。案内ローラ38は、案内フレーム37に対して回動可能に設けられている。
【0019】
印字前のインクリボン30は案内ローラ38に当接した後、リボンエンドセンサ34の検出対象領域を経て、印字ヘッド32とプラテン31とが当接する位置に達し、印字ヘッド32により転写がなされる。印字後のインクリボン30は、案内フレーム37のリボン巻取軸36側の端部39に当接した後、リボン巻取軸36に巻き取られ回収される。
【0020】
即ち、インクリボン30の搬送経路28は、リボン保持軸35からインクリボン30が引き出される箇所に始まり、案内フレーム37の案内ローラ38に当接する位置を経る。そして、搬送経路28は、リボンエンドセンサ34の検出対象領域と、印字ヘッド32とプラテン31とが当接する位置(即ち、印字位置)を順に経る。更に、搬送経路28は、案内フレーム37の端部39に当接する位置を経て、リボン巻取軸36に巻き取られる箇所が終端となる。
【0021】
リボンエンドセンサ34は、リボンエンド、即ち、インクリボン30の終端を検出するセンサである。図2に示すように、リボンエンドセンサ34は、印字部23とリボン保持軸35との間の搬送経路28に配置される。リボンエンドセンサ34は、好ましくは図2に示すように、インクリボン30の搬送経路28に沿って設けられ、搬送経路28において、印字部23と案内ローラ38との間に設けられるとよい。より好ましくは、リボンエンドセンサ34は、印字部23において印字ヘッド32とプラテン31とが当接する位置(即ち、印字位置。あるいは、転写位置。)と、案内ローラ38との間に設けられるとよい。
【0022】
尚、案内フレーム37が案内ローラ38を有さないタイプのフレームである場合には、リボンエンドセンサ34の好適な設置位置は、印字ヘッド32とプラテン31とが当接する位置と、案内フレーム37のリボン保持軸35側の端部との間となる。
【0023】
リボンエンドセンサ34としては、インクリボン30を光学的に検出する光学センサを用いることができる。好適な例としては、リボンエンドセンサ34として、発光素子と受光素子とを備えた反射光センサを用いるとよい。尚、リボンエンドセンサ34として、機械的にインクリボン30を検出するセンサを用いてもよい。
【0024】
図3は、リボンエンドセンサ34として、反射光センサを用いた場合の構成例を示す模式図である。尚、図3の模式図では、簡単のため、図2に示した構成を一部省略して記載した(例えば、端部39を省略)。図3に示すように、反射光検出型のリボンエンドセンサ34は、発光素子34aと受光素子34bとを、インクリボン30の搬送経路28に沿って同じ側に備えている。発光素子34aはインクリボン30を照射し、受光素子34bはインクリボン30からの反射光を検出する。プリンタ1は、受光素子34bの受光量(受光強度、受光レベル)を閾値判定することにより、インクリボン30の有無を判定したり、リボンエンドを検出したり、表面状態の違いを検出したりすることができる。また、プリンタ1は、受光素子34bの受光量を閾値判定することにより、リボンエンドセンサ34の弛みを検出することができる。
【0025】
・リボンエンドの検出方法
リボンエンドの検出方法については特に限定しないが、一例として、リボンエンド手前側に、反射率の高い銀色のエンドマーク等を設けておき、受光量の増加によりリボンエンドが間近であることを検出してもよい。その他の検出方法として、リボンが無くなって反射光が無くなり受光量がゼロ近傍まで落ち込んだ際に、リボンエンドを検出してもよい。いずれの場合にも、リボンエンドを判定するための受光量の閾値を予め設定しておき、閾値判定によりリボンエンドを検出すればよい。
【0026】
・インクリボンの弛み検出方法
本実施形態では、リボンエンドセンサ34を、インクリボン30の弛みを検出するセンサとして兼用する。インクリボン30は搬送経路28の外側に弛みやすいため、上述のようにリボンエンドセンサ34に反射光センサを用いる場合には、リボンエンドセンサ34とインクリボン30との距離が弛みによって遠ざかって、受光量が低下した際に、インクリボン30に弛みが発生したと判定できる。尚、インクリボン30が弛むとインクリボン30の表面と反射光センサとが向かい合う角度は変化し、互いに正対しなくなるので、当該現象によっても受光量は低下すると考えられる。弛みによる受光量の変化は、リボンエンド時の受光量の変化に比べて微小なものであるから、リボンエンド検出用の閾値および弛み検出用の閾値は、検出レベルが互いに離れており、閾値は近い値とはならない。即ち、双方の閾値を実験結果等に基づき予め設定しておけば、プリンタ1は、リボンエンドおよびインクリボン30の弛みを容易に区別して検出することができる。
【0027】
本実施形態ではこのように、リボン終端を検出するリボンエンドセンサ34をインクリボン30の弛み検出に兼用するため、従来の装置構造を大幅に変更することなく、インクリボン30の弛み解消を図ることができる。
【0028】
なお、リボンエンドセンサ34として、その他の光学センサ、例えば、透過光センサを用いてもよい。この場合にも、上述と同様、リボンエンド検出用の閾値と、インクリボン30の弛み検出用の閾値とをそれぞれ設定し、閾値判定を行えばよい。また、上述では、インクリボン30の弛み検出用のセンサとして、リボンエンドセンサ34を兼用するとしたが、弛み検出用のセンサを、リボンエンドセンサ34とは別に設けてもよい。
【0029】
次に、プリンタ1のハードウェア構成について説明する。
【0030】
図4は、プリンタ1のハードウェア構成を示すブロック図である。図4に示すように、プリンタ1は、CPU61と、ROM62と、RAM63とを備えている。CPU61は、通信I/F(Interface)64と、表示コントローラ65と、操作部コントローラ66と、ヘッドドライバ67と、モータドライバ68、69、71、72と、リボンエンドセンサ34と、バスやインタフェースを介して接続されている。
【0031】
表示コントローラ65には、表示部4(図1参照)が接続される。操作部コントローラ66には操作部5(図1参照)が接続される。ヘッドドライバ67には、印字ヘッド32(図2参照)が接続される。印字ヘッド32には、ラベル用紙20の搬送方向に対して直交する方向に発熱体がライン状に設けられている。ヘッドドライバ67は、印字データに基づいて印字ヘッド32の発熱体に対する通電のオン・オフを切り替えて、ラベル用紙20上に印字イメージを熱転写する。
【0032】
モータドライバ68には、印字部23のプラテン31(ともに図2参照)を回転駆動するプラテンモータ81が接続されている。モータドライバ69には、用紙搬送部22の用紙搬送ローラ41(ともに図2参照)を回転駆動する搬送モータ82が接続されている。また、モータドライバ71には、リボン保持軸35(図2参照)を回転駆動する送りモータ83が接続されている。また、モータドライバ72には、リボン巻取軸36(図2参照)を回転駆動する巻取モータ84が接続されている。各モータの構成については限定しないが、例えば、ステッピングモータを用いることができる。
【0033】
ROM62は、プリンタ1が実行するプログラムおよび各種データを記憶する。RAM63は、CPU61が上記各種プログラムを実行する際に一時的にプログラムやデータを記憶する展開用のメモリである。通信I/F64はプリンタ1とホストコンピュータ(不図示)とを接続し、プリンタ1とホストコンピュータとのデータ通信を制御する。ホストコンピュータは、通信I/F64を介してRAM63に印字データ(あるいは印字コマンド)を送信する。尚、印字データは操作部5を介して入力されてもよい。
【0034】
次に、本実施形態のプリンタ1が実行するプログラムについて説明する。
【0035】
なお、本実施形態のプリンタ1で実行されるプログラムは、ROM62等に予め組み込まれて提供される。本実施形態のプリンタ1で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0036】
さらに、本実施形態のプリンタ1で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態のプリンタ1で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0037】
本実施形態のプリンタ1で実行されるプログラムは、図4に示すように、印字制御部51、検出部52、モータ制御部53を含むモジュール構成となっている。CPU61(プロセッサ)は、上記ROM62等の記憶媒体からプログラムを読み出して、上記各部を主記憶装置(例えばRAM63)上にロードする。これにより、印字制御部51、検出部52、モータ制御部53が、主記憶装置上に生成される。次に、各部の機能について説明する。
【0038】
印字制御部51は、通信I/F64または操作部コントローラ66を介して印字データが入力されると、ヘッドドライバ67を介して印字ヘッド32の動作を制御し、ラベル用紙20に印字データを転写する。
【0039】
検出部52は、リボンエンドセンサ34の検出動作を制御する。検出部52は、リボンエンドセンサ34が検出した受光量(受光強度)と、予め定められたリボンエンド検出用の閾値とに基づいて、リボンエンドを検出する。一例として、上述のように反射率の高いエンドマークを備えたインクリボンを用いるのであれば、検出部52は、受光量がリボンエンド検出用の閾値を上回った場合に、リボンエンドを検出したと判定する。
【0040】
また、検出部52は、リボンエンドセンサ34の受光量(受光強度)と、予め定められた弛み検出用の閾値とに基づいて、インクリボン30の弛みを検出する。一例として、検出部52は、受光量が弛み検出用の閾値以下となった場合に、インクリボン30に弛みが発生したと判定する。
【0041】
尚、検出部52(判定手段)は、印字動作が停止した後であって次の印字動作が開始するまでの間のいずれかのタイミングで、リボンエンドセンサ34の受光量が閾値以下となったか判定するとよい。印字動作が停止したタイミングとは、ラベル1枚分の印字動作が完了したタイミングの他、印字動作中の一時停止や、中断(強制終了等)等のいずれのタイミングであってもよい。インクリボン30の弛みは、モータ駆動停止時におけるモータ回転の惰性により発生することが一要因と考えられている。従って、印字動作が停止したタイミングでインクリボン30の弛みを判定することにより、速やかに弛みを検出することができる。
【0042】
モータ制御部53は、モータドライバ68を介してプラテンモータ81の回転駆動を制御する。また、モータ制御部53は、モータドライバ69を介して搬送モータ82の回転駆動を制御する。また、モータ制御部53は、モータドライバ71を介して送りモータ83の回転駆動を制御する。また、モータ制御部53は、モータドライバ72を介して巻取モータ84の回転駆動を制御する。
【0043】
例えば、モータ制御部53(リボン送り制御手段)は、リボン送り制御時において、巻取モータ84を正回転させて、インクリボン30をリボン保持軸35から引き出して印字部23に送り、インクリボン30をリボン巻取軸36に巻き取らせる。尚、モータ制御部53は、リボン送り制御時において、送りモータ83を巻取モータ84とは逆の回転方向にテンションをかけて、リボン保持軸35とリボン巻取軸36との間のインクリボン30を張った状態に保持する。
【0044】
また、モータ制御部53(逆回転制御手段)は、検出部52がインクリボン30の弛みを検出すると、送りモータ83を逆回転させて、リボン保持軸35とリボン巻取軸36との間のインクリボン30を張る。例えば、モータ制御部53は、リボン送り制御の停止時に巻取モータ84の駆動を停止する。そして、検出部52がインクリボン30の弛みを検出すると、モータ制御部53は、巻取モータ84は停止させたまま、送りモータ83を逆回転させて、インクリボン30を張って弛みを除去する。
【0045】
このように本実施形態では、インクリボン30に弛みが発生したと判定した場合に、自動的に送りモータ83を逆回転させて、リボン保持軸35とリボン巻取軸36との間のインクリボン30のテンション(引っ張り応力)を高める。これにより、リボン保持軸35とリボン巻取軸36との間に位置する、印字ヘッド32とプラテン31とが対向して配置され熱転写がなされる印字位置(転写位置)近傍において、インクリボン30の弛みを自動的に解消することができる。
【0046】
次に、プリンタ1が実行する弛み解消制御の手順例について説明する。
【0047】
図5は、プリンタ1が実行する弛み解消制御の手順例を示したフローチャートである。印字制御部51は、通信I/F64あるいは操作部5から印字データが入力されると(ステップS1:Yes)、ヘッドドライバ67に印字データを出力し、印字ヘッド32による印字動作を開始する(ステップS2)。モータ制御部53は、モータドライバ71、72を介して、巻取モータ84を正回転させ、インクリボン30を印字部23に向けて引き出すリボン送り制御を開始する(ステップS3)。また、モータ制御部53は、プラテンモータ81および搬送モータ82を制御して、プラテン31および用紙搬送ローラ41の回転駆動を開始する。即ち、モータ制御部53は、ラベル送り制御を開始する。これにより、ラベル用紙20は用紙保持部21から繰り出されて、印字部23に向けて搬送経路24を搬送される。
【0048】
印字データが入力されない間(ステップS1:No)は、ステップS1に戻って待機する。印字制御部51は、ラベル用紙20が印字ヘッド32の位置に達すると、印字ヘッド32の発熱動作を制御して、印字データの転写を開始する。印字されたラベル用紙20がラベル発行口10から排出されると、モータ制御部53は各モータの駆動を停止し、印字制御部51は印字ヘッド32への通電を停止して発熱動作を終了する。尚、印字コマンドにより複数枚のラベル発行が指示されている場合には、指示された枚数のラベル発行が終了した際に、モータ駆動停止、ヘッド駆動停止とする。
【0049】
印字動作が停止していない間(ステップS4:No)は、ステップS4に戻り上述の印字動作を続行する。印字動作が停止すると(ステップS4:Yes)、モータ制御部53は、送りモータ83および巻取モータ84を停止する(ステップS5)。検出部52は、リボンエンドセンサ34の受光量が、弛み検出用の閾値以下となったか否かを判定する(ステップS6)。所定の閾値以下となっていない場合(ステップS6:No)には、ステップS1に移行する。
【0050】
受光量が所定の閾値以下となった場合(ステップS6:Yes)には、モータ制御部53は、送りモータ83を逆回転させる(ステップS7)。検出部52は、リボンエンドセンサ34の受光量が、弛み検出用の閾値より大きくなったか判定する(ステップS8)。閾値より大きくなるまでは(ステップS8:No)、モータ制御部53は送りモータ83の逆回転を続ける。受光量が弛み検出用の閾値より大きくなると(ステップS8:Yes)、インクリボン30の弛みは解消されたものとして、モータ制御部53は送りモータ83を停止する(ステップS9)。ステップS9の後、ステップS1に移行し、次の印字データの入力を待つ。
【0051】
尚、上述のステップS6では、検出部52はリボンエンドセンサ34の受光量が所定の閾値以下となった場合に、インクリボン30に弛みが発生したと判定したが、判定方法はこれに限定されない。検出部52は、受光量が所定の閾値を下回った場合に、インクリボン30に弛みが発生したと判定してもよいし、所定の値域に属した場合に、インクリボン30に弛みが発生したと判定してもよい。また、判定基準となる閾値または値域については、操作部5または通信I/F64を介して、適宜設定可能としてもよい。
【0052】
また、上述では、本実施形態のプリンタとして、ロール状に巻装されたラベル用紙に印字を行うラベルプリンタを適用した例について説明したが、実施形態はこれに限定されない。印字媒体はラベル用紙に限定せず、その他の印字媒体(例えば、タグ用紙やレシート用紙など)に印字するプリンタでもよい。また、印字媒体はロール状に巻装したタイプに限定されず、シート状の印字媒体を印字部に送り出す構成のプリンタであってもよい。
【0053】
また、上述の実施形態では、インクリボンとして熱転写リボンを用いる熱転写式プリンタ(サーマルプリンタ)を用いた例を説明したが、インクリボンを用いるその他のタイプのプリンタに上記実施形態を適用してもよい。例えば、タイプライターやドットインパクト方式のプリンタに本実施形態を適用して、インクリボンの弛みを自動的に解消し、印字の質向上を図ってもよい。
【0054】
以上説明した通り、本実施形態のプリンタ1によれば、インクリボン30の弛みを検出すると、モータ制御部53が送りモータ83を逆回転させて、リボン保持軸35とリボン巻取軸36との間のインクリボン30を張る。これにより、本実施形態では、インクリボンの弛みを自動的に解消することができる。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
1…プリンタ、20…ラベル用紙、23…印字部、30…インクリボン、31…プラテン、32…印字ヘッド、34…リボンエンドセンサ、35…リボン保持軸、36…リボン巻取軸、51…印字制御部、52…検出部、53…モータ制御部、83…送りモータ、84…巻取モータ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0057】
【特許文献1】特開2004−167890号公報
図1
図2
図3
図4
図5