(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6931451
(24)【登録日】2021年8月18日
(45)【発行日】2021年9月8日
(54)【発明の名称】チャンバーパッキン及びこれを組み込んだ玩具銃
(51)【国際特許分類】
F41B 11/70 20130101AFI20210826BHJP
A63H 5/04 20060101ALI20210826BHJP
【FI】
F41B11/70
A63H5/04 A
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2020-6451(P2020-6451)
(22)【出願日】2020年1月19日
(65)【公開番号】特開2021-113639(P2021-113639A)
(43)【公開日】2021年8月5日
【審査請求日】2020年2月14日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 掲載年月日 平成31年2月17日 掲載アドレス https://www.amazon.co.jp/dp/B07MKBMXM/ https://www.amazon.co.jp/dp/B07MNF8KRM/
(73)【特許権者】
【識別番号】519157680
【氏名又は名称】株式会社宮川ゴム工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100133282
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 春喜
(74)【代理人】
【識別番号】100116780
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 雅子
(72)【発明者】
【氏名】大場 一弥
【審査官】
金田 直之
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2012/0272941(US,A1)
【文献】
特開平06−003091(JP,A)
【文献】
特開平09−280793(JP,A)
【文献】
特開2007−255751(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3196048(JP,U)
【文献】
特開2007−292430(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0226519(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F41B 11/00−11/89
A63H 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
球形弾のホップ調整のための開口を有するバレルに組み込まれるチャンバーパッキンであって、該開口に対向する部位に先端部の断面が半円形状であるレール状突起を、2本併設したことを特徴とするチャンバーパッキン。
【請求項2】
上記バレルのガイド溝に嵌合して、チャンバーパッキンの組み込み位置を確定する挿入ガイドが付加されていることを特徴とする、請求項1に記載のチャンバーパッキン。
【請求項3】
上記チャンバーパッキンは、シリコンゴム又はニトリルゴムからなることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のチャンバーパッキン。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のチャンバーパッキンを、上記バレルに組み込んだ玩具銃。
【請求項5】
上記チャンバーパッキンにある2本の上記レール状突起を外部より押圧して、発射される球形弾のホップ回転を制御する押圧部を備えたことを特徴とする、請求項4に記載の玩具銃。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャンバーパッキン及びこれを組み込んだ玩具銃に関する。
【背景技術】
【0002】
エアソフトガン、電動ガン、ガスガン等の玩具銃は、圧縮エア等をノズルから噴出させて、BB弾のような球形弾をバレルから発射するものである。発射する球形弾は回転していないため、重力による落下の力を受けて射程距離が伸びない。
【0003】
これを改良するために、発射時に球形弾に下回転(ホップ回転)を掛けて揚力を生じさせ、重力による落下の力と相殺することにより、射程距離を伸ばすようにしたホップ機構が提案されている。
例えば特許文献1では、弾道調整部材を内部に僅かに突出し得るように取り付けた硬質円筒部内に球形弾を気密に保持するためのゴム製円筒部を挿入し、弾道調整部材によりゴム製円筒部の一部を内側に押し込むようにしたホップ機構が提案されている。
【0004】
また、特許文献2では、球形弾を発射する銃腔の上面に外部から銃腔内へ通じる開口を設け、その開口の下方の銃腔内壁面よりも大きな摩擦係数を有する弾力性材料よりなる摩擦部材によって開口の外側を覆い、球形弾の移動方向へ細長く形成された押圧部材を開口に配置し、押圧部材を介して摩擦部材を銃腔内へ押すことにより球形弾の上部を所要長さにわたって摩擦可能にするとともに、摩擦度合いを可変調節するポップ機構が提案されている。さらにこれ以外にも、ホップ機構について多数の提案がなされている。
【0005】
エアソフトガン、電動ガン、ガスガン等の玩具銃を使用するサバイバルゲームでは、そのゲームでより良い成績を上げるために、使用する玩具銃を自分で改良して性能を上げるカスタムが利用されている。
そのカスタムに使用するパーツの一つに、発射されるBB弾のような球形弾の弾道を調整するチャンバーパッキンがある。
【0006】
チャンバーパッキンは、ホップ機構を構成する重要なパーツであり、エアソフトガン等の玩具銃のバレルに組み込まれて使用されている。また、チャンバーパッキンはゴム製であり、玩具銃のノズルとバレルの間にある隙間を塞いでエア漏れを防ぐ役割もある。
さらにチャンバーパッキンは、バレル上部の開口からチャンバーパッキンの一部を押し込み、発射される球形弾を保持する役割もある。球形弾は上からはチャンバーパッキンによって、その下部はバレル内壁の金属面によって保持される。
【0007】
バレル内壁の金属面の摩擦係数に比べてチャンバーパッキンの材質をより大きい摩擦係数のものとすることで、圧縮エア等の圧力により発射される球形弾に下回転(ホップ回転)が掛かり、下回転(ホップ回転)による揚力と重力とのバランスで目標まで直線状に飛行させることができる。
【0008】
ところが、これまで提案された従来のチャンバーパッキンを、ホップ機構を構成するパーツとして使用したエアソフトガン等の玩具銃では、安定した弾道と高い集弾性について、十分期待に応えることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開昭63−179490号公報
【特許文献2】特開平6−3091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、エアソフトガン等の玩具銃について、安定した弾道と高い集弾性を実現するためのチャンバーパッキンを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の課題を解決するための手段は、次のとおりである。
(1)球形弾のホップ調整のための開口を有するバレルに組み込まれるチャンバーパッキンであって、その開口に対向する部位に
先端部の断面が半円形状であるレール状突起を、2本併設したことを特徴とするチャンバーパッキン。
(
2)上記バレルのガイド溝に嵌合して、チャンバーパッキンの組み込み位置を確定する挿入ガイドが付加されていることを特徴とする、上記(1)に記載のチャンバーパッキン。
(
3)上記チャンバーパッキンは、シリコンゴム又はニトリルゴムからなることを特徴とする、上記(1)
又は上記(
2)に記載のチャンバーパッキン。
(
4)上記(1)ないし上記(
3)のいずれかに記載のチャンバーパッキンを、上記バレルに組み込んだ玩具銃。
(
5)上記チャンバーパッキンにある2本の上記レール状突起を外部より押圧して、発射される球形弾のホップ回転を制御する押圧部を備えたことを特徴とする、上記(
4)に記載の玩具銃。
【発明の効果】
【0012】
本発明のチャンバーパッキンによれば、次のような効果が得られる。
(1)2本のレール状突起により、横にブレやすいBB弾のような球形弾の保持位置を一定に保つことができるため、エアソフトガン等の玩具銃の集弾性が格段に向上する。
(2)球形弾にホップ回転をピンポイントではなく、3〜5mmほどあるレール状の突起により球形弾に長く抵抗をかけて強いホップ回転を得ることができるため、安定した弾道を生み出すことができる。
(3)チャンバーパッキン本体の厚みで突起を作る従来の面ホップパッキンシステムと比較しても、半円形での突起で長掛けしているため、チャンバーパッキンの耐久性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】バレルに組み込まれるチャンバーパッキンの上部概念図(a)及び正面概念図(b)である。
【
図2】チャンバーパッキンのホップ機能を説明する概念図である。
【
図3】実施例に係るチャンバーパッキンの上面図(a)及びA−A断面図(b)である。
【
図4】実施例に係るチャンバーパッキンの側面図である。
【
図5】実施例に係るチャンバーパッキンの写真である。
【
図6】実施例に係るチャンバーパッキンの組み込み断面図である。
【
図7】従来例と実施例に係るチャンバーパッキンとの命中精度の比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(本発明の原理)
図1及び
図2を用いて本発明の原理を説明する。
図1(a)は、バレルに組み込まれるチャンバーパッキンの上部概念図である。チャンバーパッキン1は、バレル4の端部から挿入されバレルに組み込まれている。
バレル4には、球形弾のホップ調整のための開口5が形成されている。また、チャンバーパッキン1には、開口に対向する部位にレール状突起2が2本併設されている。
【0015】
図1(b)は、チャンバーパッキン1の正面概念図である。断面が半円形状のレール状突起2が2本形成されている。
発射されるBB弾のような球形弾は、開口5に対向する部位の2本のレール状突起と、図示していないバレルの対向する位置にある内壁との3点で支持される。
【0016】
2本のレール状突起2を構成する素材は、対向する位置にあるバレルの内壁の素材の摩擦係数よりも大きくなるようなものを選定している。このため、球形弾が圧縮エア等の風圧により外部に射出される際に上記3点と摩擦を生じ、摩擦係数の差により下回転(ホップ回転)が与えられ上向きの力が生じる。球形弾は重力による下向きの力とのバランスで目標に向かって一直線に飛んで行く。
【0017】
球形弾は、2本のレール状突起を、開口5を介して外部から押圧することにより、その程度に応じて発射される球形弾のホップ回転を制御することができる。
2本のレール状突起を外部から押圧する押圧部は、例えば凸形の押しゴムとこれを押圧する度合いを調整する押圧調整部材で構成されている。
押圧部では、球形弾の重量・種類に応じて適切なホップ回転が得られるように、押圧の調整が行われる。
【0018】
図2は、チャンバーパッキンのホップ機能を説明する概念図である。
図2(a)は、従来のチャンバーパッキンの断面概念図である。また
図2(b)は、本発明に係るチャンバーパッキンの断面概念図である。なお、
図2は球形弾にホップ回転を与える概念図であるため、バレルは図示していない。
【0019】
図2(a)に示すものはピンポイントで矢印方向に下回転(ホップ回転)を掛けている。これに対して
図2(b)に示す本発明に係るチャンバーパッキンでは、ピンポイントではなく2本併設したレール状突起により球形弾の上部を2点保持として、矢印方向に下回転(ホップ回転)を掛けている。
このため
図2(b)に示す本発明に係るチャンバーパッキンは、
図2(a)のものに比べて次のような利点がある。
【0020】
(1)2点保持としたことで、球形弾の左右のブレを軽減することができるため、玩具銃の集弾性を格段に向上させることができる。
(2)レール状突起により長く下回転(ホップ回転)をかけることができるので、ホップ回転を大きく掛けることができる。このため安定した弾道が得られる。レール状突起の長さは、3〜5mm程度に選定される。
(3)従来から知られたチャンバーパッキン本体の厚みで突起を作る面ホップパッキンシステムと比較しても、先端部の断面が半円形の突起でホップ回転を長掛けしているため、チャンバーパッキンの耐久性が向上している。
【0021】
(実施例)
図3(a)は、実施例に係るチャンバーパッキン1の上面図である。また、
図3(b)は、そのA−A面の断面図である。
図3(a)(b)において、2は、レール状突起である。
図3(a)(b)から分かるように、先端部の断面が半円形状の2本のレール状突起が、内側に向かって併設されている。レール状突起2は、バレルの開口に対向する部位に設けられる。
【0022】
チャンバーパッキン1には、レール状突起とは向かい側に挿入ガイド3が設けられている。挿入ガイド3は、バレルにチャンバーパッキンを組み込む際に、バレルのガイド溝に嵌合して、チャンバーパッキンの組み込み位置を確定する。この挿入ガイド3により、チャンバーパッキン1の2本のレール状突起2はバレルの開口に正確に対向することができる。
図4は、実施例に係るチャンバーパッキンの側面図である。
【0023】
実施例として例示した
図3、
図4に示すチャンバーパッキンは、直径6mmのBB弾が使用される玩具銃のバレルに組み込まれてカスタムパーツとして使用される。
実施例として例示したチャンバーパッキンに係る寸法は、次のとおりである。
<チャンバーパッキン1の本体>
全長:23.5mm、外径:9.5mm(先端部の外径:7mm)、内径:8.5mm、厚さ:0.5mm
<レール状突起2>
厚さ:1.2mm、長さ:4.3mm、幅:1mm、2本のレール状突起の間隔:1mm
<挿入ガイド3>
厚さ:0.5mm、長さ:21.4mm、幅:1mm
【0024】
チャンバーパッキンは、バレル素材よりも摩擦係数が大きいシリコンゴム又はニトリルゴム等で構成されている。
シリコンゴムは、ニトリルゴムと比べて摩擦力が高くホップ回転が掛かりやすい。また、耐熱性・耐寒性・耐老化性に優れている。さらに透明なため、カスタム時にバレルなど内部がよく見えるので利用しやすい。
シリコンゴムからなるチャンバーパッキンの写真を
図5に示す。写真から、併設された2本のレール状突起が確認される。
ニトリルゴムは、黒色のゴムでシリコンゴムよりも耐久力が優れている。
【0025】
図6は、実施例に係るチャンバーパッキンの組み込み断面図である。バレル4の開口5には、チャンバーパッキンのレール状突起2が突き出している。
2本のレール状突起を、外部から押圧することにより、その程度に応じて発射される球形弾のホップ回転を制御することができる。
BB弾のような球形弾は、ノズル6からバレル4内に移行してレール状突起2の下部に止まる。球形弾は、後部よりガス圧を加えると、バレル内を高速で移動し外部に発射される。その際にレール状突起2との摩擦により、長く下回転(ホップ回転)を掛けられる。
【0026】
図7は、従来のチャンバーパッキンを使用した玩具銃と、実施例に係るチャンバーパッキンを使用した玩具銃との命中精度の比較図である。
図7によれば、
図7(b)に示す実施例に係るチャンバーパッキンを使用した玩具銃の命中結果は、
図7(a)に示す従来のチャンバーパッキンを使用した玩具銃のものに比べて集弾性が大きく向上していることが分かる。
【0027】
また、0.25gのBB弾を用いて30m先の的について従来の玩具銃が5発ヒットしたのに対し、実施例に係るチャンバーパッキンを使用した玩具銃は、9発がヒットしていることから、実施例に係るチャンバーパッキンを使用した玩具銃は、弾道がより安定している。
【0028】
(本発明の技術的範囲)
以上、本明細書に開示した実施例は、本発明に係るチャンバーパッキン及びこれを組み込んだ玩具銃の理解を容易にするために例示したものであって、本発明はこれに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、特許請求の範囲を逸脱しない限り、チャンバーパッキン及びこれを組み込んだ玩具銃を作製するに当たって、適宜の設計変更が可能であることは言うまでもないことである。
【符号の説明】
【0029】
1 チャンバーパッキン
2 レール状突起
3 挿入ガイド
4 バレル
5 開口
6 ノズル