特許第6932076号(P6932076)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6932076
(24)【登録日】2021年8月19日
(45)【発行日】2021年9月8日
(54)【発明の名称】編地の編成方法
(51)【国際特許分類】
   D04B 1/00 20060101AFI20210826BHJP
   D04B 1/24 20060101ALI20210826BHJP
【FI】
   D04B1/00 Z
   D04B1/24
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-245465(P2017-245465)
(22)【出願日】2017年12月21日
(65)【公開番号】特開2019-112735(P2019-112735A)
(43)【公開日】2019年7月11日
【審査請求日】2020年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151221
【氏名又は名称】株式会社島精機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(72)【発明者】
【氏名】岡本 一良
【審査官】 川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−141905(JP,A)
【文献】 特開2016−008364(JP,A)
【文献】 特開2017−179637(JP,A)
【文献】 特開2013−011031(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04B 1/00
D04B 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する一側針床と他側針床、およびこれらの針床に編糸を給糸する給糸部材を有する横編機を用いて、両針床に係止される編出し部を編成し、その編出し部を起点にして前後に対向する一側編地部と他側編地部を編成する編地の編成方法において、
前記一側針床に前記一側編地部と同幅の一側ベース部を形成すると共に、前記他側針床に前記他側編地部と同幅でかつ前記一側ベース部の各編目に繋がる編目からなる他側ベース部を形成する工程Aと、
前記一側ベース部の編幅方向の端部から順に、前記一側ベース部の編目に繋がる一側増し目を前記一側針床に形成することを繰り返す工程Bと、
前記他側ベース部の編幅方向の端部から順に、前記他側ベース部の編目に繋がる他側増し目を前記他側針床に形成することを繰り返すことで前記編出し部を完成させる工程Cと、
前記編出し部における複数の前記一側増し目で構成される編目列のウエール方向に前記一側編地部を編成すると共に、複数の前記他側増し目で構成される編目列のウエール方向に前記他側編地部を編成する工程Dと、を備え、
前記工程Bでは、
前記一側ベース部の端部編目のウエール方向に続く第一編目を編成する工程b1と、
前記第一編目に割増やしを行って、前記第一編目から引き出される第一新規編目を形成する工程b2と、
前記一側ベース部のうちの前記端部編目に隣接する隣接編目と、前記第一編目と前記第一新規編目のいずれか一方の編目と、を重ねてその重ね目を新たな端部編目と規定すると共に、他方の編目を前記一側増し目と規定する工程b3と、を繰り返し、
前記工程Cでは、
前記他側ベース部の端部編目のウエール方向に続く第二編目を編成する工程c1と、
前記第二編目に割増やしを行って、前記第二編目から引き出される第二新規編目を形成する工程c2と、
前記他側ベース部のうちの前記端部編目に隣接する隣接編目と、前記第二編目と前記第二新規編目のいずれか一方の編目と、を重ねてその重ね目を新たな端部編目と規定すると共に、他方の編目を前記他側増し目と規定する工程c3と、を繰り返す編地の編成方法。
但し、前記一側増し目のウエール方向に続く前記一側編地部の編目を表目とする場合、前記工程b1の前記第一編目は裏目とし、
前記一側増し目のウエール方向に続く前記一側編地部の編目を裏目とする場合、前記工程b1の前記第一編目は表目とし、
前記他側増し目のウエール方向に続く前記他側編地部の編目を表目とする場合、前記工程c1の前記第二編目は裏目とし、
前記他側増し目のウエール方向に続く前記他側編地部の編目を裏目とする場合、前記工程c1の前記第二編目は表目とする。
【請求項2】
前記一側増し目のウエール方向に続く前記一側編地部の編目を表目とする場合、前記工程b3では前記第一編目を前記隣接編目に重ね、前記第一新規編目を前記一側増し目と規定し、
前記他側増し目のウエール方向に続く前記他側編地部の編目を表目とする場合、前記工程c3では前記第二編目を前記隣接編目に重ね、前記第二新規編目を前記側増し目と規定する請求項1に記載の編地の編成方法。
【請求項3】
前記一側増し目のウエール方向に続く前記一側編地部の編目を裏目とする場合、前記工程b3では前記第一新規編目を前記隣接編目に重ね、前記第一編目を前記一側増し目と規定し、
前記他側増し目のウエール方向に続く前記他側編地部の編目を裏目とする場合、前記工程c3では前記第二新規編目を前記隣接編目に重ね、前記第二編目を前記他側増し目と規定する請求項1または請求項2に記載の編地の編成方法。
【請求項4】
前記工程Aでは、前記一側針床と前記他側針床とに交互に編目を形成することで、前記一側ベース部と前記他側ベース部とを編成する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の編地の編成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、編出し部を編成し、その編出し部を起点にして編出し部から分岐する一側編地部と他側編地部とを編成する編地の編成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
横編機を用いて前後に対向する針床に係止される編出し部を編成し、その編出し部を起点として前後に対向する一側編地部と他側編地部を編成する編地の編成方法として、例えば特許文献1に記載の方法が挙げられる。特許文献1では、最初に一側編目と他側編目を編成した後、以下の編成を繰り返すことで編出し部を編成している。
・一側編目よりも編出し部の形成方向側に、その一側編目に続く新たな一側編目を編成し、一側編目の移動によって形成される空針に一側増し目を形成する。
・他側編目よりも編出し部の形成方向側に、その他側編目に続く新たな他側編目を編成し、他側編目の移動によって形成される空針に他側増し目を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−11031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術によれば、一側編地部と他側編地部に自然に繋がる目立たない編出し部を編成できる。しかし、使用する編糸の種類や両編地部の編組織によっては編出し部が波打ったようになり、編出し部が目立ってしまう場合がある。この現象は、特に編地部をリブ組織とした場合に顕著である。縮み易いリブ組織に比べて編出し部が縮み難く、編地部の収縮量と編出し部の収縮量とに差ができるためである。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、編糸の種類や一側編地部と他側編地部の編組織に関わらず、編出し部を目立たなくできる編地の編成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の編地の編成方法は、
互いに対向する一側針床と他側針床、およびこれらの針床に編糸を給糸する給糸部材を有する横編機を用いて、両針床に係止される編出し部を編成し、その編出し部を起点にして前後に対向する一側編地部と他側編地部を編成する編地の編成方法において、
前記一側針床に前記一側編地部と同幅の一側ベース部を形成すると共に、前記他側針床に前記他側編地部と同幅でかつ前記一側ベース部の各編目に繋がる編目からなる他側ベース部を形成する工程Aと、
前記一側ベース部の編幅方向の端部から順に、前記一側ベース部の編目に繋がる一側増し目を前記一側針床に形成することを繰り返す工程Bと、
前記他側ベース部の編幅方向の端部から順に、前記他側ベース部の編目に繋がる他側増し目を前記他側針床に形成することを繰り返すことで前記編出し部を完成させる工程Cと、
前記編出し部における複数の前記一側増し目で構成される編目列のウエール方向に前記一側編地部を編成すると共に、複数の前記他側増し目で構成される編目列のウエール方向に前記他側編地部を編成する工程Dと、を備え、
前記工程Bでは、
前記一側ベース部の端部編目のウエール方向に続く第一編目を編成する工程b1と、
前記第一編目に割増やしを行って、前記第一編目から引き出される第一新規編目を形成する工程b2と、
前記一側ベース部のうちの前記端部編目に隣接する隣接編目と、前記第一編目と前記第一新規編目のいずれか一方の編目と、を重ねてその重ね目を新たな端部編目と規定すると共に、他方の編目を前記一側増し目と規定する工程b3と、を繰り返し、
前記工程Cでは、
前記他側ベース部の端部編目のウエール方向に続く第二編目を編成する工程c1と、
前記第二編目に割増やしを行って、前記第二編目から引き出される第二新規編目を形成する工程c2と、
前記他側ベース部のうちの前記端部編目に隣接する隣接編目と、前記第二編目と前記第二新規編目のいずれか一方の編目と、を重ねてその重ね目を新たな端部編目と規定すると共に、他方の編目を前記他側増し目と規定する工程c3と、を繰り返す編地の編成方法である。
但し、前記一側増し目のウエール方向に続く前記一側編地部の編目を表目とする場合、前記工程b1の前記第一編目は裏目とし、
前記一側増し目のウエール方向に続く前記一側編地部の編目を裏目とする場合、前記工程b1の前記第一編目は表目とし、
前記他側増し目のウエール方向に続く前記他側編地部の編目を表目とする場合、前記工程c1の前記第二編目は裏目とし、
前記他側増し目のウエール方向に続く前記他側編地部の編目を裏目とする場合、前記工程c1の前記第二編目は表目とする。
【0007】
ここで、表目は、一側針床側(他側針床側)から見たときに、他側針床側(一側針床側)から一側針床側(他側針床側)に向って旧編目から引き出される編目である。また、裏目は、表目と逆方向に引き出される編目である。また、工程Aの両ベース部の編目は、ニット目でも良いし掛け目でも良い。
【0008】
本発明の編地の編成方法の一形態として、
前記一側増し目のウエール方向に続く前記一側編地部の編目を表目とする場合、前記工程b3では前記第一編目を前記隣接編目に重ね、前記第一新規編目を前記一側増し目と規定し、
前記他側増し目のウエール方向に続く前記他側編地部の編目を表目とする場合、前記工程c3では前記第二編目を前記隣接編目に重ね、前記第二新規編目を前記側増し目と規定する形態を挙げることができる。
【0009】
本発明の編地の編成方法の一形態として、
前記一側増し目のウエール方向に続く前記一側編地部の編目を裏目とする場合、前記工程b3では前記第一新規編目を前記隣接編目に重ね、前記第一編目を前記一側増し目と規定し、
前記他側増し目のウエール方向に続く前記他側編地部の編目を裏目とする場合、前記工程c3では前記第二新規編目を前記隣接編目に重ね、前記第二編目を前記他側増し目と規定する形態を挙げることができる。
【0010】
本発明の編地の編成方法の一形態として、
前記工程Aでは、前記一側針床と前記他側針床とに交互に編目を形成することで、前記一側ベース部と前記他側ベース部とを編成する形態を挙げることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の編地の編成方法では、一側編地部と他側編地部の各編目をそれぞれ表目とするか裏目とするかによって、編出し部を構成する第一編目と第二編目を表目とするか裏目とするかを決定している。そうすることで、編地部の収縮や変形に追従する編出し部を備える編地を編成することができる。そのような編出し部を備える編地では、編地部の収縮や変形に編出し部が追従するため、編出し部を目立たなくできる。
【0012】
また、本発明の編地の編成方法では、一側編地部と他側編地部の編成の起点となる増し目を割増やしによって形成しているため、編出し部の編目が詰んだ状態になり、編出し部に孔が空き難く、編出し部の見栄えが良い。
【0013】
さらに、本発明の編地の編成方法では、前後に繋がる一側ベース部と他側ベース部を最初に形成し、前後のベース部の間隔を決定している。そのため、編出し部の各編目の間隔にバラツキが生じ難く、各編目の形成状態が均一になり易いので、編出し部を綺麗に仕上げることができる。
【0014】
本発明の編地の編成方法において、増し目に続く一側編地部と他側編地部の編目が表目の場合、割増やしによって形成される新規編目を増し目とすることで、編出し部の見栄えをさらに向上させることができる。
【0015】
本発明の編地の編成方法において、増し目に続く一側編地部と他側編地部の編目が裏目の場合、新規編目が引き出される第一編目および第二編目を増し目とすることで、編出し部の見栄えをさらに向上させることができる。
【0016】
本発明の編地の編成方法において、両ベース部を構成する編目を交互に編成することで、効率的に両ベース部を形成することができる。また、両ベース部の編成条件が揃うので、編出し部が綺麗に仕上がる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態1に示す編地(スカート)の概略図である。
図2】実施形態1に係る編地の編成方法の手順を示す編成工程第一図である。
図3】実施形態1に係る編地の編成方法の手順を示す編成工程第二図である。
図4】実施形態1に係る編地の編成方法の手順を示す編成工程第三図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態1>
実施形態1では、図1に示すスカート(編地)100を編成する例を説明する。このスカート100は、前側編地部(他側編地部)20Fと後側編地部(一側編地部)20Bとが筒状に繋がることで形成されており、その編出し部101と編終り部102はいずれもスカート100の側方に設定されている。つまり、このスカート100は、その側方から編出して、図1に矢印で示す方向に向かって編成を行い、反対側の側方で編み終ることで得られる。特に、編出し部101と両編地部20F,20Bとの境界では、両編地部20F,20Bの収縮や変形が不安定となり、編出し部101が目立ち易い。編出し部101を目立たなくすることで、スカート100の商品価値が上がる。ここで、本例の編出し部101を形成する対象となる編地は着衣に限定されるわけではなく、例えば鞄などの小物や、家具のカバーなどの産業資材であっても良い。
【0019】
以下、スカート100のうち、特に編出し部101の編成方法を図2〜4に示す編成工程図に基づいて説明する。スカート100の編成に使用する横編機は、左右方向に延びかつ前後方向に互いに対向する前後一対の針床を、二組有する4枚ベッド横編機である。横編機は2枚ベッド横編機であっても良く、その場合、隣接する編目の間に空針を設けた針抜き編成を行なうと良い。
【0020】
図2〜4の小欄に記載の「S+数字」は編成工程の番号を示し、小欄の右にある大欄には、各編成工程における編成の様子が示されている。大欄内の黒点は編針を、逆三角形マークは給糸部材を示し、欄外の大文字アルファベットは編針の位置を示している。大欄内の丸マークは表目を、菱形マークは裏目を、二重マークは重ね目を、塗り潰したマークはその編成工程で編成した編目を示す。
【0021】
本例では、編出し部101のウエール方向に続けて1×1のリブ組織の編地部20B,20F(図1参照)を編成することを前提に、編出し部101を編成する。具体的には、BD(FD)の編針A,C,Eには、後側編地部20B(前側編地部20F)の表目を、BD(FD)の編針B,D,Fには、後側編地部20B(前側編地部20F)の裏目を編成することを前提として編出し部101を編成する。
【0022】
図2のS1では、下部後針床(一側針床であって、以下BDと表記する)の編針A〜Fと、下部前針床(他側針床であって、以下FDと表記する)の編針A〜Fと、に交互に編目を形成する(工程A相当)。本例では、空針に編糸を掛けているので、掛け目からなる両ベース部10B,10Fが形成される。抜き糸で編針A〜Fに掛け目を形成してから両ベース部10B,10Fを形成しても良く、その場合、ニット目からなる両ベース部10B,10Fが形成される。
【0023】
ここで、BDとFDとに交互に編目を編成して両ベース部10B,10Fを形成することが編成効率上、有利であるが、その他の方法にて両ベース部10B,10Fを形成することもできる。例えば、BDまたはFDに抜き糸の掛け目を形成し、その掛け目に対してニット目を編成して、さらにニット目に割増やしを行うことで両ベース部10B,10Fを形成しても良い。
【0024】
S2では、給糸部材を右方向RSに移動させ、BDの編針F〜Aにニット目を編成する。このS2は、目移しし難い掛け目によって一側ベース部10Bが構成されるために行っている編成であり、一側ベース部10Bがニット目からなる場合は行わなくて良い。つまり、このS2は補助的な編成であって、S2の新たに編成されたニット目は、一側ベース部10Bのウエール方向に続く新たな一側ベース部10Bと考えて良い。編成効率上、S2では一側ベース部10Bの全ての掛け目に一気にニット目を編成しているが、S3以降の編成の対象となる掛け目に逐一ニット目を編成しても良い。
【0025】
S3以降は、一側ベース部10Bの編幅方向の右方向RSの端部から順に、一側ベース部10Bの編目に繋がる一側増し目1c(S6など)を一側針床BDに形成することを繰り返す(工程B相当)。
【0026】
S3では、BDの編針Aに係止される一側ベース部10Bの端部編目1a(S2参照)を上部前針床(他側針床であって、以下FUと表記する)の編針Aに移動させる。その後、給糸部材を左方向LSに移動させ、端部編目1aのウエール方向に続く第一編目1を編成する(工程b1相当)。第一編目1はFUで編成されるので、BD側から見て裏目となる。
【0027】
S4では、第一編目1を一旦、BDの編針Aに戻す。そして、S5では、第一編目1に割増やしを行って、第一編目1から引き出される第一新規編目2を形成する(工程b2相当)。第一編目1に割増やしを行うことで、旧編目である第一編目1はFUの編針Aに移動され、その第一編目1から引き出される編目である第一新規編目2がBDの編針Aに形成される。
【0028】
ここで、S4の第一編目1の移動は、上部の針床に係止される編目に対して割増やしできないため、行なっている。単なる横編機の機構上の問題なので、上部の針床の編目に割増やしを行なうことができる横編機であれば、S4を行なう必要はない。
【0029】
S6では、一側ベース部10Bの隣接編目1bと、第一編目1と第一新規編目2のいずれか一方の編目と、を重ねてその重ね目3を新たな端部編目1aと規定すると共に、他方の編目を一側増し目1cと規定する(工程b3)。隣接編目1bは、一側ベース部10Bの編目のうち、S2の時点で端部編目1aに隣接する編目である。本例では、第一編目1をBDの編針Bに移動させて重ね目3を形成し、第一新規編目2はBDの編針Aに係止させたまま一側増し目1cとしている。
【0030】
ここで、S6とは異なり、S5の第一新規編目2を隣接編目1bに重ね、第一編目1をBDの編針Aに移動させて一側増し目1cと規定することもできる。但し、一側増し目1cのウエール方向に続く一側編地部20B(図1)の編目を1×1のリブ組織の表目とする予定であるため、図2のS6に示す通りに編成を行なう方が、編出し部101(図1)が綺麗に仕上がる。また、本例では、第一編目1を隣接編目1bの上に重ね、第一編目1がスカート100(図1)の内側に配置されるようにしているが、S5の隣接編目1bをBDの編針Bから別の編針に退避させて、第一編目1をBDの編針Bに移動させ、その第一編目1の上に隣接編目1bを重ねてもかまわない。第一編目1と隣接編目1bの重ね方によって編出し部101の仕上がりが綺麗になる場合もある。
【0031】
S7では、新たな端部編目1a(重ね目3)のウエール方向に続く新たな第一編目4を編成する(二回目の工程b1)。第一編目4はBDで編成されるので、BD側から見て表目となる。
【0032】
S8では、第一編目4に割増やしを行う(二回目の工程b2)。この割増やしによって、第一編目4はFUの編針Bに移動され、その第一編目4から引き出される編目である第一新規編目5がBDの編針Bに形成される。
【0033】
S9では、BDの編針Cに係止される隣接編目1bに第一新規編目5を重ねてその重ね目6を新たな端部編目1aと規定し、S10では、第一編目4をBDの編針Bに移動させ、その第一編目4を一側増し目1cと規定する(二回目の工程b3)。
【0034】
ここで、第一編目4を隣接編目1bに重ね、第一新規編目5を一側増し目1cと規定することもできる。しかし、BDの編針Bに形成される一側増し目1cのウエール方向に続く一側編地部20B(図1)の編目を1×1のリブ組織の裏目とする予定であるため、S9,S10に示す通りに編成を行う方が、編出し部101(図1)が綺麗に仕上がる。
【0035】
以降、S3〜S6の編成とS7〜S10の編成とを交互に繰り返す。図3のS11には、一側ベース部10B(図2)の最後の編目に重ね目3を形成した状態が示されている。
【0036】
S12では、給糸部材を左方向LSに移動させ、S11の重ね目3のウエール方向に続く終端編目7を編成した後、給糸部材を反転させてFDの編針F〜Aにニット目を編成し、他側ベース部10Fのウエール方向に続く新たな他側ベース部10Fを形成する。終端編目7は最後の一側増し目1cと見做して良い。新たな他側ベース部10Fは、S11とは別の給糸部材を用いて編成しても良い。また、S12とは異なり、S13以降の編成の対象となる掛け目に逐一ニット目を編成しても良い。
【0037】
ここで、終端編目7にさらに割増やしを行っても良い。その場合、終端編目7から引き出される編目を最後の一側増し目1cとし、割増やしによってFUの編針Fに移動された終端編目7は、その近傍の編針(例えば、FDの編針Fなど)の編目に重ねると良い。
【0038】
S13以降は、他側ベース部10Fの編幅方向の右方向RSの端部から順に、他側ベース部10Fの編目に繋がる他側増し目1f(S20など)をFDに形成することを繰り返す(工程C相当)。もちろん、他側ベース部10Fの編幅方向の左方向LSの端部から順に他側増し目1fの形成を開始しても構わない。
【0039】
S13では、FDの編針Aに係止される他側ベース部10Fの端部編目1d(S12参照)を上部後針床(一側針床であって、以下BUと表記する)の編針Aに移動させる。その後、給糸部材を左方向LSに移動させ、端部編目1dのウエール方向に続く第二編目8を編成する(工程c1相当)。第二編目8はBUで編成されるので、FD側から見て裏目となる。
【0040】
S14では、第二編目8を一旦、FDの編針Aに戻す。そして、S15では、第二編目8に割増やしを行って、第二編目8から引き出される第二新規編目9を形成する(工程c2相当)。第二編目8に割増やしを行うことで、旧編目である第二編目8はBUの編針Aに移動され、その第二編目8から引き出される新編目である第二新規編目9がFDの編針Aに形成される。
【0041】
S16では、他側ベース部10Fの隣接編目1eと、第二編目8と第二新規編目9のいずれか一方の編目と、を重ねてその重ね目10を新たな端部編目1dと規定すると共に、他方の編目を他側増し目1fと規定する(工程c3)。隣接編目1eは、他側ベース部10Fの編目のうち、S12の時点で端部編目1dに隣接する編目である。本例では、第二編目8をFDの編針Bに移動させて重ね目10を形成し、第二新規編目9はFDの編針Aに係止させたまま他側増し目1fとしている。ここで、第二編目8と隣接編目1eの重ね方は、S16の重ね方と逆でも構わない。
【0042】
S17では、新たな端部編目1d(重ね目10)のウエール方向に続く新たな第二編目11を編成する(二回目の工程c1)。第二編目11はFDで編成されるので、FD側から見て表目となる。
【0043】
S18では、第二編目11に割増やしを行う(二回目の工程c2)。この割増やしによって、第二編目11はBUの編針Bに移動され、その第二編目11から引き出される新編目である第二新規編目12がFDの編針Bに形成される。
【0044】
S19では、FDの編針Cに係止される隣接編目1eに第二新規編目12を重ねてその重ね目13を新たな端部編目1dと規定し、S20では、第二編目11をFDの編針Bに移動させ、その第二編目11を他側増し目1fと規定する(二回目の工程c3)。
【0045】
以降、S13〜S16の編成とS17〜S20の編成とを交互に繰り返す。図4のS21には、他側ベース部10F(図3)の最後の編目に重ね目10を形成した状態が示されている。S22では、給糸部材を左方向LSに移動させ、最後の重ね目10のウエール方向に続く終端編目14を編成し、編出し部101を完成させる。終端編目14は最後の他側増し目1fと見做すことができる。この終端編目14にさらに割増やしを行っても良い。その場合、割増やしによって形成される新編目を最後の他側増し目1fとし、割増やしによってBUの編針Fに移動された終端編目14は、その近傍の編針(例えば、BDの編針Fなど)の編目に重ねると良い。
【0046】
編出し部101が完成したら、その編出し部101を編成の起点として一側編地部20Bと他側編地部20Fを編成する(工程D相当)。具体的には、S23では、第一編目列50Bを構成する複数の一側増し目1cをBDとFUとに振り分けてから、第一編目列50Bのウエール方向に続けて1×1のリブ組織の一側編地部20Bを編成する。S24では、第二編目列50Fを構成する複数の他側増し目1fをFDとBUとに振り分けてから、第二編目列50Fのウエール方向に続けて1×1のリブ組織の他側編地部20Fを編成する。本例の編地(スカート)100では、一側編地部20Bと他側編地部20Fとが編幅方向の端部で繋がっていないため、S24で使用する給糸部材はS23で使用する給糸部材とは別物である。両編地部20B,20Fが筒状に繋がる編地を編成する場合、一つの給糸部材を用いて両編地部20B,20Fを連続して編成すると良い。
【0047】
以上説明したように、図4に示す一側編地部20Bと他側編地部20Fの編成の起点となる一側増し目1c(図2)と他側増し目1f(図3)を割増やしによって形成することで、編出し部101の編目が詰んだ状態になり、編出し部101に孔が空き難く、編出し部101の見栄えが良くなる。
【0048】
また、本例の編地の編成方法では、以下の条件を満たすように編出し部101を編成することで、編地部20B,20Fの収縮や変形に追従する編出し部101を編成することができる。そのような編出し部101を備える編地100(図1)では、編地部20B,20Fの収縮に編出し部101が追従するため、編出し部101を目立たなくできる。
・一側増し目1c(図4のS22)のウエール方向に続く一側編地部20Bの編目を表目とする場合(図4のS23)、その一側増し目1cの形成に関わる工程b1の第一編目1は裏目とする(図2のS3)。
・一側増し目1c(図4のS22)のウエール方向に続く一側編地部20Bの編目を裏目とする場合(図4のS23)、その一側増し目1cの形成に関わる工程b1の第一編目4は表目とする(図2のS7)。
・他側増し目1f(図4のS22)のウエール方向に続く他側編地部20Fの編目を表目とする場合(図4のS24)、その他側増し目1fの形成に関わる工程c1の第二編目8は裏目とする(図3のS13)。
・他側増し目1f(図4のS22)のウエール方向に続く他側編地部20Fの編目を裏目とする場合(図4のS24)、その他側増し目1fの形成に関わる工程c1の第二編目11は表目とする(図3のS17)。
【0049】
更に、本例の編地の編成方法では、図2のS2に示すように、前後に繋がる一側ベース部10Bと他側ベース部10Fを最初に形成して、前後のベース部10B,10F間の間隔を決定している。そのため、編出し部101の各編目の間隔にバラツキが生じ難く、各編目の形成状態が均一になり易いので、編出し部101を綺麗に仕上げることができる。
【0050】
<変形例>
実施形態1の編出し部101を編成する給糸部材は複数の給糸口を有するプレーティングキャリアなどであっても良い。その他、編地部20B,20Fは、1×1以外のリブ組織、例えば1×2や2×2のリブ組織であっても良いし、天竺組織であっても良い。その他、いずれか一方の編地部20B(20F)を天竺組織、他方の編地部20F(20B)をリブ組織とすることもできる。このような編成は、編地の表側と裏側とでデザインを変更したい場合に有効である。また、一側編地部20Bと他側編地部20Fの両端部を繋げるように編成すれば、編出し部101を底とするバッグのような袋状編地を編成することができる。
【符号の説明】
【0051】
1,4 第一編目 8,11 第二編目
2,5 第一新規編目 9,12 第二新規編目
3,6,10,13 重ね目
7,14 終端編目
1a,1d 端部編目 1b,1e 隣接編目
1c 一側増し目 1f 他側増し目
100 スカート(編地)
101 編出し部
102 編終り部
10B 一側ベース部 10F 他側ベース部
20B 後側編地部(一側編地部) 20F 前側編地部(他側編地部)
50B 第一編目列 50F 第二編目列
図1
図2
図3
図4