特許第6932012号(P6932012)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6932012保持器付き針状ころおよびそれを備えた遊星歯車機構支持構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6932012
(24)【登録日】2021年8月19日
(45)【発行日】2021年9月8日
(54)【発明の名称】保持器付き針状ころおよびそれを備えた遊星歯車機構支持構造
(51)【国際特許分類】
   F16C 19/46 20060101AFI20210826BHJP
   F16C 33/34 20060101ALI20210826BHJP
   F16C 33/46 20060101ALI20210826BHJP
   F16H 1/28 20060101ALI20210826BHJP
【FI】
   F16C19/46
   F16C33/34
   F16C33/46
   F16H1/28
【請求項の数】11
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-41756(P2017-41756)
(22)【出願日】2017年3月6日
(65)【公開番号】特開2018-146041(P2018-146041A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2020年2月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】冨加見 理之
(72)【発明者】
【氏名】垂見 哲也
(72)【発明者】
【氏名】土屋 将
【審査官】 藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−053698(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/191238(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/054376(WO,A1)
【文献】 特開2006−052790(JP,A)
【文献】 特開2009−197904(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 19/46
F16C 33/34
F16C 33/46
F16H 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の針状ころと保持器とからなる保持器付き針状ころにおいて、
前記保持器は、軸方向に離間した一対の環状部と、軸方向に延在して前記環状部同士を連結する複数の柱部とを有し、その外径案内面が外輪軌道面と接触する外輪案内型保持器であり、
前記針状ころは、中央領域に直径が一定の円筒面部と前記円筒面部の両側に一対の傾斜面部とを有するクラウニングころであり、
前記保持器の前記外径案内面と、前記円筒面部と前記傾斜面部との間の境界部位とが軸方向で異なる位置に配設され、
前記保持器の柱部に、前記円筒面部と前記傾斜面部との前記境界部位に対応する位置にぬすみ部が設けられて、前記境界部位が前記保持器と非接触となり、傾きが生じた場合にも、エッジ面圧を発生する部位である前記境界部位が前記保持器の柱部に接触しないことを特徴とする保持器付き針状ころ。
【請求項2】
複数の針状ころと保持器とからなる保持器付き針状ころにおいて、
前記保持器は、軸方向に離間した一対の環状部と、軸方向に延在して前記環状部同士を連結する複数の柱部とを有し、その外径案内面が外輪軌道面と接触する外輪案内型保持器であり、
前記針状ころは、中央領域に直径が一定の円筒面部と前記円筒面部の両側に一対の傾斜面部とを有するクラウニングころであり、
前記保持器は、その軸方向の両端部にころピッチ円径よりも外径側に設けられる外径側ころ止めと、その軸方向の中央部にころピッチ円径よりも内径側に設けられる内径側ころ止めとを有し、
前記針状ころの前記円筒面部と前記傾斜面部との境界部位を、前記保持器の外径側ころ止めと内径側ころ止めとで軸方向に重ならない位置に配置し、
前記保持器の前記外径案内面と、前記円筒面部と前記傾斜面部との間の境界部位とが軸方向で異なる位置に配設され、
前記保持器の柱部に、前記円筒面部と前記傾斜面部との前記境界部位に対応する位置にぬすみ部が設けられて、前記境界部位が前記保持器と非接触となることを特徴とする保持器付き針状ころ。
【請求項3】
複数の針状ころと保持器とからなる保持器付き針状ころにおいて、
前記保持器は、軸方向に離間した一対の環状部と、軸方向に延在して前記環状部同士を連結する複数の柱部とを有し、その外径案内面が外輪軌道面と接触する外輪案内型保持器であり、
前記針状ころは、中央領域に直径が一定の円筒面部と前記円筒面部の両側に一対の傾斜面部とを有するクラウニングころであり、
前記保持器は、前記柱部に設けられた外径部にころピッチ円径よりも外径側に設けられる外径側ころ止めが設けられてなり、
前記保持器の前記外径案内面と、前記円筒面部と前記傾斜面部との間の境界部位とが軸方向で異なる位置に配設され、
前記保持器の柱部に、前記円筒面部と前記傾斜面部との前記境界部位に対応する位置にぬすみ部が設けられて、前記境界部位が前記保持器と非接触となり、傾きが生じた場合にも、エッジ面圧を発生する部位である前記境界部位が前記保持器の柱部に接触しないことを特徴とする保持器付き針状ころ。
【請求項4】
前記外輪軌道面と接触する前記保持器の前記外径案内面は、軸方向両端部に形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の保持器付き針状ころ。
【請求項5】
前記保持器には、その周方向に隣合う前記柱部間に前記針状ころが配置されるポケットが形成され、
前記ポケットは、内径側から外径側に放射状に広がっていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の保持器付き針状ころ。
【請求項6】
前記保持器は、ポケットが打ち抜かれた鋼板の溶接接合品であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の保持器付き針状ころ。
【請求項7】
前記針状ころは、対数関数で近似される形状の対数クラウニング形状であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の保持器付き針状ころ。
【請求項8】
前記保持器は、環状部の外端に内向きフランジを有するM型又は環状部の外端に内向きフランジを有さないV型であることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の保持器付き針状ころ。
【請求項9】
内歯歯車と、この内歯歯車の中心に配設された太陽歯車と、前記内歯歯車と前記太陽歯車とに噛合う複数の遊星歯車と、前記遊星歯車を支持するキャリアとを備えた遊星歯車機構を支持する遊星歯車機構支持構造であって、
前記遊星歯車が前記キャリアに設けられたピニオン軸に転がり軸受を介して回転自在に支持され、前記転がり軸受が請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の保持器付き針状ころにて構成されていることを特徴とする遊星歯車機構支持構造。
【請求項10】
前記ピニオン軸の外径面を内側軌道面とするとともに、遊星歯車の内径面を外輪軌道面とし、前記保持器付き針状ころに用いられる保持器は、軸方向に両端部で遊星歯車の内径面で構成される外輪軌道面と接触し、かつ前記ピニオン軸の内部に、このピニオン軸の外径面で構成される内側軌道面に開口する通油孔を設けたことを特徴とする請求項9に記載の遊星歯車機構支持構造。
【請求項11】
自動車用トランスミッションに使用されることを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の遊星歯車機構支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持器付き針状ころおよびそれを備えた遊星歯車機構支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
保持器付き針状ころは、複数の針状ころと保持器とからなり、保持器は、軸方向に離間した一対の環状部と、軸方向に延在して前記環状部同士を連結する複数の柱部とを有するものである。そして、周方向に沿って隣り合う柱部間に形成されるポケットに針状ころが保持される。また、針状ころは、相手部材とのエッジロード(ころと軌道面が接触するとき、接触領域の端部に発生する過大な圧力)を回避するために、中央領域に直径が一定の円筒面部と、この円筒面部の両側に設けられる傾斜面部とを有するクラウニングころを用いる場合がある。
【0003】
従来、特許文献1に記載のように、ころの端面から円筒面部と傾斜面部との境界部位までの長さをDpとし、ころの端面に対面するポケットの壁面から保持器案内面までの軸方向の最短距離をAとしたときに、Dp<Aを満たすように設定されていた。
【0004】
前記特許文献1に記載のものでは、円筒面部と傾斜面部との境界部位が案内面に接触しないように、傾斜面部の長さを調整することができ、長寿命の保持器付きころを提供しようとするものである。
【0005】
また、従来には、特許文献2に記載のように、柱部の外径面に柱部両側のポケット間を繋ぐ周方向の給油溝を設け、その給油溝の軸方向位置を当該ポケットに収納されるころのクラウニング繋ぎ目に対応した位置に設定するようにしたものがある。
【0006】
前記特許文献2に記載のものでは、柱部外径面にころのクラウニング繋ぎ目に対向して給油溝を設けたことにより、クラウニング繋ぎ目に集中的に給油することができ、同部における油膜切れを防止して、軸受の長寿命化を図ることができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−215475号公報
【特許文献2】特開2013−53698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1では、Dp(ころの端面から円筒面部と傾斜面部との境界部位までの長さ)<A(ころの端面に対面するポケットの壁面から保持器案内面までの軸方向の最短距離)に設定しているので、ころの円筒面部と傾斜面部との境界部位が、ころ止め部分と軸方向位置に重なることになる。このため、装着された軸やハウジングの傾きがあった場合にエッジ面圧が発生するころ円筒面部と傾斜面部の境界部が、潤滑不良によってより摩耗や剥離が生じやすくなる。
【0009】
特許文献2に記載のものでは、ころの円筒面部と傾斜面部との境界部位が、保持器の柱部と接触するものである。このように接触すると、この接触により潤滑油をころから掻き取ってしまうおそれがあり、潤滑不良を起こすことになる。
【0010】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みて、高いエッジ面圧部分が潤滑不良になりにくく、摩耗や剥離の発生を抑える保持器付き針状ころ及びそれを備えた遊星歯車機構支持構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の保持器付き針状ころは、複数の針状ころと保持器とからなる保持器付き針状ころにおいて、前記保持器は、軸方向に離間した一対の環状部と、軸方向に延在して前記環状部同士を連結する複数の柱部とを有し、その外径案内面が外輪軌道面と接触する外輪案内型保持器であり、前記針状ころは、中央領域に直径が一定の円筒面部と前記円筒面部の両側に一対の傾斜面部とを有するクラウニングころであり、前記保持器の前記外径案内面と、前記円筒面部と前記傾斜面部との間の境界部位とが軸方向で異なる位置に配設され、前記保持器の柱部に、前記円筒面部と前記傾斜面部との前記境界部位に対応する位置にぬすみ部が設けられて、前記境界部位が前記保持器と非接触となり、傾きが生じた場合にも、エッジ面圧を発生する部位である前記境界部位が前記保持器の柱部に接触しないものである。
本発明の第2の保持器付き針状ころは、複数の針状ころと保持器とからなる保持器付き針状ころにおいて、前記保持器は、軸方向に離間した一対の環状部と、軸方向に延在して前記環状部同士を連結する複数の柱部とを有し、その外径案内面が外輪軌道面と接触する外輪案内型保持器であり、前記針状ころは、中央領域に直径が一定の円筒面部と前記円筒面部の両側に一対の傾斜面部とを有するクラウニングころであり、前記保持器は、その軸方向の両端部にころピッチ円径よりも外径側に設けられる外径側ころ止めと、その軸方向の中央部にころピッチ円径よりも内径側に設けられる内径側ころ止めとを有し、前記針状ころの前記円筒面部と前記傾斜面部との境界部位を、前記保持器の外径側ころ止めと内径側ころ止めとで軸方向に重ならない位置に配置し、前記保持器の前記外径案内面と、前記円筒面部と前記傾斜面部との間の境界部位とが軸方向で異なる位置に配設され、前記保持器の柱部に、前記円筒面部と前記傾斜面部との前記境界部位に対応する位置にぬすみ部が設けられて、前記境界部位が前記保持器と非接触となるものである。
本発明の第3の保持器付き針状ころは、複数の針状ころと保持器とからなる保持器付き針状ころにおいて、前記保持器は、軸方向に離間した一対の環状部と、軸方向に延在して前記環状部同士を連結する複数の柱部とを有し、その外径案内面が外輪軌道面と接触する外輪案内型保持器であり、前記針状ころは、中央領域に直径が一定の円筒面部と前記円筒面部の両側に一対の傾斜面部とを有するクラウニングころであり、前記保持器は、前記柱部に設けられた外径部にころピッチ円径よりも外径側に設けられる外径側ころ止めが設けられてなり、前記保持器の前記外径案内面と、前記円筒面部と前記傾斜面部との間の境界部位とが軸方向で異なる位置に配設され、前記保持器の柱部に、前記円筒面部と前記傾斜面部との前記境界部位に対応する位置にぬすみ部が設けられて、前記境界部位が前記保持器と非接触となり、傾きが生じた場合にも、エッジ面圧を発生する部位である前記境界部位が前記保持器の柱部に接触しないものである。
【0012】
本発明の保持器付き針状ころによれば、針状ころの円筒面部と傾斜面部との境界部位が、保持器案内面となる外輪軌道面(ハウジング内径との接触面)と軸方向で重ならないように、保持器案内面よりも軸方向中心側になるように配置されることになる。このため、高いエッジ面圧部分が潤滑不良になりにくくなる。また、針状ころの円筒面部と傾斜面部の境界部位は保持器と接触しないようにしている。このため、装着した軸やハウジングの傾きがあった場合においても、エッジ面圧が発生する針状ころの円筒面部と傾斜面部の境界部位が、潤滑不良になりにくい。
【0013】
ところで、保持器案内形式としては、高速運動下での保持器運動の安全性の面からころ案内よりも軌道輪案内が望ましく、さらには、遠心力による潤滑油挙動の観点から内輪案内よりも外輪案内が好ましい。
【0014】
前記針状ころの円筒面部が保持器と接触するのが好ましい。このように構成することによって、針状ころの脱落を有効に防止でき、しかも、針状ころの回転を安定させることができる。また、外輪軌道面と接触する保持器の外径案内面は軸方向両端部に形成されているのが好ましい。これにより、軸受けとしての機能を安定して発揮できる。
【0015】
前記保持器は、軸方向の両端部にころピッチ円径よりも外径側に設けられる外径側ころ止めと、軸方向の中央部にころピッチ円径よりも内径側に設けられる内径側ころ止めとを有し、前記針状ころの円筒面部と傾斜面部との境界部位を、前記保持器の外径側ころ止めと内径側ころ止めとで軸方向に重ならない位置に配置するのが好ましい。
【0016】
このように構成すれば、保持器は、外径側ころ止めと内径側ころ止めとを有するので、針状ころの脱落を有効に防止できる。また、ころの円筒面部と傾斜面部との境界部位が、保持器からころが外径に脱落しないようにするためのころ止め部と軸方向で重ならないように、外径側ころ止め部よりも軸方向中心側になるように配置しているので、高いエッジ面圧部分が潤滑不良になりにくい。
【0018】
前記保持器の周方向に隣合う柱部間に針状ころが配置されるポケットが形成され、このポケットは、内径側から外径側に放射状に広がっているのが好ましい。前記保持器は、ポケットが打ち抜かれた鋼板の溶接接合品とすることができる。
【0019】
ところで、ころ軸受は、転動体としてのころと軌道面とが線接触しているために負荷容量が高いという利点を有する。その一方で、ころと軌道面の有効接触部の端部でエッジロードと呼ばれる面圧集中が発生し易く、これが過大になると軸受寿命の低下を招くことが知られている。エッジロードの発生を回避するため、ころ軸受の設計に際しては、ころの外周面(転動面)、外輪軌道面、あるいは内輪軌道面の少なくとも一つに母線形状が非直線状となるクラウニングを形成するのが一般的である。また、エッジロードを抑えて接触面圧を一様にするクラウニングとして、クラウニングの母線形状を対数曲線で表すようにするのが好ましい。このため、前記針状ころは、例えば、対数関数で近似される形状の対数クラウニング形状であるのが好ましい。
【0020】
保持器は、環状部の外端に内向きフランジを有するM型又は環状部の外端に内向きフランジを有さないV型であってもよい。
【0021】
本発明の遊星歯車機構支持構造は、内歯歯車と、この内歯歯車の中心に配設された太陽歯車と、前記内歯歯車と前記太陽歯車とに噛合う複数の遊星歯車と、この遊星歯車を支持するキャリアとを備えた遊星歯車機構を支持するための支持構造であって、前記遊星歯車が前記キャリアに設けられたピニオン軸に転がり軸受を介して回転自在に支持され、前記転がり軸受が前記保持器付き針状ころにて構成されているものである。
【0022】
本発明の遊星歯車機構支持構造は、転がり軸受に前記保持器付き針状ころを用いるので、針状ころの脱落を有効に防止できる。しかも、クラウニング長さが長くても、軸やハウジング内径に組付ける際、組付けにくくなることはない。また、潤滑油の流入性が悪くなることを軽減できる。さらには、高いエッジ面圧部分が潤滑不良になりにくくなる。
【0023】
前記ピニオン軸の外径面を内側軌道面とするとともに、遊星歯車の内径面を外輪軌道面とし、前記保持器付き針状ころに用いられる保持器は、軸方向に両端部で遊星歯車の内径面で構成される外輪軌道面と接触し、かつ前記ピニオン軸の内部に、このピニオン軸の外径面で構成される内側軌道面に開口する通油孔を設けるように構成できる。
【0024】
このように、通油孔を設けることによって、この保持器用針状ころの潤滑を行うようにできる。保持器案内形式としては、高速運動下での保持器運動の安全性の面からころ案内よりも軌道輪案内が望ましく、さらには、遠心力による潤滑油挙動の観点から内輪案内よりも外輪案内が好ましい。
【0025】
遊星歯車機構支持構造は、自動車用トランスミッションに使用することが可能である。このように自動車用トランスミッションを用いられる場合、はねかけでピニオン軸(支持軸)の通油孔に入ってくる構造のため、潤滑油量が少ない。したがって、この遊星歯車機構支持構造を、自動車のトランスミッションに用いるのが最適となる。
【発明の効果】
【0026】
本発明では、高いエッジ面圧部分が潤滑不良になりにくく、摩耗や剥離の発生を抑えることができる。このため、耐用性に優れた好適な保持器付き針状ころを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1の実施形態の保持器付き針状ころの断面図である。
図2図1に示す保持器付き針状ころの保持器の要部拡大断面図である。
図3】保持器のポケットの拡大図である。
図4図2のA−A線拡大断面図である。
図5】本発明の保持器付き針状ころの針状ころの側面図である。
図6】第2の実施形態の保持器付き針状ころの断面図である。
図7図6に示す保持器付き針状ころの保持器の要部拡大断面図である。
図8図6に示す保持器付き針状ころの保持器のポケットの拡大図である。
図9図6のB−B線拡大断面図である。
図10】第2の実施形態の保持器付き針状ころの保持器の要部拡大断面図である。
図11】遊星歯車機構の簡略図である。
図12】遊星歯車機構の支持構造の断面図である。
図13】自動車用トランスミッションの要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下本発明の実施の形態を図1図13に基づいて説明する。図1に保持器付き針状ころ30を示し、この保持器付き針状ころ30は、複数の針状ころ1を保持器2に組み付けて構成される。なお、以下の説明において、保持器付き針状ころ30の中心軸に沿う方向を「軸方向」、当該中心軸に直交する方向を「径方向」、中心軸を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」と呼ぶ。
【0029】
保持器2は、軸方向に離間した一対の環状部3,3と、軸方向に延在して環状部3,3同士を連結する複数の柱部4とを有するものである。そして、周方向に沿って隣り合う柱部4,4間に、図3に示すような形状の複数のポケット5が形成され、当該ポケット5に針状ころ1が配置される。なお、この保持器2は、環状部3の外端に内向きフランジ3aを有するものである。また、図1において、PCDは、針状ころ1のピッチ円径(ピッチ円直径)を示している。
【0030】
この場合、柱部4の外周面の中央部には凹窪部19が設けられ、針状ころ1の軸方向両端部に、外径側の膨出状となる外径案内面20,20が設けられている。外径案内面20は、後述するように、遊星歯車17(図11参照)の内径面で構成される外輪軌道面と接触する。外径案内面20は、図1に示すように、保持器2の外周面のうち環状部3に始まり柱部4の一部にまで及ぶ範囲Hである。回転時、この外径案内面20にて、保持器2は、ピニオン(遊星歯車)17の内周面(内径面)と案内接触する。
【0031】
針状ころ1は、図5に示すように、中央領域に直径が一定の円筒面部10と、円筒面部10の両側に設けられた傾斜面部11(以下、クラウニング部とも呼ぶ)とを有するクラウニングころである。
【0032】
一般には、ころ軸受は、転動体としてのころと軌道面とが線接触しているために負荷容量が高いという利点を有する。その一方で、ころと軌道面の有効接触部の端部でエッジロードと呼ばれる面圧集中が発生し易く、これが過大になると軸受寿命の低下に注意が必要である。エッジロードの発生を回避するため、ころ軸受の設計に際しては、ころの外周面(転動面)、外輪軌道面、あるいは内輪軌道面の少なくとも一つに母線形状が非直線状となるクラウニングを形成するのが一般的である。 エッジロードを抑えて接触面圧を一様にするクラウニングとして、クラウニングの母線形状を対数曲線で表すようにするのが好ましい。このため、本発明に係る保持器付き針状ころ30の針状ころ1は、例えば、対数関数で近似される形状の対数クラウニング形状であるのが好ましい。
【0033】
ここで、針状ころ1に施された対数クラウニングについて説明する。針状ころ1の転動面1aのクラウニング部11b、11bの母線は、次式(数1)で表される対数クラウニングの対数曲線に基づいて求められる。この対数クラウニング式は、本出願人の特許第4429842号公報に記載されているものを引用した。この場合、ころ軸受の軸線方向断面におけるクラウニングの輪郭線を、内輪軌道面、外輪軌道面又はころ転動面のいずれかの母線をy軸とし、母線直交方向にz軸をとった、y−z座標系を用いて数1で表わした。
【数1】
【0034】
数1において、Aは次の数2で表され、aは、内輪軌道面、外輪軌道面又はころ転動面のいずれの母線上にとった原点から有効接触部の端部までの長さである。
【数2】
【0035】
上記の対数クラウニング式中の設計パラメータK1、K2およびzmが設計の対象となる。対数クラウニングの数理的最適化手法について説明する。設計パラメータK2を定めた上で、対数クラウニングを表す関数式中のK1、zmを適切に選択することによって、最適な対数クラウニングを設計することができる。クラウニングは、一般的に接触部の面圧もしくは応力の最大値を低下させるように設計する。ここでは、転動疲労寿命は、Misesの降伏条件に従って発生すると考え、Misesの相当応力の最大値を最小にするようにK1、zmを選択する。K1、zmは適当な数理的最適化手法を用いて選択することが可能である。数理的最適化手法のアルゴリズムには種々のものが提案されているが、その一つである直接探索法は、関数の微係数を使用せずに最適化を実行することが可能であり、目的関数と変数が数式によって直接的に表現できない場合に有用である。ここでは、直接探索法の一つであるRosenbrock法を用いてK1、zmを求める。
【0036】
本実施形態における針状ころ1のクラウニング部11,11の形状は、上記の数式によって求められた対数曲線クラウニングとした。このように設定することによって、この保持器付き針状ころ30が装着される軸に傾き等がある場合でも接触面圧を小さく抑えることができ、長寿命化を図ることができる。ただし、対数形状は、上記の数式に限られるものではなく、他の対数クラウニング式を用いて対数曲線を求めてもよい。
【0037】
針状ころ1のクラウニング部11は、機械加工又はタンブラー加工によって、クラウニング加工される。ここで、針状ころ1のクラウニング部11をタンブラー加工にてクラウニング加工する場合は、円筒面部10の外周面(円筒面部10のうち径方向最外端)からドロップ量が、例えば、0.5μmの位置を境界部位12とすることが好ましい。
【0038】
ところで、柱部4には、円筒面部10と傾斜面部11との境界部位12に対応する位置に矩形状の切欠部(ぬすみ部)9が設けられている。すなわち、各ポケット5に4つの切欠部(ぬすみ部)9を有することになる。このため、図1図3に示すように、ポケット5に針状ころ1が嵌合された状態では、円筒面部10と傾斜面部11との境界部位12が保持器2(の柱部4)に接触しない非接触状態となっている。
【0039】
また、円筒面部10と傾斜面部11との境界部位12は、外径案内面20よりも軸方向内側に配設されることによって、保持器2の外径案内面20と、境界部位12とが軸方向で異なる位置に配設されることになる。
【0040】
すなわち、針状ころ1の円筒面部10と傾斜面部11との境界部位12が、保持器案内面となる外輪軌道面(ハウジング内径との接触面)と軸方向で重ならないように、保持器案内面よりも軸方向中心側になるように配置されることになる。このため、高いエッジ面圧部分が潤滑不良になりにくくなる。また、針状ころ1の円筒面部10と傾斜面部11の境界部位12は、ポケット5に切欠部9を設けることによって、保持器2と接触しないようにしている(境界部位12と保持器2とが非接触となる)。このため、装着した軸やハウジングの傾きがあった場合においても、エッジ面圧が発生する針状ころ1の円筒面部10と傾斜面部11の境界部位12が、潤滑不良になりにくい。
【0041】
このように、図1に示す保持器付き針状ころ30は、高いエッジ面圧部分が潤滑不良になりにくく、摩耗や剥離の発生を抑えることができる。このため、耐用性に優れた高品質の保持器付き針状ころを提供できる。しかも、保持器案内形式として外輪案内形式であるので、高速運動下での保持器運動の安全性に優れ、さらには、遠心力による潤滑油挙動の観点からも好ましい構成となっている。
【0042】
ところで、図1に示す保持器付き針状ころ30は、針状ころ1の円筒面部10が保持器2(の内径側ころ止め7)と接触することが好ましい。このように接触すれば、針状ころ1の脱落を有効に防止でき、しかも、針状ころ1の回転を安定させることができる。また、外輪軌道面と接触する保持器2の外径案内面20は軸方向両端部に形成されている。このため、図1に示す保持器付き針状ころ30は、軸受けとしての機能を安定して発揮できる。
【0043】
次に、図6に示す保持器付き針状ころ30は、保持器2が、断面形状が略M字形であり、このように断面形状を有することから、図6に示される保持器2はM型保持器と呼ばれる。M型保持器は、環状部3の外端に内向きフランジ3aを有するものである。
【0044】
柱部4は、一対の外径部4a,4aと、内径部4bと、傾斜部4cとを含んでいる。外径部4aは、一対の環状部3の各外径部から軸方向内方へ伸びる。内径部4bは一対の環状部3、3の間であって、外径部4aよりも内径側に配設される。傾斜部4cは、外径部4aと内径部4bとを連結する。
【0045】
図7および図9に示すように、外径部4aに外径側抜け止め(以下、外径側ころ止めとも呼ぶ)6が形成され、内径部4bに内径側抜け止め(以下、内径側ころ止めとも呼ぶ)7が形成されている。外径側抜け止め6は、内径側から外径側に向かってポケット5内部へ突出する内径側テーパ部6aと、外径側から内径側に向かってポケット5内部へ突出する外径側テーパ部6bとを有する。ポケット5内に配置された針状ころ1は、内径側テーパ部6aにて受けられる。また、内径側抜け止め7は、外径側から内径側に向かってポケット5内部へ突出する外径側テーパ部7aと、外径側テーパ部7aの内径端から径方向内方に延びる端面部7bとを有する。ポケット5内に配置された針状ころ1は、内径側テーパ部6a及び外径側テーパ部7aにて受けられる。なお、保持器5に対するころ1の動き量が確保できれば内径側テーパ部6a、外径側テーパ部7aは設けなくてもよい。
【0046】
ところで、図6に示すように、保持器2では、その外径側抜け止め6がころピッチ円径PCDよりも外径側に配設され、その内径側抜け止め7がピッチ円径PCDよりも内径側に配設されている。これによって、外径側抜け止め6と内径側抜け止め7とが軸方向に重ならないように設定している。すなわち、外径側抜け止め6は、内径側抜け止め7に対してオフセットしている。
【0047】
また、図6及び図10に示すように、保持器2のポケット5に針状ころ1が配設された状態では、針状ころ1の円筒面部10と傾斜面部11との境界部位12が、外径部4aと内径部4bとを連結する傾斜部4cに対応することになる。このため、この針状ころ1の境界部位12は、外径側抜け止め6および内径側抜け止め7と軸方向で重ならない状態となっている。すなわち、境界部位12は、外径側抜け止め6および内径側抜け止め7に対してオフセットしている。
【0048】
この場合、外径部4aと内径部4bとを連結する傾斜部4cが、外径側抜け止め6と内径側抜け止め7とを接続する接続部8を構成し、この接続部8は図8に示すぬすみ形状とされている。すなわち、傾斜部4cに、不等辺三角形状の切欠部9が設けられる。針状ころの円筒面部10と傾斜面部11との境界部位12を、保持器2の外径側ころ止め6と内径側ころ止め7との間、すなわち、接続部8に対応する位置に配置されるように設定し、また、境界部位12が接続部8と接触しないように設定している。
【0049】
ところで、図6に示す保持器付き針状ころ30の保持器2は、前記したように、M型保持器と呼ばれるものであったが、図10に示すように、V型保持器と呼ばれるものであってもよい。図7に示すM型保持器は、環状部3の外端に内向きフランジ3aを有するものであるのに対して、図10に示すようにV型保持器と呼ばれるものは、このようなフランジを有さなないものである。このため、本実施形態においては、図6に示すM型保持器を用いても、図10に示すV型保持器を用いてもよい。
【0050】
図6及び図10に示す保持器付き針状ころ30では、保持器2が、外径側ころ止め6と内径側ころ止め7とを有するので、針状ころ1の脱落を有効に防止できる。また、ころ1の円筒面部10と傾斜面部11との境界部位12が、保持器2からころ1が外径に脱落しないようにするためのころ止め部と軸方向で重ならないように、外径側ころ止め部6よりも軸方向中心側になるように配置しているので、高いエッジ面圧部分が潤滑不良になりにくい。しかも、クラウニング長さが長くても、軸やハウジング内径に組付ける際、組付けにくくなることはない。
【0051】
また、外径側ころ止め部6の内径側に内径側ころ止め部7を配置しないようにし、保持器2と針状ころ1との空間を設けることになって、ころ止め部6、7が両方(内径側外径側)に軸方向位置であることによって潤滑油の流入性が悪くなることを軽減できる。特に、遊星歯車機構支持構造において、保持器2が外輪案内形式である場合、後述するように、保持器2の外径案内面とピニオン軸18a(図11及び図12参照)の内周面との接触案内部の面積が大きいので、針状ころ1の端部への通油性及び保持器2の外径案内面とピニオン軸18の内周面との間への潤滑油の通油性が重要である。そのため、保持器付き針状ころ30を用いることが効果的である。
【0052】
さらには、針状ころ1の円筒面部10と傾斜面部11の境界部位12を内径側ころ止め部7よりも軸方向両端側になるように配置することになって、高いエッジ面圧部分が潤滑不良になりにくくなる。針状ころ1の円筒面部10と傾斜面部11の境界部位12の軸方向位置は、保持器2の外径側ころ止め部6と内径側ころ止め部7との接続部(傾斜部)8になるが、この接続部8は保持器2と接触しない構成となっている。これによって、高いエッジ面圧部分が潤滑不良になりにくくなる。
【0053】
このため、図6及び図10に示す保持器付き針状ころ30では、高いエッジ面圧部分が潤滑不良になりにくく、摩耗や剥離の発生を抑えることができ、さらには、潤滑油の流入性の悪化を有効に防止できる。このため、耐用性に好適な高品質の保持器付き針状ころ30を提供できる。しかも、ころ1のクラウニング長さが長くなっても、軸やハウジング内径に組み付ける際に、組み付け性に優れる。
【0054】
また、保持器2にぬすみ部9を設けているので、ぬすみ9を通して外径案内面20と外輪軌道面(例えば、後述する遊星歯車17(図11参照)の内周面)との間に潤滑油が導かれる。これにより、保持器2の外周面(外径案内面20)と遊星歯車17の内周面との間に油膜を形成させて摩擦を軽減することができ、これも保持器付き針状ころ30の寿命向上に寄与する。
【0055】
保持器2として、環状部3の外端に内向きフランジ3aを有するM型や環状部の外端に内向きフランジを有さないV型のものを用いた場合も、針状ころ1として、前記図5に示すような対数関数で近似される形状の対数クラウニング形状であるころを用いている。このため、この保持器付き針状ころ30が装着される軸に傾き等がある場合でも接触面圧を小さく抑えることができ、長寿命化を図ることができる。
【0056】
図2図7、及び図10に示す保持器2としては、ポケット5となる孔部を打ち抜いた鋼板を丸めて、その接合部位を溶接にて一体化して形成する。すなわち、保持器2は、ポケット5が打ち抜かれた鋼板の溶接接合品からなる。このように形成すれば、ポケット5は、内径側から外径側に向かって放射状に広がることになり、保持器2のポケット5の接続部にころ1が接触しないのを有効に防止できる。
【0057】
ところで、本実施形態の保持器付き針状ころ30は、図11に示すような遊星歯車機構Sを支持する支持構造に用いることができる。遊星歯車機構Sは、内歯歯車(リングギヤ)15と、この内歯歯車15の中心に配設された太陽歯車(サンギヤ)16と、内歯歯車15と太陽歯車16とに噛合う複数の遊星歯車(ピニオン)17とを備える。
【0058】
すなわち、大きな内歯歯車15の中心に太陽歯車16が位置し、内歯歯車15と太陽歯車16との間に複数の遊星歯車17が介在している。また、各遊星歯車17は、図8に示すように、キャリア18のピニオン軸18aに回転自在に支持されている。
【0059】
この場合、ピニオン軸18aと遊星歯車17との間に保持器付き針状ころ30が配置され、当該保持器付き針状ころ30が遊星歯車17をピニオン軸18a上に回転自在に支持することで遊星歯車機構Sを支持する支持構造を構成できる。
【0060】
保持器付き針状ころ30の保持器2は、ピニオン軸18aの外径面を内側軌道面とするとともに、遊星歯車17の内径面を外輪軌道面とする。保持器2は、その軸方向両端部で遊星歯車17の内径面で構成される外輪軌道面と接触する外径案内面20(図1参照)を構成する。ここで、外径案内面20は、図1等に示すように、保持器2の外周面のうち環状部3に始まり柱部の一部にまで及ぶ範囲Hである。回転時、この外径案内面20にて保持器2はピニオン(遊星歯車)17の内周面(内径面)と案内接触する。このため、この保持器2は、外輪案内形式となる。
【0061】
ところで、保持器案内形式としては、高速運動下での保持器運動の安全性の面からころ案内よりも軌道輪案内が望ましく、さらには、遠心力による潤滑油挙動の観点から内輪案内よりも外輪案内形式が好ましい。
【0062】
なお、このピニオン軸18aの内部には潤滑油を供給するための通油孔18bが形成してある。通油孔18bは、ピニオン軸18aの軸方向に延びる第1通油孔18baと、当該第1通油孔18aからピニオン軸18aの径方向に延びる第2通油孔18bbとを有する。第2通油孔18bbは、第1通油孔18baとピニオン軸18の外周面とを連通している。また、第2通油孔18bbは、保持器付き針状ころ30と軸方向に重なる位置に設けられている。ピニオン軸18aの内部に形成した通油孔18bを通じて潤滑油を引き込み、ピニオン軸18aの外周面に導くことにより、保持器付き針状ころ30の潤滑を行うようにした構造としている。
【0063】
また、図13に示すように、本実施形態の保持器付き針状ころ30を、トランスミッションT用の支持軸受に用いてもよい。すなわち、保持器付き針状ころ30は、自動車用保持器付き針状ころである。このトランスミッションTは、回転が順次伝達されるように2つの遊星歯車機構S,Sを設けたものである。各遊星歯車機構S,Sにおいて、支持軸25に保持器付き針状ころ30を介して遊星歯車26が設けられている。
【0064】
遊星歯車機構が自動車のトランスミッションに用いられた場合、はねかけで支持軸(ピニオン軸)25の通油孔27に入ってくる構造のため、潤滑油量が少ない。また、トランスミッションに用いられる保持器付き針状ころでは、遠心力又は偏荷重によるエッジ応力などの過酷な使用環境になる。したがって、本実施形態の保持器付き針状ころ30を、自動車のトランスミッションに用いるのが最適となる。
【0065】
以上、本実施形態につき説明したが、前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、切欠部9の形状として、図3に示すような矩形状や図8に示すような三角形状のものに限るものではなく、針状ころ1の円筒面部10と傾斜面部11との間の境目部位12が保持器2に接触しなければよい。また、外径側ころ止め6および内径側ころ止め7の形状として、図9に示すものに限るものではなく、ころ径>周方向に隣り合うころ止め6、6,7、7間の寸法となる範囲が一部にあればよい。また、外径側ころ止め6として、柱部4の外径部4aの全体に設けたものであっても、柱部4の外径部4aの一部に設けられたものであってもよい。また、内径側ころ止め7としても、柱部4の内径部4bの全体に設けたものであっても、柱部5の内径部の一部に設けられたものであってもよい。保持器付き針状ころ30として、単列であっても複列であってもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 針状ころ
2 保持器
3 環状部
3a フランジ
4 柱部
5 ポケット
6 外径側抜け止め部
7 内径側抜け止め部
8 接続部
10 円筒面部
11 傾斜面部
12 境界部位
15 内歯歯車
16 太陽歯車
17 遊星歯車
18 キャリア
18a ピニオン軸
20 外径案内面
S 遊星歯車機構
T トランスミッション
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13