(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6932052
(24)【登録日】2021年8月19日
(45)【発行日】2021年9月8日
(54)【発明の名称】自動二輪車のホイール
(51)【国際特許分類】
B60B 1/08 20060101AFI20210826BHJP
【FI】
B60B1/08
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-177355(P2017-177355)
(22)【出願日】2017年9月15日
(65)【公開番号】特開2019-51826(P2019-51826A)
(43)【公開日】2019年4月4日
【審査請求日】2020年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(72)【発明者】
【氏名】松村 典和
【審査官】
上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−118684(JP,A)
【文献】
米国特許第04280736(US,A)
【文献】
特開昭52−018648(JP,A)
【文献】
特開2017−171237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤが装着されるリムと、中心部にあって車輪軸を支持するハブと、これらリムとハブとを連結する複数のスポークとが一体形成されているホイールであって、
複数の前記スポークは、第1のスポークと第2のスポークとがホイールの周方向に隣接して配置され、
前記第1のスポークを形成する第1スポーク片が、前記第2のスポークを形成する第2スポーク片よりも、ホイールの軸方向の寸法が大きく、
前記第1スポーク片の前記軸方向の端面が、前記第2スポーク片の前記軸方向の端面よりも明度が高く設定されている自動二輪車のホイール。
【請求項2】
請求項1に記載のホイールにおいて、前記第1スポーク片の角部の円弧の半径が、前記第2スポーク片の角部の円弧の半径よりも小さく設定されている自動二輪車のホイール。
【請求項3】
請求項1または2に記載のホイールにおいて、前記第1スポーク片の前記軸方向の端面が、前記第2スポーク片の前記軸方向の端面よりも表面粗さが小さく設定されている自動二輪車のホイール。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のホイールにおいて、前記周方向に沿った断面形状に関して、前記第1および第2スポーク片は、前記軸方向の寸法が前記周方向の寸法よりも長い矩形で形成されている自動二輪車のホイール。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のホイールにおいて、前記第1および第2スポーク片の前記軸方向の寸法が、前記リムに向かって徐々に小さくなっている自動二輪車のホイール。
【請求項6】
請求項5に記載のホイールにおいて、前記第1スポーク片は前記リムと前記ハブとに連結され、
前記第2スポーク片は前記リムと前記第1スポーク片とに連結されている自動二輪車のホイール。
【請求項7】
タイヤが装着されるリムと、中心部にあって車輪軸を支持するハブと、これらリムとハブとを連結する複数のスポークとが一体形成されているホイールであって、
複数の前記スポークは、第1のスポークと第2のスポークとがホイールの周方向に隣接して配置され、
前記第1のスポークを形成する第1スポーク片が、前記第2のスポークを形成する第2スポーク片よりも、ホイールの軸方向の寸法が大きく、
前記第1のスポークは、周方向に隣接した2本の前記第1スポーク片を有し、
前記第2のスポークは、周方向に隣接した2本の前記第2スポーク片を有している自動二輪車のホイール。
【請求項8】
請求項7に記載のホイールにおいて、前記第1および第2のスポークのうち少なくとも前記第2のスポークは、2本の前記第2スポーク片が前記リムに向かって互いの周方向間隔が小さくなるように傾斜している自動二輪車のホイール。
【請求項9】
請求項7または8に記載のホイールにおいて、前記第1スポーク片と前記リムとの連結部と、これに隣接する前記第2スポーク片と前記リムとの連結部との周方向間隔が、前記第1のスポークを形成する2本の前記第1スポーク片の前記リムとの連結部の周方向間隔および前記第2のスポークを形成する2本の前記第2スポーク片の前記リムとの連結部の周方向間隔よりも大きい自動二輪車のホイール。
【請求項10】
請求項7から9のいずれか一項に記載のホイールにおいて、前記第1および第2のスポークがそれぞれ、前記周方向に等間隔で5つ設けられている自動二輪車のホイール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤが装着されるリムと、中心部にあって車輪軸を支持するハブと、これらリムとハブとを連結する複数のスポークとを一体形成してなる自動二輪車のホイールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車のホイールとして、スポークホイール(例えば、特許文献1)およびキャストホイール(例えば、特許文献2)がある。スポークホイールは、ハブとリムをワイヤ状のスポークでつないで構成されたホイールである。スポークは、ニップルによりハブに固定される。スポークホイールは、ハブ、リム、スポーク、ニップル等の多くの部品で構成されているので、複雑な造形が可能となり、高い意匠性を確保できる。他方、キャストホイールは、リムとハブとスポークとが、例えば鋳造により一体に形成されたホイールである。したがって、剛性を確保し易いうえに、部品点数、製造工数が少なくて済むので、製造コストも抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−035491号公報
【特許文献2】特開2005−297688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スポークホイールは、ハブ、リム、スポーク、ニップルが別部品で構成されるので、部品点数が多くなり、それに伴う組立工数も増える。その結果、製造コストが高くなる。また、組立部品であるので、剛性を確保しづらい。
【0005】
本発明は、キャストホイールでありながら、高い意匠性を確保できる自動二輪車のホイールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の自動二輪車のホイールは、タイヤが装着されるリムと、中心部にあって車輪軸を支持するハブと、これらリムとハブとを連結する複数のスポークとが一体形成されているホイールであって、複数の前記スポークは、第1のスポークと第2のスポークとがホイールの周方向に隣接して配置され、前記第1のスポークを形成する第1スポーク片が、前記第2のスポークを形成する第2スポーク片よりも、ホイールの軸方向の寸法が大きい。ここで、1つの第1および第2のスポークはそれぞれ、1つ以上の第1および第2スポーク片で構成される。
【0007】
この構成によれば、リムとハブとスポークとが一体形成されたキャストホイールであるから、部品点数が少なくて済み、強度も確保し易い。また、第1スポーク片と第2スポーク片とで、軸方向の寸法を異ならせることで、側面視で、第1スポーク片と第2スポーク片とが視覚的に異なるイメージとなり、立体感のある独特の外観とすることができる。これにより、キャストホイールでありながら、高い意匠性を確保できる。
【0008】
本発明において、前記周方向に沿った断面形状に関して、前記第1および第2スポーク片は、前記軸方向の寸法が前記周方向の寸法よりも長い矩形で形成されていてもよい。この構成によれば、第1および第2スポーク片の周方向の寸法を小さくすることで、側面視で、スポークホイールの細いワイヤスポークのイメージとして、軽快でクラシカルな外観を得ることができる。さらに、第1および第2スポーク片の車幅方向(軸方向)寸法を長くすることで、ホイールの剛性を確保できる。
【0009】
前記第1および第2スポーク片が細長い矩形で形成されている場合、前記第1スポーク片の角部の円弧の半径が前記第2スポーク片の角部の円弧の半径よりも小さく設定され、前記第1スポーク片の前記軸方向の端面が前記第2スポーク片の前記軸方向の端面よりも明度が高く設定されていてもよい。この構成によれば、側面視で、明度の高い第1スポークが車幅方向外側に進出して見え、明度の低い第2スポークが車幅方向内側に後退して見える。これにより、スポークが立体的に見え、独特の外観を得ることができる。
【0010】
本発明において、前記第1スポーク片は前記リムと前記ハブとに連結され、前記第2スポーク片は前記リムと前記第1スポーク片とに連結されていてもよい。この構成によれば、第1のスポークが第2のスポークよりも長く形成されるので、第2のスポークよりも第1のスポークを目立たせることができる。これにより、スポークが一層立体的に見え、独特の外観を得ることができる。
【0011】
前記第2スポーク片が前記第1スポーク片に連結される場合、前記第1スポーク片と前記第2スポーク片との連結部が、ホイールに装着されるブレーキディスクの外周縁よりも内径側に位置していてもよい。この構成によれば、連結部が車幅方向外側から見えないので、ホイールの外観を損なわない。
【0012】
本発明において、前記第1および第2スポーク片の前記軸方向の寸法が、前記リムに向かって徐々に小さくなっていてもよい。この構成によれば、第1および第2スポーク片をテーパ状とすることで、スポークホイールのワイヤスポークのイメージとすることができ、見栄えが良くなる。
【0013】
本発明において、前記第1のスポークは周方向に隣接した2本の前記第1スポーク片を有し、前記第2のスポークは周方向に隣接した2本の前記第2スポーク片を有していてもよい。この構成によれば、2本のスポーク片で1つのスポークが構成されるので、安定した外観イメージを得ることができる。この場合、前記第1および第2のスポークがそれぞれ、前記周方向に等間隔で5つ設けられていてもよい。この構成によれば、各スポーク片を細くしてワイヤスポークのイメージとしつつ、数を増やして周方向にバランスよく配置することで、剛性を確保し易くなる。
【0014】
前記第1および第2のスポークがそれぞれ、2本の前記第1および第2スポーク片を有している場合、前記第1および第2のスポークのうち少なくとも前記第2のスポークは、2本の前記第2スポーク片が前記リムに向かって互いの周方向間隔が小さくなるように傾斜していてもよい。この構成によれば、第2スポーク片を周方向に均等にバランスよく配置できるので、ホイールの強度が向上する。
【0015】
前記第1および第2のスポークがそれぞれ、2本の前記第1および第2スポーク片を有している場合、前記第1スポーク片と前記リムとの連結部と、これに隣接する前記第2スポーク片と前記リムとの連結部との周方向間隔が、前記第1のスポークを形成する2本の前記第1スポーク片の前記リムとの連結部の周方向間隔および前記第2のスポークを形成する2本の前記第2スポーク片の前記リムとの連結部の周方向間隔よりも大きくてもよい。この構成によれば、各連結部間の周方向間隔を異ならせることで、独特の外観とすることができる。また、最も周方向間隔の大きい部分に、バランスウェイトを取り付けるための保持片を配置することができる。これにより、バランスウェイトの着脱作業を実施し易くなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の自動二輪車のホイールによれば、キャストホイールでありながら、高い意匠性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る自動二輪車のホイールを示す側面図である。
【
図4】(a)〜(e)は、同ホイールの正面図、背面図、右側面図、前方斜視図および後方斜視図である。
【
図5】(a)〜(g)は、ハブの形状およびホイール幅が異なる変形例のホイールの正面図、背面図、右側面図、平面図、底面図、前方斜視図および後方斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。以下の説明において、「側方」とは、ホイールを自動二輪車に取り付けた状態での車幅方向をいう。
【0019】
図1は、本発明の第1実施形態に係る自動二輪車のホイール1を示す側面図である。ホイール1は、タイヤ2が装着されるリム4と、中心部にあって車輪軸6を支持するハブ8と、リム4とハブ8とを連結する複数のスポーク10とを有している。本発明のホイール1は、リム4とハブ8とスポーク10とが鋳造により一体形成されているキャストホイールである。本実施形態のホイール1は、アルミニウム合金の鋳造品である。ただし、ホイール1の材質、製造方法はこれに限定されず、マグネシウム合金、鉄でもよく、鍛造品、鋳塊からの削り出しであってもよい。
【0020】
ハブ8にホイールベアリング12が組み込まれ、車輪軸6がホイールベアリング12で回転自在に支持されている。車輪軸6は、公知の方法で車体に取り付けられる。ハブ8の側端面に、ブレーキディスク14が着脱自在に取り付けられている。
【0021】
スポーク10は、第1のスポーク16と第2のスポーク18とからなる。第1のスポーク16と第2のスポーク18とは、ホイール1の周方向D1に隣接して配置されている。本実施形態では、第1のスポーク16は、周方向D1に隣接した2本の第1スポーク片20により形成されている。同様に、第2のスポーク18は、周方向に隣接した2本の第2スポーク片22により形成されている。本実施形態では、第1および第2のスポーク16,18がそれぞれ、周方向D1に等間隔で5つ設けられている。各第1スポーク片20は同じ形状で、各第2スポーク片22も同じ形状である。
【0022】
ここで、1つの第1および第2のスポーク16,18は、1つ以上の第1および第2スポーク片20,22でそれぞれ構成されていればよい。したがって、第1のスポーク16を形成する第1スポーク片20の数、および第2のスポーク18を形成する第2スポーク片22の数は、2つに限定されず、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。また、第1のスポーク16の数、および第2のスポーク18の数は、2つ以上であればよく、5つに限定されない。
【0023】
本実施形態では、各第1スポーク片20は、リム4とハブ8とに連結されている。一方、各第2スポーク片22は、リム4と第1スポーク片20とに連結されている。ただし、第2スポーク片22が、リム4とハブ8とを連結するように形成されてもよい。第1および第2スポーク片20,22は、側面視で、直線状に延びている。本実施形態では、第1スポーク片20と第2スポーク片22との連結部24が、ブレーキディスク14の外周縁よりも内径側に位置している。
【0024】
第1のスポーク16は、これを構成する2本の第1スポーク片20が、リム4に向かって互いの周方向間隔が小さくなるように傾斜して延びている。同様に、第2のスポーク18も、これを構成する2本の第2スポーク片22がリム4に向かって互いの周方向間隔が小さくなるように傾斜して延びている。本実施形態では、第1および第2スポーク片20,22の両方がリム4に向かって放射方向ではなく、放射方向に対して傾斜して延びているが、第2スポーク片22のみが傾斜していてもよい。
【0025】
各第1スポーク片20は、リム4と第1連結部26で連結されている。各第2スポーク片22は、リム4と第2連結部28で連結されている。本実施形態では、2本の第1スポーク片20,20の第1連結部26,26の第1周方向間隔L1は、2本の第2スポーク片22,22の第2連結部28,28の第2周方向間隔L2よりも大きい。また、第1スポーク片20の第1連結部26と、これに隣接する第2スポーク片22の第2連結部28との第3周方向間隔L3が、前記第1周方向間隔L1および前記第2周方向間隔L2よりも大きい(L3>L1>L2)。
【0026】
リム4の内周面にバランスウェイトの保持片30が取り付けられている。保持片30に取り付けられるバランスウェイトは、ホイール1およびタイヤ2の回転のアンバランスを打ち消すために設けられる。保持片30は、リム4の内周面における周方向に広い部分、すなわち第1連結部26と第2連結部28との間の部分に取り付けられている。また、リム4の内周面に、タイヤ2に空気を入れるエアバルブ32が設けられている。エアバルブ32も、リム4の内周面における第1連結部26と第2連結部28との間の部分に取り付けられている。本実施形態のエアバルブ32は、L字形状を有している。
【0027】
図2に示すように、第1スポーク片20は、第2スポーク片22よりも、同一の径方向位置Pにおいてホイール1の軸方向D2の寸法が大きく形成されている。つまり、第2スポーク片22は、その全体が第1スポーク片20よりも車幅方向内側に配置されている。本実施形態では、第1スポーク片20の軸方向D2の寸法W1が、リム4に向かって徐々に小さくなっている。同様に、第2スポーク片22の軸方向D2の寸法W2が、リム4に向かって徐々に小さくなっている。
【0028】
図3は、スポーク10を周方向D1に沿って切断した断面を示す。
図3に示すように、本実施形態では、周方向に沿った断面形状に関して、第1スポーク片20は、その軸方向D2の寸法W1が周方向D1の寸法T1よりも長い矩形で形成されている。同様に、第2スポーク片22は、その軸方向D2の寸法W2が周方向D1の寸法T2よりも長い矩形で形成されている。
【0029】
第1スポーク片20の軸方向D2の寸法W1は、第2スポーク片22の軸方向の寸法W2よりも大きく形成されている。一方、第1スポーク片20の周方向D1の寸法T1は、第2スポーク片22の周方向D1の寸法T2とほぼ同じ大きさに形成されている。すなわち、第1スポーク片20は、第2スポーク片22に比べて、その断面形状が偏平である。
【0030】
本実施形態では、第1および第2スポーク片20,22の断面形状の矩形は、その角部に丸みが付けられた円弧形状で形成されている。第1スポーク片20の角部の円弧の半径(隅R)が、第2スポーク片22の角部の円弧の半径(隅R)よりも小さく設定されている(R1<R2)。
【0031】
上述のように、本発明のホイール1は、鋳造により成形されたキャストホイールである。本実施形態では、第1スポーク片20の軸方向D2の両端面20a,20aに、切削加工が施されている。つまり、第1スポーク片20の端面20aは、切削仕上面で形成されている。一方、第2スポーク片22の軸方向D2の端面22aには、切削加工が施されていない。このように、切削加工を行うことで、第1スポーク片20の端面20aは、第2スポーク片の軸方向D2の端面22aに比べて、明度が大きく設定されるとともに、角部の円弧の半径(隅R)が極めて小さくなり、ほぼ尖った形状となる(R1<R2)。なお、前記切削加工に代えて、研磨加工を用いてもよい。
【0032】
ここで、「明度」は、表面粗さにより影響される。具体的には、表面粗さの数値が大きいほど表面は粗く、明度は低くなる。一方、表面粗さの数値が小さいほど表面は平坦になり、明度が高くなる。本実施形態では、第1スポーク片20の端面20aを切削仕上面で形成することで、第2スポーク片22の端面22aよりも明度が高くなっている。第1スポーク片20の端面20aに切削加工を施す以外にも、第1スポーク片20の端面20aに塗装を施すこと、またはテープ等を張り付けることで、明度を高くすることもできる。
【0033】
また、本実施形態では、第1スポーク片20を切削加工することで、角部の円弧の半径(隅R)が第2スポーク片22よりも小さく形成されている。ただし、第1スポーク片20を切削加工する以外にも、例えば、金型により、第1スポーク片20の角部の円弧の半径(隅R)を第2スポーク片22よりも小さく形成できる。
【0034】
上述のように、第1スポーク片20の端面20aの明度を高くすること、および角部の円弧の半径を小さくすること(R1<R2とすること)により、側面視で、第1のスポーク16が第2のスポーク18よりも車幅方向外側、つまり観察者の手前に見えるようになる。その結果、側面視で、第1のスポーク16が第2のスポーク18よりも目立つようになる。これにより、ホイール1のスポーク10が立体的に見えるようになる。
【0035】
上記構成によれば、リム4とハブ8とスポーク10とが一体形成されたキャストホイールであるから、部品点数が少なくて済み、強度も確保し易い。また、
図2に示すように、第1スポーク片20と第2スポーク片22とで、軸方向(車幅方向)の寸法が異なっているので、側面視で、第1スポーク片20と第2スポーク片22とが視覚的に異なるイメージとなる。その結果、立体感のある独特の外観とすることができる。これにより、キャストホイールでありながら、高い意匠性を確保できる。
【0036】
図3の周方向に沿った断面形状に関して、第1および第2スポーク片20,22は、軸方向の寸法W1,W2が周方向の寸法T1,T2よりも長い矩形で形成されている。この構成によれば、第1および第2スポーク片20,22の周方向の寸法T1,T2を小さくすることで、側面視で、スポークホイールの細いワイヤスポークのイメージとして、軽快でクラシカルな外観を得ることができる。さらに、第1および第2スポーク片20,22の車幅方向(軸方向)寸法W1,W2を長くすることで、ホイールの剛性を確保できる。
【0037】
また、第1スポーク片20の角部の円弧の半径(隅R1)が第2スポーク片22の角部の円弧の半径(隅R2)よりも小さく設定され、第1スポーク片20の軸方向の端面20aが第2スポーク片22の軸方向の端面22aよりも明度が高く設定されている。これにより、
図1の側面視で、第1スポーク16が車幅方向外側に進出して見え、第2スポーク18が車幅方向内側に後退して見える。その結果、スポーク10が立体的に見え、独特の外観を得ることができる。
【0038】
また、第1スポーク片20はリム4とハブ8とに連結され、第2スポーク片22はリム4と第1スポーク片20とに連結されている。これにより、第1のスポーク16が第2のスポーク18よりも長く形成されるので、第2のスポーク18よりも第1のスポーク16を目立たせることができる。その結果、スポーク10が一層立体的に見え、独特の外観を得ることができる。
【0039】
さらに、第1スポーク片20と第2スポーク片22との連結部24が、ブレーキディスク14の外周縁よりも内径側に位置している。これにより、連結部24が車幅方向外側から見えないので、ホイール1の外観を損なわない。
【0040】
図2に示すように、第1および第2スポーク片20,22の軸方向D2の寸法が、リム4に向かって徐々に小さくなっている。このように、第1および第2スポーク片20,22をテーパ状とすることで、スポークホイールのワイヤスポークのイメージに近づけることができ、見栄えが良くなる。
【0041】
第1のスポーク16は周方向に隣接した2本の第1スポーク片20,20を有し、第2のスポーク18は周方向に隣接した2本の第2スポーク片22,22を有している。このように、2本のスポーク片20,20(22,22)で1つのスポーク16(18)が構成されるので、安定した外観イメージを得ることができる。
【0042】
さらに、
図1に示すように、第1および第2のスポーク16,18がそれぞれ、周方向D1に等間隔で5つ設けられている。つまり、第1および第2スポーク片20,22が10本ずつ設けられ、合計20本のスポーク片20,22でスポーク10が構成されている。これにより、各スポーク片20,22を細くしてワイヤスポークのイメージとしつつ、数を増やして周方向にバランスよく配置することで、剛性を確保できる。また、スポーク片20,22の数を増やすことで、鋳造時に、湯が分散して円滑に流れる。その結果、鋳造性が向上する。
【0043】
第1のスポーク16を構成する2本の第1スポーク片20,20がリム4に向かって互いの周方向間隔が小さくなるように傾斜して延び、第2のスポーク18を構成する2本の第2スポーク片22,22がリム4に向かって互いの周方向間隔が小さくなるように傾斜して延びている。これにより、各スポーク片20,22を周方向に均等にバランスよく配置できるので、ホイール1の強度が向上する。
【0044】
上述のように、2本の第1スポーク片20,20とリム4との第1連結部26,26の第1周方向間隔L1が、2本の第1スポーク片22,22とリム4との第2連結部28,28の第2周方向間隔L2よりも大きく設定され、第1連結部26と第2連結部28との第3周方向間隔L3が第1周方向間隔L1および第2周方向間隔L2よりも大きく設定されている(L3>L1>L2)。このように、各周方向間隔L1,L2,L3を異ならせることで、独特の外観とすることができる。
【0045】
また、リム4の内周面における最も周方向間隔の大きい部分にバランスウェイトの保持片30およびエアバルブ32を配置することができる。エアバルブ32はL字形状で、その空気注入口が周方向D1を向いているから、空気注入時の作業性がよい。また、最も周方向間隔の大きい部分に保持片30を配置することで、バランスウェイトの着脱作業を実施し易くなる。
【0046】
図4(a)〜(e)は、同ホイールの正面図、背面図、右側面図、前方斜視図および後方斜視図である。左側面図は右側面図と対称であり、平面図は右側面図を左へ90°回転させた形状であり、底面図は右側面図を右へ90°回転させた形状であるから、図示を省略している。
図4のホイール1は、例えば、後輪用である。
【0047】
図5(a)〜(g)は、ハブの形状およびホイール幅が異なる変形例のホイールの正面図、背面図、右側面図、平面図、底面図、前方斜視図および後方斜視図である。左側面図は右側面図と対称であるから、図示を省略している。
図5のホイール1Aは、例えば、前輪用である。
【0048】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。例えば、第1および第2スポーク片20,22の数、形状は上記実施形態のものに限定されない。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0049】
1,1A ホイール
2 タイヤ
4 リム
6 車輪軸
8 ハブ
10 スポーク
14 ブレーキディスク
16 第1のスポーク
18 第2のスポーク
20 第1スポーク片
20a 第1スポーク片の端面
22 第2スポーク片
22a 第2スポーク片の端面
24 第1スポーク片と第2スポーク片との連結部
26 第1連結部(第1スポーク片とリムとの連結部)
28 第2連結部(第2スポーク片とリムとの連結部)
D1 ホイールの周方向
D2 ホイールの軸方向