(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱可塑性ポリマーには、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリアクリル酸またはポリウレタンが含まれる、請求項1に記載のコラーゲン含有プラスチックマスターバッチ。
前記溶融重合法が、ステップ(a)とステップ(b)との間に、(b’)前記溶融モノマー原料に、水、重合調節剤および外部潤滑剤を加えるか、または少なくとも1つの触媒を加えるステップをさらに含む、請求項1に記載のコラーゲン含有プラスチックマスターバッチ。
前記熱可塑性ポリマーを構成する前記少なくとも1つのモノマー原料がカプロラクタムであり、前記コラーゲンがI型コラーゲンである、請求項8に記載のコラーゲン含有プラスチックマスターバッチ。
前記熱可塑性ポリマーを構成する前記少なくとも1つのモノマー原料が、精製されたテレフタル酸(PTA)およびエチレングリコールを含み、前記コラーゲンがI型コラーゲンである、請求項11に記載のコラーゲン含有プラスチックマスターバッチ。
前記精製されたテレフタル酸(PTA)と前記エチレングリコールとの重量比が約1:0.1〜5である、請求項12に記載のコラーゲン含有プラスチックマスターバッチ。
前記熱可塑性ポリマーには、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリアクリル酸またはポリウレタンが含まれる、請求項15に記載のコラーゲン含有プラスチックマスターバッチの製造方法。
前記ステップ(a)と前記ステップ(b)との間に、(b’)前記溶融モノマー原料に、水、重合調節剤および外部潤滑剤を加えるか、または少なくとも1つの触媒を加えるステップをさらに含む、請求項15に記載のコラーゲン含有プラスチックマスターバッチの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の詳細な説明では、説明の目的で、開示される実施形態が十分に理解されるよう多数の特定の詳細を記載する。しかしながら、これら特定の詳細がなくても、1つまたはそれ以上の実施形態が実施可能であることは、明らかであろう。また、図を簡潔とするため、周知の構造および装置は概略的に示される。
【0018】
本開示はコラーゲン含有プラスチックマスターバッチを提供する。上述のコラーゲン含有プラスチックマスターバッチ中、コラーゲン含有量は約1〜50wt%、例えば1wt%、2wt%、5wt%、10wt%、15wt%、20wt%、25wt%、30wt%、35wt%、40wt%、45wt%、50wt%であり得るが、これらに限定はされない。前述のコラーゲン含有プラスチックマスターバッチの組成は、限定はされないが、熱可塑性ポリマーおよびコラーゲンを含んでいてよく、コラーゲンは熱可塑性ポリマー中に均一に分布される。プラスチックマスターバッチ中においてコラーゲンを熱可塑性ポリマー中に均一に分布させることにより、プラスチックマスターバッチにより形成されたプラスチック製品中のコラーゲンが、クリーニングまたは他の外力によって容易にダメージを受けないようにすることができる。
【0019】
上述の熱可塑性ポリマーには特定の制限はなく、プラスチック原料が熱可塑性を備えてさえいれば、本開示のコラーゲン含有プラスチックマスターバッチ中の熱可塑性ポリマーとして使用することが可能である。例えば、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、
ポリアクリル酸または
ポリウレタンはいずれも本開示のコラーゲン含有プラスチックマスターバッチ中の熱可塑性ポリマーとして使用することができる。1実施形態では、上述したコラーゲン含有プラスチックマスターバッチ中の熱可塑性ポリマーはナイロンであってよく、ナイロンの例にはナイロン6が含まれ得るが、これに限定はされない。 ナイロン6は線状ポリカプロラクタム(linear polycaprolactam)である。ナイロン6は、高い機械的強度、高温耐性(HDT=240℃)、耐食性(優れた耐化学性)、高い潤滑性、低い表面摩擦、ならびに高い引っ張り強度および衝撃強度を有する。別の実施形態では、上述したコラーゲン含有プラスチックマスターバッチ中の熱可塑性ポリマーはポリエチレンテレフタレートであってよい。
【0020】
また、本開示のコラーゲン含有プラスチックマスターバッチ中のコラーゲンのタイプにも特定の制限はない。1実施形態では、前述のコラーゲンは約260〜290℃の耐熱性を有し得る。さらに、1実施形態では、前述のコラーゲンにはI型コラーゲンが含まれ得る。
【0021】
前述した本開示のコラーゲン含有プラスチックマスターバッチは溶融重合法により形成することができるが、これに限定されることはない。
【0022】
1実施形態では、本開示のコラーゲン含有プラスチックマスターバッチを形成するのに用いる前述の溶融重合法は、限定はされないが、以下のステップを含み得る。
【0023】
先ず、熱可塑性ポリマーを構成する少なくとも1つのモノマー原料に溶融工程を行って、溶融したモノマー原料を得る。
【0024】
溶融工程の温度は、採用されるモノマー原料によって決めることができる。1実施形態では、溶融工程の温度は約180〜290℃であり得る。別の実施形態では、前述のモノマー原料はナイロンのモノマー原料であってよく、かつ溶融工程の温度は約220〜240℃であってよい。また、特定の1実施形態では、前述のモノマー原料はナイロン6、つまりカプロラクタムのモノマー原料であり、溶融工程の温度は約220〜240℃、例えば約230℃とすることができる。また別の実施形態では、前述のモノマー原料はポリエチレンテレフタレートのモノマー原料であり、それは
精製されたテレフタル酸(PTA)およびエチレングリコール(EG)を含んでいてよく、溶融工程の温度は約180〜290℃、例えば約260℃とすることができる。
【0025】
溶融工程に必要な時間に特定の制限はなく、モノマー原料を溶融させることのできる時間であればよい。1実施形態では、溶融工程に必要な時間は約3〜10時間、例えば約3〜4時間であってよいが、これに限定されることはない。
【0026】
次に、前述の溶融したモノマー原料およびコラーゲンに加熱および混合工程を行って混合物を作る。コラーゲンと少なくとも1つのモノマー原料との重量比は約1:1〜99、例えば1:2、1:3、1:4、1:9、1:19、1:99であってよいが、これらに限定はされない。1実施形態では、コラーゲンと少なくとも1つのモノマー原料との重量比は約1:4、1:9、1:19または1:99であり得る。
【0027】
さらに、前述した加熱および混合工程の温度も同様に、採用されるモノマー原料によって決まり得る。1実施形態では前述した加熱および混合工程の温度は約180〜290℃である。別の実施形態では、前述のモノマー原料はナイロンのモノマー原料であり、加熱および混合工程の温度は約180〜290℃であってよい。また、特定の1実施形態では、前述のモノマー原料はナイロン6、つまりカプロラクタムのモノマー原料であり、加熱および混合工程の温度は約220〜240℃、例えば約230℃であってよい。さらに別の実施形態では、前述のモノマー原料はポリエチレンテレフタレートのモノマー原料であり、それは
精製されたテレフタル酸およびエチレングリコールを含んでいてよく、加熱および混合工程の温度は約180〜290℃、例えば約240℃とすることができる。
【0028】
さらに、加熱および混合工程に特定の制限はなく、溶融したモノマー原料およびコラーゲンが均一に混合されさえすればよい。1実施形態では、加熱および混合工程に必要な時間は約3〜10時間、例えば約3〜4時間であってよいが、これに限定されることはない。
【0029】
その後、溶融したモノマー原料とコラーゲンとの混合物に重合反応を行って、前述の熱可塑性ポリマーを形成すると共に、コラーゲンを熱可塑性ポリマー中に均一に分布させて、コラーゲン含有ポリマーを形成する。同様に、前述の重合反応の温度は、採用されるモノマー原料によって決まり得る。
【0030】
1実施形態では、上述した重合反応の温度は約180〜290℃である。別の実施形態では、前述のモノマー原料はナイロンのモノマー原料であり、重合反応の温度は約180〜290℃であり得る。また、特定の1実施形態では、前述のモノマー原料はナイロン6、つまりカプロラクタムのモノマー原料であり、重合反応の温度は約180〜290℃、例えば約260℃であってよい。また別の実施形態では、前述のモノマー原料はポリエチレンテレフタレートのモノマー原料であり、それは
精製されたテレフタル酸およびエチレングリコールを含んでいてよく、重合反応の温度は約180〜290℃、例えば約260℃であってよい。
【0031】
同様に、前述の重合反応に必要な時間は、採用されるモノマー原料によって決まり得る。1実施形態では、重合に必要な時間は約約3〜20時間、例えば約10時間、約15時間であってよいが、これらに限定はされない。
【0032】
その後、得られたコラーゲン含有ポリマーに造粒工程を行って、本開示のコラーゲン含有プラスチックマスターバッチを形成する。上述した造粒工程は、得られたポリマーを分けて粒状最終製品とすることができる任意の工程を用いることができ、特定の制限はなく、例えば、当該分野において周知の造粒工程を採用することができる。1実施形態では、造粒工程は、得られたコラーゲン含有ポリマーをスライサーでカットして粒状にする工程であり得る。別の実施形態では、造粒工程は、得られたコラーゲン含有ポリマーを押出および混合造粒機に送り、混合および押し出してペレットを形成する工程であってよい。得られるコラーゲン含有プラスチックマスターバッチの粒径は必要によって決まり、特定の制限はない。1実施形態では、コラーゲン含有プラスチックマスターバッチの粒径は約0.1〜3mmであってよい。
【0033】
さらに、1実施形態では、本開示のコラーゲン含有プラスチックマスターバッチを形成するのに用いられる前述の溶融重合法は、前述の溶融工程を行うステップと前述の加熱および混合工程を行うステップとの間に、前述の溶融したモノマー原料に水、重合調節剤および外部潤滑剤を加えるか、または少なくとも1つの触媒を加えるステップをさらに含み得る。水とモノマー原料との重量比は約1:1〜99、例えば1:1〜20であってよい。1実施形態では、水とモノマー原料との重量比は約1:4であり得るが、これに限定はされない。重合調節剤とモノマー原料との重量比は約1:1〜99、例えば1:5〜30であってよい。1実施形態では、重合調節剤とモノマー原料との重量比は約1:20であり得るが、これに限定されることはない。外部潤滑剤とモノマー原料との重量比は約1:10〜200、例えば1:20〜200であってよい。1実施形態では、外部潤滑剤とモノマー原料との重量比は約1:160であり得るが、これに限定されることはない。触媒とモノマー原料との重量比は約1:20〜150、例えば1:85〜110であってよい。1実施形態では、触媒とモノマー原料との重量比は約1:90〜100であり得る。
【0034】
上述した重合調節剤には、限定はされないが、酸、例えば酢酸、アジピン酸、またはドデシルメルカプタンなどが含まれ得る。また、上述した外部潤滑剤には脂肪酸アミド、オレアミド(oleamide)またはステアリン酸などが含まれ得るが、これらに限定されることはない。上述した少なくとも1つの触媒の例には、限定はされないが、三酸化アンチモン(Sb
2O
3)、チタンブトキシド(Ti(Obu)
4)、酢酸アンチモン(Sb(AC)
3)、エチレングリコールアンチモン(Sb
2(EG)
3)およびこれらの任意の組み合わせが含まれ得る。
【0035】
さらに、1実施形態では、本開示のコラーゲン含有プラスチックマスターバッチを形成するのに用いられる前述の溶融重合法は、造粒工程の後に得られたコラーゲン含有プラスチックマスターバッチに抽出工程を行うステップ、および抽出工程後のコラーゲン含有プラスチックマスターバッチに乾燥工程を行うステップをさらに含んでいてよい。
【0036】
前述の抽出工程は、マスターバッチ中のオリゴマー、残留モノマーおよび/または他の不純物を除去することで、後続の所望のプラスチック製品の製造時にマスターバッチ中のオリゴマー、残留モノマーなどが酸化して気泡を生じさせ、製品の品質に影響を及ぼすのを防ぐために用いられる。1実施形態では、抽出工程は、得られたコラーゲン含有プラスチックマスターバッチを熱水中に加えることによって行われ得る。熱水の温度は約80〜100℃であってよいが、これには限定されない。また、抽出工程後のマスターバッチは比較的高い、例えば10%以上の水分含量を有するであろうことから、抽出工程の後に乾燥工程が行われ、マスターバッチが後に熱酸化するのを防ぐ。1実施形態では、前述の乾燥工程は、約80〜100℃、例えば100℃の温度、真空環境内で、抽出工程の後のコラーゲン含有プラスチックマスターバッチを乾燥することによって行うことができる。
【0037】
加えて、1実施形態では、本開示のコラーゲン含有プラスチックマスターバッチを形成するのに用いられる前述の溶融重合法は、前述の溶融工程を行うステップと前述の加熱および混合工程を行うステップとの間に、前述の溶融したモノマー原料に水、重合調節剤および外部潤滑剤を加えるか、または少なくとも1つの触媒を加えるステップをさらに含んでいてよく、かつ造粒工程の後に、上述の抽出工程および上述の乾燥工程をさらに含んでいてよい。
【0038】
特定の1実施形態では、上述した本開示のコラーゲン含有プラスチックマスターバッチ を形成するのに用いられる任意の溶融重合法において、熱可塑性ポリマーを構成する少なくとも1つのモノマー原料はカプロラクタムであり、コラーゲンはI型コラーゲンである。また、この特定の実施形態では、I型コラーゲンとカプロラクタムとの重量比は約1:1〜99、例えば1:4、1:5、1:19、1:99であってよいが、これらに限定はされない。
【0039】
別の特定の実施形態では、上述した本開示のコラーゲン含有プラスチックマスターバッチを形成するのに用いられる任意の溶融重合法において、熱可塑性ポリマーを構成する少なくとも1つのモノマー原料は、
精製されたテレフタル酸およびエチレングリコールを含み、コラーゲンはI型コラーゲンである。また、この特定の実施形態では、
精製されたテレフタル酸とエチレングリコールとの重量比は約1:0.1〜5、例えば約1:2であってよいが、これらに限定はされない。さらに、この特定の実施形態では、I型コラーゲンと少なくとも1つのモノマー原料との重量比は約1:1〜99、例えば1:9、1:19または1:99であってよいが、これらに限定はされない。
【0040】
加えて、前述に基づくと、本開示はコラーゲン含有プラスチックマスターバッチの製造方法も提供し得ることが理解され、かつこの製造方法は上述した任意の溶融重合法を含み得るが、これに限定されることはない。
【0041】
さらに、本開示はコラーゲン含有繊維も提供し得る。該コラーゲン含有繊維は、溶融紡糸技術により少なくとも1つのプラスチッマスターバッチから作られたものであってよく、少なくとも1つのプラスチックマスターバッチには、上述した任意の本開示のコラーゲン含有プラスチックマスターバッチが含まれるが、これに限定はされない。コラーゲン含有繊維のコラーゲン含有量は、約0.04〜50wt%、例えば0.05wt%、0.1wt%、0.5wt%、1wt%、2wt%、10wt%、20wt%、50wt%であってよいが、これらに限定はされない。
【0042】
本明細書で述べられる“溶融紡糸技術”は、当該分野において既知である任意の溶融紡糸技術であってよく、例えば、マスターバッチ(またはポリマー)を溶融した後、紡糸口金から引き出して線状にしてから、冷却して硬化させるものであってよいが、溶融紡糸技術はこれに限定されることはない。上述した溶融の温度に特定の制限はなく、マスターバッチの材質によって決定でき、例えば、前述の溶融の温度は約180〜290℃とすることができる。本開示の1実施形態では、 前述の溶融の温度は約285℃であり得る。
【0043】
1実施形態では、上述した少なくとも1つのプラスチックマスターバッチは、上述した任意の本開示のコラーゲン含有プラスチックマスターバッチであってよい。特定の1実施形態では、上述したコラーゲン含有プラスチックマスターバッチの熱可塑性ポリマーはナイロン6である。この特定の実施形態では、コラーゲン含有繊維のコラーゲン含有量は約1〜50wt%、例えば1wt%、5wt%、10wt%、20wt%、50wt%であってよいが、これらに限定はされない。
【0044】
別の実施形態では、上述した少なくとも1つのプラスチックマスターバッチは、コラーゲンを含まないプラスチックマスターバッチをさらに含んでいてよく、このコラーゲンを含まないプラスチックマスターバッチの組成は別の熱可塑性ポリマーを含む。この別の熱可塑性ポリマーの例には、限定はされないが、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、
ポリアクリル酸および
ポリウレタンが含まれ得る。上述した少なくとも1つのプラスチックマスターバッチ中、本開示のコラーゲン含有プラスチックマスターバッチとコラーゲンを含まないプラスチックマスターバッチとの重量比は1:1〜24であってよいが、これに限定されることはない。また、この実施形態において、コラーゲン含有繊維中、コラーゲン含有量は約0.04〜25wt%、例えば0.05wt%、0.1wt%、0.5wt%、1wt%、2wt%、10wt%、20wt%であり得るが、これらに限定はされない。
【0045】
加えて、上述した少なくとも1つのプラスチックマスターバッチが、コラーゲンを含まないプラスチックマスターバッチをさらに含み得る実施形態では、コラーゲン含有プラスチックマスターバッチの熱可塑性ポリマーと、コラーゲンを含まないプラスチックマスターバッチの別の熱可塑性ポリマーとは同じであるか、または異なっていてよい。1実施形態では、コラーゲン含有プラスチックマスターバッチの熱可塑性ポリマーと、コラーゲンを含まないプラスチックマスターバッチの別の熱可塑性ポリマーとは同じである。特定の1実施形態では、コラーゲン含有プラスチックマスターバッチの熱可塑性ポリマーと、コラーゲンを含まないプラスチックマスターバッチの別の熱可塑性ポリマーとがいずれもナイロンであり、かつナイロンを構成するモノマー原料はカプロラクタムである。上に述べたこの特定の実施形態では、コラーゲン含有繊維中、コラーゲン含有量は約0.04〜50wt%、例えば0.05wt%、0.1wt%、0.5wt%、1wt%、2wt%、10wt%、20wt%であってよいが、これらに限定はされない。
【0046】
また、本開示は、前述した本開示の任意のコラーゲン含有繊維から作られる織物をさらに提供する。
【0047】
さらに、本開示は、コラーゲン含有不織布も提供し得る。該コラーゲン含有不織布は、メルトブロー技術により少なくとも1つのプラスチックマスターバッチから作られるものであってよく、上述した少なくとも1つのプラスチックマスターバッチには、上述した任意の本開示のコラーゲン含有プラスチックマスターバッチが含まれるが、これに限定されることはない。コラーゲン含有不織布のコラーゲン含有量は約0.04〜50wt%、例えば0.05wt%、0.1wt%、0.5wt%、1wt%、 2wt%、10wt%、20wt%、50wt%であってよいが、これらに限定はされない。
【0048】
本明細書において記載される“メルトブロー技術”は、当該分野で知られている任意のメルトブロー技術であってよく、例えば、マスターバッチ(またはポリマー)を溶融した後、紡糸口金から引き出して網状としてから、冷却して硬化させるものであってよいが、メルトブロー技術はこれに限定されることはない。上述した溶融の温度に特定の制限はなく、マスターバッチの材質によって決定でき、例えば、前述の溶融の温度は約180〜290℃とすることができる。本開示の1実施形態では、前述の溶融の温度は約260℃であり得る。
【0049】
1実施形態では、上述した少なくとも1つのプラスチックマスターバッチは、上述した任意の本開示のコラーゲン含有プラスチックマスターバッチであってよい。特定の1実施形態では、上述したコラーゲン含有プラスチックマスターバッチの熱可塑性ポリマーはポリエチレンテレフタレートである。この特定の実施形態では、コラーゲン含有不織布のコラーゲン含有量は約1〜50wt%、例えば1wt%、5wt%、10wt%、20wt%、50wt%であってよいが、これらに限定はされない。
【0050】
1実施形態では、上述した少なくとも1つのプラスチックマスターバッチは、コラーゲンを含まないプラスチックマスターバッチを含んでいてよく、このコラーゲンを含まないプラスチックマスターバッチの組成は別の熱可塑性ポリマーを含む。この別の熱可塑性ポリマーの例には、限定はされないが、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、
ポリアクリル酸および
ポリウレタンスが含まれ得る。上述した少なくとも1つのプラスチックマスターバッチ中、本開示のコラーゲン含有プラスチックマスターバッチとコラーゲンを含まないプラスチックマスターバッチとの重量比は1:1〜24であってよいが、これに限定されることはない。また、この実施形態では、コラーゲン含有不織布中、コラーゲン含有量は約0.04〜25wt%、例えば0.05wt%、0.1wt%、0.5wt%、1wt%、2wt%、10wt%、20wt%であり得るが、これらに限定はされない。
【0051】
加えて、上述した少なくとも1つのプラスチックマスターバッチが、コラーゲンを含まないプラスチックマスターバッチをさらに含み得る実施形態では、コラーゲン含有プラスチックマスターバッチの熱可塑性ポリマーとコラーゲンを含まないプラスチックマスターバッチの別の熱可塑性ポリマーとが同じであるか、または異なっていてもよい。1実施形態では、コラーゲン含有プラスチックマスターバッチの熱可塑性ポリマーとコラーゲンを含まないプラスチックマスターバッチの別の熱可塑性ポリマーとは同じである。特定の1実施形態では、コラーゲン含有プラスチックマスターバッチの熱可塑性ポリマーとコラーゲンを含まないプラスチックマスターバッチの別の熱可塑性ポリマーとはいずれもポリエチレンテレフタレートであり、かつポリエチレンテレフタレートを構成するモノマー原料は
精製されたテレフタル酸およびエチレングリコールを含み得る。上述した特定の実施形態では、コラーゲン含有不織布中、コラーゲン含有量は約0.04〜50wt%、例えば0.05wt%、0.1wt%、0.5wt%、1wt%、2wt%、10wt%、20wt%であってよいが、これらに限定はされない。
【0052】
さらに本開示は、圧縮成形、カレンダ加工、押出成形または射出成形技術により少なくとも1つのプラスチックマスターバッチから作られたコラーゲン含有プラスチック製品も提供する。ここに記載される少なくとも1つのプラスチックマスターバッチは、上述した本開示のコラーゲン含有繊維または不織布に採用した少なくとも1つのプラスチックマスターバッチである。
【0053】
さらに、本開示は医療用具、日用品または衣料品も提供し得る。該医療用具、日用品または衣料品は、前述した任意の本開示の織物、前述した任意の本開示のコラーゲン含有不織布、または前述した任意の本開示のコラーゲン含有プラスチック製品を含み得る。
【0054】
本開示により提供される医療用具はコラーゲンを含有するため、止血および/または創傷治癒の促進という効果を備える。上述した本開示の医療用具の例には、限定はされないが、医療用ガーゼ(例えば止血ガーゼ)、各種ドレッシング材(dressings)、救急ばんそうこう(例えば救急ばんそうこうのガーゼ部分)、手術用縫合糸が含まれ得る。また、本開示により提供される日用品の例には、不織布フェイシャルマスク、サニタリーパッド、オムツが含まれ得るが、日用品はこれらに限定されることはない。本開示により提供される衣料品の例には、下着、コルセット、ガードル、シルクストッキングが含まれ得るが、衣料品はこれらに限定されることはない。本開示のコラーゲン繊維または不織布を用いて形成された止血ガーゼは優れた止血効果を有する。
【0055】
コラーゲンは生分解性、生体適合性、および低抗原特性を有すると共に、止血、血管新生の促進、創傷治癒の促進、および傷跡形成の防止という優れた効果を備えるが、コラーゲンのドレッシング材のみを一般的な創傷ドレッシング材として用いると、コストが高価になるという問題が生じ得る。本開示では、コラーゲンとポリエチレンテレフタレートのようなプラスチックとを重合させて、例えば血液および組織液を吸収することのできるコラーゲン-ポリエチレンテレフタレートガーゼを形成する。また、ポリエチレンテレフタレートのようなプラスチック材料は、表面が平滑および孔が小さいという特徴を有するため、細菌が増殖しにくい。故に、本開示のガーゼは止血効果を実現することができ、傷への粘着も引き起こさない。同時にそれは製造コストを低減し、かつ医療用具分野および臨床的応用におけるコラーゲンとプラスチックの価値を高めることもできる。
【0057】
実施例1:コラーゲン含有ナイロンマスターバッチおよびその製品
【0058】
実施例1−1:コラーゲン含有ナイロン6マスターバッチの作製
【0059】
図1は、溶融重合(造粒)のフロープロセス100を示している。この実施例のコラーゲン含有ナイロン6マスターバッチの作製については、
図1を参照にすることができ、以下に説明される。
【0060】
1.1.20kgのカプロラクタム結晶原料Aを溶融タンク101中に加え、カプロラクタムに溶融工程を行って、カプロラクタムを溶融状態にした。溶融温度は230℃に設定し、溶融時間は3〜4時間とした。
【0061】
2.溶融状態のカプロラクタムをフィルター103でろ過した後、モノマー貯留タンク105中の溶融状態のカプロラクタムに、5kgの水B、1kgの酢酸(重合調節剤)C、および0.125kgのオレアミド(外部潤滑剤)Dを加え、溶融状態のカプロラクタムと均一に混合して、第1の混合物を作った。
【0062】
3.次に、5kgのコラーゲン原料Eをモノマー貯留タンク105に加え、前述の第1の混合物と均一に混合し、230℃に加熱して(約3〜4時間、圧力は1800 kg/cm
2とした)、第2の混合物を作った。
【0063】
4.その後、第2の混合物をポンプ107により予備重合装置(pre-polymerizer)109から重合タンク111に送り、固相重合を行った。重合温度は260℃、重合圧力は2000kg/cm
2とした。
【0064】
5.重合時において、高温乾燥によりカプロラクタム分子の末端アミノ基とカルボキシル基とが縮合反応を起こし、これによって均一に分散するコラーゲンを含有した高重合度のポリマーを生成した。15時間の貯留後、重合平衡に達した。
【0065】
6.得られた均一に分散するコラーゲンを含有したポリマーを、噴射ノズル113の前端およびベルトコンベヤー115よりスライサー117へ送って粒状にカットし、合計20kgのコラーゲン含有ナイロン6マスターバッチ(コラーゲン含有量は20%)を得た。
【0066】
7.得られたコラーゲン含有ナイロン6マスターバッチを、スライス収容筒119、ブロワー121、および分離器123を通過させ、抽出設備125へ送り、抽出工程を実行した。抽出工程では、コラーゲン含有ナイロン6マスターバッチを100℃の熱水中に加えて抽出を行い、不純物(10%カプロラクタムおよび2〜3%環状オリゴマー)を除去した。
【0067】
8.抽出工程後、コラーゲン含有ナイロン6マスターバッチは10%以上の水分を含むため、コラーゲン含有ナイロン6マスターバッチを、ウェットスライス収容筒(wet slice storage barrel)127を通過させて真空乾燥機129へ送り、乾燥工程を実行して水分を除去した。乾燥工程では、コラーゲン含有ナイロン6マスターバッチを100℃の温度で真空乾燥した。
【0068】
9.乾燥工程後、乾燥したコラーゲン含有ナイロン6マスターバッチFをドライスライス収容筒(dry slice storage barrel)131へ送って収容し、コラーゲン含有ナイロン6マスターバッチの作製を完了した。
【0069】
実施例1−2:コラーゲン含有ナイロン6の糸(yarn)の作製
【0070】
図2は、シングルスクリュー紡糸機を用いて溶融紡糸を行うフロープロセス200を示している。この実施例のコラーゲン含有ナイロン6の糸の作製については
図2を参照にすることができ、以下のように説明され得る。
【0071】
1.2kgの上記にて得られたコラーゲン含有ナイロン6マスターバッチFおよび38kgの通常のナイロン6マスターバッチGを第1の供給タンク201および第2の供給タンク203にそれぞれ加え、得られる糸に1wt%のコラーゲンが含まれるようにした。
【0072】
2.2種のマスターバッチを、計量タンク205および混合タンク207を通過させ、紡糸機本体209へ送り、285℃に加熱して、2種のマスターバッチを溶融状態にすると共に融液を形成した。紡糸のパラメータは次のように設定した。
デニール:70
番手:72
回転速度:4000m/分
【0073】
3.紡糸機本体209中に設置されているスクリュー213をモーター211で押し動かし、融液をさらに均一に混合し、その融液を定量ポンプ215で定量すると共に、紡糸口金セット217前端の紡糸口金から吐出した。紡糸口金から吐出された融液が冷却キャビネット219から放出された冷却風Wを通過すると、冷却および硬化工程が始まり、繊維状プラスチックが形成された。
【0074】
4.硬化工程時において、繊維状プラスチックをノズル221およびワイヤガイド223によりローラー群225に導き、ローラー群225中の3つのローラー225a、225bおよび225cで引き伸ばして、分子鎖に順方向の配列(forward arrangement)および結晶を生じさせ、かつ繊維強度を与えるようにした。3つのローラー225a、225bおよび225cのパラメータは次のとおりである。
【0075】
ローラー225a:表面温度は28℃、回転速度(rpm)は425とした。
【0076】
ローラー225b:表面温度は50℃、回転速度(rpm)は1600とした。
【0077】
ローラー225c:表面温度は80℃、回転速度(rpm)は1600とした。
【0078】
5.繊維がカールしていない状況で、上リール227および分離板229を介して巻取機231で繊維を巻き取り、単一コイルの糸Hにした(糸24.4kg)。
【0081】
上記にて得られた1wt%コラーゲン含有糸をシルクストッキング中に織り込んで、1wt%コラーゲンを含有するシルクストッキングを得た(デニール:70、番手:72)。
【0083】
上記にて得られた1wt%コラーゲン含有糸を染色してから、靴下に織り込んで、1wt%コラーゲンを含有する染色靴下を得た(デニール:70;番手:72)(
図5参照)。
【0084】
実施例1−4:本開示のコラーゲン含有織物の水洗耐性試験
【0085】
実施例1−4−1:シルクストッキングの水洗耐性試験
【0087】
1.シルクストッキングサンプルの水洗
【0088】
プラスチックのグローブを装着した操作者がシルクストッキングを水で洗浄し、通常の手洗いを行った。シルクストッキングを純水(ddH
2O)50ml中に浸して手洗いしてから、シルクストッキングサンプルをしぼって乾燥させた。異なるシルクストッキングサンプルに対し、上記のステップを異なる回数繰り返して、異なる回数(0回、1回、5回、10回、20回および50回)洗浄をしたシルクストッキングサンプルを得た。その後、シルクストッキングサンプルを55℃で真空乾燥した。
【0089】
2.シルクストッキングサンプルの酸加水分解処理
【0090】
上述の乾燥したシルクストッキングサンプル0.25gを試験管に入れ、硫酸 (H
2SO
4;18M)0.5mlをその中に加えた。その後、試験管の開口を密封し、110℃で24時間加熱した。加熱後、試験管を室温に置いて冷却した。次いで、水酸化ナトリウム(NaOH;12M)1.5mlを試験管に加え、試験管内の内容物と均一に混合した。次いで、その試験管から液体400μlを取って新たな試験管に移した。その新たな試験管を55℃で24時間真空乾燥した。次に、99%アルコール3mlをその試験管に加え、中の内容物と均一に混合した。その試験管から液体600μlを取って別の新たな試験管に移し、24時間真空乾燥した。その後、乾留したサンプルをクエン酸リン酸緩衝液(pH=5.5)(720倍希釈)3mlに加えて、試験を行う処理サンプルを得た。
【0091】
3.シルクストッキングの糸中に含まれるコラーゲンの定量
【0092】
現在、糸中に含まれるコラーゲンの定量の標準方法は無いため、本開示において、ヒドロキシプロリン(Hyp)含有量を測定することにより糸中のコラーゲンの含有量を測定する方法を開発する。
【0093】
ヒドロキシプロリンはコラーゲンの主要成分であり、よってサンプル中のコラーゲン含有量をヒドロキシプロリンの含有量によって表すことができる。
【0094】
濃度0、0.0625、0.125、0.25、0.5、1、2、4、8、および16μg/mlのヒドロキシプロリン標準サンプル溶液を調製した。異なる濃度のヒドロキシプロリン標準サンプル溶液および試験サンプルをそれぞれ200μlずつ取り、96ウェルプレート中の異なるウェルに加えた。その後、750μl/wellのクロラミンTをその96ウェルプレートに加え、室温で15分反応させた。次いで、750μl/wellのエールリッヒ試薬(ジメチルアミノベンズアルデヒド,DAMB)をその96ウェルプレートにさらに加え、75℃で16分反応させた。最後に、異なる濃度のヒドロキシプロリン標準サンプル溶液および試験を行うサンプルの540nm(OD
540)における吸光度をELISAリーダーにより測定した。
【0095】
異なる濃度のヒドロキシプロリンに対応する540nm(OD
540)における吸光値に基づき、ヒドロキシプロリン濃度対吸光値の標準曲線をプロットした(
図3参照)。また、この標準曲線に基づいて、試験を行うサンプルの測定された540nm(OD
540)の吸光値を、試験を行うサンプルのヒドロキシプロリン含有量に換算し、試験を行うサンプルのコラーゲン含有量をさらに確定した。
【0097】
異なる回数(0、1、5、10、20、および50回)洗浄したシルクストッキングサンプルの残留コラーゲン含有量を上述の方法により測定し、コラーゲン含有シルクストッキングの水洗耐性を評価した。結果が表1および
図4に示されている。
【0098】
異なる回数洗浄した1wt%コラーゲン含有シルクストッキングの残留コラーゲン含有量
【表1】
【0099】
表1および
図4から、10回の水洗の後も、本開示の1wt%コラーゲン含有の糸を織り込んだシルクストッキングは依然0.60wt%以上ものコラーゲンを留めることができたということが明らかにわかる。さらに、水で50回洗浄した後でさえも、本開示の1wt%コラーゲン含有の糸を織り込んだシルクストッキングは、尚も0.06wt%のコラーゲンを残していた。
【0100】
したがって、本開示の1wt%コラーゲン含有の糸を織り込んだ製品は、極めて優れた水洗耐性を備えることがわかる。
【0101】
実施例1−4−2:染色靴下の水洗耐性試験
【0104】
染色靴下サンプルの水洗方法は、「実施例1−4−1:シルクストッキングの水洗耐性試験」の「A.方法」の「1.シルクストッキングサンプルの水洗」中に記載されている洗浄方法と同じ方法とした。
【0105】
2.染色靴下サンプルの酸加水分解処理
【0106】
染色靴下サンプルの酸加水分解処理の方法は、「実施例1−4−1:シルクストッキングの水洗耐性試験」の「A.方法」の「2.シルクストッキングサンプルの酸加水分解処理」中に記載されている処理方法と同じ方法とした。
【0107】
3.染色靴下サンプルの糸中に含まれるコラーゲンの定量
【0108】
染色靴下サンプルの糸中に含まれるコラーゲンの定量方法は、「実施例1−4−1:シルクストッキングの水洗耐性試験」の「A.方法」の「3.シルクストッキングサンプルの糸中に含まれるコラーゲンの定量」中に記載されている定量方法を参照することができる。
【0109】
異なる濃度のヒドロキシプロリンに対応する540nm (OD
540)における吸光値に基づき、ヒドロキシプロリン濃度対吸光値の標準曲線をプロットした(
図6参照)。また、この標準曲線に基づいて、試験を行うサンプルの測定された540nm (OD
540)の吸光値を、試験行うサンプルのヒドロキシプロリン含有量に換算し、さらに試験を行うサンプルのコラーゲン含有量を確認した。
【0111】
異なる回数(0、1、5、10、20、および50回)洗浄した染色靴下サンプルの残留コラーゲン含有量を上述の方法により測定し、コラーゲン含有の染色靴下の水洗耐性を評価した。結果が表2および
図7に示されている。
【0112】
異なる回数洗浄した1wt%コラーゲン含有染色靴下の残留コラーゲン含有量
【表2】
【0113】
表2および
図7から、10回の水洗の後も、本開示の1wt%コラーゲン含有糸を織り込んだ染色靴下は、依然0.14wt%以上ものコラーゲンを留めることができたということが明らかにわかる。
【0114】
したがって、本開示の1wt%コラーゲン含有糸を織り込んだ製品は、極めて優れた水洗耐性を備えることがわかる。
【0115】
実施例2:コラーゲン含有ポリエチレンテレフタレートマスターバッチおよびその製品
【0116】
実施例2−1:コラーゲン含有ポリエチレンテレフタレートマスターバッチの作製
【0117】
図8は、溶融重合(造粒)のフロープロセス100’を示している。この実施例のコラーゲン含有ポリエチレンテレフタレートマスターバッチの作製については
図8を参照することができ、以下のように説明される。
【0118】
1.
精製されたテレフタル酸(PTA)原料A’−1およびエチレングリコール(EG)原料A’−2(
精製されたテレフタル酸13.2kgおよびエチレングリコール6.6kg、
精製されたテレフタル酸12.6kgおよびエチレングリコール6.33kg、または
精製されたテレフタル酸12kgおよびエチレングリコール6kg)を溶融タンク101中に加え、
精製されたテレフタル酸およびエチレングリコールに対して溶融工程を行って、
精製されたテレフタル酸およびエチレングリコールを溶融状態にさせた。溶融温度は260℃に設定し、溶融時間は4時間とした。
【0119】
2.溶融状態にある
精製されたテレフタル酸およびエチレングリコールをフィルター103でろ過した後、0.1kgの三酸化アンチモン(Sb
2O
3)(触媒)J−1および0.1kgのチタニウムブトキシド(Ti(Obu)
4)(触媒)J−2をモノマー貯留タンク105内の溶融状態にある
精製されたテレフタル酸およびエチレングリコールに加え、溶融状態にある
精製されたテレフタル酸およびエチレングリコールと均一に混合し、第1の混合物を作った。
【0120】
3.次に、コラーゲン原料E(0.2kg、1kgまたは2kg)をモノマー貯留タンク105に加え(コラーゲン、
精製されたテレフタル酸原料およびエチレングリコール原料の総重量は約20kg)、前述した第1の混合物と均一に混合し、240℃に加熱して(約4時間、圧力は1500〜2000kg/cm
2とした)、第2の混合物を作った。
【0121】
4.その後、第2の混合物をポンプ107により予備重合装置(pre-polymerizer)109から重合タンク111に送り、固相重合を行った。重合温度は260℃、重合圧力は2000kg/cm
2とした。
【0122】
5.重合時において、高温乾燥により、
精製されたテレフタルおよびエチレングリコール分子の末端アミノ基とカルボキシル基とが縮合反応を起こし、これによって均一に分散したコラーゲンを含有する高重合度のポリマーを生成した。10時間の貯留後、重合平衡に達した。
【0123】
6.得られた均一に分散したコラーゲンを含有するポリマーを、噴射ノズル113の前端およびベルトコンベヤー115よりスライサー117へ送って粒状にカットし、コラーゲン含有マスターバッチ(コラーゲン含有率は1wt%、5wt%または10wt%)を得た。
【0124】
7.得られたコラーゲン含有ポリエチレンテレフタレートマスターバッチを、スライス収容筒119、ブロワー121、および分離器123を通過させて、抽出設備125へ送り、抽出工程を実行した。抽出工程では、コラーゲン含有ポリエチレンテレフタレートマスターバッチを100℃の熱水中に加えて抽出を行い、不純物を除去した。
【0125】
8.抽出工程後、コラーゲン含有ポリエチレンテレフタレートマスターバッチは10%以上の水分を含むため、コラーゲン含有ポリエチレンテレフタレートマスターバッチを、ウェットスライス収容筒(wet slice storage barrel)127を通過させて真空乾燥機129へ送り、乾燥工程を実行して水分を除去した。乾燥工程では、コラーゲン含有ポリエチレンテレフタレートマスターバッチを100℃の温度で真空乾燥した。
【0126】
9.乾燥工程後、乾燥したコラーゲン含有ポリエチレンテレフタレートマスターバッチF’をドライスライス収容筒(dry slice storage barrel)131へ送って収容し、コラーゲン含有ポリエチレンテレフタレートマスターバッチの作製を完了した。
【0127】
実施例2−2:コラーゲン含有ポリエチレンテレフタレートの不織布の作製
【0128】
図9は、不織布を形成するためのメルトブローのフロープロセス300を示している。この実施例のコラーゲン含有ポリエチレンテレフタレート不織布の作製は
図9を参照することができ、以下のように説明される。
【0129】
1.上述にて得られたコラーゲン含有ポリエチレンテレフタレートマスターバッチF’を供給タンク301に加え、得られる不織布に1wt%のコラーゲンが含まれるようにした。
【0130】
2.マスターバッチを、計量タンク303および混合タンク305を通過させて押出機307へ送り、加熱を開始して(初期温度は120℃とした)、マスターバッチを溶融状態にし、融液を形成した。押出機307中に設置されたスクリュー311をモーター309で押し動かし、融液をさらに均一に混合し、メルトフローインデックスを50に設定した。その後、昇温を続け、ろ過装置313を介して融液を押出機315に入れ、定量ポンプ317により定量した。温度が210℃まで上がったところで、紡糸口金セット319前端の紡糸口金から融液を吐出させた。メルトブローのパラメータは次のように設定した。
初期温度:120℃
吐出初期温度:210℃
紡糸口金直径:0.05cm
メルトフロー:0.5g
フローレート制御:2m/s
不織布の厚さ:1mm
【0131】
4.紡糸口金から吐出された融液に、冷却キャビネット321から放出された冷却風Wを通過させ、コンベヤーベルト323上の融液を冷却および硬化して網状に形成し、不織布の半製品とした。
【0132】
5.コンベヤーベルト323上の不織布半製品を熱硬化させて、不織布H’を形成した。
【0133】
6.最後に、不織布H’をコンベヤーベルト323から離し、巻き取って、シングルロールの不織布Iとした。
【0134】
実施例2−3:コラーゲン含有ポリエチレンテレフタレートマスターバッチの実際のコラーゲン含有量の測定
【0135】
図10は、上記プロセスにて得られた1wt%、5wt%、および10wt%コラーゲンをそれぞれ含有するポリエチレンテレフタレートマスターバッチの写真を示している((A)1wt%コラーゲン、(B)5wt%コラーゲン、(C)10wt% コラーゲン)。
【0137】
1.コラーゲン含有ポリエチレンテレフタレートマスターバッチサンプルの酸加水分解処理
【0138】
1wt%、5wt%または10wt% コラーゲンを含有するポリエチレンテレフタレートマスターバッチ0.25gを試験管に入れ、硫酸 (H
2SO
4;18M)0.5mlをその中に加えた。その後、試験管の開口を密封し、110℃で24時間加熱した。加熱後、試験管を室温に置いて冷却した。次いで、水酸化ナトリウム(NaOH;12M)1.5mlを試験管に加え、試験管内の内容物と均一に混合した。次に、その試験管から液体400μlを取って新たな試験管に移した。その新たな試験管を55℃で24時間真空乾燥した。次いで、99%アルコール3mlをその試験管に加え、中の内容物と均一に混合した。その試験管から液体600μlを取って別の新たな試験管に移し、24時間真空乾燥した。その後、乾留したサンプルをクエン酸リン酸緩衝液(pH=5.5)(720倍希釈)3mlに加えて、試験を行う処理サンプルを得た。
【0139】
2.コラーゲン含有ポリエチレンテレフタレートマスターバッチに含有されるコラーゲンの定量
【0140】
試験を行うサンプルをそれぞれ200μlずつ取り、96ウェルプレート中の異なるウェルに加えた。その後、750μl/wellのクロラミンTをその96ウェルプレートに加え、室温で15分反応させた。次いで、750μl/wellのエールリッヒ試薬(ジメチルアミノベンズアルデヒド,DAMB)をその96ウェルプレートにさらに加え、75℃で16分反応させた。最後に、異なる濃度のヒドロキシプロリン標準サンプル溶液および試験を行うサンプルの540nm(OD
540)における吸光度をELISAリーダーにより測定した。
【0141】
図6に示された標準曲線に基づいて、試験を行うサンプルの測定された540nm (OD
540)の吸光値を、試験を行うサンプルのヒドロキシプロリン含有量に換算し、試験を行うサンプルのコラーゲン含有量をさらに確認した。
【0143】
上記にて得られた1wt%、5wt%、および10wt%コラーゲンを含有するポリエチレンテレフタレートマスターバッチの実際のコラーゲン含有量を、前述した方法により測定した。結果が
図11および表3に示されている。
【0144】
1wt%、5wt%、および10wt% コラーゲンを含有する作製されたポリエチレンテレフタレートマスターバッチの実際のコラーゲン含有量
【表3】
【0145】
表3および
図11において、本開示のプロセスにより製造された3種のコラーゲン含有量のマスターバッチは、実際のコラーゲン含有量がその理論上のコラーゲン含有量に近いことが、はっきりと示されている。1wt%および10wt%コラーゲンを含有するポリエチレンテレフタレートマスターバッチ中の実際のコラーゲン含有量は、理論上のコラーゲン含有量よりも高い。故に、本開示のプロセスは、予め定めたコラーゲン含有量のプラスチックマスターバッチを効率よく製造することのできる安定したプロセスであるということがわかる。
【0146】
実施例2−4:コラーゲン−ポリエチレンテレフタレートガーゼ(コラーゲン含有ポリエチレンテレフタレート不織布) の止血効果試験
【0148】
実験で用いる6頭のスプラーグドーリー(Sprague-Dawley)雌ラットをBioLASCO Taiwan Co.,Ltd.,より購入した。ラットの体重は200gから250gであった。ラットを3匹ずつ、対照群と実験群とに分けた。上述のプロセスで得られたコラーゲン-ポリエチレンテレフタレートガーゼを実験群の試験ガーゼとして用い、一方、市販のコラーゲンを含まないポリエチレンテレフタレート不織布 (China Surgical Dressings Center Co., Ltd., 薬用ガーゼ-滅菌不織布マット)(材質:ポリエチレンテレフタレート、レイヨン))を対照群の試験ガーゼとして用いた。すべての実験は同一の者が行った。
【0149】
1.Zoletil(0.1ml/100g体重)およびXylazine(Rompun)(0.05ml/100g体重)を注射することによりラットに麻酔をかけた。
【0150】
2.麻酔後、ラットの右大腿動脈を24ゲージの針で穿孔した。次に、試験ガーゼ(4×4cm
2)を血管の出血部位に当て、圧迫した。動脈性出血の30秒後、計時を開始した。30秒ごとに止血効果を記録し、出血が止まったら試験を終了とした。出血が続いていたら、出血部位をさらに30秒圧迫し、止血効果を再評価した。90秒の圧迫後も出血が依然生じていたら、その試験は無効と判定した。実験の間中、加熱ランプを用いて確実にラットを37±0.5℃の正常な体温に保つようにし、ラットの体温を記録した。
【0151】
3.実験終了の時点で二酸化炭素吸入によりすべての動物を犠牲死させた。
【0153】
本開示のコラーゲン−ポリエチレンテレフタレートガーゼおよび一般のPETガーゼの止血効果評価を上述の方法により行った。結果が表4および
図12に示されている((A)実験群:コラーゲン−ポリエチレンテレフタレートガーゼ、(B)対照群:薬用ガーゼ)。
【0155】
図12は、各群におけるラットの30秒目の出血状態を示している。
図12によれば、実験群では30秒目にラットの動脈外傷の部位に血塊が生成され、凝血が生じた。一方、対照群では30秒目にラットの動脈外傷の部位に血塊は生成されなかった。
【0156】
表4に示された実験群および対照群のラットの出血が止まった時間についてstudentのt検定により統計的分析を行ったところ、p値は0.0037であったことから、実験群と対照群との間に統計的有意差があることが確認された。具体的には、市販の薬用ガーゼに比べ、本開示のコラーゲン-ポリエチレンテレフタレートガーゼは、より短時間に止血することができる。
【0157】
加えて、文献『Koksal, O., Ozdemir, F., Cam Etoz, B., & Isbil, N. (2011). Ulus Travma Acil Cerrahi Derg, 17(3), 199-204.,』では、出血が止まった時間が90秒未満の対象(object)を、止血効果を備えるものと定義している。本開示のコラーゲン-ポリエチレンテレフタレートガーゼの出血が止まった時間は53.00±8.88秒であるため、 本開示のコラーゲン-ポリエチレンテレフタレートガーゼは止血効果を備えると判断される。
【0158】
したがって、上述した試験により、本開示のコラーゲン-ポリエチレンテレフタレートガーゼは優れた止血効果を備え、かつ医療上の止血用途に利用可能であるということが確認された。
【0159】
開示された実施形態に各種の変更および変化を加え得ることは、当業者には明らかであろう。明細書および実施例は単なる例示と見なされることが意図されており、本開示の真の範囲は、以下の特許請求の範囲およびそれらの均等物によって示される。