(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6932200
(24)【登録日】2021年8月19日
(45)【発行日】2021年9月8日
(54)【発明の名称】超音波画像クラッターをフィルタ処理するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20210826BHJP
【FI】
A61B8/14
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-549526(P2019-549526)
(86)(22)【出願日】2018年3月13日
(65)【公表番号】特表2020-509853(P2020-509853A)
(43)【公表日】2020年4月2日
(86)【国際出願番号】EP2018056307
(87)【国際公開番号】WO2018167101
(87)【国際公開日】20180920
【審査請求日】2021年1月13日
(31)【優先権主張番号】62/470,375
(32)【優先日】2017年3月13日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】17163120.3
(32)【優先日】2017年3月27日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】シン ジュン ソブ
(72)【発明者】
【氏名】キム スンス
(72)【発明者】
【氏名】ヴィニョン フランソワ ガイ ジェラルド マリエ
(72)【発明者】
【氏名】ホァン シェン‐ウェン
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト ジャン‐ルック フランソワ‐マリエ
【審査官】
佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2013/0336560(US,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第02518527(EP,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0141957(US,A1)
【文献】
Alessandro Stuart Savoia et al.,Improved Lateral Resolution and Contrast in Ultrasound Imaging Using a Sidelobe Masking Technique,IEEE International Ultrasonics Symposium,2014年,Vol. 2,pp. 1682-1685
【文献】
Jonathan Reeg et al.,Improving Lateral Resolution in Ultrasonic Imaging by Utilizing Nulls in the Beam Pattern,IEEE International Ultrasonics Symposium,2015年,Vol. 2,pp. 973-976
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00−8/15
G01N 29/00−29/52
G01S 1/72−1/82
G01S 3/80−3/86
G01S 5/18−5/30
G01S 7/52−7/64
G01S 15/00−15/96
JSTPlus(JDreamIII)
JMEDPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタ処理された超音波画像を生成するための方法であって、前記方法は、
超音波トランスデューサアレイからチャネルデータを取得するステップと、
第1のアポダイゼイション関数を使用して前記チャネルデータから第1の画像データを生成するステップと、
第2のアポダイゼイション関数を使用して前記チャネルデータから第2の画像データを生成するステップと、
前記第1の画像データと前記第2の画像データとを比較し、前記第1の画像データからのピクセルと前記第2の画像データからのピクセルとの各ペアについて、前記比較することに基づいて最小ピクセル値をもつピクセルを選択することで、第3の画像データを生成するステップと、
前記第1の画像データ及び前記第3の画像データに基づいて、前記フィルタ処理された超音波画像を生成するステップとを有する、方法において、
前記第2のアポダイゼイション関数がヌルフィルタを含み、
前記フィルタ処理された超音波画像を生成するステップが、
前記第1の画像データのピクセル値から前記第3の画像データのピクセル値を減算し、それにより、フィルタ処理されたピクセルを生成するステップと、
前記フィルタ処理されたピクセルを使用して、前記フィルタ処理された超音波画像を構成するステップと
を有することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記方法が、前記フィルタ処理された超音波画像に対して対数圧縮を実施するステップをさらに有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法が、前記フィルタ処理された超音波画像に対して対数圧縮を実施するステップの後に、
前記第1の画像データに空間ローパスフィルタを適用するステップと、
前記フィルタ処理された超音波画像に空間ローパスフィルタを適用するステップと、
前記第1の画像データから前記空間ローパスフィルタ処理された第1の画像データを減算することによって、前記第1の画像データの細部成分を生成するステップと、
前記第1の画像データの前記細部成分を、前記空間ローパスフィルタ処理されたバージョンの前記フィルタ処理された超音波画像と組み合わせるステップと
をさらに有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のアポダイゼイション関数が矩形関数を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2のアポダイゼイション関数のスケーリング因子が可変である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法が、前記第1の画像データ及び前記第2の画像データにDASビームフォーミングを適用するステップをさらに有し、前記DASビームフォーミングが、
前記第1の画像データを生成するステップ及び前記第2の画像データを生成するステップの前に、前記チャネルデータを遅延させることと、
前記第1の画像データを生成するステップ及び前記第2の画像データを生成するステップの後に、それぞれ、前記第1の画像データを加算すること、及び前記第2の画像データを加算することと
を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法が、前記第1の画像データ及び前記第2の画像データにエンベロープ検出を適用するステップをさらに有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
コンピュータ上で実行されたとき、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法を実施するコンピュータプログラムコード手段を備える、コンピュータプログラム。
【請求項9】
超音波システムにおいてフィルタ処理された超音波画像を生成するためのコントローラであって、前記コントローラは、超音波トランスデューサアレイに結合され、
前記超音波トランスデューサアレイからチャネルデータを取得することと、
第1のアポダイゼイション関数を使用して前記チャネルデータから第1の画像データを生成することと、
第2のアポダイゼイション関数を使用して前記チャネルデータから第2の画像データを生成することと、
前記第1の画像データと前記第2の画像データとを比較し、前記第1の画像データからのピクセルと前記第2の画像データからのピクセルとの各ペアについて、前記比較することに基づいて最小ピクセル値をもつピクセルを選択することで、第3の画像データを生成することと、
前記第1の画像データ及び前記第3の画像データに基づいて、前記フィルタ処理された超音波画像を生成することとを行う、コントローラにおいて、
前記第2のアポダイゼイション関数がヌルフィルタを含み、
前記フィルタ処理された超音波画像の生成中に、前記コントローラが、さらに、
前記第1の画像データのピクセル値から前記第3の画像データのピクセル値を減算し、それにより、フィルタ処理されたピクセルを生成することと、
前記フィルタ処理されたピクセルを使用して、前記フィルタ処理された超音波画像を構成することと
を行うことを特徴とする、コントローラ。
【請求項10】
どのチャネルデータが取得されるかに基づいて超音波信号を放射及び受信することが可能である、超音波トランスデューサアレイと、
受信された前記超音波信号を超音波画像になるように集約するための信号プロセッサと、
請求項9に記載のコントローラと、
前記フィルタ処理された超音波画像を出力するための画像出力デバイスと
を備える、超音波システム。
【請求項11】
前記第2のアポダイゼイション関数を変更する、フィルタ設計プロセッサをさらに備える、請求項10に記載の超音波システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波画像処理の分野に関し、より詳細には、サイドローブクラッターフィルタ処理の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波イメージングは、様々な異なる用途でますます利用されている。超音波システムによって生成された画像は、スキャンされている対象の現実的な解釈をユーザに与えるように、できる限りクリアで正確であることが重要である。これは、当該の対象が医療用超音波スキャンを受けている患者であるとき、特に当てはまる。この状況では、医師が正確な診断を行う技量は、超音波システムによって生成された画像の品質に依存する。
【0003】
空間分解能及びコントラスト分解能が、超音波画像品質の最も重要な側面のうちの2つであるが、それらは、しばしば、超音波イメージングにおいて最適とは言えない。画像品質を改善しようとして、多数のビームフォーミング技法が過去に提案されてきた。
【0004】
一例は、受信されたチャネルデータから複雑なアポダイゼイション値を適応的に計算する最小分散(MV)ビームフォーミングなど、適応ビームフォーミング技法である。MVビームフォーミングの欠点は、空間共分散行列の反転が、画像中の各ピクセルについて実施される必要があるので、MVビームフォーミングは計算集約的であるということである。さらに、MVビームフォーミングは、空間分解能改善のある程度の可能性を示してきたが、それは、軸外及び残響クラッター信号を除去して画像コントラストを改善するためには最適化されていない。
【0005】
別の例は、適応重み付け技法であり、これは、コヒーレンス因子(CF)及び一般化されたコヒーレンス因子(GCF)など、様々な重み付け因子を利用する。それらの計算は、通常、MVビームフォーミングよりもかなり集約性が低いが、それらは、依然として、毎チャネルデータへのアクセスと、画像からクラッターの影響の量を減少させるために使用される重み付けマスクの計算とを必要とする。さらに、これらの方法は、一般に、空間分解能の改善を達成するように設計されていない。
【0006】
文献EP2518527は、対象から反射されたマルチチャネル信号を使用して受信ビームを形成するためのビームフォーマを開示している。このビームフォーマは、マルチチャネル信号に異なるアポダイゼイション関数を適用することによって複数の信号を生成する信号生成器を備える。
【0007】
CHI SEOらの文献は、相互相関を伴う二重アポダイゼイションの方法を開示している。この方法は、クラッターを除去又は最小化するための、二重アポダイゼイション又は重み付けストラテジーを使用する。
【発明の概要】
【0008】
本発明は特許請求の範囲によって定義される。
【0009】
本発明の態様による例によれば、フィルタ処理された超音波画像を生成するための方法であって、本方法は、
チャネルデータを取得するステップと、
第1のアポダイゼイション関数を使用してチャネルデータから第1の画像データを生成するステップと、
第2のアポダイゼイション関数を使用してチャネルデータから第2の画像データを生成するステップであって、第2のアポダイゼイション関数がヌルフィルタを含む、生成するステップと、
第1の画像データ及び第2の画像データに最小化関数を適用するステップと、
最小化された第1の画像データ及び第2の画像データに基づいて第3の画像データを生成するステップと、
第1の画像データ及び第3の画像データに基づいて、フィルタ処理された超音波画像を生成するステップとを有し、フィルタ処理された超音波画像を生成するステップが、
第1の画像データのピクセル値から第3の画像データのピクセル値を減算し、それにより、フィルタ処理されたピクセルを生成するステップと、
フィルタ処理されたピクセルを使用して、フィルタ処理された超音波画像を構成するステップと
を有する、方法が与えられる。
【0010】
本方法は、最終画像におけるクラッターの量を低減するために、超音波画像に対してフィルタ処理を実施する。受信された超音波信号は、一般に、2つの顕著な特徴、すなわち、ターゲットイメージングロケーションから受信された信号であるメインローブと、ターゲットイメージングロケーションの外部から受信された信号であり、したがって、最終画像におけるクラッターの原因となるサイドローブとを含む。第1のアポダイゼイション関数によって生成される従来の第1の画像データに加えて、本方法は、第2のアポダイゼイション関数によって第2の画像データを生成するステップをも有し、第2のアポダイゼイション関数はヌルフィルタを含む。アポダイゼイション関数は、超音波トランスデューサアレイの個々のチャネルに関連付けられた重み付けを表す関数を指す。アポダイゼイション関数の設計は、それが、ビームパターンの形状、したがって、超音波システムの点広がり関数を決定するので重要である。異なるアポダイゼイション関数を使用して画像データの2つのセットを生成することによって、チャネルデータの異なる特徴をハイライトするデータセットを生成することが可能である。
【0011】
これらの2つのデータセットは、超音波システムによって受信されたチャネルデータに対して2つのアポダイゼイション関数を適用することによって生成される。受信段階の間にデータを生成することによって、両方のデータセットは、フレームレートを損なうことなしに、単一の送信/受信サイクル中に生成される。次いで、第1の画像データセット及び第2の画像データセットに最小化関数が適用され、その結果を使用して第3の画像データのセットを生成する。2つのデータセットに最小化関数を適用することによって、アポダイゼイション関数によってハイライトされた特徴を分離することが可能である。たとえば、サイドローブがハイライトされ、画像データのセット中のメインローブから分離される。このようにして、画像データのメインローブを乱すことなしに、サイドローブを除去し、それにより、クラッターを除去することが可能である。次いで、第3の画像データ及び第1の画像データから、最終フィルタ処理された超音波画像が生成される。フィルタ処理された超音波画像を生成するステップは、第1の画像データのピクセル値から第3の画像データのピクセル値を減算し、それにより、フィルタ処理されたピクセルを生成するステップと、フィルタ処理されたピクセルを使用して、フィルタ処理された超音波画像を構成するステップとを有する。
【0012】
たとえば、第1の画像データは、画像クラッターを含む標準超音波画像を表し、第3の画像データは、クラッターをハイライトするように適応される。第1の画像データから、ハイライトされたクラッターを減算することによって、第1の画像データからクラッターを除去し、フィルタ処理された超音波画像を生成することが可能である。
【0013】
一実施形態では、最小化関数は、
第1の画像データと第2の画像データとを比較することと、
第1の画像データからのピクセルと第2の画像データからのピクセルとの各ペアについて、比較することに基づいて最小ピクセル値をもつピクセルを選択することと
を含む。
【0014】
このようにして、ピクセルごとに第1の画像データ及び第2の画像データに最小化関数を適用することが可能である。たとえば、各ピクセルについての信号強度が、画像データに記憶される。第1の画像データからのピクセルの信号強度を、第2の画像データの対応するピクセルと比較することによって、そのピクセルについて最も低い信号強度を識別することが可能である。
【0015】
さらなる実施形態では、第3の画像を生成するステップは、
選択されたピクセルを使用して第3の画像データを構成するステップ
を有する。
【0016】
選択されたピクセルを使用して第3の画像データを構成することによって、第1の画像と第2の画像との間で最小ピクセル値を含む第3の画像データセットを生成することが可能である。このようにして、第3の画像データは、第1のアポダイゼイション関数と第2のアポダイゼイション関数の両方によってハイライトされた特徴を表す。
【0017】
一構成では、本方法は、フィルタ処理された超音波画像に対して対数圧縮を実施するステップをさらに有する。
【0018】
超音波によって収集される無線周波数データの振幅の変動は極めて大きい。画像に対して対数圧縮を実施することによって、よりバランスのとれた画像を生成することが可能である。
【0019】
さらなる構成では、本方法は、超音波画像の対数圧縮を実施するステップの後に、
第1の画像データに空間ローパスフィルタを適用するステップと、
フィルタ処理された超音波画像に空間ローパスフィルタを適用するステップと、
第1の画像データから空間ローパスフィルタ処理された第1の画像データを減算することによって、第1の画像データの細部成分を生成するステップと、
第1の画像データの細部成分を、空間ローパスフィルタ処理されたバージョンのフィルタ処理された画像データと組み合わせるステップと
をさらに有する。
【0020】
このようにして、フィルタ処理された超音波画像の空間分解能を、第1の画像の空間分解能に一致させるように改善することが可能であり、クラッターのない、高コントラスト、高分解能の超音波画像になる。
【0021】
いくつかの構成では、第1のアポダイゼイション関数は矩形関数を含む。
【0022】
たとえば、第1のアポダイゼイション関数は、標準Bモード超音波画像データを生成するための従来の矩形関数であり、これは、メインローブと呼ばれる、0度の到来角における単一の高強度信号と、サイドローブと呼ばれる、メインローブから広がる、強度が逓減する複数の信号とを有する。次いで、第2のアポダイゼイション関数は、メインローブにおいてヌルを、他の至るところで高強度信号を導入するように適応される。到来角は、受信された超音波信号とトランスデューサアレイとの間の角度を表す。軸外散乱体から到着する信号は、0でない到来角を有する。
【0023】
これらの関数によって生成されたデータセットの最小値をとることによって、画像データは、サイドローブのすべてを含み、ごくわずかなメインローブしか含まないことになる。これらのピクセル値を第1の画像データから減算することによって、画像のメインローブを維持しながら、サイドローブが除去される。このようにして、ターゲット信号の完全性を維持しながら、サイドローブクラッターフィルタ処理が達成される。
【0024】
一実施形態では、第2のアポダイゼイション関数のスケーリング因子が可変である。
【0025】
第2のアポダイゼイション関数のスケーリング因子を変更することによって、超音波送信帯域の幅を制御し、最終画像の空間分解能の改善を達成することが可能である。
【0026】
いくつかの設計では、本方法は、第1の画像データ及び第2の画像データにDASビームフォーミングを適用するステップをさらに有する。
【0027】
遅延和(DAS)ビームフォーミングは、超音波トランスデューサアレイなど、センサーによって受信される信号の信号対雑音比を低減するために使用される。
【0028】
一構成では、本方法は、第1の画像データ及び第2の画像データにエンベロープ検出を適用するステップをさらに有する。
【0029】
このようにして、ACオーディオ入力が、たとえば、超音波システムによって使用されるべき、パルスDC信号に変換される。
【0030】
本発明の態様による例によれば、コンピュータプログラムであって、コンピュータがコンピュータ上で実行されたとき、上記で説明された方法を実施するように適応されたコンピュータプログラムコード手段を備える、コンピュータプログラムが与えられる。
【0031】
本発明の態様による例によれば、
超音波信号を放射及び受信することが可能である、超音波トランスデューサアレイと、
受信された超音波信号を超音波画像になるように集約するための信号プロセッサと、
コントローラとを備え、コントローラが、
チャネルデータを取得することと、
第1のアポダイゼイション関数を使用してチャネルデータから第1の画像データを生成することと、
第2のアポダイゼイション関数を使用してチャネルデータから第2の画像データを生成することであって、第2のアポダイゼイション関数がヌルフィルタを含む、生成することと、
第1の画像データ及び第2の画像データに最小化関数を適用することと、
最小化された第1の画像データ及び第2の画像データに基づいて第3の画像データを生成することと、
第1の画像データ及び第3の画像データに基づいて、フィルタ処理された超音波画像を生成することであって、フィルタ処理された超音波画像の生成中に、コントローラが、さらに、
第1の画像データのピクセル値から第3の画像データのピクセル値を減算し、それにより、フィルタ処理されたピクセルを生成することと、
フィルタ処理されたピクセルを使用して、フィルタ処理された超音波画像を構成することと
を行うように適応された、生成することと
を行うように適応された超音波システムが与えられる。
【0032】
一実施形態では、超音波システムは、
第2のアポダイゼイション関数を変更するように適応された、フィルタ設計プロセッサ
をさらに備える。
【0033】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の例が詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】一般的な動作について説明するための超音波診断イメージングシステムを示す図である。
【
図3】
図2の方法内で使用されるさらなるフィルタ処理方法を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態による、2つのアポダイゼイション関数を示す図である。
【
図5】第1の画像データについての到来角に対する信号の大きさのグラフである。
【
図6】第2の画像データについての到来角に対する信号の大きさのグラフである。
【
図7】組み合わせられた第1の画像データと第2の画像データとに適用される最小化関数についての到来角に対する信号の大きさのグラフである。
【
図8】フィルタ処理された超音波画像についての到来角に対する信号の大きさのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、フィルタ処理された超音波画像を生成するための方法を与える。本方法は、チャネルデータを取得することによって開始する。第1のアポダイゼイション関数と第2のアポダイゼイション関数とが、チャネルデータに適用されて、それぞれ、第1の画像データと第2の画像データとを生成する。次いで、第1の画像データ及び第2の画像データに最小化関数が適用され、次いで、これらを使用して第3の画像データを生成する。次いで、第1の画像データ及び第3の画像データに基づいて、フィルタ処理された超音波画像が生成される。
【0036】
本発明は、トランスデューサアレイによって測定された信号の処理及びフィルタ処理に関するので、最初に、
図1を参照しながら、システムの信号処理機能に重点を置いて、例示的な超音波診断イメージングシステムの一般的な動作が説明される。
【0037】
本システムは、超音波を送信し、エコー情報を受信するためのCMUTトランスデューサアレイ100を有する、アレイトランスデューサプローブ10を備える。トランスデューサアレイ100は、代替的に、PZT又はPVDFなどの材料から形成された圧電トランスデューサを備える。トランスデューサアレイ100は、3Dイメージングのために2D平面で又は3次元でスキャンすることが可能なトランスデューサ110の2次元アレイである。別の例では、トランスデューサアレイは1Dアレイである。
【0038】
トランスデューサアレイ100は、CMUTアレイセル又は圧電要素によって信号の受信を制御する、プローブ中のマイクロビームフォーマ12に結合される。マイクロビームフォーマは、米国特許第5,997,479号(Savordら)、米国特許第6,013,032号(Savord)、及び米国特許第6,623,432号(Powersら)に記載されているように、トランスデューサのサブアレイ(又は「グループ」又は「パッチ」)によって受信された信号の少なくとも部分的なビームフォーミングが可能である。
【0039】
マイクロビームフォーマは完全に随意であることに留意されたい。以下の例は、アナログビームフォーミングを仮定しない。
【0040】
マイクロビームフォーマ12は、プローブケーブルによって送信/受信(T/R)スイッチ16に結合され、T/Rスイッチ16は、マイクロビームフォーマが使用されず、トランスデューサアレイがメインシステムビームフォーマによって直接操作されるとき、送信と受信との間で切り替わり、メインビームフォーマ20を高エネルギー送信信号から保護する。トランスデューサアレイ10からの超音波ビームの送信は、T/Rスイッチ16とメイン送信ビームフォーマ(図示せず)とによってマイクロビームフォーマに結合されたトランスデューサコントローラ18によって指示され、トランスデューサコントローラ18は、ユーザインターフェース又はコントロールパネル38のユーザの動作からの入力を受信する。
【0041】
トランスデューサコントローラ18によって制御される機能のうちの1つは、ビームがステアリング及び集束される方向である。ビームは、トランスデューサアレイからまっすぐに(それに直角に)、又はより広い視野のために異なる角度でステアリングされる。トランスデューサコントローラ18は、CMUTアレイについてのDCバイアス制御45を制御するために結合され得る。DCバイアス制御45は、CMUTセルに印加される(1つ又は複数の)DCバイアス電圧を設定する。
【0042】
受信チャネルでは、部分的にビームフォーミングされた信号は、マイクロビームフォーマ12によって生成され、メイン受信ビームフォーマ20に結合され、ここで、トランスデューサの個々のパッチからの部分的にビームフォーミングされた信号が組み合わせられて、完全にビームフォーミングされた信号になる。たとえば、メインビームフォーマ20は、128個のチャネルを有し、それらの各々は、数十個又は数百個のCMUTトランスデューサセル又は圧電要素のパッチから、部分的にビームフォーミングされた信号を受信する。このようにして、トランスデューサアレイの数千個のトランスデューサによって受信された信号は、単一のビームフォーミングされた信号に効率的に資することができる。
【0043】
ビームフォーミングされた受信信号は、信号プロセッサ22に結合される。信号プロセッサ22は、帯域通過フィルタ処理、デシメーション、I及びQ成分分離、並びに高調波信号分離など、様々なやり方で、受信されたエコー信号を処理することができ、高調波信号分離は、組織及び微小気泡から戻される、非線形(基本周波数のより高い高調波)エコー信号の識別を可能にするために、線形信号と非線形信号とを分離するように働く。信号プロセッサはまた、スペックル低減、信号コンパウンディング、及びノイズ除去など、追加の信号強調を実施する。信号プロセッサ中の帯域通過フィルタは、追跡フィルタであり得、その通過帯域は、エコー信号がより深い深度から受信されるにつれて、より高い周波数帯域からより低い周波数帯域にスライドし、それにより、より深い深度からのより高い周波数におけるノイズを除去し、ここで、これらの周波数は、解剖学的情報がない。
【0044】
送信のためのビームフォーマと受信のためのビームフォーマとは、異なるハードウェアで実施され、異なる機能を有し得る。もちろん、受信側ビームフォーマは、送信ビームフォーマの特性を考慮に入れるように設計される。
図1では、簡単のために、受信側ビームフォーマ12、20のみが示されている。完全なシステムでは、送信マイクロビームフォーマ及びメイン送信ビームフォーマをもつ送信チェーンもある。
【0045】
マイクロビームフォーマ12の機能は、アナログ信号経路の数を減少させるために、信号の初期の組合せを与えることである。これは、一般に、アナログ領域において実施される。
【0046】
最終ビームフォーミングが、メインビームフォーマ20において行われ、一般に、デジタル化の後に行われる。
【0047】
送信チャネル及び受信チャネルは、固定周波数帯域を有する同じトランスデューサアレイ10’を使用する。ただし、送信パルスが占有する帯域幅は、使用されている送信ビームフォーミングに応じて変動し得る。受信チャネルは、トランスデューサ帯域幅全体をキャプチャする(古典的な手法である)ことができるか、又は、帯域通過処理を使用することによって、受信チャネルは、有用な情報を含んでいる帯域幅(たとえば、メイン高調波の高調波)のみを抽出することができる。
【0048】
処理された信号は、Bモード(すなわち、輝度モード又は2Dイメージングモード)プロセッサ26とドップラープロセッサ28とに結合される。Bモードプロセッサ26は、体内の器官の組織及び血管など、体内の構造のイメージングのために、受信された超音波信号の振幅の検出を利用する。体の構造のBモード画像が、米国特許第6,283,919号(Roundhillら)及び米国特許第6,458,083号(Jagoら)に記載されているように、高調波画像モード又は基本画像モードのいずれか或いはその両方の組合せで形成される。ドップラープロセッサ28は、画像フィールド中の血球の流れなどの物質の動きの検出のために、組織移動及び血流からの固有の信号を時間的に処理する。ドップラープロセッサ28は、一般に、体内の選択されたタイプの材料から戻されたエコーを通過させ及び/又は除去するように設定されるパラメータをもつウォールフィルタ(wall filter)を含む。
【0049】
Bモードプロセッサ及びドップラープロセッサによって生成された構造信号及び動き信号は、スキャンコンバータ32とマルチプレーナリフォーマッタ44とに結合される。スキャンコンバータ32は、所望の画像フォーマットでエコー信号が受信された空間的関係に、エコー信号を構成する。たとえば、スキャンコンバータは、2次元(2D)扇形フォーマット又はピラミッド形3次元(3D)画像にエコー信号を構成する。スキャンコンバータは、Bモード構造画像に、画像フィールド中の点における動きに対応する色を、それらのドップラー推定された速度とともに、オーバーレイして、画像フィールド中の組織の動き及び血流を表すカラードップラー画像を生成することができる。マルチプレーナリフォーマッタは、米国特許第6,443,896号(Detmer)に記載されているように、体のボリュメトリック領域中の共通平面における点から受信されたエコーをその平面の超音波画像にコンバートする。ボリュームレンダラ42は、米国特許第6,530,885号(Entrekinら)に記載されているように、3Dデータセットのエコー信号を、所与の基準点から見たときの投影された3D画像にコンバートする。
【0050】
画像ディスプレイ40上での表示のためのさらなる拡張、バッファリング及び一時的記憶のために、2D又は3D画像は、スキャンコンバータ32、マルチプレーナリフォーマッタ44及びボリュームレンダラ42から画像プロセッサ30に結合される。イメージングのために使用されることに加えて、ドップラープロセッサ28によって生成された血流値及びBモードプロセッサ26によって生成された組織構造情報は、定量化プロセッサ34に結合される。定量化プロセッサは、血流のボリュームレートなどの異なる流れ条件の尺度、並びに器官のサイズ及び妊娠期間などの構造測定値を生成する。定量化プロセッサは、測定が行われるべきである画像の解剖学的構造における点などのユーザコントロールパネル38からの入力を受信する。定量化プロセッサからの出力データが、ディスプレイ40上での画像を伴う測定グラフィックス及び値の再生のために、並びにディスプレイデバイス40から出力されるオーディオのために、グラフィックスプロセッサ36に結合される。グラフィックスプロセッサ36はまた、超音波画像とともに表示するためのグラフィックオーバーレイを生成することができる。これらのグラフィックオーバーレイは、患者名、画像の日時、イメージングパラメータなど、標準的な識別情報を含んでいることがある。これらの目的のために、グラフィックスプロセッサは、患者名など、ユーザインターフェース38からの入力を受信する。ユーザインターフェースはまた、トランスデューサアレイ10’からの超音波信号の生成、したがってトランスデューサアレイ及び超音波システムによって生成される画像を制御するために、送信コントローラ18に結合される。コントローラ18の送信制御機能は、実施される機能のうちの1つにすぎない。コントローラ18はまた、(ユーザによって与えられる)動作モードと、対応する必要とされる送信側構成と、受信側アナログデジタルコンバータにおける帯域通過構成とを考慮する。コントローラ18は、固定状態をもつステートマシンであり得る。
【0051】
ユーザインターフェースはまた、複数のマルチプレーナリフォーマット(MPR)画像の平面の選択及び制御のためのマルチプレーナリフォーマッタ44に結合され、MPR画像は、MPR画像の画像フィールドにおいて定量化された測定を実施するために使用される。
【0052】
図2は、たとえば、
図1に示されている信号プロセッサ22によって、又は別個の専用コントローラによって実施される、本発明の方法200を示す。
【0053】
ステップ210において、チャネルデータが取得される。たとえば、チャネルデータは、アレイトランスデューサプローブ10によってキャプチャされた超音波信号を含む。チャネルデータは、周波数領域信号を含み、これは、アレイトランスデューサプローブによってキャプチャされた時間領域信号にフーリエ変換を適用することによって取得される。ステップ215において、チャネルデータは、信号の集束を改善するために遅延される。トランスデューサアレイの各チャネルに個々の遅延が適用される。
【0054】
次いで、第1のアポダイゼイション関数220が、第1の画像データ230を生成するためにチャネルデータに適用される。さらに、第2のアポダイゼイション関数240も、第2の画像データ250を生成するためにチャネルデータに適用される。
【0055】
ステップ261において、第1の画像データは、完全な第1の画像信号を形成するために加算され、同様に、ステップ262において、第2の画像データも加算される。ステップ215、261及び262は、遅延和(DAS)ビームフォーミングのプロセスを形成する。DASビームフォーミングは、アレイトランスデューサプローブ10の各トランスデューサに遅延を導入してから、それらを一緒に加算して最終信号を形成する。これは、第1の画像データ及び第2の画像データの信号対雑音比を高めるのを助け、それにより、後続のステップにおいて使用されるべきより正確なデータを生成する。
【0056】
次いで、それぞれ、ステップ263及び264において、第1の画像データ及び第2の画像データにエンベロープ検出が適用される。エンベロープ検出は、第1の画像データセット及び第2の画像データセット内の超音波データを、容易に使用できるデジタル画像データに変換するために使用される。
【0057】
ステップ270において、第1の画像データ及び第2の画像データに最小化関数が適用される。ステップ271において、第1の画像データと第2の画像データとが比較され、ステップ272において、ピクセルの各ペアについて、最も低いピクセル値をもつピクセルが選択される。
【0058】
たとえば、最小化関数は、第1の画像データのピクセルを第2の画像データの対応するピクセルと比較する。第1の画像データのピクセルは、第1の信号を含んでおり、第2の画像データの対応するピクセルは、第2の信号を含んでいる。第1の信号が第2の信号よりも低い場合、第1の信号が選択される。代替的に、第2の信号が第1の信号よりも低い場合、第2の信号が選択される。いくつかの場合には、信号は交差し、これは、ピクセルのための周波数空間内のある点においては、第1の信号が第2の信号よりも低いが、同じピクセルのための周波数空間内の他の点においては、第2の信号が第1の信号よりも低いことを意味する。この状況では、全体的な最小信号を生成するように第1の信号と第2の信号との組合せが選択される。このようにして、最小ピクセル値をもつピクセルが選択される。
【0059】
ステップ280において、最小化された第1の画像データ及び第2の画像データから、第3の画像データが生成される。ステップ281において、第3の画像データが、ステップ272において選択されたピクセルから構成され、第3の画像データは、第1の画像データ及び第2の画像データの最小ピクセル値を有するようになる。最小化された第1の画像データ及び第2の画像データを、画像データの第3のセットとして記憶することによって、それは、第1のデータセット及び第2のデータセットとは独立して使用され、元のデータを損なうことがない。
【0060】
ステップ290において、第3の画像データ及び第1の画像データに基づいて、フィルタ処理された超音波画像が生成される。ステップ291において、第1の画像データから第3の画像データが減算され、それにより、元の第1の画像データから、第1の画像データ及び第2の画像データの最小化されたピクセル値を減算する。このようにして、超音波画像は、クラッターフィルタ処理を受ける。第1のアポダイゼイション関数及び第2のアポダイゼイション関数、並びにそれぞれの画像データの特定の組合せによって、第3の画像データが、第1の画像データ中のクラッターをハイライトする場合、第1の画像データから第3の画像データを減算することにより、第1の画像データからサイドローブクラッターが完全に除去される。
【0061】
ステップ292において、フィルタ処理された超音波画像は、対数圧縮を受ける。超音波システムによって収集される無線周波数データの振幅の変動は極めて大きい。一般に、画像データは、0〜255のグレースケール画像にマッピングされるが、重要な組織構造の多くは、0〜9の画像値を有する。これは、画像の残部をおおう高振幅点を生じる。画像に対して対数圧縮を実施することによって、よりバランスのとれた画像を生成することが可能である。
【0062】
図3は、フィルタ処理された超音波画像の対数圧縮の後に行われる、さらなる方法300を示す。
図2で説明されたフィルタ処理方法に含まれる最小化は、しばしば、高コントラスト画像にブロック状の低分解能の外観をもたらし、これは、以下のプロセスによって克服される。
【0063】
ステップ310において、空間ローパスフィルタが、第1の画像データに適用され、これは、LPF(I
1)と書かれ、ここで、I
1は第1の画像データであり、ステップ320において、空間ローパスフィルタは、フィルタ処理された超音波画像に適用され、これは、LPF(I
1−min(I
1,I
2))と書かれ、ここで、I
2は第2の画像データである。これらの2つのステップは、高分解能、低コントラストの第1の画像データと、低分解能、高コントラストのフィルタ処理された超音波画像とを、それらの構成パーツに分解する際の最初の段階である。
【0064】
ステップ330において、元の第1の画像データから、ステップ310において取得された空間ローパスフィルタ処理された第1の画像データを減算することによって、細部成分が生成される。これは、D
1=I
1−LPF(I
1)と書かれる。D
1は細部成分であり、第1の画像データからの高分解能、低コントラストの情報を含んでいる。
【0065】
ステップ340において、細部成分は、低分解能、高コントラストの情報を含んでいる、ステップ320において取得された空間ローパスフィルタ処理された超音波画像と組み合わせられる。これは、次式、I
final=LPF(I
1−min(I
1,I
2))+D
1によって与えられ、ここで、I
finalは、最終の高分解能、高コントラスト画像である。このようにして、元の第1の画像データからの滑らかさ及び細部を保存しながら、サイドローブなしの画像における向上したコントラストから恩恵を受けることが可能である。
【0066】
図4は、チャネルデータに適用されるアポダイゼイション関数の2つの例を示す。そのグラフは、超音波トランスデューサアレイの中心からの距離yに対する電圧重み付けvとしてプロットされている。第1のグラフ410は、矩形アポダイゼイション関数の形態の第1のアポダイゼイション関数の一例を示す。この場合、トランスデューサアレイの要素のすべてが、等しい重み付けを受ける。チャネルデータにこの関数を適用した結果が、
図5において説明される。
【0067】
第2のグラフ420は、y=1/xなど、逆関数の形態の第2のアポダイゼイション関数の一例を示し、これは、画像データ中にヌル点を導入するために使用される。このようにして、トランスデューサアレイの中心要素が、高い重み付けを受け、重み付けは、アレイのエッジにある要素に向かって指数関数的に減少する。チャネルデータにこの関数を適用した結果が、
図6を参照しながら説明される。アポダイゼイション関数の形状は、所望の関数を実施するために、超音波システムのユーザによって設計されるか、又は、システム上にプリロードされ、ユーザによって選択される。アポダイゼイション関数の形状が、ユーザによって選択又は設計されると、それは、単一のパラメータを通して調整される。このパラメータは、スケーリング因子kであり、これは、超音波システムの使用を通してユーザによって経験的に決定される。
【0068】
線形音響学は、超音波ビームパターンが、使用されたアポダイゼイション関数のフーリエ変換に相当すると規定している。この関係は、分析及びビームパターン設計のためのツールを与える。より詳細には、所望のビームパターンを達成するようにアポダイゼイション関数を設計することが可能である。たとえば、第2の画像データは、
図6に示されているように、メインローブのロケーションにおいてシャープなヌルを有し、すべての他の到来角において高い振幅を有する。第2のアポダイゼイション関数と第2の画像データのビームパターンとの間のフーリエ変換関係は、所望のビームパターンを達成するためにどのタイプのアポダイゼイション関数が使用されるべきであるかを見分けるために使用され得る。
【0069】
図5は、到来角θに対する、dB単位で測定された大きさのグラフ500を示す。そのグラフは、トランスデューサアレイの視野内の角度のすべてにわたる、そのトランスデューサアレイの各トランスデューサ要素によって受信されたチャネル信号のすべての合計を示す。より詳細には、そのグラフは、
図4に示されている第1のアポダイゼイション関数によってチャネルデータから取得された第1の画像データを示す。
【0070】
このデータは、標準Bモード超音波画像データに変換され、これは、メインローブ520と呼ばれる、0度の到来角510における単一の高強度信号を有する。0度の到来角をもつチャネル信号が、トランスデューサアレイにコヒーレントに到着し、第1の画像データのメインローブを形成する。空間分解能の限界により、メインローブは、0度の両側の小さい角度範囲を含む有限幅を有する。第1の画像データは、サイドローブ530と呼ばれる、メインローブから広がる、強度が逓減する複数の信号をも含む。サイドローブは、メインローブの範囲外の到来角をもつチャネル信号から形成される。様々な角度における、強め合う干渉効果及び弱め合う干渉効果が、サイドローブにおけるピーク及びトラフを作り出す。サイドローブは、超音波画像中のクラッターを形成するが、メインローブは、超音波画像ターゲットの応答信号を形成する。
【0071】
図6は、
図5と同様のグラフを示すが、この場合、そのグラフは、
図4に示されている第2のアポダイゼイション関数によってチャネルデータから取得された、同じピクセルについての第2の画像データを示す。
【0072】
逆数の第2のアポダイゼイション関数をチャネルデータに適用することによって、第1の画像データのメインローブと同じ横方向ロケーション510において、ヌル560が生成されている。この例では、第2のアポダイゼイション関数は、ノッチフィルタとして働いているが、適用例に応じて、アポダイゼイション関数の多くの異なる形状が利用される。
【0073】
図7は、
図5からのグラフと
図6からのグラフとの重ね合わせを示すグラフ600を示し、これらは、ピクセルについて、それぞれ、第1の画像データ610と第2の画像データ620とを示す。第1の画像データと第2の画像データとを比較することによって、到来角にわたる最小の信号の大きさが見つけられ得る。これは、破線630によってハイライトされている。
【0074】
グラフからわかるように、最小値630は、第1の画像データのサイドローブと第2の画像データのヌル点とをハイライトする。このようにして、クラッター信号が選択され、信号のメインローブのピークから分離される。これは、メインローブがフィルタのしきい値を下回る危険なしに、低強度信号からクラッターを効果的に除去するために、標準ローパスフィルタ上で使用される。最小値は、第3の画像データを形成する。
【0075】
次いで、第3の画像データに対応する最小値630は、
図5に示されている元の第1の画像データから減算される。この結果が
図8に示されており、
図8は、
図5〜
図7と同様のグラフ650上に、得られた信号640を示す。
【0076】
グラフ650は、第1の画像データのサイドローブ530が除去されていることを示し、これは、得られた信号640が第1の画像データのメインローブのみから構成されていることを意味する。このようにして、サイドローブクラッターが超音波画像から除去される。
【0077】
第2の画像データにおいてヌル関数560の幅を変更するために、
図4のグラフ420に示されている第2のアポダイゼイション関数の形状が変更される。このようにして、得られた信号640の幅が制御される。この得られた関数の幅を低減することによって、最終超音波画像の空間分解能が高められる。
【0078】
上記で説明されたように、実施形態は、データ処理ステップを実施するためのコントローラを利用する。
【0079】
コントローラは、必要とされる様々な機能を実施するために、ソフトウェア及び/又はハードウェアを用いて、多数のやり方で実施される。プロセッサは、必要とされる機能を実施するためにソフトウェア(たとえば、マイクロコード)を使用してプログラムされた1つ又は複数のマイクロプロセッサを利用するコントローラの一例である。ただし、コントローラは、プロセッサを利用して又は利用しないで実施され、いくつかの機能を実施するための専用ハードウェアと他の機能を実施するためのプロセッサ(たとえば、1つ又は複数のプログラムされたマイクロプロセッサ及び関連する回路)との組合せとしても実施される。
【0080】
本開示の様々な実施形態において利用されるコントローラ構成要素の例は、限定はしないが、従来のマイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を含む。
【0081】
様々な実装形態では、プロセッサ又はコントローラは、RAM、PROM、EPROM、及びEEPROMなどの揮発性及び不揮発性コンピュータメモリなど、1つ又は複数の記憶媒体に関連付けられる。記憶媒体は、1つ又は複数のプロセッサ及び/又はコントローラ上で実行されたとき、必要とされる機能を実施する1つ又は複数のプログラムで符号化される。様々な記憶媒体は、プロセッサ又はコントローラ内に固定されるか、又はその上に記憶された1つ又は複数のプログラムがプロセッサ又はコントローラにロードされ得るように移動可能である。
【0082】
開示された実施形態に対する他の変形形態が、請求される本発明を実施する際に当業者によって、図面、本開示、及び添付の特許請求の範囲の検討により理解され、実施され得る。特許請求の範囲において、「備える/有する/含む(comprising)」という単語は他の要素又はステップを除外せず、不定冠詞「1つの(a)」又は「1つの(an)」は複数を除外しない。いくつかの方策が、相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの方策の組合せが有利には使用され得ないことを示しているわけではない。特許請求の範囲中のいかなる参照符号も、その範囲を限定するものと解釈されるべきではない。