特許第6931652号(P6931652)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6931652
(24)【登録日】2021年8月18日
(45)【発行日】2021年9月8日
(54)【発明の名称】フルオロポリマーの積層プロセス
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/00 20060101AFI20210826BHJP
   C08L 27/18 20060101ALI20210826BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20210826BHJP
   B29C 64/118 20170101ALI20210826BHJP
   B29C 64/314 20170101ALI20210826BHJP
【FI】
   C08J5/00CEW
   C08L27/18
   B29C64/153
   B29C64/118
   B29C64/314
【請求項の数】26
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2018-538174(P2018-538174)
(86)(22)【出願日】2017年1月19日
(65)【公表番号】特表2019-510094(P2019-510094A)
(43)【公表日】2019年4月11日
(86)【国際出願番号】US2017014181
(87)【国際公開番号】WO2017127572
(87)【国際公開日】20170727
【審査請求日】2020年1月17日
(31)【優先権主張番号】62/281,349
(32)【優先日】2016年1月21日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/385,439
(32)【優先日】2016年9月9日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/408,504
(32)【優先日】2016年10月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】シュアン チアン
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー エヌ.バートウ
(72)【発明者】
【氏名】カーステン フランケ
(72)【発明者】
【氏名】フェー ツェンティス
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ヒンツァー
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエーレ ハー.ゴットシャルク−ガウディヒ
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン エフ.ツェーントマイアー
【審査官】 大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−262693(JP,A)
【文献】 特開2007−277546(JP,A)
【文献】 特表2003−524663(JP,A)
【文献】 特開2002−337167(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/133912(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0125334(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第103762093(CN,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0218296(US,A1)
【文献】 国際公開第2015/199244(WO,A1)
【文献】 特表2006−521264(JP,A)
【文献】 特表2007−502713(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/145844(WO,A1)
【文献】 特表2017−523063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00−5/02;5/12−5/22
B29C 64/00−64/40
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロポリマー物品の製造方法であって、フルオロポリマー粒子及びバインダ材料を含む組成物を、少なくとも1つのエネルギー源を含む積層プロセスデバイス内にて積層プロセスに供すること、を含み、
前記フルオロポリマーが、前記フルオロポリマーの総重量を基準として1重量%以下のペルフッ素化コモノマーを含有し得るテトラフルオロエチレンのホモポリマーであるか、又はテトラフルオロエチレンと1種以上のペルフッ素化、部分フッ素化又は非フッ素化コモノマーのコポリマーであって、前記テトラフルオロエチレンの含有量が70重量%以上 99重量%未満であるコポリマーであり、
前記バインダ材料は、前記フルオロポリマー粒子を結合させて前記積層プロセスデバイスの前記エネルギー源に暴露された前記組成物の一部において層を形成可能であり、
前記積層プロセスデバイス内にて積層プロセスに供することが、
(a)前記組成物を規定領域に堆積させること、及び
(b)前記組成物の一部を前記エネルギー源に暴露すること
を含み、前記バインダ材料が前記エネルギー源に暴露された際に溶融又は液化し、前記フルオロポリマー粒子を結合又は封入して層を形成する、方法。
【請求項2】
前記組成物を規定領域に堆積させることが、
(i)前記フルオロポリマー粒子及び前記バインダ材料並びに任意の他の成分を含む組 成物を含む、押出可能な組成物を提供すること、及び
(ii)前記規定領域に前記押出可能な組成物を押出すこと
を含み、前記バインダ材料が、前記デバイスのエネルギー源によって溶融又は液化されており、前記フルオロポリマー粒子を結合させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(ii)を繰り返して複数の層を形成し物品を作製することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記組成物を規定領域に堆積させることが、
(i)前記フルオロポリマー粒子、前記バインダ材料の粒子、及び任意の他の成分を含 む固体組成物を提供すること、及び
(ii)前記固体組成物を堆積させること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
(b)前記組成物の一部をエネルギー源に暴露すること、及び工程(ii)前記固体組成物を堆積させることを連続的に繰り返して、複数の層を形成し、物品を作製することをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物の一部をエネルギー源に暴露することが、
(iii)(c)前記積層プロセスデバイスのエネルギー源からのエネルギーを前記組成物の選択した位置に向け、前記バインダ材料を溶融又は液化させ、前記フルオロポリマー粒子を前記選択した位置で結合させること、又は(d)前記組成物の選択した位置を前記エ ネルギー源に向け、前記バインダ材料を溶融又は液化させ、前記フルオロポリマー粒子を結合させること、又は(c)及び(d)の組み合わせのいずれかにより、前記バインダ材料を溶融又は液化させて前記フルオロポリマー粒子を結合すること、並びに
(iv)(e)エネルギー源を前記組成物から離すように向けること、もしくは(f)前記組成物をエネルギー源から離すように向けることのいずれかにより、前記バインダ材料が選択していない位置において前記フルオロポリマー粒子を結合させることを防ぐこと、又は(e)及び(f)の組み合わせ
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
熱処理を適用することで、前記バインダを除去すること、を更に含む、請求項1に記
の方法。
【請求項8】
第2の熱処理を適用して前記フルオロポリマーを焼結することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記フルオロポリマーが、1重量%以下のペルフッ素化コモノマーを含有し得る、テトラフルオロエチレンのホモポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記フルオロポリマーが、372℃で、5kgの荷重を使用して、0.1g/10分未満のメルトフローインデックスを有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記フルオロポリマーが、テトラフルオロエチレンと1種以上のコモノマーとのコポリマーであり、前記テトラフルオロエチレンの含有量は、70重量%以上99重量%未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記フルオロポリマーが、260℃〜315℃の間の融点を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記フルオロポリマーが、372℃及び5kgの荷重で1〜50g/10分のMFIを有する、請求項11に記載の方法
【請求項14】
前記コモノマーが、エチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、次の一般式
CF=CFO(Rf1O)(Rf2O)Rf
[式中、Rf1及びRf2は、2〜6個の炭素原子の、異なる直鎖状又は分岐状ペルフルオロアルキレン基であり、m及びnは、独立して、0〜10であり、Rfは、1〜6個の炭素原子のペルフルオロアルキル基である。]のペルフルオロエーテルから選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記フルオロポリマーが、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン及び任意にペルフルオロビニルエーテルのコポリマー;テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン及びフッ化ビニリデンのコポリマー;テトラフルオロエチレン及びペルフルオロアルキルビニルエーテル又はペルフルオロアルキルアリルエーテルのコポリマー;テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン及びエチレンのコポリマー;及びテトラフルオロエチレン及びエチレンのコポリマー、並びにこれらの組み合わせから選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記バインダ材料が、炭素−炭素結合及び炭素−水素結合を有する有機材料であり、40℃〜140℃の間で溶融する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記バインダ材料が、1〜150μm(数平均、D50)の粒子径を有する固体微粒子である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記組成物は粒子の固体組成物である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記組成物が押出可能な組成物である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記組成物が、前記組成物の総重量を100重量%として、
20〜95重量%前記フルオロポリマー粒子、
5〜70重量%の前記バインダ材料、
0〜50重量%の前記フィラー、
0〜15重量%の他の任意による成分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記組成物が、70〜90重量%の前記フルオロポリマー粒子、及び5〜20重量%の前記バインダ材料を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
積層プロセスデバイス内での積層プロセスによって物品を製造するための組成物であって、フルオロポリマー粒子、任意に1種以上のフィラー、及びバインダ材料を含み、前記フルオロポリマーが、前記フルオロポリマーの総重量を基準として1重量%以下のペルフッ素化コモノマーを含有し得るテトラフルオロエチレンのホモポリマーであるか、又はテトラフルオロエチレンのコポリマーであって、前記テトラフルオロエチレンの含有量が70重量%以上99重量%未満であるコポリマーであり、前記バインダ材料は、炭素−炭素結合及び炭素−水素結合を有する有機材料を含み、40℃〜140℃の間で溶融前記バインダ材料が1〜150μm(数平均、D50)の粒子径を有する固体微粒子材料であり、前記組成物は粒子の固体組成物である、組成物。
【請求項23】
前記フルオロポリマー粒子が、1〜150μm(数平均、D50)の粒子径を有する、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記組成物の総重量を100重量%として、
20〜95重量%の前記フルオロポリマー粒子、
5〜70重量%の前記バインダ材料、
0〜50重量%の前記フィラー、
0〜15重量%の他の任意による成分を含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項25】
請求項1に記載の方法によって得られた、3D印刷されたフルオロポリマー。
【請求項26】
請求項22に記載の3D印刷されたフルオロポリマーを含む物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フルオロポリマーの積層プロセス、積層プロセスによって得られたフルオロポリマー物品及び積層プロセスに有用なフルオロポリマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオロポリマーは、その化学的不活性のため、特に低摩擦性及び/又は化学反応、熱又はその両方への不活性を必要とする物品の原料として広く使用されている。
【0003】
フルオロポリマーは、典型的にはサーモプラスチック及びエラストマー(場合によってはフルオロゴムと称される)に分類される。
【0004】
フルオロサーモプラスチックは、射出成形及び押出等の従来の溶融成形法によって加工することができる。フルオロサーモプラスチックは、典型的には、テトラフルオロエチレン(TFE)の、1種以上の他のペルフッ素化、部分フッ素化又は非フッ素化コモノマーとのコポリマーである。TFEの、ペルフッ素化アルキル又はアリルエーテルとのコポリマーは、当該技術分野では、PFA(ペルフッ素化アルコキシポリマー)として知られている。他のペルフッ素化コモノマーを有するか、又は有しない、TFEのヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのコポリマーは、当該技術分野では、FEP(フッ素化エチレンプロピレン)として知られている。TFE、HFP及びフッ化ビニリデン(VDF)のコポリマーは、当該技術分野では、THVとして知られている。他のタイプの溶融加工性フルオロポリマーは、PVDFとして当該技術分野において知られている、フッ化ビニリデンのホモ又はコポリマーをベースとする。TFEの、エチレンとのコポリマーは、ETFEとして知られている。
【0005】
特定のタイプのサーモプラスチックは、非常に高い溶融粘度(低メルトフローインデックス(MFI)を有し、当該技術分野において、「非溶融加工性」と称される。非溶融加工性フルオロポリマーとしては、TFEのホモポリマー、又はTFEの、他の共重合可能なペルフッ素化モノマーとのコポリマーが挙げられる。コモノマーの量は1重量%未満に限定される。このようなTFEホモポリマー及びコポリマーは、当該技術分野においてPTFEと称される。PTFEは、押出、射出成形又はブロー成形等の従来の溶融加工技術では加工できない高い溶融粘度を有する。むしろ、PTFE物品は、典型的にはペースト押出又は焼結によりブロック又はビレットを生成し、次いで物品に形成することにより、製造される。例えば、スカイビング、旋削、機械加工(すなわち、材料を除去し、物品を形成する除去方法(substractive methods))による。
【0006】
国際公開第2007/133912(A2)号では、特殊な熱可塑性フルオロポリマー(PVDF及びPCTF)のための積層造形プロセスが記載されているが、実施例は提示されていない。中国特許公開第103709737(A)号、同第105711104(A)号では、3D印刷のための方法が記載されており、そこではPTFEの使用が言及されている。材料は、ポリマー粉末に赤外光又はレーザを照射し、赤外光又はレーザ照射に暴露された選択領域内の粉末を溶融させることによって加工される。これらの方法は、レーザ溶融又はレーザ焼結として3D印刷の技術分野において既知である。米国特許第7,569,273(B2)号では、異なる方法が記載され、PVDFに適していることが報告されている。こちらも、実施例は提示されていない。米国特許第7,569,273(B2)号に記載の方法は、流体を、ノズルを介してポリマー及び接着性微粒子材料を含む固体組成物に添加すること、を含む。関節材料(articulate material)は、流体と接触すると接着性となり、選択領域に流体が分配されることによって、物品が製造されると報告されている。
【0007】
フルオロポリマーを積層プロセスによって加工するための、代替方法を提供する必要があり、特に、非溶融加工性のタイプのフルオロポリマーを加工する必要がある。
【発明の概要】
【0008】
一態様では、フルオロポリマー物品の製造方法が提供される。該方法は、フルオロポリマー粒子及びバインダ材料を含む組成物を、少なくとも1つのエネルギー源を含む積層プロセスデバイス内にて積層プロセスに供すること、を含む。フルオロポリマーは、テトラフルオロエチレン(TFE)のホモポリマー又はコポリマーであり、バインダ材料は、フルオロポリマー粒子を結合させ、積層プロセスデバイスのエネルギー源に暴露された組成物の一部において層を形成可能である。該方法は、組成物の一部をエネルギー源に暴露して、層を形成すること、を更に含む。
【0009】
他の態様では、積層プロセスデバイス内での積層プロセスによって、物品を製造するための組成物であって、フルオロポリマー粒子、任意に1種以上のフィラー、及びバインダ材料を含む組成物が提供される。フルオロポリマーは、テトラフルオロエチレン(TFE)のホモポリマー又はコポリマーであり、バインダ材料は、炭素−炭素結合及び炭素−水素結合を有する有機材料を含み、40℃〜140℃の間で溶融する。
【0010】
更なる態様では、上記方法により得られる、3D印刷されたフルオロポリマーが提供される。
【0011】
更に別の態様では、上記方法によって得られる、3D印刷されたフルオロポリマーを含む物品が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本出願人らは、従来の方法では、複雑なデザインを有するフルオロポリマー物品を、作製することが困難であることを認めた。余分なフルオロポリマーを除去して物品を成形する方法(例えば、スカイビング又はダイカット)は、高価なフルオロポリマー材料を無駄にする。射出成形により製造された物品は無駄が少ないが、型の構成は高価であり、時間がかかることがある。従って、従来の方法による、最適化された物品のデザインを特定するための迅速な試作は、経済的に非実用的になり得る。
【0013】
従って、フルオロポリマー物品を製造するための、代替的な製造方法を提供する必要がある。
【0014】
本開示の任意の実施形態を詳細に説明するのに先立ち、本開示はその用途において以下の説明に示される構造の詳細及び構成部品の配置に限定されるものではないということが理解されるべきである。また、本明細書において使用される語法及び専門用語は説明を目的としたものであることを理解されたい。「からなる」の使用とは対照的に、「含む」、「含有する」、「備える」、又は「有する」及びその変化形の使用は、これらの語の後に列挙される要素及びその均等物に加えて更なる要素を包含することを意味する。「1つの(a)」又は「1つの(an)」の使用は、「1つ以上の」を包括することを意味する。本明細書において記載される数値範囲はいずれも、その範囲の下限値から上限値までの全ての値を含むことを意図する。例えば、1%〜50%の濃度範囲は略記であり、例えば2%、40%、10%、30%、1.5%、3.9%等の1%〜50%の間の値を明確に開示することを意図する。
【0015】
本明細書において、引用された全ての参考文献は、他に記載がない場合は、参考として組み込まれる。
【0016】
ASTM又は本明細書で参照する他の科学的規格は、年が特定されていない場合は、最先の優先日の出願の出願時に有効であったものである。最先の優先日の出願の際に、ASTM又はその他の規格がもはや有効ではなかった場合は、(than)直近に有効であったバージョンを参照する。
【0017】
本出願人らは、積層プロセスによってフルオロポリマー物品を調製することができることを、発見した。フルオロポリマーは、積層プロセスに好適な組成物として提供された後、典型的には、積層プロセスデバイスにおいて、積層プロセスによって三次元物品に加工され得る。様々な既知の積層プロセス技術を使用してもよく、様々な既知の積層プロセスデバイス又は3Dプリンタを使用してもよい。このような3D印刷可能な組成物は、フルオロポリマー及び追加材料を含む。追加材料は、該材料がエネルギー源、典型的には、積層プロセスデバイスのエネルギー源に暴露されたときに溶融又は液化によって、フルオロポリマー粒子を結合させ、体素又は層にすることができる。本明細書で使用するとき、「液化」は、材料がその粘度を大幅に低下させ、流動性になることを意味する。溶融又は液化した材料は、フルオロポリマー粒子を埋設又は封入してよく、及び/又はフルオロポリマー粒子を結合することにより、選択した位置に維持すると考えられている。従って、このような1種以上の追加材料もまた、「バインダ材料」として本明細書で言及する。
【0018】
フルオロポリマー含有層を順次作製して、三次元物体を形成してもよい。積層プロセスデバイス内で物品を作製した後、典型的には分解又は燃焼を含み得る熱処理によって、追加材料を除去することができる。この工程の後に、例えば、物品の焼結を含み得る、他の仕上げ工程(work−up steps)が続いてもよい。
【0019】
本明細書で提供される方法の利点は、フルオロポリマー物品のプロトタイプを低コストで製造することができるだけでなく、従来のフルオロポリマープロセスでは入手できない、又は高コストでのみ入手できる、複雑な形状及びデザインのフルオロポリマー物品を作製できることである。
【0020】
本明細書で提供される方法ではまた、未反応の3D印刷可能な組成物を次の3D印刷の実行で再使用することができるので、無駄が少ない。
【0021】
積層プロセス
「3D印刷」又は「積層造形(AM)」としても知られる積層プロセスは、規定領域に材料を順次堆積させる又は形成することによって、典型的には材料の連続層を生成することによって、三次元物体を生成するプロセスを指す。物体は、典型的には3Dモデル又は他の電子データ源から、コンピュータ制御下で、典型的には3Dプリンタと称される積層印刷デバイスによって、製造される。用語「3Dプリンタ」及び「積層プロセスデバイス」は、本明細書では交換可能に使用され、一般に、積層プロセスを行うことができるデバイスを指す。用語「3D印刷」及び「3D印刷可能」は同様に使用され、積層プロセスを意味し、及び積層プロセスに好適であることを意味する。
【0022】
積層プロセスデバイスは、典型的には層等の体素の堆積又は作製によって、規定領域に材料を順次堆積又は堆積させることができるデバイスである。層上に順次層が構築され、三次元物体が作製される。
【0023】
典型的には、積層プロセスデバイスは、コンピュータ制御され、作製すべき物体の電子画像に基づいて所望の物体を作製する。3Dプリンタは、3D印刷可能な組成物内の局所領域にエネルギーを印加する、エネルギー源を含む。印加されるエネルギーは、例えば、熱若しくは放射線、又はその両方であってよい。エネルギー源は、光源、レーザ、電子ビーム発生器、発熱体及び3D印刷可能な組成物の規定領域にエネルギーを集束させることができる他のソース(sourcing)、を含むことができる。エネルギー源は、典型的にはコンピュータ制御の下で、3D印刷可能な組成物の表面上で規定領域まで移動してもよい。
【0024】
積層プロセスデバイスは、典型的には、プラットフォームであって、該プラットフォームの上に形成される層間の距離だけ、3D印刷可能な組成物内まで、又は内部から外部まで移動することができるプラットフォームもまた含む。典型的には、これもまた、コンピュータ制御下で行われる。デバイスは、連続的に層を構築するために、形成された層の上に新たな印刷可能な材料を適用することができる、ワイパーブレード又は注入ノズル等のデバイスを更に含むことができる。作製すべき物体が、複雑である、又は作製中に構造支持体を必要とする場合は、支持構造体を使用して、後で除去してもよい。
【0025】
積層プロセス技術は既知である。物体は、使用する積層プロセスの方法及びデバイスに応じて、液体の3D印刷可能な組成物又は固体の3D印刷可能な組成物から作製することができる。
【0026】
本開示の一実施形態では、層は固体組成物から作製されたものである。3D印刷可能な組成物は、典型的には、粒子の形態、例えば粉末の形態で、又はフィラメント堆積プロセスの場合は、押出物、例えば押出されたフィラメントの形態で提供される。フルオロポリマー及びバインダ材料は、粒子として存在してもよく、フルオロポリマー粒子がバインダ材料でコーティングされていてもよい。フルオロポリマー粒子は、典型的には熱源であるエネルギー源を使用して、バインダ材料を溶融(又は液化)させることによって選択的に融合(fused)される。バインダ材料の溶融温度に応じて、高温又は低温熱源を使用することができる。選択的層焼結(SLS)又は選択的層溶融(SLM)の場合には、レーザを使用してもよく、電子ビーム溶融(EBM)の場合には、電子ビームを使用してもよい。溶融又は液化により体素を形成するのに、より低温で十分な場合は、加熱されたワイヤ及びサーマルプリントヘッドを使用してもよい(「サーマル印刷」とも称される)。典型的には、フルオロポリマーの分解又は溶融を回避すべきであり、エネルギー源は、そのように選択すべきである。プロセスは、粉末粒子間のバインダ材料による融合を引き起こすための1つ以上の熱源、各層の所定の領域への粉末の融合を制御するための方法、及び粉末層を積層及び平滑化するか、又は粉末層を除去する機構を、含むことができる。融合機構としては、接着に基づく機構、又は例えば、封入により物理的な境界を設ける機構、又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
開示されている方法のいくつかは、粒子を融合し、所望の三次元形状の塊にするためにエネルギー源を使用する。集束型エネルギー源は、粉末床の表面上の一部(例えばCADファイル又はスキャンデータからの)の、3Dデジタル記述から生成された断面を走査することによって、粉末材料を選択的に融合させる。各断面を走査した後、1層分の厚さだけ粉末床を下降(又は3Dプリンタの設計によっては上昇)させ、上部に新たな材料層を適用し、その部分が完成するまで本プロセスを繰り返す。選択的レーザ焼結(SLS)又は溶融(SLM)においては、典型的にはパルスレーザが使用され、EBMにおいては電子ビームが使用される。3Dサーマル印刷では、加熱ワイヤ若しくはサーマルプリントヘッド又は他の熱源を使用してもよい。熱は、例えば、電気若しくは照射又は他の温度上昇を生じさせる適切な手段によって発生させることができる。本開示のプロセスでは、バインダ材料は、エネルギー源に暴露された際に、溶融若しくは液化し、フルオロポリマー粒子をと結合又は融合させ、体素にする。
【0028】
プロセスデバイスは、粉末床内のバルク粉末材料を、その融点を幾分か下回る温度まで予熱することができ、エネルギー源が選択された領域の温度を融点まで上昇させる残りの過程を、容易にし得る。上記方法は、本明細書においては、粒子の結合をもたらすのに、レーザを使用する場合はレーザ溶融と称し、又はレーザとは異なる別の熱源が粒子の結合をもたらす場合は、サーマル印刷と称する。
【0029】
これらの方法によって物品を製造する、積層造形方法は、典型的には、以下の工程を含み得る。すなわち、
(i)フルオロポリマー粒子及びバインダ材料及び任意の他の成分を含む、3D印刷可能なフルオロポリマー組成物を含む、組成物を提供すること、
(ii)(a)積層造形デバイスのエネルギー源からのエネルギーを3D印刷可能な組成物の選択した位置に向け、バインダ材料を溶融又は液化させ、フルオロポリマー粒子を選択した位置で結合させること、又は(b)3D印刷可能な組成物の選択した位置をエネルギー源に向け、バインダ材料を溶融又は液化させ、フルオロポリマー粒子を結合させること、又は(a)及び(b)の組み合わせのいずれかによって、バインダを溶融又は液化させ、フルオロポリマー粒子を結合させること、
(iii)(c)エネルギー源を、3D印刷可能な組成物から離すように向けること、又は逆に(d)3D印刷可能な組成物をエネルギー源から離すように向けること、又はその両方のいずれかで、バインダ材料が非選置においてフルオロポリマー粒子を結合させることを、避けること、又は(c)及び(d)の組み合わせ、
(iv)工程(ii)及び(iii)並びに必要に応じてまた工程(i)を繰り返すことで、複数の層を形成し、物品を作製することである。必要に応じて新しい3D印刷可能な組成物を積層してよく、又は未反応の材料を工程(ii)及び/又は(iii)の後で除去してもよい。
【0030】
熱源を上記のとおり選択することができ、3D印刷可能な組成物の成分と適合するように選択される。
【0031】
これらのプロセスのための3D印刷可能な組成物は、典型的には、フルオロポリマー粒子とバインダ材料粒子との固体組成物、若しくはバインダ材料でコーティングされたフルオロポリマー粒子の組成物又はこれらの組み合わせの、好ましくは固体組成物を含む。好ましくは、組成物はサラサラした粉末又はサラサラした微粒子組成物である。組成物はまた、本明細書に記載の他の成分、好ましくは固体成分を含有してもよい。フルオロポリマー、バインダ材料及び他の成分は、本明細書に記載のとおりに使用することができる。
【0032】
指向性エネルギー堆積(DED)プロセスでは、溶融した材料若しくは溶融したバインダ材料を含む材料、又は流動可能若しくは押出可能な材料に変換された材料を、1つ以上の堆積デバイス、例えば、押出ノズルを通して堆積させる。これらの方法では、1つ以上のエネルギー源を使用して、堆積デバイスを介して、3D印刷可能な組成物を加工する。DEDプロセスでは、粉末床内に予め敷設された材料を溶融するのではなく、堆積する際に材料を溶融することによって、一部分を作製することを可能とする。集束型熱源としては、レーザ又は電子ビームを用いることができる。又は、押出によって発生した熱、例えば押出デバイス又は押出デバイスの構成部品がこの目的のために十分であり得る。押出デバイス又はその構成部品を加熱して、押出デバイスに投入する前に、組成物を予熱してもよい。押出層堆積システム(例えば、溶解フィラメント製造(fused filament fabrication)システム及び他の溶融押出積層造形プロセス)において、押出ヘッドを介して3D印刷可能な組成物を押出すことによって、物品が層ごとに製造される。基材(substrate)が押出される、基材に対する押出ヘッドの移動は、物品を表すビルドデータ、例えばCADファイルに従ってコンピュータ制御により実行される。組成物を、押出ヘッドに設けた押出ヘッドのノズルを通して押出し、基板上のxy平面内に線(roads)の配列として堆積させることができる。線は、連続したビーズの形態、又は一連の液滴の形態(例えば、米国特許公開第2013/0081599号に記載)であることができる。押出組成物は、温度が低下して固化する際、先に堆積した組成物と融合する。これにより、三次元物品の第1層の少なくとも一部を、提供することができる。第1層に対する押出ヘッドの位置を変更することにより、追加の列を反復的に構築することができる。この3D印刷方法は、用語「熱溶解積層法(fused deposition modelling)」又は「FDM」の名でも知られている。本明細書で提供される組成物は、FDMで使用することもでき、その場合、例えば押出可能な固体組成物として、又は押出可能なペーストとして、押出可能なように配合される。バインダ材料は、典型的には押出プロセス中に溶融し、組成物は選択した位置に堆積し、そこでは溶融したバインダ材料が固化し得、ひいてはフルオロポリマー粒子を結合させる。
【0033】
これらの堆積方法によって物品を製造する、積層造形方法は、典型体には、以下の工程を含み得る。すなわち、
(i)フルオロポリマー粒子及びバインダ材料及び任意の他の成分を含む、3D印刷可能なフルオロポリマー組成物を含む、押出可能な組成物を提供すること、
(ii)選択した位置に組成物を押出すことであって、バインダ材料が、フルオロポリマー粒子を結合させるため、デバイスのエネルギー源によって溶融又は液化されている、押出すこと、
(iii)工程(ii)及び必要に応じてまた工程(i)を繰り返すことで、複数の層を形成し、物品を作製すること、を含み得る。
【0034】
熱源は上記のとおり選択することができ、バインダ材料及び3D印刷可能な組成物中に存在する他の成分に適合させることができる。典型的には、熱源は、押出機又は押出機の構成部品、又は例えば、押出ヘッドのノズルである。押出機又はその構成部品の少なくともいくつかを加熱してもよい。組成物は、好ましくは加熱された押出ヘッドの押出ノズルを介して押出される。
【0035】
これらのプロセスのための3D印刷可能な組成物は、典型的には、押出し可能な、3D印刷可能な組成物、例えばペースト又は固体押出物(フィラメント又はペレット等)を含む。次いで、3Dプリンタにおいて、フィラメント又はペレットを加熱して再び押出すことができる。
【0036】
押出可能な組成物は、フルオロポリマー粒子及びバインダ材料粒子、若しくはバインダ材料でコーティングされたフルオロポリマー粒子又はこれらの組み合わせを含むことができる。組成物はまた、本明細書に記載の他の成分、好ましくは固体成分を含有してもよい。フルオロポリマー、バインダ材料及び他の成分は、本明細書に記載のとおりに使用することができる。
【0037】
物品のデザインの複雑さに応じて、重力による撓み又は剥離を防止し、任意の機械的塗布デバイスからの側圧に耐えるために、断面を定位置に保持する支持構造体を、昇降プラットフォームに取り付けてもよい。
【0038】
本明細書で提供される方法は、既知である、市販の各積層印刷デバイスにおいて実施することができる。典型的な既知の方法及びその3Dプリンタは、例えば、B.Wendelらによる「Additive Processing of Polymers」(Macromol.Matter.Eng.2008,293,799〜809)に記載されている。市販の3Dプリンタの例としては、BLUEPRINTER(Copenhagen、Denmark)からのサーマルヘッドによる粉末床印刷用の3Dプリンタが挙げられるが、これらに限定されない。フィラメント押出のためのプリンタ(FDM)は、例えば、Stratasys Direct Inc.(Valencia,CA91355)から、例えば、型式Makerbot Replicator2が入手可能である。
【0039】
フルオロポリマー
本開示で使用するフルオロポリマーは、フッ素化又はペルフッ素化オレフィンモノマーから、及び好ましくは、ペルフッ素化オレフィンモノマーから、より好ましくは、排他的に(exclusively of)ペルフッ素化オレフィンモノマーに由来する繰り返し単位を含む。
【0040】
本明細書で提供される積層プロセスの方法で使用するのに好適なフルオロポリマーは、非溶融加工性フルオロポリマーを含む、熱可塑性フルオロポリマー(フルオロサーモプラスチック)である。フルオロポリマーは、例えば米国特許公開第2,434,058号、同第2,965,595号及び欧州特許公開第003063(A2)号、同第0969027号に記載されているように、水性乳化重合により都合よく調製することができる。あるいは、有機溶媒及び液体COのような無機溶媒を含む溶媒重合により、又は懸濁重合によりフルオロポリマーを調製してもよい。懸濁重合は、乳化剤を使用せずに水性媒質中で行うことができる。
【0041】
フルオロサーモプラスチック
好適なフルオロサーモプラスチックとしては、TFEの、1種以上の他のペルフッ素化、部分フッ素化又は非フッ素化コモノマーとのコポリマーが挙げられる。コモノマー含有量は、典型的には1重量%よりも多く、好ましくは2重量%よりも多く、かつ30重量%以下であってよい(上述した、及び後述するように、重量パーセントは、他に記載がない限り、ポリマーの総重量に基づく)。例としては、以下のものが挙げられる。すわわち、FEP(TFE、HFP及び他の任意による量のペルフッ素化ビニルエーテルのコポリマー)、THV(TFE、VDF及びHFPのコポリマー)、PFA(TFE及びペルフルオロアルキルビニルエーテルのコポリマー)、及びTFE及びエチレンのコポリマー(ETFE)が挙げられる。熱可塑性フルオロポリマーは、例えば、「Fluoropolymer,Organic」(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,7thedition,2013,Wiley−VCH Verlag Chemie(Weinheim,Germany))に記載されているように、調製すること、又は得ることが可能である。
【0042】
好ましいフルオロサーモプラスチックには、融点が260〜315℃の間のフルオロポリマーが含まれる。他の好ましいフルオロサーモプラスチックには、メルトフローインデックス(MFI)が372℃、荷重5kg(MFI372/5)で、1〜50g/10分、又は0.1より多く50g/10分までのものが含まれる。
【0043】
一実施形態では、フルオロサーモプラスチックはPFAである。PFAは、TFE、少なくとも1種のペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)、ペルフルオロアルキルアリルエーテル(PAAE)及びこれらの組み合わせのコポリマーであり、追加のペルフッ素化コモノマーを含有していてもいなくてもよい。典型的なコポリマーの量は、1.7重量%〜10重量%の範囲である。好ましくは、PFAは、150℃〜315℃の間、例えば、180〜280℃の間、又は200〜300℃の間の融点を有する。
【0044】
ペルフッ素化ビニルエーテル(PAVE)及びアリルエーテル(PAAE)は、それらのペルフルオロアルキル鎖に酸素原子を有してもよい(このような鎖は、ペルフルオロアルキルエーテル鎖又はペルフルオロアルキルオキシ鎖とも称される)。PAVEの典型例としては、ペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、ペルフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)、及び以下の一般式
CF=CFO(Rf1O)(Rf2O)Rf
[式中、Rf1及びRf2は、2〜6個の炭素原子の、異なる直鎖状又は分岐状ペルフルオロアルキレン基であり、m及びnは、独立して、0〜10であり、Rfは、1〜6個の炭素原子のペルフルオロアルキル基である。]のものが挙げられるが、これらに限定されない。別の部類のペルフルオロ(アルキルビニル)エーテルとしては、次の式
CF=CFO(CFCFXO)Rf
[式中、Xは、F又はCFであり、nは、0〜5であり、Rfは、1〜6個の炭素原子のペルフルオロアルキル基である。]の組成物が挙げられる。別の部類のペルフルオロ(アルキルビニル)エーテルは、nが0又は1であり、Rfが1〜3個の炭素原子を含有するエーテルを、含む。更なるペルフルオロ(アルキルビニル)エーテルモノマーとしては、次の式
CF=CFO[(CFCFCFO)(CFCFCF0)(CF)]CF2x+1
[式中、m及びnは独立に1〜10であり、pは0〜3を示し、xは1〜5を示す。]の化合物が挙げられる。他の例としては、式、CF=CFOCFOR[式中、RはC〜Cの、例えば、欧州特許第1148072号に記載されているような1個以上の懸垂状酸素原子を任意に含有し得る、直鎖状若しくは分岐状又は環式ペルフルオロアルキル基である。]のものが挙げられる。また、アリル類縁体を使用してもよい。すなわち、ポリマーが、ビニル単位CF=CF−O−ではなく、CF=CFCF−O−を有する。
【0045】
ペルフルオロビニルエーテルの特定例としては以下のものが挙げられる。すなわち、
C=CF−O−(CF−OCF3、
C=CF−O−(CF−OCF3、
C=CF−O−(CF−OCF3、
C=CF−O−(CF−(OCF−F、
C=CF−O−CF−(OCF−CF3、
C=CF−O−CF−(OCF−CF3、
C=CF−O−(CFO)−OCF3、
C=CF−O−(CFO)−OCF3、
C=CF−O−(CFO)−OCFである。
【0046】
好適なペルフッ素化アリルエーテルコモノマーの具体例としては次のものが挙げられる。すなわち、
=CF−CF−O−CF
C=CF−CF−O−C
C=CF−CF−O−C
C=CF−CF−O−CF−O−(CF)−F、
C=CF−CF−O−CF−O−(CF−F、
C=CF−CF−O−CF−O−(CF−F、
C=CF−CF−O−CF−O−(CF−F、
C=CF−CF−O−(CF−OCF3、
C=CF−CF−O−(CF−OCF3、
C=CF−CF−O−(CF−OCF3、
C=CF−CF−O−(CF−(OCF−F、
C=CF−CF−O−CF−(OCF−CF3、
C=CF−CF−O−CF−(OCF−CF3、
C=CF−CF−O−(CFO)−OCF3、
C=CF−CF−O−(CFO)−OCF
C=CF−CF−O−(CFO)−OCF3。
【0047】
ペルフッ素化アルキルアリルエーテル(PAAE)の特定例としては、次の一般式
CF=CF−CF−OR
[式中、Rは、直鎖状又は分岐状、環式又は非環式のペルフッ素化アルキル残基を表す。]による不飽和エーテルが挙げられる。Rは、10個以下の炭素原子、例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個の炭素原子を含んでいてもよい。好ましくは、Rは、8個以下の、より好ましくは6個以下の炭素原子及び最も好ましくは3又は4個の炭素原子を含有する。Rは、直鎖状であっても、分岐状であってもよく、環式単位を含んでいても含んでいなくてもよい。Rの具体例としては、ペルフルオロメチル(CF)、ペルフルオロエチル(C)、ペルフルオロプロピル(C)及びペルフルオロブチル(C)、好ましくはC、C又はCが挙げられる。特定の実施形態では、Rは直鎖状であり、C又はCから選択される。
【0048】
上記ビニル及びアリルエーテルの混合物に加えて、ペルフルオロ(アルキルビニル)エーテル及びペルフルオロ(アルコキシビニル)エーテルの混合物もまた、使用されてよい。
【0049】
上記ペルフッ素化アルキルアリルエーテル及びアルキルビニルエーテルは、例えば、Anles Ltd.(St.Peterburg,Russia)から市販されており又は、米国特許第4,349,650号(Krespan)又は国際公開第01/46107号(Wormetalら)又は、Modern Fluoropolymers(J.Scheirs著、Wiley、1997年)及びこれらの文献中の引用文献に記載されている方法又は当業者に既知であるその変更に従って調製することができ、そのいずれかによる。
【0050】
一実施形態では、フルオロポリマーはFEPポリマーであり、TFE、HFP及び1種以上の任意による、好ましくはPAVE及びPAAEから選択されるフッ素化コモノマーに由来する繰り返し単位を含む。好ましくは、FEPは150℃より高い融点を有する。
【0051】
一実施形態では、フルオロポリマーはTHVポリマーであり、TFE、HFP及びVDF並びに1種以上の任意による、好ましくはPAVE及びPAAEから選択されるフッ素化コモノマーに由来する繰り返し単位を含む。好ましくは、THVは150℃より高い融点を有する。
【0052】
一実施形態では、フルオロポリマーはHTEポリマーであり、TFE、HFP、エチレン及び1種以上の任意による、好ましくはPAVE及びPAAEから選択されるフッ素化モノマーの繰り返し単位を含む。
【0053】
一実施形態では、フルオロポリマーはETFEポリマーであり、TFE及びエチレン並びに1種以上の任意によるコモノマーに由来する繰り返し単位を含む。
【0054】
好ましくは、フルオロポリマーは、150℃〜315℃の間、例えば、180〜280℃の間又は200〜300℃の間の融点を有する。
【0055】
フルオロサーモプラスチックは、HFPのような分岐状コモノマーを含有する場合、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。また、ポリマーは、例えば、国際公開第2008/140914(A1)号に記載のように、例えば重合において分岐変性剤(branching modifiers)を使用することによって生成され得る、より長い分岐を含んでいてもよい。
【0056】
非溶融加工性フルオロポリマー
非溶融加工性フルオロポリマーとしては、PTFEが挙げられる。PTFEは、テトラフルオロエチレン(TFE)のホモポリマーであり、1重量%以下のペルフッ素化コモノマーを含んでもよい。コモノマーとしては、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、(PAVE)及びアリルエーテル(PAAE)等の、ペルフッ素化αオレフィンが挙げられる。
【0057】
典型的には、本開示に好適なPTFEは、327±10℃の範囲内にある融点(第1溶融の後)を有する。PTFEは、少なくとも317℃、好ましくは少なくとも319℃及びより好ましくは少なくとも321℃の融点を有する。本開示に好適なPTFEとしては、高分子量PTFE、例えば、372℃で5kgの荷重を使用して(MFI372/5)、0.1g/10分未満のメルトフローインデックス(MFI)を有するものが挙げられる。
【0058】
非溶融加工性PTFEは、ASTM4895に準拠して測定した2.13〜2.23g/cmの間の標準比重(standard specific gravity、SSG)を有する傾向がある。SSGは、PTFEの分子量に対する尺度である。SSGが高いほど分子量が低くなる。一実施形態では、2.17g/cm未満のSSG、例えば、2.14〜2.16の間のSSGを有するPTFEポリマーを意味する、超高分子量PTFEが本開示において使用される。このようなPTFEポリマー及びその調製は、例えば国際公開第2011/139807号において記載されている。
【0059】
PTFEは、例えば米国特許第2,434,058号、同第2,965,595号及び欧州特許公開第003063(A2)号、同第0969027号に記載されているように、水性乳化重合により都合よく調製される。一実施形態では、PTFEは懸濁重合によって得られる。
【0060】
好適なPTFEとしては、コア−シェル型ポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。コア−シェル型PTFE及びその調製は、例えば、欧州特許第1533325(B1)号及びそれに引用されている参照文献に記載されている。
【0061】
一実施形態では、PTFEポリマーは、コモノマーとして、例えば国際公開第2012/012289(A1)号に記載のように、アルキル鎖中に任意に1個以上の酸素原子を有することができるペルフルオロアルキルビニルエーテル又はペルフルオロアルキルアリルエーテルを含む。
【0062】
このフルオロポリマーは、典型的には水性乳化重合によって調製され、水性分散体として得られる。重合は、典型的にはフッ素化乳化剤を使用して行う。典型的な乳化剤としては、以下の式
Q−Rf−Z−M
[式中、Qは水素、Cl又はFを表す。Qは末端位に存在していてもいなくてもよく、Rfは、4〜15個の炭素原子を有する直鎖状又は環式又は分岐状のペルフッ素化又は部分フッ素化アルキレンであり、ZはCOO又はSO等の酸アニオンを表し、Mはアルカリ金属アニオン又はアンモニウムイオンを含むカチオンを表す。]に対応するものが挙げられる。フッ素化乳化剤の例としては、欧州特許第1059342号、同第712882号、同第752432号、同第86397号、米国特許第6,025,307号、同第6,103,843号、同第6,126,849号、同第5,229,480号、同第5,763,552号、同第5,688,884号、同第5,700,859号、同第5,895,799号、国際公開第00/22002号及び同第00/71590号に記載のものが挙げられる。フッ素化乳化剤は、例えば、国際公開第03/051988号に記載のとおり、仕上げの手順で除去されてもよい。フッ素化乳化剤が減少したPTFE分散体は、早すぎる凝固を起こす傾向があり、安定化させる必要がある。例えば、欧州特許第1533325(B1)号、欧州特許公開第2902424(A1)号、同第1529785(A1)号、国際公開第2011/014715(A2)号、米国特許公開第2004/0171736号、国際公開第03/059992号に記載されているように、例えば、ノニオン性又はアニオン性、好ましくは非芳香族の乳化剤を使用して若しくはそのポリマー構造の変性により、又はその両方によって、好ましくはPTFE分散体を安定化させる。また、このようにして他のフルオロポリマー分散体も安定化させることができる。
【0063】
様々な等級のフルオロポリマー及びPTFE分散体が、また、例えば、Dyneon GmbH(Burgkirchen Germany)及び他のフルオロポリマー製造元から市販されている。
【0064】
一実施形態では、フルオロポリマーは、TFE及び任意に酸素原子をペルフルオロアルキル鎖に含有し得る、ペルフルオロビニルエーテル(PAVE)のコポリマー並びにTFE、HFP及び1種以上のPAVEのポリマー等のペルフルオロポリマーである。
【0065】
一実施形態では、2種以上のフルオロポリマーのブレンドを用いる。ブレンドは上記の、しかし例えば、異なる融点及び/又はMFIを有する、フルオロポリマーのブレンドであってよい。高融点のフルオロポリマーと低融点のフルオロポリマーとの組み合わせの使用は、焼結プロセスを促進して、より緻密な物品の調製を助け得る。低融点ポリマーは、典型的には、高融点フルオロポリマーよりも少量で使用される。低融点のフルオロポリマーはフィラーとみなすことができ、フィラーについて示す量で使用することができる。
【0066】
一般に、コモノマーの量は、溶融温度が150℃よりも高い、又は200℃よりも高いポリマーを与えるように選択される。
【0067】
3D印刷可能な組成物において使用されるフルオロポリマーは、好ましくは固体であり、粒子の形態である。典型的な粒子径としては、約1〜150μm(数平均、D50)が挙げられる。固体粒子の粒子径は、顕微鏡法及び粒子計数ソフトウェアによって決定することができる。このような粒子径の組成物は、フルオロポリマーの懸濁重合、又はペレット若しくはビレットのミリング加工、又は乳化重合から得られるフルオロポリマー粒子の凝集によって得られる。
【0068】
一実施形態では、3D印刷可能な組成物は、押出物、例えばフィラメントの形態である。このような組成物は、フィラメント堆積法に好適である。押出物を、フルオロポリマー及びバインダ及び他の成分の組成物を押出して、フィラメントにすることによって得てもよい。
【0069】
バインダ材料
3D印刷可能なフルオロポリマー組成物は、積層プロセスデバイスのエネルギー源に暴露されたときに溶融又は液化する、1種以上のバインダを含有する。
【0070】
一実施形態では、フルオロポリマーは、典型的にはバインダ材料及び他の任意による添加剤を含む、顆粒の形状の固体組成物として、又は粉末として、又は押出されたフィラメントとして提供される。好適なバインダ材料は、有機材料を含み、好ましくは室温を上回る、好ましくは40℃を上回る(しかし、フルオロポリマーの分解温度又は溶融温度未満の)融点を有するポリマーを含む。しかし、科学的に厳密な意味において、溶融しないが軟化する、又は粘度が低下するポリマーもまた使用できる。典型的には、溶融性のバインダは、約40〜約140℃の温度の範囲にある、融点又は溶融範囲を有する。有機材料は、炭素−炭素及び炭素−水素結合を有する材料であり、材料は任意にフッ素化されていてもよく、すなわち1個以上の水素がフッ素原子で置換されていてもよい。好適な材料としては、炭化水素又は炭化水素混合物及び長鎖炭化水素エステル、炭化水素アルコール並びにこれらの組み合わせが挙げられ、更にこれらのフッ素化誘導体も挙げられる。好適な材料の例としては、ワックス、糖類、デキストリン、上記融点を有するサーモプラスチック、重合又は架橋したアクリレート、メタクリレート及びそれらの組合せが挙げられる。ワックスは、天然ワックスであっても、合成ワックスであってもよい。ワックスは、アルキル長鎖を含む有機化合物、例えば長鎖炭化水素、カルボン酸と長鎖アルコールとのエステル、及び長鎖脂肪酸とアルコールとのエステル、ステロール、並びにこれらの混合物及び組み合わせ、を含む有機化合物である。ワックスは、長鎖炭化水素の混合物もまた含む。本明細書で使用するとき、用語「長鎖」は、最小数が12の炭素原子を意味する。
【0071】
天然ワックスは、蜜蝋を含む。蜜蝋の主成分は、トリアコンタノールとパルミチン酸とのエステルである、ミリシルパルミテートである。鯨蝋は、マッコウクジラの脳油内に大量に生じる。その主要成分の1つはセチルパルミテートである。ラノリンは、ステロールのエステルからなる、羊毛から得られるワックスである。カルナバワックスは、ミリシルセロテート(myricyl cerotate)を含有する硬質ワックスである。
【0072】
合成ワックスとしては、パラフィンワックスが挙げられる。これらは炭化水素であり、通常は鎖長の同族列にあるアルカンの混合物である。これらは、飽和したn−及びiso−アルカン、ナフチレン及びアルキル−及びナフチレン置換芳香族化合物を含むことができる。また、いくつかの水素原子がフッ素原子で置換された、フッ素化ワックスを使用してもよい。
【0073】
他の好適なワックスは、ポリエチレン又はプロピレンを分解することによって得ることができる(「ポリエチレンワックス」又は「ポリプロピレンワックス」)。生成物は、式(CH[式中、nは約50〜100の間の範囲である。]を有する。
【0074】
好適なワックスの他の例としては、キャンデリラワックス、酸化フィッシャー・トロプシュ・ワックス、微結晶性ワックス、ラノリン、ベーベリ蝋、パーム核ワックス、羊タローワックス、石油由来ワックス、モンタンワックス誘導体、酸化ポリエチレンワックス及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
好適な糖類としては、例えば、ラクトース、トレハロース、グルコース、スクロース、レブロース、デキストロース及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
好適なデキストリンとしては、例えば、γ−シクロデキストリン、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、グルコシル−α−シクロデキストリン、マルトシル−α−シクロデキストリン、グルコシル−β−シクロデキストリン、マルトシル−β−シクロデキストリン、2−ヒドロキシ−β−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリン、ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリン、メチル−β−シクロデキストリン、スルホブチルエーテル−α−シクロデキストリン、スルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン及びスルホブチルエーテル−γ−シクロデキストリン及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
好適なサーモプラスチックとしては、例えば、180℃以下、好ましくは140℃以下、又は100℃の以下の融点を有するサーモプラスチックが挙げられるが、これらに限定されない。例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ乳酸(PLA)、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリプロピレン(PP)、ビスフェノールAポリカーボネート(BPA−PC)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルイミド(PEI)及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
好適なアクリレート及びメタクリレートは、例えば、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、アクリレート化(メタ)アクリレート(acrylated(meth)acrylics)、ポリエーテルアクリレート、アクリレート化ポリオレフィン及びこれらの組み合わせを含む、架橋した又は重合したアクリレート、又はこれらのメタクリレート類縁体である。
【0079】
好適なバインダの他の例としては、ゼラチン、セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシルエチルセルロース、ヒドロキシルプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテート、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、グリコース、フルクトース、グリコーゲン、コラーゲン、デンプン、部分フッ素化熱可塑性フルオロポリマー及びこれらの組み合わせから選択される、ポリマー及びポリマー化材料を含むバインダが挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
好ましくは、材料は、例えば200℃以下の高温で容易に分解し、容易に除去することができるよう、低分子量である。
【0081】
バインダ材料は、例えば粒子として存在してもよく、例えばフルオロポリマー粒子上にコーティングとして存在していてもよい。バインダ粒子の粒子径としては、例えば、1〜150μm、好ましくは約5μm〜約50μm及び最も好ましくは約10μm〜約30μmが挙げられる。一実施形態では、これらの粒子径は平均粒子径(数平均、(D50又はメジアン))である。このような粒子径は、粒子分析ソフトウェアを用いた顕微鏡法、又は顕微鏡でサンプルから得られた画像から決定することができる。一般に、バインダ粒子の平均粒子径は、好ましくは、フルオロポリマー粒子の平均粒子径よりも大きく、例えば、2倍〜100倍の間、好ましくは2〜10倍の間である。
【0082】
バインダ材料の最適な量は、主に、2つの因子によって決定することができる。第1に、所望の寸法の層が形成可能となるようにバインダ材料の量は十分に多くするべきである。すなわち、有効な量で存在しなければならない。第2に、該量は、仕上げプロセス中の物品の収縮を最小化し、バインダ材料の除去工程中に生成する、完成した物品中の空洞を最小にするため、フルオロポリマー含有量に対して最小化するべきである。固体組成物を使用することから、液体の3D印刷可能な組成物よりも高いフルオロポリマー濃度、例えば、フルオロポリマーの含有量として、90重量%以下、又は更に95重量%以下(組成物の重量に基づく)で使用することができる。典型的なバインダ材料の量としては、全組成物の重量に基づいて、約5〜約20重量%、約8〜約18重量%、例えば約10〜約15重量%の量が挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
他の任意による添加剤としては、フィラー、顔料、UV増強剤及び酸化触媒が挙げられる。3D印刷可能な組成物は、使用される3Dプリンタ及び熱による仕上げ処理に適合する場合、フィラー、顔料又は染料を更に含むことができる。フィラーとしては、炭化ケイ素、窒化ホウ素、硫化モリブデン、酸化アルミニウム、単素粒子(黒鉛、カーボンブラック等)、炭素繊維、カーボンナノチューブを挙げることができるが、これらに限定されない。フィラーの含有量は、使用する系に最適化することができ、典型的には、使用されるフルオロポリマー及びバインダ材料に応じて、0.01〜10重量%の間、又は30重量%以下、又は更に50重量%以下(組成物の総重量に基づく)であってよい。フィラーは、微粒子であって、3D印刷可能な組成物中での均一な分散が可能となるよう十分に小さい粒子径を有するべきである。3D印刷可能な組成物に適合させるために、フィラー粒子は、有利には500μm未満、好ましくは50μm未満又は更に5μm未満の粒子径を有する。
【0084】
顔料は、熱による仕上げ手順において加えられる温度、すなわち、少なくとも非溶融加工性フルオロポリマーの溶融温度で熱的に安定である必要がある。
【0085】
3D印刷可能な組成物には、エネルギー源からの照射エネルギーの吸収を増加させる成分もまた、含まれていてもよい。例えば、エネルギー源からの印加エネルギーの割合を大きくすることで、加熱をより効率的にすることができる。いくつかの材料は、エネルギー源から放出されたレーザ波長を、全く、又はわずかな割合しか吸収せず、このような場合に、これらの材料は有益である。例としては、黒鉛又はカーボンブラックが挙げられる。
【0086】
また、3D印刷可能な組成物中に酸化触媒を含有させて、熱による仕上げ手順中に、バインダの燃焼を促進することもできる。これは、より平滑な表面を生成すること、及び表面欠陥の形成を回避することを、助け得る。焼結工程中に表面粒子が融合したときに、バインダ材料の燃焼が完了していない場合には、トラップされた燃焼ガスが、焼結物品の表面に微細気泡又は微細な亀裂の形成をもたらし得ると考えられる。酸化触媒は、表面上のフルオロポリマー粒子が融合する前に、燃焼ガスが蒸発してしまっているように、燃焼を促進することができる。酸化触媒は、例えば米国特許第4,120,608号に記載され、酸化セリウム又は他の金属酸化物を含む。
【0087】
一実施形態では、3D印刷可能な組成物は以下のものを含む。すなわち、組成物の総重量を100%として、
20〜95重量%又は70〜90重量%のフルオロポリマー粒子であって、好ましくは寸法が1〜150μmの間のフルオロポリマー粒子、
5〜70%、又は5〜20%のバインダ材料であって、好ましくは、40〜180℃の間の、好ましくは50℃〜100℃の間の温度にて溶融又は液化し、好ましくは2μm〜300μm、又は1μm〜150μmの粒子径を有する粒子の形態のもの、
0〜50重量%のフィラー、
0〜15重量%の他の任意による成分、を含む。
【0088】
バインダ材料を溶融又は液化することによる積層プロセス
フルオロポリマー物品を調製するために、3D印刷可能な組成物を、積層プロセスデバイス内で積層プロセスに供する。3D印刷可能な組成物は、様々なタイプの3Dプリンタ及び3D印刷方法に最適化され得る。
【0089】
粒子の固体組成物又はフィラメントの組成物を、適切な熱源を提供する積層プロセスマシン(3Dプリンタ)に投入し、三次元の物体を作製する。積層プロセスマシンは、例えば、3Dサーマルプリンタ(サーマルプリントヘッド等の熱源を有する)又は選択的レーザ溶融について上述した、熱源としてレーザを有する選択的レーザ焼結若しくは選択的レーザ溶融プリンタ、又はFDMプリンタを使用する場合は押出デバイスである。得られた物体、「グリーン体」とも称されるものを、未反応の粉末又はフィラメントから取り出し、加熱処理を施し、バインダ材料を除去してもよい。都合がよいことに、これは、熱処理によって行われ、バインダ材料を分解及び/又は蒸発させる。この温度は、フルオロポリマー物品が溶融したり破壊されたりしないように選択される。このようなフルオロポリマー物品は、その形状を保持する。加熱及びその後の冷却レジームは、物体の曲げ又は物体に亀裂が形成されることを回避するように制御されてもよい。
【0090】
次いで、得られた物体をより高温での別の熱処理に供し、フルオロポリマーを焼結することができる。焼結の間、フルオロポリマー粒子は融合する。この温度は、フルオロポリマー物品が溶融したり破壊されたりしないように選択される。非溶融加工性フルオロポリマーの場合、温度は、実際には、フルオロポリマーの溶融温度を上回ってもよい。フルオロポリマーの溶融粘度が高いため、物品の全体形状は変化しない。焼結温度は、フルオロポリマーの融点を約20℃以内で上回ることができる。他のタイプのフッ素ポリマーでは、焼結工程を行わなくてもよく、バインダを分解及び/又は除去するために用いる温度は、ポリマーの融点を下回るよう(例えば、フルオロポリマーの融点を少なくとも1℃下回る温度、又はフルオロポリマーの融点を少なくとも10℃下回る温度)選択され得る。
【0091】
典型的な加熱処理レジームは、バインダ材料を分解させるための第1の加熱サイクルと、それに続く他の加熱サイクルとを含むことができる。該他の加熱サイクルの温度は第1の加熱サイクルの温度よりも高い。第1の加熱サイクル中に、バインダ材料の残留物により物品が黒色化し得るが、第2の加熱サイクル後、残留していたバインダ材料が除去されることにより、物品は白色化し得る。該他の加熱処理は、焼結、例えば、フルオロポリマーの融点以上の温度、典型的には融点を20℃以内で上回る温度を含め、加熱処理を含んでもよい。選択される加熱レジームは、3D印刷可能な組成物に使用されるバインダ材料及びフルオロポリマーのタイプに依存し、調製される物品のタイプにもまた依存する。
【0092】
最終物品は、グリーン体に比べてある程度収縮していてもよい。積層プロセスマシンのプログラミング時には、実行を制御することにより、収縮を考慮することができる。フルオロポリマー含有量を最大化することによって、収縮を最小化することができる。
【0093】
物品
本明細書に記載の積層プロセス方法により、様々な形状、デザイン及び機能の物品を得ることができる。このような成形品としては、軸受(例えば、摩擦軸受又はピストン軸受)、ガスケット、軸封部、リングリップシール、ウォッシャシール、Oリング、溝付きシール、バルブ及びバルブシート、コネクタ、蓋、チューブ及び容器が挙げられるが、これらに限定されない。記載されたプロセスにより得られた物品は、他の物品の構成部品であってもよい。特に、寸法の小さい物品は、本明細書に記載の方法によって、都合よく製造することができる。一実施形態では、約0.1〜約200mmの最長軸又は直径を有する、フルオロポリマー物品を製造することができる。
【0094】
寸法の大きい、及び小さい、フルオロポリマー物品を製造することができる。積層プロセスデバイスの寸法は、製造可能な物品の寸法に制限を設け得る。寸法の小さい物品も、本明細書に記載の方法によって都合よく製造することができる。3D印刷されたフルオロポリマーを含み、1.0cmより小さい、又は0.7mmより小さい最長軸(場合により、最長軸は直径であってもよい)を有する物品を調製することができる。一実施形態では、約0.01〜約1.0mm、又は0.7〜1.5cmの最長軸又は直径を有する、小型のフルオロポリマー物品を製造してもよい。別の実施形態では、例えば少なくとも1.1mmの、最短軸又は直径を有する物品を製造してもよい。
【0095】
フルオロポリマーは、3D印刷され、規定の幾何学的形状の少なくとも1つの要素又は一部を有する物品にすることができる。規定の幾何学的形状としては、円、半円、楕円、半球体、正方形、長方形、立方体、多角形(三角形、六角形、五角形及び八角形が挙げられるがこれらに限定されない)及び多面体が挙げられるが、これらに限定されない。形状は、三次元であってもよく、それには、角錐、直方体、立方体、円柱、半円柱、球体、半球体を挙げることができる。形状としてはまた、ダイヤモンド(2種の三角形の組み合わせ)のような異なる形状からなる形状が挙げられる。例えば、ハニカム構造体は、幾何学的要素として何種類かの六角形を含む。一実施形態では、幾何学的形状は、少なくとも0.5mm、又は少なくとも1mm、又は少なくとも2mm、又は少なくとも1cm(センチメートル)の軸又は直径を有する。一実施形態では、幾何学的形状は、50cm未満、又は15cm未満、又は更に1.5cm以下、又は更に1.1mm以下の軸又は直径を有する。一実施形態では、物品は、0.5cm未満の、好ましくは0.01cm未満の、例えば1μm〜1cmの、好ましくは0.5cm以下の、又は0.01cm以下(up 0.01cm)の厚さの壁を有する。
【0096】
本開示の一実施形態では、「グリーン体」である3D印刷されたフルオロポリマーを含むフルオロポリマー物品が製造される。このような実施形態では、物品は、10〜50重量%のバインダ材料を含む。
【0097】
本開示の別の実施形態では、「グリーン体」である成形されたフルオロポリマーを含むフルオロポリマー物品が製造される。このような実施形態では、物品は、1〜25重量%の、バインダ材料の燃焼反応の反応生成物を含む。
【0098】
様々な形状、デザイン及び機能のフルオロポリマー物品を得ることができる。また、様々なデザイン及び機能のフルオロポリマー物品を含む物品を、得ることができる。物品及びフルオロポリマー物品の例としては、軸受(例えば、摩擦軸受又はピストン軸受)、ガスケット、軸封部、リングリップシール、ウォッシャシール、Oリング、溝付きシール、バルブ及びバルブシート、コネクタ、蓋及び容器を挙げることができるが、これらに限定されない。物品は、医療用インプラント、化学反応器、スクリュー、はめば歯車、継手、ボルト、ポンプ、電極、熱交換器、ミキサー、タービン、変圧器、電気絶縁体、押出機であってよく又は、物品は、上記した物品を含む他の物品の構成部品であってもよい。物品は、酸、塩基、燃料、炭化水素に対する耐性が要求される用途、非粘着特性が要求される用途、耐熱性が要求される用途、及び上述の要件の組み合わせを有する用途において、使用することができる。
【0099】
好ましくは、物品又はその構成部品は、3D印刷されたフルオロポリマーを含み、フルオロポリマーは、3D印刷され、1個以上のチャネル、穿孔(貫通孔及び半孔を含む)、ハニカム構造、本質的に中空である構造及びこれらの組み合わせを含む構造体にする。かかる構造体は、平坦であっても、曲面であっても、球状であってもよい。
【0100】
特定の実施形態の一覧
以下の例示的実施形態の一覧は、本開示を、列挙する特定の実施形態に限定することを意図せずに、本開示を更に説明するために提供するものである。
【0101】
一覧1
実施形態1 フルオロポリマー粒子を含む組成物を、少なくとも1つのエネルギー源を含む積層プロセスデバイス内にて積層プロセスに供すること、を含む、フルオロポリマー物品の製造方法。
実施形態2 組成物が、積層プロセスデバイスのエネルギー源に暴露された組成物の一部にフルオロポリマー粒子を結合させて層の形成可能な少なくとも1種のバインダ材料を含み、該方法は、組成物の一部をエネルギー源に暴露することで、層を形成すること、を含む、実施形態1に記載の方法。
実施形態3 組成物が、組成物を積層プロセスデバイスのエネルギー源に暴露して溶融することにより、エネルギー源に暴露された組成物の一部にフルオロポリマー粒子を結合させて層の形成可能な少なくとも1種のバインダ材料を含み、該方法は、組成物の一部をエネルギー源に暴露することで、層を形成すること、を含む、実施形態1又は2に記載の方法。
実施形態4 組成物が、組成物を積層プロセスデバイスのエネルギー源に暴露して溶融することにより、積層プロセスデバイスのエネルギー源に暴露された組成物の一部にフルオロポリマー粒子を結合させて層の形成可能な少なくとも1種のバインダ材料を含み、該方法は、組成物の一部をエネルギー源に暴露することで、層を形成すること、を含み、デバイスのエネルギー源は熱源である、実施形態1〜3のいずれか1つに記載の方法。
実施形態5 組成物が、積層プロセスデバイスのエネルギー源に暴露された組成物の一部に、フルオロポリマー粒子を結合させて層の形成可能な少なくとも1種のバインダ材料を含み、バインダ材料は組成物を積層プロセスデバイスのエネルギー源に暴露して、溶融することにより層を形成し、積層プロセスデバイスが、選択的レーザ焼結プリンタ、選択的レーザ溶融プリンタ、3Dサーマルプリンタ、電子ビーム溶融プリンタから選択される3Dプリンタである、実施形態1〜4のいずれか1つに記載の方法。
実施形態6 組成物が、組成物を積層プロセスデバイスのエネルギー源に暴露して溶融することにより、積層プロセスデバイスのエネルギー源に暴露された組成物の一部にフルオロポリマー粒子を結合させて層の形成可能な少なくとも1種のバインダ材料を含み、該方法は、組成物の一部をエネルギー源に暴露することで、層を形成すること、を含み、デバイスのエネルギー源は熱源であり、バインダ材料は少なくとも40℃の融点を有する、実施形態1〜5のいずれか1つに記載の方法。
実施形態7 組成物が、組成物を積層プロセスデバイスのエネルギー源に暴露して溶融することにより、積層プロセスデバイスのエネルギー源に暴露された組成物の一部にフルオロポリマー粒子を結合させて層の形成可能な少なくとも1種のバインダ材料を含み、該方法は、組成物の一部をエネルギー源に暴露することで、層を形成すること、を含み、デバイスのエネルギー源は熱源であり、バインダ材料はワックスである、実施形態1〜6のいずれか1つに記載の方法。
実施形態8 組成物が、組成物を積層プロセスデバイスのエネルギー源に暴露して溶融することにより、積層プロセスデバイスのエネルギー源に暴露された組成物の一部にフルオロポリマー粒子を結合させて層の形成可能な少なくとも1種のバインダ材料を含み、該方法は、組成物の一部をエネルギー源に暴露することで、層を形成すること、を含み、デバイスのエネルギー源は熱源であり、組成物は粒子の固体組成物である、実施形態1〜7のいずれか1つに記載の方法。
実施形態9 組成物が、組成物を積層プロセスデバイスのエネルギー源に暴露して溶融することにより、積層プロセスデバイスのエネルギー源に暴露された組成物の一部にフルオロポリマー粒子を結合させて層の形成可能な少なくとも1種のバインダ材料を含み、該方法は、組成物の一部をエネルギー源に暴露して、層を形成すること、を含み、デバイスのエネルギー源は熱源であり、フルオロポリマー粒子は、約1〜約500μm、好ましくは約1〜約150μmの粒子径を有する、実施形態1〜8のいずれか1つに記載の方法。
実施形態10 バインダ材料を除去するための少なくとも1つの熱処理、を更に含む、実施形態1〜9のいずれか1つに記載の方法。
実施形態11 組成物が、積層プロセスデバイスのエネルギー源に暴露された領域にフルオロポリマー粒子を結合させて層の形成可能な少なくとも1種のバインダ材料を含み、該方法は、物品を熱処理に供することで、蒸発によってバインダ材料を除去すること、を更に含む、実施形態1〜10のいずれか1つに記載の方法。
実施形態12 組成物が、積層プロセスデバイスのエネルギー源に暴露された領域にフルオロポリマー粒子を結合させて層の形成可能な少なくとも1種のバインダ材料を含み、該方法は、物品を熱処理に供することで、熱分解によってバインダを除去すること、を更に含む、実施形態1〜11のいずれか1つに記載の方法。
実施形態13 実施形態1〜12のいずれか1つに記載の積層プロセスによって得られた、フルオロポリマー物品。
実施形態14 0.1〜30重量%の1種以上のフィラーを含む、実施形態13に記載の物品。
実施形態15 構成部品を含む物品であって、該構成部品が、実施形態1〜12のいずれか1つに記載の積層プロセスによって得られた、フルオロポリマー物品である、物品。
実施形態16 フルオロポリマー粒子を含み、及び該組成物がエネルギー源に暴露されたときに溶融するバインダ材料を含む、熱源を使用する3D印刷用の3D印刷可能なフルオロポリマー組成物。
実施形態17 固体組成物である、実施形態16に記載の3D印刷可能な組成物。
実施形態18 熱源を使用した3D印刷のための、実施形態16又は17に記載の組成物の、使用。
【0102】
一覧2
実施形態1 フルオロポリマー物品の製造方法であって、フルオロポリマー粒子及びバインダ材料を含む組成物を、少なくとも1つのエネルギー源を含む積層プロセスデバイス内にて積層プロセスに供すること、を含み、フルオロポリマーが、テトラフルオロエチレン(TFE)のホモポリマー又はコポリマーであり、バインダ材料は、積層プロセスデバイスのエネルギー源に暴露された組成物の一部においてフルオロポリマー粒子を結合させて層を形成可能であり、組成物の一部をエネルギー源に暴露して、層を形成すること、を更に含む方法。
実施形態2 フルオロポリマーが、1重量%以下のペルフッ素化コモノマーを含有し得る、TFEのホモポリマーである、実施形態1に記載の方法。
実施形態3 フルオロポリマーが372℃で、5kgの荷重を使用して、0.1g/10分未満のメルトフローインデックス(MFI)を有する、実施形態1又は2に記載の方法。
実施形態4 フルオロポリマーがTFEのコポリマーであり、TFE含有量は、70重量%以上99重量%未満(from 70% by weight up to but excluding 99% by weight)である、実施形態1〜3のいずれか1つに記載の方法。
実施形態5 フルオロポリマーがTFEのコポリマーであり、TFE含有量は、70重量%以上99重量%未満であり、フルオロポリマーが、260℃〜315℃の間の融点を有する、実施形態1〜4のいずれかに記載の方法。
実施形態6 フルオロポリマーがTFEのコポリマーであり、TFE含有量は、70重量%以上99重量%未満であり、フルオロポリマーが372℃及び5kgの荷重で1〜50g/10分のMFIを有する、実施形態1〜5のいずれかに記載の方法。
実施形態7 フルオロポリマーがTFEのコポリマーであり、TFE含有量は、70重量%以上99重量%未満であり、コモノマーがエテン、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、フッ化ビニリデン(VDF)、次の一般式
CF=CFO(Rf1O)(Rf2O)Rf
[式中、Rf1及びRf2は、2〜6個の炭素原子の、異なる直鎖状又は分岐状ペルフルオロアルキレン基であり、m及びnは、独立して、0〜10であり、Rfは、1〜6個の炭素原子のペルフルオロアルキル基である。]のペルフルオロエーテルから選択される、実施形態1〜6のいずれか1つに記載の方法。
実施形態8 フルオロポリマー、がTFEのコポリマーであり、TFE含有量は、70重量%以上99重量%未満であり、フルオロポリマーが、FEP(TFE、ヘキサフルオロプロペン(HFP)及び任意にペルフルオロビニルエーテルのコポリマー)、THV(TFE、HFP及びフッ化ビニリデン(VFP)のコポリマー)、PFA(TFE及びペルフルオロアルキルビニルエーテル又はペルフルオロアルキルアリルエーテルのコポリマー)、HTE(TFE、HFP及びエテンのコポリマー)、ETFE(TFE及びエテンのコポリマー)及びこれらの組み合わせから選択される、実施形態1〜7のいずれか1つに記載の方法。
実施形態9 フルオロポリマー粒子が、1〜150μm(数平均、D50)の粒子径を有する、実施形態1〜8のいずれか1つに記載の方法。
実施形態10 バインダ材料が、積層プロセスデバイスのエネルギー源に曝露されると溶融又は液化し、フルオロポリマー粒子を結合又は封入する、実施形態1〜9のいずれか1つに記載の方法。
実施形態11 バインダ材料が、炭素−炭素結合及び炭素−水素結合を有する有機材料であり、40℃〜180℃の間、好ましくは40℃〜140℃の間で溶融する、実施形態1〜10のいずれか1つに記載の方法。
実施形態12 バインダ材料が、炭素−炭素結合及び炭素−水素結合を有する有機材料であり、エネルギーデバイスに曝露すると液化する、このことにより、材料がフルオロポリマー粒子を封入又は結合させることとなる、実施形態1〜11のいずれか1つに記載の方法。
実施形態13 バインダ材料がワックスである、実施形態1〜12のいずれか1つに記載の方法。
実施形態14 バインダ材料が、ワックス、糖類、デキストリン、及び40℃〜180℃の間で溶融する熱可塑性ポリマー、40℃〜180℃の間で溶融するポリエチレングリコール、及び重合した、又は架橋したアクリレート、メタクリレート、並びにこれらの組み合わせから選択される有機粒子を含む、実施形態1〜13のいずれか1つに記載の方法。
実施形態15 以下を含む、実施形態1〜14のいずれか1つに記載の方法。すなわち、
(i)フルオロポリマー粒子及びバインダ材料及び任意の他の成分を含む、3D印刷可能なフルオロポリマー組成物を含む、組成物を提供すること、
(ii)(a)積層プロセスデバイスのエネルギー源からのエネルギーを3D印刷可能な組成物の選択した位置に向け、バインダ材料を溶融又は液化させ、フルオロポリマー粒子を選択位置で結合させること、又は(b)3D印刷可能な組成物の選択した位置をエネルギー源に向け、バインダ材料を溶融又は液化させ、フルオロポリマー粒子を結合させること、又は(a)及び(b)の組み合わせのいずれかによって、バインダを溶融又は液化させることで、フルオロポリマー粒子を結合させること、
(iii)(c)エネルギー源を、3D印刷可能な組成物から離すように向けること、又は逆に(d)3D印刷可能な組成物をエネルギー源から離すように向けること、又はその両方のいずれかで、バインダ材料が非選択した位置においてフルオロポリマー粒子を結合させることを、避けること、又は(c)及び(d)の組み合わせ、
(iv)工程(ii)及び(iii)並びに必要に応じてまた工程(i)を繰り返すことで、複数の層を形成し、物品を作製すること、を含む、方法。
実施形態16 バインダ材料が1〜150μmの粒子径を有する固体微粒子材料である、実施形態1〜15のいずれか1つに記載の方法。
実施形態17 組成物が粒子の固体組成物である、実施形態1〜16のいずれか1つに記載の方法。
実施形態18 組成物が押出可能な組成物である、実施形態1〜17のいずれか1つに記載の方法。
実施形態19 以下を含む、実施形態1〜14及び16〜18のいずれか1つに記載の方法。すなわち、
(i)フルオロポリマー粒子及びバインダ材料及び任意の他の成分を含む、3D印刷可能なフルオロポリマー組成物を含む、押出可能な組成物を提供すること、
(ii)選択した位置に組成物を押出すことであって、バインダ材料が、フルオロポリマー粒子を結合させるため、デバイスのエネルギー源によって溶融又は液化されている、押出すこと、
(iii)工程(ii)及び必要に応じてまた工程(i)を繰り返すとことで、複数の層を形成し、物品を作製すること、を含む、方法。
実施形態20 組成物が以下を含む、実施形態1〜19のいずれか1つに記載の方法。すなわち、組成物の総重量を100%として、
20〜95重量%、好ましくは70〜90重量%のフルオロポリマー粒子であって、好ましくは寸法が1〜150μmの間のフルオロポリマー粒子、
5〜70%、好ましくは5〜20%のバインダ材料、
0〜50重量%のフィラー、
0〜15重量%の他の成分、を含む、方法。
実施形態21 熱処理を適用することで、バインダ材料を除去すること、を更に含む、実施形態1〜20のいずれか1つに記載の方法。
実施形態22 積層プロセスでの(in an additive processing)積層プロセスによって物品を製造するための、実施形態1〜14、16〜18、20及び21のいずれか1つに記載の組成物を含む、組成物。
実施形態23 実施形態1〜21のいずれか1つに記載の方法によって得られる、3D印刷されたフルオロポリマー。
実施形態24 実施形態1〜21のいずれか1つに記載の方法によって得られる、3D印刷されたフルオロポリマーを含む物品。
実施形態25 摩擦ベアリング、ピストンベアリング、ガスケット、軸封部、リングリップシール、ウォッシャシール、Oリング、バルブシート、コネクタ及び蓋から選択される、実施形態24に記載の物品。
本開示は、実施例及び試験方法によって更に例示されるが、本開示が以下の試験及び実施例に限定されることを意図しない。
【0103】
試験手順
メルトフローインデックス(MFI)
メルトフローインデックスは、メルトインデクサ(melt indexer)(Goettfert,Werkstoffprufmaschinen GmbH,(Germany)による)を使用してDIN EN ISO1133に従って、5kg荷重を使用し、及び372℃の温度にて(MFI372/5)測定することができる。押出し時間は1時間である。
【0104】
融点
融点は、ASTM D4591に従って、DSC(Perkin Elmer示差走査熱量計Pyris1)により決定することができる。5mgのサンプルを、10℃/分の制御された速度で380℃の温度まで加熱し、これによって第1の溶融温度を記録する。次いで、サンプルを10℃/分の速度で300℃の温度まで冷却した後、10℃/分にて380℃の温度まで再加熱する。2回目の加熱期間で観察された融点を、本明細書においてポリマーの融点(一度溶融した材料の融点)と称する。
【0105】
固体含有量
分散体の固形物含有量(フルオロポリマー含有量)は、ISO12086に従って、重量測定で決定できる。不揮発性無機塩についての補正は行わなかった。
【0106】
フルオロポリマーのSSG密度
標準比重(SSG)はASTM4895に従って測定することができる。
【0107】
フルオロポリマー物品のSSG密度
フルオロポリマー物品の密度を、ASTM4895に従って、n−ブチルアセテート中で測定した。
【0108】
実施例1
Dyneon GmbH(Burgkirchen Germany)からの1.8gのPFA粉末(PFA6503PAZ、MFI=3、平均粒子径27μm、融点310℃)を、0.2gのMICROPRO400(Micro Powders Inc(Tarrytown,New York,USA)からの微粉化ポリプロピレンワックス、粒子径5.0〜7.0μm、最大粒子径22μm、融点140〜143℃)と混合した。粉末混合物を、50mLのガラスジャーに入れ、回転バンクミキサ上で、約50rpmにて、15分間回転させた。粉末を、紙片上に広げた。2枚の紙を詰め材として使用した。得られた粉末層の厚さは、およそ200μmであった。これを、2ミル厚のPETフィルムで覆った。はんだごてを218℃まで加熱し、高温の先端を、およそ1×1cmの領域上でゆっくり動かした。非常に軽微な圧力のみが適用され、PETフィルムの変形はわずかであった。粉末混合物は、高温の先端がPETフィルムに接触した部分において部分的に溶融したように見えた。PETフィルムを除去した後、およそ1×1cmの寸法の固体部分を回収することができた。上述のとおり実験を繰り返したが、その部分は回収せず、粉末の第2層を第1層の上部に広げ、PETフィルムで覆った。次いで、第2層の同一領域を、高温の先端で加熱した。次いで、PETフィルムを除去し、固体部分を粉末から取り出した。2つの層が共に溶融して固体の物体を形成したことを、観察した。
【0109】
実施例2
Dyneon GmbH(Burgkirchen Germany)からの1.8gのPTFE粉末(PTFEペーストTF2073Z)を、0.2gのMICROPRO400(Micro Powders Inc(Tarrytown,New York,USA)からの微粉化ポリプロピレンワックス、粒子径5.0〜7.0μm、最大粒子径22μm、融点140〜143℃)と混合した。粉末混合物を、50mLのガラスジャーに入れ、回転バンクミキサ上で、約50rpmにて、15分間回転させた。粉末を、紙片上に広げた。2枚の紙を詰め材として使用した。得られた粉末層の厚さは、およそ200μmであった。これを、2ミル厚のPETフィルムで覆った。はんだごてを218℃まで加熱し、高温の先端を、およそ1×1cmの領域上でゆっくり動かした。非常に軽微な圧力のみが適用され、PETフィルムの変形はわずかであった。粉末混合物は、高温の先端がPETフィルムに接触した部分において部分的に溶融したように見えた。PETフィルムを除去した後、およそ1×1cmの寸法の固体部分を回収することができた。上述のとおり実験を繰り返したが、その部分は回収せず、粉末の第2層を第1層の上部に広げ、PETフィルムで覆った。次いで、第2層の同一領域を、高温の先端で加熱した。次いで、PETフィルムを除去し、固体部分を粉末から取り出した。サラサラの粉末を端から切り落とした。その部分を計量し、19.06mgであると特定した。その部分を大気炉(Furnace,Zicar Zirconia(Florida,NewYork,USA)製、Hotspot110)中の石英プレート上に置き、室温から360℃まで45分間加熱し、360℃で2時間保持した。炉を室温まで冷却し、該部分を取り出した。これは暗灰色であった。重量損失は11%であった。
【0110】
実施例1及び2は、三次元物体を、3Dサーモプリンタ又はレーザ溶融の原理のとおり、熱源を使用して、粉末床から作製することができることを示す。
【0111】
実施例3
この実施例では、ポリ乳酸及びPTFEから構成されるフィラメントを、FDMを介して押出して一部分を製造した。60重量%のIngeo PLA Biopolymer4043D(NatureWorks(Minnetonka,MN55345))及び40重量%のTFM1610(3M Dyneon)を含む、ペレットを作製した。次いで、FDM3Dプリンタに使用するために、ペレットをおよそ1.7mm径のフィラメントにした(made into)。
【0112】
印刷のためにHyrel3DのSystem30Mを使用し、可撓性フィラメント用MK2−250押出ヘッドを使用した。ノズル径は0.6mmであった。3D物品(プリズム)を、およそ4cmx4cm×1cmの寸法に印刷した。
【0113】
物品を炉に直接入れて、PLAを焼き切り、PTFEを焼結させることができる。以下の条件を使用した。180℃まで4時間の温度勾配、230℃まで20時間の温度勾配、275℃まで4時間の温度勾配、325℃まで4時間の温度勾配、325℃にて48時間保持、400℃まで4時間の温度勾配、400℃にて4時間保持、自然冷却(積極的な冷却なし)。焼結すると、得られたPTFE物品は、その色を保持したが、不均一な収縮が生じた。