(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6931406
(24)【登録日】2021年8月17日
(45)【発行日】2021年9月1日
(54)【発明の名称】電磁シールド膜、回路基板及び電磁シールド膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20210823BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20210823BHJP
B32B 7/025 20190101ALI20210823BHJP
【FI】
H05K9/00 W
H05K9/00 R
H05K1/02 P
B32B7/025
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-570450(P2019-570450)
(86)(22)【出願日】2018年3月22日
(65)【公表番号】特表2020-524414(P2020-524414A)
(43)【公表日】2020年8月13日
(86)【国際出願番号】CN2018080019
(87)【国際公開番号】WO2019174065
(87)【国際公開日】20190919
【審査請求日】2019年12月19日
(31)【優先権主張番号】201810210836.2
(32)【優先日】2018年3月14日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519288641
【氏名又は名称】グアンジョウ ファン バン エレクトロニクス カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GUANGZHOU FANG BANG ELECTRONICS CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スー,ジー
【審査官】
五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−95566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
B32B 7/025
H05K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁シールド膜であって、
第1シールド層、第2シールド層、接着剤膜層及び複数の凸状粒子を含み、前記第1シールド層は、対向する第1表面と平滑面である第2表面とを含み、前記複数の凸状粒子は、前記第1シールド層の第2表面上に付着され、前記第2シールド層は、前記第1シールド層の第2表面上に配置され、且つ前記複数の凸状粒子を覆い、それにより、前記第2シールド層の外表面において前記凸状粒子に対応する位置に凸起部を形成して、他の位置に平坦部を形成し、前記接着剤膜層は、前記第2シールド層の外表面上に配置され、
前記第2シールド層の外表面上には、複数の導電性凸起がさらに形成されている、
ことを特徴とする電磁シールド膜。
【請求項2】
前記凸状粒子は、導体粒子、半導体粒子、絶縁体粒子及び被覆複合粒子のうちの1種以上を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の電磁シールド膜。
【請求項3】
前記凸状粒子の高さが、0.1μm−30μmである、
ことを特徴とする請求項1に記載の電磁シールド膜。
【請求項4】
前記導電性凸起は、前記凸起部に集中して分布する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電磁シールド膜。
【請求項5】
前記接着剤膜層は、導電性粒子を含有する粘着層を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の電磁シールド膜。
【請求項6】
前記接着剤膜層は、導電性粒子を含有しない粘着層を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の電磁シールド膜。
【請求項7】
前記第1シールド層及び第2シールド層は、金属シールド層、カーボン・ナノチューブ・シールド層、フェライト・シールド層及びグラフェン・シールド層のうちの1種以上を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の電磁シールド膜。
【請求項8】
前記金属シールド層は、金属単体シールド層及び/又は合金シールド層を含み、
前記金属単体シールド層は、アルミニウム、チタン、亜鉛、鉄、ニッケル、クロム、コバルト、銅、銀及び金のうちのいずれか1種の材料で製造され、前記合金シールド層は、アルミニウム、チタン、亜鉛、鉄、ニッケル、クロム、コバルト、銅、銀及び金のうちのいずれか2種以上の材料で製造される、
ことを特徴とする請求項7に記載の電磁シールド膜。
【請求項9】
前記電磁シールド膜は、保護膜層をさらに含み、前記第1シールド層の第1表面には、前記保護膜層が形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電磁シールド膜。
【請求項10】
回路基板であって、
プリント回路基板と、請求項1〜9のいずれか1項に記載の電磁シールド膜とを備え、
前記電磁シールド膜は、その接着剤膜層を介して前記プリント回路基板にラミネートされ、前記凸起部は、前記接着剤膜層を刺し貫き、前記プリント回路基板のグラウンド層まで延びている、
ことを特徴とする回路基板。
【請求項11】
電磁シールド膜の製造方法であって、
請求項1〜9のいずれか1項に記載の電磁シールド膜の製造に適用し、
対向する第1表面と、平滑面である第2表面とを含む第1シールド層を形成するステップS1と、
第1シールド層の第2表面上に複数の凸状粒子を形成するステップS2と、
前記第2シールド層の外表面において前記凸状粒子に対応する位置に凸起部を形成して、他の位置に平坦部を形成するように、前記凸状粒子が分布している第2表面上に第2シールド層を形成するステップS3と、
前記第2シールド層の外表面上に接着剤膜層を形成するステップS4と、を含む、
ことを特徴とする電磁シールド膜の製造方法。
【請求項12】
ステップS1においては、
キャリア膜上に保護膜層を形成し、前記保護膜層上に前記第1シールド層を形成し、但し、前記第1表面が前記保護膜層に貼り合わせられている、又は
キャリア膜上に可剥離層を形成し、前記可剥離層の表面上に前記第1シールド層を形成し、前記第1シールド層の第1表面に保護膜層を形成した後、前記キャリア膜層を剥離する
という方式によって、前記第1シールド層を形成する、
ことを特徴とする請求項11に記載の電磁シールド膜の製造方法。
【請求項13】
前記第2シールド層の外表面上に接着剤膜層を形成する前に、
物理的粗面化、無電解めっき、物理蒸着、化学蒸着、蒸発めっき、スパッタリングめっき、電気めっき及び混合めっきのうちの1種以上のプロセスによって前記第2シールド層の外表面に複数の導電性凸起を形成するステップをさらに含む、
ことを特徴とする請求項11又は12に記載の電磁シールド膜の製造方法。
【請求項14】
ステップS4においては、前記第2シールド層の外表面上に接着剤膜層を形成する前記ステップは、具体的には、
離型膜上に接着剤膜層を塗布し、次に、前記接着剤膜層を前記第2シールド層の外表面にラミネートして移すことで前記第2シールド層の外表面上に前記接着剤膜層を形成する、又は、
前記第2シールド層の外表面に接着剤膜層を直接塗布して、前記第2シールド層の外表面上に前記接着剤膜層を形成する、
ことを特徴とする請求項11に記載の電磁シールド膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子分野に関し、特に電磁シールド膜、回路基板及び電磁シールド膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子工業の急速な発展に伴い、電子製品が小型化、軽量化、高集積化へ発展するので、フレキシブル回路基板の発展を大幅に促進して、デバイス装置とリード線の一体化接続を実現する。フレキシブル回路基板は、携帯電話、液晶表示、通信や航空宇宙などの産業に広く使用されることができる。
【0003】
国際市場の駆動下で、機能性フレキシブル回路基板は、フレキシブル回路基板の市場において支配的な地位を占めており、機能性フレキシブル回路基板の性能を評価するための重要な指標の1つは、電磁シールド((Electromagnetic Interference Shielding、略語EMI Shielding)である。携帯電話などの通信機器の機能が統合されるに伴い、その内部アセンブリーの高周波・高速化が急速に発展している。たとえば、携帯電話の機能には、従来のオーディオ伝播機能以外、撮影機能も必須な機能となり、且つWLAN(Wireless Local Area Networks、無線ローカル・エリア・ネットワーク)、GPS(Global Positioning System、全地球測位システム)及びインターネット接続機能が普及しており、さらに将来の検知アセンブリーのさらなる統合により、アセンブリーの急速な高周波数・高速化の傾向が益々避けられない。高周波数及び高速化の駆動によるアセンブリーの内部及び外部の電磁干渉のため、信号の伝送中の減衰及び挿入損失やジッタの問題が深刻になりつつある。
【0004】
現在、従来の回路基板に一般的に使用されているシールド膜は、シールド層と導電性接着剤層とを含み、導電性接着剤層を介してシールド層が回路基板のグラウンド層に接続されて、干渉電荷を回路基板グラウンド層に導入して、シールドを実現する。しかしながら、高周波数で伝送する場合、導電性接着剤層における導電性粒子が渦電流損失を発生し、その結果、回路基板の挿入損失を増大し、信号伝送の完全性へ悪影響を与える。
【発明の概要】
【0005】
本発明の実施例の目的は、挿入損失を低下させて、超高周波伝送に効果的に適用できる電磁シールド膜、回路基板及び電磁シールド膜の製造方法を提供することである。
【0006】
上記目的を達成させるために、本発明の実施例は、第1シールド層、第2シールド層、接着剤膜層及び複数の凸状粒子を含み、前記第1シールド層は、対向する第1表面と平滑面である第2表面とを含み、前記複数の凸状粒子は、前記第1シールド層の第2表面上に付着され、前記第2シールド層は、前記第1シールド層の第2表面上に配置され、且つ前記複数の凸状粒子を覆い、それにより、前記第2シールド層の外表面において前記凸状粒子に対応する位置に凸起部を形成して、他の位置に平坦部を形成し、前記接着剤膜層は、前記第2シールド層の外表面上に配置される電磁シールド膜を提供する。
【0007】
上記態様の改良として、前記凸状粒子は、導体粒子、半導体粒子、絶縁体粒子及び被覆複合粒子のうちの1種以上を含む。
【0008】
上記態様の改良として、前記凸状粒子の高さが、0.1μm−30μmである。
【0009】
上記態様の改良として、前記第2シールド層の外表面上には、複数の導電性凸起がさらに形成される。
【0010】
上記態様の改良として、前記導電性凸起は、前記凸起部に集中して分布する。
【0011】
上記態様の改良として、前記接着剤膜層は、導電性粒子を含有する粘着層を含む。
【0012】
上記態様の改良として、前記接着剤膜層は、導電性粒子を含有しない粘着層を含む。
【0013】
上記態様の改良として、前記第1シールド層及び第2シールド層は、金属シールド層、カーボン・ナノチューブ・シールド層、フェライト・シールド層及びグラフェン・シールド層のうちの1種以上を含む。
【0014】
上記態様の改良として、前記金属シールド層は、金属単体シールド層及び/又は合金シールド層を含み、前記金属単体シールド層は、アルミニウム、チタン、亜鉛、鉄、ニッケル、クロム、コバルト、銅、銀及び金のうちのいずれか1種の材料で製造され、前記合金シールド層は、アルミニウム、チタン、亜鉛、鉄、ニッケル、クロム、コバルト、銅、銀及び金のうちのいずれか2種以上の材料で製造される。
【0015】
上記態様の改良として、前記電磁シールド膜は、保護膜層をさらに含み、前記第1シールド層の第1表面には、前記保護膜層が形成されている。
【0016】
従来技術に比べて、本発明の実施例は、電磁シールド膜を開示し、前記第2シールド層の外表面において前記凸状粒子に対応する位置に凸起部を形成して、他の位置に平坦部を形成し、前記第2シールド層の外表面上には前記接着剤膜層が設けられ、従って、前記凸起部により、ラミネート過程においてシールド層が接着剤膜層を順調に刺し貫くことを保証し、干渉電荷が正常に放出されることを確保するとともに、平坦部により、使用中の挿入損失を低下し、超高周波数伝送に適用できる。
【0017】
以上に対応して、本発明の実施例は、プリント回路基板と、上記のいずれか1項に記載の電磁シールド膜とを備える回路基板をさらに提供し、前記電磁シールド膜は、その接着剤膜層を介して前記プリント回路基板にラミネートされ、前記凸起部は、前記接着剤膜層を刺し貫き、前記プリント回路基板のグラウンド層まで延びている。
【0018】
従来技術に比べて、本発明の実施例は、回路基板を開示し、前記回路基板は、プリント回路基板と、上記のいずれか1項に記載の電磁シールド膜とを備え、前記電磁シールド膜は、その接着剤膜層を介して前記プリント回路基板にラミネートされ、前記凸起部は、前記接着剤膜層を刺し貫き、前記プリント回路基板のグラウンド層まで延びており、それによって、干渉電荷を順調に放出することを実現するとともに、前記平坦部により使用中の挿入損失を低下し、超高周波伝送に適用できる。
【0019】
以上に対応して、本発明の実施例は、上記のいずれか1項に記載の電磁シールド膜の製造に適用する電磁シールド膜の製造方法をさらに提供し、
対向する第1表面と、平滑面である表面第2表面とを含む第1シールド層を形成するステップS1と、
第1シールド層の第2表面上に複数の凸状粒子を形成するステップS2と、
前記第2シールド層の外表面において前記凸状粒子に対応する位置に凸起部を形成して、他の位置に平坦部を形成するように、前記凸状粒子が分布している第2表面上に第2シールド層を形成するステップS3と、
前記第2シールド層の外表面上に接着剤膜層を形成するステップS4と、を含む。
【0020】
上記態様の改良として、ステップS1においては、
キャリア膜上に保護膜層を形成し、前記保護膜層上に前記第1シールド層を形成し、但し、前記第1表面が前記保護膜層に貼り合わせられている、又は
キャリア膜上に可剥離層を形成し、前記可剥離層の表面上に前記第1シールド層を形成し、前記第1シールド層の第1表面に保護膜層を形成した後、前記キャリア膜層を剥離する
という方式によって、前記第1シールド層を形成する。
【0021】
上記態様の改良として、前記第2シールド層の外表面上に接着剤膜層を形成する前に、
物理的粗面化、無電解めっき、物理蒸着、化学蒸着、蒸発めっき、スパッタリングめっき、電気めっき及び混合めっきのうちの1種以上のプロセスによって前記第2シールド層の外表面に複数の導電性凸起を形成するステップをさらに含む。
【0022】
上記態様の改良として、ステップS4においては、前記第2シールド層の外表面上に接着剤膜層を形成する前記ステップは、具体的には、
離型膜上に接着剤膜層を塗布し、次に、前記接着剤膜層を前記第2シールド層の外表面にラミネートして移すことで前記第2シールド層の外表面上に前記接着剤膜層を形成する、又は
前記第2シールド層の外表面に接着剤膜層を直接塗布して、前記第2シールド層の外表面上に前記接着剤膜層を形成する。
【0023】
従来技術に比べて、本発明の実施例による電磁シールド膜の製造方法は、第1シールド層の第2表面上に複数の凸状粒子を形成し、前記凸状粒子が分布している第2表面上に第2シールド層を形成することにより、前記第2シールド層の外表面において前記凸状粒子に対応する位置に凸起部を形成して、他の位置に平坦部を形成し、それによって、ラミネート過程においてシールド層が接着剤膜層を順調に突き刺すことを確保し、確実に接地させることを実現し、実用性が高く、また、使用中の挿入損失を低下して、超高周波伝送に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施例1における電磁シールド膜の構造模式図である。
【
図2】本発明の実施例2における電磁シールド膜の構造模式図である。
【
図3】本発明の実施例3における回路基板の構造模式図である。
【
図4】本発明の実施例4における回路基板の構造模式図である。
【
図5】本発明の実施例5における電磁シールド膜の製造方法の模式的なフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施例における図面を参照しながら、本発明の実施例における技術案を明瞭で完全に説明するが、勿論、説明される実施例は、本発明の実施例の一部だけであり、すべての実施例ではない。本発明における実施例に基づいて、当業者が創造的な努力を必要とせずに想到し得るすべてのほかの実施例は、本発明の特許範囲に属する。
【0026】
図1には、本発明の実施例1における電磁シールド膜の構造模式図が示されており、
図1に示すように、前記電磁シールド膜は、第1シールド層1、第2シールド層2、接着剤膜層3及び複数の凸状粒子を含み、前記第1シールド層1は、対向する第1表面11と、平滑面である第2表面12とを含み、前記複数の凸状粒子は、前記第1シールド層1の第2表面12上に付着され、前記第2シールド層2は、前記第1シールド層1の第2表面12上に配置され、且つ前記複数の凸状粒子を覆い、それにより、前記第2シールド層2の外表面21において前記凸状粒子4に対応する位置に凸起部212を形成して、他の位置に平坦部211を形成し、前記接着剤膜層3は、前記第2シールド層2の外表面21上に配置される。
【0027】
前記第1シールド層1及び第2シールド層2は、ともに自由電子を伝導する機能を有し、使用される材料が同じであってもよく、異なってもよく、具体的には、金属シールド層、カーボン・ナノチューブ・シールド層、フェライト・シールド層及びグラフェン・シールド層のうちの1種以上を含む。前記金属シールド層は、金属単体シールド層及び/又は合金シールド層を含み、前記金属単体シールド層は、アルミニウム、チタン、亜鉛、鉄、ニッケル、クロム、コバルト、銅、銀及び金のうちのいずれか1種の材料で製造され、前記合金シールド層は、アルミニウム、チタン、亜鉛、鉄、ニッケル、クロム、コバルト、銅、銀及び金のうちのいずれか2種以上の材料で製造される。また、前記接着剤膜層3に使用される材料は、好ましくは、変性エポキシ樹脂類、変性アクリル酸類、変性ゴム類、変性熱可塑性ポリイミド類、変性ポリエステル類から選ばれるものである。
【0028】
本実施例では、前記凸状粒子4は、第1シールド膜の第2表面12(第2表面12は、平滑面である)に分布し、その機能が第2シールド膜の外表面21に凸起部212を形成することで、従って、電磁シールド膜とプリント回路基板とのラミネート過程において、該凸起部212が接着剤膜層3及びプリント回路基板のグラウンド層を順調に刺し貫き、確実に接地させることを実現する。前記凸状粒子4は、導体粒子、半導体粒子、絶縁体粒子及び被覆複合粒子(導体で被覆された絶縁体粒子、又は絶縁体で被覆された別の絶縁体粒子など)のうちの1種以上を含み、さらに小粒子が凝集してなる大粒子を含む。実際に使用されるとき、前記凸状粒子4は、ダイヤモンド粉末、チタン白粉末、ケイ素粉末、ケイ化物粉末、シリカ粉末、アルミナイド粉末、グラフェン粉体、鉄粉、ニッケル粉、銅粉、ニッケルめっきダイヤモンド粉末、金属めっき無機粉体などである。なお、本発明において凸状粒子4の形状は、図示したものに制限されず、その材料も上記材料に制限されず、前記第2シールド層の外表面21に凸起部212を形成する粒子であれば、本発明の特許範囲に属する。
【0029】
前記第2シールド膜の外表面21に接着剤膜層3を刺し貫くほどの凸起部212を形成するために、前記凸状粒子4の高さは、0.1μm−30μmとする。また、十分な刺し貫き強度及び接着剤収容量を確保するために、記第2シールド層の外表面21の凹凸度(凸起部212の高さに相当)に対する前記接着剤膜層3の厚さの割合は、好ましくは、0.8〜2を満たし、具体的には、接着剤膜層3の厚さが第2シールド膜の外表面21の凹凸度に対して小さすぎることで接着剤収容量が不十分であり、デラミネーション現象を引き起こすことを防止する一方、第2シールド膜の外表面21の凹凸度が接着剤膜層3の厚さに対して小さすぎることで刺し貫き強度が不十分であり、接地故障の発生を引き起こすことを防止する。なお、前記第2シールド膜の外表面21の凹凸度は、前記第2シールド膜の外表面21の最高点と最低点との間隔である。
【0030】
上記構造によれば、前記第2シールド層2の外表面21において前記凸状粒子4に対応する位置に凸起部212を形成して、他の位置に平坦部211を形成し、前記第2シールド層2の外表面21上に前記接着剤膜層3が設けられ、従って、前記第2シールド層2の外表面21の凸起部212により、ラミネート過程において第2シールド層が接着剤膜層3を順調に刺し貫くことを保証し、干渉電荷が正常に放出されることを保証するとともに、平坦部211により、使用中の挿入損失を低下し、超高周波伝送に適用できる。
【0031】
好ましくは、前記接着剤膜層3は、導電性粒子を含有しない粘着層であり、使用中の回路基板の挿入損失を低下し、シールド効果を向上させるとともに、回路基板の可撓性を改善する。
【0032】
別の好適実施例では、前記接着剤膜層3は、導電性粒子を有する粘着層であり、この場合に、前記接着剤膜層3は、前記配線板と電磁シールド膜とを密着させる粘着作用を果たす以外、導電機能を有し、第2シールド層2と組み合わせて干渉電子を前記配線板のグラウンド層に素早く導入する。前記導電性粒子は、互いに分離した導電性粒子であってもよいし、凝集してなる大粒子導電性粒子であってもよく、前記導電性粒子が互いに分離した導電性粒子である場合に、電気的接触の面積をさらに増加し、電気的接触の均一性を向上でき、一方、前記導電性粒子が凝集してなる大粒子導電性粒子である場合に、刺し貫き強度を高めることができる。
【0033】
好ましくは、前記電磁シールド膜は、保護膜層をさらに含み、前記第1シールド層1の第1表面11には、前記保護膜層が形成されている。前記保護膜層は、隔離作用を果たし、前記第1シールド層1及び第2シールド層2によるシールド効果を確保する。前記保護膜層は、PPS薄膜層、PEN薄膜層、ポリエステル薄膜層、ポリイミド薄膜層、エポキシ樹脂インクを硬化させてなる膜層、ポリウレタンインクを硬化させてなる膜層、変性アクリル酸樹脂を硬化させてなる膜層、ポリイミド樹脂を硬化させてなる膜層のうちの1種である。
【0034】
なお、本実施例の図面における第1シールド層1及び第2シールド層2は、単層構造であってもよいし、多層構造であってもよい。また、実際の生産及び使用のニーズに応じて、本実施例の図面における第1シールド層及び第2シールド層は、グリッド状、発泡状などにしてもよい。
【0035】
図2には、本発明の実施例2における電磁シールド膜の構造模式図が示されており、
図2に示すように、前記電磁シールド膜は、第1シールド層1、第2シールド層2、接着剤膜層3及び複数の凸状粒子4を含み、複数の凸状粒子4は、前記第1シールド層1と第2シールド層2との間に設けられ、前記第1シールド層1は、対向する第1表面11と、平滑面である第2表面12とを含み、前記複数の凸状粒子4は、前記第1シールド層の第2表面上に付着され、前記第2シールド層2は、前記第1シールド層1の第2表面12上に配置され、且つ前記複数の凸状粒子4を覆い、それにより、前記第2シールド層2の外表面21において前記凸状粒子4に対応する位置に凸起部212を形成して、他の位置に平坦部211を形成し、前記接着剤膜層3は、前記第2シールド層2の外表面21に配置され、前記第2シールド層2の外表面21には、複数の導電性凸起5がさらに形成されている。
【0036】
前記導電性凸起5は、金属凸起、カーボン・ナノチューブ凸起及びフェライト凸起のうちの1種以上を含む。さらに、前記金属凸起は、金属単体凸起及び/又は合金凸起を含み、前記金属単体凸起は、アルミニウム、チタン、亜鉛、鉄、ニッケル、クロム、コバルト、銅、銀及び金のうちのいずれか1種の材料で製造され、前記合金凸起は、アルミニウム、チタン、亜鉛、鉄、ニッケル、クロム、コバルト、銅、銀及び金のうちのいずれか2種以上の材料で製造される。なお、導電性凸起5の材料は、第1シールド層1、第2シールド層2の材料と同じであってもよく、異なってもよい。
【0037】
前記導電性凸起5は、好ましくは、前記凸起部212に集中して分布し、この場合に、前記第2シールド層2は、ラミネート過程においてより容易に接着剤膜層3を刺し貫き、確実に接地されて、電磁シールドの品質を向上させる。
【0038】
前記第1シールド層1及び第2シールド層2は、ともに自由電子を伝導する機能を有し、使用される材料が同じであってもよく、異なってもよく、具体的には、金属シールド層、カーボン・ナノチューブ・シールド層、フェライト・シールド層及びグラフェン・シールド層のうちの1種以上を含む。前記金属シールド層は、金属単体シールド層及び/又は合金シールド層を含み、前記金属単体シールド層は、アルミニウム、チタン、亜鉛、鉄、ニッケル、クロム、コバルト、銅、銀及び金のうちのいずれか1種の材料で製造され、前記合金シールド層は、アルミニウム、チタン、亜鉛、鉄、ニッケル、クロム、コバルト、銅、銀及び金のうちのいずれか2種以上の材料で製造される。また、前記接着剤膜層3に使用される材料は、好ましくは、変性エポキシ樹脂類、変性アクリル酸類、変性ゴム類、変性熱可塑性ポリイミド類、変性ポリエステル類から選ばれるものである。
【0039】
本実施例では、前記凸状粒子4は、第1シールド膜の第2表面12(第2表面12は、平滑面である)に分布し、その機能が第2シールド膜の外表面21に凸起部212を形成することで、従って、電磁シールド膜とプリント回路基板とのラミネート過程において、該凸起部212が接着剤膜層3及びプリント回路基板のグラウンド層を順調に刺し貫き、確実に接地することを実現する。前記凸状粒子4は、導体粒子、半導体粒子、絶縁体粒子及び被覆複合粒子(導体で被覆された絶縁体粒子、又は絶縁体で被覆された別の絶縁体粒子など)のうちの1種以上を含み、さらに小粒子が凝集してなる大粒子を含む。実際に使用されるとき、前記凸状粒子4は、ダイヤモンド粉末、チタン白粉末、ケイ素粉末、ケイ化物粉末、シリカ粉末、アルミナイド粉末、グラフェン粉体、鉄粉、ニッケル粉、銅粉、ニッケルめっきダイヤモンド粉末、金属めっき無機粉体などである。なお、本発明において凸状粒子4の形状は、図示したものに制限されず、その材料も上記材料に制限されず、前記第2シールド層の外表面21に凸起部212を形成する粒子であれば、本発明の特許範囲に属する。
【0040】
前記第2シールド層の外表面21に接着剤膜層3を刺し貫くほどの凸起部212を形成するために、前記凸状粒子4の高さは、0.1μm−30μmとする。また、十分な刺し貫き強度及び接着剤収容量を確保するために、前記第2シールド層の外表面21の凹凸度(凸起部212の高さに相当)と前記導電性凸起5の高さとの和に対する前記接着剤膜層3の厚さの割合は、好ましくは、0.8〜2を満たし、具体的には、接着剤膜層3の厚さが前記第2シールド層の外表面21の凹凸度と前記導電性凸起5の高さとの和に対して小さすぎることで接着剤収容量が不十分でありデラミネーション現象を引き起こすことを防止する一方、前記第2シールド層の外表面21の凹凸度と前記導電性凸起5の高さとの和が接着剤膜層3の厚さに対して小さすぎることで刺し貫き強度が不十分であり接地故障を引き起こすことを防止する。なお、前記第2シールド層の外表面21の凹凸度は、前記第2シールド層の外表面21の最高点と最低点との間隔である。
【0041】
上記構造によれば、前記第2シールド層2の外表面21において前記凸状粒子4に対応する位置に凸起部212を形成して、他の位置に平坦部211を形成し、前記接着剤膜層3は、前記第2シールド層2の外表面21に配置され、且つ第2シールド層2の外表面21には、複数の導電性凸起5がさらに形成されているため、第2シールド層の外表面21の凸起部212とそれにおける導電性凸起5は、互いに連携して、刺し貫き機能を強化し、第2シールド層2が接着剤膜層3を順調に刺し貫くことを保証し、干渉電荷が正常に放出されることを確保するとともに、確実に接地することを実現し、また、平坦部211により、使用中の挿入損失を低下し、超高周波伝送に適用できる。
【0042】
好ましくは、前記接着剤膜層3は、導電性粒子を含有しない粘着層であり、使用中の回路基板の挿入損失を低下し、シールド効果を向上させるとともに、回路基板の可撓性を改善する。
【0043】
また、前記導電性凸起5は、好ましくは、前記凸起部212に集中して分布し、この場合に、前記第2シールド層2は、ラミネート過程において容易に接着剤膜層3を刺し貫き、確実に接地されて、電磁シールドの品質を向上させる。
【0044】
別の好適実施例では、前記接着剤膜層3は、導電性粒子を有する粘着層であり、この場合に、前記接着剤膜層3は、前記配線板と電磁シールド膜とを密着させる粘着作用を果たす以外、導電機能を有し、第2シールド層2と組み合わせて、干渉電子を前記配線板のグラウンド層に素早く導入する。前記導電性粒子は、互いに分離した導電性粒子であってもよいし、凝集してなる大粒子導電性粒子であってもよく、前記導電性粒子が互いに分離した導電性粒子である場合に、電気的接触の面積をさらに向上し、電気的接触の均一性を向上でき、一方、前記導電性粒子が凝集してなる大粒子導電性粒子である場合に、刺し貫き強度を高めることができる。
【0045】
好ましくは、前記電磁シールド膜は、保護膜層をさらに含み、前記第1シールド層1の第1表面11には、前記保護膜層が形成されている。前記保護膜層は、隔離作用を果たし、前記第1シールド層1と第2シールド層2によるシールド効果を確保する。前記保護膜層は、PPS薄膜層、PEN薄膜層、ポリエステル薄膜層、ポリイミド薄膜層、エポキシ樹脂インクを硬化させてなる膜層、ポリウレタンインクを硬化させてなる膜層、変性アクリル酸樹脂を硬化させてなる膜層、ポリイミド樹脂を硬化させてなる膜層のうちの1種である。
【0046】
なお、本実施例の図面における第1シールド層1及び第2シールド層2は、単層構造であってもよく、多層構造であってもよい。また、実際の生産及び使用のニーズに応じて、本実施例の図面における第1シールド層及び第2シールド層は、グリッド状、発泡状などにしてもよい。
【0047】
図3には、本発明の実施例3による回路基板の構造模式図が示されており、前記回路基板は、プリント回路基板6と、実施例1の前記電磁シールド膜とを備え、前記電磁シールド膜は、接着剤膜層3を介して前記プリント回路基板6にラミネートされ、前記凸起部212は、前記接着剤膜層3を刺し貫き、前記プリント回路基板6のグラウンド層まで延びている。
【0048】
本実施例では、電磁シールド膜の実現形態については、上記実施例1の説明を参照すればよく、ここで詳しく説明しない。
【0049】
好ましくは、前記プリント回路基板6は、フレキシブル片面、フレキシブル両面、フレキシブル多層板、リジッド・フレキシブル基板のうちの1種である。
【0050】
上記構造によれば、ラミネート過程において、前記第2シールド層2の凸起部212で接着剤膜層3を刺し貫くことにより、第2シールド層2の外表面21の少なくとも一部を前記プリント回路基板のグラウンド層に接続し、それによって、第1シールド層1及び第2シールド層2における干渉電荷をグラウンドに導入し、干渉電荷の蓄積により干渉源が形成されて、回路基板の正常な作動へ悪影響を与えることを回避し、また、平坦部211は、使用中の挿入損失を低下し、超高周波伝送に適用できる。
【0051】
図4には、本発明の実施例4による回路基板の構造模式図が示されており、前記回路基板は、プリント回路基板6と、実施例2の前記電磁シールド膜とを備え、前記電磁シールド膜は、接着剤膜層3を介して前記プリント回路基板6にラミネートされ、前記凸起部212は、前記接着剤膜層3を刺し貫き、前記プリント回路基板6のグラウンド層まで延びている。
【0052】
本実施例では、電磁シールド膜の実現形態については、上記実施例2の説明を参照すればよく、ここで詳しく説明しない。
【0053】
上記構造によれば、ラミネート過程において、前記凸起部212と、それにおける導電性凸起5の連携により前記接着剤膜層3を刺し貫くことにより、前記第2シールド層の外表面21の少なくとも一部を前記プリント回路基板のグラウンド層に接続し、それによって、第1シールド層1及び第2シールド層2における干渉電荷をグラウンド層に導入することを実現し、干渉電荷の蓄積により干渉源が形成されて、回路基板の正常な作動へ悪影響を与えることを回避し、また、平坦部211により、使用中の挿入損失を低下し、超高周波伝送に適用できる。
【0054】
図5には、本発明の実施例5による電磁シールド膜の製造方法の模式的なフローチャートが示されており、該方法は、実施例1の前記電磁シールド膜の製造に適用でき、ステップS1〜ステップS4を含む。
【0055】
S1において、対向する第1表面と、平滑面である第2表面とを含む第1シールド層を形成する。
【0056】
ステップS1では、
キャリア膜上に保護膜層を形成し、前記保護膜層上に前記第1シールド層を形成し、但し、前記第1表面が前記保護膜層に貼り合わせられている、又は
キャリア膜上に可剥離層を形成し、前記可剥離層の表面上に前記第1シールド層を形成し、前記第1シールド層の第1表面に保護膜層を形成した後、前記キャリア膜層を剥離する
という方式によって、前記第1シールド層を形成する。
【0057】
S2において、第1シールド層の第2表面上に複数の凸状粒子を形成する。
【0058】
S3において、前記凸状粒子が分布している第2表面上に第2シールド層を形成する。前記第2シールド層の外表面において前記凸状粒子に対応する位置に凸起部を形成して、他の位置他の位置に平坦部を形成するように、前記凸状粒子が分布している第2表面上に第2シールド層を形成する。
【0059】
S4において、前記第2シールド層の外表面上に接着剤膜層を形成する。
【0060】
ステップS4では、前記前記第2シールド層の外表面上に接着剤膜層を形成することは、具体的には、
離型膜上に接着剤膜層を塗布し、次に、前記接着剤膜層を前記第2シールド層の外表面にラミネートして移すことで前記第2シールド層の外表面上に前記接着剤膜層を形成する、又は
前記第2シールド層の外表面に接着剤膜層を直接塗布して、前記第2シールド層の外表面上に前記接着剤膜層を形成する。
【0061】
なお、第1シールド層、凸状粒子、第2シールド層又はガラス層の形成は、いずれも好ましくは、無電解めっき方式、PVD、CVD、蒸発めっき、スパッタリングめっき、電気めっき又はこれらのプロセスの組み合わせによって行われる。
【0062】
実施例2の前記電磁シールド膜の製造に適用できる別の好適実施例では、ステップS4の前に、
物理的粗面化、無電解めっき、物理蒸着、化学蒸着、蒸発めっき、スパッタリングめっき、電気めっき及び混合めっきのうちの1種以上のプロセスによって前記第2シールド層の外表面に複数の導電性凸起を形成するステップをさらに含む。
【0063】
以上は、本発明の好適実施形態であり、但し、当業者であれば、本発明の原理から逸脱せずにさまざまな改良及び修飾を行うことができ、これらの改良及び修飾も本発明の特許範囲にあるとみなすべきである。