特許第6932008号(P6932008)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6932008セメント添加材の製造方法、およびプレミックスセメント組成物の製造方法
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  • 特許6932008-セメント添加材の製造方法、およびプレミックスセメント組成物の製造方法 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6932008
(24)【登録日】2021年8月19日
(45)【発行日】2021年9月8日
(54)【発明の名称】セメント添加材の製造方法、およびプレミックスセメント組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 18/14 20060101AFI20210826BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20210826BHJP
   C04B 14/06 20060101ALI20210826BHJP
   C04B 18/08 20060101ALI20210826BHJP
   C04B 18/10 20060101ALI20210826BHJP
   C04B 14/28 20060101ALI20210826BHJP
   C04B 14/36 20060101ALI20210826BHJP
【FI】
   C04B18/14 Z
   C04B28/02
   C04B14/06 Z
   C04B18/14 A
   C04B18/08 Z
   C04B18/10 A
   C04B14/28
   C04B14/36
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-32225(P2017-32225)
(22)【出願日】2017年2月23日
(65)【公開番号】特開2018-135250(P2018-135250A)
(43)【公開日】2018年8月30日
【審査請求日】2019年12月26日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141966
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 範彦
(72)【発明者】
【氏名】大野 拓也
(72)【発明者】
【氏名】森 寛晃
【審査官】 田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−009993(JP,A)
【文献】 特開2015−224182(JP,A)
【文献】 特開2015−226985(JP,A)
【文献】 特開2006−248828(JP,A)
【文献】 特開2009−084107(JP,A)
【文献】 特開平08−091885(JP,A)
【文献】 特開2018−087107(JP,A)
【文献】 特開2018−087108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00 − 32/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒体シリカフュームおよび凝集シリカフュームから選ばれる1種以上のシリカフュームと、ブレーン比表面積が2500〜10000cm/gの無機粉末を、該シリカフューム100質量部に対し無機粉末を10〜30質量部の割合で、ブレード状の撹拌羽根を有する混合機に投入して140〜480秒混合し、セメント添加材を製造する、セメント添加材の製造方法であって、
前記無機粉末が、石英粉末、高炉スラグ粉末、フライアッシュ、石炭灰粉末、石膏粉末、および石灰石粉末から選ばれる1種以上と、セメントを含む、セメント添加材の製造方法。
【請求項2】
前記無機粉末が、セメントを1〜99質量%含む、請求項1に記載のセメント添加材の製造方法。
【請求項3】
前記ブレード状の撹拌羽根を有する混合機が、プロシェアミキサ、アイリッヒミキサ、またはヘンシェルミキサである、請求項1または2に記載のセメント添加材の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のセメント添加材の製造方法で製造したセメント添加材と、セメントを60〜120秒混合してプレミックスセメント組成物を製造する、プレミックスセメント組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒体シリカフューム(JIS A 6207「コンクリート用シリカフューム」に規定するシリカフュームをいう。)、または、一部若しくは全部が凝集したシリカフューム(以下「凝集シリカフューム」という。)を原料に用いたセメント添加材の製造方法と、該セメント添加材を原料に用いたプレミックスタイプのセメント組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、高強度モルタルまたは高強度コンクリート用混和材として、粉体シリカフュームが多用されている。しかし、粉体シリカフュームは、通常、BET比表面積が15〜25m/gの微粒子であり、嵩高くハンドリング性に劣り、保管中に一部が凝集して不均質な凝集物を含む凝集シリカフュームになり易い。そこで、粉体シリカフュームを混和材として用いる場合、保管性や運搬時の作業性の向上を目的に、粉体シリカフュームを粒体状に加工して、粒体シリカフュームとして出荷することが多い。
しかし、粒体シリカフュームや凝集シリカヒュームを含むモルタルやコンクリート(以下「モルタル等」という。)の混練では、粒体シリカフュームや凝集シリカフュームを解砕するのに時間がかかるため、粉体シリカフュームを含むモルタル等と比べ混練時間が長くなり、その分モルタル等の製造効率が低下する。
【0003】
かつては、BET比表面積が10m/g程度の比較的大きな粒径であって凝集しにくく、前記ハンドリング性等の問題が少ないシリカフュームが容易に入手できたが、最近では困難になりつつある。したがって、現在、粒体シリカフュームや、保管や運搬の過程で該微粒子の一部または全部が凝集した凝集シリカフュームを使わざるを得ない状況にある。
【0004】
ところで、特許文献1では、珪石にシリカフュームを混合して粉砕して得られるシリカ材料が提案されている。該材料は、珪石粉の表面にシリカフュームが均一に分散して付着した状態で存在するため、シリカフュームは凝集し難く、シリカフュームによるセメント成形品の強度向上効果が高いとされている。ただし、特許文献1に記載のシリカフュームは粉体シリカフュームであり、粒体シリカフュームや凝集シリカフュームを用いた場合、同様の強度向上効果を奏するか否か不明である。また、珪石は被粉砕性に劣るため、珪石と粉体シリカフュームの混合粉砕は手間がかかる。さらに、特許文献1には、前記シリカ材料を用いたモルタル等の混練時間に関し記載がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−215139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、粒体シリカフュームや凝集シリカフュームを原料に用いても、モルタル等の混練時間を短縮できるセメント添加材とプレミックスセメント組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記目的にかなう製造方法について鋭意検討したところ、粒体シリカフュームや凝集シリカフュームと、セメントを含む無機粉末を、特定の割合でブレード状の撹拌羽根を有する混合機に投入して混合すれば、モルタル等の混練時間を短縮できるセメント添加材等を製造できることを見い出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は下記の構成を有するセメント添加材の製造方法と、プレミックスセメント組成物の製造方法である。
【0008】
[1]粒体シリカフュームおよび凝集シリカフュームから選ばれる1種以上のシリカフュームと、ブレーン比表面積が2500〜10000cm/gの無機粉末を、該シリカフューム100質量部に対し無機粉末を10〜30質量部の割合で、ブレード状の撹拌羽根を有する混合機に投入して140〜480秒混合し、セメント添加材を製造する、セメント添加材の製造方法であって、
前記無機粉末が、石英粉末、高炉スラグ粉末、フライアッシュ、石炭灰粉末、石膏粉末、および石灰石粉末から選ばれる1種以上と、セメントを含む、セメント添加材の製造方法。
[2]前記無機粉末が、セメントを1〜99質量%含む、前記[1]に記載のセメント添加材の製造方法。
[3]前記ブレード状の撹拌羽根を有する混合機が、プロシェアミキサ、アイリッヒミキサ、またはヘンシェルミキサである、前記[1]または[2]に記載のセメント添加材の製造方法。
[4]前記 [1]〜[3]のいずれかに記載のセメント添加材の製造方法で製造したセメント添加材と、セメントを60〜120秒混合してプレミックスセメント組成物を製造する、プレミックスセメント組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のセメント添加材およびプレミックスセメント組成物の製造方法によれば、モルタル等の混練時間を短縮できる、シリカフュームを含むセメント添加材およびプレミックスセメント組成物を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明で用いるプロシェアミキサの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について、セメント添加材の製造方法、該セメント添加材の原料、およびプレミックスセメント組成物の製造方法に分けて詳細に説明する。
1.セメント添加材の製造方法
本発明のセメント添加材の製造方法は、前記のとおり、粒体シリカフュームおよび凝集シリカフュームから選ばれる1種以上のシリカフュームと、ブレーン比表面積が2500〜10000cm/gの無機粉末を、該シリカフューム100質量部に対し無機粉末を10〜200質量部の割合で、ブレード状の撹拌羽根を有する混合機に投入して混合し、セメント添加材を製造する方法である。そして、前記無機粉末は、石英粉末、高炉スラグ粉末、フライアッシュ、石炭灰粉末、石膏粉末、および石灰石粉末から選ばれる1種以上と、セメントを含むものである。
無機粉末の混合割合が前記範囲外では、チョッパーの回転速度が、例えば3600rpmと小さい場合、15分以上混合しないと、モルタル等の混練時間を短縮できるセメント添加材を得ることは難しい。また、無機粉末の混合割合が10質量部未満では、シリカフュームが混合機の内壁に付着し易い。なお、無機粉末の混合割合は、シリカフューム100質量部に対し、好ましくは15〜150質量部、より好ましくは20〜100質量部である。
シリカフュームと無機粉末の混合時間は、均質なセメント添加材の製造と混合時間の短縮の観点から、好ましくは140〜480秒、より好ましくは210〜450秒である。
なお、前記無機粉末の混合機への投入は、(i)前記石英粉末等から選ばれる1種以上とセメントを、予め混合してなる混合物を、ブレード状の撹拌羽根を有する混合機に投入する、または、(ii)石英粉末等から選ばれる1種以上と、セメントを、別々にブレード状の撹拌羽根を有する混合機に投入する、のいずれの投入の態様でもよい。
前記(i)において、石英粉末等から選ばれる1種以上と、セメントを混合する際の混合機は、特に限定されず、後述するセメント添加材の製造に用いるブレード状の撹拌羽根を有する混合機(例えば、プロシェアミキサ、アイリッヒミキサ、またはヘンシェルミキサ等)や、二軸ミキサ、傾胴ミキサ、パン型ミキサ等が挙げられる。
【0012】
次に、本発明のセメント添加材の製造方法で用いる混合機について説明する
本発明のセメント添加材の製造方法で用いる混合機は、ブレード状の撹拌羽根を有する混合機であり、例えば、プロシェアミキサ、アイリッヒミキサ、またはヘンシェルミキサ等が挙げられる。これらの混合機はいずれも、強力な分散力(せん断作用)を有するブレード状の高速攪拌羽根(チョッパーまたはローター)を備えており、その回転速度は概ね1000rpmから6000rpmの範囲で調整可能である。
【0013】
そして、プロシェアミキサは、図1にその一例を示すように、主にショベル羽根1とチョッパー2とからなり、材料投入口3から投入された粉体材料はショベル羽根1の混合作用による浮遊拡散混合と、チョッパー2の分散作用による高速せん断分散により分散混合を行った後、材料排出口4から粉体を排出するミキサである。プロシェアミキサを混合機として用いる場合、チョッパーの回転速度が、好ましくは2000rpm以上、より好ましくは3000rpm以上の攪拌能力を有するプロシェアミキサが望ましい。該プロシェアミキサは、例えば、太平洋機工社製のプロシェアミキサがあり、その型式はWB−20(傾斜型)やWB−2400が挙げられる。
また、アイリッヒミキサは、例えば、日本アイリッヒ社製のアイリッヒミキサがあり、その型式はR02が挙げられる。また、ヘンシェルミキサは、例えば、日本コークス工業社製のヘンシェルミキサがあり、その型式はFM20Cが挙げられる。
【0014】
本発明のセメント添加材の製造方法は、チョッパーの回転速度が、例えば3600rpmと小さい場合でも、粒体シリカフュームまたは凝集シリカフュームを原料に用いて、モルタル等の混練時間を短縮できるプレミックスセメント組成物を、8分以内、好ましくは7.5分以内、より好ましくは7分以内に製造できる。また、チョッパーの回転速度を高くすれば、セメント添加材を6分以内、好ましくは5分以内に製造できる。
【0015】
2.セメント添加材の原料
(1)シリカフューム
本発明で用いるシリカフュームのBET比表面積は、好ましくは12〜25m/gである。BET比表面積が該範囲を外れると、シリカフュームの入手が困難になる。なお、前記BET比表面積は、より好ましくは13〜20m/gである。
前記シリカフュームの中でも、特に好ましくは粒体シリカフュームおよび凝集シリカフュームから選ばれる1種以上のシリカフュームである。粒体シリカフュームや凝集シリカフュームを用いても、本発明の製造方法により製造されたセメント添加材は、モルタル等の混練時間を大幅に短縮できる。
ここで粒体シリカフュームとは、JIS A 6207に記載されているシリカフュームをいう。本発明で用いる粒体シリカフュームの嵩密度は、好ましくは0.4〜0.8g/cmである。嵩密度がこの範囲を外れると入手が困難になる。
また、凝集シリカフュームとは、例えば、レーザー回折・散乱型粒度分布測定装置で測定した1μm以上の粒径の粒子の含有率が20質量%以上のシリカフュームをいう。
【0016】
(2)無機粉末
本発明で用いる無機粉末は、石英粉末、高炉スラグ粉末、フライアッシュ、石炭灰粉末、石膏粉末、および石灰石粉末から選ばれる1種以上と、セメントを含む混合物であり、該混合物のブレーン比表面積は2500〜10000cm/gである。
前記無機粉末のブレーン比表面積が2500cm/g未満ではモルタル等の強度発現性が低下し、10000cm/gを超えるとモルタル等の混練時間を大幅に短縮できるセメント添加材が得られ難くなる。前記ブレーン比表面積は、好ましくは3000〜9000cm/g、より好ましくは3500〜8000cm/gである。
前記セメントは、特に制限されず、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、および低熱ポルトランドセメントから選ばれる1種以上が挙げられる。なお、本発明において、セメント添加材の製造に使用するセメントは、モルタル等の流動性や作業性等から、後述するプレミックスセメント組成物の製造に使用するセメントと同じセメントを使用することが好ましい。
なお、石英粉末、高炉スラグ粉末、フライアッシュ、石炭灰粉末、石膏粉末、および石灰石粉末のブレーン比表面積は、モルタル等の混練時間や強度発現性等から、好ましくは2500〜10000cm/g、より好ましくは2700〜9000cm/g、特に好ましくは3000〜8000cm/gである。
また、前記無機粉末中のセメントの含有率は、モルタル等の流動性や作業性、混練時間や強度発現性等から、好ましくは1〜99質量%、より好ましくは5〜95質量%、特に好ましくは10〜90質量%である。
【0017】
3.プレミックスセメント組成物の製造方法
次に、プレミックスセメント組成物の製造方法について説明する。
本発明のプレミックスセメント組成物の製造方法は、前記セメント添加材の製造方法を用いて製造したセメント添加材と、セメントを混合して、プレミックスセメント組成物を製造する方法である。
【0018】
(i)セメント
前記セメントは、特に制限されず、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、および低熱ポルトランドセメントから選ばれる1種以上が挙げられる。これらのセメントの中でも、モルタル等の流動性や作業性等が高いことから、好ましくは中庸熱ポルトランドセメント、または低熱ポルトランドセメントである。
【0019】
(ii)プレミックスセメント組成物中のセメント添加材の含有割合
セメント添加材の含有割合は、セメント100質量部に対し、好ましくは10〜80質量部である。該含有割合が該範囲にあれば、モルタル等の流動性と強度発現性は高くなる。なお、該含有割合は、セメント100質量部に対し、より好ましくは15〜70質量部、さらに好ましくは20〜60質量部である。
【0020】
本発明のプレミックスセメント組成物の製造に用いる混合機は、特に限定されず、前記セメント添加材の製造に用いるブレード状の撹拌羽根を有する混合機(例えば、プロシェアミキサ、アイリッヒミキサ、またはヘンシェルミキサ等)や、二軸ミキサ、傾胴ミキサ、パン型ミキサ等が挙げられる。
セメント添加材とセメントの混合時間は、均質なプレミックスセメント組成物を製造する観点や混合時間の短縮の観点から、好ましくは60〜120秒、より好ましくは70〜110秒である。
本発明において、セメント添加材を製造した直後に、プレミックスセメント組成物を製造する場合、粒体シリカフュームや凝集シリカフュームを原料に用いた場合でも、モルタル等の混練時間を短縮できるプレミックスセメント組成物を10分以内、好ましくは9分以内、より好ましくは8分以内に製造できる。
【実施例】
【0021】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は当該実施例に限定されない。
1.使用材料
(1)中庸熱ポルトランドセメント(略号:MHC)
ブレーン比表面積は3300cm/g、密度は3.05g/cmであり、太平洋セメント社製である。
(2)粒体シリカフューム(略号:G-SF)
金属シリコン系シリカフュームであり、BET比表面積は17.8m/g、嵩密度は0.64g/cm、密度は2.25g/cmである。また、洛陽済禾社製である。
(3)凝集シリカフューム(略号:C-SF)
下記粉体シリカフュームを倉庫内で6月保管して凝集させたシリカフュームで、1μm以上の粒径の粒子の含有率は24質量%である。
(4)粉体シリカフューム(略号:P-SF)
金属シリコン系シリカフュームであり、BET比表面積は18.5m/g、1μm以上の粒径の粒子の含有率は12質量%、密度は2.25g/cmである。また、エムケム ジャパン社製である。
(5)石英粉末(略号:P-QU)
ブレーン比表面積は7000cm/gである。
(6)高炉スラグ粉末(略号:P-BS)
ブレーン比表面積は4000cm/gである。
(7)細骨材
静岡県掛川市産の山砂である。
(8)高性能減水剤
商品名はマスターグレニウムSP8HU X[登録商標]であり、BASFジャパン社製である。
(9)空気量調整剤
商品名はマスターエア404[登録商標]であり、BASFジャパン社製である。
(10)水道水
【0022】
2.セメント添加材(実施例1〜6、比較例1、2、および実施例7)の製造
表1に示すセメント添加材の原料の混合割合に従い、粒体シリカフュームまたは凝集シリカフュームと、石英粉末または高炉スラグ粉末と、中庸熱ポルトランドセメントを、容積が20リットルのプロシェアミキサ(型式:WB−20(傾斜型)、太平洋機工社製、表1において「WB−20」と略記した。)に投入して、プロシェアミキサのショベル羽根の周速が3.5m/s、プロシェアミキサのチョッパーの回転速度が3600rpm(周速は18.8m/s)の操作条件で、表1に示す時間、各原料を混合して、セメント添加材(実施例1〜6、比較例1、2)を製造した。
また、表1に示す混合割合に従い、石英粉末と中庸熱ポルトランドセメントを予め混合しておき(パン型ミキサを使用)、当該混合物と、凝集シリカフュームを、容積が20リットルのプロシェアミキサ(型式:WB−20(傾斜型)、太平洋機工社製、表1において「WB−20」と略記した。)に投入して、プロシェアミキサのショベル羽根の周速が3.5m/s、プロシェアミキサのチョッパーの回転速度が3600rpm(周速は18.8m/s)の操作条件で、表1に示す時間、各原料を混合して、セメント添加材(実施例6)を製造した。
【0023】
3.プレミックスセメント組成物(実施例1〜7、比較例1、2、および参考例1、2)の製造
(1)実施例1〜7、および比較例1、2
表1に示すプレミックスセメント組成物の原料の混合割合に従い、製造直後の前記セメント添加材と中庸熱ポルトランドセメントを、容積が2mの強制練り二軸ミキサ(型式:PV−II D2000、ブレード状の撹拌羽根のない一般に用いられている混合機、秩父エンジニアリング社製、表1において「PV−II」と略記した。)に投入して、回転速度が17rpmで、表1に示す時間、混合してプレミックスセメント組成物(実施例1〜6、比較例1、2)を製造した。
(2)参考例1、2
表1に示すセメント添加材およびプレミックスセメント組成物の原料の混合割合に従い、凝集シリカフュームまたは粉体シリカフュームと、石英粉末および中庸熱ポルトランドセメントを、前記強制練り二軸ミキサ(PV−II)に投入して、回転速度が17rpmで、表1に示す時間、一括して混合しプレミックスセメント組成物(参考例1、2)を製造した。
なお、参考例1のプレミックスセメント組成物の製造方法は、セメント添加材を経ることなく1工程でプレミックスセメント組成物を製造する点で、実施例1〜7、比較例1、2のプレミックスセメント組成物の製造方法と異なる。
また、参考例2のプレミックスセメント組成物の製造方法は、粉体シリカフュームを用いた従来のプレミックスセメント組成物の製造方法であり、該方法で製造したプレミックスセメント組成物と、本発明の製造方法を用いて製造したプレミックスセメント組成物を比較して、モルタルの流動化時間等の物性が同等か否か判定(評価)するために実施した。
【0024】
4.モルタルの配合と、モルタルの流動化時間、フロー値および圧縮強度の測定(その1)
(1)プレミックスセメント組成物を用いたモルタルの配合
試験に用いたモルタルの配合は、水/プレミックスセメント組成物の質量比が0.14、細骨材/プレミックスセメント組成物の質量比が0.33、高性能減水剤の添加量がプレミックスセメント組成物の質量×1.5%である。また、モルタルの空気量は空気量調整剤を用いて3%以下に調整した。
【0025】
(2)モルタルの流動化時間の測定
前記モルタルの配合に従い、プレミックスセメント組成物、細骨材、および水等のモルタルの前記原料を、一括してホバートミキサーに投入し低速で混練して、流動化時間(秒)を測定した。前記プレミックスセメント組成物を用いたモルタルの混練時の性状は、初めは粉状から徐々に大きな塊状に変化し、さらに混練し続けると、流動化した状態に変化するという特異な性状の変化を示す。そして、前記流動化時間とは、混練開始時からモルタルが流動化する状態に至るまでに要した時間をいう。なお、モルタルの混練時間は、前記流動化時間+180秒とした。
【0026】
(3)モルタルのフロー値と圧縮強度の測定
次に、混練後の流動化したモルタルを用いてJIS R 5201「セメントの物理試験方法 12.フロー試験」に準拠してモルタルのフローを測定した。ただし、15回の落下運動は実施しなかった。
さらに、前記モルタルを内径50mm、高さ100mmの型枠に流し込み、20℃で24時間、前置きした後、85℃で12時間蒸気養生して試験体を3本製造し、JIS A 1108「コンクリートの圧縮強度試験方法」に準拠してモルタルの圧縮強度を測定した。
これらの測定結果を表1に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
(4)測定結果について
流動化時間は、比較例1を含むモルタルでは960秒、比較例2を含むモルタルでは880秒であったのに対し、実施例1〜7を含むモルタルでは120〜245秒と、流動化時間を約1/4以下に短縮でき、粉体シリカフュームを用いて製造した参考例2の流動化時間160秒と同等である。ちなみに、流動化時間は、モルタル等の製造効率の点から、好ましくは420秒以下、より好ましくは300秒以下であるから、実施例1〜6はより好ましいレベルにある。
また、モルタルのフロー値および圧縮強度は、実施例および比較例ともにほぼ同じで、これらは参考例2とほぼ同じレベルである。
以上のことから、本発明の製造方法により製造したプレミックスセメント組成物を用いれば、モルタル等の製造時間を短縮でき、製造効率が向上する。
【0029】
5.モルタルの配合と、モルタルの流動化時間、フロー値および圧縮強度の測定(その2)
測定(その2)が測定対象とするモルタルは、前記測定(その1)におけるプレミックスセメント組成物と細骨材等を用いて混練したモルタルとは異なり、セメント添加材とセメントと細骨材等を用いて混練したモルタルである。すなわち、両者は、シリカフュームを、セメント添加材の形態でモルタル(測定(その2)の対象物である。)に用いるか、プレミックスセメント組成物の形態でモルタル(測定(その1)の対象物である。)に用いるかの点で相違する。このように異なる形態でシリカフュームを用いた場合、モルタルの物性が変わるか否か判定(評価)するために、測定(その2)を実施した。
【0030】
(1)モルタルの配合
試験に用いたモルタルの配合は、水/(セメント添加材および中庸熱ポルトランドセメントの合計)の質量比が0.14、細骨材/(セメント添加材および中庸熱ポルトランドセメントの合計)の質量比が0.33、高性能減水剤の添加量が(セメント添加材および中庸熱ポルトランドセメントの合計)の質量×1.5%である。また、モルタルの空気量は空気量調整剤を用いて3%以下に調整した。
なお、使用した前記セメント添加材は実施例1〜3のセメント添加材であり、セメント添加材と中庸熱ポルトランドセメントの混合割合は、表2に示すように、表1の実施例1〜3のプレミックスセメント組成物の原料の混合割合と同じである。
【0031】
(2)モルタルの流動化時間、フロー値、および圧縮強度の測定
前記モルタルの配合に従い、セメント添加材、中庸熱ポルトランドセメント、細骨材、および水等のモルタルの前記原料を、一括してホバートミキサーに投入し低速で混練して、流動化時間(秒)を測定した。流動化時間の測定方法とモルタルの混練時間は、前記測定(その1)と同じである。また、モルタルのフロー値と圧縮強度の測定方法も、前記測定(その1)と同じである。これらの測定結果を表2に示す。
【0032】
【表2】
【0033】
(3)測定結果について
表2に示すように、実施例1〜3のセメント添加材を用いたモルタルの流動化時間は123〜190秒、フロー値は283〜300mm、圧縮強度は217〜240N/mmであり、表1に示す実施例1〜3のプレミックスセメント組成物を用いたモルタルの流動化時間、フロー値、および圧縮強度と同等である。したがって、本発明の製造方法により製造したセメント添加材およびプレミックスセメント組成物は、モルタル等に用いた場合、同じ物性を示すことが分かる。
【符号の説明】
【0034】
1 ショベル羽根
2 チョッパー
3 材料投入口
4 材料排出口

図1