(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
流体の力を受けて拡がり流体を捉える傘体と、前記傘体と前記本体を連結する吊索と、前記傘体に取り付けられた錘とを有し、前記本体から下方に放出されるパラシュートを備える
請求項1乃至9のいずれか1項に記載のキャビン。
【発明を実施するための形態】
【0037】
[実施形態]
図1は、本発明の一実施形態に係る飛翔システム1の全体構成を示した図である。飛翔システム1は、ガス気球11と、ガス気球11から下方に垂れ下がる複数の吊索12と、複数の吊索12により吊られるキャビン13を備える。
【0038】
ガス気球11は、気密な袋状体である球皮と、その内部に充填されたヘリウムガス、水素ガス等の空気より軽い気体(以下、軽量ガスという)で構成され、空気中で浮力を生じて飛翔する。吊索12はガス気球11によりキャビン13を吊り上げるための索体である。キャビン13は、内部に人(乗員)や物を収容する大型の水密及び気密な容器であり、ガス気球11により飛翔する。
【0039】
なお、キャビン13は地上から2万メートル程度の高度まで上昇するため、事故等によりキャビン13の気密状態が保てなくなった場合に備えて、キャビン13内の乗員は宇宙服を着用することが望ましい。
【0040】
図2は、キャビン13を斜め上から見た図である。キャビン13は、
図2に示される構成部として、キャビン本体1300と、複数のハッチ1301と、キャビン13の本体から外側に延伸する部材であるアーム1302と、アーム1302の先端付近に取り付けられた撮影装置1303と、多重扉1304と、複数のフック1305と、装置ボックス1306と、操作索用栓1307と、窓1320と、開閉弁1321を備える。以下の説明において、誤解を招かない場合、キャビン本体1300とキャビン13を区別しない場合がある。
【0041】
キャビン本体1300は、キャビン13の本体を構成する容器である。
図3は、キャビン本体1300の壁体を構成する積層体21の構造の一例を示した図である。
図3に例示の積層体21は、外側(
図3の右側)から、紫外線遮断層211、断熱層212、粘性層213、繊維強化プラスチック層214、粘性層215で構成される積層体である。
【0042】
紫外線遮断層211は、キャビン13内に向かう紫外線を反射又は吸収し、キャビン13の外側から内側へ透過する紫外線の量を低減する。断熱層212は熱伝導率が低く、キャビン13の本体の内側から外側への熱の伝導を低減する。断熱層212としては、例えば、発泡スチロール、発泡ウレタン等の軽量な素材が適している。なお、断熱層212は、キャビン13が着陸又は着水する際の衝撃を和らげる緩衝材の役割と、キャビン13が着水した場合にキャビン13を水面上に浮かせる浮体の役割も果たす。
【0043】
粘性層213及び粘性層215は、高い粘性の材料の層であり、繊維強化プラスチック層214に亀裂又は孔が生じた場合に、その亀裂又は孔に入り込み塞ぐことで、キャビン13内からキャビン13外への空気の漏出を食い止める役割を果たす。粘性層213及び粘性層215に採用される材料としては、例えば、粘性の高い樹脂、タール等が挙げられる。
【0044】
繊維強化プラスチック層214は、キャビン13を水密及び気密に保つと共に、キャビン13の形状を保つ役割を果たす繊維強化プラスチックの層である。繊維強化プラスチック層214の素材としては、ガラス繊維強化プラスチック、炭素繊維強化プラスチック等のいずれが採用されてもよいが、繊維強化プラスチックは電波を透過する点で優れている。
【0045】
積層体21の構成は、
図3に例示したものに限られない。例えば、積層体21を構成する複数の層の積層の順序が変更されてもよい。また、層の数が増減されてもよい。例えば、断熱層212に加えて、別の断熱層が追加されたり、粘性層213と粘性層215のいずれか一方が省略されたりしてもよい。
【0046】
ハッチ1301(
図2)は、乗員がキャビン13に出入りするために用いられる開閉可能な蓋体(扉)である。ハッチ1301が閉じられると、キャビン13内は封止材(パッキン)により水密及び気密に封止される。ハッチ1301の本体(蓋体)には、例えばポリカーボネート等のプラスチックが用いられる。
【0047】
キャビン13が着水した時に、キャビン13の姿勢にかかわらず必ず1以上のハッチ1301が水面より上に出るように、キャビン13は、キャビン本体1300の壁体の互いに対向する位置に配置された2つ1対のハッチ1301を1対以上、備えることが望ましい。例えば、
図2において死角となっている左奥側の側面にもハッチ1301が配置されていることが望ましい。
【0048】
撮影装置1303は、キャビン13及びハッチ1301から外を見ているキャビン13内の乗員を、例えば地球を背景に撮影するためのカメラである。撮影装置1303の撮影の開始等の操作は、キャビン13内に配置されたコントローラ(後述)から無線又は有線で操作できる。また、撮影装置1303が撮影した画像データ(動画データ又は静止画データ)は、キャビン13内のコントローラに無線又は有線で送信され、記憶される。アーム1302は、撮影装置1303の画角内にキャビン13が入るようにキャビン13と撮影装置1303の位置関係を保つ役割を果たす。
【0049】
多重扉1304は、キャビン13内からキャビン13外へ物を排出するための機構である。多重扉1304は、各々がキャビン13内の乗員の操作に応じて独立して開閉する層状に配置された複数枚の蓋体を備えている。
【0050】
多重扉1304の利用例の一つとして、例えば散骨が考えられる。以下に、多重扉1304が層状に配置された2枚の蓋体を備える場合を例に、散骨を行う際の操作例を説明する。キャビン13内の乗員は、まず外側の蓋体を閉じた状態で内側の蓋体を開けて、2枚の蓋体の間の空間内に遺骨を置く。続いて、内側の蓋体を閉じた後、外側の蓋体を開く。通常、ガス気球11の飛翔に伴い、キャビン13には上から下に向かい強い風が生じているため、外側の蓋体が開かれると、遺骨はその風によってキャビン13外の空間内へと散らばる。なお、内側の蓋体が閉じられ、外側の蓋体が開かれた状態で、キャビン13内からの操作に応じて、2枚の蓋体の間の空間にある物を強制的に外に排出する排出機構が設けられていてもよい。多重扉1304からキャビン13外の空間への物の排出が完了すると、外側の蓋体が閉じられる。なお、多重扉1304は、全ての蓋体が同時には開かない構造、すなわち、必ず1枚以上の蓋体が閉まる構造を備えることが望ましい。
【0051】
フック1305は、キャビン本体1300の天井又は側面の天井付近の外側面に配置された、吊索12が連結される部材である。
【0052】
装置ボックス1306は、キャビン本体1300の外部の各種の物理量等を計測する計測装置、無線通信を行う通信装置等を収容する容器である。装置ボックス1306に収容される計測装置としては、例えば、気圧計、温度計、紫外線量計、宇宙線量計、GNSS(Global Navigation Satellite System)ユニット等が挙げられるが、これらに限られない。装置ボックス1306に収容される通信装置には、例えば、地球上の通信装置との間で通信を行う通信装置と、キャビン13内のコントローラ(後述)との間で通信を行う通信装置と、ガス気球11に設けられたガス排出装置(後述)との間で通信を行う通信装置が含まれる。
【0053】
操作索用栓1307は、キャビン13の天井又は側面の天井付近の外側面に配置された、積層体21を貫通する孔を形成する部材であり、ガス気球11に設けられた軽量ガスを排気するための排気口をキャビン13内の乗員が手動で開閉操作するための索体である操作索がその孔を通る。操作索用栓1307は、操作索がガス気球11に設けられた排気口を開閉するために必要な距離(例えば、数センチメートル)だけ移動を可能としつつ、キャビン13内の水密かつ気密な状態を保つ。
【0054】
窓1320は、キャビン13内の乗員がキャビン13の外を眺めるための窓である。窓1320の本体は、例えば光を透過するポリカーボネート等のプラスチックでできている。また、窓1320は、その本体の内側又は外側に、紫外線を遮断する層が設けられていることが望ましい。また、窓1320は、例えば内側に、開閉可能な可視光を遮断する遮光板を備えることが望ましい。
【0055】
開閉弁1321は、キャビン13内の気圧が閾値以上になった場合に開かれて、キャビン13内の気体をキャビン13外に排出するための弁である。
【0056】
図4は、キャビン本体1300の内部に配置されている構成部を示した図である。なお、
図4に示される構成部の配置の位置、数等はあくまで例示であって、それらは適宜変更されてよい。
【0057】
キャビン本体1300内には、ボンベ1308と、ボンベ開閉装置1309と、バラストタンク1310と、バラスト排出装置1311と、座席1312と、非常用パラシュート1313と、結露板1314と、二酸化炭素吸収装置1315と、アンカーパラシュート1316と、アンカーパラシュート放出装置1317と、装置ボックス1318と、弁開閉装置1322と、コントローラ1319を備える。
【0058】
ボンベ1308は、酸素を含む気体(酸素のみの気体を含む)を収容するボンベである。ボンベ開閉装置1309は、ボンベ1308を開閉する。
【0059】
バラストタンク1310は、キャビン13の重量を調整するためのバラスト(砂等の粒体又は粉体、もしくは、水等の液体)を貯留するタンクである。バラストタンク1310の下面には開閉可能な排出口が設けられている。バラストタンク1310の排出口は、バラスト排出装置1311により開閉される。すなわち、バラスト排出装置1311は、バラストタンクからバラストを排出する。また、バラストタンク1310の排出口を塞ぐ蓋は、バラスト排出口開閉機構(図示略)によっても開閉される。バラスト排出口開閉機構は、キャビン13内に配置され、乗員に操作されて動く操作子(開閉レバー等)に対する操作に応じて、バラストタンクの排出口を塞ぐ蓋を開閉する機構である。バラストタンク1310の排出口が開かれると、バラストタンク1310内のバラストが排出され、キャビン13の重量が軽くなる。その結果、飛翔システム1の上昇力が高まる。
【0060】
座席1312(固定機構の一例)は、飛翔システム1が地球上(地上又は海上)に落下する際の衝撃に備えて、キャビン13内の乗員が座るためのシートである。従って、キャビン13には、キャビン13内に収容可能な乗員の人数分の座席1312が設置されている。また、座席1312はキャビン本体1300に固定されている。座席1312はシートベルト13121を備える。シートベルト13121は、座席1312に着座した乗員をキャビン13に固定する役割を果たす。
【0061】
非常用パラシュート1313は、不測の事故の発生時にキャビン13内の乗員がキャビン13外へ脱出しなければならなくなった場合に用いるパラシュートである。従って、キャビン13には、キャビン13内に収容可能な乗員の人数分の非常用パラシュート1313が設置されている。
【0062】
結露板1314(結露促進部材の一例)は、キャビン13内の空気中の水蒸気の結露を促進することで、キャビン13内の空気中の水蒸気を軽減するための部材である。結露板1314は、熱伝導率が高い部材であり、キャビン13の内側の熱を外側に伝導する。その結果、結露板1314のキャビン13内に露出している部分の温度がキャビン13内の空気の温度より低くなり、キャビン13内の水蒸気が結露板1314に触れて水又は氷になる。結露板1314に用いられる素材の例としては、例えば、銅、アルミ等の金属が挙げられる。
【0063】
二酸化炭素吸収装置1315は、キャビン本体1300内の空気中の二酸化炭素を吸収する。二酸化炭素吸収装置1315は、例えば、二酸化炭素を含む空気をアミン等のアルカリ性水溶液に接触させて吸収する装置(化学吸収法による装置)であるが、他の方法に基づく装置であってもよい。
【0064】
アンカーパラシュート1316は、飛翔システム1が海上に落下する際に、海中で開いて飛翔システム1の主に水平方向の速度を低減し、着水時の衝撃を緩和するためのパラシュートである。
【0065】
図5は、アンカーパラシュート1316が飛翔システム1の着水時の衝撃を緩和する様子を説明するための図である。
図5(A)は、海面近くまで帰還した飛翔システム1を示した図である。キャビン13が所定の高度まで落下すると、キャビン13の下面に配置されているアンカーパラシュート1316の放出装置が動作し、アンカーパラシュート1316が下方に放出される。
図5(B)は、アンカーパラシュート1316がキャビン13から放出された状態を示した図である。
【0066】
アンカーパラシュート1316は、一方の端部がキャビン13の下面に連結された索体13161と、索体13161のキャビン13に連結されていない側の端部から分岐するように一方の端部が索体13161に取り付けられている複数の索体13162と、複数の索体13162の索体13161に連結されていない側の端部に連結されている傘体13163と、傘体13163の天頂部に取り付けられた錘13164を備える。なお、アンカーパラシュート1316は通常のパラシュートと異なり、概ね上下が逆の姿勢でその機能を果たす。
【0067】
キャビン13から放出されたアンカーパラシュート1316は、錘13164の重さにより
図5(B)に示されるように、キャビン13の下にぶら下がった状態となる。その状態で飛翔システム1の高度がさらに下がり、錘13164及び傘体13163が海水面に達すると、錘13164の重さにより傘体13163が海水中に没し、索体13161及び索体13162により傘体13163に加えられる水平方向の力により傘体13163が海水(流体の一例)の力を受けて拡がる。
図5(C)は、海水中で傘体13163が開いた状態を示した図である。
【0068】
海水中で傘体13163が拡がると、傘体13163は海水を捉え、傘体13163に生じる水平方向の抵抗が増加する。その結果、キャビン13が索体13162及び索体13161から前進を妨げる力を受け、キャビン13の水平方向の速度が減速される。その後、キャビン13が海水面上に着水する。
図5(D)はキャビン13が着水した状態を示した図である。
【0069】
装置ボックス1318(
図4)は、キャビン本体1300の内部の各種の物理量等を計測する計測装置を収容する容器である。装置ボックス1306に収容される計測装置としては、例えば、気圧計、温度計、紫外線量計、宇宙線量計、湿度計、酸素濃度計、二酸化炭素濃度計等が挙げられるが、これらに限られない。
【0070】
弁開閉装置1322は、開閉弁1321を開閉する。
【0071】
コントローラ1319(制御装置の一例)は、キャビン13が備える各種装置を制御すると共に、キャビン13が備える各種装置とキャビン13の乗員とのマンマシンインタフェースの役割を果たす装置である。コントローラ1319は、アプリケーションプログラムに従い動作するプロセッサを備えたコンピュータにより実現されてもよい。
【0072】
コントローラ1319が行う処理としては、例えば以下があるが、これらに限られない。
(1)装置ボックス1318内の二酸化炭素濃度計の測定結果に基づき、二酸化炭素吸収装置1315の運転を制御し、キャビン13内の二酸化炭素濃度が閾値以上に上昇しないようにする処理。
(2)装置ボックス1318内の酸素濃度計の測定結果に基づき、ボンベ開閉装置1309の動作を制御し、キャビン13内の酸素濃度が閾値以下に下降しないようにする処理。
(3)装置ボックス1318内の気圧計の測定結果が異常な気圧の低下を示す場合、音、表示等により通知を行う処理。
(4)装置ボックス1318内の紫外線量計の測定結果が閾値以上の紫外線量を示す場合、音、表示等により通知を行う処理。
(5)乗員の操作に応じて、撮影装置1303に対し撮影の開始及び停止を指示し、撮影装置1303が撮影動作中は、撮影装置1303が撮影した画像を表す画像データを撮影装置1303から受信し記憶する処理。
(6)装置ボックス1306内のGNSSユニットの計測結果又は装置ボックス1306の気圧計の計測結果に基づきキャビン13の高度を算出し、算出した高度が閾値に達した場合、音、表示等により通知を行う処理。
(7)装置ボックス1306内のGNSSユニットの計測結果又は装置ボックス1306の気圧計の計測結果に基づきキャビン13の高度を算出し、算出した高度が閾値に達した場合、アンカーパラシュート放出装置1317に対しアンカーパラシュート1316の放出の指示を行う処理。
(8)乗員の操作に応じて、ガス排出装置に対しガス気球11内の軽量ガスの排出の指示を行う処理。
(9)乗員の操作に応じて、バラスト排出装置1311に対しバラストタンク1310内のバラストの排出の指示を行う処理。
(10)乗員が高度を指定した場合に、装置ボックス1306内のGNSSユニットの計測結果又は装置ボックス1306の気圧計の計測結果に基づきキャビン13の高度を算出し、算出した高度が乗員の指定した高度に近づくように、ガス排出装置に対する軽量ガスの排出の指示、又は、バラスト排出装置1311に対するバラストの排出の指示を、フィードバック制御により行う処理。
(11)装置ボックス1306内又は装置ボックス1318内の各種計測装置の計測結果を記憶する処理。
(12)装置ボックス1318内の気圧計の測定結果が所定の閾値以上の気圧を示す場合、弁開閉装置1322に対し開閉弁1321の開放を指示し、その後、装置ボックス1318内の気圧計の測定結果が所定の閾値以下の気圧を示すようになった場合、弁開閉装置1322に対し開閉弁1321の閉鎖を指示する処理。
【0073】
なお、上記の(1)において、コントローラ1319は二酸化炭素濃度計の計測結果に基づき二酸化炭素吸収装置の運転を制御する制御装置の役割を果たす。
【0074】
また、上記の(2)において、コントローラ1319は酸素濃度計の計測結果に基づきボンベ開閉装置の動作を制御する制御装置の役割を果たす。
【0075】
また、上記の(6)(7)(10)において、コントローラ1319はキャビンの本体の高度を特定する高度特定装置の役割を果たす。
【0076】
また、上記の(10)において、コントローラ1319は、高度特定装置により特定される高度が指定された高度より低い場合にバラスト排出装置にバラストの排出を行わせ、高度特定装置により特定される高度が指定された高度より高い場合にガス排出装置に軽量ガスの排出を行わせる制御装置の役割を果たす。
【0077】
また、(11)の処理によりコントローラ1319が備える記憶装置に記憶された計測結果の一部は、乗員が受けた健康上の負荷の把握等に用いられる。例えば、装置ボックス1318内の宇宙線量計の計測結果は、乗員が被爆した宇宙線の量を示す。従って、コントローラ1319が備える記憶装置に記憶された宇宙線量計の計測結果は、乗員の宇宙線の被曝量の管理に用いられる。
【0078】
コントローラ1319は、装置ボックス1306に収容されている通信装置を介して、無線により地球上の通信装置と通信可能である。従って、コントローラ1319は、地球上の通信装置から無線送信されてくる指示に従い、上記の処理の少なくとも一部(例えば、(8)〜(10)の飛翔システム1の高度を調整する処理)を行うこともできる。
【0079】
また、コントローラ1319が装置ボックス1306又は装置ボックス1318に収容されている各種計測装置から取得した計測結果、それらの計測結果に基づき判定したキャビン13の状態等に関する情報等は、装置ボックス1306に収容されている通信装置を介して、地球上の通信装置に送信される。従って、地球上の人員は、飛翔中の飛翔システム1の状態等をリアルタイムで知ることができる。
【0080】
既述のように、ガス気球11には排気口が設けられ、排気口を開くことによりガス気球11内の軽量ガスの排出が行われる。以下に、軽量ガスの排出を行うための仕組みについて説明する。
図6は、ガス気球11内の軽量ガスを排出するための仕組みを示した図である。
【0081】
まず、ガス気球11の天頂付近に排気口111が設けられている。排気口111には、閉まる方向に付勢された蓋112(キャビンの本体の外部に配置され、乗員に操作される操作子の動きと連動して動く被操作部の一例)が取り付けられている。蓋112は、ガス気球11の内側に開くように設けられている。蓋112の近くには、蓋112を開閉するガス排出装置113が配置されている。ガス排出装置113は、コントローラ1319からの指示に従い蓋112の開閉を行い、ガス気球11の球皮から軽量ガスを排出する。
【0082】
蓋112は、ガス排出装置113の故障等に備えて、キャビン13内の乗員の手動操作によっても開閉可能となっている。そのため、蓋112には操作索14の一方の端部が連結されている。操作索14は、ガス気球11の下方に配置された操作索用栓114と、キャビン13の天井(又は天井付近の側面)に配置された操作索用栓1307を通って、他方の端部がキャビン13内に達するように配置されている。なお、操作索14のキャビン13内の端部は、キャビンの本体の内部に配置され、乗員に操作されて動く操作子の一例である。
【0083】
操作索用栓114は、ガス気球11を気密に保ちながら操作索14の移動を可能とする。また、操作索用栓1307は、キャビン13を気密に保ちながら操作索14の移動を可能とする。
図7は、操作索用栓114及び操作索用栓1307(以下、これらを操作索用栓31と総称する)の構成の一例を示した図である。
【0084】
操作索用栓31は、ガス気球11の球皮又はキャビン13の積層体21を貫くように取り付けられた円柱形状の中空部を有する部材311と、部材311の内部に配置された円柱形状の部材312と、部材311の内部に配置されたバネ313と、部材312の円柱形状の2つの底面のうちバネ313と接しない側の底面に取り付けられたドーナツ形状の封止材314を備える。
【0085】
部材312には、円柱形状の軸方向に貫通する孔が設けられており、この孔に操作索14が通された状態で、部材312と操作索14が接着剤等により固定されている。部材312の孔と操作索14との隙間は接着剤等により気密に封止されている。
【0086】
上述した操作索14、操作索用栓114、及び、操作索用栓31は、ガス気球11の排出口を塞ぐ蓋を開閉する仕組みである排気口開閉機構を構成する。
【0087】
図7(A)は、操作索14が引かれていない状態を示している。操作索14が引かれていない状態においては、部材312はバネ313により封止材314を挟んで部材311に対し押し付けられている。そのため、ガス気球11又はキャビン13の気密が保たれる。
【0088】
図7(B)は、操作索14が引かれた状態を示している。操作索14が引かれると、部材312はバネ313を押しつぶすように下方に移動する。その際、部材311と部材312の隙間は潤滑油により封止されているため、ガス気球11又はキャビン13の気密が保たれる。仮に、部材311と部材312の隙間の潤滑油が不足して、その隙間から気体が漏れ出ても、その流量は微量であり、操作索14が引かれる時間は通常、短時間であるため、実質的な影響はない。
【0089】
上述した飛翔システム1は本発明の技術的思想の範囲内で様々に変形されてよい。以下に変形の例を示す。
【0090】
(1)図に示した飛翔システム1の構成部の形状、大きさ、配置等は一例であって、それらは様々に変更されてよい。
【0091】
例えば、
図1に示した飛翔システム1においては、ガス気球11の球皮の外側から下方に垂れ下がる複数の吊索12が各々、キャビン13の異なる位置に連結される場合が示されているが、例えば、これらの吊索12のうち2本以上が下方で束ねられてキャビン13に連結されてもよい。また、複数の吊索12が1本の別の吊索に連結されて、その1本の吊索を介してキャビン13に連結されてもよい。
【0092】
また、
図1に示した飛翔システム1が備えるガス気球11の個数は1つであるが、飛翔システム1が複数のガス気球11を備えてもよい。
【0093】
また、例えば、
図2に示したキャビン13は、全体として概ね直方体の形状であるが、キャビン13の形状は様々に変更されてよい。
図8は、直方体ではない形状のキャビン13の一例を示した図である。
図8に例示のキャビン13は、円筒形状のキャビン本体1300と、キャビン本体1300の2つの開口面の各々を塞ぐように配置された2つの窓1320を備える。また、キャビン本体の側面内には、キャビン本体と同様に湾曲したハッチ1301が設けられている。このように、キャビン本体、ハッチ、窓等の、キャビン13の形状を維持する役割を果たす構成部が、球の全体又は一部、もしくは、円筒の全体又は一部の形状となるように構成されると、必要な強度を軽量に実現でき望ましい。
【0094】
また、ハッチ1301や窓1320の数は、各々、1つであってもよいし、2以上であってもよい。
【0095】
また、
図3に示した積層体21を構成する繊維強化プラスチック層214に代えて、繊維強化されていないプラスチック、軽金属(アルミニウム、ジュラルミン、マグネシウム合金等)等の層が採用されてもよい。
【0096】
また、座席1312の各々に1度に着座できる乗員の数は1名であっても、複数名であってもよい。また、座席1312は乗員をキャビン本体に固定する固定機構の一例であって、他の種類の固定機構が採用されてもよい。例えば、座席1312に代えて、例えば床の上等に寝た状態の乗員をベルト等で固定する固定機構が採用されてもよい。また、乗員を固定する部材はベルトに限られず、緩衝材で覆われたロックバー等が用いられてもよい。
【0097】
(2)上述した実施形態において、キャビン本体1300は積層体21により箱形状に構成されているものとしたが、キャビン本体1300が他の素材等により構成されてもよい。例えば、キャビン本体1300が、積層体21と、積層体21を補強するフレームで構成されてもよい。その場合、フレームは、例えばアルミ等の軽量な素材で構成されることが望ましい。また、キャビン本体1300の少なくとも一部が、積層体21に代えて、フレームにより形状が保たれるシート状の素材により構成されてもよい。
【0098】
(3)上述した実施形態において、キャビン13内に収容される構成部等の荷重は、主に容器形状のキャビン本体1300により支持される。これに代えて、キャビン13が、吊索12を介してガス気球11により吊られる1本以上の支柱と、それらの支柱に取り付けられ、支柱の延伸方向に垂直な面の方向に拡がる板状体とを備え、キャビン本体1300が支柱に取り付けられている構成が採用されてもよい。この場合、キャビン本体1300は、支柱に取り付けられた壁体により気密な収容空間を形成する。
【0099】
図9は、そのような変形例に係るキャビン13の構成の例を模式的に示した図である。
図9に例示のキャビン13は、吊索12に連結され吊索12を介してガス気球11に吊られる支柱1323と、支柱1323に取り付けられ水平方向に拡がる板状体である床板1324及び棚板1325と、支柱1323に取り付けられ、床板1324及び棚板1325を収容するキャビン本体1300を備える。
図9に示した構造のキャビン13によれば、床板1324又は棚板1325の上に置かれる物(乗員を含む)の荷重がキャビン本体1300にかからない。従って、上述した実施形態に係るキャビン本体1300と比較し、この変形例に係るキャビン本体1300に要求される強度は小さい。そのため、キャビン本体1300を軽量化でき、キャビン13全体の重量も軽減できる。
【0100】
床板1324(板状体の少なくとも一部の一例)がキャビン本体1300の床を構成してもよい。
図10はそのようなキャビン13の構成の例を模式的に示した図である。
図10に例示のキャビン13においては、床板1324がキャビン本体1300と一体化されている。
【0101】
(4)上述した実施形態においては、キャビンの本体内の乗員による操作に応じてキャビンの本体外の構成部を動かす機構として、一方の端部がガス気球11の排気口111を開閉する蓋112に連結され、他方の端部がキャビンの本体内に達する操作索14が採用されている。同様の機構が、軽量ガスの排出以外の用途(バラストの排出、パラシュートの放出等)に用いられてもよい。
【0102】
(5)上述した実施形態においては、
図6に示したように、操作索14の下端は操作索用栓1307を通ってキャビン13内に達するものとした。これに代えて、操作索14の下端がキャビン13の外側に位置し、キャビン13内の乗員の操作に応じて、キャビン13外の操作索14が操作されてもよい。
【0103】
図11は、操作索14の下端がキャビン13の外側で操作される構成の排気口開閉機構の例を示した図である。
図11の排気口開閉機構においては、操作索14の下端がキャビン13の外側において磁力連結操作機構41により巻き取られ、操作索14が引かれることで、ガス気球11の排気口111が開かれる。
【0104】
図12Aは、磁力連結操作機構41の構成の一例を模式的に示した図である。この変形例において、キャビン本体1300の側壁には、外側に突起する円柱形状の凸部13001が設けられている。凸部13001の内側は中空となっており、凹部13002が形成されている。
【0105】
磁力連結操作機構41は、操作索14の巻き取り及び巻き出しを行うスプール411と、スプール411を回転させるハンドル412を備える。スプール411とハンドル412は、キャビン本体1300の壁体を挟んで磁力により連結される。ハンドル412は、キャビンの本体の内部に移動可能に配置される第1の部材の一例である。スプール411は、キャビンの本体の外部に配置され、キャビンの本体の壁体を挟んで第1の部材と磁力により連結され、第1の部材の移動と連動して移動する第2の部材の一例である。
【0106】
スプール411は、凸部13001の外側を覆うように、
図12Aの左右方向の軸周りに回転可能に取り付けられている。スプール411は、凸部13001の円柱形状の側面に近接する部分の、凸部13001を挟んで互いに対向する位置に、磁石4111及び磁石4112を有している。磁石4111と磁石4112は、凸部13001に対向する側の極性が異なっている。以下、磁石4111は凸部13001に対向する側の極性がN極であり、磁石4112は凸部13001に対向する側の極性がS極であるものとする。
【0107】
ハンドル412は、凹部13002に一部が収容された状態で
図12Aの左右方向の軸周りに回転可能に取り付けられたL字形状のシャフト4121と、シャフト4121の凹部13002に収容されている側の端部に取り付けられた円盤形状の磁石4122と、シャフト4121の凹部13002に収容されていない側の端部に取り付けられたノブ4123を備える。磁石4122のN極とS極は、円盤形状の直径方向に並ぶように配置されている。ノブ4123は、シャフト4121に対し
図12Aの左右方向の軸周りに回転可能に取り付けられている。
【0108】
磁石4122のS極は、キャビン本体1300の壁を挟んで磁石4111と磁力により引き合う。また、磁石4122のN極は、キャビン本体1300の壁を挟んで磁石4112と磁力により引き合う。そのため、キャビン13内の乗員がノブ4123を摘まんでシャフト4121を回転させると、磁石4122の回転に伴い、キャビン13の外側でスプール411が回転する。これにより、操作索14の巻き取り及び巻き出しが行われる。
【0109】
上記の構成の排気口開閉機構によれば、キャビン本体1300に孔をあける必要がなく、キャビン13内を気密及び水密に保ちやすい。
【0110】
上記のスプール411(第1の部材の一例)とハンドル412(第2の部材の一例)のように、キャビン本体1300の壁体を挟んで磁力により連結され、キャビン本体1300の内部で移動する第1の部材と、第1の部材の移動と連動して移動する第2の部材とを備える機構は、ガス気球の排気口の開閉以外の目的に用いられてもよい。
【0111】
例えば、磁力連結操作機構41と同様の機構が、バラストタンクの排出口の開閉、パラシュート(アンカーパラシュート1316、ガス気球11の破損時等に用いられる非常用パラシュート等)の放出、キャビン本体1300の外部に配置されている各種装置(アンテナ、センサ、撮影装置等)の位置又は姿勢の変更、地球上に落下後にユーザによる発見を促すための物体(染料等)の放出等に用いられてもよい。
【0112】
また、上述した磁力連結操作機構41が備える第1の部材及び第2の部材は、軸周りに回転移動するが、第1の部材及び第2の部材の移動の方向は回転方向に限られない。例えば、第1の部材及び第2の部材が直線方向に移動してもよい。
【0113】
図12Bは、直線方向に移動する第1の部材及び第2の部材を備える磁力連結操作機構51の構成を示した図である。磁力連結操作機構51は、キャビン本体1300の内側に設けられたボックス511と、ボックス511内に配置された磁石512(第1の部材の一例)と、磁石512と連結されたノブ513を備える。ノブ513はボックス511に設けられたスリットを介してボックス511の内外に通じており、一方の端部は磁石512に連結され、他方の端部はボックス511の外側に露出している。乗員は、ノブ513を
図12Bの上下方向に移動させることができる。この乗員の操作により、磁石512が
図12Bの上下方向に移動する。
【0114】
また、磁力連結操作機構51は、キャビン本体1300の外側に設けられたボックス514と、ボックス514内に配置された磁石515(第2の部材の一例)と、磁石515と連結された操作索516を備える。操作索516はボックス514に設けられた孔を介してボックス514の内外に通じており、一方の端部は磁石515に連結され、他方の端部は操作対象の部材に連結されている。
【0115】
磁石512と磁石515はキャビン本体1300の壁体を挟んで磁力により連結されており、ノブ513に対する乗員の操作に応じて磁石512が移動すると、その移動に連動して、磁石515が移動する。そして、磁石515の移動に伴い、操作索516が移動する。例えば、
図12Bにおいて、乗員がノブ513を下方に移動すると、操作索516が下方に引かれることになる。
【0116】
磁力連結操作機構51が備える磁石512及び磁石515のいずれか一方が、鉄等の磁石以外の磁性体で代替されてもよい。
【0117】
図12A及び
図12Bに示した磁力連結操作機構は、キャビンの本体の内部に配置される第1の部材の移動と連動して、キャビンの本体の外部に配置される第2の部材が移動する構成を備える。これに代えて、第1の部材の移動に伴い、第1の部材と第2の部材の磁力による連結が解かれる構成が採用されてもよい。
【0118】
図12Cに示す磁力連結操作機構61は、キャビン本体1300の内側に設けられたボックス611と、ボックス611内に配置された磁石612(第1の部材の一例)と、磁石612と連結されたノブ613を備える。ノブ613はボックス611に設けられた孔を介してボックス611の内外に通じており、一方の端部は磁石612に連結され、他方の端部はボックス611の外側に露出している。乗員は、ノブ613を
図12Cの左右方向に移動させることができる。この乗員の操作により、磁石612が
図12Cの左右方向に移動する。
【0119】
また、磁力連結操作機構61は、キャビン本体1300の外側に配置された磁石614(第2の部材の一例)と、磁石614と連結された索体615を備える。索体615の磁石614に連結されている側とは異なる側の端部には、キャビン本体1300から分離させたい対象物(例えば、バラスト、パラシュート等。以下、「被分離物」という)が連結されている。なお、被分離物がキャビン本体1300から分離された後も、例えば、索体615とは異なる索体により被分離物と飛翔システムとの連結が維持されてもよい。
【0120】
飛翔システムが地上から飛翔する際、ノブ613は右側に押された状態で磁石612がキャビン本体1300の内側面に接し、キャビン本体1300の外側面に接している磁石614との間で磁力による連結が保たれている(
図12C(a))。そして、飛翔システムが飛翔中、または、飛翔を終えて地球に帰還した後、乗員がノブ613を左方向に引くと、磁石612と磁石614の距離が拡がり、磁力による磁石612と磁石614の連結が解かれる。その結果、被分離物がキャビン本体1300から分離される(
図12C(b))。
【0121】
磁力連結操作機構61が備える磁石612及び磁石614のいずれか一方が、鉄等の磁石以外の磁性体で代替されてもよい。
【0122】
上述した磁力連結操作機構41、51及び61が備える磁石は永久磁石と電磁石のいずれであってもよい。
【0123】
上述した磁力連結操作機構61は、第1の部材の移動に伴い、第1の部材と第2の部材の連結が解かれる。これに代えて、第1の部材又は第2の部材が電磁石であり、電磁石の磁力低下に伴い第1の部材と第2の部材の連結が解かれる構成が採用されてもよい。
【0124】
図12Dに示す磁力連結操作機構71は、キャビン本体1300の内側に設けられた磁石711(第1の部材の一例)と、キャビン本体1300の外側に配置された磁石712(第2の部材の一例)と、磁石712と連結された索体713を備える。例えば、磁石711は電磁石であり、磁石712は永久磁石である。
【0125】
索体713の磁石712に連結されている側とは異なる側の端部には、キャビン本体1300から分離させたい被分離物が連結されている。なお、被分離物がキャビン本体1300から分離された後も、例えば、索体713とは異なる索体により被分離物と飛翔システムとの連結が維持されてもよい。
【0126】
飛翔システムが地上から飛翔する際、電力供給装置(図示略)から磁石711に所定量の電力の供給が維持され、磁石711と磁石712との間で磁力による連結が保たれている(
図12D(a))。そして、飛翔システムが飛翔中、または、飛翔を終えて地球に帰還した後、乗員が、電力供給装置に対し操作を行い、磁石711に供給される電力量を低下させると、磁石711が生じる磁力が低下する。これに伴い、磁石711と磁石712の連結が解かれる。その結果、被分離物がキャビン本体1300から分離される(
図12D(b))。
【0127】
磁石712が、鉄等の磁石以外の磁性体で代替されてもよい。
【0128】
上述した磁力連結操作機構41、51、61、71が備える第1の部材に対する操作は、乗員より行われるものとしたが、これに代えて、ロボット等の装置が第1の部材に対する操作を行ってもよい。また、第1の部材に対する操作が装置により行われる場合、その装置を地球上から無線により遠隔操作可能としてもよい。また、第1の部材に対する操作が装置により行われる場合、所定の条件が満たされたとき(例えば、所定の時間が経過したとき、キャビン13が所定の高度に達したとき、等)に、第1の部材に対する装置による操作が人手によらず自動的に行われてもよい。
【0129】
(6)上述した実施形態において、積層体21を構成する紫外線遮断層211は他の層から独立した層であるものとしたが、例えば、繊維強化プラスチック層214等が紫外線遮断層211を兼ねてもよい。例えば、繊維強化プラスチック層214のプラスチックに紫外線を遮断する材料を混ぜて固まらせることで、繊維強化プラスチック層214に紫外線遮断層211の役割を持たせてもよい。
【0130】
(7)キャビン本体1300が、周囲より厚い帯状の領域である強化部分を有する壁体により気密な収容空間を形成するように構成されてもよい。
【0131】
以下に、本変形例に係るキャビン本体1300(以下、単に「キャビン本体1300」という)の構成を説明する。
図13は、キャビン本体1300を斜め上から見た外観図である。
図14は、キャビン本体1300を真上から見た外観図である。
図15は、キャビン本体1300を側方から見た外観図である。
図16は、キャビン本体1300を真下から見た外観図である。
【0132】
キャビン本体1300は、大きく、本体部13011と、本体部13011に開閉可能に取り付けられている扉部13012と、本体部13011の側面に設けられた窓部13013を備える。本体部13011と扉部13012は各々、一体に成形された繊維強化プラスチックでできている。なお、繊維強化プラスチックの種別は、ガラス繊維強化プラスチック、炭素繊維強化プラスチック、それらの複合体等のいずれであってもよい。また、窓部13013は、ポリカーボネート等のプラスチックでできており、外部からの光を内部に透過する。
【0133】
本体部13011は中空であり、壁体により乗員や物を収容する収容空間を形成する。なお、本体部13011の壁体には、扉部13012が取り付けられる部分に開口部が設けられている。この開口部が閉じられた状態の扉部13012により塞がれることで、本体部13011内の空間が気密に保たれる。
【0134】
本体部13011の壁体には、周囲より厚い帯状の領域である強化部分が設けられている。
図17は、本体部13011における強化部分130011の領域の位置を例示した図である。
図18は、本体部13011を水平面で切断した断面図(
図15に示すA−A断面矢視図)である。
図19は、本体部13011を鉛直面で切断した断面図(
図15に示すB−B断面矢視図)である。
【0135】
強化部分130011には、本体部13011の内外に配置された物(乗員を含む)の荷重がかけられる。また、強化部分130011には、吊索12が連結される。すなわち、強化部分130011は、本体部13011のフレームの役割を果たす。
【0136】
強化部分130011の厚さは、本体部13011にかかる荷重に耐え得る強度を持つ、という条件下で可能な限り薄い厚さである。本体部13011の強化部分130011以外の部分の厚さは、本体部13011の内外圧力差に耐え得る強度を持つ、という条件下で可能な限り薄い厚さである。
【0137】
本変形例に係るキャビン本体1300を備えるキャビン13によれば、例えば、本体部13011の壁体の厚さが均一である場合と比較し、キャビン13を軽量化できる。
【0138】
上述した本変形例に係る本体部13011は繊維強化プラスチックを成形したものであるが、本体部13011の素材は繊維強化プラスチックに限られない。例えば、繊維強化されていないプラスチックや、アルミ等の軽金属等が本体部13011の素材として用いられてもよい。
【0139】
また、上述した本変形例に係る本体部13011は繊維強化プラスチックを一体に成形したものである。すなわち、強化部分130011は、本体の壁体の強化部分130011に隣接する部分と一体に成形されている。これに代えて、各々が別体として成形された本体の壁体と強化部分130011とを、接着、溶着、溶接、ネジ止め、係合機構による連結等により連結することにより本体部13011が製造されてもよい。
【0140】
また、本体部13011の成形方法としては、素材に応じて様々なものが採用可能である。例えば、素材が繊維強化プラスチックであれば、ハンドレイアップ法、スプレーアップ法、SMCプレス法、RTM法等のいずれが用いられてもよい。また、素材が繊維強化でないプラスチックであれば、例えば、射出成形法や、3Dプリンタによる成形法が採用され得る。また、素材がアルミ等の軽金属であれば、例えば、切削加工法が採用され得る。
【0141】
上述した強化部分130011は本体部13011の内側に隆起しているが、強化部分130011は本体部13011の外側に隆起してもよいし、本体部13011の内側及び外側の両方に隆起してもよい。
【解決手段】飛翔システム1は、ガス気球11と、ガス気球11から下方に垂れ下がる複数の吊索12と、複数の吊索12の下端に取り付けられるキャビン13を備える。キャビン13の本体は、キャビン13を水密及び気密に保つと共にキャビン13の形状を保つ役割を果たす繊維強化プラスチック層と、キャビン13内へ透過する紫外線量を低減する紫外線遮断層と、キャビン13の内側から外側に放熱される熱の量を低減する断熱層と、繊維強化プラスチック層に亀裂又は孔が生じた場合にその亀裂又は孔に入り込み塞ぐ粘性層を含む積層体の壁で構成されている。キャビン13の本体の側壁には、互いに対向する位置に配置された2つ1組のハッチが1組以上、設けられている。