(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6932039
(24)【登録日】2021年8月19日
(45)【発行日】2021年9月8日
(54)【発明の名称】振れ補正機能付き光学機器の振れ補正特性評価装置
(51)【国際特許分類】
G03B 43/00 20210101AFI20210826BHJP
G03B 5/00 20210101ALI20210826BHJP
H04N 5/225 20060101ALI20210826BHJP
H04N 5/232 20060101ALI20210826BHJP
【FI】
G03B43/00
G03B5/00 J
H04N5/225 300
H04N5/232 480
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-150279(P2017-150279)
(22)【出願日】2017年8月2日
(65)【公開番号】特開2018-116253(P2018-116253A)
(43)【公開日】2018年7月26日
【審査請求日】2020年8月3日
(31)【優先権主張番号】201710044320.0
(32)【優先日】2017年1月19日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514248891
【氏名又は名称】日本電産三協電子(東莞)有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100104204
【弁理士】
【氏名又は名称】峯岸 武司
(72)【発明者】
【氏名】何 翔
(72)【発明者】
【氏名】唐澤 敏行
(72)【発明者】
【氏名】小松 亮二
(72)【発明者】
【氏名】笠原 章吾
【審査官】
三宅 克馬
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−178320(JP,A)
【文献】
特開2011−257507(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/078537(WO,A1)
【文献】
特開2011−164413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 43/00
G03B 5/00
H04N 5/225
H04N 5/232
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮影するカメラを備えた可動モジュールを収容する固定体と、前記可動モジュールを前記固定体に対して可動自在に支持する支持機構と、前記カメラによって撮影される被写体像の像振れを前記可動モジュールを動かして補正する振れ補正駆動機構とを備えた振れ補正機能付き光学機器の振れ補正特性を評価する振れ補正特性評価装置において、
固定されたサンプル体の画像を前記カメラによって撮影しながら、前記振れ補正駆動機構によって前記可動モジュールを動かして、前記サンプル体の画像を複数撮影する制御手段と、
前記制御手段によって撮影された複数の画像によって描かれる前記サンプル体像の軌跡に基づいて前記光学機器の振れ補正特性を評価する評価手段と
を備えることを特徴とする振れ補正機能付き光学機器の振れ補正特性評価装置。
【請求項2】
前記評価手段は、前記振れ補正駆動機構によって前記可動モジュールが揺動して振れた振れ角を前記軌跡に基づいて算出し、算出した振れ角から前記振れ補正駆動機構の駆動特性を振れ補正特性として評価することを特徴とする請求項1に記載の振れ補正機能付き光学機器の振れ補正特性評価装置。
【請求項3】
前記評価手段は、前記カメラを構成する撮像素子の画素ピッチおよび前記カメラを構成する光学系の焦点距離から求まる1画素当たりの単位振れ角に、前記撮像素子上において前記サンプル体像が移動した画素数を乗算することで、前記振れ角を算出することを特徴とする請求項2に記載の振れ補正機能付き光学機器の振れ補正特性評価装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記可動モジュールの一方向における可動範囲を前記可動モジュールが往復する駆動信号を前記振れ補正駆動機構に与えて前記振れ補正駆動機構を駆動制御し、
前記評価手段は、一方向における可動範囲を前記可動モジュールが往復して前記カメラが撮影する前記サンプル体の複数の画像から得られる前記振れ角と前記駆動信号との関係に基づいて、前記振れ補正駆動機構の駆動特性を評価することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の振れ補正機能付き光学機器の振れ補正特性評価装置。
【請求項5】
前記支持機構は、前記可動モジュールを前記固定体に対して一方向および一方向と交差する他方向に可動自在に支持し、
前記評価手段は、前記可動モジュールが一方向における可動範囲を往復する前記駆動信号を前記振れ補正駆動機構に与えた際に、前記駆動信号を与えていない他方向に揺動して生じる、前記可動モジュールの他方向における前記振れ角に基づいて、前記振れ補正駆動機構の駆動特性を評価することを特徴とする請求項4に記載の振れ補正機能付き光学機器の振れ補正特性評価装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記振れ補正駆動機構に与える駆動信号の大きさを、前記可動モジュールの一方向における揺動が他の部品に干渉しない前記可動範囲内に制限することを特徴とする請求項4または請求項5に記載の振れ補正機能付き光学機器の振れ補正特性評価装置。
【請求項7】
前記評価手段は、一方向における第1の前記振れ角に前記可動モジュールを揺動させるのに必要とされる第1駆動信号の単位振れ角当たりの信号量と、一方向における第2の前記振れ角に前記可動モジュールを揺動させるのに必要とされる第2駆動信号の単位振れ角当たりの信号量との比を算出し、算出した比に基づいて前記振れ補正駆動機構の駆動特性を評価することを特徴とする請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の振れ補正機能付き光学機器の振れ補正特性評価装置。
【請求項8】
前記カメラが前記可動モジュール内に収容された完成品状態の前記振れ補正機能付き光学機器に対して振れ補正特性を評価することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の振れ補正機能付き光学機器の振れ補正特性評価装置。
【請求項9】
前記カメラが前記可動モジュール内に収容されていない半完成品状態の前記振れ補正機能付き光学機器に対して、前記可動モジュール内に前記カメラのダミーをセットして振れ補正特性を評価することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の振れ補正機能付き光学機器の振れ補正特性評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体像の像振れを、カメラを備えた可動モジュールを動かして補正する振れ補正機能付き光学機器の振れ補正特性を評価する振れ補正特性評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の振れ補正機能付き光学機器の振れ補正特性評価装置としては、例えば、特許文献1に開示された振れ補正カメラの検査装置がある。この振れ補正カメラの検査装置は、カメラ側部分、通信工具側部分、および加振台部分から構成される。カメラ側部分は、撮影光学系と、CPUと、X,Y軸レンズ位置検出回路,X,Y軸駆動モータ回路,およびヨー,ピッチ角速度検出回路等とから構成される。撮影光学系を構成する複数の撮影レンズのうちの1つは、手振れによる像振れを補正する防振レンズとして機能する。この振れ補正カメラの検査装置は、加振台によりぶれ補正カメラに所定の振動を与えて振れ補正機能の動作をチェックし、振れ補正機能が正常であるか否かを判断する。
【0003】
しかし、特許文献1に開示された振れ補正カメラの検査装置は、像振れを防振レンズによって補正する振れ補正カメラを検査するものである。
図1(a)に概念的に示すような、固定体1に可動自在に収容される可動モジュール2を、同図(b),(c)に示すように像振れを相殺する方向に動かして、像振れを補正する振れ補正機能付き光学機器3の検査装置とは異なる。従来、この種の振れ補正機能付き光学機器3の検査装置では、可動モジュール2を動かす振れ補正駆動機構に対する駆動信号と、この駆動信号による可動モジュール2の振れ角との関係を可動部角度特性として測定して、振れ補正機能が正常であるか否かを判断している。
【0004】
可動部角度特性の測定には、一般的に、
図2(a)に示すようにレーザーオートコリメータ4が用いられるが、可動モジュール2の可動角度範囲が大きいとレーザーオートコリメータ4の測定可能範囲を越えてしまい、光学機器3の可動部角度特性を測定することができない。このため、被検査体となる振れ補正機能付き光学機器3をゴニオステージ5に載置して、振れ補正機能付き光学機器3の検査装置6が構成されている。レーザーオートコリメータ4では±2.5deg.の傾きしか得られないが、ゴニオステージ5を同図(b)に示すように傾け、振れ補正機能付き光学機器3の製品全体を傾けながら、可動モジュール2を駆動して測定することで、必要な傾き、例えば、約±10deg.の傾きでの、可動部角度特性を測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−261229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の振れ補正機能付き光学機器3の検査装置6は、レーザーオートコリメータ4から出射されるレーザ光の反射光を利用するので、被検査体の表面に反射率90%以上の鏡面を設ける必要がある。このため、製品自体を加工して製品の表面に鏡面を形成したり、鏡面を測定用部品として製品に搭載した上で測定を行う必要がある。
【0007】
また、製品台にゴニオステージ5を搭載し、製品全体を傾けて測定する必要があるので、検査装置6は高価なものとなってしまう。さらに、可動部角度特性の測定方向とゴニオステージ5の傾斜方向を連動させる必要があるので、測定方向の変更を簡単に行えない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、
被写体を撮影するカメラを備えた可動モジュールを収容する固定体と、可動モジュールを固定体に対して可動自在に支持する支持機構と、カメラによって撮影される被写体像の像振れを可動モジュールを動かして補正する振れ補正駆動機構とを備えた振れ補正機能付き光学機器の振れ補正特性を評価する振れ補正特性評価装置において、
固定されたサンプル体の画像をカメラによって撮影しながら、振れ補正駆動機構によって可動モジュールを動かして、サンプル体の画像を複数撮影する制御手段と、
制御手段によって撮影された複数の画像によって描かれるサンプル体像の軌跡に基づいてカメラの振れ補正特性を評価する評価手段と
を備えることを特徴とする。
【0009】
本構成によれば、制御手段の制御により、固定されたサンプル体の画像をカメラによって撮影しながら、振れ補正駆動機構によって可動モジュールを動かすことで、複数のサンプル体の画像が得られる。これら複数のサンプル体の画像から、サンプル体像の軌跡を得ることができる。このサンプル体像の軌跡は、可動モジュールの動きに応じて描かれる。したがって、このサンプル体像の軌跡に基づいて、被写体像の像振れを補正する際における可動モジュールの動きの特性を知ることができ、さらに、可動モジュールのこの動特性から、振れ補正機能付き光学機器の振れ補正特性を評価手段によって評価することが可能になる。
【0010】
このため、振れ補正機能付き光学機器の製品に搭載されているカメラや振れ補正駆動機構といった構成要素を用いて、その振れ補正特性を評価することができ、レーザーオートコリメータやゴニオステージを用いた従来の高価な検査装置を使用する必要は無くなる。よって、レーザーオートコリメータを使用するために、製品自体を加工して製品の表面に鏡面を形成したり、鏡面を測定用部品として製品に搭載した上で測定を行うことなく、振れ補正機能付き光学機器の振れ補正特性を評価することができる。また、ゴニオステージを使用するために、振れ補正機能付き光学機器の可動部角度特性の測定方向とゴニオステージの傾斜方向を連動させる処置も不要になり、測定方向の変更を簡単に行えるようになる。
【0011】
また、本発明は、評価手段が、振れ補正駆動機構によって可動モジュールが揺動して振れた振れ角を前記軌跡に基づいて算出し、算出した振れ角から振れ補正駆動機構の駆動特性を振れ補正特性として評価することを特徴とする。振れ角は、カメラを構成する撮像素子の画素ピッチおよびカメラを構成する光学系の焦点距離から求まる1画素当たりの単位振れ角に、撮像素子上においてサンプル体像が移動した画素数を乗算することで、算出される。
【0012】
本構成によれば、振れ補正駆動機構によって可動モジュールが揺動して振れた振れ角を評価手段によってサンプル体像の軌跡に基づいて算出することで、可動モジュールを動かす振れ補正駆動機構に対する駆動信号と、この駆動信号による可動モジュールの振れ角との関係を可動部角度特性として測定することができる。そして、この可動部角度特性に基づき、測定した振れ補正機能が正常であるか否かを判断することができる。
【0013】
また、本発明は、制御手段が、可動モジュールの一方向における可動範囲を可動モジュールが往復する駆動信号を振れ補正駆動機構に与えて振れ補正駆動機構を駆動制御し、
評価手段が、一方向における可動範囲を可動モジュールが往復してカメラが撮影するサンプル体の複数の画像から得られる振れ角と駆動信号との関係に基づいて、振れ補正駆動機構の駆動特性を評価することを特徴とする。
【0014】
本構成によれば、制御手段の振れ補正駆動機構に対する制御により可動モジュールが一方向における可動範囲を往復させられることで、可動モジュールの振れ角の駆動信号に対する変化が、ヒステリシス特性として評価手段により把握される。したがって、評価手段は、このヒステリシス特性に基づいて、光学機器の振れ補正機能が正常であるか否かを判断することができる。
【0015】
また、本発明は、支持機構が、可動モジュールを固定体に対して一方向および一方向と交差する他方向に可動自在に支持し、評価手段が、可動モジュールが一方向における可動範囲を往復する駆動信号を振れ補正駆動機構に与えた際に、駆動信号を与えていない他方向に揺動して生じる、可動モジュールの他方向における振れ角に基づいて、振れ補正駆動機構の駆動特性を評価することを特徴とする。
【0016】
本構成によれば、可動モジュールの、駆動信号を与えていない意図しない他方向における振れ角の駆動信号に対するヒステリシス特性が、評価手段により把握される。したがって、評価手段は、このクロストーク特性に基づいて、意図しない他方向における可動モジュールの振れ角を評価して、光学機器の振れ補正機能が正常であるか否かを判断することができる。
【0017】
また、本発明は、制御手段が、振れ補正駆動機構に与える駆動信号の大きさを、可動モジュールの一方向における揺動が他の部品に干渉しない可動範囲内に制限することを特徴とする。
【0018】
本構成によれば、可動モジュールの一方向における揺動が制御手段によって他の部品に干渉しない可動範囲内に制限されることで、可動モジュールとその周囲の他の部品との衝突に起因する故障を防止することができる。また、可動モジュールの揺動が一定の可動範囲内に制限されることで、必要以上の振れ角まで広範囲にわたって無駄に測定が行われるのが防止され、振れ補正特性の測定時間の短縮化を図ることができる。
【0019】
また、本発明は、評価手段が、一方向における第1の振れ角に可動モジュールを揺動させるのに必要とされる第1駆動信号の単位振れ角当たりの信号量と、一方向における第2の振れ角に可動モジュールを揺動させるのに必要とされる第2駆動信号の単位振れ角当たりの信号量との比を算出し、算出した比に基づいて振れ補正駆動機構の駆動特性を評価することを特徴とする。
【0020】
本構成によれば、可動モジュールを第1の振れ角だけ揺動させる第1駆動信号の単位振れ角当たりの信号量と、可動モジュールを第2の振れ角だけ揺動させる第2駆動信号の単位振れ角当たりの信号量との比を評価手段が算出することで、可動モジュールを単位振れ角だけ揺動させるのに必要とされる駆動信号の信号量、つまり、可動モジュールの動作感度について、その直線性を評価することができる。評価手段は、可動モジュールの動作感度の直線性に基づいて、すなわち、可動モジュールを第2の振れ角まで揺動させる可動範囲において可動モジュールの動作感度が一定に保たれているか否かに基づいて、光学機器の振れ補正機能が正常であるか否かを判断することができる。
【0021】
また、本発明は、カメラが可動モジュール内に収容された完成品状態の振れ補正機能付き光学機器に対して振れ補正特性を評価することを特徴とする。
【0022】
本構成によれば、カメラが可動モジュール内に収容された完成品状態の振れ補正機能付き光学機器個々の振れ補正特性を評価することができる。
【0023】
また、本発明は、カメラが可動モジュール内に収容されていない半完成品状態の振れ補正機能付き光学機器に対して、可動モジュール内にカメラのダミーをセットして振れ補正特性を評価することを特徴とする。
【0024】
本構成によれば、カメラが可動モジュール内に後で収容されるタイプの半完成品状態の振れ補正機能付き光学機器に対しても、可動モジュール内に測定用としてカメラのダミーをセットすることで、その振れ補正特性を評価することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の振れ補正機能付き光学機器の振れ補正特性評価装置によれば、従来の高価な検査装置を使用する必要が無くなり、レーザーオートコリメータを使用するために製品に鏡面を設けることなく、また、ゴニオステージを使用するために測定方向の変更に手間をかけることなく、振れ補正機能付き光学機器の振れ補正特性を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】(a)は、従来の振れ補正機能付き光学機器の検査装置の検査対象となる振れ補正光学機器の構成を概念的に示す図、(b),(c)は、(a)に示す振れ補正光学機器の像振れ補正を概念的に説明する図である。
【
図2】(a)は、従来の振れ補正機能付き光学機器の検査装置の概略構成を示す斜視図、(b)は、(a)に示す検査装置に用いられるゴニオステージの動作説明図である。
【
図3】(a)は、本発明の一実施形態による振れ補正機能付き光学機器の検査装置のシステム構成図、(b)は、(a)に示す光学機器の概略構成図である。
【
図4】一実施形態による振れ補正機能付き光学機器の検査装置の回路ブロック図である。
【
図5】(a)は、一実施形態による振れ補正機能付き光学機器の検査装置の外観斜視図、(b)は、同検査装置の前面カバーが開けられた状態の外観斜視図である。
【
図6】(a)は、一実施形態による振れ補正機能付き光学機器の検査装置における可動モジュールによる撮影のイメージを表す図、(b)は、(a)に示す撮影により得られる白点が写った複数の画像を示す図である。
【
図7】(a)は、
図6(b)に示す複数の画像から得られる各白点の位置を示すグラフ、(b)は、白点の動いた軌跡に基づいて、可動モジュールの各入力電圧に対する振れ角を算出した結果を示すグラフである。
【
図8】
図7(b)に示す振れ角の算出原理を説明する図である。
【
図9】一実施形態による振れ補正機能付き光学機器の検査装置において、可動モジュールがその可動範囲を往復した際における、可動モジュールの駆動信号と振れ角との関係を示すグラフである。
【
図10】(a)は、一実施形態による振れ補正機能付き光学機器の検査装置によるアクチュエータの検査処理手順を示すゼネラルフローチャート、(b)は、(a)に示すヨーイング測定およびピッチング測定のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明による振れ補正機能付き光学機器の振れ補正特性評価装置を実施するための形態について説明する。
【0028】
図3(a)は、本発明の一実施形態による振れ補正機能付き光学機器11の振れ補正特性評価装置である検査装置10のシステム構成図、
図4は回路ブロック図である。本明細書において、XYZの3軸は互いに直交する方向であり、X軸方向の一方側を+X、他方側を−Xで示し、Y軸方向の一方側を+Y、他方側を−Yで示し、Z軸方向の一方側を+Z、他方側を−Zで示す。Z軸方向は、振れ補正機能付き光学機器11の可動モジュール13が揺動していない状態で、可動モジュール13に搭載されるカメラ13aの光軸Lに沿う方向である。また、+Z方向が光軸L方向の像側、−Z方向が光軸L方向の物体側(被写体側)である。
【0029】
検査装置10の検査対象は、振れ補正機能付き光学機器11であり、検査装置10による検査は、検査対象とされる光学機器11の製品そのものを使用して行われ、光学機器11の振れ補正特性を評価する。
【0030】
光学機器11は、カメラ付き携帯電話機等の電子機器に用いられる薄型カメラであり、電子機器の機器本体に支持された状態で電子機器に搭載される。光学機器11は、
図3(b)に概念的に示すように、固定体12に可動モジュール13が可動自在に収容されて、構成される。可動モジュール13は、被写体を撮影するカメラ13a、角速度センサ13bおよびアクチュエータ13c等から構成される。カメラ13aは可動モジュール13の前面にレンズ14を備えて構成され、レンズ14には、可動モジュール13が揺動していない状態で−Z方向から被写体光が入射する。カメラ13aに内蔵された不図示の撮像素子には、レンズ14によって被写体像が結像される。この被写体像は、カメラ13aに内蔵された不図示の撮像用回路モジュールによって映像信号に変換される。
【0031】
カメラ13aは、支持機構を構成する不図示のジンバル機構により、固定体12に対してX軸方向およびY軸方向に揺動自在に支持されている。固定体12のX軸周りの回転はピッチング(縦揺れ)、Y軸周りの回転はヨーイング(横揺れ)として、可動モジュール13に設けられた角速度センサ13bに検出される。
【0032】
可動モジュール13と固定体12との間には、カメラ13aによって撮影される被写体像の像振れを補正する振れ補正駆動機構がアクチュエータ13cとして設けられている。このアクチュエータ13cは、固定体12に設けられた不図示の磁石と、可動モジュール13に設けられた不図示のコイルとから構成され、可動モジュール13と固定体12との間で、可動モジュール13を固定体12に対してX軸方向およびY軸方向に相対変位させる磁気駆動力を発生する。
【0033】
光学機器11には、可動モジュール13への給電や信号授受を行うためのフレキシブル配線基板15が引き出されており、フレキシブル配線基板15の端部には、補強板16に補強されて不図示のコネクタが設けられている。映像処理基板17および制御基板18はこのコネクタによってフレキシブル配線基板15に接続され、フレキシブル配線基板15を介して、可動モジュール13との間で信号の授受等を行う。映像処理基板17には映像処理IC(Integrated Circuit)17a、制御基板18には制御IC18aが搭載されている。
【0034】
映像処理基板17に搭載された映像処理IC17aは、カメラ13aで撮影された映像信号を取り込み、所定の映像処理を行う。この映像処理基板17は、USB(Universal Serial Bus)通信により、PC(Personal Computer)で構成される上位システム19にUVC(USB Video Class)仕様で接続され、上位システム19によって制御され、また、上位システム19との間で映像信号を授受する。
【0035】
制御基板18は、映像処理基板17からDC3.3Vの電源供給を受けて動作し、角速度センサ13bから可動モジュール13の角速度信号を受信する。制御基板18に搭載された制御IC18aは、受信した角速度信号から固定体12のピッチングおよびヨーイングを検出して、このピッチングおよびヨーイングを相殺するPWM(Pulse Width Modulation)駆動信号をアクチュエータ13cへ出力する。アクチュエータ13cはこのPWM駆動信号によって駆動制御され、撮像素子に結像される像振れを打ち消す方向に可動モジュール13を動かす。この制御基板18は、I2C(Inter-Integrated Circuit)通信でUSB−I2Cコンバータ20を介して上位システム19に接続され、上位システム19によって制御され、また、上位システム19との間でデータを授受する。
【0036】
図5は検査装置10の機器構成を示し、同図(a)は、検査装置10の筐体10aの前面カバー10bが閉じられた状態、同図(b)は、電源スイッチ21および昇降スイッチ22が操作されて前面カバー10bが開けられた状態を表す。光学機器11並びに映像処理基板17および制御基板18は、筐体10aの底面に配置される。この際、光学機器11は、カメラ13aの撮影方向が筐体10aの天井に向けられる。筐体10aの底面にはUSB−I2Cコンバータ20およびUSBハブ23も配置される。映像処理基板17および制御基板18は、このUSBハブ23を介するUSBケーブルによって上位システム19のPCに接続される。
【0037】
筐体10aの天井には不図示の穴が開けられており、この穴から光学機器11に向けてLED装置24によって点状の光が照射される。検査装置10による検査は前面カバー10bが閉じられて、光学機器11が暗所に配置された状態で実施される。筐体10aおよび前面カバー10bは光が筐体内に入り込まないように、黒色の帯電防止アクリル樹脂によって形成される。
【0038】
検査装置10による光学機器11の検査は、LED装置24によって照射される点光源を固定されたサンプル体として、カメラ13aで撮影することで、行われる。すなわち、制御手段を構成する制御IC18aの制御により、固定された点光源の画像をカメラ13aによって撮影しながら、アクチュエータ13cを駆動して可動モジュール13を動かして、点光源の画像を複数撮影する。制御IC18aによるこの制御は、上位システム19から制御IC18aのレジスタ値が設定されることで、行われる。このレジスタ値は、アクチュエータ13cに与えられるPWM駆動信号のデューティ比を決定する。
【0039】
図6(a)は、この際における光学機器11による撮影のイメージを表す図である。可動モジュール13は、LED装置24によって生成される、黒地の画像31に白点32として写されるサンプル体をカメラ13aで撮影しながら、アクチュエータ13cによって矢印のように揺動される。この撮影により、同図(b)に示すように、白点32が撮影された複数の画像31が得られる。可動モジュール13の揺動は、Y軸方向およびX軸方向にそれぞれ約±10deg.の振れ角で行われる。
【0040】
図7(a)は、上記の撮影を、PWM駆動信号のデューティ比を変えてアクチュエータ13cに与える入力電圧を一定電圧毎に変化させ、可動モジュール13をY軸方向に揺動させながら、画像31を撮影して得られる各白点32の位置を示すグラフである。同グラフの横軸はX軸方向、縦軸はY軸方向の位置を表す。また、同図(b)は、白点32の動いた軌跡から、各入力電圧に対する可動モジュール13の振れ角を算出した結果を示すグラフである。同グラフの横軸はアクチュエータ13cに与える入力電圧、縦軸は可動モジュール13の振れ角を表す。また、黒塗りの菱形のプロット33はY軸方向の振れ角、白抜きの正方形のプロット34は意図しない(駆動信号を与えていない)X軸方向の振れ角を表す。
【0041】
図8は、この振れ角の算出原理を説明する図である。レンズ14の焦点距離をf[mm]、カメラ13aの撮像素子35の画素ピッチをd[mm]、1画素当たりの単位振れ角をθ[deg.]とすると、θは同図に示す式(1)によって表される。このため、可動モジュール13の振れ角は、カメラ13aを構成する撮像素子35の画素ピッチd、およびカメラ13aを構成する光学系であるレンズ14の焦点距離fから求まる、1画素当たりの単位振れ角θに、撮像素子35上において白点32が移動した画素数を乗算(=θ×移動画素数)することで、算出される。
【0042】
これらの演算は上位システム19によって行われる。上位システム19は、制御IC18aの制御によって撮影された複数の画像31によって描かれる白点32の軌跡に基づいて、可動モジュール13の振れ補正特性を評価する評価手段を構成する。本実施形態では、上位システム19は、アクチュエータ13cによって可動モジュール13が揺動された振れ角を白点32の軌跡に基づいて算出し、算出した振れ角からアクチュエータ13cの駆動特性を振れ補正特性として評価する。
【0043】
図9は、可動モジュール13のY軸方向における可動範囲を可動モジュール13が往復するPWM駆動信号をアクチュエータ13cに与えて、制御IC18aがアクチュエータ13cを駆動制御した際における、PWM駆動信号と可動モジュール13の振れ角との関係を示すグラフである。同グラフの横軸はPWM駆動信号のデューティ(PWM Duty)設定値[%]、縦軸はカメラ13aの振れ角[deg.]である。また、特性線41は可動モジュール13のY軸方向の振れ角特性、特性線42はX軸方向の振れ角特性を表す。また、特性線41に囲まれる一点鎖線41aは特性線41の平均値を表す。
【0044】
PWM駆動信号は、例えば、0からプラス側へ増加させ、振れ角が可動範囲の最大端に達したときにマイナス側へ減少させ、振れ角が可動範囲の最小端に達したときにプラス側へ反転させて、アクチュエータ13cに与えることで、可動範囲を可動モジュール13が往復し、各特性線41,42はヒステリシス特性を示す。
【0045】
上位システム19は、同グラフに示される、Y軸方向における可動範囲を可動モジュール13が往復して撮影する白点32の複数の画像31から得られる振れ角と、駆動信号との関係に基づいて、アクチュエータ13cのピッチング駆動特性を評価する。また、X軸方向における可動範囲を可動モジュール13が往復して撮影する白点32の複数の画像31から得られる振れ角と、駆動信号との関係に基づいて、アクチュエータ13cのヨーイング駆動特性をピッチング駆動特性と同様に評価する。
【0046】
アクチュエータ13cの駆動特性を測定する際に、可動モジュール13を揺動させる可動範囲は、アクチュエータ13cに与えられるPWM駆動信号の大きさが、制御IC18aにより制御されて、可動モジュール13のY軸方向およびX軸方向における揺動が他の部品に干渉しない可動範囲内に制限される。光学機器11の製品としての可動範囲の動作保証範囲は±6deg.に設定されるが、設計時における可動範囲の動作保証は、デューティ設定値がグラフに示す値Aでの振れ角に設定される。
【0047】
アクチュエータ13cの駆動特性の評価は、次の第1〜第9の項目を測定し、検査することで行われる。第1の項目は、デューティ設定値の値Aでの振れ角、第2の項目は、振れ角が1deg.のときのデューティ設定値の値Bから求まる可動モジュール13の動作感度、第3の項目は、振れ角が3deg.のときのデューティ設定値の値Cから求まる可動モジュール13の動作感度、第4の項目は、振れ角が6deg.のときのデューティ設定値の値Dから求まる可動モジュール13の動作感度、第5の項目は、振れ角が1deg.と6deg.とにおける各動作感度の比、第6の項目は、振れ角が指定の4deg.のときにおけるデューティ設定値の値E、第7の項目は、振れ角が指定の7deg.のときにおけるデューティ設定値の値F、第8の項目は、駆動信号を往復させて戻ってきたときの原点におけるズレ幅(ヒステリシス)G、第9の項目は、駆動信号を与えていないX軸方向における振れ角の最大値と最小値間の幅(クロストーク)Hである。
【0048】
なお、ここではグラフにおけるプラス側の値について説明するが、マイナス側の値についても同様に測定されて評価される。
【0049】
上位システム19は、第1の項目のデューティ設定値Aでの振れ角に基づき、検査対象の光学機器11におけるアクチュエータ13cが、設計時における可動範囲の動作保証要件を満たすか否かについて、評価する。
【0050】
また、可動モジュール13の動作感度は、可動モジュール13を単位振れ角だけ揺動させるのに必要とされるPWM駆動信号の信号量を算出することで、求めることができる。上位システム19は、可動モジュール13の振れ角が1deg.、3deg.および6deg.のときにおける、デューティ設定値B、CおよびDの各駆動信号について、単位振れ角当たりの信号量をそれぞれ算出することで、各振れ角における可動モジュール13の、第2、第3および第4の項目の動作感度を求める。そして、求めた各動作感度が規定の動作感度要件を満たすか否かの観点から、アクチュエータ13cの駆動特性を評価する。
【0051】
また、上位システム19は、第5の項目の、振れ角が1deg.と6deg.とにおける各動作感度の比に基づいて、動作感度のリニアリティの観点から、アクチュエータ13cの駆動特性を評価する。また、上位システム19は、第6および第7の項目の、振れ角が指定の4deg.および7deg.のときにおけるデューティ設定値EおよびFについては、アクチュエータ13cを使った実際の振れ補正におけるパラメータとして使用する。
【0052】
また、上位システム19は、第8の項目の、原点におけるズレ幅(ヒステリシス)Gが規定の値に収まっているか否かの観点から、アクチュエータ13cの駆動特性を評価する。また、上位システム19は、可動モジュール13がY軸方向における可動範囲を往復する駆動信号をアクチュエータ13cに与えた際に、Y軸方向に直交する駆動信号を与えていないX軸方向に揺動して生じる、可動モジュール13のX軸方向における振れ角を、第9の項目の、振れ角の最大値と最小値間の幅(クロストーク)Hに基づいて判断し、アクチュエータ13cの駆動特性を評価する。
【0053】
図10(a)は、検査装置10によるアクチュエータ13cの検査処理手順を示すゼネラルフローチャートである。
【0054】
まず、検査装置10の図示しないスイッチが操作されることで、検査装置10を構成する各装置の電源がオンにされる(ステップ(以下、Sと記載する)1参照)。次に、前面カバー10bを昇降スイッチ22により上方へ開き、検査対象となる光学機器11がワークとして筐体10aに取り付けられる(S2参照)。次に、USBハブ23の個別スイッチを操作することで、LED装置24、USB−I2Cコンバータ20、映像処理基板17へUSB給電され(S3参照)、上位システム19のPCに点光源の映像が表示される(S4参照)。次に、可動モジュール13がX軸方向に揺動されてヨーイングの測定が行われ(S5参照)、引き続いて、可動モジュール13がY軸方向に揺動されてピッチングの測定が行われる(S6参照)。その後、映像処理基板17への給電がオフにされ(S7参照)、ワークが筐体10aから取り外されて(S8参照)、1製品の検査が終了する。
【0055】
同図(b)は、S5において行われるヨーイング測定のフローチャートである。なお、S6において行われるピッチング測定もヨーイング測定と同様に行われる。
【0056】
ヨーイング測定に際して、まず、上位システム19によって制御IC18aのレジスタに対するパラメータ設定がI2C通信によって行われる(S11参照)。次に、制御IC18aがアクチュエータ13cへ出力するPWM駆動信号のデューティ比を決める値が、上位システム19によって制御IC18aのレジスタに設定される(S12参照)。次に、レジスタに設定されたデューティ比に相当する振れ角に、アクチュエータ13cが
図6(a)に示すように駆動されて、カメラ13aに
図6(b)に示すように撮影される画像31が上位システム19に取り込まれる(S13参照)。その後、上位システム19において、画像31における白点32の位置が
図7(a)に示すように検出される。次に、上位システム19により、可動モジュール13の入力電圧に対する振れ角が、
図7(b)に示すように、白点32の位置から換算される(S15参照)。
【0057】
その後、撮影される画像31の全ての白点32についての、入力電圧に対する振れ角の測定が終了したか否かが判断される(S16参照)。測定が終了していない場合には、S16の判断はNoとなって処理はS12に戻り、S12〜S15の処理が繰り返される。全ての白点32についての、入力電圧に対する振れ角の測定が終了すると、S16の判断はYesとなり、次に、前述した第1〜第9の各検査項目についての計算が上位システム19によって行われる(S17参照)。次に、各検査項目についてのアクチュエータ13cの駆動特性の評価が前述したように判定され(S18参照)、ヨーイング測定が終了する。
【0058】
(本形態の主な作用効果)
このような本実施形態による光学機器11の検査装置10によれば、制御IC18aの制御により、固定された点光源が白点32として写った画像31をカメラ13aによって撮影しながら、アクチュエータ13cによって可動モジュール13を動かすことで、複数の白点32の画像31が得られる。そして、これら複数の白点32の画像31から、白点32の軌跡を得ることができる。この白点32の軌跡は、可動モジュール13の動きに応じて描かれる。したがって、この白点32の軌跡に基づいて、被写体像の像振れを補正する際における可動モジュール13の動きの特性を知ることができ、さらに、可動モジュール13のこの動特性から、光学機器11の振れ補正特性を上位システム19によって評価することが可能になる。
【0059】
このため、光学機器11の製品に搭載されているカメラ13aやアクチュエータ13cといった構成要素を用いて、その振れ補正特性を評価することができ、レーザーオートコリメータやゴニオステージを用いた従来の高価な検査装置を使用する必要は無くなる。よって、レーザーオートコリメータを使用するために、製品自体を加工して製品の表面に鏡面を形成したり、鏡面を測定用部品として製品に搭載した上で測定を行うことなく、光学機器11の振れ補正特性を評価することができる。また、ゴニオステージを使用するために、光学機器11の可動部角度特性の測定方向とゴニオステージの傾斜方向を連動させる処置も不要になり、制御IC18aのレジスタに設定する値を書き換えるだけで、測定方向の変更を簡単に行えるようになる。
【0060】
また、本実施形態による光学機器11の検査装置10によれば、アクチュエータ13cによって可動モジュール13が揺動して振れた振れ角を上位システム19によって白点32の軌跡に基づいて算出することで、可動モジュール13を動かすアクチュエータ13cに対する駆動信号と、この駆動信号による可動モジュール13の振れ角との関係を可動部角度特性として測定することができる。そして、この可動部角度特性に基づき、測定した光学機器11の振れ補正機能が正常であるか否かを判断することができる。
【0061】
また、本実施形態による光学機器11の検査装置10によれば、制御IC18aのアクチュエータ13cに対する制御により可動モジュール13がY軸方向およびX軸方向の各可動範囲を往復させられることで、可動モジュール13の振れ角の駆動信号に対する変化が、
図9のグラフにおけるズレ幅Gとして上位システム19に把握される。したがって、上位システム19は、このズレ幅Gが示すヒステリシス特性に基づいて、光学機器11の振れ補正機能が正常であるか否かを判断することができる。
【0062】
また、本実施形態による光学機器11の検査装置10によれば、可動モジュール13の、Y軸方向に直交する意図しないX軸方向における振れ角の駆動信号に対するヒステリシス特性が、クロストークHとして上位システム19に把握される。したがって、上位システム19は、このヒステリシス特性に基づいて、Y軸方向に直交する意図しないX軸方向における可動モジュール13の振れ角、および、X軸方向に直交する意図しないY軸方向における可動モジュール13の振れ角を評価して、光学機器11の振れ補正機能が正常であるか否かを判断することができる。
【0063】
また、本実施形態による光学機器11の検査装置10によれば、可動モジュール13のY軸方向およびX軸方向における揺動が制御IC18aによって他の部品に干渉しない可動範囲内に制限されることで、可動モジュール13とその周囲の他の部品との衝突に起因する故障を防止することができる。また、可動モジュール13の揺動が一定の可動範囲内に制限されることで、必要以上の振れ角まで広範囲にわたって無駄に測定が行われるのが防止され、振れ補正特性の測定時間の短縮化を図ることができる。
【0064】
また、本実施形態による光学機器11の検査装置10によれば、可動モジュール13を1deg.だけ揺動させるときの動作感度と、可動モジュール13を6deg.だけ揺動させるときの動作感度との比を上位システム19が算出することで、可動モジュール13の動作感度について、その直線性を評価することができる。上位システム19は、可動モジュール13の動作感度の直線性に基づいて、すなわち、可動モジュール13を6deg.まで揺動させる可動範囲において可動モジュール13の動作感度が一定に保たれているか否かに基づいて、光学機器11の振れ補正機能が正常であるか否かを判断することができる。
【0065】
また、本実施形態による光学機器11の検査装置10は、カメラ13aが可動モジュール13内に上記のように収容された完成品状態の光学機器11に対して、振れ補正特性を評価する。このため、カメラ13aが可動モジュール13内に収容された完成品状態の振れ補正機能付き光学機器11個々の振れ補正特性を、評価することができる。
【0066】
また、本実施形態による光学機器11の検査装置10は、カメラ13aが可動モジュール13内に収容されていない半完成品状態の振れ補正機能付き光学機器11に対しては、可動モジュール13内にカメラ13aのダミーをセットして振れ補正特性を評価する。このため、カメラ13aが可動モジュール13内に後で収容されるタイプの、半完成品状態の振れ補正機能付き光学機器11に対しても、可動モジュール13内に測定用としてカメラ13aのダミーをセットすることで、その振れ補正特性を評価することができる。
【0067】
なお、上記の実施形態においては、サンプル体として点光源を用い、サンプル体像を白点32とした場合について、説明した。しかし、サンプル体像は必要に応じて、直線や、十字線、特殊画像などに変更してもよい。このようなサンプル体像によっても、上記の実施形態と同様な作用効果が奏される。
【符号の説明】
【0068】
10…振れ補正機能付き光学機器11の検査装置(振れ補正特性評価装置)
11…振れ補正機能付き光学機器
12…固定体
13…可動モジュール
13a…カメラ
13b…角速度センサ
13c…アクチュエータ(振れ補正駆動機構)
14…レンズ(光学系)
15…フレキシブル配線基板
17…映像処理基板
17a…映像処理IC
18…制御基板
18a…制御IC
19…上位システム(PC)
20…USB−I2Cコンバータ
24…LED装置
31…画像
32…白点(サンプル体像)
35…撮像素子