(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6931419
(24)【登録日】2021年8月17日
(45)【発行日】2021年9月1日
(54)【発明の名称】2次元均一グリッドVCSELアレイへの任意パターンの生成
(51)【国際特許分類】
H01S 5/183 20060101AFI20210823BHJP
H01L 21/205 20060101ALN20210823BHJP
【FI】
H01S5/183
!H01L21/205
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-511434(P2020-511434)
(86)(22)【出願日】2018年7月2日
(65)【公表番号】特表2020-532131(P2020-532131A)
(43)【公表日】2020年11月5日
(86)【国際出願番号】US2018040531
(87)【国際公開番号】WO2019045873
(87)【国際公開日】20190307
【審査請求日】2020年2月25日
(31)【優先権主張番号】62/552,406
(32)【優先日】2017年8月31日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】15/844,662
(32)【優先日】2017年12月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503260918
【氏名又は名称】アップル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Apple Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100122563
【弁理士】
【氏名又は名称】越柴 絵里
(72)【発明者】
【氏名】リン チン ハン
(72)【発明者】
【氏名】リー ウェイピン
(72)【発明者】
【氏名】ファン シャオフェン
【審査官】
高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−003748(JP,A)
【文献】
特開2004−140372(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0260830(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00−5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板上に形成された光電子セルの規則的なアレイであって、
下部分布ブラッグ反射器(DBR)スタックを画定する第1のエピタキシャル層と、
前記下部DBRスタックの上に形成され、量子井戸構造を画定する第2のエピタキシャル層と、
前記量子井戸構造の上に形成され、上部DBRスタックを画定する第3のエピタキシャル層と、
前記上部DBRスタックの上に形成された電極であって、前記光電子セルのうちの少なくともいくつかの前記量子井戸構造に励起電流を注入するように構成された、電極と、
を含む、光電子セルのアレイと、
を備える、光電子デバイスであって、
前記アレイは、前記励起電流に応じてレーザー光線を放射するように構成された前記光電子セルの第1のセットと、前記第1のセットに介挿された前記光電子セルの第2のセットと、を含み、前記エピタキシャル層及び前記電極の中から選択される前記光電子セルの少なくとも1つの素子は、前記第2のセット内の前記光電子セルが前記レーザー光線を選択的に放射しないように構成されており、
前記光電子セルの前記第1のセットは、前記規則的なアレイ内に無相関パターンで配置され、前記第1のセット内の前記光電子セルの位置を水平方向にシフトするときの自己相関関数は、前記光電子セルのサイズよりも大きいシフトに対しては有意とならない、
光電子デバイス。
【請求項2】
前記光電子セルの前記第2のセットは、前記量子井戸構造に注入される前記励起電流をレーザー光線を放射するために必要とされる閾値を下回るまで低減するのに十分な量だけ、前記上部DBRスタックの電気抵抗を増大させる、前記上部DBRスタック内の注入イオンを含む、請求項1に記載の光電子デバイス。
【請求項3】
前記光電子セルの前記第2のセットの前記電極は、前記励起電流を前記量子井戸構造に注入しないように構成されている、請求項1に記載の光電子デバイス。
【請求項4】
前記光電子セルは、前記エピタキシャル層と前記電極との間に絶縁層を含み、前記絶縁層の一部は、前記光電子セルの前記第1のセット内でエッチングされて除去され、かつ前記光電子セルの前記第2のセット内でエッチングされておらず、前記励起電流は、前記光電子セルの前記第2のセットの前記量子井戸構造に注入されないようになっている、請求項3に記載の光電子デバイス。
【請求項5】
電流を前記光電子セルに供給するように構成された導電体と、前記導電体から前記光電子セルの前記第2のセットの前記電極を絶縁する絶縁層と、を備え、前記電流が前記光電子セルの前記第2のセットの前記電極に供給されないようになっている、請求項3に記載の光電子デバイス。
【請求項6】
前記下部DBRスタックと前記上部DBRスタックとの間に形成された絶縁層を備え、前記絶縁層は、前記光電子セルの前記第1のセット内の前記量子井戸構造の領域からエッチングされ、かつ前記光電子セルの前記第2のセットからエッチングされていない、請求項1に記載の光電子デバイス。
【請求項7】
光電子デバイスを製造する方法であって、前記方法は、
半導体基板上に第1のエピタキシャル層を堆積させて、下部分布ブラッグ反射器(DBR)スタックを画定することと、
前記第1のエピタキシャル層の上に第2のエピタキシャル層を堆積させて、量子井戸構造を画定することと、
前記第2のエピタキシャル層の上に第3のエピタキシャル層を堆積させて、上部DBRスタックを画定することと、
前記エピタキシャル層をエッチングして、光電子セルの規則的なアレイを画定することと、
励起電流に応じて前記光電子セルの第1のセットにレーザー光線を放射させるように、前記第3のエピタキシャル層の上に、前記励起電流を前記光電子セルのうちの少なくともいくつかの前記量子井戸構造に注入するように構成された電極を堆積させることと、
第2のセット内の前記光電子セルが前記レーザー光線を選択的に放射しないように、前記第1のセットに介挿された前記第2のセットの前記光電子セルの、前記エピタキシャル層及び前記電極の中から選択される、少なくとも1つの素子を構成することと、
を含み、
前記光電子セルの前記第1のセットは、前記規則的なアレイ内に無相関パターンで配置され、前記第1のセット内の前記光電子セルの位置を水平方向にシフトするときの自己相関関数は、前記光電子セルのサイズよりも大きいシフトに対しては有意とならない、
方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの素子を構成することは、前記量子井戸構造に注入される前記励起電流をレーザー光線を放射するために必要とされる閾値を下回るまで低減するのに十分な量だけ、前記上部DBRスタックの電気抵抗を増大させる、前記上部DBRスタック内のイオンを注入することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの素子を構成することは、前記励起電流を前記量子井戸構造に注入しないように、前記第2のセットの前記電極を構成することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記電極を構成することは、エピタキシャル層と前記電極との間に絶縁層を形成することと、前記光電子セルの前記第2のセット内の前記絶縁層をエッチングしない一方で、前記光電子セルの前記第1のセット内の前記絶縁層の一部をエッチングして除去して、前記励起電流が前記光電子セルの前記第2のセットの前記量子井戸構造に注入されないようにすることと、を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記電極を構成することは、前記光電子セルのアレイに電流を供給するように導電体を構成することと、前記導電体から前記光電子セルの前記第2のセットの前記電極を絶縁するように、絶縁層を堆積させパターン化して、前記電流が前記光電子セルの前記第2のセットの前記電極に供給されないようにすることと、を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの素子を構成することは、前記下部DBRスタックと前記上部DBRスタックとの間に絶縁層を堆積させることと、前記絶縁層を前記光電子セルの前記第2のセットからエッチングしない一方で、前記絶縁層を前記光電子セルの前記第1のセット内の前記量子井戸構造の領域からエッチングすることとを含む、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、光電子デバイスに関し、具体的には、パターン化された照明を放射するように構成可能なデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
既存の消費者アプリケーション及び新興の消費者アプリケーションにおいては、リアルタイムの3次元(three-dimensional、3D)撮像装置に対する必要性がますます生じている。深度センサ又は深度マッパーとしても一般に知られる、これらの撮像デバイスにより、対象シーンを1つ以上の光ビームで照明し、反射された光信号を分析することによって、対象シーン上の各点の距離(多くの場合、強度)(いわゆる対象シーン深度)を遠隔測定することができる。
【0003】
モノリシック半導体基板上の光放射の複数の発光素子のアレイに基づく光源を生成するための様々な方法が当該技術分野において既知である。
【0004】
その開示が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2014/0211215号には、パターンが与えられた光ビームを生成するように構成されたビーム源を含む光学装置が記載されている。一実施形態では、光電子デバイスは、垂直共振器面発光レーザー(vertical-cavity surface-emitting laser、VCSEL)ダイオードのモノリシックアレイが規則的格子ではない2次元パターンで上に形成された、半導体ダイを備える。用語「規則的格子」は、パターン内の隣接する素子間(例えば、VCSELアレイ内の隣接する放射体間)の間隔が一定である、2次元パターンを意味し、周期的格子と同義である。パターンは、横方向シフトの関数としてのレーザーダイオードの位置の自己相関が、ダイオードサイズよりも大きい任意のシフトに対して重要ではないという意味で、無相関であり得る。ランダムパターン、疑似ランダムパターン、及び準周期的なパターンは、そのような無相関パターンの例である。
【発明の概要】
【0005】
以下に記載される本発明の実施形態は、パターン化された光源を製造する改善された方法及びそのような方法によって生成することができる光源を提供する。
【0006】
したがって、本発明の一実施形態によれば、半導体基板と、半導体基板上に形成された光電子セルのアレイと、を含む、光電子デバイスが提供される。セルは、下部分布ブラッグ反射器(distributed Bragg-reflector、DBR)スタックを画定する第1のエピタキシャル層と、下部DBRスタックの上に形成され、量子井戸構造を画定する第2のエピタキシャル層と、量子井戸構造の上に形成され、上部DBRスタックを画定する第3のエピタキシャル層と、上部DBRスタックの上に形成された電極であって、各光電子セルの量子井戸構造に励起電流を注入するように構成可能な、電極と、を含む。アレイは、励起電流に応じてレーザー光線を放射するように構成された光電子セルの第1のセットと、第1のセットに介挿された光電子セルの第2のセットと、を含み、エピタキシャル層及び電極の中から選択される光電子セルの少なくとも1つの素子は、第2のセット内の光電子セルがレーザー光線を放射しないように構成されている。
【0007】
開示される実施形態では、アレイは、規則的なアレイであり、光電子セルの第1のセットは、アレイ内に無相関パターンで配置されている。
【0008】
一実施形態では、光電子セルの第2のセットは、量子井戸構造に注入される励起電流をレーザー光線を放射するために必要とされる閾値を下回るまで低減するのに十分な量だけ、上部DBRスタックの電気抵抗を増大させる、上部DBRスタック内の注入イオンを含む。
【0009】
他の実施形態では、光電子セルの第2のセットの電極は、励起電流を量子井戸構造に注入しないように構成されている。そのような一実施形態では、光電子セルは、エピタキシャル層と電極との間に絶縁層を含み、絶縁層の一部は、光電子セルの第1のセット内でエッチングされて除去され、かつ光電子セルの第2のセット内でエッチングされておらず、励起電流が、光電子セルの第2のセットの量子井戸構造に注入されないようになっている。別の実施形態では、デバイスは、電流を光電子セルに供給するように構成された導電体と、導電体から光電子セルの第2のセットの電極を絶縁する絶縁層と、を備え、電流が光電子セルの第2のセットの電極に供給されないようになっている。
【0010】
加えて又は代わりに、デバイスは、下部DBRスタックと上部DBRスタックとの間に形成された絶縁層を備え、絶縁層は、光電子セルの第1のセット内の量子井戸構造の領域からエッチングされ、かつ光電子セルの第2のセットからエッチングされていない。
【0011】
また、本発明の一実施形態によれば、光電子デバイスを製造する方法が提供される。この方法は、半導体基板上に第1のエピタキシャル層を堆積させて、下部分布ブラッグ反射器(DBR)スタックを画定することを含む。第1のエピタキシャル層の上に第2のエピタキシャル層を堆積させて、量子井戸構造を画定する。第2のエピタキシャル層の上に第3のエピタキシャル層を堆積させて、上部DBRスタックを画定する。エピタキシャル層をエッチングして、光電子セルのアレイを画定する。電極は、第3のエピタキシャル層電極の上に堆積され、光電子セルの第1のセットに、励起電流に応じてレーザー光線を放射させるように、励起電流を各光電子セルの量子井戸構造に注入するように構成可能である。第1のセットに介挿された第2のセットの光電子セルの、エピタキシャル層及び電極の中から選択される、少なくとも1つの素子は、第2のセット内の光電子セルがレーザー光線を放射しないように構成される。
【0012】
本発明は、添付の図面を参照する、本発明の実施形態の以下の詳細な説明からより完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る、VCSELのモノリシックアレイが2次元パターンで上に形成された半導体ダイを備える光電子デバイスの概略上面図である。
【
図2A】本発明の一実施形態に係る、有効化されたVCSEL及び無効化されたVCSELの概略断面図である。
【
図2B】本発明の一実施形態に係る、有効化されたVCSEL及び無効化されたVCSELの概略断面図である。
【
図3A】本発明の別の実施形態に係る、有効化されたVCSEL及び無効化されたVCSELの概略断面図である。
【
図3B】本発明の別の実施形態に係る、有効化されたVCSEL及び無効化されたVCSELの概略断面図である。
【
図4A】本発明の更に別の実施形態に係る、有効化されたVCSELの領域及び無効化されたVCSELの領域の概略断面図である。
【
図4B】本発明の更に別の実施形態に係る、有効化されたVCSELの領域及び無効化されたVCSELの領域の概略断面図である。
【
図5A】本発明の更なる実施形態に係る、有効化されたVCSELの領域及び無効化されたVCSELの領域の概略断面図である。
【
図5B】本発明の更なる実施形態に係る、有効化されたVCSELの領域及び無効化されたVCSELの領域の概略断面図である。
【
図6A】本発明の更に別の実施形態に係る、有効化されたVCSELの領域及び無効化されたVCSELの領域の概略断面図である。
【
図6B】本発明の更に別の実施形態に係る、有効化されたVCSELの領域及び無効化されたVCSELの領域の概略断面図である。
【
図7A】本発明の代替の実施形態に係る、有効化されたVCSEL及び無効化されたVCSELの概略断面図である。
【
図7B】本発明の代替の実施形態に係る、有効化されたVCSEL及び無効化されたVCSELの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
概要
複数のビームを放射する光源は、とりわけ、光学三角測量に基づく3D(3次元)マッピング用途で使用される。上記の米国特許出願公開第2014/0211215号に記載されているように、マッピングされる対象にランダムパターン又は疑似ランダムパターンを投影する光源を用いることが有利である。そのような光源のための望ましい放射体は、低電力消費、高い信頼性、及び良好なビーム品質に起因して、VCSEL(垂直共振器面発光レーザー)アレイである。VCSELアレイ内の放射体のランダムパターン又は疑似ランダムパターンは、対応するフォトリソグラフィマスクによって生成することができる。しかしながら、放射体の非周期的分布は、フォトレジストパターンCD(critical dimensions、限界寸法)の制御の低減、並びに不均一なエッチング負荷効果に起因するエッチング均一性の低下につながり得る。
【0015】
本明細書に記載される本発明の実施形態は、均一グリッド上にVCSELアレイを製造し、個々の放射体を無効化することによって、上記の制限に対処する。無効化された放射体は、実質的に任意の所望のパターンで、例えば、擬似ランダムパターン又は他の無相関パターンで、有効化された(動作している)放射体に介挿することができる。開示される実施形態は、VCSEL製造プロセスにおける修正を使用して、例えば、VCSELのエピタキシャル層又は電極を修正することによって、放射体を選択的に無効化する。設計は均一グリッドに基づくので、標準的なフォトリソグラフィ法を用いて確実に製造することができる。
【0016】
システムの説明
図1は、本発明の一実施形態に係る、VCSELなどの有効化された光電子セル12のモノリシックアレイが無相関2次元パターンで上に形成された半導体ダイ10を備える光電子デバイスの概略上面図である。アレイは、当該技術分野において既知であるVCSELアレイを生成するために使用されるものと同じ種類のフォトリソグラフィ法によって半導体基板上に形成され、好適な薄膜層構造が、VCSELを形成し、導電体が、コンタクトパッド14からアレイ内のVCSEL12に電力及び接地接続を提供する。
【0017】
この種類の有効化されたVCSEL12の無相関パターンは、VCSEL状のセルの規則的なアレイ(すなわち、規則的格子の形態のアレイ)の製造に使用されるものと実質的に同じプロセスを使用して生成される。しかしながら、従来の規則的なアレイとは対照的に、残りのVCSEL状のセルを無効化しながら、VCSEL12のみが選択的に有効化される。これらの無効化されたセルは、VCSEL12と構造がほぼ同一であるが、製造プロセス中に構成される薄膜層特性に起因してレーザー発光が不可能であるため、本明細書では「ダミーセル16」と呼ばれる。以下では、用語「無効化する」及び「無効化された」は、「有効化しない」及び「有効化されない」それぞれと同義的に使用される。
【0018】
セルの規則的なアレイに基づく、実質的に任意の所望のパターンで、例えば、疑似ランダムパターン又は他の場合には無相関パターンで、動作している放射体のアレイを生成する能力は、いくつかの利点を有する。
・いわゆるエッチング負荷効果を最小限に抑えることによって、改善されたドライエッチングの均一性が達成される。
・均一グリッドの周期構造によって、フォトレジストCDのより厳格な制御が達成される。
・ポリイミドなどの樹脂をセル間のトレンチに充填することにより、ダイ10のより均一な温度分布を達成することができ、より良好な光パワー均一性をもたらすことができる。
【0019】
図2〜
図7は、有効化されたVCSEL及び無効化されたVCSELの概略断面図である。各図は、「A」でラベル付けされた図の有効化されたVCSEL(有効化されたVCSEL12の基準として使用することができる)を、「B」でラベル付けされた図の無効化されたVCSEL(ダミーセル16の可能な基準として)と比較している。有効化されたVCSEL及び無効化されたVCSELが同じ素子の大部分を共有するため、有効化されたVCSELの詳細な説明は、以下の
図2Aを参照してなされる。
【0020】
図2A〜
図2Bは、本発明の一実施形態に係る、有効化されたVCSEL17及び無効化されたVCSEL18の概略断面図である。
【0021】
図2Aの有効化されたVCSEL17は、半導体基板19上に形成される。VCSELのエピタキシャル半導体層(下部n型分布ブラッグ反射器[n−DBR]スタック20、量子井戸構造22、及び上部p−DBRスタック24)は、半導体基板19の領域の上に堆積される。n−DBRスタック20とp−DBRスタック24との間に、閉じ込め層36、典型的には酸化アルミニウムが形成され、パターン化される。p−DBRスタック24の堆積に続いて、絶縁層28が堆積され、パターン化され、1つ以上のp電極30及びn電極32が堆積され、パターン化される。絶縁トレンチ34がエッチングされて、VCSELのアレイを画定し、隣接するVCSELを絶縁する。加えて、隣接するVCSEL間の絶縁を高めるために、プロトンインプラントなどの絶縁インプラント38を、p−DBRスタック24及び量子井戸構造22に隣接して堆積させることができる。
【0022】
図2Bの無効化されたVCSEL18は、無効化されたVCSELでは、絶縁インプラント38がp−DBRスタック24内に延び、場合によっては量子井戸構造22内に延びるという点で、有効化されたVCSEL17とは異なる。イオン注入によって引き起こされる格子損傷に起因して、注入層の抵抗は、非注入状態から増大し、量子井戸構造22に注入される励起電流を、レーザー光線を放射するために必要とされる閾値を下回るまで低下させる。結果として、VCSELは、無効化され、レーザー光線を放射しないことになる。
【0023】
VCSEL18の無効化は、注入イオンがp−DBRスタック24に到達すること、及び場合によっては量子井戸構造22に到達することを可能にするように、絶縁インプラント38の堆積の横方向分布を画定することに関与するフォトマスクを修正することによって、製造プロセス中に達成される。
【0024】
図3A〜
図3Bは、本発明の別の実施形態に係る、有効化されたVCSEL39及び無効化されたVCSEL40の概略断面図である。有効化されたVCSEL39は、本実施形態が隣接するVCSELを絶縁するための絶縁インプラント38を必ずしも備えていないことを除いて、
図2Aの有効化されたVCSEL17と実質的に同様である。VCSEL40を無効化することは、励起電流のp−DBRスタック24及び量子井戸構造22への注入を防止することによって達成される。本発明の3つの代替の実施形態における有効化されたVCSEL39と無効化されたVCSEL40との間の差異を
図4〜
図6に示す。これらの図は、
図3A〜
図3Bを参照して、有効化されたVCSEL39のための領域44(点線でマークされた)、及び無効化されたVCSEL40のための領域46(点線でマークされた)を示す。
【0025】
図4A〜
図4Bは、本発明の一実施形態に係る、
図3A〜
図3Bの有効化されたVCSEL39の領域44及び無効化されたVCSEL40の領域46の概略断面図である。
【0026】
有効化されたVCSEL39では、p電極として機能する金属層(M1)の堆積前に、絶縁層28内の位置41にビアをエッチングすることによって、p電極30とp−DBRスタック24との間の電気的接触が生成され、それにより、p電極からp−DBRスタックへ、更に量子井戸構造22への励起電流の流れを可能にする。無効化されたVCSEL40では、位置42の連続する絶縁層28によって示されるように、ビアは、エッチングされず、それにより、p電極30からp−DBRスタック24へ、更に量子井戸構造22への励起電流の流れを防止する。
【0027】
VCSEL40の無効化は、位置42にビアをエッチングしないように、絶縁層28のエッチングを線引きすることに関与するフォトマスクを修正することによって、製造プロセス中に達成される。
【0028】
図5A〜
図5Bは、本発明の別の実施形態に係る、
図3A〜
図3Bの有効化されたVCSEL39の領域44及び無効化されたVCSEL40の領域46の概略断面図である。
【0029】
有効化されたVCSEL39と無効化されたVCSEL40の両方で、ビアは、絶縁層28内の位置62及び64にそれぞれ、エッチングされる。第2の絶縁層60は、絶縁層28の上に堆積され、ビアは、有効化されたVCSEL39内の位置62にエッチングされ、一方、ビアは、無効化されたVCSEL40内の位置64にエッチングされない。p電極30は、第2の絶縁層60の上に堆積され、位置62にエッチングされたビアは、p電極とp−DBRスタック24との間の電気的接触を可能にし、したがって、p電極からp−DBRスタックへ、更に量子井戸構造22への励起電流の流れを可能にする。しかしながら、位置64の連続する第2の絶縁層60に起因して、無効化されたVCSEL40のp電極30とp−DBRスタック24との間で、電気的接触は確立されず、それにより、p電極からp−DBRスタックへ、更に量子井戸構造22への励起電流の流れを防止する。
【0030】
VCSEL40の無効化は、位置64のビアのエッチングを防止するように、絶縁層60のエッチングを線引きすることに関与するフォトマスクを修正することによって、製造プロセス中に達成される。
【0031】
図6A〜
図6Bは、本発明の更に別の実施形態に係る、
図3A〜
図3Bの有効化されたVCSEL39の領域44及び無効化されたVCSEL40領域46の概略断面図である。
【0032】
有効化されたVCSEL39と無効化されたVCSEL40の両方で、
図4Aの有効化されたVCSELと同様に、絶縁層28内の位置41にビアをエッチングすることによって、p電極30とp−DBRスタック24との間の電気的接触が生成される。第2の絶縁層66は、(
図5A〜
図5Bのように、絶縁層28の上に堆積するのとは対照的に)p電極30の上に堆積される。ビアは、位置72に第2の絶縁層66内でエッチングされるが、ビアは、位置74にエッチングされない。導電層76は、光電子セルのアレイに電流を供給するために、第2の絶縁層66上に堆積される。位置72にエッチングされたビアにより、導電層76は、p電極30と電気的に接触し、それによって、p−DBRスタック24とともに、第2の金属層からp−DBRスタックへ、更に量子井戸構造22への励起電流の流れを可能にする。しかしながら、位置74の連続する第2の絶縁層66に起因して、無効化されたVCSEL40のp電極30は、導電層76から絶縁され、したがって、p電極への電流の供給を防止する。
【0033】
VCSEL40の無効化は、位置74のビアのエッチングを防止するように、絶縁層60のエッチングを線引きすることに関与するフォトマスクを修正することによって、製造プロセス中に達成される。
【0034】
図7A〜
図7Bは、本発明の一実施形態に係る、有効化されたVCSEL80及び無効化されたVCSEL82の概略断面図である。有効化されたVCSEL80は、
図3Aの有効化されたVCSEL39と実質的に同様である。無効化されたVCSEL82は、閉じ込め層36が位置84でエッチングされておらず、量子井戸構造22の成長を防止するという点で、有効化されたVCSEL80とは異なる。
【0035】
VCSEL80の無効化は、位置84の閉じ込め層36のエッチングを防止するように、フォトマスクを修正することによって、製造プロセス中に達成される。
【0036】
上述の実施形態は例として挙げられており、本発明は、上記において具体的に図示及び説明したものに限定されないことが理解されるであろう。むしろ、本発明の範囲は、上記において説明した様々な特徴の組み合わせと部分的組み合わせの両方、並びに当業者であれば前述の説明を読むことによって想到するであろう、従来技術に開示されていないそれらの変型及び修正を含む。