特許第6931304号(P6931304)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6931304
(24)【登録日】2021年8月17日
(45)【発行日】2021年9月1日
(54)【発明の名称】フィブロイン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 89/00 20060101AFI20210823BHJP
   C08K 5/053 20060101ALI20210823BHJP
【FI】
   C08L89/00
   C08K5/053
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-152428(P2017-152428)
(22)【出願日】2017年8月7日
(65)【公開番号】特開2019-31605(P2019-31605A)
(43)【公開日】2019年2月28日
【審査請求日】2020年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】橘 裕己
(72)【発明者】
【氏名】万木 啓嗣
【審査官】 藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−187235(JP,A)
【文献】 特開2017−056594(JP,A)
【文献】 特開2019−031457(JP,A)
【文献】 特表2012−505297(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/103158(WO,A3)
【文献】 特開2016−216620(JP,A)
【文献】 特表2018−500470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィブロインと液体とを含み、下記条件(1)及び/又は(2)を充足する、ゲル化していない液状組成物。
(1)液体がポリオールを液体全体に対して30質量%以上の割合で含む
(2)液体としてのポリオールを組成物全体に対して30質量%以上の割合で含む
【請求項2】
フィブロインが液体中に分散又は溶解している請求項1記載の組成物。
【請求項3】
液体が、C2−4アルカンジオール、ジ乃至トリC2−4アルカンジオール、C3−6アルカントリオール、及びジ乃至トリC3−6アルカントリオールから選択された少なくとも1種のポリオールを含む請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
フィブロインの割合が組成物全体に対して0.001〜20質量%である請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
フィブロインの割合が組成物全体に対して0.001〜10質量%である請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
1,3−ブチレングリコールで10倍希釈したときの濁度が80NTU以下である請求項1〜のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
フィブロインと液体とを混合し、請求項1〜のいずれかに記載の組成物を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィブロインを含む組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
フィブロインは、保湿性などの特性を備えた材料であり、化粧品の材料などとして使用されている。
【0003】
このような用途への適用に際して、フィブロインを液状(例えば、溶液ないし分散液)の形態で使用できれば有利である。
【0004】
しかし、フィブロインを液体に溶解ないし分散させることは難しく、一時的に溶解ないし分散できた場合であっても、ただちに凝集や沈殿が生じてしまい、経時的に安定な液状のフィブロインを得ることは困難であった。
【0005】
なお、特許文献1(特開平2−113066号公報)には、2価以上の多価アルコール及びそのポリマー、さらにはポリビニルアルコールよりなる群から選ばれたポリオールの1種又はその混合物を溶液濃度で0.10〜5.0%(重量)、防カビ・防腐剤を溶液濃度で0.02〜1.0%(重量)、さらにキレート化剤を溶液濃度で0.02〜1.0%(重量)含有する、均一な溶液状態の絹フィブロイン水溶液が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−113066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、フィブロインと液体を含む組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記のように、従来、フィブロインの経時的に安定な溶液ないし分散液を効率よく得ることは困難であった。
【0009】
なお、前記特許文献1では、均一な溶液状態のフィブロイン水溶液が開示されているが、菌汚染による安定性を想定したものであり、フィブロインそのものの溶液における安定性を想定したものではない。
【0010】
また、特許文献1において、2価以上の多価アルコールは、防カビ・防腐剤を水に溶解させるための安定剤としてごく少量使用されている。このように、従来、フィブロインを分散ないし溶解させる媒体としては、主に水が使用されているのが現状であった。
【0011】
このような中、本発明者らは、特許文献1とは全く異なる視点で、ポリオールを媒体とすることで、意外にも、フィブロインをポリオール中に分散ないし溶解状態にできること、また、このような分散ないし溶解状態は比較的安定であること、さらに、一旦、このような分散ないし溶解状態を経た後、水などで希釈しても、フィブロインの分散ないし溶解状態を保持できることなどを見出した。
【0012】
本発明者らは、上記以外にも下記するように種々の新知見を得て、さらに鋭意検討を重ねて本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明の組成物は、フィブロインと液体とを含み、通常、下記条件(1)及び/又は(2)を充足する。
(1)液体がポリオールを液体全体に対して30質量%以上の割合で含む
(2)液体としてのポリオールを組成物全体に対して30質量%以上の割合で含む
このような組成物において、フィブロインは、通常、液体中に分散又は溶解していてもよい。
また、本発明の組成物において、液体は、例えば、C2−4アルカンジオール、ジ乃至トリC2−4アルカンジオール、C3−6アルカントリオール、及びジ乃至トリC3−6アルカントリオールから選択された少なくとも1種のポリオールを含んでいてもよい。
本発明の組成物において、フィブロインの割合は、例えば、組成物全体に対して0.001〜20質量%程度であってもよい。
本発明の組成物は、1,3−ブチレングリコールで10倍希釈したときの濁度が80NTU以下となる組成物であってもよい。
本発明には、フィブロインと前記液体とを混合し、前記組成物を製造する方法も含まれる。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、新規なフィブロインを含む組成物を提供できる。
このような組成物では、通常、フィブロインが液体中に分散ないし溶解している。
そして、このような分散ないし溶解状態は、比較的安定であり、長期に亘って維持しうる。
また、本発明の組成物は、新たに別の液体(水など)が添加されるなどしても、効率良く、分散ないし溶解状態を保持しうる。そのため、一旦調製された本発明の組成物を用いて、用途等に応じて、フィブロインの分散ないし溶解安定性に優れた種々の組成物を提供しうる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[組成物]
本発明の組成物(フィブロイン組成物)は、フィブロインと液体とを含む。そして、この液体は、後述するように、特定の液体で構成されている。
【0016】
(フィブロイン)
フィブロインは、タンパク質(繊維状タンパク質)であり、通常、絹糸虫類[例えば、蚕(家蚕、野蚕など)、蜘蛛、蜂などの各種昆虫など]が分泌するタンパク質であってもよい。
【0017】
特に、フィブロインは、蚕の繭を原料とするもの(例えば、絹フィブロイン)であってもよく、例えば、繭、繭糸、繭糸加工物(絹糸など)、繭糸加工物の残糸などを原料としてもよい。
【0018】
フィブロインの分子量は、特に限定されず、用途等に応じて適宜選択できるが、例えば、重量平均分子量で、8000以上、15000以上、20000以上、22000以上、25000以上などであってもよい。また、重量平均分子量の上限値は、特に限定されないが、例えば、200000、180000、140000、100000、95000などであってもよい。なお、これらの上限値と下限値とを適宜組み合わせて適当な重量平均分子量の範囲を設定してもよい(以下同じ)。
【0019】
比較的低分子量のフィブロイン(加水分解したフィブロインなど)は、皮膚への浸透性が要求される用途等において好適である場合がある。比較的低分子量のフィブロインは、通常、水などの液体中で凝集や沈殿を生じやすくなる場合があるが、本発明では、後述の特定の液体との組み合わせにより、低分子量のフィブロインであっても、このような凝集や沈殿を効率良く抑制し、安定な組成物を形成しうる。
【0020】
なお、分子量は、特に限定されないが、例えば、以下のような方法により測定しうる。
ポリアクリル酸を標準物質とし、0.1M酢酸ナトリウム水溶液/アセトニトリル=75/25(質量比)を溶離液としてHLC−8320GPC(東ソー社製)、カラムGF−310−HQ、GF−710−HQ及びGF−1G−7B(東ソー社製)によるGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)法にて測定できる。
【0021】
フィブロインの形状は、特に限定されず、例えば、粉(粉粒)状であってもよい。
【0022】
フィブロインは、公知の方法により合成(精製)したものを使用してもよく、市販品を使用してもよい。
【0023】
(液体)
組成物(液状組成物、フィブロイン混合液、フィブロイン組成物)は、液体(液体(B)ということがある)を含む。本発明では、このような液体(液体成分)として、少なくともポリオール(ポリオール(B1)ということがある)を含む液体を使用する。
【0024】
ポリオールは、組成物を液状とできる限り、常温で固体状(例えば、他の液体との混合状態では液体を保持できる固体のポリオール)であってもよいが、通常、液状であってもよい。
【0025】
ポリオール(多価アルコール)は、2以上のヒドロキシル基を有する。ポリオールが有するヒドロキシル基の数は、2以上であれば特に限定されず、例えば、2〜10、2〜8、2〜6、2〜4、2〜3などであってもよい。
【0026】
ポリオールが沸点を有する場合、ポリオールの沸点(1気圧の沸点)は、特に限定されないが、例えば、450℃以下、好ましくは400℃以下、さらに好ましくは350℃以下であってもよく、300℃以下であってもよい。
ポリオールの沸点(1気圧の沸点)の下限値は、特に限定されないが、例えば、100℃、130℃、150℃、180℃などであってもよい。
【0027】
具体的なポリオールとしては、例えば、グリコール(ジオール)、3以上のヒドロキシル基を有するポリオールなどが含まれる。
【0028】
グリコールとしては、例えば、アルカンジオール[又はアルキレングリコール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ブタンジオール(例えば、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール)、ペンタンジオール(例えば、1,5−ペンタンジオール)、ヘキサンジオール(例えば、1,6−ヘキサンジオール)、へプタンジオール(例えば、1,7−ヘプタンジオール)、オクタンジオール(例えば、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール)などのC2−10アルカンジオール、好ましくはC2−6アルカンジオール、さらに好ましくはC2−4アルカンジオールなど]、ポリアルカンジオール[例えば、ジアルカンジオール(又はジアルキレングリコール、例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなど)、トリアルカンジオール(又はトリアルキレングリコール、例えば、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール)、テトラアルカンジオール(又はテトラアルキレングリコール、例えば、テトラエチレングリコール)など]などが挙げられる。
【0029】
3以上のヒドロキシル基を有するポリオールとしては、例えば、アルカンポリオール{例えば、アルカントリオール[例えば、グリセリン、ブタントリオール(例えば、1,2,4−ブタントリオール)、ヘキサントリオール(例えば、1,2,6−ヘキサントリオール)などのC3−10アルカントリオール、好ましくはC3−6アルカントリオール]など}、ポリアルカンポリオール{例えば、ポリアルカントリオール[例えば、ポリグリセリン(例えば、ジグリセリン、トリグリセリン)などのポリアルカントリオール、好ましくはジ乃至トリC3−6アルカントリオール]など}などが挙げられる。
【0030】
ポリオールは、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0031】
これらのポリオールのうち、特に、C2−4アルカンジオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオールなど)、ポリC2−4アルカンジオール(例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコールなどのジ乃至トリC2−4アルカンジオール)、C3−6アルカントリオール(例えば、グリセリン)、ポリC3−6アルカントリオール(例えば、ジグリセリン、トリグリセリンなどのジ乃至トリC3−6アルカントリオール)などが好ましい。
【0032】
液体は、ポリオールを多量(高濃度)に含んでいてもよい。例えば、液体全体に対するポリオールの割合は、30質量%以上、好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、特に60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上であってもよく、75質量%以上、80質量%以上、90質量%以上などとすることもできる。
【0033】
液体は、ポリオールを含んでいる限り、他の液体(ポリオールでない液体)を含んでいてもよい。他の液体(他の液体(B2)などということがある)としては、特に限定されないが、水、アルコール[又はモノオール、例えば、アルカノール(例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノールなどのC1−4アルカノール)など]などが挙げられる。
【0034】
他の液体は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。特に、他の液体は、少なくとも水を含んでいてもよい。
【0035】
液体が他の液体を含む場合、液体全体に対する他の液体の割合は、例えば、70質量%以下、好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下、特に40質量%以下、特に好ましくは30質量%以下であってもよく、25質量%以下、20質量%以下、10質量%以下などであってもよい。
【0036】
特に、液体は、他の液体として水を含む場合でも、液体全体に対する水の割合を上記割合としてもよい。
【0037】
液体が他の液体を含む場合、ポリオールと他の液体との割合は、例えば、前者/後者(質量比)=99.9/0.1〜30/70、好ましくは99.5/0.5〜40/60、さらに好ましくは99/1〜50/50、特に98.5/1.5〜60/40、特に好ましくは98/2〜70/30、最も好ましくは97.5/2.5〜75/25程度であってもよく、99.9/0.1〜80/20、99.5/0.5〜85/15、99.9/0.1〜90/10、99.5/0.5〜93/7などであってもよい。
【0038】
(他の成分)
本発明の組成物は、フィブロインと液体とを含んでいればよく、用途等に応じて他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、保湿剤、香料、色素、ビタミン類、防腐剤、防かび剤、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、増粘剤、界面活性剤、乳化剤、分散剤などの添加剤が挙げられる。
他の成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0039】
なお、本発明の組成物では、後述するように、通常、フィブロインが液体中に分散(ないし溶解)しているが、このような分散(溶解)させるための分散剤(又は分散安定剤)等を特に使用しなくても、分散状態を担保しうる。
【0040】
(組成物の態様)
組成物において、フィブロインの割合(濃度、組成物全体に対するフィブロインの割合)は、特に限定されないが、例えば、0.001〜20質量%、好ましくは0.005〜15質量%、さらに好ましくは0.01〜10質量%程度であってもよい。
【0041】
組成物において、ポリオールの割合(組成物全体に対するポリオールの割合)は、例えば、30質量%以上、好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、特に55質量%以上、特に好ましくは60質量%以上、最も好ましくは70質量%以上であってもよく、75質量%以上、80質量%以上、90質量%以上などとすることもできる。
【0042】
組成物(又は液体)が他の液体を含む場合、組成物において、他の液体(例えば、水)の割合(組成物全体に対する他の液体の割合)は、例えば、70質量%以下、好ましくは65質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下、特に50質量%以下、特に好ましくは45質量%以下、最も好ましくは40質量%以下であってもよく、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、10質量%以下などであってもよい。
【0043】
組成物において、液体の割合(組成物全体に対する液体の割合)は、例えば、30質量%以上、好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、特に60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上、最も好ましくは75質量%以上であってもよく、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、98質量%以上、99質量%以上などとすることもできる。
【0044】
組成物において、ポリオールの割合は、フィブロイン1質量部に対して、例えば、30質量部以上、好ましくは40質量部以上、さらに好ましくは50質量部以上であってもよい。
【0045】
組成物において、ポリオールの割合は、フィブロイン1質量部に対して、特に限定されないが、例えば、10000質量部以下、好ましくは8000質量部以下、さらに好ましくは5000質量部以下であってもよい。
【0046】
組成物において、フィブロインの存在形態は特に限定されないが、通常、フィブロインが液体中に分散(及び/又は溶解)していてもよい(フィブロインが液体中に分散した組成物(分散液)の形態であってもよい)。換言すれば、本発明の組成物は、フィブロインが、液体に分散した分散系(及び/又は溶解した溶液系)を構成又は形成していてもよい。
【0047】
そして、このような分散液において、フィブロインの分散性は比較的良好である場合が多く、通常、長期にわたって分散状態を維持しうる。
【0048】
本発明の組成物は、フィブロインが安定して分散(ないし溶解)している場合が多い。そのため、本発明の組成物は、沈殿・凝集などが抑制されており、比較的濁りが少ない場合が多い。
【0049】
このような本発明の組成物の濁度は、1,3−ブチレングリコールにて10倍(質量倍)希釈した組成物(希釈液)において、80NTU以下、好ましくは70NTU以下、さらに好ましくは60NTU以下であってもよく、50NTU以下、40NTU以下、30NTU以下、20NTU以下であってもよい。
【0050】
なお、濁度は、特に限定されないが、例えば、濁度計(例えば、HACH社製、「HACH濁度計2100AN」など)を用いて測定できる。
【0051】
(組成物の製造方法)
本発明の組成物の製造方法は、特に限定されず、例えばフィブロインと液体と(さらに必要に応じて他の成分と)を混合することにより製造できる。
【0052】
他の液体(水など)を混合する場合、フィブロインとポリオールと他の液体とを混合してもよく、好ましくはフィブロインとポリオールと(他の液体の一部と)を混合した後、他の液体[他の成分の一部(残部)又は全部]を混合(後添加)してもよい。
【0053】
このような後添加を行う場合、最終的に得られる組成物において、各種成分の割合は前記割合であってもよいし、後述の第2の組成物を得てもよい。
【0054】
混合において、フィブロインは固体状であってもよく、予め所定の溶媒にフィブロインを溶解又は分散した液状のものを使用してもよい。
このような場合、所定の溶媒は前記他の液体(水など)であってもよい。所定の溶媒に、フィブロインを溶解又は分散させる場合、所定の溶媒の割合は、特に限定されないが、例えば、フィブロイン1質量部に対して、0.1質量部以上、0.5質量部以上、1質量部以上、2質量部以上、3質量部以上、5質量部以上などであってもよい。
なお、所定の溶媒の上限値は、特に限定されないが、例えば、10000質量部、1000質量部、100質量部などであってもよい。
【0055】
[組成物の用途]
本発明の組成物は、フィブロインと液体を含んでおり、そのまま、各種用途に使用することができる。
このような組成物は、前記のように、通常、フィブロインが液体中に分散した組成物(分散液)の形態であり、そのまま使用しても各種用途への適用性が高い。
【0056】
一方、本発明の組成物によれば、一旦形成されたフィブロインの分散状態は、さらにポリオールでない液体(他の液体)等を添加しても、維持しうる。このような他の液体(第2の液体)としては、前記と同様に、水、アルコールなどが挙げられる。他の液体は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0057】
すなわち、本発明の組成物(第1の組成物)を利用することで、フィブロインを含む所望の組成物(第2の組成物)を得ることもできる。
【0058】
そのため、本発明には、前記組成物(第1の組成物)に、さらに他の成分(他の液体など)を添加(混合)した組成物(第2の組成物)も含まれる。
【0059】
このような第2の組成物において、フィブロインやポリオールの割合・種類等は、前記組成物(第1の組成物)と同様の範囲から選択してもよく、選択しなくてもよい。
特に、前記のように、一旦形成された分散状態は、その後、水等を添加しても保持されるため、第2の組成物における、ポリオールや他の液体(水など)の割合は必ずしも前記の範囲である必要はない。
詳細には、第1の組成物を経由することで、水などにより希釈され、ポリオールの割合が前記範囲外となる(前記範囲を充足しない)第2の組成物になっても、良好な分散状態が維持される。そのため、当該第2の組成物を用いて各種用途に使用することも可能である。
【0060】
例えば、第1の組成物に、他の液体(例えば、水)を添加する場合、第2の組成物におけるフィブロインやポリオールの濃度(割合)は、第1の組成物より低くなり、第2の組成物における他の液体の濃度(割合)はより高くなる。
【0061】
このような場合、第2の組成物において、ポリオールの割合は、前記範囲であってもよく、低割合であってもよい。低割合としては、液体全体(第2の組成物を構成する液体)及び/又は組成物(第2の組成物)全体に対して、例えば、40質量%以下、35質量%以下、33質量%以下、30質量%以下、30質量%未満、20質量%以下、18質量%以下、15質量%以下、10質量%以下などであってもよく、特に、これらの中でも、前記第1の組成物における所定の割合を充足しない割合(例えば、30質量%未満、20質量%以下、10質量%以下など)であってもよい。
なお、ポリオールの割合の下限値は、特に限定されないが、例えば、0.01質量%、0.05質量%、0.1質量%、0.2質量%などであってもよい。
【0062】
第2の組成物において、他の液体(水など)の割合は、前記範囲であってもよく、高割合であってもよい。高割合としては、例えば、50質量%以上、55質量%以上、60質量%以上、65質量%以上、70質量%以上、70質量%超、75質量%以上、80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上などであってもよく、特に、これらの中でも、前記他の液体の割合を充足しない割合(例えば、70質量%超、80質量%以上など)などであってもよい。
なお、第2の組成物における他の液体の割合の上限値は、特に限定されないが、例えば、99.5質量%、99質量%、98.5質量%、98質量%、97質量%などであってもよい。
【0063】
第2の組成物において、フィブロインの割合(濃度、組成物全体に対するフィブロインの割合)は、特に限定されないが、例えば、0.0001〜10質量%、好ましくは0.001〜5質量%、さらに好ましくは0.005〜3質量%程度であってもよく、2.5質量%以下、2質量%以下、1.5質量%以下、1質量%以下、0.5質量%以下などであってもよい。
【0064】
なお、第2の組成物は、第1の組成物に、他の成分を混合することで製造できる。混合方法としては、特に限定されず、慣用の手法を利用できる。
通常、第2の組成物は、少なくとも水を含む液体(第2の液体)で第1の組成物を希釈したものであってもよく、第2の組成物におけるポリオールや水の割合は、第1の組成物における前記ポリオール(さらには水)の割合を充足しない割合(例えば、液体又は第2の組成物全体に対するポリオールの割合が30質量%未満であるなど)であってもよい。
【0065】
本発明の組成物(第1及び第2の組成物)は、フィブロインを必要とする種々の用途に適用できる。
【0066】
このような用途としては、化粧品(又は化粧料)、外用剤(外用製剤)、洗剤、飲食品などが挙げられ、特に皮膚用であってもよい。より具体的には、クリーム、乳液、洗顔料、頭髪用(洗髪料又はシャンプー、ヘアリンス、ヘアリキッド、育毛剤など)、入浴剤、石鹸、化粧水などであってもよい。
【0067】
本発明の組成物は、パック形成用組成物(パック剤)などとして好適に利用してもよい。以下、これらについて詳述する。
【0068】
[パック形成用組成物]
パックは、前記組成物により形成される。
パックは、被パック部位(顔面など)に直接的にコーティングするためのパックであってもよく、シートパック(シート状のパック)であってもよい。
【0069】
具体的なパック(シート状のパック)には、ウェットタイプ、ドライタイプなどが挙げられる。このようなパックは、通常、基材とパック形成成分(少なくともフィブロイン)とで構成されている。また、パックには、フィルムタイプのパックも含まれる。このようなフィルムタイプのパックは、パック形成成分そのものがフィルムを形成しており、通常、基材を備えていない場合が多い。以下、これらのパックについて詳述する。
【0070】
(基材を備えたパック)
基材を備えたパックは、基材と、パック形成成分とで構成されており、このパック形成成分が、前記組成物で形成されている。
より具体的には、基材を備えたパックのうち、ウェットタイプのパックは、例えば、基材と、この基材にコーティング又は含浸された液状成分とで構成されている。
このタイプのパックでは、液状成分が、少なくとも前記組成物に由来するものであってもよい。液状成分は、保湿成分などを含んでいてもよい。
なお、ウェットタイプのパックは、例えば、シートマスク、シートパック、ローションパック、フェイスマスクなどとも称されている。このようなパックは、折りたたまれたパックを容器や袋から出して広げて使用するものであってもよい。
【0071】
また、基材を備えたパックのうち、ドライタイプのパックは、例えば、基材に、液状成分をコーティング又は含浸させた後、乾燥させた後、液状成分のうち揮発性成分(液体成分)を除去(乾燥)したものであってもよい。
このタイプのパックでは、液状成分が、少なくとも前記組成物に由来するものであってもよい。液状成分は、保湿成分などを含んでいてもよい。
なお、ドライタイプのパックは、使用時に、液状成分(例えば、化粧水)を含ませることで肌へ密着させるものであってもよく、具体的には、乾燥パック、ドライパックなどと称されている。
【0072】
基材を備えたパック(基材を用いたパック)において、基材としては、シートパックに使用される慣用の基材であればよく、例えば、織布、不織布などのいずれであってもよい。基材は、被パック部位に応じた形状であってもよい。例えば、基材は、目、鼻、口などを切り抜いた任意のフェイスマスクの形状であってもよい。また、基材は、単一の形状であってもよく、異なる形状の基材を組み合わせることもできる。例えば、基材は、顔全体を覆う1部式の基材であってもよく、顔面上部用基材(例えば、目、鼻の周りを覆う基材)と顔面下部用基材(例えば、口の周りおよび顎を覆う基材)とに分離された2部式の基材であってもよい。
【0073】
基材の厚みは、特に限定されないが、使いやすさや携帯性などの観点から、0.01〜5.0mmであると好ましい。
【0074】
基材を用いたパック(例えば、ウェットタイプ、ドライタイプ)において、前記組成物の塗布量は特に限定されず、所望のフィブロイン量(例えば、フィブロイン含量として5〜6000mg/m、好ましくは10〜5000mg/m程度)となるように、コーティング又は塗布すればよい。
【0075】
(フィルムタイプのパック)
パックには、フィルムタイプのパック(フィブロイン含有フィルム)も含まれる。このようなフィルムタイプのパックは、被パック部位に直接的にコーティングするためのパックであってもよい。
このタイプのパックでは、パックそのものが、前記組成物に由来してもよい。また、フィルムタイプのパックは、保湿成分などを含んでいてもよい。
フィルムタイプのパックは、敏感肌や皮膚疾患を有する被パック部位の肌保護フィルムとしても利用することができ、フィルム形成(コーティング)後、化粧できるなどの特性を持っていてもよい。
フィルムタイプのパックの厚みは、例えば、0.05〜50μm、好ましくは0.1〜40μm、さらに好ましくは0.1〜30μm程度であってもよい。
なお、フィルムタイプのパックは、離型紙(離型フィルムなど)上に形成されていてもよいが、通常、パックそのものを構成する基材(織布、不織布など)を備えていない場合が多い。
【0076】
上記のように、前記組成物を用いることで、種々のパックを形成できる。特に、前記組成物によれば、感触や風合いが良好なパックを効率良く形成しうる。また、フィルムタイプのパックでは、前記組成物におけるフィブロインの分散状態に起因してか、ゲルや異物等の発生が抑制された良好なフィルム(例えば、表面に凹凸がなく、平滑なフィルム)を効率よく形成しうる。
【0077】
パックは、フィブロインを含有(付着)する限り、前記液体を保持していてもよく、液体(ポリオールなど)の一部又は全部が除去(乾燥)されていてもよい。
【0078】
パック(例えば、ウェットタイプのパック)を形成する組成物(又はパックの形成に用いる組成物)の具体例として、下記処方を示す。
・グリセリン 4%
・ペンチルグリコール 3%
・1,3−ブチレングリコール 2.4%
・トレハロース 1%
・フィブロイン 0.2%
・オウゴン根エキス 適量
・PEG−60水添ヒマシ油 0.5%
・ヒドロキシエチルセルロース 0.1%
・エチルヘキシルグリセリン 0.1%
・メチルパラベン 0.05%
・フェノキシエタノール 0.02%
・トコフェロール 適量
・水 全体を100%とする量
【0079】
このような処方の組成物は、水を大過剰含んでいるが、過剰の水は、フィブロイン及びポリオール(例えば、グリセリン、ペンチルグリコール、1,3−ブチレングリコールから選択された少なくとも1種)を含む組成物(第1の組成物)を得た後、混合してもよい(第2の組成物として得てもよい)。
また、他の成分(トレハロースなど)を混合するタイミングは、特に限定されず、第1の組成物の調製時に混合してもよく、第1の組成物に水とともに混合してもよい。
【0080】
(パックの製造方法)
パックの製造方法は、前記組成物で形成される(又は前記組成物を用いて形成される)限り、特に限定されず、パックの形態等に応じて適宜製造しうる。
【0081】
なお、このような方法では、前記の所定の割合でポリオールを含有する組成物(第1の組成物)を用いる(経由する)ことができればよく、第1の組成物をそのまま使用してもよく、又は第1の組成物を希釈した組成物(第2の組成物)を使用することもできる。
【0082】
第2の組成物において、ポリオールの割合は、通常、希釈により第1の組成物における割合よりも小さくなるが、第2の組成物における(希釈後の)ポリオールの割合は、前記割合を充足してもよく、充足しなくてもよい。前記のように、一旦、第1の組成物を経由することで、希釈によりポリオールの割合が前記所定の割合を充足しなくなっても(例えば、ポリオールの割合が30質量%未満になっても)、フィブロインの分散状態等は維持されており、良好なパックを形成しうる。
例えば、基材を備えたパック(シート状のパック、例えば、ウェットタイプのパック、ドライタイプのパック)は、例えば、基材(基材シート、シート状基材)に、少なくとも前記組成物(又は前記組成物を含む液状成分)をコーティングする(又は含浸させる又は付着させる)工程を経て得ることができる。
【0083】
コーティング(塗布)方法は、前記組成物(又は前記組成物を構成するフィブロイン)を基材に付着ないし含有できる方法であれば、特に限定されず、例えば、基材に対する組成物の浸漬、ディッピング、スプレー、刷毛塗り等が挙げられる。
【0084】
なお、ドライタイプのパックは、コーティング後、さらに、揮発性成分を乾燥させる乾燥工程(又はフィブロインを付着ないし含有させる工程)を経て製造できる。揮発性成分は、前記組成物における液体であってもよい。
【0085】
また、フィルムタイプのパックは、例えば、前記組成物をフィルム成形(シート成形)することにより得ることができる。フィルム成形法(成膜法)としては、特に限定されず、慣用の成形法(例えば、流延法、刷毛塗りなど)を利用できる。例えば、離型フィルム上に、前記組成物をコーティングした後、乾燥することにより、フィルム(フィブロイン含有フィルム)を形成してもよい。
さらに、被パック部位に直接的にフィルムタイプのパックを形成する場合には、被パック部位に、前記組成物をコーティングする(さらに必要に応じて乾燥させる)ことで、フィルムタイプのパックを被パック部位に形成できる。
【実施例】
【0086】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0087】
(実施例1)
フィブロインの水懸濁ないし水溶液[フィブロイン粉末(重量平均分子量65,000)を0.01g、水0.29gを含む懸濁液ないし溶液]と、液体成分としてのグリセリン5.0gとを混合し、フィブロインとグリセリンとの混合液(組成物)を得た。
【0088】
混合液の性状は、液体中に固体成分であるフィブロインが分散した分散体(粘稠分散体)であり、ゲル化や沈殿などは生じていなかった。混合液を1,3−ブチレングリコールにて10倍希釈した希釈液の濁度を測定したところ、10.5NTUであった。
また、その後、混合液を3ヶ月室温で放置しても、ゲル化や沈殿などの現象は生じておらず、同様にして10倍希釈液の濁度を測定したが変化は観察されなかった。
【0089】
一方、混合液の調製に使用したフィブロインの水懸濁ないし水溶液は、室温で1か月放置するとゲル化し、流動性を維持できなかった。
【0090】
(実施例2〜7及び参考例1〜2)
実施例1において、液体成分の種類やその量を下記表1のように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、混合液を得た。
【0091】
なお、参考例2では、フィブロイン懸濁液ないし溶液に、水5.0gを混合することにより、混合液を得た。
【0092】
(実施例8)
実施例2で得られた混合液に、水3.0gを混合し、希釈し、混合液(希釈液)を得た。
【0093】
(実施例9)
実施例3で得られた混合液に、水3.0gを混合し、希釈し、混合液(希釈液)を得た。
【0094】
(実施例10)
実施例7で得られた混合液に、水5.0gを混合し、希釈し、混合液(希釈液)を得た。
【0095】
得られた混合液(及び希釈液)の性状等をまとめたものを下記表1に示す。なお、表1において、液体の記号の意味は、以下の通りである。
GL:グリセリン
BG:1,3−ブタンジオール
DPG:ジプロピレングリコール
EtOH:エタノール
また、表1において、実施例8及び9の水の質量「3.29g」のうち「3.0g」は、希釈に使用した水の量であり、実施例10の水の質量「5.29g」のうち「5.0g」は、希釈に使用した水の量である。
【0096】
【表1】
【0097】
上記表から明らかなように、フィブロインは、特定の液体(グリセリン、1,3−ブタンジオール、ジプロピレングリコール)を特定濃度で含む組成物中において、効率よく分散できることがわかった。
【0098】
また、上記実施例8〜10の結果から明らかなように、実施例で得られた組成物におけるフィブロインの分散状態は、水で希釈した場合においても、保持できることを確認できた。
なお、実施例2〜10で得られた混合液も、実施例1同様、ゲル化や沈殿などは生じておらず、10倍希釈した希釈液の濁度も低いものであった(例えば、実施例3で得られた混合液を1,3−ブチレングリコールにて10倍希釈した希釈液の濁度は14.7NTUであった)。
また、その後、実施例2〜10で得られた混合液を3ヶ月室温で放置しても、ゲル化や沈殿などの現象は生じておらず、同様にして10倍希釈液の濁度を測定したが変化は観察されなかった。
【0099】
(実施例11)
フィブロインの水懸濁ないし水溶液[フィブロイン粉末(重量平均分子量65,000)を0.02g、水0.58gを含む懸濁液ないし溶液]と、液体成分としての1,3−ブタンジオール1.0gとを混合し、フィブロインと1,3−ブタンジオールとの混合液(組成物)を得た。
混合液の性状は、液体中に固体成分であるフィブロインが分散した分散体(粘稠分散体)であり、ゲル化や沈殿などは生じていなかった。
そして、得られた組成物に、さらに、水8.42gを添加して希釈し、混合液(希釈液)を得た。
得られた希釈液は、分散状態を保持していた。
なお、水で希釈する前後の組成物(混合液)の組成及び性状は以下の通りである。
【0100】
(参考例3)
実施例11において、水の添加順序を変更したこと以外は、実施例11と同様にして混合液を得た。
すなわち、フィブロインの水懸濁ないし水溶液[フィブロイン粉末(重量平均分子量65,000)を0.02g、水0.58gを含む懸濁液ないし溶液]、液体成分としての1,3−ブタンジオール1.0g及び水8.42gを一度に混合し、フィブロインと1,3−ブタンジオールと水との混合液(組成物)を得た。
得られた混合液では、固体成分であるフィブロインが沈殿しており、フィブロインが分散した組成物が得られなかった。
【0101】
これらの結果をまとめたものを下記表2に示す。
【0102】
【表2】
【0103】
上記表2の結果から明らかなように、実施例11の希釈後と参考例3とは、組成物の組成が全く同じであるにもかかわらず、性状が全く異なるものとなった。
【0104】
この結果は、フィブロインを含有する組成物において、ポリオール濃度を所定の濃度(液体又は組成物中の濃度を30質量%以上)に調整した状態を経ることで、良好な分散状態が得られること、そして、その後、最早、水等で希釈されて、ポリオール濃度が所定の濃度外となっても、良好な分散状態を保持できることを示すものと言える。
【0105】
(実施例12及び13、参考例4、5及び6)
不織布(旭化成(株)、ベンリーゼSE603)に、実施例4、実施例5、参考例2で得られた組成物を適量含浸し、2cm角のパック(ウェットタイプのパック)を得た。
【0106】
さらに、ウェットタイプのパックを、50℃の真空乾燥機で24時間乾燥し、2cm角のパック(乾燥パック、シートパック)を作成した。
【0107】
パックにおけるフィブロイン含有量(付着量)と、感触を評価した結果をまとめたものを下記表3に示す。
なお、パックの感触(風合い)は、実施例13を基準として評価した。
【0108】
【表3】
【0109】
上記表の結果から明らかなように、実施例で得られた組成物を使用することで、参考例で得られた組成物を使用した場合に比べて、より風合いの良いパックを得ることができた。
特に、意外なことに、実施例12及び13では、参考例5及び6に比べて、フィブロイン含有量を大きくしているにもかかわらず、良好な風合いのパックを得ることができた。
【0110】
(実施例14及び参考例7)
実施例2又は参考例2で得られた組成物を用い、以下のようにして、フィルムを作成した。
アルミ箔に紙が裏打ちされた基材を用い、その基材に実施例2又は参考例2で得られた組成物にカルボマーを0.0005g及び脂肪酸ソルビタンエステル0.0005gを用いて作成した溶液を2cm角の枠で形成された基材の上に、それぞれの溶液を2g塗布し、50℃の熱風乾燥器及び真空乾燥機で1時間乾燥させることで、フィルム(厚み1μm)を作成した。
【0111】
実施例2で得られた組成物を用いて形成したフィルムは、表面に凹凸がなく、平滑なフィルムであった。
一方、参考例2で得られた組成物を用いて形成したフィルムは、表面に凹凸があり、表面が粗いフィルムであった。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明によれば、フィブロインを含む組成物を提供できる。