【実施例】
【0038】
以下、実施例に基づき、本発明を具体的に説明する。
【0039】
試験例1
異方導電性フィルムにおける導電粒子P(粒子径D=4μm)の配置について、第1中心間距離d1=第2中心間距離d2=10μmとし、表1に示すように傾斜角αを変えた場合に、電極サイズ15μm×100μmの狭小のバンプを異方導電性フィルムのパターンに重ねることによって、加熱加圧前のバンプが捕捉し得る導電粒子の最多粒子数と最少粒子数とを求めた。この場合、異方導電性フィルムの長手方向とバンプの短手方向を合わせた。また、バンプの縁端部に対してその面積の50%以上が外れている粒子は、バンプが捕捉し得る導電粒子としてカウントしなかった。
この結果から、傾斜角αとバンプの粒子捕捉性の傾向をみることができる。結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
表1から、傾斜角αが18〜35°の場合に、バンプで捕捉される粒子数の最小数および最大数の差が少なく安定しており、狭いバンプに有効なことがわかる。
これに対し、傾斜角αが小さすぎると、捕捉数の差が大きくなる。これは傾斜角が小さすぎることにより、粒子配列の、バンプの端部へのかかり具合が捕捉数に直接影響するためである。逆に傾斜角αが大きすぎても同様な現象が生じ、バンプから外れる粒子が多くなる傾向がある。
【0042】
このように狭小のバンプに対して、導電性を安定に保つために捕捉効率を一定にする場合、傾斜角αを適切に保つことが必要になることが分かる。
【0043】
実施例1〜8、比較例1〜5
次に、導電粒子の粒子間の距離と傾斜角αとの関係を具体的に検証するために、表2に示す樹脂を使用し、導電粒子(積水化学工業(株)、AUL704、粒径4μm)が表2に示す配置となる異方導電性フィルムを次のようにして製造した。即ち、表2に示す組成で熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及び潜在性硬化剤を含む絶縁性樹脂の混合溶液を調製し、それを、フィルム厚さ50μmのPETフィルム上に塗布し、80℃のオーブンにて5分間乾燥させ、PETフィルム上に厚み20μmの粘着層を形成した。
【0044】
一方、表2に示す配置で凸部の配列パターンを有する金型を作成し、公知の透明性樹脂のペレットを溶融させた状態で該金型に流し込み、冷やして固めることで、凹部が表2に示す配列パターンの樹脂型を形成した。この樹脂型の凹部に導電粒子を充填し、その上に上述の絶縁性樹脂の粘着層を被せ、紫外線硬化により該絶縁性樹脂に含まれる熱硬化性樹脂を硬化させた。そして、型から絶縁性樹脂を剥離し、各実施例及び比較例の異方導電性フィルムを製造した。
【0045】
実施例9〜13、比較例6、7
導電粒子を表3に示した配置とする以外は、上述の実施例及び比較例と同様にして実施例9〜13、比較例6、7の異方導電性フィルムを製造した。
【0046】
ここで、比較例7は四方格子、実施例3、9〜13は六方格子の形状となる。
なお、比較例1、比較例6では導電粒子を、低沸点溶媒に分散し噴霧してランダムに同一平面上に配置した。
【0047】
導電粒子の隣接粒子中心間距離d(第1中心間距離d1及び第2中心間距離d2)を、光学顕微鏡を用いて計測して確認した。この場合、第1配列方向又は第2配列方向にある100個50組を任意に計測し、その平均値を求め、所期の隣接粒子中心間距離dであることを確認した。結果を表2に示す。
一方、比較例1、6は任意に導電粒子100個を選択し、各導電粒子の最近接粒子中心間距離を計測した。
【0048】
評価
各実施例及び比較例の異方導電性フィルムの(a)粒子捕捉数、(b)初期導通抵抗、(c)導通信頼性、(d)ショート発生率を、それぞれ次のように評価した。結果を表2、表3に示す。
【0049】
(a)粒子捕捉数
(a-1)平均数
各実施例及び比較例の異方導電性フィルムを用いて15×100μmのバンプ100個とガラス基板とを加熱加圧(180℃、80MPa、5秒)して接続物を得た。この場合、異方導電性フィルムの長手方向とバンプの短手方向を合わせた。そして、各バンプにおける粒子捕捉数を計測し、バンプ1個当たりの平均粒子捕捉数を求めた。
【0050】
(a-2)最小数
(a-1)で計測した各バンプの粒子捕捉数のうち、最小数を求めた。
【0051】
(b)初期導通抵抗
各実施例及び比較例の異方導電性フィルムを、初期導通および導通信頼性の評価用ICとガラス基板の間に挟み、加熱加圧(180℃、80MPa、5秒)して各評価用接続物を得た。この場合、異方導電性フィルムの長手方向とバンプの短手方向を合わせた。そして、評価用接続物の導通抵抗を測定した。
ここで、この各評価用ICとガラス基板は、それらの端子パターンが対応しており、サイズは次の通りである。
【0052】
初期導通および導通信頼性の評価用IC
外径 0.7×20mm
厚み 0.2mm
バンプ仕様 金メッキ、高さ12μm、サイズ15×100μm、バンプ間距離15μm
【0053】
ガラス基板
ガラス材質 コーニング社製
外径 30×50mm
厚み 0.5mm
電極 ITO配線
【0054】
(c)導通信頼性
(b)の評価用ICと各実施例及び比較例の異方導電性フィルムとの評価用接続物を温度85℃、湿度85%RHの恒温槽に500時間おいた後の導通抵抗を、(b)と同様に測定した。なお、この導通抵抗が5Ω以上であると、接続した電子部品の実用的な導通安定性の点から好ましくない。
【0055】
(d)ショート発生率
ショート発生率の評価用ICとして次のIC(7.5μmスペースの櫛歯TEG(test element group))を用意した。
外径 1.5×13mm
厚み 0.5mm
バンプ仕様 金メッキ、高さ15μm、サイズ25×140μm、バンプ間距離7.5μm
各実施例及び比較例の異方導電性フィルムを、ショート発生率の評価用ICと、該評価用ICに対応したパターンのガラス基板との間に挟み、(b)と同様の接続条件で加熱加圧して接続物を得、その接続物のショート発生率を求めた。ショート発生率は、「ショートの発生数/7.5μmスペース総数」で算出される。ショート発生率が1ppm以上であると実用上の接続構造体を製造する点から好ましくない。
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
表2から、導電粒子の傾斜角αが18〜35°であると、初期導通抵抗が低く、導通信頼性も高く、ショート発生率も抑制されており、粒子径の4倍程度の端子幅の高密度配線に対応した異方導電性接続を行えることがわかる。
これに対し、比較例1では、粒子密度が過度に高いために絶縁性が悪く、また、比較例2〜比較例5では、傾斜角αが18〜35°の範囲を外れており、バンプにおける粒子捕捉数が少なく、導通信頼性に欠けることがわかる。
【0059】
また、表3から、導電粒子の各配列方向が異方導電性フィルムの長手方向に傾いている実施例9〜13も導通信頼性に優れ、ショート発生率が低減していることがわかる。これらの実施例9〜13の異方導電性フィルムを用いて、初期導通及び導通信頼性の評価用ICとガラス基板とを接続した評価用接続物を観察したところ、
図4に示す導電粒子の配置のように、バンプ3の長手方向Ltの、導電粒子Pの外接線(二点鎖線)と、その導電粒子Pと隣接する導電粒子Pc、Peとがオーバーラップし、その外接線が導電粒子Pc、Peを貫いていた。これにより、バンプ3の幅がさらに狭くなっても、導通をとるのに十分な数の導電粒子を捕捉できることが確認できた。
【0060】
また、比較例7と実施例9〜13の異方導電性フィルムを用いた評価用接続物の外観を比較すると、実施例9〜13の異方導電性フィルムを用いた評価用接続物では、バンプ3の幅方向の中央部にある導電粒子Pcと、バンプ3の縁辺上にある導電粒子Peとの圧痕状態の差が、比較例7の異方導電性フィルムを用いた評価用接続物よりも少なかった。これにより、実施例の異方導電性フィルムを用いると、より均一な圧着を実現できることがわかる。なお、バンプ面積が狭いことにより、必ずしも、一つのバンプ3において縁辺上と幅方向の中央部の双方で導電粒子が捕捉されているとは限らないので、多数並列しているバンプのいずれかにおいて縁辺で捕捉されている導電粒子と幅方向の中央部で捕捉されている導電粒子を観察することにより上述の結果を得た。
【0061】
実施例14〜19
実施例3、9〜13において、導電粒子粒子径Dを4μmから3μmに変更し、隣接粒子間中心距離を6μm(即ち、(d-D)/D=1)、配置密度28000個/mm
2として実施例14〜19の異方導電性フィルムを製造し、同様に評価した。その結果、これらについても、実施例3及び9〜13とほぼ同様の初期導通抵抗の低さと、導通信頼性の高さと、ショート発生率抑制効果が得られた。また、これらの評価用接続物におけるバンプの縁辺上にある導電粒子と、幅方向の中央部にある導電粒子の圧痕状態についても、実施例9〜13と同様であった。
【0062】
さらに、実施例14と比較例1で作製した粒子個数密度60000個/mm
2の異方導電性フィルムについて、バンプ面積700μm
2(バンプサイズ14μm×50μm、バンプ間距離14μm)のバンプを持つICを使用し、実施例1の粒子捕捉数の計測の場合と同様に接続し、バンプ1個に捕捉される導電粒子の頻度を調べた。結果を
図5に示す。
【0063】
図5から、比較例1に対して実施例14ではバンプ1個あたりの導電粒子捕捉数が9個付近で急激に出現頻度が増えており、バンプ1個あたりの導電粒子捕捉数が安定することがわかる。
【0064】
実施例20〜25
実施例3、9〜13において、導電粒子粒子径Dを4μmのまま、隣接粒子間中心距離を7μm((d-D)/D=0.75、配置密度20000個/mm
2)とした実施例20〜25の異方導電性フィルムを製造し、同様に評価した。その結果、これらについても、実施例3、9〜13とほぼ同様の初期導通抵抗の低さと、導通信頼性の高さと、ショート発生率の抑制効果が得られた。また、これらの評価用接続物におけるバンプの縁辺上にある導電粒子と、幅方向の中央部にある導電粒子の圧痕状態についても、実施例9〜13と同様であった。
【0065】
実施例26〜31
実施例3、9〜13において、導電粒子粒子径Dを4μmのまま、隣接粒子間中心距離を16μm((d-D)/D=3、配置密度4000個/mm
2)とした実施例26〜31の異方導電性フィルムを製造し、同様に評価した。その結果、これらについては、実施例3、9〜13よりも初期導通抵抗は高くなったが、実用上の問題はなかった。導通信頼性の高さとショート発生率の抑制効果は、実施例3、9〜13と同様であった。これは、実施例26〜31の異方導電性フィルムは、導電粒子の配置密度が低いためと考えられる。
評価用接続物におけるバンプの縁辺上にある導電粒子と、幅方向の中央部にある導電粒子の圧痕状態は、実施例9〜13と同様であった。
【0066】
実施例32〜33
実施例5、7において絶縁性樹脂100質量部にシリカ微粒子フィラー(シリカ微粒子、アエロジルRY200、日本アエロジル株式会社)20質量部を加え、実施例5、7と同様にして異方導電性フィルムを製造し、評価した。その結果、実施例5、7と同様の初期導通抵抗の低さと、導通信頼性の高さと、ショート発生率抑制効果が得られた。