特許第6931409号(P6931409)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6931409風力発電装置用の状態監視装置及び状態監視方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6931409
(24)【登録日】2021年8月17日
(45)【発行日】2021年9月1日
(54)【発明の名称】風力発電装置用の状態監視装置及び状態監視方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20210823BHJP
   F03D 17/00 20160101ALI20210823BHJP
   F03D 7/04 20060101ALI20210823BHJP
   H02P 9/00 20060101ALI20210823BHJP
【FI】
   G01M99/00 A
   F03D17/00
   F03D7/04 Z
   H02P9/00 F
【請求項の数】14
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2020-79138(P2020-79138)
(22)【出願日】2020年4月28日
【審査請求日】2020年5月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱パワー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】馬場 満也
(72)【発明者】
【氏名】森下 靖
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 稔
(72)【発明者】
【氏名】露木 和弘
(72)【発明者】
【氏名】酒田 英
【審査官】 山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−074998(JP,A)
【文献】 特開2017−025881(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/139505(WO,A1)
【文献】 特開2016−017424(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第110988472(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 99/00
G01M 13/00 − 13/045
F03D 7/00 − 7/06
F03D 17/00
F03D 80/00 − 80/80
G01R 31/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力発電装置の補機システムの状態を監視するための、風力発電装置用の状態監視装置であって、
前記補機システムは、複数の補機モータと、前記複数の補機モータに電力を供給するための補機モータ電源系統と、を備え、
前記補機モータ電源系統は、電源に接続される電源側ラインと、前記電源側ラインから分岐して前記複数の補機モータにそれぞれ接続される複数の補機モータ側ラインと、を含み、
前記状態監視装置は、
前記電源側ラインを流れる電流を計測するための電流計測装置と、
前記複数の補機モータを制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記風力発電装置の発電機が低風速で発電を停止している待機状態である場合に、前記複数の補機モータの各々を単独で順次運転する単独順次運転モードを実行可能に構成されており、
前記電流計測装置は、前記制御装置による前記単独順次運転モードの実行中に前記電源側ラインを流れる電流を計測するように構成された、風力発電装置用の状態監視装置。
【請求項2】
前記電流計測装置の計測結果に基づいて前記補機システムの異常診断を行うように構成された異常診断装置を更に備える、請求項1に記載の風力発電装置用の状態監視装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記単独順次運転モードにおいて、トリガー信号を基準とする予め規定されたタイミングで、前記補機モータの各々を順次起動するように構成されており、
前記異常診断装置は、前記トリガー信号と、前記電流計測装置の計測結果とに基づいて、前記補機システムの異常診断を行うように構成された、請求項2に記載の風力発電装置用の状態監視装置。
【請求項4】
前記複数の補機モータは、n個の補機モータを含み、
前記単独順次運転モードにおいて前記n個の補機モータのうちi番目に運転する補機モータをi番目の補機モータと定義すると、
前記異常診断装置は、
前記単独順次運転モードの実行中に前記電流計測装置によって計測した前記電流のデータから、前記トリガー信号の開始から前記i番目の補機モータの起動までの期間である第1期間の前記電流のデータを除いて、前記i番目の補機モータの運転期間の少なくとも一部である第2期間の前記電流のデータを抽出し、
前記第2期間の前記電流のデータに基づいて、前記i番目の補機モータ及び前記i番目の補機モータに連結された回転機械系のうち少なくとも一方の異常診断を行うように構成された、請求項3に記載の風力発電装置用の状態監視装置。
【請求項5】
前記第2期間は、前記i番目の補機モータの運転期間のうち、前記i番目のモータの起動後の突入電流に対応する突入電流期間を除いた期間の少なくとも一部である、請求項4に記載の風力発電装置用の状態監視装置。
【請求項6】
前記第2期間は、前記i番目の補機モータの運転期間のうち、前記i番目の補機モータに定格電流が流れる期間の少なくとも一部である、請求項4又は5に記載の風力発電装置用の状態監視装置。
【請求項7】
前記第1期間の長さは1〜5秒であり、前記第2期間の長さは2〜15秒である、請求項4乃至6の何れか1項に記載の風力発電装置用の状態監視装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記単独順次運転モードにおいて、前記単独順次運転モードの進捗ステータスを示す進捗ステータス番号に応じて、前記複数の補機モータの各々を運転するように構成され、
前記異常診断装置は、前記電流計測装置によって計測した前記電流のデータと前記進捗ステータス番号とを時系列に関連付けて取得して、前記電流のデータと前記進捗ステータス番号とに基づいて前記補機システムの異常診断を行うように構成された、請求項2に記載の風力発電装置用の状態監視装置。
【請求項9】
前記進捗ステータス番号は、前記補機モータに定常電流が流れる期間の少なくとも一部である第3期間に対応する進捗ステータス番号を前記補機モータ毎に含み、
前記異常診断装置は、前記単独順次運転モードの実行中に計測した前記電流のデータのうち、前記第3期間に対応する進捗ステータス番号に関連付けられた前記電流のデータに基づいて、当該進捗ステータス番号に対応する前記補機モータ及び当該補機モータに連結された回転機械系のうち少なくとも一方の異常診断を行うように構成された、請求項8に記載の風力発電装置用の状態監視装置。
【請求項10】
前記第3期間の長さは、2〜15秒である、請求項9に記載の風力発電装置用の状態監視装置。
【請求項11】
前記複数の補機モータは、前記風力発電装置が備えるファンモータ、ポンプモータ、ヨー角を調節するためのヨーモータ及びピッチ角を調節するためのピッチモータのうち少なくとも1つを含む、請求項1乃至10の何れか1項に記載の風力発電装置用の状態監視装置。
【請求項12】
前記異常診断装置は、前記電流計測装置によって計測した前記電流のデータに対して、高調波分析、側帯波解析、過渡電流値のパターン分析、及び、歪解析、のうち少なくとも一つの処理を行い、前記電流のデータから抽出した特徴量に基づいて前記補機システムの異常診断を行うように構成された、請求項1乃至11の何れか1項に記載の風力発電装置用の状態監視装置。
【請求項13】
前記電流計測装置は、前記補機モータを駆動するための3相交流電流の波形を高速サンプリングにより取得するように構成され、
前記異常診断装置は、前記高速サンプリングにより取得した前記電流のデータにFFTを掛けて前記補機システムの異常診断を行うように構成された、請求項1乃至12の何れか1項に記載の風力発電装置用の状態監視装置。
【請求項14】
風力発電装置の補機システムの状態を監視するための風力発電装置用の状態監視方法であって、
前記補機システムは、複数の補機モータと、前記複数の補機モータに電力を供給するための補機モータ電源系統と、を備え、
前記補機モータ電源系統は、電源に接続される電源側ラインと、前記電源側ラインから分岐して前記複数の補機モータにそれぞれ接続される複数の補機モータ側ラインと、を含み、
前記状態監視方法は、
前記風力発電装置の発電機が低風速で発電を停止している待機状態であるときに、前記複数の補機モータの各々を単独で順次運転する単独順次運転モードを実行するステップと、
前記単独順次運転モードの実行中に前記電源側ラインを流れる電流を計測するステップと、を備える、風力発電装置用の状態監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、風力発電装置用の状態監視装置及び状態監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モータの定格電流の基準正弦波信号波形に基づいて、モータを含む回転機械系の異常診断を行う異常診断方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5733913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、風力発電装置には、ファンモータやポンプモータ等の複数の補機モータと、複数の補機モータに電力を供給するための補機モータ電源系統とを含む補機システムが設けられている。
【0005】
仮に、この補機システムの状態を監視するために、複数の補機モータの各々に対して個別に電流計測装置を設けると、状態を監視するための装置の部品点数が多くなり高コスト化を招いてしまう。また、特許文献1には、風力発電装置の補機システムの状態監視に関する具体的な知見は開示されていない。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本開示は、少ない部品点数で風力発電装置の補機システムの状態を監視できる風力発電装置用の状態監視装置及び状態監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示の一実施形態に係る風力発電装置用の状態監視装置は、
風力発電装置の補機システムの状態を監視するための、風力発電装置用の状態監視装置であって、
前記補機システムは、複数の補機モータと、前記複数の補機モータに電力を供給するための補機モータ電源系統と、を備え、
前記補機モータ電源系統は、電源に接続される電源側ラインと、前記電源側ラインから分岐して前記複数の補機モータにそれぞれ接続される複数の補機モータ側ラインと、を含み、
前記状態監視装置は、
前記電源側ラインを流れる電流を計測するための電流計測装置と、
前記複数の補機モータを制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記風力発電装置の発電機が低風速で発電を停止している待機状態である場合に、前記複数の補機モータの各々を単独で順次運転する単独順次運転モードを実行可能に構成されており、
前記電流計測装置は、前記制御装置による前記単独順次運転モードの実行中に前記電源側ラインを流れる電流を計測するように構成される。
【0008】
上記目的を達成するため、本開示の一実施形態に係る風力発電装置用の状態監視方法は、
風力発電装置の補機システムの状態を監視するための風力発電装置用の状態監視方法であって、
前記補機システムは、複数の補機モータと、前記複数の補機モータに電力を供給するための補機モータ電源系統と、を備え、
前記補機モータ電源系統は、電源に接続される電源側ラインと、前記電源側ラインから分岐して前記複数の補機モータにそれぞれ接続される複数の補機モータ側ラインと、を含み、
前記状態監視方法は、
前記風力発電装置の発電機が低風速で発電を停止している待機状態であるときに、前記複数の補機モータの各々を単独で順次運転する単独順次運転モードを実行するステップと、
前記単独順次運転モードの実行中に前記電源側ラインを流れる電流を計測するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、少ない部品点数で風力発電装置の補機システムの状態を監視できる風力発電装置用の状態監視装置及び状態監視方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】風力発電装置100の構成例を示す概略図である。
図2】風力発電装置100を複数備えたウインドファーム50の構成例及び遠隔監視システム52の構成例を示す概略図である。
図3】一実施形態に係る状態監視装置2の構成例を示す概略図である。
図4】比較形態に係る状態監視装置の構成を示す概略図である。
図5】電流計測装置14、風車制御装置16、データ収集伝送装置17及び異常診断装置18の各々のハードウェア構成の一例を示す図である。
図6】状態監視装置2の各構成の動作フローの一例を示す概略図である。
図7】単独順次運転モードにおける各補機モータの運転期間と電流計測装置14によって計測した電源側ライン10の電流の計測値とを示すタイミングチャートである。
図8】他の実施形態に係る、単独順次運転モードにおける各補機モータの運転期間と電流計測装置14によって計測した電源側ライン10の電流の計測値とを示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0012】
図1は、後述する状態監視装置による状態監視の対象である風力発電装置100(以下、「風車」と記載する場合がある。)の構成例を示す概略図である。
【0013】
風力発電装置100は、タワー30と、タワー30の上端に設置されるナセル32と、ナセル32に設けられた軸受34に回転可能に支持された風車ロータ36と、ナセル32内に収容された主機としての発電機3と、補機システム4と、風車制御装置16とを備える。
【0014】
風車ロータ36は、軸受34に回転可能に支持された主軸39と、主軸39の一端に連結されたハブ38と、ハブ38の外周側に取り付けられた複数の風車翼40とを含む。主軸39は、増速機42を介して発電機3に連結されており、風車ロータ36の回転エネルギーが増速機42を介して発電機3に伝達される。
【0015】
補機システム4は、複数の補機モータ6を含む。補機モータ6の各々は、主機としての発電機3を稼動するために必要な付属機器として機能するモータである。複数の補機モータ6は、例えば、発電機3の内部を冷却するための発電機冷却用の冷却ファンモータ6Aと、増速機42及び軸受34の少なくとも一方に潤滑油を供給するための潤滑油回路に設けられた潤滑油ポンプモータ6Bと、制御油により駆動する機器に制御油を供給するための制御油回路に設けられた制御油ポンプモータ6Cと、風車翼40のピッチ角を調節するためのピッチモータ6Dと、ナセル32のヨー角を調節するためのヨーモータ6Eと、その他冷却が必要な機器を冷却するための冷却機構に用いられる冷却ファンモータ6Fとを含む。
【0016】
風車制御装置16は、上述した複数の補機モータ6(6A〜6F)の各々の制御を行うように構成されており、タワー6内に配置された操作端末44及び風力発電装置100から離れて配置されたSCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)システム46と通信ネットワーク48を介して通信可能に構成されている。
【0017】
図2は、風力発電装置100を複数備えたウインドファーム50の構成例及び遠隔監視システム52の構成例を示す概略図である。
図2に示すように、ウインドファーム50は、上述の風力発電装置100を複数備えており、風力発電装置100毎に風車制御装置16及び後述の電流計測装置14が設けられている。風車制御装置16及び電流計測装置14は、通信ネットワーク48を介して遠隔監視システム52と接続されている。
【0018】
図2に示す例示的形態では、通信ネットワーク48は、ウインドファーム50に設けられたサイトネットワーク54を含み、サイトネットワーク54は、インターネットVPN(Virtual Private Network)56を介して遠隔監視システム52に接続される。
【0019】
サイトネットワーク54には、データ収集伝送装置17と、SCADAサーバ58と、コンピュータ60とが接続されている。SCADAサーバ58には記憶装置62が接続されている。
【0020】
遠隔監視システム52は、異常診断装置18とリモートクライアント66とを含む。異常診断装置18には記憶装置68が接続され、リモートクライアント66には記憶装置70が接続されている。
【0021】
図3は、一実施形態に係る状態監視装置2の構成例を示す概略図である。状態監視装置2は、上述した風力発電装置100の補機システム4の状態を監視するように構成された、風力発電装置用の状態監視装置である。
【0022】
補機システム4は、上述の複数の補機モータ6と、複数の補機モータ6に電力を供給するための補機モータ電源系統8と、を含む。以降の説明では、複数の補機モータ6の各々が上述の補機モータ6(冷却ファンモータ6A、潤滑油ポンプモータ6B、制御油ポンプモータ6C、ピッチモータ6D、ヨーモータ6E、冷却ファンモータ6F)の何れであるかを区別せずに説明する。なお、複数の補機モータ6は、上述した補機モータ6A〜6F以外の補機モータを含んでいてもよい。
【0023】
補機モータ電源系統8は、不図示の電源に接続される電源側ライン10と、電源側ライン10から分岐して複数の補機モータ6にそれぞれ接続される複数の補機モータ側ライン12と、を含む。電源側ライン10には、ブレーカ9が設けられており、複数の補機モータ側ライン12の各々には、コンタクタ5が設けられている。
【0024】
状態監視装置2は、電源側ライン10に設けられた電流センサとしてCT(Current Transducer)センサ13と、CTセンサ13の出力に基づいて電源側ライン10を流れる電流を計測するように構成された電流計測装置14と、複数の補機モータ6を制御する風車制御装置16と、データ収集伝送装置17と、異常診断装置18とを備える。
【0025】
風車制御装置16は、風力発電装置100の発電機3が低風速で発電を停止している待機状態である場合に、複数の補機モータ6の各々を単独で順次運転する単独順次運転モードを実行可能に構成されている。図示する例示的な形態では、風車制御装置16は、複数のコンタクタ5の各々の開閉を制御することにより、複数の補機モータ6の各々を制御する。なお、「発電機3が低風速で発電を停止している待機状態」とは、風車ロータ36が回転しているものの風速計15によって計測した風速がカットイン風速(発電機3が発電を開始するための風速の閾値)を下回っているために発電機3による発電を停止している状態を意味する。また、「単独で運転する」とは、補機モータ6を他の補機モータ6の運転する期間と重複しない期間に運転することを意味する。
【0026】
電流計測装置14は、CTセンサ13の出力に基づいて、風車制御装置16による単独順次運転モードの実行中に電源側ライン10を流れる電流を計測するように構成される。電流計測装置は、補機モータ6を駆動するための3相交流電流の波形を高速サンプリングにより取得するように構成される。異常診断装置18は、電流計測装置14の計測結果に基づいて補機システム4の異常診断を行うように構成される。異常診断装置18は、電流計測装置14が高速サンプリングにより取得した電流の計測データにFFT(Fast Fourier Transform)を掛けて補機システム4の異常診断を行うように構成される。
【0027】
ここで、図3に示した状態監視装置2が奏する主な作用効果について、図4に示す比較形態と比較しながら説明する。図4は、比較形態に係る状態監視装置の構成を示す概略図である。
図3に示す構成によれば、単独運転モードの実行中に電流計測装置14で電源側ライン10を流れる電流を計測することにより、複数の補機モータ6を含む補機システム4の状態を1つのCTセンサ13及び1つの電流計測装置14により把握することができる。したがって、図4に示すように補機モータ側ライン12毎にCTセンサ13及び電流計測装置14を設ける場合と比較して、少ない部品点数で風力発電装置100の補機システム4の状態を監視できる低コストの状態監視装置2を実現することができる。
【0028】
図5は、電流計測装置14、風車制御装置16、データ収集伝送装置17及び異常診断装置18の各々のハードウェア構成の一例を示す図である。図5に示すハードウェア構成は、CPU(Central Processing Unit)72、RAM(Random Access Memory)74、ROM(Read Only Memory)76、HDD (Hard Disk Drive)78、入力I/F80、及び出力I/F82を含み、これらがバス84を介して互いに接続されたコンピュータを用いて構成される。電流計測装置14、風車制御装置16、データ収集伝送装置17及び異常診断装置18の各々は、各機能を実現するプログラムをコンピュータが実行することにより構成される。以下で説明する各構成の機能は、例えばROM76に保持されるプログラムをRAM74にロードしてCPU72で実行するとともに、RAM74やROM76におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。
【0029】
図6は、状態監視装置2の各構成の動作フローの一例を示す概略図である。
【0030】
図6に示すように、風車制御装置16は、S10において、トリガー信号を電流計測装置14に送信して、複数の補機モータ6の各々を順次単独で所定時間運転する単独順次運転モードを開始する。ここで、補機システム4が備える補機モータ6の数をnとすると、風車制御装置16は、S11〜S1nにおいて、複数の補機モータ6を順次単独で所定時間運転する。すなわち、S11で1番目の補機モータ6を単独で所定時間運転し、S12で2番目の補機モータ6を単独で所定時間運転し、S13で3番目の補機モータ6を単独で所定時間運転し、S1nまで同様に各補機モータ6を順次単独で所定時間運転する。そして、風車制御装置16は、S1fでトリガー信号を停止して単独順次運転モードを終了する。
【0031】
図7は、単独順次運転モードにおける各補機モータ6の運転期間と電流計測装置14によって計測した電源側ライン10の電流の計測値とを示すタイミングチャートである。図7に示すように、単独順次運転モードにおいてn個の補機モータ6のうちi番目に運転する補機モータ6をi番目の補機モータと定義する。ここで、iは1からnまでの整数である。
【0032】
図7に示すように、単独順次運転モードにおいて、トリガー信号の開始時刻を0とすると、1番目の補機モータ6は、時刻a1から時刻d1まで運転する。図7において、時刻a1は、1番目の補機モータ6を起動するタイミングである。時刻a1から時刻b1までの期間は1番目の補機モータ6の起動後の突入電流に対応する突入電流期間である。時刻b1から時刻c1までの期間は、1番目の補機モータ6に定格電流が流れる定格電流期間(第2期間)である。時刻c1から時刻d1までの期間は、1番目の補機モータ6の定格電流期間と1番目の補機モータ6の運転を停止する時刻d1との間の、1番目の補機モータ6に流れる電流が減少する電流減少期間である。
【0033】
2番目以降の補機モータ6の運転についても同様である。すなわち、トリガー信号の開始時刻を0とすると、i番目の補機モータ6は、時刻aiから時刻diまで運転する。図7において、時刻aiは、i番目の補機モータ6を起動するタイミングである。時刻aiから時刻biまでの期間はi番目の補機モータ6の起動後の突入電流に対応する突入電流期間である。時刻biから時刻ciまでの期間は、i番目の補機モータ6に定格電流が流れる定格電流期間(第2期間)である。時刻ciから時刻diまでの期間は、i番目の補機モータ6の定格電流期間とi番目の補機モータ6の運転を停止する時刻diとの間の、i番目の補機モータ6に流れる電流が減少する電流減少期間である。
【0034】
このように、風車制御装置16は、トリガー信号を基準とする予め規定されたタイミング(時刻)で、補機モータ6の各々を順次単独で所定時間運転するように構成されている。すなわち、風車制御装置16は、トリガー信号を基準とする予め規定されたタイミングで、補機モータ6の各々を順次起動及び停止するように構成されている。
【0035】
図6に戻り、電流計測装置14は、S21において、風車制御装置16からトリガー信号を受信すると、電源側ライン10を流れる電流の計測を開始する。そして、S22において、電流計測装置14は、風車制御装置16から送信されるトリガー信号が停止すると、電源側ライン10を流れる電流の計測を停止する。すなわち、図7に示すように、電流計測装置14は、単独順次運転モードの実行中にトリガー信号の開始時刻0からトリガー信号の停止時刻eまでの期間に亘って、電源側ライン10を流れる電流をCTセンサ13の出力に基づいて計測する。
【0036】
そして、図6のS23に示すように、風力発電装置100毎の電流計測装置14の計測結果(単独順次運転モード中に電源側ライン10を流れる電流の計測値を示す計測データ)は、サイトネットワーク54、データ収集伝送装置17及びインターネットVPN56を経由して、異常診断装置18に送信される。
【0037】
次に、S31において、異常診断装置18は、単独順次運転モードの実行中に電流計測装置14によって計測された電源側ライン10の電流の計測データから、各補機モータ6の運転期間の少なくとも一部における電源側ライン10の電流の計測データを抽出する。
【0038】
ここで、S31の処理の詳細について、図7を用いて説明する。
図7に示す例では、異常診断装置18は、単独順次運転モードの実行中に電流計測装置14によって計測された電源側ライン10の電流の計測データDtから、1番目の補機モータ6に定格電流が流れる定格電流期間(時刻b1から時刻c1までの期間)の電流の計測データD1を抽出する。すなわち、異常診断装置18は、単独順次運転モードの実行中に電流計測装置14によって計測した電流の計測データDtから、トリガー信号の開始から1番目の補機モータ6の起動までの第1期間(時刻0から時刻a1までの期間)の電流の計測データと、1番目の補機モータの起動後の突入電流に対応する突入電流期間(時刻a1から時刻b1までの期間)の電流の計測データと、を除いて、1番目の補機モータ6の運転期間に定格電流が流れる定格電流期間(時刻b1から時刻c1までの期間)の電流の計測データD1を抽出する。
【0039】
2番目以降の補機モータ6の運転についても同様である。すわなち、異常診断装置18は、単独順次運転モードの実行中に電流計測装置14によって計測された電源側ラインの電流の計測データDtから、i番目の補機モータ6に定格電流が流れる期間(時刻biから時刻ciまでの期間)の電流の計測データDiを抽出する。ここで、異常診断装置18は、単独順次運転モードの実行中に電流計測装置14によって計測した電流のデータDtから、トリガー信号の開始からi番目の補機モータ6の起動までの第1期間(時刻0から時刻aiまでの期間)の電流の計測データと、i番目の補機モータの起動後の突入電流に対応する突入電流期間(時刻aiから時刻biまでの期間)の電流の計測データと、を除いて、i番目の補機モータに定格電流が流れる定格電流期間(時刻biから時刻ciまでの期間)の電流の計測データDiを抽出する。なお、上述したトリガー信号の開始からi番目の補機モータ6の起動までの第1期間(時刻0から時刻aiまでの期間)の長さは例えば1〜5秒であり、i番目の補機モータ6に定格電流が流れる定格電流期間(時刻biから時刻ciまでの期間)の長さは例えば2〜15秒であってもよい。
【0040】
そして、図6に示すS32にて、異常診断装置18は、S31で抽出したi番目の補機モータ6の計測データDiに基づいて、i番目の補機モータ6及びi番目の補機モータ6に連結された回転機械系(例えば増速機42のギア若しくはベルト等の駆動伝達装置、軸受34、又はその他の回転機械等)の異常診断を行う。異常診断装置18は、電流計測装置14によって計測したi番目の補機モータ6の計測データDiに対して、高調波分析、側帯波解析、過渡電流値のパターン分析、及び、歪解析、のうち少なくとも一つの処理を行い、計測データDiから抽出した特徴量に基づいて、i番目の補機モータ6及びi番目の補機モータに連結された回転機械系の異常診断を行う。そして、S33にて、異常診断装置18の診断結果を不図示の表示装置に表示する。
【0041】
このように、単独順次運転モードにおいて、トリガー信号を基準として補機モータ6毎に予め規定されたタイミングで、補機モータ6の各々が順次起動されるため、補機システム4の異常診断に必要な期間の電流の計測データDiをトリガー信号に基づいて抽出することができる。したがって、トリガー信号と電流計測装置14の計測結果である電流の計測データDtとに基づいて補機モータ6及び補機モータ6に連結された回転機械系の異常診断を行う異常診断装置18を備えることにより、部品点数の少ない低コストの構成で補機システム4の異常診断を行うことができる。
【0042】
また、単独順次運転モードにおいて突入電流期間を除いた期間の少なくとも一部における電流の計測データDiに基づいて補機モータ6及び補機モータ6に連結された回転機械系の異常診断を行うため、部品点数の少ない低コストの構成で異常診断を精度良く行うことができる。
【0043】
また、補機モータ6に定格電流が流れる定常電流期間の少なくとも一部における電流のデータDiに基づいて異常診断を行うため、部品点数の少ない低コストの構成で異常診断を精度良く行うことができる。
【0044】
次に、他の実施形態について説明する。
図8は、他の実施形態に係る、単独順次運転モードにおける各補機モータの運転期間と電流計測装置14によって計測した電源側ライン10の電流の計測値とを示すタイミングチャートである。
【0045】
図8に示す実施形態では、風車制御装置16は、単独順次運転モードにおいて、単独順次運転モードの進捗ステータスを示す進捗ステータス番号に応じて、複数の補機モータ6の各々を順次単独で運転するように構成されており、異常診断装置18は、電流計測装置14によって計測した電流の計測データDtと進捗ステータス番号とを時系列に関連付けて取得して、電流の計測データDtと進捗ステータス番号とに基づいて補機システム4の異常診断を行うように構成されている。
【0046】
図8において、進捗ステータス番号100は、単独順次運転モードを開始してから1番目の補機モータ6を起動するまで期間のステータスを示している。また、進捗ステータス番号101は、1番目の補機モータの起動後の突入電流に対応する突入電流期間のステータスを示している。また、進捗ステータス番号102は、1番目の補機モータ6に定格電流が流れる定格電流期間のステータスを示している。
【0047】
2番目以降の補機モータ6についても同様である。すなわち、進捗ステータス番号i00は、単独順次運転モードを開始してからi番目の補機モータ6を起動するまで期間のステータスを示している。また、進捗ステータス番号i01は、i番目の補機モータの起動後の突入電流に対応する突入電流期間(第3期間)のステータスを示している。また、進捗ステータス番号i02は、i番目の補機モータ6に定格電流が流れる定格電流期間のステータスを示している。この定常電流期間の長さは、例えば2〜15秒であってもよい。
【0048】
異常診断装置18は、単独順次運転モードの実行中に電流計測装置14によって計測された電源側ラインの電流の計測データDtから、進捗ステータス番号に基づいて、i番目の補機モータ6に定格電流が流れる定格電流期間の電流の計測データDiを抽出する。図8に示す例では、異常診断装置18は、単独順次運転モードの実行中に電流計測装置14によって計測された電源側ラインの電流の計測データDtから、進捗ステータス番号i02に関連付けられた電流の計測データDiを抽出する。
【0049】
そして、異常診断装置18は、抽出したi番目の補機モータの計測データDiに基づいて、i番目の補機モータ6及びi番目の補機モータに連結された回転機械系の異常診断を行う。異常診断装置18は、電流計測装置14によって計測したi番目の補機モータ6の計測データDiに対して、高調波分析、側帯波解析、過渡電流値のパターン分析、及び、歪解析、のうち少なくとも一つの処理を行い、計測データDiから抽出した特徴量に基づいて、i番目の補機モータ6及びi番目の補機モータに連結された回転機械系の異常診断を行う。
【0050】
このように、図8に示す実施形態では、進捗ステータス番号は、補機モータ6に定常電流が流れる定常電流期間に対応する進捗ステータス番号を補機モータ6毎に含み、異常診断装置18は、単独順次運転モードの実行中に計測した電流の計測データDtのうち、定常電流期間に対応する進捗ステータス番号に関連付けられた電流の計測データDiに基づいて、当該進捗ステータス番号に対応する補機モータ6及び当該補機モータ6に連結される回転機械系の異常診断を行うように構成される。
【0051】
図8に示した実施形態では、単独順次運転モードにおいて、進捗ステータス番号に応じて補機モータ6の各々が順次起動されるため、補機システム4の異常診断に必要な期間の電流の計測データDiを進捗ステータス番号に基づいて抽出することができる。したがって、進捗ステータス番号と電流計測装置14によって計測した電流の計測データDtとに基づいて補機システム4の異常診断を行うことにより、部品点数の少ない低コストの構成で補機システム4の異常診断を行うことができる。
【0052】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0053】
例えば、上述した幾つかの実施形態では、電源側ライン10に設ける電流センサとしてCTセンサ13(CT方式の電流センサ)を例示したが、電源側ライン10に設ける電流センサとしては、CT方式の電流センサに限らず、ホール素子方式、ロゴスキー方式又はフラックス方式等の種々の電流センサを利用することができる。
【0054】
また、図7に示した実施形態では、i番目の補機モータ6及びi番目の補機モータ6に連結された回転機械系の異常診断は、電流計測装置14によってi番目の補機モータ6の定格電流期間に計測した電流のデータDiに基づいて行ったが、i番目の補機モータ6の定格電流期間の少なくとも一部に計測した電流のデータに基づいて行われてもよい。また、i番目の補機モータ6及びi番目の補機モータ6に連結された回転機械系の異常診断は、単独順次運転モードにおけるi番目の補機モータ6の運転期間の少なくなくとも一部の電流の計測データに基づいて行ってもよい。上述した実施形態では、補機モータ6及び補機モータ6に連結された回転機械系の異常診断を行ったが、異常診断の対称は補機モータ6だけであってもよいし、回転機械系だけであってよい。すなわち、異常診断装置18の異常診断の対称は、補機モータ6及び補機モータ6に連結された回転機械系の少なくとも一方であってもよい。また、異常診断装置18の異常診断の対象は、補機システム4の補機モータ電源系統8であってもよい。
【0055】
また、上述した幾つかの実施形態では、発電機3が低風速で発電を停止している待機状態である場合に単独順次運転モードが実行されたが、単独順次運転モードは、発電機3が低風速で発電を停止している待機状態になる度に毎回実行する必要は必ずしもなく、風車制御装置16は、例えば発電機3が低風速で発電を停止している待機状態になる回数を計数して、当該回数に基づいて定期的に(例えば当該回数が所定回数の整数倍になる度に)単独順次運転モードを実行してもよい。
【0056】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0057】
(1)本開示に係る風力発電装置用の状態監視装置(例えば上述の状態監視装置2)は、
風力発電装置(例えば上述の風力発電装置100)の補機システム(例えば上述の補機システム4)の状態を監視するための、風力発電装置用の状態監視装置であって、
前記補機システムは、複数の補機モータ(例えば上述の補機モータ6(6A〜6F))と、前記複数の補機モータに電力を供給するための補機モータ電源系統(例えば上述の補機モータ電源系統8)と、を備え、
前記補機モータ電源系統は、電源に接続される電源側ライン(例えば上述の電源側ライン10)と、前記電源側ラインから分岐して前記複数の補機モータにそれぞれ接続される複数の補機モータ側ライン(例えば上述の補機モータ側ライン12)と、を含み、
前記状態監視装置は、
前記電源側ラインを流れる電流を計測するための電流計測装置(例えば上述の電流計測装置14)と、
前記複数の補機モータを制御する制御装置(例えば上述の風車制御装置16)と、
を備え、
前記制御装置は、前記風力発電装置の発電機が低風速で発電を停止している待機状態である場合に、前記複数の補機モータの各々を単独で順次運転する単独順次運転モードを実行可能に構成されており、
前記電流計測装置は、前記制御装置による前記単独順次運転モードの実行中に前記電源側ラインを流れる電流を計測するように構成される。
【0058】
上記(1)に記載の風力発電装置用の状態監視装置によれば、単独運転モードの実行中に電流計測装置で電源側ラインを流れる電流を計測することにより、複数の補機モータを含む補機システムの状態を1台の電流計測装置の計測結果に基づいて把握することができる。したがって、複数の補機モータ側ラインの各々に電流計測装置を設ける場合と比較して、少ない部品点数で風力発電装置の補機システムの状態を監視できる低コストの状態監視装置を実現することができる。
【0059】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の風力発電装置用の状態監視装置において、
前記電流計測装置の計測結果に基づいて前記補機システムの異常診断を行うように構成された異常診断装置(例えば上述の異常診断装置18)を更に備える。
【0060】
上記(2)に記載の風力発電装置用の状態監視装置によれば、複数の補機モータを含む補機システムの異常診断を1台の電流計測装置の計測結果に基づいて行うことができる。したがって、複数の補機モータ側ラインの各々に電流計測装置を設ける場合と比較して、補機システムの異常診断を行うための状態監視装置の部品点数を少なくすることができる。したがって、少ない部品点数で風力発電装置の補機システムの状態を監視できる低コストの状態監視装置を実現することができる。
【0061】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)に記載の風力発電装置用の状態監視装置において、
前記制御装置は、前記単独順次運転モードにおいて、トリガー信号を基準とする予め規定されたタイミングで、前記補機モータの各々を順次起動するように構成されており、
前記異常診断装置は、前記トリガー信号と、前記電流計測装置の計測結果とに基づいて、前記補機システムの異常診断を行うように構成される。
【0062】
上記(3)に記載の風力発電装置用の状態監視装置によれば、単独順次運転モードにおいて、トリガー信号を基準とする補機モータ毎に予め規定されたタイミングで、補機モータの各々が順次起動されるため、補機システムの異常診断に必要な期間の電流のデータをトリガー信号に基づいて特定することができる。したがって、トリガー信号と電流計測装置の計測結果とに基づいて補機システムの異常診断を行う異常診断装置を備えることにより、少ない部品点数で風力発電装置の補機システムの状態を監視できる低コストの状態監視装置を実現することができる。
【0063】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)に記載の風力発電装置用の状態監視装置において、
前記複数の補機モータは、n個の補機モータを含み、
前記単独順次運転モードにおいて前記n個の補機モータのうちi番目に起動される補機モータをi番目の補機モータと定義すると、
前記異常診断装置は、
前記単独順次運転モードの実行中に前記電流計測装置によって計測した前記電流のデータから、前記トリガー信号の開始から前記i番目の補機モータの起動までの期間である第1期間の前記電流のデータを除いて、前記i番目の補機モータの運転期間の少なくとも一部である第2期間の前記電流のデータを抽出し、
前記第2期間の前記電流のデータに基づいて、前記i番目の補機モータ及び前記i番目の補機モータに連結された回転機械系のうち少なくとも一方の異常診断を行うように構成される。
【0064】
上記(4)に記載の風力発電装置用の状態監視装置によれば、補機モータ及び補機モータに連結された回転機械系の少なくとも一方の異常診断を、部品点数の少ない低コストの構成で行うことができる。
【0065】
(5)幾つかの実施形態では、上記(4)に記載の風力発電装置用の状態監視装置において、
前記第2期間は、前記i番目の補機モータの運転期間のうち、前記i番目の補機モータの起動後の突入電流に対応する突入電流期間を除いた期間の少なくとも一部である。
【0066】
上記(5)に記載の風力発電装置用の状態監視装置によれば、突入電流期間を除いた期間の少なくとも一部における電流のデータに基づいて異常診断を行うため、部品点数の少ない低コストの構成で補機システムの異常診断を精度良く行うことができる。
【0067】
(6)幾つかの実施形態では、上記(4)又は(5)に記載の風力発電装置用の状態監視装置において、
前記第2期間は、前記i番目の補機モータの運転期間のうち、前記i番目の補機モータに定格電流が流れる期間の少なくとも一部である。
【0068】
上記(6)に記載の風力発電装置用の状態監視装置によれば、補機モータに定格電流が流れる期間の少なくとも一部における電流のデータに基づいて異常診断を行うため、部品点数の少ない低コストの構成で補機システムの異常診断を精度良く行うことができる。
【0069】
(7)幾つかの実施形態では、上記(4)乃至(6)の何れかに記載の風力発電装置用の状態監視装置において、
前記第1期間の長さは1〜5秒であり、前記第2期間の長さは2〜15秒である。
【0070】
上記(7)に記載の風力発電装置用の状態監視装置によれば、n個の補機モータ及び補機モータに連結された回転機械系の少なくとも一方の異常診断を、部品点数の少ない低コストの構成で行うことができる。
【0071】
(8)幾つかの実施形態では、上記(2)に記載の風力発電装置用の状態監視装置において、
前記制御装置は、前記単独順次運転モードにおいて、前記単独順次運転モードの進捗ステータスを示す進捗ステータス番号に応じて、前記複数の補機モータの各々を起動するように構成され、
前記異常診断装置は、前記電流計測装置によって計測した前記電流のデータと前記進捗ステータス番号とを時系列に関連付けて取得して、前記電流のデータと前記進捗ステータス番号とに基づいて前記補機システムの異常診断を行うように構成される。
【0072】
上記(8)に記載の風力発電装置用の状態監視装置によれば、単独順次運転モードにおいて、進捗ステータス番号に応じて補機モータの各々が順次起動されるため、補機システムの異常診断に必要な期間の電流のデータを進捗ステータス番号に基づいて特定することができる。したがって、進捗ステータス番号と電流計測装置によって計測した電流のデータとに基づいて補機システムの異常診断を行う異常診断装置を備えることにより、部品点数の少ない低コストの構成で補機システムの異常診断を行うことができる。
【0073】
(9)幾つかの実施形態では、上記(8)に記載の風力発電装置用の状態監視装置において、
前記進捗ステータス番号は、前記補機モータに定常電流が流れる期間の少なくとも一部である第3期間に対応する進捗ステータス番号を前記補機モータ毎に含み、
前記異常診断装置は、前記単独順次運転モードの実行中に計測した前記電流のデータのうち、前記第3期間に対応する進捗ステータス番号に関連付けられた前記電流のデータに基づいて、当該進捗ステータス番号に対応する前記補機モータ及び当該補機モータに連結された回転機械系のうち少なくとも一方の異常診断を行うように構成される。
【0074】
上記(9)に記載の風力発電装置用の状態監視装置によれば、補機モータ及び補機モータに連結された回転機械系の少なくとも一方の異常診断を、部品点数の少ない低コストの構成で行うことができる。
【0075】
(10)幾つかの実施形態では、上記(9)に記載の風力発電装置用の状態監視装置において、
前記第3期間の長さは、2〜15秒である。
【0076】
上記(10)に記載の風力発電装置用の状態監視装置によれば、補機モータ及び補機モータに連結された回転機械系の少なくとも一方の異常診断を、部品点数の少ない低コストの構成で行うことができる。
【0077】
(11)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(10)の何れかに記載の風力発電装置用の状態監視装置において、
前記複数の補機モータは、ファンモータ(例えば上述の冷却ファンモータ6A,6F)、ポンプモータ(例えば上述の潤滑油ポンプモータ6B,制御油ポンプモータ6C)、ヨー角を調節するためのヨーモータ(例えば上述のヨーモータ6E)及びピッチ角を調節するためのピッチモータ(例えば上述のピッチモータ6D)のうち少なくとも1つを含む。
【0078】
上記(11)に記載の風力発電装置用の状態監視装置によれば、ファンモータ、ポンプモータ、ヨー角を調節するためのヨーモータ及びピッチ角を調節するためのピッチモータのうち少なくとも1つの異常診断を、部品点数の少ない低コストの構成で行うことができる。
【0079】
(12)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(11)の何れかに記載の風力発電装置用の状態監視装置において、
前記異常診断装置は、前記電流計測装置によって計測した前記電流のデータに対して、高調波分析、側帯波解析、過渡電流値のパターン分析、及び、歪解析、のうち少なくとも一つの処理を行い、前記電流のデータから抽出した特徴量に基づいて前記補機システムの異常診断を行うように構成される。
【0080】
上記(12)に記載の風力発電装置用の状態監視装置によれば、部品点数の少ない低コストの構成で補機システムの異常診断を精度良く行うことができる。
【0081】
(13)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(12)の何れかに記載の風力発電装置用の状態監視装置において、
前記電流計測装置は、前記補機モータを駆動するための3相交流電流の波形を高速サンプリングにより取得するように構成され、
前記異常診断装置は、前記高速サンプリングにより取得した前記電流のデータにFFTを掛けて前記補機システムの異常診断を行うように構成される。
【0082】
上記(13)に記載の風力発電装置用の状態監視装置によれば、部品点数の少ない低コストの構成で補機システムの異常診断を行うことができる。
【0083】
(14)本開示の少なくとも一実施形態に係る風力発電装置用の状態監視方法は、
風力発電装置(例えば上述の風力発電装置100)の補機システム(例えば上述の補機システム4)の状態を監視するための風力発電装置用の状態監視方法であって、
前記補機システムは、複数の補機モータ(例えば上述の補機モータ6(6A〜6F))と、前記複数の補機モータに電力を供給するための補機モータ電源系統(例えば上述の補機モータ電源系統8)と、を備え、
前記補機モータ電源系統は、電源に接続される電源側ライン(例えば上述の電源側ライン10)と、前記電源側ラインから分岐して前記複数の補機モータにそれぞれ接続される複数の補機モータ側ライン(例えば上述の補機モータ側ライン12)と、を含み、
前記状態監視方法は、
前記風力発電装置の発電機が低風速で発電を停止している待機状態であるときに、前記複数の補機モータの各々を単独で順次運転する単独順次運転モードを実行するステップと、
前記単独順次運転モードの実行中に前記電源側ラインを流れる電流を計測するステップと、を備える。
【0084】
上記(14)に記載の風力発電装置用の状態監視装置によれば、単独運転モードの実行中に電流計測装置で電源ラインを流れる電流を計測することにより、複数の補機モータを含む補機システムの状態を1台の電流計測装置の計測結果に基づいて把握することができる。したがって、複数の補機モータ側ラインの各々に電流計測装置を設ける場合と比較して、少ない部品点数で風力発電装置の補機システムの状態を監視することができる。
【符号の説明】
【0085】
2 状態監視装置
3 発電機
4 補機システム
5 コンタクタ
6,6A,6F 補機モータ
6A 冷却ファンモータ
6A,6F 冷却ファンモータ
6B 潤滑油ポンプ
6C 制御油ポンプ
6D ピッチモータ
6E ヨーモータ
8 補機モータ電源系統
9 ブレーカ
10 電源側ライン
12 補機モータ側ライン
13 センサ
14 電流計測装置
15 風速計
16 風車制御装置
17 データ収集伝送装置
18 異常診断装置
30 タワー
32 ナセル
34 軸受
36 風車ロータ
38 ハブ
39 主軸
40 風車翼
42 増速機
44 操作端末
46 システム
48 通信ネットワーク
50 ウインドファーム
52 遠隔監視システム
54 サイトネットワーク
58 サーバ
60 コンピュータ
62,68,70 記憶装置
64 異常診断装置
66 リモートクライアント
72 CPU
84 バス
100 風力発電装置
【要約】
【課題】少ない部品点数で風力発電装置の補機システムの状態を監視できる風力発電装置用の状態監視装置を提供する。
【解決手段】風力発電装置用の状態監視装置であって、補機モータ電源系統は、電源に接続される電源側ラインと、電源側ラインから分岐して複数の補機モータにそれぞれ接続される複数の補機モータ側ラインと、を含み、状態監視装置は、電源側ラインを流れる電流を計測するための電流計測装置と、複数の補機モータを制御する制御装置と、を備え、制御装置は、風力発電装置の発電機が低風速で発電を停止している待機状態である場合に、複数の補機モータの各々を単独で順次運転する単独順次運転モードを実行可能に構成されており、電流計測装置は、制御装置による単独順次運転モードの実行中に電源側ラインを流れる電流を計測するように構成される。
【選択図】 図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8