(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の曲率情報補正部は、前記車線に対する自車両の車線幅方向の位置変化量と進行方向の移動距離とから算出される曲率情報で前記第1の曲率情報を補正することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両位置検出装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1において、符号1は自動車等の車両に搭載されて自車両の車両位置を検出する車両位置検出装置を示し、ドライバに対する経路案内や自動運転を含む各種運転支援制御に用いる車両位置データを提供する。本実施の形態においては、車両位置検出装置1は、外部環境認識装置10、地図情報処理装置20、位置検出処理装置30を備え、これらの装置が通信バス150を介してネットワーク接続されて構成されている。
【0011】
外部環境認識装置10は、車載のカメラユニット11、ミリ波レーダやレーザレーダ等のレーダ装置12等の各種デバイスによる自車両周囲の物体の検出情報、路車間通信や車車間通信等のインフラ通信によって取得した交通情報、地図情報処理装置20からの地図情報、位置検出処理装置30からの自車両の位置情報等により、自車両周囲の外部環境を認識する。
【0012】
以下では、外部環境認識装置10における外部環境の認識処理として、カメラユニット11で撮像した画像を処理して外部環境を認識する処理を主として説明する。カメラユニット11は、例えば、同一対象物を異なる視点から撮像する2台のカメラで構成されるステレオカメラであり、CCDやCMOS等の撮像素子を有するシャッタ同期のカメラで構成されている。このカメラユニット11は、例えば、車室内上部のフロントウィンドウ内側のルームミラー近傍に2台のカメラが所定の基線長で車幅方向左右に配置されて構成されている。
【0013】
ステレオカメラとしてのカメラユニット11で撮像された左右一対の画像は、例えば、ステレオマッチング処理により、左右画像の対応位置の画素ずれ量(視差)が求められ、画素ずれ量を輝度データ等に変換した距離画像が生成される。この距離画像上の点は、三角測量の原理から、自車両の車幅方向すなわち左右方向をX軸、車高方向をY軸、車長方向すなわち距離方向をZ軸とする実空間上の点に座標変換され、自車両が走行する道路の白線(車線)、障害物、自車両の前方を走行する車両等が3次元的に認識される。
【0014】
地図情報処理装置20は、地図データベースDBを備え、位置検出処理装置30で測位した位置データから地図データベースDBの地図データ上での自車両の車両位置を特定する。地図データベースDBには、例えば、主として車両走行の経路案内や車両の現在位置を表示する際に参照されるナビゲーション用の地図データと、この地図データよりも詳細な、自動運転を含む運転支援制御を行う際に参照される走行制御用の地図データとが保持されている。
【0015】
ナビゲーション用の地図データは、現在のノードに対して前のノードと次のノードとがそれぞれリンクを介して結びつけられており、各リンクには、信号機、道路標識、建築物等に関する情報が保存されている。一方、走行制御用の高精細の地図データは、ノードと次のノードとの間に、複数のデータ点を有している。このデータ点には、道路の車線毎の曲率、車線幅、路肩幅等の道路形状データや、道路方位角、道路白線種別、レーン数等の走行制御用データが、データの信頼度やデータ更新の日付け等の属性データと共に保持されている。
【0016】
地図情報処理装置20は、自車両位置の測位結果と地図データとの照合を行い、その照合結果に基づく走行経路案内や交通情報を図示しない表示装置を介してドライバに提示する。また、地図情報処理装置20は、自車両が走行する道路の車線毎の曲率、車線幅、路肩幅等の道路形状データや、道路方位角、道路白線種別、レーン数等の走行制御用の地図情報を、通信バス150を介して他の制御装置に送信する。
【0017】
更に、地図情報処理装置20は、地図データベースDBの保守管理を行い、地図データベースDBのノード、リンク、データ点を検定して常に最新の状態に維持すると共に、データベース上にデータが存在しない領域についても新規データを作成・追加し、より詳細なデータベースを構築する。地図データベースDBのデータ更新及び新規データの追加は、位置検出処理装置30によって測位された位置データと、地図データベースDBに記憶されているデータとの照合によって行われる。
【0018】
位置検出処理装置30は、GPS衛星等の複数の航法衛星200からの信号に基づく測位と、ジャイロセンサ32や車速センサ33等の車載センサによる測位とを併用して自車両の車両位置を検出する。複数の航法衛星200による測位では、航法衛星200から送信される軌道及び時刻等に関する情報を含む信号を受信機31を介して受信し、受信した信号に基づいて自車両の自己位置を、経度、緯度、高度、及び時間情報を含む絶対位置として測位する。
【0019】
一方、航法衛星による測位が困難な場所、例えば、トンネル内部等の航法衛星からの電波を受信できない場所や、多数の高層建築物等による電波の反射によるマルチパスによって受信精度が低下するような場所では、位置検出処理装置30は、自車両の走行状態又は自車両前方の画像から自車両が走行している車線の曲率情報を算出する。そして、算出した車線の曲率情報と高精細の地図データから得られる車線の曲率情報との相関関係を調べて自車両の現在位置を特定する。
【0020】
本実施の形態においては、車線の曲率情報として、地図データベースDBに格納されている車線毎の曲率、自車両の走行状態から算出される曲率、画像から認識される走行車線の曲率を対象とする。走行状態又は画像による曲率のデータは、所定区間に渡って時系列的に取得され、地図上の対応する区間の曲率との相関関係が調べられる。尚、地図上の車線の曲率は、車線中央に設定した経路の曲率として地図データベースDBに格納されている。
【0021】
このため、位置検出処理装置30は、航法衛星による測位が困難な場合に自車両の車両位置を正確に検出するための機能部として、第1の曲率情報算出部301、第1の曲率情報補正部301A、第2の曲率情報算出部302、曲率情報選択部303、車両位置特定部304を備えている。これらの機能部により、航法衛星からの信号の受信状態が悪化した場合にも、自車両の車両位置を確実に検出して常に正確な車両位置を把握することを可能としている。
【0022】
第1の曲率情報算出部301は、自車両の走行状態から算出される走行軌跡の曲率を、第1の曲率K1として算出する。具体的には、第1の曲率K1は、以下の(1)式に示すように、所定時間当たりの自車両の進行方向の移動距離ΔSを自車両の進行方位角の角度変化量Δθで除算した値で近似することができる。移動距離ΔSは、車速センサ33から算出する。また、進行方位角の角度変化量Δθは、ジャイロセンサ32で検出する車両のヨーレートから求めることができる。
K1=ΔS/Δθ …(1)
【0023】
尚、(1)式の自車両の走行軌跡による第1の曲率K1は、第1の曲率情報補正部301Aでカメラユニット11からの画像情報による自車両の走行状態に基づいて補正される。この画像情報による第1の曲率K1の補正については、後述する。
【0024】
第2の曲率情報算出部302は、カメラユニット11で撮像した自車両前方の画像から自車両が走行している走行車線を認識し、認識した走行車線の曲率を、第2の曲率K2として算出する。第2の曲率K2は、画像から道路白線を車線として認識し、認識した車線を近似式で同定することで求めることができる。
【0025】
車線としての道路白線は、画像から白線の候補となる点群を抽出し、その候補点を結ぶ直線や曲線を算出することにより、認識することができる。例えば、画像上に設定された白線検出領域内において、水平方向(車幅方向)に設定した複数の探索ライン上で輝度が所定以上変化するエッジの検出を行って探索ライン毎に1組の白線開始点及び白線終了点を検出し、白線開始点と白線終了点との間の中間の領域を白線候補点として抽出する。
【0026】
そして、単位時間当たりの車両移動量に基づく白線候補点の空間座標位置の時系列データを処理して左右の白線を近似するモデルを算出し、この近似モデルにより、白線を認識する。白線の近似モデルとしては、例えば、2次式等の曲線で近似したモデルを用いることができ、以下の(2)式に示すように、2次の近似モデルによる左右の曲線から求められる中央位置の曲線を、自車両が追従走行する経路とすることができる。
X=A・Z
2+B・Z+C …(2)
【0027】
(2)式における係数A,B,Cは、
図2に示すように、自車両が追従走行する経路(左右白線の中央位置の2点鎖線で示す経路)を構成する成分を表している。係数Aは経路の曲率成分を表しており、第2の曲率情報算出部302は、係数Aによる曲率を、第2の曲率K2として求める。また、(2)式における係数Bは、自車両に対する経路のヨー角偏差(自車両の前後方向軸と経路(接線)との間の角度偏差)θy、係数Cは自車両に対する経路の横方向(X軸方向)の横位置偏差δを表している。
【0028】
尚、
図2における車線中央の経路を、自車両が走行する目標経路として操舵制御を行う場合、例えば、以下の(3)式に示すような目標操舵角αrefを設定し、この目標操舵角αrefに実操舵角が一致するよう制御する。
αref=Gff・K2+Gp・δf+Gi・∫δdt+Gy・θy+Gd・dθy/dt …(3)
Gff:目標経路の曲率K2に対するフィードフォワードゲイン
Gp:現在の操舵角で進行したときの所定距離の横位置偏差δfに対する比例ゲイン
Gi:現在の横位置偏差δに対する積分ゲイン
Gy:目標経路と自車両との相対ヨー角θyに対するフィードバックゲイン
Gd:目標経路と自車両との相対ヨー角θyに対する微分ゲイン
【0029】
以上の第2の曲率情報算出部302による第2の曲率K2は、地図データ上の車線の曲率と同様、車線中央の経路形状から算出される。これに対して、前述の第1の曲率情報算出部301による第1の曲率K1は、自車両の走行経路に依存し、車線中央の経路の曲率を示さない場合がある。すなわち、自車両位置を正確に検出できない場合、自車両の横位置が車線中央位置からずれる可能性があり、第1の曲率K1をそのまま用いると、地図データ上の曲率との相関を適正に把握できない虞がある。
【0030】
このため、第1の曲率情報補正部301Aは、画像から算出した自車両の車線に対する位置の変化量に基づいて、第1の曲率算出部301で算出した第1の曲率K1を、車線中央位置の曲率を表す値に補正する。具体的には、
図3に示すように、時刻Tにおける車線に対する自車両の車線幅方向の横位置XTと、時刻T+1における横位置XT+1とを画像から求め、また、車速センサ33からの信号に基づいて、時刻T〜T+1における自車両の進行方向の移動距離ΔSを算出する。
【0031】
次に、時刻T〜T+1における横位置XT〜XT+1の差分ΔXと移動距離ΔSとから自車両の車線に対する角度変化量Δθ'を計算し、この車線に対する角度変化量Δθ'から、以下の(1’)式に示す曲率K1'を求める。曲率K1'は、車線に対する自車両の動きの曲率を示しており、第1の曲率K1と曲率K1'との差、すなわち自車両の進行方位角の角度変化量Δθと自車両の車線に対する角度変化量Δθ'との差を考慮して、第1の曲率K1を、自車両の走行軌跡が車線中央位置と一致するものとして補正することができる。
K1'=ΔS/Δθ' …(1’)
【0032】
本実施の形態においては、第1の曲率K1から曲率K1'を減算した値を補正後の第1の曲率K1H(K1H←K1−K1')として用いる。以下の曲率情報選択部303及び車両位置特定部304においては、この補正後の第1の曲率K1Hを対象として処理を行う。
【0033】
曲率情報選択部303は、第1の曲率K1Hと第2の曲率K2との何れか一方を車両位置特定用の曲率Krefとして選択し、車両位置特定部304に送信する。尚、第1の曲率K1H、第2の曲率K2は、カーブの出入口等の曲率が変化する地点において曲率のデータが所定時間刻みで所定距離分だけ時系列的に算出され、車両位置特定用の曲率Krefとして選択された曲率データが車両位置特定部304に送信される。
【0034】
一般に、画像から認識する走行車線は、車線のカーブが急になると精度が低下するため、曲率情報選択部303は、比較的急なカーブの場合、車両位置特定用の曲率Krefとして第1の曲率K1Hを選択し、比較的緩いカーブの場合には、車両位置特定用の曲率Krefとして第2の曲率K2を選択する。
【0035】
具体的には、曲率情報選択部303は、航法衛星による測位が困難となる直前の車両位置における地図データ上の曲率Kmapを取得し、この地図データ上の曲率Kmapが閾値Kc(例えば、Kc=1/400))以下の比較的緩いカーブか否かを調べる。曲率Kmapが閾値Kc以下の場合、第2の曲率K2を車両位置特定用の曲率Krefとして選択する。一方、曲率Kmapが閾値Kcを超える場合には、第1の曲率K1Hを車両位置特定用の曲率Krefとして選択する。
【0036】
車両位置特定部304は、地図データベースDBから、地図データ上で推定される自車両位置付近の曲率Kmapと車両位置特定用の曲率Krefとの相関関係を調べ、自車両の車両位置を特定する。具体的には、航法衛星で最後に測位した車両位置付近で、曲率Krefに最も近い曲率Kmapとなる地図上の位置を探索することにより、自車両の車両位置を特定する。
【0037】
例えば、第1の曲率K1Hが車両位置特定用の曲率Krefとして選択されている場合、車両位置特定部304は、
図4に示すように、第1の曲率K1Hのデータを所定時間刻みで過去の所定距離分(例えば、過去50m分)だけ求めたデータ群に対して、最小二乗法を適用する等して第1の近似直線L1を抽出する。
【0038】
また、第2の曲率K2が車両位置特定用の曲率Krefとして選択されている場合には、車両位置特定部304は、
図5に示すように、第2の曲率K2のデータを所定時間刻みで過去の所定距離分(例えば、過去50m分)だけ求めたデータ群に対して、同様に最小二乗法を適用する等して、第2の近似直線L2を抽出する。
【0039】
更に、車両位置特定部304は、
図6に示すように、地図データ上で推定される自車両位置付近で、曲率Krefの所定距離に対応する区間で曲率Kmapのデータ群を収集し、曲率データの区間グラフを生成する。この曲率データの区間グラフは、
図6のデータ群をKmap1として、このデータ群Kmap1の区間開始点を所定距離ずつずらした
図7,
図8のデータ群Kmap2,Kmap3のように、
図6の区間開始点をずらした複数の区間グラフを作成し、それぞれ、近似直線Lm1,Lm2,Lm3,…を抽出する。
【0040】
車両位置特定部304は、第1の曲率K1Hのデータ群から抽出した第1の近似直線L1、または第2の曲率K2のデータ群から抽出した第2の近似直線L2と、地図上の曲率Kmapのデータ群から抽出した区間毎の近似直線Lm1,Lm2,Lm3,…とを比較して双方の近似直線の一致度を調べ、最も一致度の大きい区間を探索する。そして、双方の近似直線の最も一致度の大きい区間の末端の地点を、自車両の車両位置として特定する。
【0041】
次に、位置検出処理装置30における車両位置検出のプログラム処理について、
図9に示すフローチャートを用いて説明する。
【0042】
この車両位置検出処理は、先ず最初のステップS1において、航法衛星による測位が可能であるか否かを判断する。例えば、航法衛星の捕捉数が測位可能な数以上で、捕捉した航法衛星による測位精度が所定以上の精度である場合、衛星による測位を正常に実行できると判断してステップS1からステップS2へ進み、衛星からの情報による位置データと、地図データベースDBに記憶されているデータとを照合して自車両の地図上の現在位置を特定する。
【0043】
一方、トンネル内や高架建築物の下等で必要な数の衛星が補足できなかったり、マルチパスの影響で必要な測位精度を確保できず、衛星による測位が困難であると判断される場合には、ステップS1からステップS3へ進み、衛星によって測位した最後の地点の走行車線の曲率Kmapを地図データベースDBから読み込み、閾値Kc(例えば、Kc=1/400))と比較して、該当地点近辺の区間のカーブが急か否かを調べる。
【0044】
ステップ3において、Kmap>Kcでカーブが急である場合には、ステップS4へ進んで、ジャイロセンサ32及び車速センサ33からの信号に基づく自車両の走行軌跡による第1の曲率K1を算出する。そして、ステップS4からステップS5へ進み、
図3で説明したように、自車両の車線幅方向の横位置XT〜XT+1の差分ΔXと移動距離ΔSとから算出される曲率K1'で第1の曲率K1を補正した後、補正後の第1の曲率K1Hを位置特定用の曲率として選択し、現在位置付近から前方の所定区間の第1の曲率K1Hのデータ群を時系列的に算出する。
【0045】
一方、ステップS3でKmap≦Kcであり、カーブが緩やかである場合には、ステップS3からステップS6へ進んでカメラユニット11で撮像した自車両前方の画像から認識した走行車線の第2の曲率K2を位置特定用の曲率として選択し、現在位置付近から前方の所定区間の第2の曲率K2のデータ群を時系列的に算出する。
【0046】
その後、ステップS5或いはステップS6からステップS7へ進み、所定区間の曲率(第1の曲率K1H或いは第2の曲率K2)のデータ群から1次の近似直線(第1の近似直線L1又は第2N近似直線L2)を抽出し、ステップS8へ進む。ステップS8では、地図データから得られる曲率Kmapに対して自車両の推定位置付近で区間開始点を所定距離ずつずらした複数の区間グラフを作成し、各区間のデータ群毎に近似直線Lm1,Lm2,Lm3,…を抽出する。
【0047】
次にステップS9へ進み、位置特定用の曲率データの近似直線(近似直線L1又は近似直線L2)と地図の区間毎の近似直線Lm1,Lm2,Lm3,…とを比較して双方の近似直線の一致度が大きい区間を探索する。そして、ステップS10で、双方の近似直線の最も一致度の大きい区間として探索された区間の末端の地点を、地図上の自車両の現在位置として特定する。
【0048】
このように本実施の形態においては、地図から得られる車線の曲率情報と、自車両の走行軌跡による曲率情報を車線に対する自車両の車両位置の変化量に基づいて補正した曲率情報、又は画像から認識した車線の曲率情報との相関関係を調べることにより、地図上の自車両の位置を特定する。これにより、航法衛星による測位が困難な場合であっても、自車両の位置を正確に検出することができる。