特許第6931667号(P6931667)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6931667水熱炭化プロセスにおける液相の酸化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6931667
(24)【登録日】2021年8月18日
(45)【発行日】2021年9月8日
(54)【発明の名称】水熱炭化プロセスにおける液相の酸化方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/10 20060101AFI20210826BHJP
   C02F 11/08 20060101ALI20210826BHJP
   C02F 11/12 20190101ALI20210826BHJP
【FI】
   C02F11/10 ZZAB
   C02F11/08
   C02F11/12
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-566930(P2018-566930)
(86)(22)【出願日】2017年6月21日
(65)【公表番号】特表2019-520206(P2019-520206A)
(43)【公表日】2019年7月18日
(86)【国際出願番号】SE2017050681
(87)【国際公開番号】WO2017222462
(87)【国際公開日】20171228
【審査請求日】2020年6月3日
(31)【優先権主張番号】1650902-8
(32)【優先日】2016年6月23日
(33)【優先権主張国】SE
(31)【優先権主張番号】1750565-2
(32)【優先日】2017年5月8日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】517456923
【氏名又は名称】シー − グリーン テクノロジー エービー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルンドクヴィスト、フレドリク
(72)【発明者】
【氏名】オーデン、エリク
(72)【発明者】
【氏名】エーマン、フレドリク
【審査官】 富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−136176(JP,A)
【文献】 特表平09−505878(JP,A)
【文献】 特表2012−522629(JP,A)
【文献】 特開2004−008912(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第105060662(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/00−11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃水処理プラントからの都市汚泥又は産業汚泥などの汚泥の処理の方法であって、
− 少なくとも1つの蒸気フラクションを用いて、入って来る汚泥を予熱して、予熱済み汚泥を得るステップと、
− 高温の蒸気フラクションを用いて、前記予熱済み汚泥をさらに加熱して、加熱済み汚泥を得るステップと、
− 前記加熱済み汚泥の水熱炭化(HTC)をして、HTC処理済み汚泥を得るステップと、
− 前記HTC処理済み汚泥から貧粒子フラクションを分離するステップと、
− 前記貧粒子フラクションの湿式酸化をして、加熱済み貧粒子フラクションを得るステップと、
− 前記加熱済み貧粒子フラクションに対して第1の気化を行い、前記さらなる加熱のステップで使用される前記高温の蒸気フラクションを得るステップと、
− 前記HTC処理済み汚泥から富粒子フラクションを分離するステップと、
− 前記富粒子フラクションに対して気化を行い、前記予熱するステップで使用される少なくとも1つの蒸気フラクション、及び冷却済み富粒子フラクションを得るステップと、
を含み、
前記貧粒子フラクションは、前記富粒子フラクションよりも低い総懸濁固体(TSS)含有率を有する、方法。
【請求項2】
前記加熱済み貧粒子フラクションに対してさらなる気化を行い、前記予熱するステップで使用される少なくとも1つの蒸気フラクションを得るステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記加熱済み汚泥が、180〜250℃の温度を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記高温の蒸気フラクションの前記温度が、190〜270℃である、請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記高温の蒸気フラクションの前記温度が、前記加熱済み汚泥の前記温度よりも、9〜40℃高い、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記貧粒子フラクションのTSSが、50g/lより低い、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記湿式酸ステップ前の前記貧粒子フラクションの前記温度が、前記加熱済み汚泥の前記温度とほぼ同じである、請求項1から6までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
廃水処理プラントからの都市汚泥又は産業汚泥などの汚泥の処理のためのシステムであって、
− 汚泥を受け入れるための入口と、
− 前記汚泥を水熱炭化(HTC)ステップにさらすための第1の反応器と、
− 汚泥を前記入口から前記反応器へ送るための機構であって、予熱機構、及び前記予熱機構の下流に配置されたさらなる加熱機構を含む機構と、
− 前記HTC処理済み汚泥から貧粒子フラクション及び富粒子フラクションを分離するための機構と、
− 前記貧粒子フラクションを湿式酸化にさらすための第2の反応器と、
− 前記富粒子フラクションを冷却し且つ少なくとも1つの蒸気フラクションを提供するための第1の蒸気−液体分離器機構と、
− 前記第2の反応器からの前記酸化済みフラクションを冷却し且つ高温の蒸気フラクションを提供するための第2の蒸気−液体分離器機構であって、前記第2の反応器の下流に設けられる第2の蒸気−液体分離器機構と、
− 前記少なくとも1つの蒸気フラクションを前記第1の蒸気−液体分離器機構から前記予熱機構へ送ることができる第1の蒸気送達機構と、
− 前記高温の蒸気フラクションを前記第2の蒸気−液体分離器機構から前記さらなる加熱機構へ送ることができる第2の蒸気送達機構と
を備え
前記貧粒子フラクションは、前記富粒子フラクションよりも低い総懸濁固体(TSS)含有率を有する、システム。
【請求項9】
前記第2の反応器内に加圧空気を噴射するための圧縮機をさらに備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記さらなる加熱機構が、ベンチュリ・ミキサなどの蒸気ミキサを備える、請求項8又は9に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、汚泥の処理に関し、具体的には、水熱炭化のステップの下流での貧粒子フラクション(particle−lean fraction)を加工処理するステップを含む方法に関する。
【背景技術】
【0002】
汚泥は、典型的には、都市廃水又は産業廃水の処理プラントでの廃水処理後に残るものである。都市廃水処理プラントは、都市からの廃水を処理し、一方で、産業廃水処理プラントは、例えば紙パルプ工場、産業的な食糧生産施設、等の様々な産業プロセスからの流出水(water effluent)を処理する。例えば大規模の養豚といった畜産業もまた、廃水及び汚泥の考慮すべき発生源である。本開示の実施例は、これらの全ての領域において役立つであろう。
【0003】
廃水処理のための技術は、原則的に同じであるが、処理すべき汚泥流の特性、基本設計、その地域の要求、及び環境への懸念に応じて、特定の解決策を含む。スウェーデンの大型プラントでは、廃水処理プロセスは、機械的な前処理を含むことが多く、その後に一次(沈降)及び二次(好気性)の処理ステップが続く。場合によっては、処理された水の中に残っている問題のある物質、例えば残留薬物、毒性有機物質、等を除去するために、様々な形態の三次処理も適用される。より小さいプラントでは、これらの段階のうちの1つ又は複数が省略されることも多い。
【0004】
あらゆる廃水処理プラントが、使用に際して、対処する必要がある汚泥を発生させる。汚泥は、脱水後にプラントから直接回収される(好気性汚泥)か、又は、最初にバイオガス製造のために嫌気的に処理されて汚泥の一部が消化され、次いで残余が嫌気性汚泥として回収される。
【0005】
廃水処理プラントは、全世界的に毎年約1億5千万メートルトンの汚泥を生成し、また、その量は、急速に増大している。スウェーデンにおいては、1年当たりの乾燥固体トン数(tDS/y:tons of dry solids per year)での総汚泥容量は、2010年には250000であると報告されており、現在の数字は、同じであるか又はより大きいと推定される。したがって、汚泥の対処は、社会的に非常に大きな課題であり、現在の解決策は、高コストを伴い、また、しばしば負の環境影響を伴う。
【0006】
1986年を発端に、欧州連合は、廃水汚泥の処理及び廃棄を規制する幾つかの指令を採用して、埋め立てごみとしての汚泥の使用、リンの回収、汚泥の焼却、等のような様々な局面に取り組んできた。種々の指令は、個々の加盟国において国の法令に反映され、例えばスウェーデンでは、埋め立てごみでの汚泥の廃棄は、2005年から禁止されている。
【0007】
現今では、廃水汚泥の主な使用法は、農業及び林業/造林における施肥と、地面施工計画並びに埋立地の被覆及び回復のための植栽土壌(plant soil)への混ぜ込みと、エネルギー回収、化学物質の回収、及び肥料の生成を伴う焼却と、最後に、埋立てとであるが、汚泥が堆肥化などの特定の前処理を受けている場合に限る。
【0008】
エネルギー回収と、有害な化学物質及び重金属を回収するための燃焼排ガス及び灰の適切な処理とを伴う、汚泥の焼却は、依然として魅力的な代替案である。しかし、汚泥の正確な組成は、入って来る廃水の組成、及び廃水処理プラントのタイプに依存する。有機的及び/又は生物学的な成分の濃度が高い汚泥は、一般に脱水が困難である。含水率は、発電所において焼却される場合に真発熱量が非常に低いか負ですらあるほどに高いことが多く、大抵は化石燃料である支持燃料の追加が必要とされ得る。
【0009】
C−Green Technology ABは、水熱炭化(HTC:hydrothermal carbonization)のステップを伴う汚泥処理のためのプロセスを開発してきた。このプロセスは、有機毒素及び調剤の衛生化及び破壊/非活性化をもたらし、且つ、取扱いが安全で実際的なバイオ燃料を生成する。燃焼前のバイオ燃料から、又は、燃焼後の灰から、リンが抽出され得る。
【0010】
水熱炭化(HTC)は、石炭に組成が類似した炭化物質の生成に使用される熱化学プロセスである。このプロセスは、汚泥などの湿潤有機原料の使用、比較的低温の環境(180℃〜350℃)、及び、閉じた系内での高い自己圧力(16.5MPaまで)を伴う。
【0011】
EP2206688は、再生可能な原材料及び有機性廃棄物の水熱炭化後に残るプロセス水の取扱いと、HTC生成物を富固体流(solids−rich stream)及びプロセス水に分離することとに関する。この出願は、そのようなプロセス水を分離反応器(separate reactor)において触媒の存在下での酸化などの熱化学プロセスにさらすステップを含む方法を開示している。酸化を通した熱化学プロセスの圧力レベルは、水熱炭化の圧力レベルと大気圧との間に位置する。EP2206688は、単一のHTC生成物がHTC反応器から引き抜かれる方法を示す。
【0012】
WO2009/127727は、バイオマスを使用した石炭様物質の調整のための水熱炭化プロセスに関する。このプロセスは、水及びバイオマスを含む反応混合物を加熱して活性バイオマスを含む反応混合物を得るステップ(i)と、ステップ(i)で得られた反応混合物に重合開始剤を加え、活性バイオマスを重合させて、石炭様の物質を含む反応混合物を得るステップ(ii)とを含む。この反応混合物は、次いで、固相と液相に分離される。次いで、残留する液相は、酸化剤が、以下で述べられるような酸化をもたらすのに適した酸化電位を有する限り、また、酸化剤又はその反応生成物が、以下で詳述されるような(酸化した)液相のさらなる使用に干渉しない限り、任意の酸化剤を使用して酸化され得る。有用な酸化剤の例は、限定的ではないが、酸素、過酸化水素、過炭酸塩、及び過炭酸である。酸化剤は、酸素含有ガスであることが好ましく、これは、好ましくは空気である。空気などの酸素含有ガスの場合、液相の酸化は、液相をガスで泡立たせて、ガスの雰囲気中で液相を攪拌することにより、又は、液相がガスの存在下にあることを可能にすることにより、もたらされ得る。
【0013】
HCTプロセスは、既に開示されており、使用されてもいるが、プロセスのさらなる改善が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】EP2206688
【特許文献2】WO2009/127727
【特許文献3】SE1550903A1
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、HTC反応からの貧粒子フラクションの酸化のステップを追加すること、及び、酸化からの熱を使用して、入って来る汚泥をHTCのための反応温度に至らせることにより、有機的な内容物を有する汚泥の処理のための水熱炭化(HTC)システム及びプラントの動作を著しく改善することができることを見いだしたが、これは、外部エネルギーの供給が(プロセスの始動を除いて)必要とされないことを意味する。そのようなプロセスは、HTC炭に加えて、生分解性が著しく向上した液体流を生成する。
【0016】
したがって、第1の態様は、
− 少なくとも1つの蒸気フラクションを用いて、好ましくは直接蒸気噴射により、入って来る汚泥を予熱して、予熱済み汚泥を得るステップと、
− 高温の蒸気フラクションを用いて、好ましくは直接蒸気噴射により、予熱済み汚泥をさらに加熱して、加熱済み汚泥を得るステップと、
− 加熱済み汚泥の水熱炭化(HTC)をして、HTC処理済み汚泥を得るステップと、
− HTC処理済み汚泥から貧粒子フラクションを分離するステップと、
− 貧粒子フラクションの湿式酸化をして、加熱済み貧粒子フラクションを得るステップと、
− 加熱済み貧粒子フラクションに対して第1の気化を行い、典型的には反応器に入って行く懸濁液を反応温度に至らせるさらなる加熱ステップで使用される高温の蒸気フラクションを得るステップと、
− HTC処理済み汚泥から富粒子フラクション(particle−rich fraction)を分離するステップと、
− 富粒子フラクションに対して気化を行い、予熱するステップで使用される少なくとも1つの蒸気フラクション、及び冷却済み富粒子フラクションを得るステップと、
を含む、(好ましくは、廃水処理プラントからの)都市汚泥又は産業汚泥などの汚泥の処理方法に関する。
【0017】
第1の態様の方法の重要な特徴は、湿式酸化が、特に高温の(HTC反応の温度よりも高い)蒸気フラクションの発生を可能にし、また、この高温の蒸気フラクションが、反応器に送られる汚泥を加熱するための最後の蒸気フラクションであることである。したがって、高温の蒸気フラクションは、汚泥をHTC反応の温度に至らせることができる。
【0018】
当業者によって理解されるように、貧粒子フラクションは、富粒子フラクションよりも低い総懸濁固体(TSS:total suspended solids)含有率を有する。
【0019】
湿式酸化は、典型的には、酸素、過酸化水素、過炭酸塩、及び過炭酸から通常選択される酸化剤の噴射を含む。酸化剤は、空気などの酸素含有ガスであることが好ましく、好ましくは圧縮された空気又は酸素である。
【0020】
好ましい実施例では、方法は、加熱済み貧粒子フラクションに対してさらに気化を行い、予熱するステップで使用される少なくとも1つの蒸気フラクションを得るステップを含む。このさらなる気化は、第1の気化の後で行われることが、理解される。
【0021】
1つの実施例では、さらなる気化からの蒸気フラクションが、圧力がほぼ同じである富粒子フラクションの気化からの蒸気フラクションと混合される。
【0022】
上首尾でなおもエネルギー効率の良いHTCのために、加熱済み汚泥は、典型的には180〜250℃の温度を有する。加熱済み汚泥の温度は、好ましくは195〜230℃であり、より好ましくは205〜225℃である。
【0023】
さらなる加熱のステップ(即ち、高温の蒸気フラクションが使用されるステップ)は、典型的には、汚泥の温度を少なくとも10℃上昇させる。このステップは、好ましくは、汚泥の温度を、少なくとも15℃、例えば15〜60℃上昇させる。より好ましくは、このステップは、温度を、少なくとも20℃、例えば20〜50℃上昇させ、最も好ましくは25〜50℃上昇させる。
【0024】
したがって、高温の蒸気フラクションの温度は、典型的には、予熱済み汚泥の温度よりも25〜75℃高い。高温の蒸気フラクションの温度は、好ましくは、30〜70℃高く、例えば40〜60℃高い。
【0025】
上述の温度の上昇を得るには、高温の蒸気フラクションの温度は、典型的には190〜270℃であり、好ましくは205〜270℃である。高温の蒸気フラクションの温度の最も好ましい範囲は、215〜245℃である。
【0026】
上記の論述から理解されるように、高温の蒸気フラクションの温度は、加熱済み汚泥の温度よりも高い。温度差(ΔT)は、通常、9〜40℃の範囲内である。ΔTが過度に低い場合、高温の蒸気フラクションと加熱済み汚泥との間の圧力差が過度に低くなり、このことは、蒸気供給が、非常に精密に制御されなければならないこと、及び、圧力差の推進力が、上首尾の蒸気の噴射に対して過度に低い恐れがあることを意味する。40℃を上回るΔTを得ることは、十分な蒸気を作り出すためにより大量の貧粒子流が抽出されること、又は、設備のための高価な高圧設計につながる非常に高い温度での湿式酸化により貧粒子流が処理されることを必要とするので、望ましくない。ΔTは、好ましくは10〜35℃、例えば10〜30℃である。特に好ましい実施例では、ΔTは、10〜25℃である。本発明者らの計算によれば、最適なΔTは、10〜21℃である。
【0027】
湿式酸化ステップ前の貧粒子フラクションの温度は、通常、加熱済み汚泥の温度とほぼ同じ(例えば、±5℃又は±3℃)である。
【0028】
HTCステップでの平均保持時間は、通常は0.25〜8hであり、好ましくは0.5〜2hである。したがって、貧粒子フラクションの内容物は、概して、標準的な状況では湿式酸化の前に0.25〜8hの期間にわたってHTCを受け、好ましい実施例では0.5〜2hの期間にわたってHTCを受ける。
【0029】
1つの実施例では、方法は、冷却済み富粒子フラクションを脱水して固体フラクションを得るステップをさらに含む。さらに、貧粒子液体流(particle−lean liquid stream)が、前述の脱水から得られ得る。この貧粒子液体流は、再循環されて、入って来る汚泥流に混合され得る。湿式酸化された流れは典型的には廃水処理プラントにおいてより容易に分解されるので、湿式酸化にさらされた液体流よりも、この液体流を再循環させることが、より好ましい。
【0030】
湿式酸化のための十分な「燃料」を提供して貧粒子フラクションの温度を十分な程度まで高めるために、貧粒子フラクションの(US EPA承認の方法5220による)CODは、少なくとも20g/lであることが好ましい。貧粒子フラクションのCODは、湿式酸化の前に、少なくとも40g/l、例えば少なくとも50g/lであることがより好ましい。貧粒子フラクションのCODは、入って来る汚泥の組成、並びに温度及び/又は滞留時間などのHTC反応の条件の関数である。
【0031】
湿式酸化に使用される設備のファウリング、及び、過剰な量の固形物を廃水処理プラントに戻すことを避けるために、貧粒子フラクションのTSSは、典型的には50g/lよりも低く、好ましくは30g/lよりも低く、より好ましくは20g/lよりも低く、最も好ましくは0〜10g/lの間である。
【0032】
貧粒子液体流が、貧粒子フラクションの気化から得られる。上記のように、この貧粒子液体流は、湿式酸化され、したがって、典型的には、第1の態様の方法においては再循環されない。その代わりに、貧粒子液体流は、HTC処理プロセスの水分バランスを制御するために、廃水処理プラントに戻されることが好ましい。
【0033】
したがって、貧粒子フラクションの気化から得られる貧粒子流の(体積で少なくとも90%などの)少なくとも一部は、入って来る汚泥に加えられないことが好ましい。1つの実施例では、この貧粒子流の(体積で少なくとも90%などの)少なくとも一部が、廃水処理プラント(好ましくは、汚泥が得られた廃水処理プラント)に戻されて、そこでさらなる生物学的処理にさらされ得る。
【0034】
第2の態様として、
− 汚泥を受け入れるための入口と、
− 前述の汚泥を水熱炭化(HTC)ステップにさらすための第1の反応器と、
− 汚泥を入口から第1の反応器へ送るための機構であって、予熱機構、及び予熱機構の下流に配置されたさらなる加熱機構を含む機構と、
− HTC処理済み汚泥から貧粒子フラクション及び富粒子フラクションを分離するための機構と、
− 貧粒子フラクションを湿式酸化にさらすための第2の反応器と、
− 富粒子フラクションを冷却し且つ少なくとも1つの蒸気フラクションを提供するための、第1の蒸気−液体分離器機構と、
− 前述の第2の反応器からの酸化済みフラクションを冷却し且つ高温の蒸気フラクションを提供するための、第2の蒸気−液体分離器機構であって、前述の第2の反応器の下流に設けられる第2の蒸気−液体分離器機構と、
− 前述の少なくとも1つの蒸気フラクションを前述の第1の蒸気−液体分離器機構から予熱機構へ送ることができる第1の蒸気送達機構と、
− 前述の高温の蒸気フラクションを前述の第2の蒸気−液体分離器機構から加熱機構へ送ることができる第2の蒸気送達機構と、
を備える、(好ましくは廃水処理プラントからの)都市汚泥又は産業汚泥などの汚泥の処理のためのシステムが提供される。
【0035】
一実施例では、第1の反応器は、第1の出口及び第2の出口を備え、第2の出口は、第1の出口より下に配置される。したがって、HTC処理済み汚泥から貧粒子フラクション及び富粒子フラクションを分離するための機構は、分離に利用され得る流動化及び/又は沈殿の原理の通りに設けられる(SE1550903A1における反応器を参照)。この実施例では、第2の反応器は、第1の反応器の第1の出口に接続され、第1の蒸気−液体分離器機構は、第1の反応器の第2の出口に接続される。
【0036】
第1の態様の方法は、第2の態様のシステムにおいて行われ得る。
【0037】
好ましい実施例では、システムは、前述の第2の反応器からの酸化済みフラクションをさらに冷却し且つ少なくとも1つの蒸気フラクションを提供するための、第3の蒸気−液体分離器機構をさらに備え、この第3の蒸気−液体分離器機構は、前述の第2の蒸気−液体分離器機構の下流に設けられる。そのような実施例では、前述の第1の蒸気送達機構は、前述の少なくとも1つの蒸気フラクションを第3の蒸気−液体分離器機構から予熱機構へ送ることがさらにできる。それにより、熱効率が高められる。
【0038】
プロセスを開始するために、システムは、電気的な加熱機構を備えてもよい。そのような電気的な加熱機構は、汚泥を入口から第1の反応器へ送るための機構上に配置されることが好ましい。汚泥を入口から第1の反応器へ送るための機構上での好ましい位置は、さらなる加熱機構の下流である。
【0039】
1つの実施例では、システムは、加圧された空気又は酸素を前述の第2の反応器内に噴射するための圧縮機を備える。加圧された空気又は酸素を第2の反応器へ送るパイプにそのような圧縮機が接続され得ることを、当業者は理解する。
【0040】
汚泥は、直接蒸気噴射によって加熱されることが好ましい。したがって、予熱機構は、少なくとも1つの蒸気ミキサ、例えば少なくとも1つのベンチュリ・ミキサを備え得る。1つの実施例では、予熱機構は、異なる圧力の蒸気を噴射するための少なくとも2つの蒸気ミキサを備える。さらなる加熱機構がベンチュリ・ミキサなどの蒸気ミキサを備えることもまた、好ましい。通常、各蒸気ミキサの下流にポンプが配置され、これは図2に示されている。
【0041】
第1の蒸気−液体分離器機構は、典型的には、少なくとも1つの気化タンクを備える。第1の蒸気−液体分離器機構は、異なる圧力の少なくとも2つの蒸気フラクションを提供するために、連続して配置された少なくとも2つの気化タンクを備えることが、好ましい。そのような機構は、効率的な熱回収を提供する。
【0042】
第2の蒸気−液体分離器機構は、典型的には、気化タンクを備える。第3の蒸気−液体分離器機構は、典型的には、少なくとも1つの気化タンクを備える。1つの実施例では、第3の蒸気−液体分離器機構は、少なくとも2つの気化タンクを備える。
【0043】
第1の蒸気送達機構は、前述の第1の蒸気−液体分離器機構からの蒸気フラクションを予熱機構の前に第3の蒸気−液体分離器機構からの蒸気フラクションと混合させるように配置され得る。それにより、予熱機構で必要とされる設備が少なくなる。
【0044】
1つの実施例では、システムは、第1の蒸気−液体分離器機構からの冷却されたHTC処理済み汚泥から沈殿物フラクションを得るための沈降機構をさらに備える。システムは、沈殿物フラクションを固体フラクション及び液体フラクションに分離するために沈降機構の下流に配置された、フィルタ・プレスなどの沈殿物分離ユニットをさらに備え得る。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】入って来る汚泥がHTC反応器へ導かれ、その反応器から少なくとも1つの貧粒子フラクションが酸化ステップへ導かれ、少なくとも1つの富粒子フラクションが蒸気−液体分離及びその後の脱水へ導かれるプロセスを概略的に示す図である。
図2】入って来る汚泥が加熱されてHTCへ導かれ、その反応器から少なくとも1つの貧粒子フラクションが、その後に多重の気化が続く湿式酸化ステップへ導かれ、少なくとも1つの富粒子フラクションが多重の気化へ導かれるプロセスを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
慣例的なHTCプロセスでは、入って来る汚泥流と出て行くHTC生成物との間の熱交換は、妥当な設備サイズでは、例えば蒸気、電気、又は他のエネルギー担体の形態の外的な熱の追加を伴わずに必要な反応温度に達するのを可能にするのに十分なほど、効率的ではない。典型的には、供給原料として都市汚泥が使用される場合にHTC反応の継続を維持するために、400から1000kWh/tの間の乾燥固体の入力が必要とされる。
【0047】
さらに、HTCプロセスは、廃水を生じさせ、この廃水は、入って来る有機含有量のかなりの部分、典型的には15〜30%をなおも含み、CODレベルが高く、また、多くの場合生分解性が良くないので、対処するのが困難である。この廃水が廃水処理プラントにおいて好気的又は嫌気的な洗浄ステップに戻される場合、微生物学的な平衡を乱して、正しく機能する洗浄プロセスに不可欠な細菌を殺し、結局は難分解性の(非生分解性の)CODが廃水処理プラントを通過して水受給者へと流れて行く危険性が存在する。
【0048】
本発明者らは、HTCプロセスからの特定のフラクションが湿式酸化にさらされる場合、HTCプロセスは、合理的な方法で熱が回収されるのであれば、外的な熱の追加又は設備の過度の使用を伴わずに行われ得ることを認識した。
【0049】
したがって、本開示の第1の態様として、
− 少なくとも1つの蒸気フラクションを用いて、好ましくは直接蒸気噴射により、入って来る汚泥を予熱して、予熱済み汚泥を得るステップと、
− 高温の蒸気フラクションを用いて、好ましくは直接蒸気噴射により、予熱済み汚泥をさらに加熱して、加熱済み汚泥を得るステップと、
− 加熱済み汚泥の水熱炭化(HTC)をして、HTC処理済み汚泥を得るステップと、
− HTC処理済み汚泥から貧粒子フラクションを分離するステップと、
− 貧粒子フラクションの湿式酸化をして、加熱済み貧粒子フラクションを得るステップと、
− 加熱済み貧粒子フラクションに対して第1の気化を行い、さらなる加熱ステップで使用される高温の蒸気フラクションを得るステップと、
− HTC処理済み汚泥から富粒子フラクションを分離するステップと、
− 富粒子フラクションに対して気化を行い、予熱するステップで使用される少なくとも1つの蒸気フラクション、及び冷却済み富粒子フラクションを得るステップと、
を含む、(好ましくは廃水処理プラントからの)都市汚泥又は産業汚泥などの汚泥の処理の方法が提供される。
【0050】
例えば、HTC処理済み汚泥を、流動化及び/又は沈殿の原理に基づくHTC反応器内で、貧粒子フラクション及び富粒子(生成物)フラクションに分離することが可能である。これは、第2の態様に関連してさらに論じられる。
【0051】
液面が高くなるのを避けるためにプロセスから排出される必要がある平衡流(balance stream)に好ましくは相当する、わずかなHTC処理済み汚泥が、部分的な酸化によって処理される。
【0052】
湿式酸化ステップは、反応器内で(圧縮された空気又はOの形態の)酸素によって進められることが好ましい。湿式酸化ステップのための反応器は、例えばZimPro又は同様の会社によって供給されるような従来の反応器であってよい。
【0053】
湿式酸化ステップは、とりわけ、温度がHTCステップの温度よりも著しく高く維持されるように、酸化剤の供給量を調整することによって制御され得る。これは、予熱済み汚泥をHTCステップの反応温度に至らせるのに十分に高い温度を持つ蒸気を生成するために酸化プロセスを使用することができるという利点を有する。
【0054】
湿式酸化の後、しかしその後の第1の気化の前に、不活性ガスが(酸化反応器内で又は独立して)分離され得る。これは、酸化剤として空気が使用される場合には特に重要なことである。第1の気化の後、少なくとも1つの蒸気フラクションを生成するために、さらなる気化が行われ得る。そのようなさらなる気化からの少なくとも1つの蒸気フラクションは、富粒子フラクションの気化からの少なくとも1つの蒸気と実質的に同じ圧力を有することが好ましい。実質的に同じ圧力を有する蒸気フラクションは、予熱に使用される前に合流されてよく、これは、予熱に必要とされる設備を少なくする。
【0055】
第1の気化が、また場合によりさらなる気化が行われた貧粒子フラクションは、生物学的処理のステップにさらされるか、又は下水道に排出され得る。貧粒子フラクションは、バイオガスの生成のための向上された生分解性を利用して、嫌気性処理にさらされることが好ましい。最後の気化ステップ後の貧粒子流内に残っている熱は、嫌気性反応を適切な反応温度に保つために利用され得る。
【0056】
本開示の第2の態様として、
− 汚泥を受け入れるための入口と、
− 前述の汚泥を水熱炭化(HTC)ステップにさらすための第1の反応器と、
− 汚泥を入口から第1の反応器へ送るための機構であって、予熱機構、及び予熱機構の下流に配置されたさらなる加熱機構を含む機構と、
− HTC処理済み汚泥から貧粒子フラクション及び富粒子フラクションを分離するための機構と、
− 貧粒子フラクションを湿式酸化にさらすための第2の反応器と、
− 富粒子フラクションを冷却し且つ少なくとも1つの蒸気フラクションを提供するための、第1の蒸気−液体分離器機構と、
− 前述の第2の反応器からの酸化済みフラクションを冷却し且つ高温の蒸気フラクションを提供するための、第2の蒸気−液体分離器機構であって、前述の第2の反応器の下流に設けられる第2の蒸気−液体分離器機構と、
− 前述の少なくとも1つの蒸気フラクションを前述の第1の蒸気−液体分離器機構から予熱機構へ送ることができる第1の蒸気送達機構と、
− 前述の高温の蒸気フラクションを前述の第2の蒸気−液体分離器機構から加熱機構へ送ることができる第2の蒸気送達機構と、
を備える、(好ましくは廃水処理プラントからの)都市汚泥又は産業汚泥などの汚泥の処理のためのシステムが提供される。
【0057】
好ましくは垂直の第1の反応器では、貧粒子フラクション及び富粒子フラクションの分離を促進するために、流動化及び/又は沈殿の原理が使用され得る。したがって、第1の反応器は、そこから貧粒子フラクションが引き抜かれる少なくとも1つの上部出口と、そこから富粒子フラクションが引き抜かれる少なくとも1つの下部出口とを備え得る。これは、上部出口及び下部出口により、HTC処理済み汚泥から2つのフラクションを分離するための機構が提供されることを意味する。結果として、第2の反応器は、上部出口に接続され、第1の蒸気−液体分離器機構は、下部出口に接続される。本明細書では、上部出口は、「第1の出口」とも呼ばれ、下部出口は、「第2の出口」とも呼ばれる。
【0058】
1つの実施例では、第1の蒸気−液体分離器機構からの冷却済み汚泥を澄んだフラクション及び沈殿物フラクションに分離するための沈降タンクなどの沈降機構が、第1の蒸気−液体分離器機構の下流に設けられる。
【0059】
システムは、沈殿物フラクションを固体フラクション及び液体フラクションに分離するための、沈降用機構の下流に配置されたフィルタ・プレスなどの沈殿物分離ユニットをさらに備え得る。次いで、この液体フラクションは、例えば図1に示されるように再循環されて、入って来る懸濁液に供給され得る。
【0060】
上記のものと自由に組み合わせることができる別の実施例によれば、前述のシステムは、トラックによって運ばれるように適合されたコンテナ、好ましくは運送用コンテナ、最も好ましくは12.192m(40フィート)型運送用コンテナ内に配置される。
【0061】
方法及びシステムが図1に概略的に示されており、この方法及びシステムでは、例えば、しかしこれらに限定されないが、都市排水処理プラント、産業プロセス、又は農業若しくは畜産業における設備であり得る発生源から、(A)において汚泥が受け入れられる。汚泥は、約30℃の初期温度を有するが、蒸気、及びプロセスからの貧粒子液体流により、段階的(5’、4’、3’)に加熱される。汚泥は、約200℃の温度でHTC反応が行われるHTC反応器(1)に供給される。約200℃の温度を保持する富粒子懸濁液が、HTC反応器から引き抜かれて、少なくとも1つの蒸気フラクション及び冷却済み富粒子懸濁液を生成する液体−蒸気分離器(4)において液体−蒸気分離又は気化され、冷却済み富粒子懸濁液は、約60〜90℃の温度を保持する貧粒子液体流及び濃い残留物であるHTC炭(C)を生成する脱水(5)へさらに導かれる。60〜90℃の液体流は、位置5’において、入って来る汚泥と混合されて、汚泥を約50℃の温度まで加熱するのに役立つ。液体−蒸気分離器(4)からの少なくとも1つの蒸気フラクションは、入って来る懸濁液を位置4’において約50℃から約160℃まで加熱するために使用される。
【0062】
約200℃の温度を保持する貧粒子フラクションは、ここでは酸化反応器内に圧縮空気を圧送する圧縮機(D)によって示されているように酸化剤が送り込まれる酸化反応器(2)へ導かれる。酸化反応は発熱性のものであり、熱を発生させる。酸化による産出物は、約270℃の温度を有して、蒸気−液体分離機構(3)へ導かれ、この蒸気−液体分離機構(3)は、一方では約210℃の温度を保持する蒸気フラクションを生成し、また、廃水処理プラント(B)に戻され得る貧粒子液体流を生成する。次いで、約210℃の温度を保持する蒸気フラクションは、入って来る懸濁液を約160℃からHTCプロセスに十分な約200℃まで加熱するために使用される。したがって、HTC温度よりも高い温度で酸化ステップが行われることが、重要である。
【0063】
本明細書において開示されるプロセス及びシステムの重要な利点は、改善されたエネルギー効率である。酸化ステップは、HTCステップにおいて汚泥を加熱するために使用され得る十分な量の熱を発生させて、始動段階後の外的な加熱の必要性を大幅に低下(典型的には、排除)する。
【0064】
しかし、HTCプロセスの始動は、外的な熱の入力が必要とされ得る。目標とする温度が達せられると、湿式酸化された貧粒子液相からの熱回収により、全必要熱量が内部的に供給されて、最終的な加熱に必要な高温の蒸気、及び富粒子生成物相が提供され得る。
【0065】
より洗練された方法及びシステムが図2に概略的に示されており、この方法及びシステムでは、都市排水処理プラント、産業プロセス、又は農業若しくは畜産業における施設であり得る発生源から、(A)において汚泥が受け入れられる。汚泥は、約30℃の初期温度を有するが、プロセスからの貧粒子液体流、及び蒸気フラクションにより、段階的(5’、4’、3’)に加熱される。汚泥は、約210℃の温度でHTC反応が行われるHTC反応器(1)に供給される。約210℃の温度を保持する富粒子懸濁液が、HTC反応器の下部出口から引き抜かれて、第1の液体−蒸気分離器(4)において液体−蒸気分離又は気化され、この第1の液体−蒸気分離器(4)は、2つの気化槽を有し、したがって、異なる圧力の2つの蒸気フラクション、及び冷却済み富粒子懸濁液を生成し、冷却済み富粒子懸濁液は、約60〜90℃の温度を保持する貧粒子液体流及び濃い残留物であるHTC炭(C)を生成する脱水(5)へさらに導かれる。60〜90℃の液体流は、位置5’において、入って来る汚泥と混合されて、汚泥を約50℃の温度まで加熱するのに役立つ。
【0066】
約210℃の温度を保持する貧粒子フラクションが、HTC反応器において上部出口から分離されて、ここでは酸化反応器内に圧縮空気を圧送する圧縮機(D)によって示されているように酸化剤が送り込まれる酸化反応器(2)へ導かれる。酸化反応は発熱性のものであり、熱を発生させる。酸化による産出物は、約270℃の温度を有して、第2の蒸気−液体分離機構(3a)へ導かれ、この第2の蒸気−液体分離機構(3a)は、約220℃の温度を保持する蒸気フラクション、及び第3の蒸気−液体分離機構(3b)へ導かれる貧粒子液体流を生成し、第3の蒸気−液体分離機構(3b)は、2つの気化槽を有し、したがって、異なる圧力の2つの蒸気フラクション、及び廃水処理プラントに戻され得る液体流を生成する。約220℃の温度を保持する蒸気フラクションは、予熱済み懸濁液を約165℃からHTCプロセスに好ましい温度である約210℃までさらに加熱する(3’)ために使用される。さらなる加熱(3’)は、ベンチュリ・ミキサでの蒸気の直接噴射によって行われる。ベンチュリ・ミキサの下流には、ポンプが設けられる。
【0067】
第1の液体−蒸気分離器(4)からの2つの蒸気フラクション、並びに第3の液体−蒸気分離器(3b)からの2つの蒸気フラクションは、直列に配置された2つのベンチュリ・ミキサを含む予熱機構(4’)において、入って来る懸濁液を加熱するために使用される。各ベンチュリ・ミキサの下流には、ポンプが設けられる。第1及び第3の液体−蒸気分離器(4、3b)からの低圧の蒸気フラクションは、組み合わせられて、予熱機構(4’)の第1の(上流の)ベンチュリ・ミキサに加えられる。第1及び第3の液体−蒸気分離器(4、3b)からの高圧の蒸気フラクションは、組み合わせられて、予熱機構(4’)の第2の(下流の)ベンチュリ・ミキサに加えられる。
【0068】
本開示は、以下の項目化された実施例の一覧をさらに提供する。
1.入って来る汚泥/懸濁液の水熱炭化(HTC)のステップを含んで、HTC炭及び少なくとも1つの貧粒子液体流を生成する、汚泥の処理のための方法であって、
− 前述の懸濁液の第1のフラクションが、前述のHTCステップから引き抜かれて、高められた温度及び圧力での酸化のステップにさらされること、
− 前述の第1のフラクションが、前述の酸化のステップに続いて、蒸気及び第1の貧粒子液体流を生成する熱水混合蒸気回収(flash steam recovery)にさらされること、
− 前述の懸濁液の第2のフラクションが、前述のHTCステップから引き抜かれて、蒸気、第2の貧粒子液体流、及びHTC炭を生成する熱水混合蒸気回収及びその後の脱水にさらされること、並びに、
前述の蒸気が、入って来る懸濁液を加熱するために使用されること
を特徴とする方法。
2.前述の第1のフラクションが、前述の入って来る汚泥流の平均TSSよりも低い総懸濁固体量(TSS)を有する、項目1に記載の方法。
3.TSSが、50g/lよりも低く、好ましくは30g/lよりも低く、より好ましくは20g/lよりも低く、最も好ましくは約0から約10g/lの間である、項目2に記載の方法。
4.前述の第1のフラクションが、HTCステップでの温度に相当する温度で引き抜かれる、項目1から3のいずれか一項目に記載の方法。
5.前述の酸化ステップが、前述の第1のフラクションへの酸化剤の噴射により、180〜300℃、好ましくは230〜300℃の間の温度で行われる、項目1から4のいずれか一項目に記載の方法。
6.前述の酸化剤が、酸素、過酸化水素、過炭酸塩、及び過炭酸から選択され、また、好ましくは、圧縮空気であることが好ましい空気などの酸素含有ガスである、項目5に記載の方法。
7.前述の酸化ステップが、HTCステップの温度よりも著しく高い温度で行われる、項目5に記載の方法。
8.前述の第1の貧粒子液体流が、生物学的処理のステップにさらされるか又は下水道に排出される、項目1から6のいずれか一項目に記載の方法。
9.前述の第2の貧粒子液体流が、再循環されて、入って来る汚泥流に混合される、項目1から7のいずれか一項目に記載の方法。
10.前述のHTCステップが、180〜250℃の間の温度で、約0.25から約8時間の間、好ましくは0.5〜2hの間の平均保持時間にわたって行われる、項目1から8のいずれか一項目に記載の方法。
11.汚泥処理のためのシステムであって、
− 汚泥を受け入れるための入口と、
− 前述の汚泥を加熱するための機構と、
− 前述の汚泥を水熱炭化(HTC)ステップにさらすための第1の反応器と、
− HTC処理済み汚泥の一部分を迂回させるための機構であって、前述の部分における総懸濁固体(TSS)含有量が、入って来る汚泥流におけるものよりも低い機構と、
− 前述のHTC処理済み汚泥の部分を高められた温度での酸化にさらすための第2の反応器と、
− 前述の第1の反応器からの汚泥を冷却し且つ少なくとも1つの第1の蒸気フラクションを提供するための第1の蒸気−液体分離器機構であって、前述の第1の反応器の下流に設けられた第1の蒸気−液体分離器機構と、
− 前述の第2の反応器からの酸化済み汚泥を冷却し且つ少なくとも1つの第2の蒸気フラクションを提供するための第2の蒸気−液体分離器機構であって、前述の第2の反応器の下流に設けられた第2の蒸気−液体分離器機構と、
− 前述の第1の蒸気−液体分離器機構からの前述の少なくとも1つの蒸気フラクション、及び前述の第2の蒸気−液体分離器機構からの前述の少なくとも1つの第2の蒸気フラクションを送って、汚泥入口から前述の第1の反応器へ導かれる汚泥を予熱することが可能な、蒸気送達機構と、
− 蒸気−液体分離器機構からの冷却済み汚泥を第1のフラクション及び第2のフラクションに分離するための分離機構であって、第1のフラクションにおける懸濁固体含有量が、第2のフラクションにおける懸濁固体含有量よりも多い、分離機構と、
を備えるシステム。
12.前述の加熱機構が、電気的な加熱機構を含む、項目11に記載のシステム。
13.前述の第2の反応器内に圧縮空気を噴射するための圧縮機をさらに備える、項目11又は12に記載のシステム。
14.前述の第1及び第2の気化機構が、少なくとも1つの気化タンクを備え、各気化タンクが、前述の蒸気送達機構に接続された蒸気出口を備える、項目11から13のいずれか一項目に記載のシステム。
15.沈殿物フラクションを固体フラクション及び液体フラクションに分離するための、沈降機構の下流に配置されたフィルタ・プレスなどの沈殿物分離ユニットをさらに備える、項目11から14のいずれか一項目に記載のシステム。
【0069】
「実例1」都市汚泥の処理
室内実験において、嫌気的に処理された都市汚泥のサンプルが得られ、また、少なくとも入って来る汚泥のDSに注目して、組成が分析された。予想される毒性化合物の存在もまた、判定され得る。次いで、この汚泥を回分反応器に入れて、200℃の温度で1hにわたって熱水処理した。得られた懸濁液を冷却及び濾過して、液状の貧粒子流を生成した。この液状の貧粒子流を、回分反応器内で200℃まで再加熱して、回分反応器内に酸素ガスを導入することにより部分的に酸化させた。
【0070】
温度上昇を記録し、発熱反応熱(MJ/kg乾燥物質)を判定した。得られた液体を冷却及び分析した。液体流のBOD及びCODの比は、生分解性の大まかな基準として使用されることが多い。この実験では、COD及びBODの値を酸化処理の前後に測定し、BODとCODの比は、上昇していることが示され、これは、生分解性への好ましい効果を意味する。予想される毒性化合物の存在及び/又は濃度が、入って来る汚泥において又はHTCステップ後の濾液において既に判定されている場合、貧粒子液体流内の同一の化合物を分析することも重要である。適切な方法は、例えばガス・クロマトグラフィ又は質量分析である。不要な物質の数の減少、及び/又はそのような物質の濃度の減少は、酸化の有効性の指標として受け取られる。
【0071】
さらなる詳述がなくとも、当業者であれば、実例を含めて、この説明を使用して、本発明を最大限利用することができると考えられる。また、本発明は、本発明者らが現時点で知る最良の形態を構成する好ましい実施例に関して本明細書で説明されてきたが、本明細書に添付された特許請求の範囲に記載された本発明の範囲から逸脱することなく、当業者にとって明らかであろう様々な変更及び修正がなされ得ることが、理解されるべきである。
図1
図2