【文献】
エキサイトブログ,2005年11月29日,https://krinrinka.exblog.jp/2280188/
【文献】
Yahoo!知恵袋,2018年12月27日,https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11200998626
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態.
図1及び
図2を参照して、本発明の実施の形態に係る肩紐、肩紐ユニット、及び衣服について説明する。
図1及び
図2に例示するように、衣服500は、一対の肩紐10により構成される肩紐ユニット100と、衣服500の本体部である衣服本体200と、を有している。つまり、肩紐ユニット100は、肩紐10を2つ組み合わせたものであり、衣服本体200の上端部2aに取り付けられる。
【0013】
肩紐ユニット100の各肩紐10は、衣服本体200の上端部2aに、左右に分けて取り付けられている。つまり、人が衣服500を着用した際、一対の肩紐10がクロスしないようになっている。肩紐ユニット100の各肩紐10は、それぞれ、一端が、衣服本体200の上端部2aにおける前側に取り付けられ、他端が、衣服本体200の上端部2aにおける後ろ側であって、一端よりも中央に寄った位置に取り付けられている(
図2参照)。
【0014】
すなわち、肩紐10は、上端部2aの前側に対応する一端よりも、上端部2aの後ろ側に対応する他端の方が、予め設定された寄せ長Yだけ中央寄りとなるように、衣服本体200に取り付けられる。
図2では、寄せ長Yが5cm〜6cm程度である例を示しているが、これに限定されない。寄せ長Yは、着用者の体型・嗜好、後述する第1部材21と第2部材22との接合箇所の傾斜角度、及びデザイン性などが勘案されて設定される。詳細については後述する。
【0015】
肩紐10は、衣服本体200に取り付けられるものであり、本体部材20と、安定部材50と、を有している。本体部材20は、例えば、ポリエステルを含む生地を加工して形成される。安定部材50は、帯状に形成され、本体部材20に重ねて取り付けられている。安定部材50は、平面視で長方形状の、少なくとも長手方向に伸縮性を有する生地により形成されている。安定部材50は、例えばレース生地やベロア生地により形成すると、意匠性の向上を図ることができる。安定部材50は、ポリウレタンを含む化学繊維などのストレッチ素材、もしくは毛を含む素材などにより形成してもよい。
【0016】
図1及び
図2では、衣服500として、和服の内側に着用される和服用下着を例示している。衣服本体200は、上端部2aと下端部2bとが開口した袋状の部材であり、例えばポリエステルを含む生地を加工して形成される。本実施の形態の衣服本体200は、上下方向に沿ったプリーツ加工が全体に施されているため、デザイン性に優れると共に、径方向への伸縮性に優れている。衣服本体200は、
図1及び
図2のように、人に着用された状態で筒状となり、その人の体型に合わせて径方向に伸縮する。したがって、衣服本体200は、着用者の臀部の位置から下端部2bに向けて細くなるシルエットとなる。
【0017】
衣服本体200は、人が着用したときに、臀部の上側で且つ腰よりも下側の箇所にタック3が形成されている。そして、衣服本体200は、上端部2aから概ねタック3が設けられている位置まで(以下「径小部S」という)の径が、その位置から下端部2bまで(以下「径大部L」という)の径よりも小さくなっている。より具体的に、衣服本体200は、長方形状の生地の端部が縫製されたものであるが、径小部Sの縫い代は、径大部Lの縫い代よりも約10cm程度多くなっている。衣服本体200は、製作過程において、生地の裏側を表にした状態で縫製され、縫製後に裏返される。したがって、径小部Sと径大部Lとの境界部分には、縫い目の段差ができており、この部分にタック3が施されている。径小部Sと径大部Lとの境界部分の縫い目は、なだらかに形成するとよい。
【0018】
次に、
図3及び
図4を参照し、肩紐10及び肩紐ユニット100の具体的な構成例について説明する。本体部材20は、それぞれが帯状に形成された第1主部31及び第2主部32を含んでいる。より具体的に、本体部材20は、第1部材21と第2部材22とを有している。第1部材21は、帯状に形成された第1主部31と、第1主部31の一方の面の少なくとも一部に重ねられた第1補強部41とを有している。第2部材22は、帯状に形成された第2主部32と、第2主部32の一方の面の少なくとも一部に重ねられた第2補強部42とを有している。第1補強部41は、第1主部31と一体的な構成であり、台形状に形成されている。第2補強部42は、第2主部32と一体的な構成であり、台形状に形成されている。なお、第1主部31の一方の面と、第2主部32の一方の面とは、第1主部31と第2主部32とを真っ直ぐに伸ばしたときに同じ側を向く面である。
【0019】
第1主部31と第2主部32とは、同形状であって、互いの一端部において接合されている。第1主部31は、肩先側に配置される側端部である肩側端部31mよりも、首側に配置される側端部である首側端部31nの方が設定長だけ長くなっている。第2主部32は、肩先側に配置される側端部である肩側端部32mよりも、首側に配置される側端部である首側端部32nの方が設定長だけ長くなっている。
【0020】
ここで、設定長は、肩紐ユニット100及び衣服500がオーダーメイド製品の場合は、ユーザの肩の傾斜や体型の他、寄せ長Yなどに合わせて設定される。一方、肩紐ユニット100及び衣服500が既製品の場合は、一般的な日本人の肩の傾斜や体型の他、寄せ長Yなどに合わせて設定される。もっとも、外国人に特化した肩紐ユニット100及び衣服500を製造してもよく、この場合の設定長は、当該外国人の肩の傾斜や体型の他、寄せ長Yなどに合わせて決めるとよい。
【0021】
安定部材50は、本体部材20と同様の形状である。本実施の形態において、安定部材50は、本体部材20の第1補強部41及び第2補強部42側の面に重ねて取り付けられている。また、安定部材50は、後述するように、平面視で長方形状の、少なくとも長手方向に伸縮性を有する生地により形成され、長手方向の長さが、第1主部31又は第2主部32の肩側端部(31m、32m)の2倍の長さとなっている(
図7を参照して後述する)。安定部材50は、その両端部が本体部材20の両端部と合致し、かつ、その両側端部が本体部材20の両側端部と合致している。
【0022】
続いて、
図5〜
図8と共に、
図9のフローチャートを参照して、肩紐10の製造方法の具体例を説明する。
図5〜
図8では、
図5(a)に示すように、元生地1の長辺に沿った方向を長手方向とし、短辺に沿った方向を短手方向とする。ここでは、一対の肩紐10を備えた衣服500が
図1及び
図2のような和服用下着であり、約160cmの女性が着用することを想定したサイズ感で説明する。
【0023】
(重ね工程:
図9のステップS101)
まず、
図5(a)のように、長方形状の生地である元生地1を準備する。元生地1は、基部1aと、第1縫い代1bと、第2縫い代1cと、により構成されている。基部1aは、本体部材20になる部分、すなわち本体部材20が完成したときに残る部分である。一方、第1縫い代1b及び第2縫い代1cは、本体部材20が完成する際に、ほとんどの部分が切り落とされる部分である。ところで、各図においては、第1縫い代1bと基部1aとの境界、及び基部1aと第2縫い代1cとの境界に沿って便宜的に破線を示しているが、この破線の箇所には、例えばチャコなどを用いて印をつけるとよい。
【0024】
ここで、
図5(a)に示すように、元生地1の長手方向の長さを長さTとし、短手方向の長さを幅Kとする。そして、基部1aの幅をKaとし、第1縫い代1bの幅をKbとし、第2縫い代1cの幅をKcとする。ここでは、上記想定により、長さTを80cm程度に設定している。もっとも、長さTは、肩紐10を取り付ける衣服本体200の種類、想定した着用者の身長や体型などに応じて適宜設定し、変更することができる。
【0025】
本実施の形態では、幅Kaが5cmに設定され、幅Kb及び幅Kcが3cmに設定されている。もっとも、幅Ka、幅Kb、及び幅Kcは、それぞれ任意に設定し、適宜変更することができる。加えて、幅Kbと幅Kcとは、等しくてもよく、異なっていてもよい。元生地1は、長手方向における中心位置(図の短手方向に沿った破線参照)を境界としてみた場合、第1生地11と第2生地12とに区分けされる。すなわち、元生地1は、2つの長方形状の生地を合わせたものである。
図5(b)以降では、第1生地11側のみを図示するが、第2生地12側も同様に加工されるため、第2生地12の各部材についても仮想的に引き出し線を引いて符号を示す。
【0026】
次いで、
図5(b)のように、元生地1を、端部同士を合わせた状態で2つに折り重ねる。この状態の元生地1において、一方の端部は閉じているため閉端部1uと称し、他方の端部は開放され ているため開放端部1vと称する。
【0027】
(傾斜縫合工程:
図9のステップS102)
傾斜縫合工程は、2つに折り重ねられた長方形状の元生地1の、閉端部1uから所定の距離だけ離れた接合部1wにおいて、少なくとも短手方向に沿った中央の設定範囲内を、短手方向に対し傾斜させて縫い合わせる工程である。設定範囲とは、基部1aに対応する範囲である。
【0028】
接合部1wは、第1縫い代1bと基部1aとの境界において閉端部1uから長さT
1だけ離れた点Pと、基部1aと第2縫い代1cとの境界において閉端部1uから長さT
2だけ離れた点Qとを結ぶラインに対応するライン部1xを含む。
図6(a)に例示する接合部1wは、第1縫い代1b上を、点Pから短手方向に沿って延びる直線に対応する部分と、第2縫い代1c上を、点Qから短手方向に沿って延びる直線に対応する部分とを含む。
【0029】
本実施の形態では、
図6(a)に破線で示すように、接合部1wにおいて、一方の側端部から他方の側端部に亘り、ライン部1xを含めて第1生地11と第2生地12とを縫い合わせているが、これに限らず、少なくともライン部1xの箇所を縫い合わせればよい。ライン部1xは、
図6(a)のような直線状に限らず、幾分か湾曲した曲線状であってもよい。
【0030】
長さT
1及び長さT
2は、想定される着用者の肩の傾斜及び体型等に合わせて設定される。本実施の形態では、長さT
1が10cmに設定され、長さT
2が9.5cmに設定されており、つまり、上述した設定長は0.5cm(5mm)に設定されている。すなわち、首側端部31nに相当する長さT
4は、肩側端部31mに相当する長さT
3よりも、設定長である0.5cmだけ長くなっている。もっとも、設定長は、上記の例に限らず、長さT
2が長さT
1よりも短くなるように、つまり、長さT
4が長さT
3よりも長くなるように適宜設定すればよい。結果として、短手方向に対し、予め設定された傾斜角を有するライン(ライン部1x)に沿って縫い合わせることになる。
【0031】
ここで、設定長について付言する。一般的な日本人の肩の傾斜角度の平均は、男女ともに、水平方向に対して約20°といわれている。例えば、想定上の着用者の肩の傾斜角度を20°とし、寄せ長Yを考慮せずに設定長を決める場合、幅Kaが5cmであれば、「設定長=5×tan20°(tan20°≒0.36)」との演算により、設定長は約18mmに設定される。
【0032】
ただし、本実施の形態では、設定長を決める際に寄せ長Yも考慮されている。つまり、設定長は、衣服本体200の上端部2aの前側に取り付けられる一端の位置よりも、上端部2aの後ろ側に取り付けられる他端の位置の方が、寄せ長Yだけ中央寄りになることを前提に設定されている。換言すれば、肩紐10は、衣服本体200に対し、上端部2aの前側に対応する一端よりも、上端部2aの後ろ側に対応する他端の方が、寄せ長Yだけ中央寄りとなるように取り付けられる(
図2参照)。
【0033】
このように、肩紐10の他端が一端よりも中央寄りになることで、第1部材21と第2部材22との接合箇所が、首側から肩先側に向けて傾斜する。したがって、肩紐10の実際の傾斜角度は、設定長に起因した傾斜角度と、寄せ長Yに起因した傾斜角度との合算となる。つまり、肩紐10は、設定長が5mmであっても、第1部材21と第2部材22との接合箇所は、寄せ長Yを適切に設定することで、実質的に、設定長を18mmにした場合と同程度の傾斜角度(20°)となる。そして、肩紐10の他端を一端よりも中央寄りにすることで、着用者の肩に、後部中央下側に向かう適度な押圧力がかかる。そのため、肩紐10は、ずれ落ちの抑制力が高まり、衣服本体200をさらに安定的に支えることができる。もっとも、設定長は、寄せ長Yを考慮せずに決めてもよい。想定上の着用者の肩の傾斜角度は、上記例の20°に限らず、任意に設定し、適宜変更することができる。
【0034】
(切断工程:
図9のステップS103)
切断工程は、傾斜縫合工程を経た
図6(a)に例示する部材の閉端部1uを短手方向に沿って切断する工程である。ここで、接合部1wから開放端部1vまでは2枚重ねとなっており、そのうちの第1生地11側の部分を第1要部11aとし、第2生地12側の部分を第2要部12aとする。また、閉端部1uの切断により2手に分かれた閉端部1uからライン部1xまでの各生地のうち、第1生地11側の部分を第1重ね部11bとし、第2生地12側の部分を第2重ね部12bとする。
【0035】
(折り返し工程:
図9のステップS104)
折り返し工程は、切断工程での切断によって2手に分かれた各部分を、接合部1wを支点として反対方向に折り返す工程である。すなわち、
図6(b)のように、第1重ね部11bと第2重ね部12bとを接合部1wを支点として反対側に折り返す。このとき、第1要部11aと第1重ね部11b、及び第2要部12aと第2重ね部12bを、アイロン等により押圧して密着させるとよい。
【0036】
(重ね部接合工程:
図9のステップS105)
本実施の形態において、重ね部接合工程は、折り返し工程を経た
図6(b)に例示する部材につき、設定範囲の両側端部において、第1要部11aと第1重ね部11bとを、少なくとも第1重ね部11bが存する範囲内で長手方向に沿って縫い合わせると共に、第2要部12aと第2重ね部12bとを、少なくとも第2重ね部12bが存する範囲内で長手方向に沿って縫い合わせる工程である(
図6(c)の太破線参照)。すなわち、第1要部11aと第1重ね部11bとを設定範囲の両側端部で縫い合わせ、第2要部12aと第2重ね部12bとを設定範囲の両側端部で縫い合わせる。
【0037】
(側端部処理工程:
図9のステップS106)
側端部処理工程は、重ね部接合工程を経た
図6(c)に例示する部材の設定範囲外の部分を切り落とすことにより本体部材20を完成させる工程である。本実施の形態の側端部処理工程では、さらに、第1要部11a及び第1重ね部11bについて、設定範囲の両側端部のそれぞれを長手方向に沿って縫い合わせると共に、第2要部12a及び第2重ね部12bについて、設定範囲の両側端部のそれぞれを長手方向に沿って縫い合わせる。例えば、側端部処理工程は、ロックミシンなどを用い、上記の切り落とし処理と縫い合わせ処理とをほぼ同時に実施してもよいし、切り落とし処理と縫い合わせ処理とを別々に行ってもよい。後者の場合は、各処理の順序は問わない。もっとも、側端部処理工程は、ロックミシンに限らず、カバーステッチミシンなどの他のミシンを用いてもよく、手縫いで行ってもよい。
【0038】
(安定処理工程:
図9のステップS107)
安定処理工程は、本体部材20と安定部材50とを重ねて接合させる工程である。ここで、本実施の形態の安定部材50は、
図7に例示するように、平面視で長方形状の、少なくとも長手方向に伸縮性を有する生地により形成され、長手方向の長さが、第1主部31又は第2主部32の肩側端部(31m、32m)の長さT
3の2倍の長さとなっている。つまり、安定部材50の長手方向の長さは、本体部材20側の首側端部(31n、32n)の長手方向の長さよりも短くなっている。
【0039】
そのため、安定処理工程では、本体部材20と安定部材50とを重ねると共に、双方の両端部を合致させ、本体部材20の首側端部(31n、32n)の長さに、安定部材50の首側に配置される側端部の長さを合わせるべく、安定部材50に幾分かの張力をかけた状態で本体部材20と安定部材50とを縫い合わせる。このようにすることで、完成した肩紐10の首側に配置される側端部が伸縮性を帯び、着用者の肩の首側の部分に長手方向に沿ったテンションがかかるため、肩紐10をより安定的に肩に掛けることができる。
【0040】
傾斜縫合工程は、
図6の例に限らず、
図8(a)のように、点Pと点Qとを結ぶ直線上において、第1生地11と第2生地12とを縫い合わせてもよい。かかる場合、折り返し工程を経た状態は
図8(b)のようになり、重ね部接合工程を経た状態は
図8(c)のようになる。ただし、
図6のように、短手方向に対する縫い目の傾斜角度が、基部1aの箇所よりも第1縫い代1b及び第2縫い代1cの箇所の方が緩やかになるように縫合した方が、折り返した第1重ね部11b及び第2重ね部12bの各側端部の、第1要部11a及び第2要部12aの各側端部に対するずれが幾分か緩和される。そのため、第1縫い代1bの幅Kbを
図8の場合よりも短くしても、第1重ね部11b及び第2重ね部12bの第1縫い代1b側の角を、第1要部11a及び第2要部12aの第1縫い代1bの範囲内に収めることが可能となる。なお、第1重ね部11b及び第2重ね部12bの第1縫い代1b側の角が、第1要部11a及び第2要部12aの第1縫い代1bの範囲内に収めるようにすれば、第1補強部41及び第2補強部42は、それぞれ、2つの斜辺が同じ方向に傾斜した台形状となる。傾斜縫合工程では、点Pと点Qとを通る緩やかな曲線上において、第1生地11と第2生地12とを縫い合わせてもよい。
【0041】
ここで、肩紐10を製造するに際しては、上記の各工程の全てを行う必要はなく、適宜選択した複数の工程を組み合わせて肩紐10を製造すればよい。例えば、重ね工程(S101)では、長方形状の生地である元生地1を2つに折り重ねる例を示したが、これに限らず、元生地1の半分の大きさである同形状の2枚の生地を、両端部を合わせて重ねるようにしてもよい。この場合は、切断工程(S103)は不要となる。なお、元生地1を2つに折り重ねる場合であっても、切断工程(S103)を省略してもよい。ただし、閉端部1uが閉じた状態のまま残存することになるため、閉端部1uから接合部1wまでの長さは極力短くするとよい。さらに、切断工程(S103)は、重ね工程の直後、つまり傾斜縫合工程の前に行ってもよい。加えて、閉端部1uから接合部1wまでの長さを極力短くした場合は、折り返し工程(S104)を省略してもよい。
【0042】
また、重ね部接合工程(S105)を省略することもできる。このようにしても、側端部処理工程において、本体部材20の両側端部を縫合する点、および安定処理工程において、本体部材20に安定部材50を縫い付ける点を考慮すれば、完成品としての本体部材20又は肩紐10にとっての影響は少ない。ただし、第1要部11aと第1重ね部11b、及び第2要部12aと第2重ね部12bが接合されていない状態で側端部処理工程を行うことになるため、側端部処理工程の作業効率の観点からは、重ね部接合工程を行う方がよい。もっとも、重ね部接合工程は、縫合処理に限らず、第1要部11aと第1重ね部11b、及び第2要部12aと第2重ね部12bを、両面テープなどで接合させてもよい。この場合は、側端部処理工程で切り落とされる部分に両面テープなどを貼るとよい。もっとも、基部1aに相当する幅Kaの生地を準備し、これに上記各工程と同様の処理を施すことにより、側端部処理工程(S106)を省略することも可能である。
【0043】
ところで、上記においては、本体部材20に安定部材50を取り付けたものを肩紐10として説明したが、これに限らず、
図10のように、本体部材20そのものを、本発明の肩紐としてもよい。この場合は、第1補強部41及び第2補強部42が内側(肩側)になるよう衣服本体200に取り付けるとよい。
【0044】
以上のように、本実施の形態の肩紐10は、互いの一端部において接合された同形状の第1主部31と第2主部32とを含む本体部材30を有している。そして、第1主部31と第2主部32とは、肩側端部(31m、32m)よりも首側端部(31n、32n)の方が設定長だけ長くなっている。よって、第1主部31と第2主部32との接合箇所が肩の傾斜に沿い、肩との接触面積が増加するため、肩に過度な圧力をかけることなく位置ずれを抑制することができる。
【0045】
すなわち、
図11に示すような、長方形状で伸縮性の乏しい従来の肩紐610をもつ衣服を着用した場合、破線で囲った箇所のように、肩紐610の肩先側が浮いてしまうため、肩紐と肩との接触部分が少なくなり、肩紐610の位置ずれが起こってしまう。これに対し、本実施の形態の肩紐10は、重ねられた2つの長方形状の元生地1の、閉端部1uから所定の距離だけ離れた接合部1wにおいて、少なくとも短手方向に沿った中央の設定範囲内を、短手方向に対し傾斜させて縫い合わせることにより製造されている。つまり、肩紐10は、直角台形状の2つの生地の斜辺部分を縫い合わせて接合させた構成を採っている。このような、人の肩の傾斜に合わせた縫合処理により、肩紐10のより多くの部分が肩に接触するため、肩紐10を安定的に肩に掛けることができる。
【0046】
また、本体部材30は、第1主部31と一体的な構成であって、第1主部31の一方の面の少なくとも一部に重ねられた第1補強部41と、第2主部32と一体的な構成であって、第2主部32の一方の面の少なくとも一部に重ねられた第2補強部42と、を有している。ここで、第1補強部41及び第2補強部42の長手方向の長さは、
図6及び
図8に示す長さT
1及び長さT
2に対応する。そして、長さT
1及び長さT
2は、一般的に人が肩と認識する部分に対応づけて設定される。換言すれば、長さT
1及び長さT
2は、肩紐10に対して主に荷重がかかる部分に対応づけて設定される。そのため、本体部材30に第1補強部41及び第2補強部42が存在することにより、肩紐10を掛けたときの安定性を高めることができる。上記の説明では、長さT
1が10cmに設定され、長さT
2が9.5cmに設定された例を示したが、これに限らず、長さT
1及び長さT
2は任意に設定し、適宜変更することができる。なお、本体部材20は、第1主部31と第2主部32とを接合したものと同形状の部材を生地から切り抜いたものであってもよい。
【0047】
さらに、肩紐10は、帯状に形成され、本体部材に重ねて取り付けられた安定部材50を有している。これにより、肩紐10の全体的な強度を高めることができる。安定部材50は、本体部材30の第1補強部41及び第2補強部42側の面に重ねて取り付けるとよい。このようにすれば、第1補強部41及び第2補強部42が肩側に向かず、露出しないため、第1主部31と第1補強部41との縫合箇所、及び第2主部32と第2補強部42との縫合箇所のほつれや、第1補強部41又は第2補強部42の剥がれなどを防ぐことができる。
【0048】
本実施の形態の安定部材50は、平面視で長方形状の、少なくとも長手方向に伸縮性を有する生地により形成され、長手方向の長さが、第1主部31又は第2主部32の肩側端部(31m、32m)の2倍の長さとなっている。そして、安定部材50は、その両端部が本体部材20の両端部と合致し、かつ、その両側端部が本体部材20の両側端部と重なるように、本体部材20に取り付けられている。よって、完成した肩紐10の首側に配置される側端部が伸縮性を帯び、着用者の肩の首側の部分に適度な圧がかかるため、肩紐10をより安定的に肩に掛けることができる。肩紐10は、レース生地により形成された安定部材50を用いることで、意匠性の向上を図ることができる。なお、レース生地は、上記各図の柄に限定されず、種々のレース柄を採用することができる。
【0049】
肩紐10は、2つを組み合わせた肩紐ユニット100として提供してもよい。この場合、肩紐10は、上記のとおり、前後の区別がない製品として製造されることから、左右の肩の何れにも適用することができるため、組み合わせる際の作業負担を軽減することができる。肩紐ユニット100は、同じ態様の肩紐10を2つ組み合わせて構成するとよい。
【0050】
本実施の形態における衣服500は、本体部である衣服本体200と、衣服本体200の上端部2aに取り付けられる肩紐ユニット100と、を有している。肩紐ユニット100の各肩紐10は、衣服本体200の上端部2aに、左右に分けて取り付けられる。よって、一対の肩紐10が衣服500の着用の妨げにならず、ユーザは円滑に衣服500を着用することができる。
【0051】
肩紐ユニット100の各肩紐10は、それぞれ、一端が、衣服本体200の上端部2aにおける前側に取り付けられ、他端が、衣服本体200の上端部2aにおける後ろ側であって、上記の一端よりも中央に寄った位置に取り付けられている。そして、設定長は、上端部2aの前側に取り付けられる一端の位置よりも、上端部2aの後ろ側に取り付けられる他端の位置の方が、寄せ長Yだけ中央寄りになることを前提に設定されたものである。そのため、第1主部31と第2主部32との接合箇所の傾斜と、衣服本体200の上端部2aにおける後部中央下側への圧力とが相まって、肩紐10の肩への密着性及び安定性を高めることができる。
【0052】
ところで、和服の内側に着用する下着としては、和服の作法の観点から、なるべく足(素足)が見えないようにする工夫を凝らした和服用下着が知られている(例えば実用新案登録第3217895号公報参照)。該公報の和服用下着は、プリーツ加工が施された生地を用いて形成され、かつ身体に巻き付けて結ぶための紐体を有しているため、着付けの直後において下方にずれる心配はない。ただし、和服の着付けには、身体の締め付けが伴うことから、一般に2〜3時間程度の時間が経過すると、身体が着付け時の状態よりも細くなるため、和服用下着が下方にずれ、機能及び機動性が損なわれるおそれがある。この点、衣服本体200としての和服用下着の本体部に、肩紐ユニット100を取り付ければ、たとえ紐体を備えていなくても、下方への位置ずれを防ぐことができる。
【0053】
また、衣服本体200は、上下方向に沿ったプリーツ加工が全体に施されていることから、径方向に伸縮自在であるため、着用者の身体を圧迫することなく、着用者の体型にフィットさせることができる。そして、衣服本体200は、人が着用した際に臀部よりも上側に位置する箇所が径小部Sとなっており、タック3が設けられていることから、腰部及び臀部周辺で衣服本体200を支えることができるため、衣服本体200のずり落ちを抑制することができる。加えて、衣服500としての和服用下着を着用していれば、自動車の乗降時や階段の昇降時などに和服の裾割れが生じても、衣服本体200の下方の部分がガードとなるため、足の露出を防ぐことができる。もっとも、肩紐10及び肩紐ユニット100は、サロペット、スリップ、キャミソール、ボディースーツ、及びブラジャーなどの、着物用下着以外の衣服にも適用することができる。
【0054】
ここで、上述した各実施の形態は、肩紐、肩紐ユニット、肩紐ユニットを備えた衣服、及び肩紐の製造方法における好適な具体例であり、本発明の技術的範囲は、これらの態様に限定されるものではない。例えば、上記の各図では、オーバーロック加工により本体部材20の両側端部にステッチ(かがり縫い)を施す例を示したが、これに限らず、本体部材20の両側端部のステッチは、インターロック加工によって施してもよい。もっとも、ステッチのかがり幅は、任意に設定することができる。肩紐10の製造方法における各工程における縫合処理には、上記の例に限らず、周知な種々の縫合手法を採用することができる。肩紐10の製造方法における各工程の一部又は全部は、専用の機械等を用いて自動的に行ってもよい。衣服本体200への肩紐10の取り付け処理も同様、手縫い又はミシンを用いた縫合の他、専用の機械等を用いて自動的に行ってもよい。
【0055】
衣服本体200と肩紐10とは、面ファスナー、ホック、又はボタンなどを用いて接合するようにしてもよい。衣服本体200と肩紐10との接合に面ファスナーを用いる場合は、高さ方向の取り付け位置を調整することにより、肩紐10の実質的な長さ調整を行うことができる。衣服本体200と肩紐10との接合に、複数のホック又は複数のボタンを用いることにより、肩紐10の実質的な長さ調整が可能な構成としてもよい。このようにすれば、既製品として肩紐10を備えた衣服500を販売する場合などにおいて、ターゲットを拡張することができる。オーダーメイドで肩紐10を備えた衣服500を販売する場合であっても、体型の変化などに追従させることができるため、ユーザのニーズを満たすことができる。もっとも、肩紐10の長さを調整するための周知の部材や機構を適用することにより、長さ調整可能な肩紐10を製造してもよい。何れの場合でも、第1主部31と第2主部32との接合箇所が肩の上部に当たるように、肩紐10の前後で均等な長さ調整ができる構造を採るとよい。すなわち、肩紐10もしくは衣服500(肩紐10及び衣服本体200の上端部2a)は、肩紐10の長さ調整を可能とする調整手段を有していてもよい。加えて、衣服500は、面ファスナー、ホック、又はボタンなどを用いることにより、肩紐10の取り外しが容易な構成とすれば、デザインの異なる肩紐10への付け替えや、消耗した肩紐10の付け替えなどが容易となるため、ユーザビリティーの向上を図ることができる。
【解決手段】衣服本体に取り付けられる肩紐である。肩紐は、それぞれが帯状に形成された第1主部及び第2主部を含む本体部材を有するものである。第1主部と前記第2主部とは、同形状であって、互いの一端部において接合されている。第1主部と前記第2主部とは、肩先側に配置される側端部よりも首側に配置される側端部の方が設定長だけ長くなっている。