特許第6931386号(P6931386)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6931386
(24)【登録日】2021年8月17日
(45)【発行日】2021年9月1日
(54)【発明の名称】流体機器
(51)【国際特許分類】
   F15B 7/00 20060101AFI20210823BHJP
【FI】
   F15B7/00 A
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-507567(P2019-507567)
(86)(22)【出願日】2018年3月13日
(86)【国際出願番号】JP2018009637
(87)【国際公開番号】WO2018173845
(87)【国際公開日】20180927
【審査請求日】2020年9月17日
(31)【優先権主張番号】特願2017-53965(P2017-53965)
(32)【優先日】2017年3月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100163212
【弁理士】
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】有川 達浩
【審査官】 北村 一
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭49−000387(JP,U)
【文献】 英国特許出願公告第01047983(GB,A)
【文献】 米国特許第02536628(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 7/00− 7/10
F15B 3/00
F15B 15/00−15/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を収容可能な容器と、該容器に設けられ第1の流体が出入可能な第1の流体出入路と、前記容器に設けられ第2の流体が出入可能な第2の流体出入路と、前記第1の流体の圧力を受けて前記容器内を移動可能な移動部材と、を備え、前記第1の流体から前記第2の流体にエネルギ伝達を行う流体機器であって、
一端を前記移動部材により密閉状態に閉塞され、他端を前記容器内に密閉状態に固定され、内部を前記第1の流体出入路と連通させた伸縮可能な第1のベローズを備え
前記第1のベローズよりも小径であり、一端を前記移動部材により閉塞され、他端を前記容器内に密閉状態に固定され、内部に圧縮性流体が密封される伸縮可能な第2のベローズを備えることを特徴とする流体機器。
【請求項2】
流体を収容可能な容器と、該容器に設けられ第1の流体が出入可能な第1の流体出入路と、前記容器に設けられ第2の流体が出入可能な第2の流体出入路と、前記第1の流体の圧力を受けて前記容器内を移動可能な移動部材と、を備え、前記第1の流体から前記第2の流体にエネルギ伝達を行う流体機器であって、
一端を前記移動部材により密閉状態に閉塞され、他端を前記容器内に密閉状態に固定され、内部を前記第1の流体出入路と連通させた伸縮可能な第1のベローズを備え、
前記移動部材は、前記第1のベローズの内部に配置されていることを特徴とする流体機器。
【請求項3】
前記第1の流体および前記第2の流体は、非圧縮性流体であることを特徴とする請求項1または2に記載の流体機器。
【請求項4】
前記第2のベローズは、前記移動部材の中央に固定されることを特徴とする請求項に記載の流体機器。
【請求項5】
前記移動部材は、前記容器の内周に当接するガイド部を備えることを特徴とする請求項に記載の流体機器。
【請求項6】
前記ガイド部には、前記第1のベローズよりも外側において厚み方向に貫通する連通路が設けられることを特徴とする請求項5に記載の流体機器。
【請求項7】
前記第1の流体と前記第2の流体は、異なる流体であることを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の流体機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両、建設機械、産業機械等の機械に適用され、作動流体のエネルギを伝達する油圧シリンダ等の流体機器に関する。
【背景技術】
【0002】
車両、建設機械、産業機械等の機械においては、作動流体の圧力を利用してエネルギの伝達(動力の伝動)を行う油圧シリンダ(流体機器)を組み込んだ流体圧回路を用いて動力の伝達系を簡素化している。油圧シリンダは、シリンダ内のピストン(移動部材)を第1の作動流体により移動させることにより、ピストンを介して第1の作動流体とは反対側の油圧室の第2の作動流体に圧力を作用させて、動力の伝達を行っている。
【0003】
特許文献1に開示されている流体圧シリンダ(流体機器)は、円筒状のシリンダチューブ(容器)と、該シリンダチューブの内部に設けられるピストン(移動部材)と、該ピストンに連結されるロッドと、シリンダチューブに対してロッドを摺動可能に支持するシリンダヘッドと、から主に構成されている。ピストンの外周には、収容溝が形成され、該収納溝にシリンダチューブの内周に摺接する1本のシールリングと、該シールリングを挟持する2本のバックアップウェアリングが取付けられることにより、シリンダチューブの内部がロッド側の流体圧室とエンド側の流体圧室に略密閉状に仕切られている。これによれば、流体圧シリンダは、シリンダチューブの内部において、ピストンにより仕切られる各流体圧室にポートを介して流体圧回路から作動流体をそれぞれ導入してピストンを往復移動させることにより、ピストンを介して第1の作動流体または第2の作動流体に圧力を作用させて、動力の伝達を行い、シリンダチューブに対してロッドを伸縮作動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−197908号公報(第4頁、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1にあっては、各流体圧室にポートを介して流体圧回路から作動流体を導入してピストンを往復移動させる際に、シリンダチューブの内周とシールリングおよびバックアップウェアリングとの間に摺動による摩擦が生じるため、ピストンの動作性には改善の余地があった。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、容器内における移動部材の動作性を高めることができる流体機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の流体機器は、
流体を収容可能な容器と、該容器に設けられ第1の流体が出入可能な第1の流体出入路と、前記容器に設けられ第2の流体が出入可能な第2の流体出入路と、前記第1の流体の圧力を受けて前記容器内を移動可能な移動部材と、を備え、前記第1の流体から前記第2の流体にエネルギ伝達を行う流体機器であって、
一端を前記移動部材により密閉状態に閉塞され、他端を前記容器内に密閉状態に固定され、内部を前記第1の流体出入路と連通させた伸縮可能な第1のベローズを備えることを特徴としている。
この特徴によれば、一端を移動部材により閉塞される第1のベローズが他端を容器内に密閉状態に固定されることにより、容器内において第1の流体出入路から出入する第1の流体と第2の流体出入路から出入する第2の流体を第1のベローズの内外で密閉状態に仕切ることができるため、容器内における第1の流体と第2の流体の混入を防ぐことができるとともに、容器と移動部材の間の摺動による摩擦を小さくして、容器内における移動部材の動作性を高めることができる。
【0008】
前記第1の流体および前記第2の流体は、非圧縮性流体であることを特徴としている。
この特徴によれば、容器内において第1のベローズの外部に非圧縮性の第2の流体が出入することにより、移動部材の移動に伴い容器と移動部材の間を移動する非圧縮性の第2の流体の流体抵抗を利用したダンパ効果を得ることができるため、容器内における移動部材の動きを安定させることができる。
【0009】
前記第1のベローズよりも小径であり、一端を前記移動部材により閉塞され、他端を前記容器内に密閉状態に固定され、内部に圧縮性流体が密封される伸縮可能な第2のベローズを備えることを特徴としている。
この特徴によれば、第2のベローズが第1のベローズよりも小径に構成されることにより、第1のベローズの外部と第2のベローズの外部とが伸縮方向に位置することとなり、第2の流体を第1のベローズの外部に移動させる構造を簡単に得られる。
【0010】
前記第2のベローズは、前記移動部材の中央に固定されることを特徴としている。
この特徴によれば、第2のベローズが移動部材の中央に固定されることにより、移動部材の傾きを抑え、容器内において移動部材をより安定して支持することができる。
【0011】
前記移動部材は、前記容器の内周に当接するガイド部を備えることを特徴としている。
この特徴によれば、ガイド部により移動部材の傾きを防止するとともに、容器の内周に沿って移動部材の移動を案内することができるため、移動部材の移動時の直進性を高めることができる。
【0012】
前記ガイド部には、前記第1のベローズよりも外側において厚み方向に貫通する連通路が設けられることを特徴としている。
この特徴によれば、移動部材の移動に伴いガイド部の厚み方向に貫通する連通路を介して第2の流体を移動させることにより、第2の流体の流体抵抗を小さくして移動部材の動作性を高めることができる。
【0013】
前記移動部材は、前記第1のベローズの内部に配置されていることを特徴としている。
この特徴によれば、第1のベローズおよび第2のベローズの一部が伸縮方向に重なり合った状態で移動部材を支持することができるため、第1のベローズおよび第2のベローズの伸縮長を短くすることなく容器をコンパクトに構成することができる。
【0014】
前記第1の流体と前記第2の流体は、異なる流体であることを特徴としている。
この特徴によれば、容器内において異なる流体である第1の流体と第2の流体の混入を防ぐことができるため、流体機器を異なる流体を使用する流体圧回路間に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1における油圧シリンダが適用される油圧装置を示す一部断面の模式図である。
図2】実施例1の油圧シリンダにおいて、負荷Wを駆動させない非駆動状態を示す断面図である。
図3】実施例1の油圧シリンダにおいて、負荷Wを駆動させた駆動状態を示す断面図である。
図4】実施例2の油圧シリンダにおいて、負荷Wを駆動させない非駆動状態を示す断面図である。
図5】実施例2の油圧シリンダにおいて、負荷Wを駆動させた駆動状態を示す断面図である。
図6】実施例3の油圧シリンダにおいて、負荷Wを駆動させない非駆動状態を示す断面図である。
図7】油圧シリンダの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る流体機器を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0017】
実施例1に係る流体機器につき、図1から図3を参照して説明する。
【0018】
図1に示されるように、本実施例の油圧シリンダ1(流体機器)は、例えば建設機械の油圧装置Hに組み込まれ、後述するオイルポート部材22に設けられる貫通孔である第1の流体出入路24を介して油圧回路C1を構成する圧力配管11に接続されるとともに、後述するカバー部材23に設けられる貫通孔である第2の流体出入路26を介して油圧回路C2を構成する圧力配管12に接続されている。油圧ポンプ14は、油圧回路C1の油圧リザーバ13に貯蔵された作動油F1(第1の流体,非圧縮性流体)を昇圧して、図示しない走行用の油圧モータ等を駆動する。また、油圧シリンダ1は、作動油F1により作動し、油圧回路C2において、ロッド等の負荷Wを駆動する作動油F2(第2の流体,非圧縮性流体)との間でエネルギの伝達を行う。
【0019】
先ず、油圧シリンダ1の構造について詳しく説明する。図2に示されるように、油圧シリンダ1は、金属製のシリンダ容器2(容器)と、上述した作動油F1,F2の圧力を受けてシリンダ容器2内を移動可能な移動部材3と、該移動部材3をシリンダ容器2内において支持する伸縮可能な第1のベローズ4および第2のベローズ5と、から主に構成されている。尚、図2に示される油圧シリンダ1は、油圧回路C2において負荷Wを駆動させない非駆動状態となっている。さらに尚、油圧シリンダ1における作動油F1,F2間のエネルギ伝達を利用した負荷Wの駆動の詳細については後段にて説明する。
【0020】
シリンダ容器2は、両端が開放する円筒状のシェル21と、シェル21の一端(油圧回路C1側,図1参照)を閉塞するように溶接固定されるオイルポート部材22と、シェル21の他端(油圧回路C2側,図1参照)を閉塞するように溶接固定されるカバー部材23と、から構成されている。
【0021】
オイルポート部材22には、径方向略中央に油圧回路C1を構成する圧力配管11(図1参照)から第1のベローズ4の内側に設定される第1の液室40に作動油F1を流出入させるための貫通孔である第1の流体出入路24が設けられており、半径方向の略半分の位置に略カップ形状を成す金属製のステー25が倒立状態で溶接固定されている。
【0022】
尚、ステー25には、底板25aの径方向略中央に厚み方向に貫通する連通孔25bが形成されることにより、該連通孔25bを介してオイルポート部材22の第1の流体出入路24と第1のベローズ4の内側に設定される第1の液室40とが連通している。
【0023】
カバー部材23には、径方向略中央に後述する第2のベローズ5の内側に設定されるガス室60に窒素ガス等のガス(圧縮性流体)を注入するためのガス封入口27が設けられている。ガス封入口27は、ガスの注入後にガスプラグ28により閉塞される。
【0024】
また、カバー部材23外径側には、油圧回路C2(図1参照)を構成する圧力配管12から第2のベローズ5の外側に設定される第2の液室50に作動油F2を流出入させるための貫通孔である第2の流体出入路26が設けられている。
【0025】
移動部材3は、金属製の円盤の外周部に環状を成す樹脂製のガイド部材31(ガイド部)が外嵌されることにより構成されている。ガイド部材31には、第1のベローズ4よりも外側に厚み方向に亘って溝状に形成される周方向に12等配の連通路31bが設けられており、後述する第2の液室50に流出入する作動油F2が連通路31bを介してシリンダ容器2内を移動可能となっている。尚、連通路31bの配置や数は12等配以外であってもよい。
【0026】
また、移動部材3は、その径がシリンダ容器2を構成するシェル21の内径と略同一寸法となるように構成されている。そのため、移動部材3が軸方向に移動する際に、シェル21の内壁面21aに対してガイド部材31の外周面31aが摺動することで、移動部材3の傾きを防止できるとともに、移動部材3はシェル21の内壁面21aに沿って滑らかに移動を案内される。尚、ガイド部材31の素材は、摩擦係数が低く、耐摩耗性に優れた樹脂以外に、金属であってもよい。さらに尚、ガイド部材31は、外周面31aのみを摩擦係数が低い素材により構成されていてもよい。
【0027】
移動部材3のオイルポート部材22側を構成する第1の面部3aには、金属製の円板が断面視クランク形状にプレス加工された環状のシールホルダ32が溶接固定され、移動部材3の第1の面部3aとシールホルダ32との間には、円盤状を成すシール部材33が保持されている。また、移動部材3のカバー部材23側を構成する第2の面部3bには、径方向略中央がカバー部材23側に向けて円形状に突出した突出面部3cが形成されている。
【0028】
第1のベローズ4は、両端が開放する略円筒状を成す伸縮可能な金属ベローズであり、固定端4a(他端)を閉塞するようにオイルポート部材22の内面に溶接固定されるとともに、遊動端4b(一端)を閉塞するように移動部材3の第1の面部3aの外径側に溶接固定されている。尚、第1のベローズ4は、移動部材3を構成するガイド部材31により、遊動端4bを移動部材3の第1の面部3aとの間で挟持された状態で保持されている。
【0029】
第2のベローズ5は、両端が開放する略円筒状を成す伸縮可能な金属ベローズであり、固定端5a(他端)を閉塞するようにカバー部材23の内面に溶接固定されるとともに、上端を構成する遊動端5b(一端)を閉塞するように移動部材3の第2の面部3bに形成される突出面部3cに溶接固定されている。また、第2のベローズ5は、第1のベローズ4よりも小径に構成されている。さらに、第1のベローズ4および第2のベローズ5は、移動部材3を挟んでシリンダ容器2の中心軸A(図2参照)上に伸縮方向に直列かつ同心に配置されている。
【0030】
シリンダ容器2の内部空間は、第1のベローズ4の内側に設定されオイルポート部材22の第1の流体出入路24と連通する第1の液室40と、第1のベローズ4および第2のベローズ5の外側に設定されカバー部材23の第2の流体出入路26と連通する第2の液室50と、第2のベローズ5の内側に設定されたガス室60とにそれぞれ密閉状態に仕切られた構造となっている。
【0031】
第1の液室40は、第1のベローズ4の内周面4c、オイルポート部材22の内面、および移動部材3の第1の面部3a(シールホルダ32,シール部材33)から画成され、油圧回路C1を構成する圧力配管11(図1参照)から第1の流体出入路24を介して作動油F1が流出入可能になっている。
【0032】
第2の液室50は、第2のベローズ5の外周面5d、シェル21の内壁面21a、カバー部材23の内面、移動部材3の第2の面部3b、およびガイド部材31から画成され、油圧回路C2を構成する圧力配管12から第2の流体出入路26を介して作動油F2が流出入可能になっている。また、前述したように、移動部材3を構成するガイド部材31の外径側には、連通路31bが設けられているため、第2の流体出入路26を介して第2の液室50に流出入する作動油F2は、シリンダ容器2内において、第1のベローズ4の外側(第1のベローズ4の外周面4dとシェル21の内壁面21aとの間)に対して連通路31bを介して移動可能となっている。
【0033】
ガス室60は、第2のベローズ5の内周面5c、カバー部材23の内面、および移動部材3の第2の面部3bの突出面部3cから画成されガスが封入されている。
【0034】
次いで、油圧シリンダ1における作動油F1,F2間のエネルギ伝達について詳しく説明する。尚、油圧回路C2において、負荷Wには作動油F2により作動する図示しない負荷シリンダが接続され、負荷Wはこの負荷シリンダにより駆動される例について説明する。
【0035】
油圧シリンダ1においては、油圧回路C1の作動油F1を油圧ポンプ14により昇圧させることにより、油圧回路C1を構成する圧力配管11からオイルポート部材22の第1の流体出入路24を介して第1の液室40に作動油F1が流入し(図3の矢印参照)、第1の液室40に流入した作動油F1の圧力を受けて移動部材3がカバー部材23側に移動して第1のベローズ4の伸長および第2のベローズ5の収縮が起こる。このとき、移動部材3のカバー部材23側への移動に伴いガイド部材31の連通路31bを介して第2の液室50から第1のベローズ4の外側(第1のベローズ4の外周面4dとシェル21の内壁面21aとの間)に作動油F2が移動する(図3の矢印参照)。
【0036】
また、油圧シリンダ1は、移動部材3のカバー部材23側への移動および第2のベローズ5の収縮により、第2のベローズ5の外側に設定される第2の液室50の体積を減少させ、第2の液室50内の作動油F2をカバー部材23の第2の流体出入路26を介して油圧回路C2を構成する圧力配管12に排出する(図3の矢印参照)。これによれば、油圧回路C2において、油圧シリンダ1から負荷シリンダに作動油F2が供給され負荷Wを駆動する駆動状態となる。
【0037】
このとき、シリンダ容器2内においては、第2の液室50内の作動油F2の圧力とガス室60内のガス圧とが均衡し、収縮状態の第2のベローズ5に径方向に過大な応力がかかることがなくなり、第2のベローズ5の形状が維持されるとともに、破損を抑制できるようになっている。
【0038】
油圧シリンダ1は、図3に示される駆動状態から、油圧回路C1において油圧ポンプ14の下流側に設けられる図示しないバルブを切り換えて作動油F1の圧力を低下させることにより、油圧回路C2に接続される負荷シリンダから圧力配管12およびカバー部材23の第2の流体出入路26を介して第2の液室50に作動油F2が流入し(図2の矢印参照)、移動部材3の第2の面部3b側が第2の液室50に流入した作動油F2の圧力を受けて移動部材3はオイルポート部材22側に移動して第2のベローズ5の伸長および第1のベローズ4の収縮が起こる。このとき、第2のベローズ5の内側に設定されるガス室60内で圧縮されていたガスのガス圧により、第2のベローズ5を伸長させる方向に復帰力が作用するため、移動部材3がオイルポート部材22側に移動しやすくなっている。また、このとき、移動部材3のオイルポート部材22側への移動に伴いガイド部材31の連通路31bを介して、第1のベローズ4の外周面4dとシェル21の内壁面21aとの間から第2の液室50に作動油F2が移動する(図2の矢印参照)。
【0039】
また、油圧シリンダ1は、移動部材3のオイルポート部材22側への移動および第1のベローズ4の収縮により、第1のベローズ4の内側に設定される第1の液室40の体積を減少させ、第1の液室40内の作動油F1をステー25の連通孔25bおよびオイルポート部材22の第1の流体出入路24を介して油圧回路C1を構成する圧力配管11に排出する(図2の矢印参照)。これによれば、シリンダ容器2内において移動部材3の第1の面部3aに取付けられたシール部材33とオイルポート部材22に設けられるステー25の底板25aとが密接し、図2に示される非駆動状態となる。
【0040】
このとき、シリンダ容器2内においてシール部材33とステー25の底板25aとが密接して環状のシール部Sを形成し、ステー25の連通孔25bが閉塞される。これによれば、第1の液室40内に一部の作動油F1が閉じ込められ、この閉じ込められた作動油F1の圧力と、第2の液室50に流入した作動油F2の圧力とが均衡するため、収縮状態の第1のベローズ4に過大な応力がかかることがなくなり、第1のベローズ4の形状が維持されるとともに、破損を抑制できるようになっている。
【0041】
以上説明したように、油圧シリンダ1は、シリンダ容器2内の移動部材3を作動油F1の圧力によって軸方向に移動させることにより、移動部材3を介して作動油F1,F2間で圧力を作用させてエネルギの伝達を行うことができる。
【0042】
また、シリンダ容器2内において第1の流体出入路24から流出入する作動油F1と第2の流体出入路26から流出入する作動油F2を第1のベローズ4の内外で密閉状態に仕切ることができるため、シリンダ容器2内における作動油F1,F2の混入を防ぐことができるとともに、シリンダ容器2と移動部材3の間の摺動による摩擦を小さくして、シリンダ容器2内における移動部材3の動作性を高めることができる。
【0043】
また、シリンダ容器2内において第2の流体出入路26から第2の液室50に非圧縮性流体である作動油F2が流出入することにより、移動部材3の移動に伴い第1のベローズ4よりも外側に設けられるガイド部材31の連通路31bを介してシリンダ容器2内を移動する際に生じる作動油F2の流体抵抗を利用したダンパ効果を得ることができるため、シリンダ容器2内における移動部材3の動きを安定させることができる。
【0044】
さらに、シリンダ容器2内においてガイド部材31に設けられる連通路31bを介して作動油F2を移動させることにより、作動油F2の流体抵抗を小さくして、移動部材3の移動に必要な作動油F1,F2の圧力を小さくすることができるため、移動部材の動作性を高めることができる。尚、ガイド部材31に設けられる連通路31bの大きさを変更することにより、連通路31bを介して移動する作動油F2の流体抵抗を調整することができるため、シリンダ容器2内における移動部材3の移動速度を制御することができる。
【0045】
また、第2のベローズ5が第1のベローズ4よりも小径に構成されることにより、第1のベローズ4の外部と第2のベローズ5の外部とが伸縮方向に位置することとなり、第2の液室50において、作動油F2を移動部材3およびガイド部材31を挟んで第1のベローズ4の外部と第2のベローズ5の外部との間で移動させる構造を簡単に得ることができる。さらに、第2のベローズ5は、第1のベローズ4よりも小径に構成されることにより、第2の流体出入路26から第2の液室50に流出入する作動油F2に対する移動部材3の第2の面部3b側における受圧面積を大きく構成することができ、かつ第1の流体出入路24から第1の液室40に流出入する作動油F1に対する移動部材3の第1の面部3a側における受圧面積を大きく構成することができるため、作動油F1,F2の圧力に対する移動部材3の応答性を高めることができる。
【0046】
また、移動部材3は、伸縮方向に直列かつ同心に配置される第1のベローズ4および第2のベローズ5によりシリンダ容器2内に支持されるため、シリンダ容器2内において移動部材3を安定して支持することができる。さらに、第2のベローズ5の内側に設定されるガス室60に密封されるガスのガス圧により、第2のベローズ5の形状が維持されやすくなるため、シリンダ容器2内において移動部材3をより安定して支持することができる。
【0047】
また、第2のベローズ5は、移動部材3の略中央に固定されることにより、移動部材3の傾きを抑え、シリンダ容器2内において移動部材3をより安定して支持することができる。このように、移動部材3が第1のベローズ4および第2のベローズ5に安定して支持されることにより、シリンダ容器2内における移動部材3の移動時の直進性を高めることができる。
【0048】
また、前述したように、シリンダ容器2の内部空間を第1のベローズ4の内外で密閉状態に仕切ることができるため、シリンダ容器2(シェル21の内壁面21a)と移動部材3(ガイド部材31の外周面31a)の間の密閉性を高めることなく、第1の液室40と第2の液室50との間で作動油F1,F2の混入を防ぐことができる。
【0049】
具体的には、例えば、前述した背景技術として説明したように、移動部材3の外周部にシェル21の内壁面21aと摺接する図示しないシール部材等を設けることにより、シリンダ容器2の内部空間を移動部材3により第1の液室40と第2の液室50に略密閉状に仕切って作動油F1,F2の混入を防いでいるような場合、作動油F1,F2の混入を防ぐためにシール部材による密閉性を高めようとすると、シェル21の内壁面21aと移動部材3のシール部材との摩擦が生じてしまう。この場合、シリンダ容器2内において移動部材3が移動を繰り返すことによりシール部材が摩耗していくため、シール部材による密閉性が低下して作動油F1,F2の混入が起こる虞があった。また、この場合、シェル21の内壁面21aに対する移動部材3の摺動抵抗が生じるため、移動部材3を移動させるために必要な作動油F1,F2の圧力が大きくなるだけでなく、定期的に油圧シリンダ1を分解して摩耗したシール部材を交換する必要があり、メンテナンス性も低下していた。
【0050】
一方、本実施例の油圧シリンダ1は、シリンダ容器2の内部空間を第1のベローズ4の内外で密閉状態に仕切ることができるため、第1の液室40と第2の液室50との間で作動油F1,F2の混入を防ぐことができ、シェル21の内壁面21aに対する移動部材3(ガイド部材31の外周面31a)の摩擦を小さくすることにより、シリンダ容器2内における移動部材3の動作性を高めることができるとともに、長期的に移動部材3の摩耗がない油圧シリンダ1とすることができる。また、作動油F1,F2の混入に加えて、シール部材の摩耗粉の混入を防ぐことができるため、負荷Wの駆動を高い精度で維持することができる。
【0051】
また、シリンダ容器2内において作動油F1,F2の混入を防ぐことができるため、作動油F1,F2の種類が異なる場合であっても、油圧回路C1,C2間に油圧シリンダ1を適用することができる。
【実施例2】
【0052】
次に、実施例2に係る流体機器につき、図4および図5を参照して説明する。尚、前記実施例に示される構成部分と同一構成部分に付いては同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0053】
図4および図5に示されるように、実施例2における油圧シリンダ101(流体機器)においては、移動部材103が第1のベローズ4の内部に配置され、移動部材103の第2の面部103bの外径側にガイド部材131の内周部に嵌合される円筒状の連結部材136の一端が溶接固定されている。
【0054】
また、第1のベローズ4の遊動端4bは、ガイド部材131と連結部材136の他端との間に挟持された状態で溶接固定されている。
【0055】
これによれば、第1のベローズ4の内部に配置される移動部材103の突出面部103cにより第2のベローズ5の遊動端5bが閉塞されることにより、第1のベローズ4と第2のベローズ5の一部が伸縮方向に重なり合った状態で移動部材103を支持することができるため、移動部材103を軸方向に移動させた際の第1のベローズ4および第2のベローズ5の伸縮長を短くすることなくシリンダ容器102をコンパクトに構成することができる。
【0056】
また、図4に示されるように、油圧シリンダ101の非駆動状態においては、シリンダ容器102内においては、移動部材103の第1の面部103aに取付けられたシール部材33とオイルポート部材122の第1の流体出入路124の内面とが密接して環状のシール部Sを形成し、第1の流体出入路124が閉塞される。これによれば、第1の液室40内に一部の作動油F1が閉じ込められ、この閉じ込められた作動油F1の圧力と、第2の液室50に流入した作動油F2の圧力とが均衡するため、収縮状態の第1のベローズ4に過大な応力がかかることがなくなり、第1のベローズ4の形状が維持されるとともに、破損を抑制できるようになっている。
【実施例3】
【0057】
次に、実施例3に係る流体機器につき、図6を参照して説明する。尚、前記実施例に示される構成部分と同一構成部分に付いては同一符号を付して重複する説明を省略する。さらに尚、実施例3の油圧シリンダについては、非駆動状態のみ図示し、駆動状態の図示を省略する。
【0058】
図6に示されるように、実施例3における油圧シリンダ201においては、カバー部材223には、径方向略中央に油圧回路C2(図1参照)を構成する圧力配管12から第2のベローズ5の内側に設定される第2の液室250に非圧縮性流体である作動油F2を流出入させるための第2の流体出入路226が設けられている。
【0059】
また、カバー部材223の外径側には第2のベローズ5の外側に設定されるガス室260に窒素ガス等のガスを注入するためのガス封入口227が設けられており、ガス封入口227は、ガスの注入後にガスプラグ228により閉塞される。
【0060】
これによれば、油圧シリンダ201の非駆動状態においては、移動部材3をオイルポート部材22側へ移動させるための作動油F2の圧力を、第2のベローズ5の内側に密閉状に設定される第2の液室250内において移動部材3の径方向略中央部に形成される突出面部3cで受けることができるため、作動油F2の圧力を効率よく作用させ、シリンダ容器202内における移動部材3の動作性を高めることができる。
【0061】
また、第1の液室40と第2の液室250との間にガス室260が介在しているため、作動油F1と作動油F2とが混ざりにくい。すなわち、第1のベローズ4または第2のベローズ5の密封が不十分となっても作動油F1と作動油F2とが混ざりにくい。
【0062】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0063】
また、前記実施例では、油圧シリンダ1に使用される作動流体として作動油F1,F2を例に説明したが、少なくとも一方の作動流体が圧縮性の流体であってもよい。
【0064】
また、前記実施例では、シリンダ容器2,102,202内に第1のベローズ4と第2のベローズ5が設けられるものとして説明したが、シリンダ容器内に少なくとも一つベローズが設けられ、該ベローズにより第1の流体出入路および第2の流体出入路から流出入する作動流体を密閉状態に仕切ることができるものであればよい。
【0065】
また、前記実施例では、第2のベローズ5の内部にガスが封入される態様として説明したが、第2のベローズの内部には、収縮した第2のベローズに復帰力を付与する復帰手段が設けられていればよく、例えば第2のベローズの内部にスプリング等を設けて第2のベローズが伸長する方向に復帰力を与えるようにしてもよい。
【0066】
また、前記実施例では、移動部材3を構成する金属製の円盤の外周部に別体のガイド部材31が外嵌される態様として説明したが、移動部材を構成する金属製の円盤の外周部にガイド部が一体に構成されていてもよい。
【0067】
また、前記実施例では、移動部材3,103の移動に伴いガイド部材31,131の外周面がシェル21の内壁面21aに対して摺動する態様として説明したが、ガイド部材の外周面をシェルの内壁面から離間させることにより、シェルの内壁面とガイド部材の外周面の間の摺動を少なくしてもよい。
【0068】
また、前記実施例では、ガイド部材31に連通路31bが設けられるものとして説明したが、連通路は、第1のベローズ4よりも外側であれば移動部材3を構成する金属製の円盤に設けられていてもよい。
【0069】
また、連通路31bは、溝状のものに限らず、貫通孔やスリット状に構成されてもよい。
【0070】
また、シリンダ容器2は、シェル21とオイルポート部材22とカバー部材23とがそれぞれ別の部材により形成される例について説明したが、シェル21とオイルポート部材22またはカバー部材23を一部材としてもよい。
【0071】
また、オイルポート部材22には、ステー25の代わりにリップシール135を有するシール部材133(図7参照)が一体に設けられていてもよく、移動部材3の第1の面部3aをリップシール135に直接密接させてもよい。
【0072】
また、第1のベローズ4および第2のベローズ5は、金属製のものに限らず、例えば樹脂等から構成されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 油圧シリンダ
2 シリンダ容器
3 移動部材
4 第1のベローズ
4a 固定端(他端)
4b 遊動端(一端)
5 第2のベローズ
5a 固定端(他端)
5b 遊動端(一端)
11,12 圧力配管
21 シェル
22 オイルポート部材
23 カバー部材
24 第1の流体出入路
26 第2の流体出入路
27 ガス封入口
31 ガイド部材(ガイド部)
31b 連通路
40 第1の液室
50 第2の液室
60 ガス室
101 油圧シリンダ(流体機器)
201 油圧シリンダ(流体機器)
C1,C2 油圧回路
F1,F2 作動油
H 油圧装置
S シール部
W 負荷
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7