【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、HTC反応からの貧粒子フラクションの酸化のステップを追加すること、及び、酸化からの熱を使用して、入って来る汚泥をHTCのための反応温度に至らせることにより、有機的な内容物を有する汚泥の処理のための水熱炭化(HTC)システム及びプラントの動作を著しく改善することができることを見いだしたが、これは、外部エネルギーの供給が(プロセスの始動を除いて)必要とされないことを意味する。そのようなプロセスは、HTC炭に加えて、生分解性が著しく向上した液体流を生成する。
【0016】
したがって、第1の態様は、
− 少なくとも1つの蒸気フラクションを用いて、好ましくは直接蒸気噴射により、入って来る汚泥を予熱して、予熱済み汚泥を得るステップと、
− 高温の蒸気フラクションを用いて、好ましくは直接蒸気噴射により、予熱済み汚泥をさらに加熱して、加熱済み汚泥を得るステップと、
− 加熱済み汚泥の水熱炭化(HTC)をして、HTC処理済み汚泥を得るステップと、
− HTC処理済み汚泥から貧粒子フラクションを分離するステップと、
− 貧粒子フラクションの湿式酸化をして、加熱済み貧粒子フラクションを得るステップと、
− 加熱済み貧粒子フラクション
に対して第1の
気化を行い、典型的には反応器に入って行く懸濁液を反応温度に至らせるさらなる加熱ステップで使用される高温の蒸気フラクションを得るステップと、
− HTC処理済み汚泥から富粒子フラクション(particle−rich fraction)を分離するステップと、
− 富粒子フラクション
に対して気化を行い、予熱するステップで使用される少なくとも1つの蒸気フラクション、及び冷却済み富粒子フラクションを得るステップと、
を含む、(好ましくは、廃水処理プラントからの)都市汚泥又は産業汚泥などの汚泥の処理方法に関する。
【0017】
第1の態様の方法の重要な特徴は、湿式酸化が、特に高温の(HTC反応の温度よりも高い)蒸気フラクションの発生を可能にし、また、この高温の蒸気フラクションが、反応器に送られる汚泥を加熱するための最後の蒸気フラクションであることである。したがって、高温の蒸気フラクションは、汚泥をHTC反応の温度に至らせることができる。
【0018】
当業者によって理解されるように、貧粒子フラクションは、富粒子フラクションよりも低い総懸濁固体(TSS:total suspended solids)含有率を有する。
【0019】
湿式酸化は、典型的には、酸素、過酸化水素、過炭酸塩、及び過炭酸から通常選択される酸化剤の噴射を含む。酸化剤は、空気などの酸素含有ガスであることが好ましく、好ましくは圧縮された空気又は酸素である。
【0020】
好ましい実施例では、方法は、加熱済み貧粒子フラクション
に対してさらに気化を行い、予熱するステップで使用される少なくとも1つの蒸気フラクションを得るステップを含む。このさらなる
気化は、第1の
気化の後で行われることが、理解される。
【0021】
1つの実施例では、さらなる
気化からの蒸気フラクションが、圧力がほぼ同じである富粒子フラクションの
気化からの蒸気フラクションと混合される。
【0022】
上首尾でなおもエネルギー効率の良いHTCのために、加熱済み汚泥は、典型的には180〜250℃の温度を有する。加熱済み汚泥の温度は、好ましくは195〜230℃であり、より好ましくは205〜225℃である。
【0023】
さらなる加熱のステップ(即ち、高温の蒸気フラクションが使用されるステップ)は、典型的には、汚泥の温度を少なくとも10℃上昇させる。このステップは、好ましくは、汚泥の温度を、少なくとも15℃、例えば15〜60℃上昇させる。より好ましくは、このステップは、温度を、少なくとも20℃、例えば20〜50℃上昇させ、最も好ましくは25〜50℃上昇させる。
【0024】
したがって、高温の蒸気フラクションの温度は、典型的には、予熱済み汚泥の温度よりも25〜75℃高い。高温の蒸気フラクションの温度は、好ましくは、30〜70℃高く、例えば40〜60℃高い。
【0025】
上述の温度の上昇を得るには、高温の蒸気フラクションの温度は、典型的には190〜270℃であり、好ましくは205〜270℃である。高温の蒸気フラクションの温度の最も好ましい範囲は、215〜245℃である。
【0026】
上記の論述から理解されるように、高温の蒸気フラクションの温度は、加熱済み汚泥の温度よりも高い。温度差(ΔT)は、通常、9〜40℃の範囲内である。ΔTが過度に低い場合、高温の蒸気フラクションと加熱済み汚泥との間の圧力差が過度に低くなり、このことは、蒸気供給が、非常に精密に制御されなければならないこと、及び、圧力差の推進力が、上首尾の蒸気の噴射に対して過度に低い恐れがあることを意味する。40℃を上回るΔTを得ることは、十分な蒸気を作り出すためにより大量の貧粒子流が抽出されること、又は、設備のための高価な高圧設計につながる非常に高い温度での湿式酸化により貧粒子流が処理されることを必要とするので、望ましくない。ΔTは、好ましくは10〜35℃、例えば10〜30℃である。特に好ましい実施例では、ΔTは、10〜25℃である。本発明者らの計算によれば、最適なΔTは、10〜21℃である。
【0027】
湿式酸化ステップ前の貧粒子フラクションの温度は、通常、加熱済み汚泥の温度とほぼ同じ(例えば、±5℃又は±3℃)である。
【0028】
HTCステップでの平均保持時間は、通常は0.25〜8hであり、好ましくは0.5〜2hである。したがって、貧粒子フラクションの内容物は、概して、標準的な状況では湿式酸化の前に0.25〜8hの期間にわたってHTCを受け、好ましい実施例では0.5〜2hの期間にわたってHTCを受ける。
【0029】
1つの実施例では、方法は、冷却済み富粒子フラクションを脱水して固体フラクションを得るステップをさらに含む。さらに、貧粒子液体流(particle−lean liquid stream)が、前述の脱水から得られ得る。この貧粒子液体流は、再循環されて、入って来る汚泥流に混合され得る。湿式酸化された流れは典型的には廃水処理プラントにおいてより容易に分解されるので、湿式酸化にさらされた液体流よりも、この液体流を再循環させることが、より好ましい。
【0030】
湿式酸化のための十分な「燃料」を提供して貧粒子フラクションの温度を十分な程度まで高めるために、貧粒子フラクションの(US EPA承認の方法5220による)CODは、少なくとも20g/lであることが好ましい。貧粒子フラクションのCODは、湿式酸化の前に、少なくとも40g/l、例えば少なくとも50g/lであることがより好ましい。貧粒子フラクションのCODは、入って来る汚泥の組成、並びに温度及び/又は滞留時間などのHTC反応の条件の関数である。
【0031】
湿式酸化に使用される設備のファウリング、及び、過剰な量の固形物を廃水処理プラントに戻すことを避けるために、貧粒子フラクションのTSSは、典型的には50g/lよりも低く、好ましくは30g/lよりも低く、より好ましくは20g/lよりも低く、最も好ましくは0〜10g/lの間である。
【0032】
貧粒子液体流が、貧粒子フラクションの
気化から得られる。上記のように、この貧粒子液体流は、湿式酸化され、したがって、典型的には、第1の態様の方法においては再循環されない。その代わりに、貧粒子液体流は、HTC処理プロセスの水分バランスを制御するために、廃水処理プラントに戻されることが好ましい。
【0033】
したがって、貧粒子フラクションの気化から得られる貧粒子流の(体積で少なくとも90%などの)少なくとも一部は、入って来る汚泥に加えられないことが好ましい。1つの実施例では、この貧粒子流の(体積で少なくとも90%などの)少なくとも一部が、廃水処理プラント(好ましくは、汚泥が得られた廃水処理プラント)に戻されて、そこでさらなる生物学的処理にさらされ得る。
【0034】
第2の態様として、
− 汚泥を受け入れるための入口と、
− 前述の汚泥を水熱炭化(HTC)ステップにさらすための第1の反応器と、
− 汚泥を入口から第1の反応器へ送るための機構であって、予熱機構、及び予熱機構の下流に配置されたさらなる加熱機構を含む機構と、
− HTC処理済み汚泥から貧粒子フラクション及び富粒子フラクションを分離するための機構と、
− 貧粒子フラクションを湿式酸化にさらすための第2の反応器と、
− 富粒子フラクションを冷却し且つ少なくとも1つの蒸気フラクションを提供するための、第1の蒸気−液体分離器機構と、
− 前述の第2の反応器からの酸化済みフラクションを冷却し且つ高温の蒸気フラクションを提供するための、第2の蒸気−液体分離器機構であって、前述の第2の反応器の下流に設けられる第2の蒸気−液体分離器機構と、
− 前述の少なくとも1つの蒸気フラクションを前述の第1の蒸気−液体分離器機構から予熱機構へ送ることができる第1の蒸気送達機構と、
− 前述の高温の蒸気フラクションを前述の第2の蒸気−液体分離器機構から加熱機構へ送ることができる第2の蒸気送達機構と、
を備える、(好ましくは廃水処理プラントからの)都市汚泥又は産業汚泥などの汚泥の処理のためのシステムが提供される。
【0035】
一実施例では、第1の反応器は、第1の出口及び第2の出口を備え、第2の出口は、第1の出口より下に配置される。したがって、HTC処理済み汚泥から貧粒子フラクション及び富粒子フラクションを分離するための機構は、分離に利用され得る流動化及び/又は沈殿の原理の通りに設けられる(SE1550903A1における反応器を参照)。この実施例では、第2の反応器は、第1の反応器の第1の出口に接続され、第1の蒸気−液体分離器機構は、第1の反応器の第2の出口に接続される。
【0036】
第1の態様の方法は、第2の態様のシステムにおいて行われ得る。
【0037】
好ましい実施例では、システムは、前述の第2の反応器からの酸化済みフラクションをさらに冷却し且つ少なくとも1つの蒸気フラクションを提供するための、第3の蒸気−液体分離器機構をさらに備え、この第3の蒸気−液体分離器機構は、前述の第2の蒸気−液体分離器機構の下流に設けられる。そのような実施例では、前述の第1の蒸気送達機構は、前述の少なくとも1つの蒸気フラクションを第3の蒸気−液体分離器機構から予熱機構へ送ることがさらにできる。それにより、熱効率が高められる。
【0038】
プロセスを開始するために、システムは、電気的な加熱機構を備えてもよい。そのような電気的な加熱機構は、汚泥を入口から第1の反応器へ送るための機構上に配置されることが好ましい。汚泥を入口から第1の反応器へ送るための機構上での好ましい位置は、さらなる加熱機構の下流である。
【0039】
1つの実施例では、システムは、加圧された空気又は酸素を前述の第2の反応器内に噴射するための圧縮機を備える。加圧された空気又は酸素を第2の反応器へ送るパイプにそのような圧縮機が接続され得ることを、当業者は理解する。
【0040】
汚泥は、直接蒸気噴射によって加熱されることが好ましい。したがって、予熱機構は、少なくとも1つの蒸気ミキサ、例えば少なくとも1つのベンチュリ・ミキサを備え得る。1つの実施例では、予熱機構は、異なる圧力の蒸気を噴射するための少なくとも2つの蒸気ミキサを備える。さらなる加熱機構がベンチュリ・ミキサなどの蒸気ミキサを備えることもまた、好ましい。通常、各蒸気ミキサの下流にポンプが配置され、これは
図2に示されている。
【0041】
第1の蒸気−液体分離器機構は、典型的には、少なくとも1つの
気化タンクを備える。第1の蒸気−液体分離器機構は、異なる圧力の少なくとも2つの蒸気フラクションを提供するために、連続して配置された少なくとも2つの
気化タンクを備えることが、好ましい。そのような機構は、効率的な熱回収を提供する。
【0042】
第2の蒸気−液体分離器機構は、典型的には、
気化タンクを備える。第3の蒸気−液体分離器機構は、典型的には、少なくとも1つの
気化タンクを備える。1つの実施例では、第3の蒸気−液体分離器機構は、少なくとも2つの
気化タンクを備える。
【0043】
第1の蒸気送達機構は、前述の第1の蒸気−液体分離器機構からの蒸気フラクションを予熱機構の前に第3の蒸気−液体分離器機構からの蒸気フラクションと混合させるように配置され得る。それにより、予熱機構で必要とされる設備が少なくなる。
【0044】
1つの実施例では、システムは、第1の蒸気−液体分離器機構からの冷却されたHTC処理済み汚泥から沈殿物フラクションを得るための沈降機構をさらに備える。システムは、沈殿物フラクションを固体フラクション及び液体フラクションに分離するために沈降機構の下流に配置された、フィルタ・プレスなどの沈殿物分離ユニットをさらに備え得る。