(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の一実施例に係る位置検出装置の構成を示すブロック図である。図において、変位検出装置は、1つのコイル11と、検出対象位置(機械的変位)に応じて該コイル11に対して相対的に変位するように非接触的に近接配置された磁気応答部材12と、該コイル11を発振要素として組み込み、該コイル11に対する該磁気応答部材12の変位に応じた該コイル11のインダクタンス変化に応じて発振周波数が変化する自励発振回路13と、前記自励発振回路13の発振出力信号に基づき前記検出対象位置に応じた位置データを求めるための演算部14とを備える。演算部14は、前記自励発振回路13の発振出力信号に基づき発振周波数に応じた計測値をデジタルで生成し、該計測値の時間的差分値を速度データとしてデジタル的に求め、該速度データをデジタル的に積分することにより変位データ(位置データ)を求めるように構成されている。
【0010】
図2は、コイル11を自励発振用インダクタンス要素として組み込んだ自励発振回路13の一例を示す。自励発振回路13は、並列LC回路21と増幅器22とで構成されたコルピッツ型発振回路である。並列LC回路21は、自励コイルとして機能する前記コイル11と、コンデンサ23,24とからなる。増幅器22は、増幅素子としてのトランジスタ25と、電源−コレクタ間の抵抗26、エミッタ−接地間の抵抗27、ベース電圧設定用の抵抗28,29を含む。なお、増幅素子は、トランジスタに限らず、FETあるいはオペアンプ等任意の反転増幅素子を用いてよい。増幅器22の入力端子IN(ベース入力)に並列LC回路21の一方のコンデンサ23とコイル11の接続点の信号が入力し、増幅器22の出力端子OUT(コレクタ出力)が並列LC回路21の他方のコンデンサ24とコイル11の接続点に入力する。この例では、発振出力信号は、増幅器22の入力端子IN(ベース入力)から取り出されることができる。なお、自励発振回路20の基本構成は、図示のようなコルピッツ型発振回路に限らず、ハートレイ型発振回路、その他RLCによる発振回路であってもよい。
【0011】
図1に戻り、演算部14は、前記自励発振回路13の発振出力信号に基づき発振周波数に応じた計測値を生成するための手段として、発振周期計測ステップ30を含む。この場合、例えば、発振周波数の周期をカウントし易いように、前記発振出力信号を適宜分周することにより、拡張した周期を持つ矩形波信号を生成し、該矩形波信号が持つ拡張した周期をカウントすることにより、前記発振周波数に応じた計測値を生成するとよい。検出対象位置に応じた前記コイル11の変位に応じて自励発振回路13のインダクタンスが変化し、その発振周波数が変化するので、ステップ30で求められる計測値は、検出対象変位を原初的に表現するものである。
【0012】
次のステップ31では、前記ステップ30で求めた前記計測値の時間的差分値をデジタル的に求めることにより速度データVdを算出する。次に、ステップ32では、前記ステップ31で求めた速度データVdを積分することにより位置データ(すなわち変位データ)Ldを算出する。ステップ32で求められた位置データ(変位データ)Ldが、位置検出信号(変位検出信号)として出力される。
【0013】
このように、ステップ31で速度データVdを一旦求め、ステップ32で該速度データVdを積分することにより位置データLdを算出する構成であるから、温度あるいは位置検出装置の機械的取り付け位置などに起因するオフセット成分を自動的にキャンセル若しくは軽減することができる。例えば、ステップ30で求めた前記計測値にそのようなオフセット成分が含まれていても、検出対象が静止しているときは、ステップ31において得られる速度データVdの値は0であるから、オフセット成分が自動的にキャンセルされる。また、検出対象軸等に位置検出装置を機械的に取り付ける時の取り付け原点設定も容易に行える。すなわち、取り付け時は検出対象が静止しているので、速度データVdの値は0であるから、任意の取り付け位置をそのまま原点として定めてよい。更に、検出対象が動いているときも、誤差又はオフセット成分が自動的にキャンセルされる。例えば、誤差又はオフセット成分をσで表し、前記ステップ30で求めた前記計測値の時点t0における値をX0、時点t1における値をX1で示し、それぞれの時点t0,t1における検出対象位置に対応する正しい計測値成分をa0,a1で示すと、前記ステップ31で求められる、時点t0,t1間の前記計測値X0,X1の差分値(速度データVd)は、
Vd=X1−X0=(a1+σ)−(a0+σ)=a1−a0
となり、時点t0,t1間における検出対象位置の正しい差分(速度データVd)を示す。このような差分値(速度データVd)を前記ステップ32で積分することにより、誤差成分σを除去した精度の良い位置データLdを得ることができる。従って、本発明によれば、誤差又はオフセット成分σを自動的に除去した精度の良い位置検出を行うことができる。
【0014】
また、本発明によれば、前記ステップ31で行う差分演算の時間差を適宜に設定することが可能である。これにより、検出対象の変位に応じたインダクタンス変動に対して微小な発振周波数変化しか示さないような自励発振回路13を使用する位置検出装置においても、大きなダイナミックレンジで(若しくは拡大された数値スケールで)速度データVd及び位置データLdを生成することができ、自励発振回路13を使用して装置構成を小型化した位置検出装置において、精度の良い位置検出を行うことができる。また、検出対象位置の変化範囲が微小であっても、大きなダイナミックレンジで(若しくは拡大された数値スケールで)速度データVd及び位置データLdを生成することができるので、微小変位の検出に適した位置検出装置を提供することができる。以下、
図3を参照して、この点について詳しく説明する。
【0015】
図3(a)において、時間的に変化する検出対象位置に応じて前記ステップ30で求められる前記計測値(つまり、原初的位置検出データ)の一例を実線F1で示し、この実線F1で示される前記計測値(原初的位置検出データ)を3種の異なる時間差で差分演算(微分)することによって得られる速度データVdの一例をそれぞれ破線F2、一点鎖線F3、二点鎖線F4で示す。この例では、破線F2で示される速度データVdは時間差「1」で前記計測値(原初的位置検出データ)を差分演算することによって得られ、一点鎖線F3で示される速度データVdはその5倍の時間差「5」で前記計測値(原初的位置検出データ)を差分演算することによって得られ、二点鎖線F4で示される速度データVdはその10倍の時間差「10」で前記計測値(原初的位置検出データ)を差分演算することによって得られる。図示例において、時刻t0とt1の差をα(秒)とすると、時間差「1」の差分演算とは、或る時点の前記計測値(原初的位置検出データ)X(0)に対する、それよりα(秒)前の時点の前記計測値(原初的位置検出データ)X(−1)を求めることからなり、時間差「5」の差分演算とは、或る時点の前記計測値(原初的位置検出データ)X(0)に対する、それより5α(秒)前の時点の前記計測値(原初的位置検出データ)X(−5)を求めることからなり、また、時間差「10」の差分演算とは、或る時点の前記計測値(原初的位置検出データ)X(0)に対する、それより10α(秒)前の時点の前記計測値(原初的位置検出データ)X(−10)を求めることからなる。
【0016】
図3(a)において、実線F1で示される前記計測値(原初的位置検出データ)は、時刻t0からt10までの間で勾配「1」で直線的に変化し、t10以降は一定値(10)を維持する。破線F2で示される速度データVdは、時刻t0からt1までの間で勾配「1」で直線的に変化し、時刻t1からt10までの間で値「1」を維持し、以後は「0」である。一点鎖線F3で示される速度データVdは、時刻t0からt5までの間で勾配「1」で直線的に変化し、時刻t5からt10までの間で値「5」を維持し、時刻t10からt15までの間で勾配「−1」で直線的に変化し、以後は「0」である。二点鎖線4で示される速度データVdは、時刻t0からt10までの間で勾配「1」で直線的に変化し、時刻t10からt20までの間で勾配「−1」で直線的に変化し、以後は「0」である。このように、前記ステップ31で行う差分演算の時間差が長くなると、差分演算によって得られる速度データVdのダイナミックレンジ(若しくは数値スケール)が広がり、速度データVdが大きな値で得られる。
【0017】
図3(a)で破線F2、一点鎖線F3、二点鎖線F4で示した各速度データVdの積分値(位置データLd)は、それぞれ
図3(b)で破線F2i、一点鎖線F3i、二点鎖線F4iで示すような特性を示すものとなる。なお、
図3(b)の縦軸は、
図3(a)の縦軸の1/10のスケールで、縮小して示してある。
図3(a)において実線F1で示された、同じ検出対象位置に応じた計測値(原初的位置検出データ)に対して、
図3(b)において破線F2i、一点鎖線F3i、二点鎖線F4iで示すように、異なるダイナミックレンジ(若しくはスケール)特性を示す位置データLdが得られることになる。例えば、実線F1で示された検出対象位置に応じた計測値(原初的位置検出データ)の値が略「10」で安定したとき、破線F2iで示された位置データLdの値は略「10」、一点鎖線F3iで示された位置データLdの値は略「50」、二点鎖線F4iで示された位置データLdの値は略「100」となる。つまり、ステップ30で求めた発振周波数に基づく計測値(原初的位置検出データ)に対して、破線F2iで示された位置データLdは同程度のスケールで、一点鎖線F3iで示された位置データLdは略50倍のスケールで、二点鎖線F4iで示された位置データLdは略100倍のスケールで、表される。これは、積分に際しての増分値(Vdの値)がそれぞれ異なるからである。検出対象の動きが微小変位である場合、ステップ30で求められる計測値(原初的位置検出データ)の変化幅(ダイナミックレンジ)が小さいが、二点鎖線F4iで示されたもののように大きなスケール(ダイナミックレンジ)で拡大された位置データLdが得られるように、前記ステップ31で行う差分演算の時間差を適切に設定することにより、精度の良い位置検出を行うことができる。
【0018】
このように、前記ステップ31で行う差分演算の時間差を適宜に設定することにより、前記ステップ32で行う積分演算によって得られる位置データLdのダイナミックレンジを適宜に拡大するように調整することができる。従って、検出対象の微小変位(あるいはステップ30の計測値(原初的位置検出データ)が示す微小変位)を大きなダイナミックレンジの位置データLdとして検出することができ、かつ、検出装置の構造そのものが小型化に適している(1つのコイル11を自励発振回路13に組み込んだ簡素な構造)ので、微小変位検出に適したあるいは小型化に適した変位検出装置を提供することができる。なお、前記ステップ31で行う差分演算の時間差の設定を、ユーザが可変調整できるように構成してもよいし、あるいは、変位検出装置の応用目的に応じてファクトリーセットで予め調整するようにしてもよい。
【0019】
図4は、演算部14において更に加速度データを求めることができるようにした実施例を示す。ステップ33では、前記ステップ31で求めた速度データVdを更に微分(差分演算)することにより加速度データAdを算出する。ステップ33で行う差分演算の時間差は、前記ステップ31で行う差分演算の時間差と同様に設定してよい。
図3(c)は、
図3(a)に示す速度データVdに対応してステップ33で得られる加速度データAdの一例を示す。
図3(a)で破線F2、一点鎖線F3、二点鎖線F4で示した各速度データVdの微分値(加速度データAd)は、それぞれ
図3(c)で破線F2a、一点鎖線F3a、二点鎖線F4aで示すような特性を示すものとなる。
図3(c)の縦軸は、
図3(a)の縦軸のスケールよりも幾分縮小して示してある。
図3(c)において、破線F2aで示される加速度データAdは時間差「1」で破線F2の速度データVdを差分演算することによって得られ、一点鎖線F3aで示される加速度データAdはその5倍の時間差「5」で一点鎖線F3の速度データVdを差分演算することによって得られ、二点鎖線F4aで示される加速度データAdはその10倍の時間差「10」で二点鎖線F4の速度データVdを差分演算することによって得られる。
【0020】
このように、前記ステップ31で行う差分演算の時間差に合わせて前記ステップ33で行う差分演算の時間差を適宜に設定することにより、前記ステップ33で得られる加速度データAdのダイナミックレンジを更に拡大するように調整することができる。従って、検出対象の微小変位(あるいはステップ30の計測値(原初的位置検出データ)が示す微小変位)を大きなダイナミックレンジの加速度データAdとして検出することができ、かつ、検出装置の構造そのものが小型化に適している(1つのコイル11を自励発振回路13に組み込んだ簡素な構造)ので、微小変位に基づく加速度検出に適したあるいは小型化に適した位置(加速度)検出装置を提供することができる。
【0021】
図4に示されるように、更にステップ34を設け、前記ステップ33で求めた加速度データAdを積分することにより速度データVd’を算出するようにしてもよい。これにより、前記ステップ31で求めた速度データVdよりもダイナミックレンジ(スケール)の大きな速度データVd’をステップ34で算出することができる。一例として、
図3(d)に示す二点鎖線F4aiは、
図3(b)に示す二点鎖線F4aの加速度データAdを積分することにより得られる速度データVd’を示す。
図3(d)の縦軸は、
図3(c)の縦軸のスケールよりも更に縮小して示してある。
【0022】
以上のような基本原理からなる本発明に係る位置検出装置は、位置検出、速度検出、加速度検出は勿論のこと、その他の種々の用途に応用することができる。
【0023】
図5は、本発明に係る位置検出装置を振動センサ(又は衝撃センサ)に応用した一例を示し、(a)は、振動センサ(又は衝撃センサ)としての前記コイル11と磁気応答部材12の組み合わせの一例を示す斜視図である。
図5(a)の例においては、フラットコイルからなるコイル11が固定部15に固定され、磁性材質又は非磁性かつ導電材質からなる板バネ状の可動部16が磁気応答部材12として機能する。検出対象である機械的振動(変位)に応じて板バネ状の可動部16が振動(変位)し、コイル11と該可動部16とのギャップが変化することにより、該機械的振動(変位)に応じたインダクタンス変化がコイル11に生じる。この場合、例えば、前記演算部14で得た位置データLdを振動検出信号として適宜の振動判定回路(図示せず)に供給し、該振動判定回路において該振動検出信号が所定閾値より大きいと判定したとき、該所定閾値以上の振動又は衝撃が生じことを検出するように構成するとよい。あるいは、前記演算部14で得た速度データVd、加速度データAd又は速度データVd’を適宜の判定回路(図示せず)に供給し、該判定回路において該データが所定閾値より大きいと判定したとき、該所定閾値以上の振動又は衝撃が生じことを検出するように構成してもよい。
【0024】
図5(b)は、振動センサ(又は衝撃センサ)としての前記コイル11と磁気応答部材12の組み合わせの別の一例を示す側面図である。
図5(b)の例においては、フラットコイルからなるコイル11が固定部15に固定され、フラットコイルの一面に対向して磁性材質からなる板バネ状の第1可動部17が配置され、該フラットコイルの他面に対向して非磁性かつ導電材質からなる板バネ状の第2可動部18が配置され、両可動部17及び18が磁気応答部材12として機能する。この場合も、検出対象である機械的振動(変位)に応じて板バネ状の第1及び第2可動部17、18が振動(変位)し、コイル11と該第1及び第2可動部17、18とのギャップが変化することにより、該機械的振動(変位)に応じたインダクタンス変化がコイル11に生じる。なお、この構成においては、検出対象である機械的振動(変位)に応じて一方の磁性可動部17がコイル11に近づくとき他方の非磁性可動部18がコイル11から遠ざかる、というようにプッシュプルで変位することにより、コイル11に生じるインダクタンスが相加的に変化し、検出精度が向上する。振動又は衝撃の判定の仕方は、上述と同様に行うようにしてよい。
【0025】
図6は、本発明に係る位置検出装置を傾斜センサに応用した一例を示す正面略図である。この例においては、フラットコイルからなるコイル11が固定部21に固定され、磁性材質又は非磁性かつ導電材質からなる揺動部20が前記磁気応答部材12として機能する。揺動部20は、枢動軸20aの回りで揺動可能に取り付けられている。検出対象の傾きに応じて揺動部20がコイル11に対して変位し、これに応じた位置データLdが前記演算部14から得られる。この場合、得られた位置データLdに基づき検出対象の傾斜量を示す情報を生成するようにしてもよいし、あるいは得られた位置データLdを適宜の判定回路(図示せず)に供給し、該判定回路において該位置データLdが所定閾値より大きいと判定したとき、該所定閾値以上の傾斜が生じことを検出するように構成してもよい。
【0026】
図7は、本発明に係る位置検出装置を2次元センサに応用した一例を示す平面略図である。この例においては、フラットコイルからなる複数のコイル11−1,11−2.11−3,・・・が固定面22上に2次元的に配置され、磁性材質又は非磁性かつ導電材質からなる磁気応答部材12が固定面22上に配置されたコイル11−1,11−2.11−3,・・・に対して非接触的に近接配置され、磁気応答部材12が該コイル11−1,11−2.11−3,・・・に対して2次元的に変位する。各コイル11−1,11−2.11−3,・・・毎に前記自励発振回路13と前記演算部14が設けられ、各コイル11−1,11−2.11−3,・・・のインダクタンスに応じた位置データLdがそれぞれに対応する前記演算部14から得られる。これら各演算部14から得られるコイル毎の位置データLdの組合せによって、検出対象の2次元位置が特定される。なお、各コイル11−1,11−2.11−3,・・・毎に前記自励発振回路13と前記演算部14を設けることなく、1つの自励発振回路13内に複数のコイル11−1,11−2.11−3,・・・を組み込み、かつコイル切り替え回路を付加して設け、該コイル切り替え回路によって該自励発振回路13において使用するコイルをいずれか1つに時分割的に選択接続するように構成してもよい。その場合、演算部14も、自励発振回路13におけるコイルの時分割的選択に同期して複数チャンネル(各コイル11−1,11−2.11−3,・・・毎のチャンネル)で時分割動作するように構成すればよい。
【0027】
図8は、本発明に係る位置検出装置を適用した別の2次元センサの略図である。この場合、磁気応答部材12は円筒状の可動部材として構成され、その周囲において複数のコイル11−1,11−2.11−3,・・・が固定的に配置される。円筒状の磁気応答部材12の軸線に垂直な面に沿う2次元的変位に応じて、各コイル11−1,11−2.11−3,・・・のインダクタンスが変化する。上述と同様に、各コイル11−1,11−2.11−3,・・・毎に前記自励発振回路13と前記演算部14が設けられ(又はコイル切り替え回路を付加して1つの自励発振回路13と前記演算部14を複数チャンネルで時分割的に使用し)、各コイル11−1,11−2.11−3,・・・のインダクタンスに応じた位置データLdがそれぞれに対応する前記演算部14から得られる。これら各演算部14から得られるコイル毎の位置データLdの組合せによって、検出対象の2次元位置が特定される。
【0028】
図9は、本発明に係る位置検出装置を圧力センサに応用した一例を示す側面略図である。この例においては、フラットコイルからなるコイル11に対して、ダイヤフラム状の磁気応答部材12が非接触的に近接配置され、コイル11に対する磁気応答部材12の距離が検出対象圧力に応じて変化するように構成される。従って、検出対象圧力に応じてコイル11のインダクタンスが変化し、演算部14から得られる位置データLdによって、検出対象圧力が特定される。なお、
図9において、破線は磁気応答部材12の変位を例示している。同様の構造により、歪みセンサあるいは荷重センサを構成することもできる。
【0029】
図10は、本発明に係る位置検出装置をリニアセンサに応用した一例を示す略図である。円筒状のコイル11の内部空間でロッド状の磁気応答部材12が直線変位し得るように構成され、該磁気応答部材12の直線位置に応じてコイル11のインダクタンスが変化する。従って、演算部14から得られる位置データLdによって、検出対象の直線位置が特定される。リニアセンサに限らず、本発明に係る位置検出装置を回転センサに適用することができるのは勿論である。
【0030】
図11は、本発明に係る位置検出装置をトルクセンサに応用した一例を示し、(a)はトルクセンサの側断面図であり、図示の便宜上、センサ部10の半分は省略して示している。この実施形態に係るトルクセンサは、自動車のステアリングシャフトのトーションバーTに負荷されるねじれトルクを検出する。公知のように、ステアリングシャフトにおいては入力軸1と出力軸2の各磁性シャフト(例えば鉄などの磁性部材からなる)がトーションバーTを介して同軸的に連結されており、これら入力軸1及び出力軸2はトーションバーTによるねじれ変形の許す限りの限られた角度範囲で相対的に回転しうるようになっている。入力軸1に連結された第1の磁気応答部材3及び出力軸2に連結された第2の磁気応答部材4が前記磁気応答部材12として機能する。この実施例では、一方の磁気応答部材3が磁性体(例えば鉄)からなり、他方の磁気応答部材4が反磁性材質(例えばアルミニウム)からなる。
【0031】
図11(b)は、各磁気応答部材3,4の分解斜視図である。各磁気応答部材3,4はそれぞれ円周方向に複数の窓パターンを備えた面板の形状(円板状、詳しくはリング円板状)をなしており、ぞれぞれの面板が密接に近接して前記窓パターンが対向するように配置されている。トルクセンサでは公知のように、窓パターンとは、パターン化された窓を意味し、窓とは、各磁気応答部材3,4の持つ前記所定の磁気応答性能が失われる(若しくは変化する)部分である。本実施例では、この窓パターンは、内周寄りの開口窓3a,4aのパターンと、外周寄りの開口窓3b,4bのパターンの、2系列のパターンからなっている。公知のように、2つの磁気応答部材3,4の窓の重なりの変化が磁性的なシャッターの役割を果たす。
【0032】
図11(a)において、センサ基板部20は、面板状の第1及び第2の磁気応答部材3、4と同様に、全体的に円板状(詳しくはリング状)を成しており、入力軸1及び出力軸2からなる軸部分に嵌挿され、第1及び第2の磁気応答部材3、4に近接した配置で、ベース部5に固定されている。出力軸2は軸受6を介して回転自在にベース部5に固定されている。センサ基板部20においては、
図11(c)に示すように、内周寄りのフラットコイル11aと外周寄りのフラットコイル11bの2つのコイルが設けられる。これらのフラットコイル11a,11bが前記コイル11としてそれぞれ機能する。内周寄りのフラットコイル11aは内周寄りの開口窓3a,4aのパターンに対応し、外周寄りのフラットコイル11bは、外周寄りの開口窓3b,4bのパターンに対応するように設けられる。
【0033】
公知のように、各系列における開口窓3a,4a,3b,4bの重なり具合の変化は互いに逆特性となるように、開口窓の配置を適切にずらして設定している。例えば、第2の磁気応答部材4においては、開口窓4aの系列(第1の系列)と、開口窓4bの系列(第2の系列)とは、開口窓の繰り返しサイクルに関して、丁度の1/2サイクルの位相ずれを持つように開口窓を形成(配置)する。その場合、第1の磁気応答部材3においては、開口窓3aの系列(第1の系列)と、開口窓3bの系列(第2の系列)とは、開口窓の繰り返しサイクルに関して、丁度、同相となるように開口窓列を形成(配置)する。また、トーションバーTのねじれ角が0の状態において、第1の列における開口窓3a,4aの重なり具合は丁度半分となり、第2の系列における開口窓3b,4bの重なり具合も丁度半分となるように、各開口窓列を形成(配置)する。ねじれ角が0の状態から、時計方向にねじれ角が生じると、例えば、第1の系列における開口窓3a,4aの重なり具合が減少してそれに対応する第1のコイル11aのインダクタンスが増加するのに対して、第2の系列における開口窓3b,4bの重なり具合が増加してそれに対応する第2のコイル11bのインダクタンスが減少する。また、ねじれ角が0の状態から、反時計方向にねじれ角が生じると、第1の系列における開口窓3a,4aの重なり具合が増加してそれに対応する第1のコイル11aのインダクタンスが減少するのに対して、第2の系列における開口窓3b,4bの重なり具合が減少してそれに対応する第2のコイル11bのインダクタンスが増加する。
【0034】
このように、トルクセンサのセンサ部10においては、入出力軸(第1及び第2の回転軸)1,2の相対的回転位置(ねじれ角)に応答して互いに逆特性のインダクタンス変化を該第1及び第2のコイル11a,11bに生じさせるように、第1及び第2の磁気応答部材3,4を構成しかつ該第1及び第2のコイル11a,11bを配置している。そして、本発明の適用にあたっては、第1の系列をなす開口窓3a,4aに関連する磁気応答部材3,4の部分と第1のコイル11aとの組合せが、
図1に示す磁気応答部材12とコイル11からなる1つの組合せに相当し、この1つの組合せに対応して、前記自励発振回路13と演算部14が設けられる。また、第2の系列をなす開口窓3b,4bに関連する磁気応答部材3,4の部分と第2のコイル11bとの組合せが、
図1に示す磁気応答部材12とコイル11からなるもう1つの組合せに相当し、このもう1つの組合せに対応して、前記自励発振回路13と演算部14が設けられる。各系列の演算部14から得られる位置データLdが、それぞれの系列のトルク検出データである。すなわち、トルクセンサに対する応用にあたっては、
図1に示すコイル11、磁気応答部材12、自励発振回路13、演算部14からなる位置検出装置が2系列設けられることとなり、互いに逆特性の2つの位置データLdが両系列から得られ、2系列のトルク検出データとして出力される。
【0035】
なお、
図11の例では、入力軸1に設けた磁気応答部材3と出力軸2に設けた磁気応答部材4とがスラスト方向に対向する(開口窓がスラスト方向に重なる)ように配置されているが、これに限らず、入力軸1及び出力軸2に設ける磁気応答部材をそれぞれ円筒形に形成して、両者の開口窓がラジアル方向に重なるように配置したトルクセンサにおいても本発明の位置検出装置を適用することができるのは勿論である。
【0036】
なお、演算部14の機能は、マイクロコンピュータと各ステップの処理を実現するためのソフトウェアプログラムを記憶したメモリとの組み合わせで実現することができるが、それに限らず、カスタムICなど専用のデジタル回路で実現してもよい。