特許第6931953号(P6931953)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6931953超音波風速計及び前記超音波風速計を用いた風速計測方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6931953
(24)【登録日】2021年8月19日
(45)【発行日】2021年9月8日
(54)【発明の名称】超音波風速計及び前記超音波風速計を用いた風速計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01P 5/24 20060101AFI20210826BHJP
【FI】
   G01P5/24 B
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-50102(P2020-50102)
(22)【出願日】2020年3月2日
【審査請求日】2020年3月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520098718
【氏名又は名称】黒川 幸輝
(72)【発明者】
【氏名】黒川 幸輝
【審査官】 岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開平7−218526(JP,A)
【文献】 特開2009−222506(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2019/0187167(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第107402315(CN,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0007698(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P 5/00− 5/26
G01P13/00−13/04
G01W 1/00− 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4個の超音波送受信器を正方形の頂点に配置された測定柱で突出させ、
前記4個の超音波送受信器を前記正方形の対角線で向かい合うように対向させた2組の測定器対と、
前記2組の測定器対で風向を求める風向計測部と、
前記2組の測定器対で風速を求める風速計測部と、
前記超音波送受信器の対向角度を変える角度変更手段と、
前記角度変更手段に前記風向計測部及び前記風速計測部の計測結果に基づき
所定の方向及び所定の角度を変更させる制御手段を備えた
超音波風速計。
【請求項2】
前記角度変更手段がサーボモーター式である請求項1記載の超音波風速計。
【請求項3】
前記角度変更手段がフェイズドアレイ式である請求項1記載の超音波風速計。
【請求項4】
前記制御手段では前記超音波送受信器で検知した情報で前記対向角度変更手段の角度を変更させる制御する請求項1から請求項3の何れか一項記載の超音波風速計を用いた超音波を用いた風速計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波の特性上、風の強さによっては影響を受けることから特許文献1にも説明されている測定可能領域(風速が60m/sec以下の領域。特許文献1の明細書段落[0003]参照。)を超える風速域(以下、強風速域と呼ぶ。)でも測定可能な超音波風速計及び前記超音波風速計を用いた風速計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
風速の測定方法として広く認知されているものはプロペラを設け、その回転数によって風速を導出するもの(風杯型、風車型等)である。しかし、これらの風速計は機械的な可動部を設けているため、高速度環境では強度に限界がある。その他に風速を計測するものとして熱線流速計がある。これは、加熱された金属から周囲に熱が伝達する際に、熱量が流体の速度に依存する現象を利用しているものであるが、風向を測定できないことに加え、電極が露出しているために、一般的に屋外では利用できない。
【0003】
一方で屋外での3次元測定に使用されているのが超音波風速計である。機械的な可動部がないため耐候性に優れ、頻繁な点検を行いにくい僻地や、過酷な環境下に設置されることが多い。しかし、60m/sec以上の風が超音波センサに対して垂直に当たった場合、超音波ビームが風に流されてしまい対向する超音波受信機に到達せず正常に動作しない。そのため、現状測定できる流速は最大で約60m/secが限度である。そこで、現状測定不可能な60m/sec以上の風が吹いた場合でも測定できる超音波風速計を発明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−264184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述の「特許文献1」の発明の名称「超音波式エアデータセンサ」では、強風速域(特許文献1の発明は低速航空機の速度計であるため高速度域)の強風速域の風速には対応してなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0007】
第1発明の超音波風速計は、4個の超音波送受信器を正方形の頂点に配置された測定柱で突出させ、前記4個の超音波送受信器を前記正方形の対角線で向かい合うように対向させた2組の測定器対と、前記2組の測定器対で風向を求める風向計測部と、前記2組の測定器対で風速を求める風速計測部と、前記超音波送受信器の対向角度を変える角度変更手段と、前記角度変更手段に前記風向計測部及び前記風速計測部の計測結果に基づき所定の方向及び所定の角度を変更させる制御手段を備えている。
第2発明の超音波風速計は、請求項1記載の発明において、前記角度変更手段がサーボモーター式である。
第3発明の超音波風速計は、請求項1記載の発明において、前記角度変更手段がフェイズドアレイ式である。
第4発明の超音波風速計を用いた風速計測方法は、請求項1から請求項3の何れか一項記載の超音波風速計の発明において、前記制御手段では前記超音波送受信器で検知した情報で前記対向角度変更手段の角度を変更させる制御をしている。
【発明の効果】
【0008】
以上のような、技術的手段を有することにより、以下の効果を有する。
従来の超音波風速計では測定することができなかった強風速域において計測が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る第1の実施形態の超音波風速計の外観図である。
図2】超音波風速計における測定方法説明図である。
図3】従来の超音波風速計における説明図である。
図4】本発明に係る超音波風速計の測定方法説明図である。
図5】本発明に係る第1の実施形態の超音波風速計のフローチャートである。
図6】本発明に係る第1の実施形態の超音波風速計のフローチャートである。
図7】本発明に係る第2の実施形態の超音波風速計の外観図である。
図8】本発明に係る第2の実施形態の超音波風速計における測定方法説明図である。
図9】本発明に係る第2の実施形態の超音波風速計における測定方法説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を用いて本発明の実施形態を説明する。この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
(第1の実施形態)
第1の実施形態について、図1図2図4乃至図6に基づき説明する。まず、図1の斜視図を用いて本発明の超音波風速計1の外観を説明する。
【0012】
超音波風速計1の概略の構成を図1で説明する。図1において、超音波風速計1は、測定部5と、測定部5に対する測定方法の制御や操作、および測定部5からの測定結果を表示する測定制御部(リモコン)6に大まかに分けられる。なお、本実施形態においては、測定部5と測定制御部6は、有線のリモコンコード9によって接続するものとして説明しているが、無線によって実施しても良い。
【0013】
測定部5は、基台8と、基台8の上面に測定柱10、20、30、40が垂直に4本起立している。測定柱10、20、30、40の基台8の上面側における位置関係は、所定の長さの一辺で形成されている正方形となっている。所定の長さとは、例えば10cmで、測定柱10、20、30、40は、一辺10cmの正方形の頂点になる位置に設置されていることになる。
【0014】
測定柱10、20、30、40は所定の長さ、例えば10cmの円柱であり、測定柱10、20、30、40の先端の近傍には、超音波送受信器11、21、31、41が設けられている。
【0015】
超音波送受信器11、21、31、41は、測定柱10、20、30、40の先端近傍において、超音波送受信器11、21、31、41から送受信される超音波の送受信面を対向する様に配置されている。よって図1において、超音波送受信器11と超音波送受信器21の送受信面及び超音波送受信器31と超音波送受信器41の送受信面は、相互に平行であり、前記送受信面からの垂線は、前記の正方形の対角線上にある関係で向き合っている。よって、測定柱10の超音波送受信器11と測定柱20の超音波送受信器21が測定器の対(測定器対)となり、測定柱30の超音波送受信器31と測定柱40の超音波送受信器41が測定器の対(測定器対)となる。
【0016】
また、測定柱10、20、30、40が基台8に取り付けられている箇所には、ポテンショメーター(角度位置センサー)付きのサーボモーターによる角度変更手段12、22、32、42が設けられている。
【0017】
なお、測定部5を屋外に固定できる様にするために、基台8の下側の面にネジ穴や取付フランジ等を設けても良い。また、本実施形態においては、基台8や測定柱10、20、30、40については、円柱としているが、風の乱流を起こしづらい形状であれば、その他の形状でも良い。
【0018】
測定制御部6の上面側には、風速や風向の測定結果や、測定モード等を表示する表示部61、電源スイッチ62、自動測定モードスイッチ63、手動測定モードスイッチ64、風速風向測定開始スイッチ65、平均風速測定スイッチ66、瞬間風速測定スイッチ67、手動測定モード時における風速補正スイッチ68等が設けられている。
【0019】
手動測定モードにおける風速補正スイッチ68は、強風速域であると予め予想される場合に、超音波送受信器11、21、31、41の対向する角度変更して、強風速域における風速に対応できるように補正するスイッチである。補正の範囲を選択可能にできるように、ローターリースイッチとしている。
【0020】
図2は、図1の測定部5を上側から見た場合の、超音波送受信器11、21、31、41の位置関係を説明する図である。前述の様に、測定柱10、20、30、40の基台8の上面側における位置関係は、所定の長さの一辺で形成されている正方形となっている。よって、超音波送受信器11と超音波送受信器21及び超音波送受信器31と超音波送受信器41の超音波送受信器の超音波送受信面の距離を両方ともLとすれば、超音波送受信面の距離Lで送受信される超音波は互いに直交する関係になっている。
【0021】
この測定部5に、風速Vが、測定部5の超音波送受信器11、21、31、41の配置に対してαの角度で風が吹いているとすると、超音波送受信器11と超音波送受信器21に送受信方向に平行な風速Vの成分は、
V1=Vsinα となる。
また、超音波送受信器31と超音波送受信器41に送受信方向に平行な風速Vの成分は、
V2=Vcosα となる。
【0022】
また、超音波送受信器11と超音波送受信器21に送受信される超音波の伝達時間をt11(風に対して下り)とt21(風に対して上り)とし、超音波送受信器31と超音波送受信器41に送受信される超音波の伝達時間をt12(風に対して下り)とt22(風に対して上り)とする。
そうすると、V1=Vsinα=L/2(1/t11−1/t21)
V2=Vcosα=L/2(1/t12−1/t22)となり、
tanα=(1/t11−1/t21)/(1/t12−1/t22)
【0023】
以上から、風向αと風速Vを求めることができることになる。
なお、前記のt11、t21またはt12、t22のうち、どちらか一方の伝達時間が測定できれば、凡その風速及び風向は無風の場合の伝達時間と比較することで、判断することができる。
【0024】
一方で、風速が60m/sec以上の領域では超音波送受信器の送受信方向に対して垂直方向の風によって超音波が風下方向に流されてしまうために、超音波受信機に信号が到達せず正常に動作しない。図3は従来の超音波風速計の強風環境下での挙動を示したものである。超音波送受信器11、21、31、41の位置関係は図2と同じである。
【0025】
この測定部5に、図2と同じく風速Vが、測定部5の超音波送受信器11、21、31、41の配置に対してαの角度の風が吹いているとする。ただし、V2は動作限界以上の速度(例えば、60m/sec以上)とする。
超音波送受信器11と超音波送受信器21の送受信方向の風速Vの成分は V1=Vsinαとなる。また、超音波送受信器31と超音波送受信器の送受信方向の風速Vの成分は V2=Vcosαとなる。
【0026】
また、超音波送受信器11が送信する超音波の伝達速度(音速)をC11(風に対して下り)とする。そうすると、超音波送受信器11から送信された超音波の速度C11は周囲の風速Vの影響を受け、合成速度V11となる。つまり、V11は超音波送受信器11の送信方向の速度成分がC11+Vsinαであり、それに対して垂直方向成分がVcosαである。
【0027】
つまり、V11は風速Vの影響で進行方向が風下方向へと変化する。超音波送受信器11の送信方向と合成速度V11の進行方向の角度の差をβとすると、βの絶対値が超音波送受信器の指向角の0.5倍より大きくなった場合に、超音波送受信器11から送信された超音波は超音波送受信器21に到達せず、正常に動作しない。以上が従来の超音波風速計が高速度域で利用できない原理である。
【0028】
なお、超音波送受信器31と超音波送受信器41の送受信方向成分の風速の測定に関してはV1が動作速度限界以下の場合、正常に動作する。
【0029】
図4は、高速度域において本発明を使用した場合の超音波風速計の11、21、31、41の位置関係を説明する図である。超音波送受信器11、21、31、41の位置関係は図2及び図3と同じである。
【0030】
この測定部5に、図2及び図3と同じく風速Vが、測定部5の超音波送受信器11、21、31、41の配置に対してαの角度の風が吹いているとする。ただし、V2は動作限界以上の速度(例えば、60m/sec以上)とする。超音波送受信器11と超音波送受信器21の送受信方向の風速Vの成分は V1=Vsinαとなる。
また、超音波送受信器31と超音波送受信器の送受信方向の風速Vの成分は V2=Vcosαとなる。
【0031】
また、超音波送受信器11が送信する超音波の伝達速度(音速)をC11(風に対して下り)とする。そうすると、超音波送受信器11から送信された超音波の速度C11は周囲の風速Vの影響を受け、合成速度V11となる。高速度域で正常に超音波を送受信するためには、合成速度V11の進行方向に超音波送受信器21がある必要がある。つまり、超音波送受信器11の送信方向を風上方向へ一定角度傾けることで合成速度V11の進行方向が常に超音波送受信器21を向くように調節する。
【0032】
超音波送受信器11の超音波の送信方向と合成速度V11の進行方向の角度の差をβとすると、sinβ=V2/C11 となる。C11は音速であり一定である。よって、超音波送受信器11の超音波の送信方向はV2に依存する。例えば、V2=60m/secの場合、β≒10.1度である。なお、超音波の指向角を20度とすると、β=10度以内では指向角の範囲内であるため、超音波の送信方向を調整せずに送受信可能である。V2=60m/secを超えた場合、βは10度以上となるため、超音波の送信角度をβと指向角の0.5倍(ここでは10度)の差分だけ風上方向に調整する。
【0033】
以上から、強風の影響によって二対の超音波送受信器の内、一方で超音波が正しく送受信できない場合には、他方の正しく動作した送受信器の取得データを用いることで超音波の送信角度を調節することができる。
なお、前記のt11、t21またはt12、t22のうち、どちらか一方の伝達時間が測定できれば、凡その風速及び風向は無風の場合の伝達時間と比較することで、判断することができる。
【0034】
本発明の超音波風速計1の自動測定モードの測定方法について、図2及び図4の超音波風速計1における測定状態の説明図と図5図6のフローチャートに基づいて説明する。
【0035】
超音波風速計1には電源コードや電池等により電源が供給されているものとする。そして、電源スイッチ62が押されることにより超音波風速計1がON状態となり、自動測定モードスイッチ63で、自動測定モードが選択され、風速風向測定開始スイッチ65が押されたことにより、超音波風速計1による風速及び風向の計測が開始されたものとする(ステップ1)。
【0036】
超音波送受信器11、21、31、41が対向する送受信器に対して超音波を送信する(ステップ2)。
【0037】
この場合に、正常に風速風向が測定できる状態、すなわち、図2の測定部5を上から見た説明図の状態において、ステップ2で送信した超音波が、対向する超音波送受信器11、21、31、41に正常に到達した場合、「YES」になりステップ4に進む(ステップ3)。
なお、ステップ3の「NO」の場合についてはステップ7に進む。
【0038】
図2で説明した方法を用いて測定制御部6で、風速と風向を計算する。(ステップ4)。
【0039】
風速と風向の値を出力する(ステップ5)。
【0040】
出力された風速と風向の値を測定制御部6の表示部61に表示する(ステップ6)。
【0041】
次に、ステップ3の判断が「NO」の場合、すなわち、超音波送受信器11、21、31、41が超音波を正常に受信しなかった場合の動作を示す。図1の場合設置される超音波送受信器は2対であるが、そのいずれかの組で超音波が対向する超音波送受信器11、21、31、41に正常に到達した場合、「YES」になりステップ8に進む(ステップ7)。
なお、ステップ7の「NO」の場合についてはステップ14に進む。
【0042】
正常に受信した超音波送受信器の送受信方向の風速を算出する。(ステップ8)
【0043】
ステップ7で正常に受信しなかった方向の超音波送受信器の送信方向を、図4で説明した手法を用いて、風上方向に傾ける(ステップ9)。
【0044】
角度を調節した超音波送受信器が可動範囲の限界に達した場合「YES」になり、ステップ12に進む(ステップ10)。「NO」の場合はステップ11に進む。
なお、可動範囲については、気象庁の記録では、1966年9月25日 富士山で観測された、最大瞬間風速が91m/secであるので、可動範囲を測定範囲とし、風速100m/secまでの範囲としても実用的には問題ないと考えられる。
【0045】
超音波送受信器11、21、31、41が対向する送受信器に対して超音波を送信する(ステップ11)。
【0046】
測定不能を出力する(ステップ12)。
【0047】
測定制御部6の表示部61に「測定不能」と表示する(ステップ13)。
【0048】
次に、ステップ7の判断が「NO」の場合、すなわち、二対の超音波送受信器11、21、31、41がいずれも超音波を正常に受信しなかった場合の動作を示す。超音波の送受信で得られる情報が全く無いため、超音波を正常に送受信できる角度を模索する必要がある。正常に受信していた直前の情報から風向と風速を予想し、超音波送受信器11、21、31、41を風上方向へ一定角度(例えば、風上方向に1度ずつ)傾ける(ステップ14)。
【0049】
角度を調節した超音波送受信器が可動範囲の限界に達した場合「YES」になり、ステップ19に進む(ステップ15)。「NO」の場合はステップ16に進む。
【0050】
超音波送受信器11、21、31、41が対向する送受信器に対して超音波を送信する(ステップ16)。
【0051】
ステップ16で送信した超音波が、対向する超音波送受信器に正常に到達した場合、「YES」になり、ステップ4に進む(ステップ17)。なお、「NO」の場合はステップ18に進む。
【0052】
超音波送受信器をさらに風上方向へ一定角度(例えば、風上方向に1度ずつ)傾ける(ステップ18)。
【0053】
ステップ15で「YES」の場合、すなわち超音波送受信器が可動範囲の限界に達した場合の動作を示す。直前までの動作で、超音波送受信器が正常に動作する角度は、正常に動作していた直前の情報における風上方向に存在しないことが判明した。次に風下方向で超音波送受信器が正常に動作する角度を模索する。超音波送受信器を風下方向へ一定角度(例えば、風下方向に1度ずつ)戻す(ステップ19)。
【0054】
角度を調節した超音波送受信器が可動範囲の限界に達した場合「YES」になり、ステップ12に進む(ステップ20)。「NO」の場合はステップ21に進む。
【0055】
超音波送受信器11、21、31、41が対向する送受信器11、21、31、41に対して超音波を送信する(ステップ21)。
【0056】
ステップ21で送信した超音波が、対向する超音波送受信器に正常に到達した場合、「YES」になり、ステップ4に進む(ステップ22)。なお、「NO」の場合はステップ23に進む。
【0057】
超音波送受信器をさらに風下方向へ一定角度(例えば、風下方向に1度ずつ)傾ける(ステップ23)。
【0058】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について、図7図8乃至図9に基づき説明する。まず、図7の斜視図を用いて、本発明の超音波風速計2の外観を説明する。
【0059】
超音波風速計2の概略の構成を図7で説明する。図7において、超音波風速計2は、測定部7と、測定部7に対する測定方法の制御や操作、および測定部7からの測定結果を表示する測定制御部(リモコン)6に大まかに分けられる。なお、第1の実施形態の超音波風速計1との違いは、測定部5が測定部7になるだけであるので、同一の符号を付して説明を省略する。
【0060】
測定部7は、基台8と、基台8の上面に測定柱15、25、35、45が垂直に4本起立している。測定柱15、25、35、45の基台8の上面側における位置関係は、所定の長さの一辺で形成されている正方形となっている。所定の長さとは、例えば10cmで、測定柱15、25、35、45は、一辺10cmの正方形の頂点になる位置に設置されていることになる。
【0061】
超音波送受信器16、26、36、46は、測定柱15、25、35、45の先端近傍において、超音波送受信器16、26、36、46から送受信される超音波の送受信面を対向する様に配置されている。よって図1において、超音波送受信器16と超音波送受信器26の送受信面及び超音波送受信器36と超音波送受信器46の送受信面は、相互に平行であり、前記送受信面からの垂線は、前記の正方形の対角線上にある関係で向き合っている。よって、測定柱15の超音波送受信器16と測定柱25の超音波送受信器26が測定器の対(測定器対)となり、測定柱35の超音波送受信器36と測定柱45の超音波送受信器46が測定器の対(測定器対)となる。
【0062】
超音波送受信器16、26、36、46は超音波を送信する素子を複数個備えている。図5では9個、図8及び図9では5個の素子16a、16b、16c、16d、16eを備えているが、この個数によってこの発明が限定されるものではない。個々の素子は超音波を送信するタイミングを個別に制御可能である。
【0063】
なお、測定部7を屋外に固定できる様にするために、基台8の下側の面にネジ穴や取付フランジ等を設けても良い。また、本実施形態においては、基台8や測定柱15、25、35、45については、風の乱流を起こしづらい形状であれば、その他の形状でも良い。
【0064】
図8は第2の実施形態について、超音波送受信器16に備わっている素子16a、16b、16c、16d、16eの超音波を送信するタイミングを同期し、各超音波の位相が等しい場合の様子を示したものである。超音波によって形成される包絡面は図8のように形成される。よって、超音波送受信器16から送信された超音波は、超音波送受信器26に向かって直進する。
【0065】
図9は、超音波送受信器16に備わっている素子16a、16b、16c、16d、16eの超音波の位相を変化させた場合の挙動である。素子16aが超音波を送信してから、
d、16eの順番で超音波を送信すると、各素子から送信された超音波の包絡面は図9のように形成される。よって超音波送受信器16から送信された超音波は、図8と比較して超音波送受信器36の方向へ変化する。
【0066】
第2の実施形態について、高速度域において本発明を使用した場合の計測手法及び自動測定モードの測定方法については超音波風速計1と同様であり説明を省略する。
【0067】
以上、本発明について、第1〜第2の実施形態に基づき説明してきたが、本発明は何らこれらの実施形態の構成に限定するものではない。例えば、第1〜第2の実施形態の組み合わせについては適宜組合せを変えて実施可能である。
【0068】
さらには、この発明は、これらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0069】
風速及び風向を測定できる機器であるので、産業上の利用性がある。
【符号の説明】
【0070】
1、2:超音波風速計
5、7:測定部
6:測定制御部
8:基台
9:リモコンコード
10、15、20、25、30、35、40、45:測定柱
11、16、21、26,31、36,41、46:超音波送受信器
12、22、32、42:角度変更手段
16a、16b、16c、16d、16e、:超音波送受信素子
61:表示部
62:電源スイッチ
63:自動測定モードスイッチ
64:手動測定モードスイッチ
65:風速風向測定開始スイッチ
66:平均風速測定スイッチ
67:瞬間風速測定スイッチ
68:風速補正スイッチ
【要約】
【課題】 従来の超音波風速計及び前記超音波風速計を用いた風速計測方法では、強風速域の風速には対応してなかった。
【解決手段】 超音波風速計1は、超音波送受信器11、21、31、41を突出させて対向するように配置した複数の測定器対と、前記超音波送受信器の対向角度を変える角度変更手段12、22、32、42と、角度変更手段12、22、32、42に所定の角度を変更させる制御手段6を備えている。また、超音波風速計1を用いた風速計測方法は、制御手段6では前記超音波送受信部11、21、31、41で検知した情報で前記対向角度変更手段12、22、32、42の角度を変更させる制御をしている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9