(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
慣習的に、原油は、蒸留によって、ナフサ、軽油および残油などの数多くの留分(cuts)に処理される。これらの留分の各々には、ガソリン、ディーゼル燃料および灯油などの輸送燃料の製造またはいくつかの石油化学製品および他の処理ユニットへの供給物としてなどの数多くの潜在的な用途がある。
【0003】
ナフサおよびいくつかの軽油などの軽質原油留分は、炭化水素供給流を蒸発させ、水蒸気で希釈し、次いで、炉(反応装置)管内で短い滞留時間(1秒未満)、非常に高温(800℃から860℃)に曝す、水蒸気分解などのプロセスによって、軽質オレフィンおよび単環芳香族化合物の製造に使用できる。そのようなプロセスにおいて、供給流中の炭化水素分子は、供給分子と比べて(平均で)より短い分子および水素対炭素比がより低い分子(オレフィンなど)に転換される。このプロセスにより、有用な副生成物としての水素並びにメタンおよびC9+芳香族化合物と縮合芳香族種(縁を共有する2つ以上の芳香環を含む)などの大量の価値の低い副産物が生成される。
【0004】
典型的に、残油などのより重質の(または沸点のより高い)、芳香族含有量がより多い流れは、原油からのより軽質(蒸留可能な)生成物の収率を最大にするために原油精製所内でさらに処理される。この処理は、水素化分解(それにより、水素化分解供給物は、水素の同時添加により、供給分子のある分画をより短い炭化水素分子に分解する条件下で、適切な触媒に曝露される)などのプロセスによって行うことができる。重質精製流の水素化分解は、典型的に、高圧かつ高温で行われ、それゆえ、資本コストが高く付く。
【0005】
原油蒸留およびより軽質の蒸留流分の水蒸気分解のそのような組合せのある側面は、原油の分留に関連する資本コストと他のコストである。より重質の原油留分(すなわち、約350℃を超えて沸騰するもの)は、置換芳香族種、特に置換縮合芳香族種(縁を共有する2つ以上の芳香環を含む)が比較的豊富であり、水蒸気分解条件下では、これらの材料は、C9+芳香族化合物および縮合芳香族化合物などの重質副生成物を多量に生成するであろう。それゆえ、原油蒸留および水蒸気分解の従来の組合せの結果、より重質の留分からの価値のある生成物の分解収率は十分に高いとは考えられないので、原油の相当な分画は水蒸気分解装置により処理されない。
【0006】
上述した技術の別の側面は、軽質原油留分(ナフサなど)のみが水蒸気分解により処理された場合でさえ、供給流のかなりの割合が、C9+芳香族化合物および縮合芳香族化合物などの価値の低い重質副生成物に転化されることである。典型的なナフサと軽油に関して、これらの重質副生成物は、全生成物の収量の2%から25%を占めるであろう(非特許文献1)。このことは、従来の水蒸気分解装置の規模で、価値の低い材料中の高価なナフサの著しい経済的降格を示すが、これらの重質副生成物の収量では、通常、これらの材料を、より価値の高い化学物質を多量に生成するであろう流れに価値を高める(例えば、水素化分解により)のに必要な資本投資が正当化されない。これは一部には、水素化分解プラントは資本コストが高く、ほとんどの石油化学プロセスと同様に、これらのユニットの資本コストは、概して、0.6または0.7の倍率に乗ぜられた処理量に対応する。その結果、小規模の水素化分解ユニットの資本コストは、水蒸気分解装置により生じた重質副生成物を処理するためのそのような投資を正当化するのには高すぎると、通常考えられる。
【0007】
残油などの重質精製流の従来の水素化分解の別の側面は、これは、所望の全体の転化率を達成するために選択された妥協条件下で行われることである。供給流は、分解の容易さが様々である種の混合物を含んでいるので、これにより、比較的水素化分解が容易な種の水素化分解によって形成された蒸留可能な生成物のいくらかが、水素化分解がより難しい種を水素化分解するのに必要な条件下でさらに転化されることになる。これにより、水素の消費量およびそのプロセスに関連する熱管理の難しさが増し、またより価値のある種を犠牲にして、メタンなどの軽質分子の収率が増してしまう。
【0008】
原油蒸留およびより軽質の蒸留留分の水蒸気分解のそのような組合せのある特徴は、熱分解を促進するのに必要な高温に混合された炭化水素および水蒸気流をさらす前に、これらの留分の完全な蒸発を確実にすることが難しいので、水蒸気分解炉管は、通常、沸点が約350℃より高い材料を多量に含有する留分の処理に適していないことである。分解管の高温区域に液体炭化水素の液滴が存在する場合、管の表面上にコークスが急激に堆積し、これにより、熱伝導が低下し、圧力降下が増加し、最終的に、分解管の作動を抑制して、コークスを取り除くために管の操業を停止させる必要が生じる。この難点のために、元の原油のかなりの割合を、水蒸気分解装置により、軽質オレフィンと芳香族種に処理することができない。
【0009】
特許文献1は、多環芳香族化合物を含む炭化水素原料の単環芳香族化合物含有量を増加させるための触媒およびプロセスであって、不要な化合物を減少させつつ、ガソリン/ディーゼル燃料の収率を増加させることによって単環芳香族化合物を増加させ、それによって、多量の多環芳香族化合物を含む炭化水素の価値を高める経路を提供する触媒およびプロセスに関する。
【0010】
特許文献2は、水素添加分解(hygrogenolysis)または水素化分解(hydrocracking)と、その後の水蒸気分解により得られる、それぞれ、分子当たり2および3の炭素原子を有する軽質オレフィン炭化水素、詳しくは、エチレンおよびプロピレンを製造する選択的プロセスに関する。
【0011】
特許文献3は、エチレンを製造する統合プロセスであって、510〜815℃の範囲の温度、15〜70気圧(約1.5〜7.6MPa)の範囲の圧力および5〜60秒の範囲の滞留時間の条件下で非熱水素化分解触媒を含まない水素化分解反応装置内に炭化水素原料を導入する工程、芳香族炭化水素を分離する工程、低温技術によって、炭化水素C2〜C3から実質的になる流れを分離する工程、およびその流れを、炭化水素を主にエチレンを含む流れに転化する条件下に維持された分解区域に導入する工程を有してなる統合プロセスに関する。
【0012】
特許文献4は、原油分画をC2〜C5パラフィンに水素化分解し、これらをC2〜C3オレフィン混合物に熱分解することによって、原油分画をオレフィン生成物に転化するプロセスであって、水素、メタン、およびC6〜C9成分をC2〜C5分画から分離し、次いで、C2〜C5分画を水蒸気と混合し、熱分解装置に注入するプロセスに関する。
【0013】
特許文献5は、軽質パラフィンを製造するプロセスであって、93℃から538℃の範囲で沸騰する原油分画を、2589kPa超の圧力、300から565℃の温度、4:1から50:1の水素/炭化水素モル比、および1から180秒の滞留時間で、触媒上で水素化分解する工程、およびC2〜C5アルカン生成物を回収する工程を有してなり、そのアルカン生成物がエチレンとプロピレンに熱分解されるプロセスに関する。
【0014】
特許文献6は、エチレンを調製するプロセスであって、水素および触媒の存在下において高温で、250℃未満で沸騰する炭化水素油を水素化分解する工程、その水素化分解の反応生成物から炭化水素混合物を分離する工程、水蒸気の存在下において高温でこの混合物を熱分解する工程、および熱分解の反応生成物からエチレンを分離する工程を有してなるプロセスに関する。水素化分解の結果として炭化水素油から形成された炭化水素混合物は、気液分離システム内で液体として存在し、ラインを通じて水蒸気分解炉に送られる。
【0015】
特許文献7は、それによって、芳香族化合物を、芳香族含有水素化分解物から抽出できる、芳香族抽出プロセスに関する。
【0016】
特許文献8は、水素の存在下で石油の炭化水素の供給物を熱分解する方法であって、その水素化分解プロセスが、0.01秒と0.5秒の非常に短い滞留時間および625から1000℃に及ぶ反応装置の出口での温度範囲で、反応装置の出口での5および70バール(約500kPaおよび7MPa)の圧力下で行われる方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
好ましい実施の形態において、熱分解生成物流中に含まれる水素の一部は、分離され、水素化分解工程に供給され、熱分解生成物流中に含まれるC5+炭化水素は、分離され、水素化分解工程に供給され、1つの芳香環を有する芳香族炭化水素は、分離手段、例えば、蒸留プロセスまたは溶媒抽出プロセスを使用して、水素化分解生成物流から分離され、C2〜C4パラフィンは、分離手段、例えば、蒸留プロセスを使用して、水素化分解生成物流の気体分画から分離される。
【0029】
他の好ましい実施の形態によれば、炭化水素供給物を前処理して(例えば、溶媒抽出により)、芳香族化合物+ナフテン(抽出物)およびパラフィン(ラフィネート)を分離することができる。その結果として、水素化分解ユニットにより芳香族化合物+ナフテン流を処理し(HDSを行い、どの微量なパラフィンも除去し、ナフテンから水素を除去して、販売仕様書の芳香族化合物を製造する)、パラフィンを水蒸気分解ユニットに送って、軽質オレフィンを製造することができるであろう。このプロセスの組合せにより、水素の消費量が最小になり、水蒸気分解ユニットからの発生燃料ガスが最小になる。
【0030】
上述したように、本発明の方法は、特に、蒸留タイプの分離装置を使用して、芳香族含有量が多い流れを、重質芳香族化合物の流れおよび単環芳香族化合物が多い流れに分離する工程をさらに含む。
【0031】
本発明の別の実施の形態によれば、本発明の方法は、気体流、すなわち、C2〜C4パラフィンを主に含む気体流を、水素、C3オレフィンおよびC4オレフィンを得るための脱水素化ユニットに供給する工程をさらに含む。このことは、水素化分解ユニット内で生成された気体流を異なる経路、すなわち、水蒸気分解ユニットまたは脱水素化ユニットに送ることができることを意味する。この経路の選択は、本発明の方法に融通性を与える。プロパンおよびブタンなどの低級アルカンの脱水素化プロセスは、低級アルカン脱水素化プロセスとして説明される。
【0032】
好ましい実施の形態において、本発明の方法は、C2〜C4パラフィンを、各々が、それぞれ、2Cパラフィン、C3パラフィンおよびC4パラフィンを主に含む個々の流れに分離する工程、および個々の流れを前記水蒸気分解ユニットの特定の炉の区域に供給する工程をさらに含む。このことは、C2パラフィンを主に含むC2流が水蒸気分解ユニットの特定のC2炉区域に送られることを意味する。同じことが、C3流およびC4流にも適用される。特定の流れへのそのような分離には、水蒸気分解ユニットの生成物の収率にプラスの影響がある。好ましい実施の形態において、別々の流れとして、または混合C3+C4流として、C3流およびC4流は、脱水素化ユニットに送られる。より詳しくは、本発明の方法は、C2〜C4パラフィンを、各々が、それぞれ、2Cパラフィン、C3パラフィンおよびC4パラフィンを主に含む個々の流れに分離する工程、および主にC3パラフィンを含む流れをプロパン脱水素化ユニットに送り、主にC4パラフィンを含む流れをブタン脱水素化ユニットに送りながら、主にC2パラフィンを含む流れを水蒸気分解ユニットに送る工程をさらに含む。
【0033】
上述したように、水素化分解ユニット内で生成された気体流は、幅広い水素化分解生成物を含有する。好ましい実施の形態において、C2〜C4パラフィンがその気体生成物から回収されるだけでなく、水素およびメタンなどの他の価値のある成分も同様に回収される。水素およびメタンを含有する流れが水素化分解ユニットに再循環されることが好ましい。その上、不要な成分の蓄積を防ぐために、水素化分解ユニットにおいてパージ流を有することも好ましい。
【0034】
前記気体流から前記C2〜C4パラフィンを分離する方法が、低温蒸留または溶媒抽出から選択されるタイプの分離により行われることが好ましい。
【0035】
前記水素化分解における好ましい工程条件は、300〜550℃の温度、300〜5000kPaのゲージ圧および0.1〜10h
-1の重量空間速度を含む。より好ましい水素化分解条件は、350〜550℃の温度、600〜3000kPaのゲージ圧および0.2〜2h
-1の重量空間速度を含む。
【0036】
前記水素化分解ユニットの反応装置タイプの設計は、固定床型、沸騰床反応装置型およびスラリー型の群から選択され、固定床型が好ましい。
【0037】
前記水素化分解ユニットへの炭化水素原料の例は、ナフサ、灯油、ディーゼル燃料、常圧軽油(AGO)、コンデンセート、蝋、またはそれらの組合せのタイプのものである。
【0038】
芳香族含有量が多い流れの分離は蒸留タイプのものであることが好ましい。
【0039】
好ましい実施の形態によれば、本発明による方法は、単環芳香族化合物が多い流れから、C7からC9芳香族化合物、例えば、トルエンおよびキシレンの豊富な分画を分離する工程、およびそのC7からC9芳香族化合物をベンゼンの豊富な分画に転化させる工程をさらに含む。
【0040】
さらに、本発明による方法は、前記水蒸気分解ユニットの生成物流から水素の一部を回収する工程、およびその水素を前記水素化分解ユニットに供給する工程をさらに含む。
【0041】
上述したように、本発明の方法は、前記水蒸気分解ユニットの生成物流からC5+炭化水素を回収する工程、およびそのC5+炭化水素を前記水素化分解ユニットに供給する工程をさらに含む。
【0042】
ここに用いた「原油」という用語は、地層から抽出された未精製形態の石油を称する。アラビアン・ヘビー原油、アラビアン・ライト原油、他の湾岸国の原油、ブレント原油、北海原油、北および西アフリカ産原油、インドネシア産原油、中国産原油、およびそれらの混合物だけでなく、シェール油、タールサンドおよびバイオ油を含むどんな原油も、本発明の方法のための原料物質として適している。原油が、ASTM D287標準により測定して、20°APIを超えるAPI比重を有する従来の石油であることが好ましい。使用する原油が、30°APIを超えるAPI比重を有する軽質原油であることがより好ましい。その原油がアラビアン・ライト原油を含むことが最も好ましい。アラビアン・ライト原油は、典型的に、32〜36°APIの間のAPI比重および1.5〜4.5質量%の間の硫黄含有量を有する。
【0043】
ここに用いた石油化学製品("petrochemicals"および"petrochemical products")という用語は、燃料として使用されない、原油に由来する化学製品に関する。石油化学製品は、化学製品および高分子を製造するための基礎原料として使用されるオレフィン類および芳香族化合物を含む。高価値の石油化学製品としては、オレフィン類および芳香族化合物が挙げられる。典型的な高価値のオレフィンとしては、以下に限られないが、エチレン、プロピレン、ブタジエン、ブチレン−1、イソブチレン、イソプレン、シクロペンタジエンおよびスチレンが挙げられる。典型的な高価値の芳香族化合物としては、以下に限られないが、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびエチルベンゼンが挙げられる。
【0044】
ここに用いた「燃料」という用語は、エネルギー担体として使用される原油に由来する生成物に関する。明確な化合物の一群である石油化学製品とは異なり、燃料は、典型的に、様々な炭化水素化合物の複合混合物である。石油精製所で通常製造される燃料としては、以下に限られないが、ガソリン、ジェット燃料、ディーゼル燃料、重油燃料、および石油コークスが挙げられる。
【0045】
「芳香族炭化水素」または「芳香族化合物」という用語は、当該技術分野で非常によく知られている。したがって、「芳香族炭化水素」という用語は、仮想的局在構造(ケクレ構造)の安定性より著しく大きい安定性(非局在化のために)を有する環状共役炭化水素に関する。所定の炭化水素の芳香族性を決定するための最も一般的な方法は、1H NMRスペクトルにおけるジアトロピシティー(diatropicity)、例えば、ベンゼン環のプロトンについて7.2から7.3ppmの範囲にある化学シフトの存在の観察である。
【0046】
「ナフテン炭化水素」または「ナフテン」もしくは「シクロアルカン」という用語は、ここでは、既定の意味を有するものとして使用され、したがって、その分子の化学構造中に炭素原子の環を1つ以上有するタイプのアルカンに関する。
【0047】
「オレフィン」という用語は、ここでは、既定の意味を有するものとして使用される。したがって、オレフィンは、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する不飽和炭化水素化合物に関する。「オレフィン」という用語が、エチレン、プロピレン、ブタジエン、ブチレン−1、イソブチレン、イソプレンおよびシクロペンタジエンの2つ以上を含む混合物に関することが好ましい。
【0048】
ここに用いた「LPG」という用語は、「液化石油ガス」という用語の既定の頭字語を指す。LGPは、概して、C2〜C4炭化水素のブレンド、すなわち、C2、C3、およびC4炭化水素の混合物からなる。
【0049】
ここに用いた「BTX」という用語は、ベンゼン、トルエンおよびキシレンの混合物に関する。
【0050】
ここに用いたように、「#」が正の整数である、「C#炭化水素」という用語は、#個の炭素原子を有する全ての炭化水素を記述することを意味する。さらに、「C#+炭化水素」という用語は、#以上の炭素原子を有する全ての炭化水素分子を記述することを意味する。したがって、「C5+炭化水素」という用語は、5以上の炭素原子を有する炭化水素の混合物を記述することを意味する。したがって、「C5+アルカン」という用語は、5以上の炭素原子を有するアルカンに関する。
【0051】
ここに用いたように、「水素化分解ユニット」または「水素化分解装置」という用語は、水素化分解プロセス、すなわち、高い水素分圧の存在により支援される触媒分解プロセスがその中で行われる精製ユニットに関する;例えば、Alfke et al. (2007) loc.citを参照のこと。このプロセスの生成物は、飽和炭化水素および、温度、圧力、空間速度および触媒活性などの反応条件に応じて、BTXを含む芳香族炭化水素である。水素化分解に使用される工程条件は、一般に、200〜600℃の工程温度、0.2〜20MPaの高圧、0.1〜10h
-1の間の空間速度を含む。
【0052】
水素化分解反応は二機能性機構により進み、この機構は酸性機能と水素化機能を必要とし、酸機能は、分解と異性化を与え、供給物中に含まれる炭化水素化合物に含まれる炭素−炭素結合の破壊および/または再配置をもたらす。水素化分解プロセスに使用される多くの触媒は、様々な遷移金属、または金属硫化物をアルミナ、シリカ、アルミナ−シリカ、マグネシアおよびゼオライトなどの固体担体と混合することによって形成される。
【0053】
ここに用いたように、「供給物水素化分解ユニット」または「FHC」という用語は、以下に限られないが、ナフサを含む、直留留分などの、ナフテンおよびパラフィン炭化水素化合物が比較的豊富な複合炭化水素供給物をLPGおよびアルカンに転化させるのに適した水素化分解プロセスを実施するための精製ユニットに関する。供給物水素化分解が行われる炭化水素供給物がナフサを含むことが好ましい。したがって、供給物水素化分解により生成される主要生成物は、オレフィンに転化すべき(すなわち、アルカンのオレフィンへの転化のために供給物として使用すべき)LPGである。このFHCプロセスを、FHC供給流に含まれる芳香族化合物の1つの芳香環を完全なままに維持するが、その芳香環から側鎖のほとんどを除去するように最適化してもよい。そのような場合、FHCに使用すべき工程条件は、先に記載したようなGHCプロセスに使用すべき工程条件に匹敵する。あるいは、FHCプロセスは、FHC供給流中に含まれる芳香族炭化水素の芳香環を開環するために最適化しても差し支えない。このことは、必要に応じてより低い工程温度と組み合わせて、必要に応じて減少した空間速度と組み合わせて、触媒の水素化活性を増加させることによって、ここに記載されたようなGHCプロセスを改良することによって行うことができる。そのような場合、それゆえ、好ましい供給物水素化分解条件は、300〜550℃の温度、300〜5000kPaのゲージ圧、および0.1〜10h
-1の重量空間速度を含む。より好ましい供給流水素化分解条件は、300〜450℃の温度、300〜5000kPaのゲージ圧、および0.1〜10h
-1の重量空間速度を含む。芳香族炭化水素の開環のために最適化されたさらにより好ましいFHC条件は、300〜400℃の温度、好ましくは350〜450℃、より好ましくは375〜450℃の温度、600〜3000kPaのゲージ圧、および0.2〜2h
-1の重量空間速度を含む。
【0054】
「芳香環開環ユニット」は、芳香環開環プロセスがその中で行われる精製ユニットを称する。芳香環の開環は、LPGと、工程条件に応じて、軽質蒸留物(ARO由来ガソリン)とを生成するために、灯油と軽油の沸点範囲内の沸点を有する芳香族炭化水素が比較的豊富な供給物を転化するのに特に適した特定の水素化分解プロセスである。そのような芳香環開環プロセス(AROプロセス)は、例えば、米国特許第3256176号および同第4789457号の各明細書に記載されている。そのようなプロセスは、ただ1つの固定床触媒反応装置、または未転化材料から所望の生成物を分離するための1つ以上の分別ユニットと一緒に直列になった2つのそのような反応装置のいずれからなってもよく、また反応装置の一方または両方に未転化材料を再循環させる能力も含んでよい。反応装置は、200〜600℃、好ましくは300〜400℃の温度、5〜20質量%の水素(炭化水素原料に対して)と共に、3〜35MPa、好ましくは5〜20MPaの圧力で運転されることがあり、その水素は、水素化−脱水素化および環開裂の両方に活性である二元機能触媒の存在下で、炭化水素原料と並流で流れても、または炭化水素原料の流動方向と向流に流れてもよく、その芳香環飽和および環開裂が行われることがある。そのようなプロセスに使用される触媒は、アルミナ、シリカ、アルミナ−シリカおよびゼオライトなどの酸性固体上に担持された金属形態または金属硫化物形態の、Pd、Rh、Ru、Ir、Os、Cu、Co、Ni、Pt、Fe、Zn、Ga、In、Mo、WおよびVからなる群より選択される元素を1つ以上含む。この点に関して、ここに用いた「上に担持された」という用語は、1つ以上の元素を触媒担体と併せ持つ触媒を提供するためのどの従来の様式も含む。さらなる芳香環開環プロセス(AROプロセス)が、米国特許第7513988号明細書に記載されている。したがって、そのAROプロセスは、芳香族水素化触媒の存在下での、100〜500℃、好ましくは200〜500℃、より好ましくは300〜500℃の温度、5〜30質量%、好ましくは10〜30質量%の水素(炭化水素原料に対して)と共に2〜10MPaの圧力での芳香環飽和、および環開裂触媒の存在下での、200〜600℃、好ましくは300〜400℃の温度、5〜20質量%の水素(炭化水素原料に対して)と共に1〜12MPaの圧力での環開裂を含むことがあり、その芳香環飽和および環開裂は、1つの反応装置または2つの連続した反応装置において行われてもよい。芳香族水素化触媒は、耐火性担体、典型的にアルミナ上のNi、WおよびMoの混合物を含む触媒などの従来の水素化/水素化処理触媒であってよい。環開裂触媒は、遷移金属または金属硫化物成分および担体を含む。その触媒が、アルミナ、シリカ、アルミナ−シリカおよびゼオライトなどの酸性固体上に担持された金属形態または金属硫化物形態の、Pd、Rh、Ru、Ir、Os、Cu、Co、Ni、Pt、Fe、Zn、Ga、In、Mo、WおよびVからなる群より選択される元素を1つ以上含むことが好ましい。触媒組成、作動温度、作動空間速度および/または水素分圧のいずれか1つまたは組合せを適用することによって、そのプロセスを、完全な飽和とそれに続く全環の開裂の方向に、または1つの芳香環を不飽和に維持し、その後、その1つを除いて全ての環の開裂の方向に導くことができる。後者の場合、そのAROプロセスにより、1つの芳香環を有する炭化水素化合物が比較的豊富な軽質蒸留物(「AROガソリン」)が生成される。
【0055】
ここに用いたように、「脱芳香族化ユニット」という用語は、混合炭化水素供給物からのBTXなどの芳香族炭化水素の分離のために精製ユニットに関する。そのような脱芳香族化プロセスは、Folkins (2000) Benzene, Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistryに記載されている。したがって、プロセスは、混合炭化水素流を、芳香族化合物が豊富な第1の流れと、パラフィンおよびナフテンが豊富な第2の流れとに分離するために存在する。芳香族炭化水素および脂肪族炭化水素の混合物から芳香族炭化水素を分離する好ましい方法は溶媒抽出である;例えば、国際公開第2012/135111A2号を参照のこと。芳香族溶媒抽出に使用される好ましい溶媒は、工業的芳香族化合物抽出プロセスに一般に使用される溶媒であるスルホラン、テトラエチレングリコールおよびN−メチルピロリドンである。これらの種は、しばしば、水および/またはアルコールなどの他の溶媒または他の化学物質(共溶媒と呼ばれることもある)と組み合わせて使用される。スルホランなどの窒素不含有溶媒が特に好ましい。そのような溶媒抽出に使用される溶媒の沸点は、抽出すべき芳香族化合物の沸点よりも低い必要があるので、250℃、好ましくは200℃を超える沸点範囲を有する炭化水素混合物の脱芳香族化には、工業的に適用されている脱芳香族化プロセスはそれほど好ましくない。重質芳香族化合物の溶媒抽出が当該技術分野に記載されている;例えば、米国特許第5880325号明細書を参照のこと。あるいは、分子篩分離または沸点に基づく分離などの、溶媒抽出以外の他の公知の方法を、脱芳香族化プロセスにおける重質芳香族化合物の分離に適用することができる。
【0056】
混合炭化水素流を、主にパラフィンを含む流れおよび主に芳香族化合物とナフテンを含む第2の流れに分離するプロセスは、3つの主要な炭化水素処理塔:溶媒抽出塔、ストリッピング塔および抽出塔を備えた溶媒抽出ユニット内でその混合炭化水素流を処理する工程を有してなる。芳香族化合物の抽出に選択的な従来の溶媒は、軽質ナフテン種およびより少ない程度で、パラフィン種を溶解させるのにも選択的であり、それゆえ、溶媒抽出塔の基部を出る流れは、溶解した芳香族種、ナフテン種および軽質パラフィン種と共に溶媒を含む。溶媒抽出塔の頂部から出る流れ(ラフィネート流としばしば称される)は、選択された溶媒に対して比較的不溶性のパラフィン種を含む。溶媒抽出塔の基部を出る流れは、次いで、蒸留塔において、蒸発ストリッピングに施される。ここでは、各種は、溶媒の存在下での相対的な揮発度に基づいて分離される。溶媒の存在下では、軽質パラフィン種は、同じ炭素原子数のナフテン種および特に芳香族種よりも高い相対的な揮発度を有し、それゆえ、軽質パラフィン種の大半は、蒸発ストリッピング塔からの塔頂流に濃縮されるであろう。この流れは、溶媒抽出塔からのラフィネート流と組み合わされても、または別個の軽質炭化水素流として収集されてもよい。ナフテン種および特に芳香族種の大半は、それらの比較的低い揮発度のために、この塔の基部から出る溶媒と溶解炭化水素の混合流中に維持される。抽出ユニットの最終的な炭化水素処理塔において、溶媒は、蒸留によって、溶解炭化水素種から分離される。この工程において、比較的沸点の高い溶媒は、その塔から基部流として回収され、一方で、主に芳香族種およびナフテン種を含む溶解炭化水素は、この塔の頂部から出る蒸気流として回収される。この後者の流れは、しばしば、抽出物と称される。
【0057】
本発明の方法は、接触改質または流動接触分解などの、下流の精製プロセスにおける触媒の失活を防ぐために、特定の原油分画から硫黄を除去する必要があることがある。そのような水素化脱硫プロセスは、「HDSユニット」または「水素化処理機(hydrotreater)」内で行われる;Alfke (2007) loc. citを参照のこと。一般に、水素化脱硫反応は、促進剤の有無にかかわらず、アルミナ上に担持された、Ni、Mo、Co、WおよびPtからなる群より選択される元素を含む触媒の存在下で、200〜425℃、好ましくは300〜400℃の高温およびゲージ圧で1〜20MPa、好ましくは1〜13MPaの高圧で、固定床反応装置内で行われ、ここで、触媒は硫化物形態にある。
【0058】
さらなる実施の形態において、前記方法は、水素化脱アルキル化工程をさらに含み、ここで、BTX(または生成されたBTXのトルエンおよびキシレン分画のみ)が、ベンゼンおよび燃料ガスを含む水素化脱アルキル化生成物流を生成するのに適した条件下で、水素と接触させられる。
【0059】
BTXからベンゼンを生成する工程段階は、水素化分解生成物流中に含まれるベンゼンを、水素化アルキル化の前にトルエンおよびキシレンから分離する工程を含むこともある。この分離工程の利点は、水素化脱アルキル化反応装置の能力が高まることである。ベンゼンは、従来の蒸留によってBTX流から分離することができる。
【0060】
C6〜C9芳香族炭化水素を含む炭化水素混合物の水素化脱アルキル化のプロセスは、当該技術分野で周知であり、熱水素化脱アルキル化および接触水素化脱アルキル化を含む;例えば、国際公開第2010/102712A2号を参照のこと。接触水素化脱アルキル化プロセスは一般に、熱水素化脱アルキル化よりもベンゼンに対する選択性が高いので、この接触水素化脱アルキル化が好ましい。接触水素化脱アルキル化が使用されることが好ましく、ここでは、水素化脱アルキル化触媒は、担持酸化クロム触媒、担持酸化モリブデン触媒、シリカまたはアルミナ上白金およびシリカまたはアルミナ上酸化白金からなる群より選択される。
【0061】
「水素化脱アルキル化条件」としてもここに記載される、水素化脱アルキル化に有用な工程条件は、当業者により容易に決定することができる。熱水素化脱アルキル化に使用される工程条件は、例えば、独国特許出願公開第1668719A1号明細書に記載されており、600〜800℃の温度、3〜10MPaのゲージ圧および15〜45秒間の反応時間を含む。好ましい接触水素化脱アルキル化に使用される工程条件は、国際公開第2010/102712A2号に記載されており、500〜650℃の温度、3.5〜8MPa、好ましくは3.5〜7MPaのゲージ圧、および0.5〜2h
-1の重量空間速度を含むことが好ましい。水素化脱アルキル化生成物流は、典型的に、冷却と蒸留の組合せによって、液体流(ベンゼンおよび他の芳香族化合物種を含有する)および気体流(水素、H
2S、メタンおよび他の低沸点炭化水素を含有する)に分離される。この液体流は、蒸留により、ベンゼン流、C7からC9芳香族化合物流および必要に応じて、芳香族化合物が比較的多い中間蒸留物流にさらに分離してもよい。このC7からC9芳香族化合物流は、全体の転化率およびベンゼンの収率を増加させるために、再循環流として反応装置区域に戻すように供給してもよい。ビフェニルなどの多環芳香族種を含有する芳香族化合物流は、反応装置に再循環されないことが好ましいが、別の生成物流として輸送され、中間蒸留物(「水素化脱アルキル化により生成される中間蒸留物」)として統合プロセスに再循環してもよい。多量の水素を含有する前記気体流は、再循環ガス圧縮機により水素化脱アルキル化ユニットに戻すように再循環されても、または供給物として水素を使用する任意の他の精製所に送られてもよい。反応装置供給物中のメタンおよびH
2Sの濃度を制御するために再循環パージガスを使用してもよい。
【0062】
ここに用いたように、「気体分離ユニット」という用語は、原油蒸留ユニットにより生成される気体および/または精製ユニット由来の気体中に含まれる様々な化合物を分離する精製ユニットに関する。気体分離ユニットにおいて別個の流れに分離されるであろう化合物は、エタン、プロパン、ブタン、水素および主にメタンを含む燃料ガスを含む。その気体の分離に適したどの従来の方法を使用してもよい。したがって、その気体は、多数の圧縮段階に施されることがあり、ここで、CO
2およびH
2Sなどの酸性気体が圧縮段階の間で除去されるであろう。それに続く工程において、生成された気体は、カスケード冷凍システムの各段階に亘り、気相中にほぼ水素しか残っていない状態まで部分的に凝縮されるであろう。その後、様々な炭化水素化合物が蒸留により分離されるであろう。
【0063】
アルカンのオレフィンへの転化のためのプロセスは、「水蒸気分解」または「熱分解」を含む。ここに用いたように、「水蒸気分解」という用語は、飽和炭化水素が、エチレンおよびプロピレンなどのより小さい、しばしば不飽和の炭化水素に分解される石油化学プロセスに関する。水蒸気分解において、エタン、プロパンおよびブタンなどのガス状炭化水素供給物、またはそれらの混合物(気体熱分解)、もしくはナフサまたは軽油などの液体炭化水素供給物(液体熱分解)は、水蒸気で希釈され、酸素の不在下で炉内において手短に加熱される。典型的に、反応温度は750〜900℃であるが、その反応は、非常に手短に、通常は50〜1000ミリ秒の滞留時間でしか行われない。好ましくは、比較的低い工程圧力は、大気圧から175kPaのゲージ圧であるように選択されるべきである。最適条件での分解を確実にするために、炭化水素化合物であるエタン、プロパンおよびブタンがそれぞれの専用の炉内で別々に分解されることが好ましい。分解温度に達した後、気体が急冷されて、移送ラインの熱交換器内で、または冷却油を使用した急冷ヘッダの内部で反応を停止させる。水蒸気分解により、反応装置の壁上に、炭素の一形態であるコークスがゆっくりと堆積する。デコーキングには、炉をプロセスから隔離する必要があり、次いで、水蒸気流または水蒸気/空気混合物を炉のコイルに通過させる。これにより、硬い固体の炭素層が一酸化炭素と二酸化炭素に転化される。この反応が一旦完了したら、炉をラインに戻す。水蒸気分解により生成される生成物は、供給物の組成、炭化水素対水蒸気の比率および分解温度と炉内の滞留時間に依存する。エタン、プロパン、ブタンまたは軽質ナフサなどの軽質炭化水素供給物により、エチレン、プロピレン、およびブタジエンを含む、より軽質の高分子等級のオレフィンが多い生成物流が生じる。より重質の炭化水素(全範囲および重質ナフサおよび軽油分画)も、芳香族炭化水素の多い生成物を生じる。
【0064】
水蒸気分解により生じた様々な炭化水素化合物を分離するために、その分解ガスは分別ユニットに施される。そのような分別ユニットは、当該技術分野で周知であり、重質蒸留物(「カーボンブラックオイル」)および中間蒸留物(「分解蒸留物」)が軽質蒸留物および気体から分離される、いわゆるガソリン分留装置を含むことがある。それに続く随意的な急冷塔において、水蒸気分解により生成される軽質蒸留物(「分解ガソリン」または「パイガス(pygas)」)のほとんどは、軽質蒸留物を凝縮することによって、気体から分離されるであろう。それに続いて、気体に多数の圧縮段階が施されてもよく、ここで、軽質蒸留物の残りが、圧縮段階の間で気体から分離される。酸性気体(CO
2およびH
2S)も圧縮段階の間で除去されるであろう。続く工程において、熱分解により生成された気体は、カスケード冷凍システムの各段階で、気相中にほぼ水素しか残っていない状態に部分的に凝縮されるであろう。様々な炭化水素化合物は、続いて、単純な蒸留により分離してよく、ここで、エチレン、プロピレンおよびC4オレフィンが、水蒸気分解により生成される最も重要な高価値の化学物質である。水蒸気分解により生成されるメタンは、一般に、燃料ガスとして使用され、水素は、分離され、水素化分解プロセスなどの、水素を消費するプロセスに再循環されてもよい。水蒸気分解により生成されるアセチレンは、エチレンに選択的に水素化されることが好ましい。分解ガス中に含まれるアルカンを、オレフィン合成のためのプロセスに再循環してもよい。
【0065】
ここに用いた「プロパン脱水素化ユニット」という用語は、プロパン供給流が、プロピレンおよび水素を含む生成物に転化される石油化学プロセスユニットに関する。したがって、「ブタン脱水素化ユニット」という用語は、ブタン供給流をC4オレフィンに転化するためのプロセスユニットに関する。プロパンおよびブタンなどの低級アルカンの脱水素化のためのプロセスは共に、低級アルカン脱水素化プロセスと記載される。低級アルカンの脱水素化のためのプロセスは、当該技術分野に周知であり、酸化的脱水素化プロセスおよび非酸化的脱水素化プロセスを含む。酸化的脱水素化プロセスにおいて、プロセス加熱は、供給物中の低級アルカンの部分酸化により与えられる。本発明の文脈において好ましい、非酸化的脱水素化プロセスにおいて、吸熱脱水素化反応のためのプロセス加熱は、燃料ガスの燃焼により得られる高温燃焼排ガスまたは水蒸気などの外部熱源により与えられる。非酸化的脱水素化プロセスにおいて、その工程条件は、一般に、540〜700℃の温度および25〜500kPaの絶対圧を含む。例えば、このUOP Oleflexプロセスは、移動床反応装置内においてアルミナ上に担持された白金含有触媒の存在下で、プロパンの脱水素化によりプロピレンを、(イソ)ブタンの脱水素化により(イソ)ブチレン(またはその混合物)を形成することを可能にする;例えば、米国特許第4827072号明細書を参照のこと。このUhde STARプロセスは、亜鉛−アルミナスピネル上に担持された促進白金触媒の存在下で、プロパンの脱水素化によりプロピレンを、またはブタンの脱水素化によりブチレンを形成することを可能にする;例えば、米国特許第4926005号明細書を参照のこと。このSTARプロセスは、オキシ脱水素化の原理を適用することによって、最近改良された。反応装置の補助断熱区域において、中間生成物からの水素の一部が、添加酸素により選択的に転化されて、水を形成する。これにより、熱力学的平衡がより高い転化率にシフトし、より高い収率が達成される。吸熱脱水素化反応に必要な外部熱も、発熱水素転化によりある程度供給される。Lummus Catofinプロセスは、循環基準で作動する数多くの固定床反応装置を利用する。その触媒は、18〜20質量%のクロムが含浸された活性化アルミナである;例えば、欧州特許出願公開第0192059A1号および英国特許出願公開第2162082A号の各明細書を参照のこと。このCatofinプロセスには、このプロセスがロバスト性であり、白金触媒を汚染するであろう不純物を取り扱うことができるという利点がある。ブタンの脱水素化プロセスにより生成される生成物は、ブタン供給物の性質および使用されるブタン脱水素化プロセスに依存する。Catofinプロセスは、ブタンの脱水素化により、ブチレンを形成することも可能にする;例えば、米国特許第7622623号明細書を参照のこと。
【0066】
本発明を次の実施例において論じるが、その実施例は、保護の範囲を制限するものとして解釈すべきではない。
【0067】
唯一の図面は、本発明の実施の形態の説明のための流れ図を提供する。
【実施例】
【0068】
様々なタイプの原料、例えば、それぞれ、タンク2、3、4、5から送られるナフサ35、灯油36、ディーゼル燃料37、常圧軽油(AGO)38を含むことができる原料33が水素化分解ユニット17に送られる。水素化分解ユニット17において、原料33は水素の存在下で水素化分解される。この水素化分解プロセスにより、C2〜C4パラフィン、水素およびメタンを含む気体流19および芳香族含有量が多い流れ40が生じる。気体流19は、分離装置12、例えば、低温蒸留または溶媒抽出に送られ、様々な流れ、すなわち、C2〜C4パラフィンを含む流れ55、水素とメタンを含む流れ20、およびパージ流に分離される。流れ20は、水素化分解ユニット17に再循環させても差し支えない。
【0069】
先に述べたように、流れ55は、脱水素化ユニット57に直接(図示せず)または水蒸気分解ユニット11に直接(図示せず)送ることができる。しかしながら、流れ55を水蒸気分解ユニット11に送る前に、最初に、流れ55に分離を行うことが好ましい。分離装置56において、C2〜C4パラフィンは、個々の流れ30、31および32に分離される。このことは、流れ30が主にC2パラフィンを含み、流れ31が主にC3パラフィンを含み、流れ32が主にC4パラフィンを含むことを意味する。必要に応じて、ユニット9、10、13において、不要の成分のさらなる分離または温度調節を行うことができる。個々の流れ21、27および29は、水蒸気分解ユニット11の特定の炉区域に送られる。水蒸気分解ユニット11はただ1つのユニットとして示されているが、本発明の方法において、好ましい実施の形態では、水蒸気分解ユニット11は、各々が特定の化学組成物に専用の異なる炉区域、すなわち、C2のための炉区域、C3のための炉区域、およびC4のための炉区域を備えることを理解すべきである。好ましい実施の形態において、主にC3パラフィンを含む流れ27、および主にC4パラフィンを含む流れ29は、それぞれ、流れ54および流れ23として、脱水素化ユニット57に送られる。別の実施の形態において、流れ55からC3とC4のみを分離し、混合C3およびC4流を脱水素化ユニット57に送ることも可能である。
【0070】
水蒸気分解ユニット11において、流れ21、27および29、並びに原料58、例えば、ユニット1に由来するC2からC4ガスが処理され、その反応生成物28は分離区域6内で分離される。C2〜C6アルカンを含むガス流7は水蒸気分解ユニット11に再循環される。水素15およびパイガス14を水素化分解ユニット17に送ることができる。エチレン、プロピレンおよびブタジエンを含む軽質アルケンなどの不飽和炭化水素を含む有用生成物流8は、さらなる石油化学プロセスに送られる。カーボンブラックオイル、分解蒸留物およびC9+炭化水素などの重質炭化水素が水蒸気分解ユニット11内で生成される場合、これらの生成物は、必要に応じて、同様に水素化分解ユニット17に再循環させることができる。
【0071】
芳香族含有量が多い流れ40は、分離装置16、例えば、蒸留プロセスに送られ、重質芳香族化合物の流れ41および単環芳香族化合物が多い流れ43に分離される。主にC7からC9芳香族化合物を含む流れ42はユニット24内で、ベンゼンの豊富な分画59およびメタンの豊富な分画44に転化させることができる。
【0072】
ここに開示された実施例は、ナフサのみが水蒸気分解ユニットにより処理されるプロセス(ケース1)と、ナフサが水素化分解ユニットに送られ、そこで、気体流において、そのような形成されたC2〜C4パラフィンが分離され水蒸気分解ユニットの炉区域に供給されるプロセス(ケース2)とを区別する。ケース1は比較例であり、ケース2は本発明による実施例である。
【0073】
水蒸気分解装置の条件は以下のとおりである:エタンおよびプロパン炉:コイル出口温度=845℃、水蒸気対油比=0.37、C4炉:コイル出口温度=820℃、水蒸気対油比=0.37、液体炉:コイル出口温度=820℃、水蒸気対油比=0.37。水素化分解ユニット17の特定の条件に関して:水素化分解ユニット反応装置作動条件について、モデル化を行った:平均反応装置温度510℃、1h-1の重量空間速度およびゲージ圧で1379kPaの反応装置圧力。触媒は
、ガンマアルミナ上に担持されたPtおよび
100:1のSi:Al比のHZSM−5の混合物からなった。
【0074】
ナフサ供給物の組成が表1に見られる。
【0075】
【表1】
【0076】
ケース1およびケース2の各々に関する装置の境界内生成物分量(供給物の質量%)が表2に見られる。
【0077】
【表2】
【0078】
表2から、本発明の方法にしたがって水素化分解ユニット内でナフサを処理すると(ケース2)、全BTX(ベンゼン、トルエン、キシレン)が増加するのが分かる。したがって、表2に開示された結果は、ケース1(比較例)からケース2(本発明による)にBTXが著しく増加することを示している。CDは分解蒸留物を意味し、CBOはカーボンブラックオイルを意味する。表2は、高価値化学物質(エチレン+プロピレン+ブタジエン+イソブテン、ベンゼン、TX留分、スチレンおよび他のC7〜C8)の収率が、従来の処理手段(ケース1)により達成できるよりも、ナフサが本発明による処理された場合(ケース2)のほうが著しく高いことをさらに示している。
【0079】
水素化分解ユニット(ケース2)において、より重質のパラフィンは全てC2〜C4パラフィンなどのより軽質の成分に分解されるので、エチレンの生産は、水素化分解ユニットにおいてナフサを前処理することによって、35から50%増加する。このように、ケース2は、ケース1よりも著しく高いエチレン収率を提供する。
【0080】
表2は、より重質の生成物(C9樹脂供給物、分解蒸留物およびカーボンブラックオイル)の生産が、水素化分解ユニットにおいてナフサを前処理する(ケース2)ことによって、減少することも示している。このことは、本発明の方法によれば、重質の不要の副生成物の形成を最小に減少させることができることを意味する。
【0081】
別の実施例は、生成物分量への水素化分解ユニットの作動温度の影響を示している。触媒混合物は、2グラムのZSM−5および2グラムのアルミナ上Pt触媒の物理的混合物であり、0.4〜0.8mmのSiCチップが触媒床に含まれて、栓流への良好な近似を確実にし、軸方向/半径方向の温度差を減少させている。Olefins6ナフサを原料として使用した(表3参照)。
【0082】
【表3】
【0083】
この実施例において、温度を425℃と500℃の間で変えた(WHSV=1、H:HC=3、ゲージ圧で200psi(約1.38MPa))。排出物組成が表4に示されている。
【0084】
【表4】
【0085】
表4からのデータは、温度がより高いと、メタン(低価値副生成物)の収率が高くなることを示している。