特許第6932438号(P6932438)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6932438
(24)【登録日】2021年8月20日
(45)【発行日】2021年9月8日
(54)【発明の名称】押しボタン装置
(51)【国際特許分類】
   H01H 13/14 20060101AFI20210826BHJP
   H01H 13/02 20060101ALN20210826BHJP
【FI】
   H01H13/14 A
   !H01H13/02 A
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-132461(P2017-132461)
(22)【出願日】2017年7月6日
(65)【公開番号】特開2018-92891(P2018-92891A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2020年6月17日
(31)【優先権主張番号】特願2016-232133(P2016-232133)
(32)【優先日】2016年11月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 美里
(72)【発明者】
【氏名】兒玉 三四郎
【審査官】 片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−067426(JP,U)
【文献】 特開2001−308993(JP,A)
【文献】 特許第5295898(JP,B2)
【文献】 特開2014−194848(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 13/14
H01H 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押下方式により操作されるスイッチと、押し込み操作可能な略二等辺三角形状の押しボタンと、前記押しボタンが嵌め込まれて搭載される略二等辺三角形状の開口部を有したカバー部材と、前記押しボタンが押し込まれることで撓んで前記スイッチを押下するレバー部材と、前記カバー部材から前記押しボタンの裏面側に張り出し前記レバー部材が挿通される開口が形成された中板とを備えた押しボタン装置であって、
前記押しボタンは、前記中板が無い箇所において前記カバー部材に引っ掛けられる爪部を当該押しボタンの長辺のみに有し、当該押しボタンの他の二辺には前記爪部を有さず、
前記押しボタンと前記中板との間に空隙が形成され、
前記押しボタンは、当該押しボタンのうち前記爪部から所定方向に所定距離以上離れた箇所が押し込まれた場合に前記爪部を支点として回動して前記スイッチを操作し、当該押しボタンのうち前記爪部が押し込まれた場合に前記爪部による引っ掛けが解除されるように前記爪部ごと押し込まれて前記スイッチを操作する支点可動構造となっている
ことを特徴とする押しボタン装置。
【請求項2】
前記押しボタンは、当該押しボタンの前記長辺に一列に並ぶ複数の爪部を有し、前記複数の爪部のうち特定の爪部が押し込まれた場合に、複数の爪部のうち残りの爪部の少なくとも1つを支点とし、前記特定の爪部が回動するように押し込まれて前記スイッチを操作する
ことを特徴とする請求項1に記載の押しボタン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押しボタン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、押しボタン装置を搭載したガス警報器が提案されている。この警報器における押しボタン装置は、押し込み操作が行われる押しボタンと、押しボタンを支持する第1レバーと、スイッチとを備え、第1レバーが警報器の上ケースに片持ち支持されている。この押しボタン装置では、スイッチが第1レバーの自由端側に配置されており、ユーザが押しボタンを押し込み操作すると、押しボタンからの押圧力で第1レバーの自由端が撓んでスイッチを押し、これによりスイッチがオン・オフされるように構成されている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、上記押しボタン装置では、押しボタンにおける第1レバーの自由端側を押さないとスイッチがオンし難い場合があり、操作性の点で改善する余地が残されていた。
【0004】
そこで、略長方形状の押しボタンと、押しボタンの中央側を支持する支持部材と、支持部材に対向して設けられたスイッチとを備えた押しボタン装置が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5295898号公報
【特許文献2】特開2014−194848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、特許文献2に記載の押しボタン装置は、同文献において押しボタンのどこを押してもスイッチを操作し易く操作性に優れると述べているが、いまだ改善の余地を残すものであった。
【0007】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その発明の目的とするところは、よりスイッチ操作をし易く操作性を向上させることが可能な押しボタン装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の押しボタン装置は、押下方式により操作されるスイッチと、押し込み操作可能な略二等辺三角形状の押しボタンと、前記押しボタンが嵌め込まれて搭載される略二等辺三角形状の開口部を有したカバー部材と、前記押しボタンが押し込まれることで撓んで前記スイッチを押下するレバー部材と、前記カバー部材から前記押しボタンの裏面側に張り出し前記レバー部材が挿通される開口が形成された中板とを備えた押しボタン装置であって、前記押しボタンは、前記中板が無い箇所において前記カバー部材に引っ掛けられる爪部を当該押しボタンの長辺のみに有し、当該押しボタンの他の二辺には前記爪部を有さず、前記押しボタンと前記中板との間に空隙が形成され、前記押しボタンは、当該押しボタンのうち前記爪部から所定方向に所定距離以上離れた箇所が押し込まれた場合に前記爪部を支点として回動して前記スイッチを操作し、当該押しボタンのうち前記爪部が押し込まれた場合に前記爪部による引っ掛けが解除されるように前記爪部ごと押し込まれて前記スイッチを操作する支点可動構造となっていることを特徴とする。
【0009】
この押しボタン装置によれば、押しボタンは、支点可動構造となっているため、爪部上及び爪部から所定方向に所定距離以上離れた箇所の双方において同様の操作性を得ることができる。また、双方において同様の操作性を得ることができることから、その中間部においても同様の操作性を得ることができる。よって、爪部上及び所定方向に所定距離以上離れた箇所まで連続して一定以上の操作性を得ることができ、よりスイッチ操作をし易く操作性を向上させることができる。
【0010】
また、本発明の押しボタン装置において、前記押しボタンは、当該押しボタンの前記長辺に一列に並ぶ複数の爪部を有し、前記複数の爪部のうち特定の爪部が押し込まれた場合に、複数の爪部のうち残りの爪部の少なくとも1つを支点とし、前記特定の爪部が回動するように押し込まれて前記スイッチを操作することが好ましい。
【0011】
この押しボタン装置によれば、押しボタンは、当該押しボタン長辺に一列に並ぶ複数の爪部を有し、特定の爪部上が押し込まれた場合に残りの爪部の少なくとも一つを支点とし特定の爪部が回動するように押し込まれてスイッチを操作する。このため、複数の爪部が並ぶ方向においても一定以上の操作性を得ることができ、より一層スイッチ操作をし易く操作性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、よりスイッチ操作をし易く操作性を向上させることが可能な押しボタン装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係る押しボタン装置を有するガス警報器の分解斜視図である。
図2図1に示した開口部の拡大正面図である。
図3図1に示した押しボタンの斜視図である。
図4図3に示した押しボタンを開口部に装着したときの断面図であり、図3に示した押しボタンのA−Aラインに相当する断面を示している。
図5図3に示した押しボタンを開口部に装着したときの断面図であり、図3に示した押しボタンのB−Bラインに相当する断面を示している。
図6図3に示した押しボタンを開口部に装着したときの断面図であり、図3に示した押しボタンのC−Cラインに相当する断面を示している。
図7】押しボタンの爪部の対向側を押し込んだときの様子を示す断面図である。
図8】押しボタンの爪部側を押し込んだときの様子を示す断面図である。
図9図3に示した押しボタンとスイッチとの関係を模式的に示す概略図である。
図10図3に示した押しボタンとスイッチとの関係を模式的に示す概略図であり、第1爪部付近が押下されたときの状態を示している。
図11】第2実施形態に係る押しボタン装置を含むガス警報器の正面図である。
図12】第2実施形態に係る開口部の拡大正面図であって、押しボタンを取り外したときの様子を示している。
図13図12に示したD−D断面図である。
図14図12に示したE−E断面図である。
図15】第2実施形態に係る押しボタンの爪部のうちの一方側の爪部上を押し込んだときの様子を示す断面図である。
図16】第2実施形態に係る押しボタンの爪部のうちの中間部を押し込んだときの様子を示す断面図である。
図17】第3実施形態に係る押しボタン装置を含むガス警報器の正面図である。
図18】第3実施形態に係る開口部の拡大正面図である。
図19図18に示したF−F断面図である。
図20図17に示した押しボタンの斜視図である。
図21図18に示したG−G断面図である。
図22】第3実施形態に係る押しボタンの爪部のうちの一方側の爪部上を押し込んだときの様子を示す断面図である。
図23】第3実施形態に係る押しボタンの爪部のうちの中間部を押し込んだときの様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾点が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0019】
さらに、以下において押しボタン装置がガス警報器に適用される例を説明するが、これに限らず、押しボタン装置は火災警報器や人感警報器などの他の警報器に適用されてもよいし、警報器に限らず他の装置に適用されてもよい。
【0020】
図1は、本発明の第1実施形態に係る押しボタン装置を有するガス警報器の分解斜視図である。図1に示すように、ガス警報器は、押しボタン装置1を有するものであって、上ケース(カバー部材)2a及び下ケース2bからなる筐体2と、筐体2内に収納される配線板WBと、上ケース2aに対して取り付けられる押しボタン3及び正面カバー4とを備えている。
【0021】
配線板WBには、押下方式により操作されるスイッチ6やLED8の他、スピーカ(図示せず)やガスセンサ9が搭載されている。また、上ケース2aのうちスイッチ6及びLED8に対応する箇所には略二等辺三角形に開口する開口部10が形成されており、この開口部10に平面視して略二等辺三角形状の押しボタン3が嵌め込まれて搭載される構成となっている。
【0022】
押しボタン3は配線板WB上のスイッチ6を操作するものであり、ユーザが押しボタン3を押し込むことでスイッチ6を押下操作することができる。特に、本実施形態に係る押しボタン3はLED8からの光を拡散させるレンズ部材としての機能も備えている。
【0023】
正面カバー4は上ケース2aの下部において取り付けられる蓋部材である。ガス警報器は、正面カバー4が取り外されることにより外部出力等を行うための端子台が露出する構成となっている。
【0024】
図2は、図1に示した開口部10の拡大正面図である。なお、図2において破線は押しボタン3を示している。図2に示すように、開口部10には、押しボタン3が押し込まれることで撓んでスイッチ6を押下するレバー部材12と、第1及び第2引っ掛け部14a,14bとが形成されている。レバー部材12は、上ケース2aと一体に形成されて押しボタン3をスイッチ6の搭載側(ガス警報器における後方側)から支持するものである。
【0025】
より詳細に説明すると、略二等辺三角形状の開口部10には五角形状に開口する中板16が形成されており、レバー部材12は、五角形状の開口の1辺すなわちガス警報器の上辺側からガス警報器の下方向に延びる基部12aと、基部12aの先端から斜め方向(二等辺三角形状の開口部10のうち長辺の延びる方向)に延びる先端部12bとから構成されている。
【0026】
スイッチ6は、レバー部材12の先端部12bよりもガス警報器の後方側(配線板WB側)に位置している。なお、LED8は、レバー部材12の基部12aのうちガス警報器の左右方向にずれた位置にそれぞれ位置している。
【0027】
第1及び第2引っ掛け部14a,14bは、中板16のうち、略二等辺三角形状の開口部10の鋭角部分にそれぞれ形成される開口である。第1及び第2引っ掛け部14a,14bは、二等辺三角形の長辺方向に延びる略長方形状の開口となっている。
【0028】
図3は、図1に示した押しボタンの斜視図である。図3に示すように、押しボタン3は、略二等辺三角形状の天板3aと、天板3aから配線板WB側に延びる側壁3bと、略二等辺三角形状の長辺部分(一側の一例)における側壁3bの先端に設けられた2つの爪部(複数の爪部の一例)3c,3dとを備えている。2つの爪部3c,3dは同一辺に設けられることで一列に並んで設けられており、それぞれが偏平鉤型構造となっている。
【0029】
2つの爪部3c,3dは、図2に示した中板16に形成される第1及び第2引っ掛け部14a,14bに嵌り込む構造となっている。押しボタン3は、鉤型となる2つの爪部3c,3dが第1及び第2引っ掛け部14a,14bに嵌り込むことで上ケース2aに引っ掛けられる。これにより、押しボタン3の開口部10からの脱落が防止されるようになっている。
【0030】
さらに、図3に一部破線で示すように、押しボタン3の天板3aの裏面側のうち、二等辺三角形のやや長辺側には、配線板WB側に延びる棒状部材3eを有している。この棒状部材3eはレバー部材12の先端部12bのうち基部12a側(具体的には図2の符号APの箇所)に接触するようになっている。
【0031】
図4は、図3に示した押しボタン3を開口部10に装着したときの断面図であり、図3に示した押しボタン3のA−Aラインに相当する断面を示している。図4に示すように、押しボタン3はレバー部材12に支持された状態(後述の図5にて図示する)において第1爪部3cが第1引っ掛け部14aに引っ掛かった状態となっている。また、この状態において側壁3bは中板16に当接しておらず、空隙Vを有した状態となっている。
【0032】
図5及び図6は、図3に示した押しボタン3を開口部10に装着したときの断面図であり、図5図3に示した押しボタン3のB−Bラインに相当する断面を示し、図6図3に示した押しボタン3のC−Cラインに相当する断面を示している。
【0033】
図5及び図6に示すように、押しボタン3の棒状部材3eはレバー部材12に接触した状態で配線板WB側から支持されている。この状態において側壁3bは中板16に当接しておらず空隙Vを有した状態となっている。
【0034】
次に、本実施形態に係る押しボタン装置の動作を説明する。図7は、押しボタン3の爪部3c,3dの対向側を押し込んだときの様子を示す断面図である。図7に示すように、押しボタン3の爪部3c,3dから離れた爪部対向側(正面視状態で、爪部3c,3dから所定方向(ガス警報器の角側方向であって、鉤形状となる爪部3c,3dの鉤部分が突出する方向と反対方向)に所定距離以上離れた箇所の一例)を押し込んだとする。この場合、爪部3d(3c)は押し下げられることなく、爪部3d(3c)が支点Fuとなって回動する。これにより、爪部対向側が押し下げられ、棒状部材3eを通じてレバー部材12も押し下げられてスイッチ6が操作される。
【0035】
図8は、押しボタン3の爪部3c,3d側を押し込んだときの様子を示す断面図である。これに対して、図8に示すように、押しボタン3の爪部3c,3d上(正面視状態で爪部3c,3dから所定距離以内の箇所であって、二等辺三角形の長辺側)を押し込んだとする。ここで、本実施形態では側壁3bと中板16との間に空隙V(図5参照)を有することから、爪部3d(3c)が引っ掛け部14b(14a)から離間するように押し下げられることとなる。すなわち爪部3d(3c)による引っ掛けが解除されるように爪部3d(3c)ごと押し込まれることとなる。この結果、棒状部材3eを通じてレバー部材12も押し下げられてスイッチ6が操作される。
【0036】
このように、本実施形態において押しボタン3は、爪部3c,3dの対向側が押し込まれると爪部3c,3dが支点Fuとなって回動すると共に、爪部3c,3d側が押し込まれると爪部3c,3dごと押し下げられる支点可動構造となっている。
【0037】
このため、爪部3c,3d側と爪部3c,3dの対向側との双方において同様の操作性を得ることができるだけでなく、爪部3c,3d側と爪部3c,3dの対向側との中間部においても同様の操作性を得ることができる。よって、爪部3c,3dから対向側まで連続して一定以上の操作性を得ることができ、よりスイッチ操作をし易く操作性を向上させ易くする構造となっている。
【0038】
ここで、特許文献2においては長方形状の押しボタンの中央側において良好な操作性を得ることができる。しかし、この押しボタンの中央から例えば長方形の長辺側にズレた位置においては操作性が低下してしまう。
【0039】
これに対して、本実施形態では爪部3c,3dからその対向側に亘って、どの箇所においても一定以上の操作性を得ることができ、より一層操作性の向上が図られていることとなる。
【0040】
図9は、図3に示した押しボタン3とスイッチ6との関係を模式的に示す概略図である。図9に示すように、2つの爪部3c,3dは偏平方向に一列に並んでいる。また、図5及び図6に示したように、レバー部材12によって押しボタン3が配線板WB側から支持されている。また、2つの爪部3c,3dは第1及び第2引っ掛け部14a,14bに引っ掛かった状態となっている。
【0041】
図10は、図3に示した押しボタン3とスイッチ6との関係を模式的に示す概略図であり、第1爪部3c付近が押下されたときの状態を示している。図10に示すように、2つの爪部3c,3dのうち第1爪部3c(特定の爪部)の付近が押し込まれたとする。この場合、2つの爪部3c,3dのうち残りの爪部である第2爪部3dを支点Fuとし、第1爪部3cが回動するように押し込まれる。すなわち、第2爪部3dが第2引っ掛け部14bに引っ掛かったままの状態となることから第2爪部3dが支点Fuとなり、第1爪部3cが回動するように押し込まれることとなる。以上により、スイッチ6が操作される。
【0042】
なお、図示を省略するが、2つの爪部3c,3dのうち第2爪部3d(特定の爪部)の付近が押し込まれた場合も同様に、第1爪部3cが支点Fuとなり、第2爪部3dが回動するように押し込まれることとなる。
【0043】
このため、本実施形態では2つ爪部3c,3dが並ぶ方向においても一定以上の操作性を得ることができる。すなわち、第1爪部3c付近を押下しても、第2爪部3d付近を押下しても、一定以上の操作性を得ることができ、且つ、その中間部においては押しボタン3の全体が押し込まれるように動くため、爪部3c,3dが並ぶ方向において、どの箇所を操作したとしても一定以上の操作性を得ることができる。
【0044】
このようにして、第1実施形態に係る押しボタン装置1を備えるガス警報器によれば、押しボタン3は、支点可動構造となっているため、爪部3c,3d上及び爪部3c,3dから所定方向に所定距離以上離れた箇所の双方において同様の操作性を得ることができる。また、双方において同様の操作性を得ることができることから、その中間部においても同様の操作性を得ることができる。よって、爪部3c,3d上及び所定方向に所定距離以上離れた箇所まで連続して一定以上の操作性を得ることができ、よりスイッチ操作をし易く操作性を向上させることができる。
【0045】
また、押しボタン3は、その一側に一列に並ぶ2つの爪部3c,3dを有し、一方の爪部3c,3d上が押し込まれた場合に残りの爪部3c,3dを支点Fuとし一方の爪部3c,3dが回動するように押し込まれてスイッチ6を操作する。このため、2つの爪部3c,3dが並ぶ方向においても一定以上の操作性を得ることができ、より一層スイッチ操作をし易く操作性を向上させることができる。
【0046】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態に係る押しボタン装置は、第1実施形態のものと同様であるが、一部構成が異なっている。以下、第1実施形態との相違点を説明する。
【0047】
図11は、第2実施形態に係る押しボタン装置1を含むガス警報器の正面図である。図11に示すように、第2実施形態に係るガス警報器は正面視で略四角形状となっており、略四角形状のガス警報器の下部に押しボタン装置1が設けられている。すなわち、第2実施形態においてはガス警報器の下部にガス警報器と略同じ幅を有する略四角形状の開口部10(図12参照)が形成され、この開口部10に横長形状となる押しボタン3が搭載される構成となっている。
【0048】
図12は、第2実施形態に係る開口部10の拡大正面図であって、押しボタン3を取り外したときの様子を示している。また、図13は、図12に示したD−D断面図であり、図14は、図12に示したガス警報器のE−E断面図である。なお、図13及び図14においては、押しボタン3が開口部10に搭載されているときの断面を示している。
【0049】
図12図14に示すように、開口部10には、レバー部材12と第1及び第2引っ掛け部14a,14bとが形成されている。レバー部材12は、上ケース2aと一体に形成されて押しボタン3をスイッチ6の搭載側(ガス警報器における後方側)から支持するものである。
【0050】
より詳細に説明すると、略四角形状の開口部10には中板16が形成されている。中板16は中央部に長方形状の開口が形成されている。レバー部材12は、長方形状の開口内に収まるように形成され、開口のうちの上辺側からガス警報器の下方向に延びる2つの基部12aと、基部12aの先端に設けられる四角板からなる先端部12bとから構成されている。また、レバー部材12は、基部12aと先端部12bとの境界付近において、作用点となる2つの凸部12cが形成されている。2つの凸部12cは、ガス警報器の正面側に向かって突出した形状となっている。なお、中板16は、その剛性を確保するために正面視して略U字状(開放側が下向きとなるU字状)となるリブ18を備えている。
【0051】
スイッチ6は、レバー部材12の先端部12bよりもガス警報器の後方側(配線板WB側)に位置している。具体的にスイッチ6は、正面視して先端部12bの中央部かつガス警報器の下方側端部付近となるレバー部材12の裏面側に設けられている。なお、第2実施形態においてはLED8の図示を省略する。
【0052】
第1及び第2引っ掛け部14a,14bは、中板16に形成された長方形状の開口から幅方向それぞれに離間して形成される開口である。すなわち、第1及び第2引っ掛け部14a,14bは、長方形状の開口を挟んで対向して配置されている。
【0053】
第2実施形態に係る押しボタン3は、天板3aと、側壁3bと、2つの爪部(複数の爪部の一例)3c,3dとを備えている。2つの爪部3c,3dは天板3aから裏面側に向かって突出して形成されており、先端側が偏平鉤型構造となっている。
【0054】
これら2つの爪部3c,3dは、図12及び図14に示した第1及び第2引っ掛け部14a,14bに嵌り込む構造となっている。このため、2つの爪部3c,3dについても第1及び第2引っ掛け部14a,14bと同様に中板16の開口を挟んで対向して配置されることとなる。特に、2つの爪部3c,3dは鉤型となる爪部3c,3dの鉤突出方向が向かい合うようになっている。押しボタン3は、鉤型となる2つの爪部3c,3dが第1及び第2引っ掛け部14a,14bに嵌り込むことで上ケース2aに引っ掛けられる。
【0055】
さらに、押しボタン3は、開口部10への装着時において2つの凸部12c上に載置状態となる肉厚部3fを、天板3aの裏面側に有している。
【0056】
図13に示すように、押しボタン3はレバー部材12に支持された状態で2つの爪部3c,3dが第1及び第2引っ掛け部14a,14bに引っ掛かった状態となっているが、ガス警報器上方側の側壁3b1は中板16に当接しておらず、空隙Vを有した状態となっている。なお、他の方向の側壁3bについては、開口部10(上ケース2a)の外側に位置するようになっている。
【0057】
次に、本実施形態に係る押しボタン装置の動作を説明する。図15は、第2実施形態に係る押しボタン3の爪部3c,3dのうちの一方側の爪部3c上を押し込んだときの様子を示す断面図である。図15に示すように、例えば第1爪部3c上(すなわち第2爪部3dから所定方向(第2爪部3dの鉤突出方向)に所定距離以上離れた箇所)を押し込んだとする。この場合、第2爪部3dは押し下げられることなく、第2爪部3dが支点Fuとなって回動する。一方、ガス警報器上方側の側壁3b1と中板16との間に空隙V(図13参照)を有し、他の側壁3bは上ケース2aの外側に位置することから、第1爪部3cは第1引っ掛け部14aから離間するように押し下げられることとなる。
【0058】
すなわち第1爪部3cによる引っ掛けが解除されるように第1爪部3cごと押し込まれることとなる。この結果、肉厚部3fを通じてレバー部材12も押し下げられてスイッチ6が操作される。なお、図15は、第1爪部3c上が押し込まれた例を説明したが、第2爪部3d上が押し込まれた場合も同様である。すなわち、第1爪部3cが支点Fuとなり、第2爪部3dによる引っ掛けが解除されるように第2爪部3dごと押し込まれることとなる。
【0059】
このように、第2実施形態においても押しボタン3は支点可動構造となっている。このため、第1爪部3c側と第2爪部3d側との双方において同様の操作性を得ることができる。
【0060】
図16は、第2実施形態に係る押しボタン3の爪部3c,3dのうちの中間部を押し込んだときの様子を示す断面図である。図16に示すように、例えば第1及び第2爪部3c,3dの中間部(双方の爪部3c,3dから所定距離以内の箇所)を押し込んだとする。この場合、第1及び第2爪部3c,3dは支点Fuとならず、共に引っ掛け部14a,14bから離間するように押し下げられることとなる。
【0061】
すなわち双方の爪部3c,3dによる引っ掛けが解除されるように爪部3c,3dごと押し込まれることとなる。この結果、肉厚部3fを通じてレバー部材12も押し下げられてスイッチ6が操作される。よって、中間部においても同様の操作性を得ることができる。以上より、第1爪部3c上から中間部を経て第2爪部3d上まで連続して一定以上の操作性を得ることができ、よりスイッチ操作をし易く操作性を向上させる構造となっている。
【0062】
このようにして、第2実施形態に係る押しボタン装置1によれば、第1実施形態と同様に、よりスイッチ操作をし易く操作性を向上させることができる。
【0063】
さらに、第2実施形態によれば、対向して配置される複数の爪部3c,3dの一方側の爪部3c(3d)上が押し込まれると、他方側の爪部3d(3c)が支点Fuとなって一方側の爪部3c(3d)が回動するように押し込まれるため、対向配置される複数の爪部3c,3dが並ぶ方向において一定以上の操作性を得ることができ、スイッチ操作をし易く操作性を向上させることができる。
【0064】
次に、本発明の第3実施形態を説明する。第3実施形態に係る押しボタン装置は、第2実施形態のものと同様であるが、一部構成が異なっている。以下、第2実施形態との相違点を説明する。
【0065】
図17は、第3実施形態に係る押しボタン装置1を含むガス警報器の正面図である。図17に示すように、第3実施形態に係るガス警報器は正面視で略円形状となっており、略円形状のガス警報器の下部において円弧状に押しボタン装置1が設けられている。すなわち、第3実施形態においてはガス警報器の下部に円弧形状を有する開口部10(図18参照)が形成され、この開口部10に円弧形状となる押しボタン3が嵌め込まれて搭載される構成となっている。
【0066】
図18は、第3実施形態に係る開口部10の拡大正面図であって、押しボタン3を取り外したときの様子を示している。図19は、図18に示したF−F断面図である。なお、図19においては、押しボタン3が開口部10に搭載されているときの断面を示している。
【0067】
図18及び図19に示すように、開口部10には、レバー部材12と第1及び第2引っ掛け部14a,14bとが形成されている。第3実施形態に係るレバー部材12は、配線板WBから立ち上がるように断面略L字形状に形成されて押しボタン3をスイッチ6の搭載側(ガス警報器における後方側)から支持するものである。
【0068】
より詳細に説明すると、略円弧形状の開口部10には中板16が形成されている。中板16は中央部に略長方形状の開口が形成されている。開口の下側には開口に接してリブ18が形成されている。レバー部材12は、長方形状の開口内に収まるように配置されている。スイッチ6は、レバー部材12の先端付近の配線板WB上に位置している。また、レバー部材12の中間部は、押しボタン3の棒状部材3eの接触部となっている。第1及び第2引っ掛け部14a,14bは、中板16のうち開口部10の両側部に形成されており、レバー部材12を挟んで対向して配置されている。なお、第3実施形態においてはLED8の図示を省略する。
【0069】
図20は、図17に示した押しボタン3の斜視図である。第3実施形態に係る押しボタン3は、天板3aと、側壁3bと、2つの爪部(複数の爪部の一例)3c,3dとを備えている(図20においては1つの爪部3cのみを図示するものとする)。天板3aは、断面円弧状に形成されている。側壁3bは、天板3aの両端部に2つ、及び、これら2つの側壁3bを接続すると共に天板3aの背後側となる1つの計3つで構成されている。2つの爪部3c,3dは、天板3aの両端部に設けられる2つの側壁3bそれぞれの先端(ガス警報器において後方側)から突出して形成されており、偏平鉤型構造となっている。
【0070】
これら2つの爪部3c,3dは、図18及び図19に示す第1及び第2引っ掛け部14a,14bに嵌り込む構造となっており、2つの爪部3c,3dについても第1及び第2引っ掛け部14a,14bと同様にレバー部材12を挟んで対向して配置されることとなる。特に、2つの爪部3c,3dは鉤型となる爪部3c,3dの鉤突出方向が互いに反対側となって背中合わせ状態となっている。押しボタン3は、鉤型となる2つの爪部3c,3dが第1及び第2引っ掛け部14a,14bに嵌り込むことで上ケース2aに引っ掛けられる。
【0071】
図21は、図18に示したG−G断面図である。なお、図21においては、押しボタン3が開口部10に搭載されているときの断面を示している。図21に示すように、2つの爪部3c,3dが第1及び第2引っ掛け部14a,14bに引っ掛かった状態において天板3aや側壁3bは中板16に当接しておらず、空隙Vを有した状態となっている。
【0072】
次に、本実施形態に係る押しボタン装置の動作を説明する。図22は、第3実施形態に係る押しボタン3の爪部3c,3dのうちの一方側の爪部3c上を押し込んだときの様子を示す断面図である。図22に示すように、例えば第1爪部3c上(すなわち第2爪部3dから所定方向(第2爪部3dの鉤突出方向と反対方向)に所定距離以上離れた箇所)を押し込んだとする。この場合、第2爪部3dは押し下げられることなく、第2爪部3dが支点Fuとなって回動する。一方、天板3a及び側壁3bと中板16との間に空隙V(図21参照)を有することから、第1爪部3cは第1引っ掛け部14aから離間するように押し下げられることとなる。
【0073】
すなわち第1爪部3cによる引っ掛けが解除されるように第1爪部3cごと押し込まれることとなる。この結果、棒状部材3eを通じてレバー部材12も押し下げられてスイッチ6が操作される。なお、図22では、第1爪部3c上が押し込まれた例を説明したが、第2爪部3d上が押し込まれた場合も同様である。すなわち、第1爪部3cが支点Fuとなり、第2爪部3dによる引っ掛けが解除されるように第2爪部3dごと押し込まれることとなる。
【0074】
このように、第3実施形態においても押しボタン3は支点可動構造となっている。このため、第1爪部3c側と第2爪部3d側との双方において同様の操作性を得ることができる。
【0075】
図23は、第3実施形態に係る押しボタン3の爪部3c,3dのうちの中間部を押し込んだときの様子を示す断面図である。図23に示すように、例えば第1及び第2爪部3c,3dの中間部(双方の爪部3c,3dから所定距離以内の箇所)を押し込んだとする。この場合、第1及び第2爪部3c,3dは支点Fuとならず、共に引っ掛け部14a,14bから離間するように押し下げられることとなる。
【0076】
すなわち双方の爪部3c,3dによる引っ掛けが解除されるように爪部3c,3dごと押し込まれることとなる。この結果、棒状部材3eを通じてレバー部材12も押し下げられてスイッチ6が操作される。よって、中間部においても同様の操作性を得ることができる。以上より、第1爪部3c上から中間部を経て第2爪部3d上まで連続して一定以上の操作性を得ることができ、よりスイッチ操作をし易く操作性を向上させる構造となっている。
【0077】
このようにして、第3実施形態に係る押しボタン装置1によれば、第2実施形態と同様に、よりスイッチ操作をし易く操作性を向上させることができる。
【0078】
さらに、第3実施形態によれば、押しボタン3は、その一端部に一方側の爪部3cを有し他端部に他方側の爪部3dを有するため、例えば押しボタン3の側壁3bの先端に爪部3c,3dを設けるなど、押しボタン3の天板3aの真ん中付近から長尺の爪部を形成する必要がなく、構成の簡素化を図ることができることができる。
【0079】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、可能な範囲で適宜他の技術を組み合わせてもよい。
【0080】
例えば、上記実施形態において押しボタン3は天板3aが略二等辺三角形、長方形、及び円弧形状であるが、これに限らず、円形などの他の形状であってもよい。
【0081】
また、押しボタン3において爪部3c,3dは2つであるが、3つ以上であってもよい。3つ以上の爪部を備えていても、図10図15及び図22に示すような回動によるスイッチ6の操作が可能な場合があるからである。
【0082】
加えて、本実施形態に係る押しボタン装置1は、押しボタン3がLED8のカバー部材としての機能も備えているが、これに限らず、LED8のカバー部材(特に拡散部材)としての機能を備えていなくともよい。
【0083】
また、上記において所定距離とは、押しボタンの大きさ、爪部の個数や幅、及び爪部同士の離間距離等の種々の要因によって変化する値であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0084】
1 :押しボタン装置
2 :筐体
2a :上ケース(カバー部材)
2b :下ケース
3 :押しボタン
3a :天板
3b :側壁
3c,3d :爪部
3e :棒状部材
3f :肉厚部
4 :正面カバー
6 :スイッチ
8 :LED
9 :ガスセンサ
10 :開口部
12 :レバー部材
12a :基部
12b :先端部
12c :凸部
14a,14b :引っ掛け部
16 :中板
Fu :支点
V :空隙
WB :配線板
図1
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