特許第6932222号(P6932222)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6932222
(24)【登録日】2021年8月19日
(45)【発行日】2021年9月8日
(54)【発明の名称】アブソーバ
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/18 20060101AFI20210826BHJP
   B60R 19/34 20060101ALI20210826BHJP
【FI】
   B60R19/18 P
   B60R19/18 J
   B60R19/34
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-91827(P2020-91827)
(22)【出願日】2020年5月27日
【審査請求日】2020年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】308013436
【氏名又は名称】小島プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083091
【弁理士】
【氏名又は名称】田渕 経雄
(74)【代理人】
【識別番号】100141416
【弁理士】
【氏名又は名称】田渕 智雄
(72)【発明者】
【氏名】浅井 菜摘
(72)【発明者】
【氏名】西尾 侑那
【審査官】 塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭48−44936(JP,A)
【文献】 米国特許第3564688(US,A)
【文献】 特開2004−28315(JP,A)
【文献】 特開2005−53438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/18
B60R 19/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体または該車体に取付けられる部材からなる車体側部材に取付けられており、衝突荷重の入力時に塑性変形して衝突エネルギを吸収するアブソーバであって、
前記車体側部材に取付けられる取付部と、該取付部から前記衝突荷重の入力側に延びるマス群と、を有しており、
前記マス群は、該マス群の延び方向にマス要素を連続して複数設けることで構成されており、
複数の前記マス要素は、それぞれ、前記マス群延び方向と直交する方向に延びる六角形筒状の六角筒状部と、該六角筒状部の対向二壁同士をつなぐV字状連結部と、を有しており、
前記六角筒状部は、前記マス群延び方向の先側にあり該マス群延び方向と直交する方向に延びる先側板部と、前記マス群延び方向の手前側にあり前記先側板部と対向する手前側板部と、前記マス群延び方向にV字状に延びており前記先側板部と前記手前側板部の側方の一端部同士および他端部同士を繋ぐ一対の側方V字板部と、を有しており、
前記V字状連結部は、前記マス群延び方向にV字状に延びており、前記先側板部と前記手前側板部の、前記六角筒状部延び方向の端部同士を繋いでおり、
前記マス群延び方向で互いに隣り合う位置にある前記マス要素同士は、前記マス群延び方向で先側にあるマス要素の前記手前側板部が手前側にあるマス要素の前記先側板部となるようにして隣り合っており、
前記マス群は、前記六角筒状部の前記六角筒状部延び方向における長さが前記マス群延び方向の手前側に行くほど長くなることで、前記六角筒状部延び方向における長さが前記マス群延び方向の手前側に行くほど長くなっている、
アブソーバ。
【請求項2】
前記マス群は、前記マス群延び方向および前記六角筒状部延び方向と直交する横並び方向に並んで配置されており、
前記横並び方向で互いに隣り合う位置にある前記マス群同士の間には、隙間が設定されている、請求項1記載のアブソーバ。
【請求項3】
前記横並び方向で互いに隣り合う位置にある前記マス群同士の、前記マス群延び方向の先側端部同士が先側連結部で連結されるとともに、前記マス群延び方向の手前側端部同士が手前側連結部で連結されている、請求項2記載のアブソーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝突荷重の入力時に塑性変形して衝突エネルギを吸収するアブソーバに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のフロントバンパの裏側(車両後側)でバンパリンフォースメントの車両前側に、歩行者衝突時の歩行者への反力を緩和させるために、アブソーバが設けられている。このアブソーバには種々の形状、構造が存在するが、その1つとして、図8図9に示すようなアブソーバ1がある。
【0003】
アブソーバ1は、車体側部材6に取付けられる取付部2と、取付部2から衝突荷重の入力側(車両前方)に延びるマス群3と、を有している。マス群3は複数のマス要素3a〜3dからなり、各マス要素3a〜3dは、平面視で六角形状(ハニカム形状)の六角筒状部4と、六角筒状部4の前後壁の下端部同士を繋ぐV字状連結部5と、を有している。そして、衝突荷重の入力時には、六角筒状部4とV字状連結部5が潰れるようになっている。
【0004】
図9に示すように、従来のアブソーバ1は、マス群3の延び方向でマス群3の上下方向長さ(六角筒状部延び方向の長さ)が一定である。そのため、つぎの問題点がある。
【0005】
(I) 図10(a)〜図10(c)に示すように、マス群3の延び方向の先側から衝突荷重Fが入力した時には、つぎのように変形していく。
先ず、衝突荷重Fの入力時に、衝突に近い方(図の左側)のマス要素3aから上に開いた開口が閉じる方向に変形する(図10(a)のA2部)。
上に開いた開口が閉じる方向に変形すると、変形した部分が斜め下方向に力をかける(図10(a)の矢印B2)。
その結果、衝突と遠い側のマス要素3c、3dの開口が、開いて下方向に変形していく(図10(b)のC2部)。
したがって、図10(b)、図10(c)に示すように、変形の仕方が安定せず綺麗に潰れていかないおそれがある。
【0006】
(II) 図11に示すように、マス群3の延び方向の先側かつ斜め下から斜め上に向う軌道で衝突荷重Fが入力したときには、衝突に最も近いマス要素3aが折りたたまれる前に隣のマス要素3bの開口部が閉じられてしまい、マス群3が取付け座面の根元からめくれ上がるように変形してしまう。したがって、変形の仕方が安定せず綺麗に潰れていかないおそれがある。
【0007】
(III)図12に示すように、マス群3の延び方向の先側かつ斜め上から斜め下に向う軌道で衝突荷重Fが入力したときには、衝突に最も近いマス要素3aが折りたたまれる前に衝突と遠い側のマス要素3c、3dの開口部が下に開いてしまう。したがって、変形の仕方が安定せず綺麗に潰れていかないおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−169687号公報
【特許文献2】国際公開第2009/098971号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、従来に比べて変形の仕方を安定させることができる、アブソーバを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明はつぎの通りである。
(1) 車体または該車体に取付けられる部材からなる車体側部材に取付けられており、衝突荷重の入力時に塑性変形して衝突エネルギを吸収するアブソーバであって、
前記車体側部材に取付けられる取付部と、該取付部から前記衝突荷重の入力側に延びるマス群と、を有しており、
前記マス群は、該マス群の延び方向にマス要素を連続して複数設けることで構成されており、
複数の前記マス要素は、それぞれ、前記マス群延び方向と直交する方向に延びる六角形筒状の六角筒状部と、該六角筒状部の対向二壁同士をつなぐV字状連結部と、を有しており、
前記六角筒状部は、前記マス群延び方向の先側にあり該マス群延び方向と直交する方向に延びる先側板部と、前記マス群延び方向の手前側にあり前記先側板部と対向する手前側板部と、前記マス群延び方向にV字状に延びており前記先側板部と前記手前側板部の側方の一端部同士および他端部同士を繋ぐ一対の側方V字板部と、を有しており、
前記V字状連結部は、前記マス群延び方向にV字状に延びており、前記先側板部と前記手前側板部の、前記六角筒状部延び方向の端部同士を繋いでおり、
前記マス群延び方向で互いに隣り合う位置にある前記マス要素同士は、前記マス群延び方向で先側にあるマス要素の前記手前側板部が手前側にあるマス要素の前記先側板部となるようにして隣り合っており、
前記マス群は、前記六角筒状部の前記六角筒状部延び方向における長さが前記マス群延び方向の手前側に行くほど長くなることで、前記六角筒状部延び方向における長さが前記マス群延び方向の手前側に行くほど長くなっている、
アブソーバ。
(2) 前記マス群は、前記マス群延び方向および前記六角筒状部延び方向と直交する横並び方向に並んで配置されており、
前記横並び方向で互いに隣り合う位置にある前記マス群同士の間には、隙間が設定されている、(1)記載のアブソーバ。
(3) 前記横並び方向で互いに隣り合う位置にある前記マス群同士の、前記マス群延び方向の先側端部同士が先側連結部で連結されるとともに、前記マス群延び方向の手前側端部同士が手前側連結部で連結されている、(2)記載のアブソーバ。
【発明の効果】
【0011】
上記(1)のアブソーバでは、六角筒状部の六角筒状部延び方向における長さがマス群延び方向の手前側に行くほど長くなることで、マス群の六角筒状部延び方向における長さがマス群延び方向の手前側に行くほど長くなっている。そのため、マス群の六角筒状部延び方向への変形に対する剛性は、マス群延び方向手前側に行くほど大になる。よって、マス群は、マス群延び方向の先側から衝突荷重が入力したときに、マス群延び方向の先側のマス要素から手前側のマス要素に順に変形していく(潰れていく)変形モード(安定した綺麗な変形モード)をとる。よって、従来に比べて、マス群延び方向の先側のマス要素の変形途中で手前側のマス要素が変形してしまうことを抑制でき、変形の仕方を安定させることができる。
【0012】
上記(2)のアブソーバでは、横並び方向で互いに隣り合う位置にあるマス群同士の間には、隙間が設定されている。そのため、マス群延び方向の先側から衝突荷重が入力してマス群が変形した(潰れた)ときに、隣り合うマス群同士が干渉し合うことを抑制できる。
【0013】
上記(3)のアブソーバでは、横並び方向で互いに隣り合う位置にあるマス群同士の、マス群延び方向の先側端部同士が先側連結部で連結されるとともに、マス群延び方向の手前側端部同士が手前側連結部で連結されている。そのため、横並び方向で互いに隣り合う位置にあるマス群同士の一方が他方に対して六角筒状部延び方向に動いてしまうこと(変形してしまうこと、変位してしまうこと)を抑制できる。よって、横並び方向で互いに隣り合うマス群同士が連結されていない場合に比べて、各マス群を衝突荷重の入力時に六角筒状部延び方向に動きにくくさせることができ、各マス群の変形の仕方を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明実施例のアブソーバの斜視図である。
図2】本発明実施例のアブソーバの平面図である。
図3図1のA−A線部位における拡大断面図である。
図4】本発明実施例のアブソーバにおける、マス要素の拡大平面図である。
図5】本発明実施例のアブソーバを用いて行った衝突試験の断面図である。なお、本発明実施例のアブソーバの優位性を示すために、図10の従来アブソーバの断面図も併せて点線で示している。(a)は、インパクタがアブソーバに衝突してアブソーバが変形し始めたときを示す。(b)は、(a)よりもさらにアブソーバが変形してきたときを示す。(c)は、(b)よりもさらにアブソーバが変形してきたときを示す。
図6図5の衝突試験を行って得られたアブソーバの荷重−変位線図である。なお、本発明実施例のアブソーバの優位性を示すために、従来アブソーバの場合の荷重−変位線図も併せて点線で示している。
図7】本発明実施例のアブソーバの変形例を示す断面図である。
図8】従来のアブソーバの平面図である。
図9】従来のアブソーバの断面図である。
図10】従来のアブソーバを用いて行った衝突試験の断面図である。(a)は、インパクタがアブソーバに衝突してアブソーバが変形し始めたときを示す。(b)は、(a)よりもさらにアブソーバが変形してきたときを示す。(c)は、(b)よりもさらにアブソーバが変形してきたときを示す。
図11】従来のアブソーバに、マス群延び方向の先側かつ六角筒状部延び方向の一側から(斜め下方から)衝突荷重が入力するときの、断面図である。(a)は、アブソーバの変形前を示す。(b)は、アブソーバが変形し始めたときを示す。
図12】従来のアブソーバに、マス群延び方向の先側かつ六角筒状部延び方向の他側から(斜め上方から)衝突荷重が入力するときの、断面図である。(a)は、アブソーバの変形前を示す。(b)は、アブソーバが変形し始めたときを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照して、本発明実施例のアブソーバ10を説明する。
【0016】
本発明実施例のアブソーバ10は、図3に示すように、車体または該車体に取付けられる部材からなる車体側部材100に取付けられており、衝突荷重Fのアブソーバ10への入力時に塑性変形して衝突エネルギを吸収する。
【0017】
車体側部材100は、車体または該車体に取付けられる部材からなり、比較的高い剛性を有している。車体側部材100は、金属製であり、金属はたとえば、鉄(鋼を含む)、アルミ(アルミ合金を含む)である。ただし、車体側部材100は、樹脂製であってもよい。
【0018】
車体側部材100は、衝突荷重Fの入力側にある前面部110と、前面部110の端部から衝突荷重Fの入力側と反対側である後側に延びる後方延び部120と、を有する。前面部110は、衝突荷重Fのアブソーバ10への入力方向と直交(略直交を含む)する方向に延びており、後方延び部120は、衝突荷重Fの入力方向と平行(略平行を含む)な方向に延びている。
【0019】
アブソーバ10は、たとえば、歩行者保護の観点から車両の前側端部で図示略のフロントバンパの裏側に衝撃吸収体として設けられるアッパアブソーバである。ただし、アブソーバ10は、車両の前側端部かつ下部に設けられるロアアブソーバであってもよく、車両側面衝突時に対応可能な側突用アブソーバであってもよく、車両に搭載されるその他のアブソーバであってもよい。
【0020】
アブソーバ10は、図1に示すように、発泡樹脂製以外の樹脂製であり、たとえばPP(ポリプロピレン樹脂)である。ただし、アブソーバ10は、PP以外で構成されていてもよく、たとえば、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)、PC(ポリカーボネート樹脂)、PE(ポリエチレン樹脂)、FRP(Fiber Reinforced Plastics)等の強化プラスチック、で構成されていてもよい。アブソーバ10は、型成形品である。アブソーバ10は、互いに固定される複数部品で構成されていてもよいが、部品点数を削減するために一部品構成であることが望ましい。
【0021】
アブソーバ10は、車体側部材100に取付けられる取付部20と、取付部20から衝突荷重Fの入力側(衝突荷重Fの入力方向と反対方向)に延びるマス群30と、を有している。以下、マス群30の延び方向を、マス群延び方向D1ともいう。
【0022】
取付部20は、車体側部材100の後方延び部120のみに、図示略のボルトを用いて締結固定されている。取付部20は、衝突荷重Fの入力方向と平行(略平行を含む)な方向、すなわち車体側部材100の後方延び部120と平行(略平行を含む)な方向に延びている。取付部20が後方延び部120に固定されているため、取付部20は、衝突荷重Fの入力方向に対して、車体側部材100の前面部110よりも後側にある部位で、車体側部材100に取付けられている。
【0023】
取付部20は、複数形成されており、複数の図示略のボルトを用いて車体側部材100に取付けられている。これは、アブソーバ10が車体側部材100に対して回転することを抑制するとともに、アブソーバ10を強固に車体側部材100に固定して取付けるためである。複数の取付部20は、衝突荷重Fの入力方向と直交する方向(後述する横並び方向D3と平行な方向)に、互いに間隔をおいて設けられている。
【0024】
マス群30は、取付部20における衝突荷重Fの入力側の端部21から、衝突荷重Fの入力側に延びている。マス群30は、片持ち構造となっている。マス群30は、取付部20の端部21から、直接衝突荷重Fの入力側に延びていてもよく、衝突荷重Fの入力方向と直交する方向(後述する六角筒状部延び方向D2と平行な方向)に延びる支持アーム40を介して衝突荷重Fの入力側に延びていてもよい。支持アーム40は、アブソーバ10の構成部である。なお、図示例では、マス群30が取付部20の端部21から支持アーム40を介して延びている場合を示している。
【0025】
マス群30は、マス群延び方向D1から見て車体側部材100の前面部110とラップする位置にある(図3参照)。マス群30は、図1に示すように、マス群延び方向D1に、マス要素31を連続して複数設けることで構成されている。マス群延び方向D1に複数設けられるマス要素31の数は、複数であれば特に限定されるものではないが、たとえば4個である。
【0026】
複数のマス要素31は、それぞれ、マス群延び方向D1と直交する方向に延びる六角形筒状の六角筒状部33と、六角筒状部33の対向二壁同士をつなぐV字状連結部35と、を有する。以下、六角筒状部の延び方向(軸方向)を、六角筒状部延び方向D2ともいう。
【0027】
六角筒状部33は、図4に示すように、マス群延び方向D1の先側にありマス群延び方向D1と直交する方向に延びる先側板部33aと、マス群延び方向D1の手前側にあり先側板部33aと対向する手前側板部33bと、マス群延び方向D1にV字状に延びており先側板部33aと手前側板部33bの側方の一端部同士および他端部同士を繋ぐ一対の側方V字板部33c、33cと、を有する。六角筒状部33が、先側板部33a、手前側板部33b、一対の側方V字板部33c、33cを有するため、六角筒状部33は平面視で六角形である。六角筒状部33は、平面視で、正六角形(ハニカム形状)であってもよく、図示例のように、先側板部33aと手前側板部33bが一対のV字板部33c、33cに比べて長い六角形であってもよい。
【0028】
図3に示すように、V字状連結部35は、マス群延び方向D1にV字状に延びており、先側板部33aと手前側板部33bの、六角筒状部延び方向D2の端部同士を繋いでいる。V字状連結部35は、先側板部33aと手前側板部33bの、六角筒状部延び方向D2の一端部(下端部)同士を繋いでいる。ただし、V字状連結部35は、先側板部33aと手前側板部33bの、六角筒状部延び方向D2の他端部(上端部)同士を繋いでいてもよく、一端部同士と他端部同士をたとえば交互に繋いでいてもよい(図7参照)。また、それぞれのマス要素31におけるV字状連結部35のV字の角度は、一定であってもよく、異なっていてもよい。
【0029】
図3に示すように、マス群延び方向D1で互いに隣り合う位置にあるマス要素31同士は、マス群延び方向D1で先側にあるマス要素の手前側板部33bが手前側にあるマス要素の先側板部33aとなるようにして隣り合っている。
【0030】
アブソーバ10は、衝突荷重Fの入力時にマス群30が圧縮荷重を受け、マス要素31における一対の側方V字板部33c、33cとV字状連結部35のそれぞれのV字の折れ曲がり部が折りたたまれることで、マス群延び方向D1に圧縮変形(潰れ変形)し、衝突エネルギを吸収するようになっている。
【0031】
マス群30は、六角筒状部33の六角筒状部延び方向D2における長さがマス群延び方向D1の手前側に行くほど長くなることで、六角筒状部延び方向D2における長さがマス群延び方向D1の手前側(図3における右側)に行くほど長くなっている。マス群30は、マス群30の側面視で(マス群延び方向D1および六角筒状部延び方向D2と直交する方向から見たときに)、六角筒状部延び方向D2における長さが直線状に長くなっていてもよく、曲線状に長くなっていてもよく、段差状に長くなっていてもよい。
【0032】
図1図2に示すように、マス群30は、マス群延び方向D1および六角筒状部延び方向D2と直交する横並び方向D3に並んで配置されている。横並び方向D3に並んで配置されるマス群30は、それぞれ、同数かつ同形状のマス要素31を有している。そして、横並び方向D3で互いに隣り合う位置にあるマス群30同士の間には、隙間Sが設定されている。隙間Sは、マス群30が衝突荷重Fを受けて(マス群延び方向D1に圧縮荷重を受けて)潰れ変形したときに、隣り合うマス群30同士が干渉し合わない程度の隙とされている。
【0033】
マス群30が横並び方向D3に並んで配置されており、隣り合うマス群30同士の間に隙間Sが設定されているため、衝突荷重Fの入力時のみならず衝突荷重Fが入力していないときにも、横並び方向D3で互いに隣り合う位置にあるマス群30同士の一方が他方に対して六角筒状部延び方向D2に動いてしまう(変形してしまう、変位してしまう)おそれがある。動いてしまうと、動いてしまったマス群30のマス群延び方向D1が、衝突荷重Fの入力方向に対して傾いてしまい、衝突荷重Fの入力時にマス群30を効果的に圧縮変形させることが困難になるおそれがある。そこで、横並び方向D3で互いに隣り合う位置にあるマス群30同士の、マス群延び方向D1の先側端部同士が、横並び方向D3に延びる先側連結部50で連結されており、マス群延び方向D1の手前側端部同士が、手前側連結部51で連結されている。これら先側連結部50と手前側連結部51は、アブソーバ10の構成部である。
【0034】
アブソーバ10は、マス群延び方向D1で先側連結部50の先側に、スペーサ53をさらに有している。スペーサ53は、アブソーバ10が図示略のフロントバンパの裏側に設けられるアッパアブソーバである場合、マス群30とフロントバンパとの車両前後方向間隔を小にし、車両前面衝突時に衝突荷重Fを受けて車両後方に移動してきたフロントバンパが比較的早期に(比較的短距離で)アブソーバ10に当たって、アブソーバ10にて衝撃吸収できるようにしている。スペーサ53は、フロントバンパからの荷重を早期にマス群30に伝えるために、マス群30よりも高剛性とされている。なお、フロントバンパを介する衝突荷重Fのマス群30への入力方向がマス群延び方向D1と平行な方向となるように、スペーサ53のマス群延び方向D1の先側面53aは、衝突時にアブソーバ10に当接するフロントバンパ部分と平行(略平行を含む)とされていることが望ましい。
【0035】
アブソーバ10が上記のように構成されているため、つぎの作用、効果を得ることができる。
【0036】
(I)(I−a)図5(a)〜(c)に実線にて示すように、マス群30の延び方向の先側から衝突荷重Fが入力したときには、つぎのように変形していく。
先ず、衝突荷重Fの入力時に、衝突に近い方(図の左側)のマス要素31aから六角筒状部33の開いた開口が閉じる方向に変形する(図5(a)のA1部)。
開いた開口が閉じる方向に変形すると、変形した部分が斜め方向に力をかける(図5(a)の矢印B1)。なお、ここまでは従来も同様である。
【0037】
(I−b)ここで、本発明実施例のアブソーバ10では、六角筒状部33の六角筒状部延び方向D2における長さがマス群延び方向D1の手前側に行くほど長くなることで、マス群30の六角筒状部延び方向D2における長さがマス群延び方向D1の手前側に行くほど長くなっている。そのため、マス群30の六角筒状部延び方向D2への変形に対する剛性は、マス群延び方向D1の手前側に行くほど大になる。よって、マス群延び方向D1の手前側に行くほどマス要素31(マス群30)は変形し難くなり、マス群30は、マス群延び方向D1の先側のマス要素31aから手前側のマス要素31dに順に(31a→31b→31c→31dの順に)変形していく(潰れていく)変形モード(安定した綺麗な変形モード)をとる(図5(b)、図5(c))。
【0038】
(I−c)よって、本発明実施例のアブソーバ10によれば、従来に比べて、マス群延び方向D1の先側のマス要素の変形途中で手前側のマス要素が変形してしまうことを抑制でき、マス群30の変形の仕方を安定させることができる。
(I−d)また、図5(b)に示すように、従来に比べて六角筒状部延び方向D2への変形量が小であるため、マス群30の六角筒状部延び方向D2における長さがマス群延び方向D1の手前側に行くほど長くなっていても、六角筒状部延び方向D2でマス群30の変形に必要なスペースE1を、従来アブソーバ1におけるマス群3の変形に必要なスペースE2に比べて小にでき、スペース上有利である。
【0039】
この上記(I)の作用、効果は、マス群延び方向D1の先側、かつ、六角筒状部延び方向D2の一側(図の下側)または他側(図の上側)の斜め方向から、マス群30に衝突荷重Fの入力があった際にも同様に得られる。
【0040】
(II) 横並び方向D3で互いに隣り合う位置にあるマス群30同士の間には、隙間Sが設定されている。そのため、マス群延び方向D1の先側から衝突荷重Fが入力してマス群30が変形した(潰れた)ときに、隣り合うマス群30同士が干渉し合うことを抑制できる。
【0041】
(III) 横並び方向D3で互いに隣り合う位置にあるマス群30同士の、マス群延び方向D1の先側端部同士が先側連結部50で連結されるとともに、マス群延び方向D1の手前側端部同士が手前側連結部51で連結されている。そのため、横並び方向D3で互いに隣り合う位置にあるマス群30同士の一方が他方に対して六角筒状部延び方向D2に動いてしまうこと(変形してしまうこと、変位してしまうこと)を抑制できる。よって、横並び方向D3で互いに隣り合うマス群30同士が互いに連結されていない場合に比べて、各マス群30を衝突荷重Fの入力時に六角筒状部延び方向D2に動きにくくさせることができ、各マス群30の変形の仕方を安定させることができる。
【0042】
(IV) 取付部20が、車体側部材100の、衝突荷重Fの入力側にある前面部110よりも後側にある部位で、車体側部材100に取付けられており、マス群30が、マス群延び方向D1から見て車体側部材100の前面部110とラップする位置にある。そのため、アブソーバ10に衝突荷重Fが入力したとき、取付部20が邪魔になることなくマス群30から車体側部材100に効率よく荷重を伝達できる。また、取付部20が邪魔になることなくマス群30を圧縮変形させることができる。
【0043】
〈作用、効果の確認〉
図6における実線は、本発明実施例のアブソーバ10の荷重−変位線図である。なお、図6における点線は、従来アブソーバ1の荷重−変位線図である。
【0044】
図6から、アブソーバ10の荷重の立ち上がりの角度を、従来よりも急角度にすることができることがわかる(図6のP1)。また、従来(図6の矢印P2b)よりも、アブソーバ10をマス群延び方向D1に長距離にわたって圧縮変形させることができることがわかる(図6の矢印P2a)。よって、荷重−変位線図における波形を従来に比べて大きい矩形に近づけることができ、アブソーバ10によるエネルギ吸収効率が高められる(エネルギ吸収量を増加させられる)ことがわかる。
【符号の説明】
【0045】
10 アブソーバ
20 取付部
30 マス群
31(31a、31b、31c、31d) マス要素
33 六角筒状部
33a 先側板部
33b 手前側板部
33c 側方V字板部
35 V字状連結部
50 先側連結部
51 手前側連結部
53 スペーサ
53a スペーサの先側面
100 車体側部材
110 車体側部材の前面部
120 車体側部材の後方延び部
D1 マス群延び方向
D2 六角筒状部延び方向
D3 横並び方向
F 衝突荷重
S 隙間
【要約】
【課題】従来に比べて変形の仕方を安定させることができるアブソーバの提供。
【解決手段】六角筒状部33の六角筒状部延び方向D2における長さがマス群延び方向D1の手前側に行くほど長くなることで、マス群30の六角筒状部延び方向D2における長さがマス群延び方向D1の手前側に行くほど長くなっている。そのため、マス群30の六角筒状部延び方向D2への変形に対する剛性は、マス群延び方向D1の手前側に行くほど大になる。よって、マス群30は、マス群延び方向D1の先側のマス要素31から手前側のマス要素31に順に変形していく(潰れていく)変形モード(安定した綺麗な変形モード)をとる。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
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図12