(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ユーザが過去に実際に追い越しを行ったときの他の車両の速度を利用して算出されるものであって、ユーザが車両を運転したときに追い越す傾向にある他の車両の速度である追越傾向速度を記憶する追越傾向速度記憶部と、
ユーザに係る車両の現在位置を取得する車両位置取得部と、
ユーザに係る車両の前方であって、その車両の現在位置から一定距離以上離間した位置を含む所定の範囲内に、前記追越傾向速度以下の速度で走行する追越可能車両が存在するか否かを判定する追越可能車両有無判定部と、
前記所定の範囲内に前記追越可能車両が存在すると判定された場合、前記追越可能車両が走行する車線よりも右側の車線を推奨車線として提供する一方、前記所定の範囲内に前記前記追越可能車両が存在しないと判定された場合、道路に設けられた車線のうち左側寄りの車線を推奨車線として提供する推奨車線提供部と、
を備えることを特徴とする推奨車線提供装置。
ユーザが運転する車両の速度の履歴に基づいて、ユーザが自身が望む速度で安定して車両を走行させる場合の速度であるユーザ最適速度を算出するユーザ最適速度算出部と、
ユーザが運転する車両が他の車両を追い越したときの、当該他の車両の速度である被追越車両速度を取得し、前記ユーザ最適速度と前記被追越車両速度との差に基づいて前記追越傾向速度を算出する追越傾向速度算出部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の推奨車線提供装置。
ユーザが運転する車両が他の車両を追い越したときの、当該他の車両の速度である被追越車両速度を取得し、取得した前記被追越車両速度の平均に基づいて、前記追越傾向速度を算出する追越傾向速度算出部をさらに備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の推奨車線提供装置。
ユーザが過去に実際に追い越しを行ったときの他の車両の速度を利用して算出されるものであって、ユーザが車両を運転したときに追い越す傾向にある他の車両の速度である追越傾向速度を記憶する追越傾向速度記憶部を備える推奨車線提供装置による推奨車線提供方法であって、
前記推奨車線提供装置の車両位置取得部が、ユーザに係る車両の現在位置を取得する第1のステップと、
前記推奨車線提供装置の追越可能車両有無判定部が、ユーザに係る車両の前方であって、その車両の現在位置から一定距離以上離間した位置を含む所定の範囲内に、前記追越傾向速度以下の速度で走行する追越可能車両が存在するか否かを判定する第2のステップと、
前記推奨車線提供装置の推奨車線提供部が、前記所定の範囲内に前記追越可能車両が存在すると判定された場合、前記追越可能車両が走行する車線よりも右側の車線を推奨車線として提供する一方、前記所定の範囲内に前記前記追越可能車両が存在しないと判定された場合、道路に設けられた車線のうち左側寄りの車線を推奨車線として提供する第3のステップと、
を含むことを特徴とする推奨車線提供方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る推奨車線提供システム1の構成例を示す図である。
図1に示すように、推奨車線提供システム1は、推奨車線提供サーバ2(特許請求の範囲の「推奨車線提供装置」に相当)と、車載装置3とを備えている。これら装置は、それぞれ、インターネット、電話網、その他の通信網を含んで構成されたネットワークNにアクセス可能である。これら装置の機能構成および処理については後述する。
【0014】
以下の説明では、車載装置3が搭載された車両の運転手を、便宜的に、「ユーザ」と表現する。後述するように、推奨車線提供システム1では、車載装置3は、推奨車線提供サーバ2に対して、定期的に車両関連情報を送信する。この車両関連情報には、ユーザIDが含まれている。このユーザIDは、ユーザを識別する識別情報である。ユーザIDは、ユーザを識別することが可能な情報であればよく、例えば、ユーザIDとして、ユーザ登録に応じてユーザに付与されるIDを用いることができ、また、車載装置3を識別する情報(シリアル番号や、MACアドレス)を用いることができる。
【0015】
図2は、車載装置3の機能構成例を示すブロック図である。車載装置3は、車両に設けられた、いわゆるナビゲーション装置であり、車両の現在位置(以下、「自車位置」という)を検出する機能や、目的地までの経路(以下、「誘導経路」という)を探索し案内する機能等を備えている。なお、車載装置3は、車両に固定された装置である必要はなく、例えば、車両の搭乗者が所有する携帯端末(例えば、スマートフォンや、タブレット型PC、ノート型PC)であってもよい。すなわち、車載装置3は、後述する処理を実行可能な装置であればよい。以下の説明では、車載装置3が搭載された車両を「自車両」という。
【0016】
図2に示すように、車載装置3には、他車両検出装置5と、車両状態検出装置6と、道路交通情報取得装置7と、タッチパネル8とが接続されている。
【0017】
他車両検出装置5は、車両の前方を撮影する前方カメラを備える。前方カメラは、ステレオカメラであり、左右方向に離間した2台のカメラのそれぞれで所定の周期で車両の前方を撮影して撮影画像データを生成する。また、他車両検出装置5は、自車両の右側方、左側方および後方を撮影するカメラを備え、これらカメラのそれぞれで所定の周期で車両の右側方、左側方および後方を撮影して撮影画像データを生成する。他車両検出装置5は、撮影画像データのそれぞれを追越検出部13(後述)および被追越車両速度検出部14(後述)に出力する。
【0018】
車両状態検出装置6は、GPSユニット、加速度センサ、ジャイロセンサ、車速センサ、ギア状態検出センサ、ブレーキ状態検出センサおよびステアリング状態検出センサを備える。GPSユニットは、GPS電波に基づいて、自車位置および自車両の進行方向を検出する。加速度センサは、自車両に作用する加速度を検出する。ジャイロセンサは、ヨー軸方向の旋回量を検出し、自車両の相対的な方位を検出する。車速センサは、車速パルスを入力し、車速パルスに基づいて自車両の車速を検出する。ギア状態検出センサ、ブレーキ状態検出センサおよびステアリング状態検出センサは、それぞれ、ギアの状態、ブレーキの状態、ステアリングの状態を検出する。
【0019】
車両状態検出装置6は、被追越車両速度検出部14(後述)に、車速センサが検出した自車両の車速を示す情報(以下、「自車両速度情報」という)を出力する。また、車両状態検出装置6は、自車位置検出部11(後述)に、GPSユニット、加速度センサおよびジャイロセンサの検出結果を出力すると共に、自車両速度情報を出力する。また、車両状態検出装置6は、条件成立判定部17(後述)に、ギア状態検出センサ、ブレーキ状態検出センサおよびステアリング状態検出センサの検出結果を出力する。また、車両状態検出装置6は、車両関連情報送信部18(後述)に、周期S1で、自車両速度情報を出力する。
【0020】
道路交通情報取得装置7は、ビーコン受信装置およびFM多重放送波受信装置を備えている。ビーコン受信装置は、道路に設けられたビーコン(電波ビーコンや光ビーコン等)が発する道路交通情報を受信し、道路交通情報を取得する。道路交通情報は、例えば、VICS(登録商標)であり、渋滞に関する情報や、通行規制に関する情報等を含む。FM多重放送波受信装置は、FM多重放送波を受信し、当該放送波に重畳された受信信号を復号して道路交通情報を取得する。道路交通情報取得装置7は、ビーコン受信装置およびFM多重放送波受信装置により取得した道路交通情報を条件成立判定部17に出力する。
【0021】
タッチパネル8は、液晶表示パネルや有機ELパネル等の表示パネルを備え、表示パネルに画像を表示する。また、タッチパネル8は、表示パネルに重ねて配置されたタッチセンサを備え、タッチパネル8に対する運転手等のタッチ操作を検出する。タッチパネル8は、車両のダッシュボードの中央部等、表示パネルの表示領域を運転手が視認可能な位置に設けられている。
【0022】
図2に示すように、車載装置3は、その機能構成として、車載装置側通信部10、自車位置検出部11、経路案内部12、追越検出部13、被追越車両速度検出部14、走行道路情報取得部15、天候情報取得部16、条件成立判定部17および車両関連情報送信部18を備えている。また、車載装置3は、記憶媒体として、地図データ記憶部20を備えている。
【0023】
上記各機能ブロック10〜18は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロック10〜18は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。以上のことは、後述する他の機能ブロックについても同様である。
【0024】
地図データ記憶部20は、地図データを記憶する。地図データは、背景の描画に用いられるデータや、道路の描画に用いられるデータ、道路名や、交差点名、地名等の文字列の描画に用いられるデータ等の地図の描画に用いられるデータを含んでいる。また、地図データは、地図上の施設に関する施設情報を含んでいる。また、地図データは、誘導経路の探索に用いられる道路データを含んでいる。道路データは、ノードに関するノードテーブル、および、リンクに関するリンクテーブルを含んでいる。ノードは、交差点、その他の道路網における結節点ごとに定義された点であり、リンクは、ノードとノードとの間の道路区間ごとに定義された線である。ノードのそれぞれには、ノードを識別するノードIDが付与され、リンクのそれぞれには、リンクを識別するリンクIDが付与されている。
【0025】
車載装置側通信部10は、所定の通信規格に従って、ネットワークNにアクセスし、ネットワークNと接続する機器(推奨車線提供サーバ2を含む)と通信する。本実施形態では、車載装置3がネットワークNにアクセスする機能を有しているが、車載装置3が当該機能を有さず、ネットワークNにアクセスする機能を有する端末と通信し、当該端末を介してネットワークNにアクセスする構成でもよい。
【0026】
自車位置検出部11は、車両状態検出装置6からGPSユニット、加速度センサ、ジャイロセンサおよび車速センサの検出結果を入力し、これら検出結果および地図データ記憶部20が記憶する地図データに基づいて自車位置を検出する。自車位置の検出は既存の技術に基づいて適切に行われる。
【0027】
また、自車位置検出部11は、周期S1で、自車位置を示す自車位置情報を車両関連情報送信部18に出力する。
【0028】
経路案内部12は、タッチパネル8に対するタッチ操作等のユーザその他の車両の搭乗者からの指示に基づいて、誘導経路を探索し、案内する。経路案内部12は、自車位置検出部11が検出した自車位置、および、地図データ記憶部20が記憶する地図データの道路データに基づいて誘導経路を探索する。誘導経路の探索は、既存の技術に基づいて適切に行われる。また、経路案内部12は、自車位置が明示された自車位置周辺の地図をタッチパネル8に表示すると共に、誘導経路を示す画像をタッチパネル8に表示することによって探索した誘導経路を案内する。誘導経路の案内は、どのような態様で行われてもよく、例えば、音声を出力する機能を有している場合には、適宜、音声による案内が行われてもよい。
【0029】
特に、本実施形態に係る経路案内部12は、誘導経路の案内中、後述する所定の場合には、推奨車線提供サーバ2と協働して、自車両が走行することを推奨する推奨車線を提示する。推奨車線を提示するときの経路案内部12の処理については後述する。
【0030】
また、経路案内部12は、誘導経路の案内中、周期S1で、誘導経路を示す誘導経路情報を車両関連情報送信部18に出力する。誘導経路情報は、自車位置から目的地に至るまでの経路を構成するリンクおよびノードの、リンクIDおよびノードIDを含む情報である。
【0031】
追越検出部13は、他車両検出装置5から入力する撮影画像データに基づいて、自車両によって、前方に位置する他の車両の追い越しが行われた場合に、そのことを検出する。本実施形態において、追越検出部13が検出する対象の追い越しは、自車両と自車両の前方に位置する他の車両とが同一の車線を走行している状態のときに、一旦、自車両がその車線よりも右側の車線に車線変更し、車線変更後の車線において当該他の車両を通過し、その後、元の車線に車線変更することによって行われる追い越しである。このような態様で行われる追い越しは、ユーザが、当該他の車両を追い越すことを意図して行われたものと推定できる。
【0032】
本実施形態に係る追越検出部13は、以下の処理を行うことにより、自車両により追い越しが行われた場合に、そのことを検出する。すなわち、追越検出部13は、他車両検出装置5の前方カメラから入力する撮影画像データに基づいて、自車両と同一車線の前方に他の車両が存在するか否かを判定する。当該判定は、画像認識により、撮影画像データにおける車両の画像および道路に形成された白線の画像が検出されることによって行われる。追越検出部13は、自車両の前方に他の車両が存在する場合は、前方カメラ、左側方カメラ、右側方カメラおよび後方カメラから入力する撮影画像データを継続して分析し、当該他の車両に対して、自車両により上述した態様で追い越しが行われたか否かを判定する。
【0033】
詳述すると、追越検出部13は、所定の周期で入力する撮影画像データのそれぞれを画像認識し、自車両に対する当該他の車両の相対的な位置の推移を検出する。また、追越検出部13は、所定の周期で入力する前方カメラの撮影画像データを画像認識して自車両が走行している車線を検出し、これにより、自車両が走行する車線の変化を検出する。そして、追越検出部13は、自車両に対する当該他の車両の相対的な位置の推移、および、自車両が走行する車線の変化に基づいて、上述した態様で追い越しが行われた場合に、そのことを検出する。
【0034】
上述したように、追い越しは、一旦、自車両が右側の車線に車線変更し、車線変更後の車線において当該他の車両を通過し、その後、元の車線に車線変更することによって行われるが、追越検出部13は、これら一連の車線変更が行われた後に、自車両が元の車線に戻った時点で、自車両により追い越しが行われたと判定し、そのことを検出する。
【0035】
なお、追い越しを検出する方法は、上述した方法に限らず、どのような方法であってもよい。また、追い越しを検出するときにカメラ以外のセンサを用いてもよい。カメラ以外のセンサは、例えば、自車両に対する相対的な他車両の位置の検出に用いられるレーダ装置(レーザーレーダ装置や、ミリ波レーダ装置等)である。また、追い越しを検出する方法は、例えば、所定の手段で自車両の軌跡と、他の車両の軌跡とを取得し、これら軌跡を比較することによって追い越しを検出する方法である。
【0036】
被追越車両速度検出部14は、追越検出部13により自車両によって追い越しが行われたことが検出された場合に、追い越された他の車両の車速を検出する。以下、自車両によって追い越された他の車両の車速を「被追越車両速度」という。
【0037】
詳述すると、被追越車両速度検出部14は、自車両の走行中、追越検出部13と同様の処理を行って、自車両と同一車線の前方に他の車両が存在するか否かを判定する。自車両と同一車線の前方に他の車両が存在する場合、被追越車両速度検出部14は、当該他の車両の車速を検出する。
【0038】
本実施形態では、被追越車両速度検出部14は、自車両と当該他の車両とが同一車線を走行している期間、前方カメラから所定の周期で入力する一対の撮影画像データに基づいて、自車両と当該他の車両との離間距離を測距する。自車両と当該他の車両との離間距離の測距は、一対の撮影画像データにおける当該他の車両を示す画像の位置の差(視差)に基づいて既存の技術により適切に行われる。その後、自車両が車線変更を行うことにより、自車両が走行する車線と当該他の車両が走行する車線とが異なる状態となった場合、自車両と当該他の車両とが同一車線を走行している期間に所定の周期で測距した離間距離に基づいて、単位時間あたりの離間距離の変化量を算出する。また、被追越車両速度検出部14は、自車両と当該他の車両とが同一車線を走行している期間に車両状態検出装置6から入力した自車両速度情報に基づいて、当該期間における自車両の車速の平均を算出する。次いで、被追越車両速度検出部14は、当該期間における単位時間あたりの離間距離の変化量と、当該期間自車両の車速の平均とに基づいて、自車両と当該他の車両とが同一車線を走行している期間における当該他の車両の速度を算出する。
【0039】
被追越車両速度検出部14は、追越検出部13により追い越しが行われたことが検出された場合、追い越された他の車両について、上述した方法で事前に算出した車両の速度を、被追越車両速度として検出する。上述したように、追い越しは、他の車両と同一の車線を走行する自車両が、一旦、右側の車線に車線変更し、車線変更後の車線において当該他の車両を通過し、その後、元の車線に車線変更することによって行われる。このため、追い越された他の車両については、自車両が右側の車線へ車線変更する前に、自車両と当該他の車両とが同一の車線を走行している期間が存在しており、追越検出部13により追い越しが検出された時点(自車両による元の車線への車線変更が完了した時点)で、上述した方法で速度が算出された状態である。
【0040】
なお、追い越しが行われる場合において、追い越される側の車両は、速度の変化が少なく、略一定の速度で走行する傾向がある。このため、上述した方法で算出した速度は、自車両が他の車両を追い越したときの、当該他の車両の速度(被追越車両速度)とみなすことができる。
【0041】
なお、被追越車両速度を検出する方法は、上述した方法に限らず、どのような方法であってもよい。例えば、自車両と他の車両とがそれぞれ、車両間で車車間通信する機能を有している場合、被追越車両速度検出部14は、追い越された車両と車車間通信し、被追越車両速度を検出してもよい。
【0042】
被追越車両速度検出部14は、周期S1で、検出結果情報を車両関連情報送信部18に出力する。被追越車両速度検出部14は、追越検出部13により追い越しが検出されたことをトリガとして被追越車両速度を検出した場合、検出した被追越車両速度を値として有する検出結果情報を出力し、一方、それ以外の場合は、ヌル値の検出結果情報を出力する。この結果、追越検出部13により追い越しが検出された直後に被追越車両速度検出部14が出力する検出結果情報は、検出した被追越車両速度を値として有し、それ以外の場合は、ヌル値を値として有する。
【0043】
走行道路情報取得部15は、経路案内部12により誘導経路の案内が行われているか否かにかかわらず、車両が走行している間、車両が走行している道路について、その道路の道路属性を示す道路属性情報と、その道路の制限速度を示す制限速度情報とを取得する。道路属性は、高速道路や、一般道等、道路の属性である。
【0044】
走行道路情報取得部15の処理について詳述すると、走行道路情報取得部15は、地図データ記憶部20が記憶する地図データの道路データに基づいて、車両が走行している間、自車位置検出部11により検出された自車位置を、リンクとノードとの組み合わせにより構築される道路網にマップマッチングし、自車両が走行する道路区間に対応するリンクを特定する。次いで、走行道路情報取得部15は、リンクテーブルを参照し、特定したリンクの道路属性情報と制限速度情報を取得する。なお、リンクテーブルは、リンクごとにリンクIDと対応付けてリンクに対応する道路区間に関する各種情報を記憶しており、この道路区間に関する各種情報には、道路属性情報と制限速度情報とが少なくも含まれている。
【0045】
走行道路情報取得部15は、周期S1で、取得した道路属性情報および制限速度情報を、車両関連情報送信部18に出力する。
【0046】
天候情報取得部16は、経路案内部12により誘導経路の案内が行われているか否かにかかわらず、車両が走行している間、車両が走行している地域の天候を示す天候情報を取得する。詳述すると、ネットワークNには、特定の位置を示す情報を含む問い合わせに応じて、当該特定の位置が属する地域の天候を示す天候情報を応答する所定のサーバが接続されている。天候情報取得部16は、所定の周期S1で、車載装置側通信部10を制御して、所定のサーバに対して、自車位置検出部11が検出した自車位置を示す自車位置情報を含む問い合わせを行い、天候情報を取得する。天候情報取得部16が天候情報を取得する方法は、どのような方法でもよく、例えば、自車両に設けられた各種センサに基づいて取得してもよい。
【0047】
天候情報取得部16は、周期S1で、取得した天候情報を、車両関連情報送信部18に出力する。
【0048】
条件成立判定部17は、経路案内部12により誘導経路の案内が行われているか否かにかかわらず、車両が走行している間、条件J1が成立しているか否かを判定する。条件J1は、車両が走行する環境においてユーザが望む速度で安定して車両を走行させている場合に成立する条件である。本実施形態では、ユーザに減速や、加速を行わせるような要因が発生している場合、車両が走行する環境においてユーザが望む速度で安定して車両を走行させていない可能性が高いことに着目し、条件J1は、以下の事項に1つでも該当しないこと、という条件である。
【0049】
事項1:車両が、渋滞が発生している道路区間を走行している。事項2:発進した後の所定の期間、停止する前の所定の期間、右左折する前の所定の期間、右左折中の期間、右左折した後の所定の期間である。事項3:高速道路を下りた後の所定の期間である。条件成立判定部17は、道路交通情報取得装置7から入力する道路交通情報や、地図データ記憶部20が記憶する地図データ、自車位置検出部11が検出する自車位置、車両状態検出装置6から入力する各種センサの検出結果等に基づいて、各事項に該当するか否かを判定する。
【0050】
なお、本実施形態の条件J1の内容はあくまでも一例である。条件J1は、車両が走行する環境においてユーザが望む速度で安定して車両を走行させている場合に成立する条件であればよい。
【0051】
条件成立判定部17は、周期S1で、判定結果を示す情報を車両関連情報送信部18に出力する。
【0052】
車両関連情報送信部18は、経路案内部12により誘導経路の案内が行われているか否かにかかわらず、車両が走行している間、周期S1で車両関連情報を生成し、車載装置側通信部10を制御して、生成した車両関連情報を推奨車線提供サーバ2に送信する。以下、車両関連情報送信部18の処理について詳述する。
【0053】
図3は、車両関連情報に含まれる情報を示す図である。
図3に示すように、車両関連情報は、ユーザIDを含んでいる。上述したように、ユーザIDは、ユーザを識別する識別情報である。車両関連情報送信部18は、所定の記憶領域に記憶されたユーザIDを取得し、車両関連情報に含める。
【0054】
図3に示すように、車両関連情報は、自車位置情報と、道路属性情報と、制限速度情報と、天候情報とを含んでいる。車両関連情報送信部18は、自車位置検出部11、走行道路情報取得部15および天候情報取得部16から周期S1で入力する自車位置情報、道路属性情報、制限速度情報および天候情報を取得し、車両関連情報に含める。
【0055】
図3に示すように、車両関連情報は、条件成立フラグと、自車両速度情報とを含んでいる。条件成立フラグは、上述した条件J1が成立する場合にオンとなり、成立しない場合にオフとなるフラグである。車両関連情報送信部18は、条件成立判定部17から周期S1で入力する判定結果を示す情報に基づいて、条件成立フラグのオン/オフを切り替える。また、車両関連情報送信部18は、車両状態検出装置6から周期S1で入力する自車両速度情報を取得し、車両関連情報に含める。
【0056】
図3に示すように、車両関連情報は、追越フラグと、被追越車両速度情報とを含んでいる。追越フラグは、追い越しが行われた場合にオンとなり、それ以外の場合にオフとなるフラグである。追い越しが行われた場合とは、本実施形態では、追越検出部13により追い越しが行われたことが検出された場合である。また、被追越車両速度情報は、自車両によって追い越しが行われた場合に、追い越された側の他の車両の速度(被追越車両速度)を示す情報である。
【0057】
追越フラグおよび被追越車両速度情報に関し、車両関連情報送信部18は、被追越車両速度検出部14から周期S1で入力する検出結果情報に基づいて、以下の処理を実行する。すなわち、車両関連情報送信部18は、検出結果情報がヌル値の場合、追越フラグをオフし、ヌル値の被追越車両速度情報を車両関連情報に含める。一方、車両関連情報送信部18は、検出結果情報がヌル値ではない場合、追越フラグをオンし、検出結果情報の値(被追越車両速度検出部14が検出した被追越車両速度)と同一の値の被追越車両速度情報を車両関連情報に含める。
【0058】
図3に示すように、車両関連情報は、案内中フラグと、誘導経路情報とを含んでいる。案内中フラグは、経路案内部12により誘導経路の案内が行われている間オンとなり、それ以外の場合にオフとなるフラグである。車両関連情報送信部18は、経路案内部12により誘導経路の案内が行われている場合は、案内中フラグをオンし、それ以外の場合は案内中フラグをオフする。また、車両関連情報送信部18は、経路案内部12により誘導経路の案内が行われている場合、経路案内部12から周期S1で入力する誘導経路情報を車両関連情報に含め、案内が行われていない場合は、ヌル値の誘導経路情報を車両関連情報に含める。
【0059】
なお、本実施形態では、誘導経路の案内中は、案内されている誘導経路を示す誘導経路情報が含まれた車両関連情報が推奨車線提供サーバ2に送信される構成であるが、これは、誘導経路の再探索等により、誘導経路の案内中に、誘導経路が変更される可能性があることを考慮したものである。誘導経路の案内の開始時に、誘導経路を示す誘導経路情報が含まれた車両関連情報を送信する一方、その後は、ヌル値の誘導経路情報が含まれた車両関連情報を送信し、誘導経路の変更があった場合に、変更後の誘導経路を示す誘導経路情報が含まれた車両関連情報を送信する構成でもよい。この場合、推奨車線提供サーバ2が、誘導経路の開始時に受信する誘導経路情報、および、誘導経路の変更時に受信する誘導経路情報に基づいて、車両の誘導経路を管理する。
【0060】
上述したように、車両関連情報送信部18は、所定の周期S1で車両関連情報を生成し、車載装置側通信部10を制御して、生成した車両関連情報を推奨車線提供サーバ2に送信する。この結果、車両の走行中、経路案内部12により誘導経路の案内が行われているか否かにかかわらず、車載装置3から推奨車線提供サーバ2に対して車両関連情報が周期S1で送信される。なお、車載装置3による車両関連情報の送信は、車両関連情報に含まれるユーザIDのユーザが車両を運転する場合にのみ行われ、当該ユーザ以外の者が車両を運転している場合には、対応する機能がオフされる等して行われない。
【0061】
図4は、推奨車線提供サーバ2の機能構成例を示すブロック図である。推奨車線提供サーバ2は、ネットワークNに接続されたサーバである。
図1および
図4では、推奨車線提供サーバ2を1つのブロックにより表しているが、これは推奨車線提供サーバ2が単一のサーバ装置により構成されることを意味するするものではない。推奨車線提供サーバ2は、複数のサーバ装置により構成されていてもよく、所定のシステムの一部であってもよい。すなわち、推奨車線提供サーバ2は、後述する機能を有していればよく、その形態はどのようなものであってもよい。
【0062】
図4に示すように、推奨車線提供サーバ2は、その機能構成として、サーバ側通信部30、車両関連情報取得部31、ユーザ最適速度算出部32、追越傾向速度算出部33、誘導経路取得部34、車両位置取得部35、車両速度取得部36、環境パターン取得部37、追越可能車両有無判定部38および推奨車線提供部39を備えている。また、推奨車線提供サーバ2は、記憶媒体として、車両関連情報記憶部50、追越傾向速度記憶部51および道路データ記憶部52を備えている。
【0063】
サーバ側通信部30は、所定の通信規格に従って、ネットワークNにアクセスし、ネットワークNと接続する機器(車載装置3を含む)と通信する。
【0064】
車両関連情報記憶部50は、ユーザごとに、車両関連情報データベースDB1を記憶する。各ユーザに係る車両関連情報データベースDB1は、各ユーザのユーザIDと対応付けられた状態で、車両関連情報記憶部50に記憶される。車両関連情報データベースDB1の内容については後述する。
【0065】
車両関連情報取得部31は、車載装置3が送信した車両関連情報を、サーバ側通信部30を制御して受信し、取得する。車両関連情報取得部31は、取得した車両関連情報を、車両関連情報記憶部50が記憶する車両関連情報データベースDB1のうち、取得した車両関連情報に含まれるユーザIDと対応付けられた車両関連情報データベースDB1に登録する。以下、車両関連情報取得部31の処理について詳述する。
【0066】
上述したように、推奨車線提供サーバ2には、異なる複数の車載装置3から、随時、車両関連情報が送信されてくる。車両関連情報取得部31は、取得した車両関連情報のそれぞれについて、以下の処理を実行する。すなわち、車両関連情報取得部31は、車両関連情報を取得した場合、当該車両関連情報に含まれるユーザIDを認識する。次いで、車両関連情報取得部31は、車両関連情報データベースDB1のうち、認識したユーザIDと対応付けられたデータベースを特定する。次いで、車両関連情報取得部31は、特定した車両関連情報データベースDB1に、車両関連情報を追加的に登録する。車両関連情報取得部31により以上の処理が行われる結果、1のユーザに係る車両関連情報データベースDB1には、当該1のユーザが運転する車載装置3が送信した車両関連情報が、累積的に記憶された状態となる。
【0067】
さらに、車両関連情報取得部31は、車両関連情報の受信に応じて、取得した車両関連情報を、誘導経路取得部34、車両位置取得部35、車両速度取得部36および環境パターン取得部37に出力する。
【0068】
追越傾向速度記憶部51は、ユーザごとに、追越傾向データベースDB2を記憶する。各ユーザに係る追越傾向データベースDB2は、各ユーザのユーザIDと対応付けられた状態で、追越傾向速度記憶部51に記憶される。
【0069】
図5は、一のユーザに係る追越傾向データベースDB2の内容の一例を模式的に示す図である。
図5に示すように、追越傾向データベースDB2の1件のレコードは、道路属性情報と、制限速度情報と、天候情報と、ユーザ最適速度情報と、追越傾向速度情報とを含んでいる。そして、追越傾向データベースDB2は、道路属性情報が取り得る値と、天候情報が取り得る値と、制限速度情報が取り得る値との組み合わせごとに、レコードを有している。
【0070】
例えば、道路属性情報の値として「高速道路」と「一般道」とがあり、天候情報の値として「晴」と「雨」とがあり、制限速度情報の値として高速道路の場合は「80km/h」を取り、一般道の場合は「60km/h」を取る場合、各情報の各値の組み合わせは4通りあるため、追越傾向データベースDB2は、各情報の各値の組み合わせごとに4個のレコードを有する。以下、道路属性情報が示す道路属性と、天候情報が示す天候と、制限速度情報が示す制限速度との組み合わせを「環境パターン」という。追越傾向データベースDB2の内容については後述する。
【0071】
ユーザ最適速度算出部32は、ユーザが運転する車両の速度の履歴に基づいて、ユーザが自身が望む速度で安定して車両を走行させる場合の速度であるユーザ最適速度を算出する。より詳細には、ユーザ最適速度算出部32は、ユーザごとに、車両関連情報データベースDB1に基づいて、環境パターンごとのユーザ最適速度を算出し、追越傾向データベースDB2の対応するユーザ最適速度情報の値を更新する。以下、ユーザ最適速度算出部32の処理について詳述する。なお、ユーザ最適速度算出部32は、ユーザのそれぞれについて、一定期間ごとに、以下の処理を実行する。一定期間は、例えば、一日であり、また一週間である。ユーザ最適速度算出部32が、一定期間ごとではなく、一のユーザに係る車両関連情報データベースDB1に所定個数の車両関連情報が登録されるたびに当該一のユーザについて以下の処理を実行する構成でもよく、オペレータ等の指示に応じて以下の処理を実行する構成でもよい。
【0072】
以下、一のユーザについてユーザ最適速度算出部32が実行する処理について説明する。ユーザ最適速度算出部32は、車両関連情報記憶部50が記憶する車両関連情報データベースDB1のうち、当該一のユーザのユーザIDと対応付けられた車両関連情報データベースDB1を参照する。次いで、ユーザ最適速度算出部32は、車両関連情報データベースDB1に登録された車両関連情報を取得し、各車両関連情報に含まれる道路属性情報、天候情報および制限速度情報に基づいて、取得した車両関連情報を環境パターンごとにグループ分けする。そして、ユーザ最適速度算出部32は、グループごとに、各グループに属する車両関連情報に基づいて以下の処理を実行する。
【0073】
以下、一の環境パターンに係るグループについてユーザ最適速度算出部32が実行する処理について説明する。ユーザ最適速度算出部32は、当該一の環境パターンに係るグループに属する車両関連情報のうち、条件成立フラグがオンの車両関連情報を特定する。次いで、ユーザ最適速度算出部32は、条件成立フラグがオンの車両関連情報の自車両速度情報を取得する。次いで、ユーザ最適速度算出部32は、取得した自車両速度情報の平均値を算出し、算出した平均値をユーザ最適速度とする。
【0074】
上述したように、条件成立フラグは、車両が走行する環境においてユーザが望む速度で安定して車両を走行させている場合に成立する条件J1が成立している場合にオンされる。これを踏まえ、上述した方法で算出されるユーザ最適速度は、当該一の環境パターンに対応する環境において、ユーザが望む速度で安定して車両を走行させる場合に、ユーザが出すだいたいの速度とみなすことができる。なお、ユーザ最適速度を算出する際に、現時点から過去に遡って一定の期間に登録された車両関連情報を使用する構成でもよい。また、自車両速度情報の平均値を算出する際に、現時点に近いタイミングで登録された車両関連情報の自車両速度情報ほど、算出される値に影響を与えるような重みづけを行ってもよい。
【0075】
なお、本実施形態では、車載装置3が条件J1が成立したか否かを判定する構成であるが、推奨車線提供サーバ2のユーザ最適速度算出部32が、車両関連情報、その他の情報を分析して条件J1が成立したか否かを判定する構成でもよい。
【0076】
一の環境パターンに係るグループに属する車両関連情報に基づいて一のユーザに係るユーザ最適速度を算出した後、ユーザ最適速度算出部32は、当該一のユーザに係る追加傾向データベースDB2を参照し、当該データベースが有するレコードのうち当該一の環境パターンに係るレコードを特定する。次いで、ユーザ最適速度算出部32は、特定したレコードに含まれるユーザ最適速度情報の値を、算出したユーザ最適速度情報により更新する。
【0077】
ユーザ最適速度算出部32によって以上の処理が行われる結果、各追越傾向データベースDB2の各レコードのユーザ最適速度情報の値は、随時、ユーザ最適速度算出部32により算出されたユーザ最適速度により更新される。上述したように、ユーザ最適速度算出部32により算出された一のユーザに係る一の環境パターンについてのユーザ最適速度は、当該一の環境パターンに対応する環境で、当該一のユーザが望む速度で安定して車両を走行させる場合における車両のだいたいの速度である。
【0078】
なお、本実施形態では、ユーザのそれぞれについて、道路属性と天候と制限速度との組み合わせよりなる環境パターンごとにユーザ最適速度算出部32によりユーザ最適速度が算出される。これは、安定して車両を走行させる場合において、ユーザがどの程度の速度を最適と感じるかは、車両が走行する道路の道路属性と、車両が走行する道路の制限速度と、車両が走行しているときの天候との組み合わせによって変化するからである。例えば、同じ制限速度の道路を同じ天候の下で車両を走行させる場合であっても、道路が高速道路か一般道かによってユーザがどの程度の速度を最適と感じるかは変わり、また例えば、同じ道路属性で同じ制限速度の道路を車両に走行させる場合であっても、天候が晴か雨かによってユーザがどの程度の速度を最適と感じるかは変わる。
【0079】
追越傾向速度算出部33は、ユーザごとに、車両関連情報データベースDB1に基づいて、環境パターンごとの追越傾向速度を算出し、追越傾向データベースDB2の対応する追越傾向速度情報の値を更新する。以下、追越傾向速度算出部33の処理について詳述する。なお、追越傾向速度算出部33は、ユーザのそれぞれについて、一定期間ごとに、以下の処理を実行する。一定期間は、例えば、一日であり、また一週間である。追越傾向速度算出部33が、一定期間ごとではなく、一のユーザに係る車両関連情報データベースDB1に所定個数の車両関連情報が登録されるたびに当該一のユーザについて以下の処理を実行する構成でもよく、オペレータ等の指示に応じて以下の処理を実行する構成でもよい。
【0080】
以下、一のユーザについて追越傾向速度算出部33が実行する処理について説明する。追越傾向速度算出部33は、車両関連情報記憶部50が記憶する車両関連情報データベースDB1のうち、当該一のユーザのユーザIDと対応付けられた車両関連情報データベースDB1を参照する。次いで、追越傾向速度算出部33は、参照した車両関連情報データベースDB1に登録された車両関連情報を取得し、各車両関連情報に含まれる道路属性情報、天候情報および制限速度情報に基づいて、取得した車両関連情報を環境パターンごとにグループ分けする。そして、追越傾向速度算出部33は、グループごとに、各グループに属する車両関連情報に基づいて以下の処理を実行する。
【0081】
以下、一の環境パターンに係るグループについて追越傾向速度算出部33が実行する処理について説明する。追越傾向速度算出部33は、当該一の環境パターンに係るグループに属する車両関連情報のうち、追越フラグがオンの車両関連情報を特定する。次いで、追越傾向速度算出部33は、追越フラグがオンの車両関連情報のうち、被追越車両速度情報の値が大きい順から、N個(例えば、5個)の車両関連情報を特定する。次いで、追越傾向速度算出部33は、特定したN個の車両関連情報のそれぞれに含まれる被追越車両速度情報を取得する。ここで取得されるN個の被追越車両速度情報は、処理の対象となっている一のユーザが一の環境パターンに対応する環境において過去に実際に追い越しを行ったときの他の車両の速度を示す情報であって、値が大きい上位N個の速度を示す情報である。
【0082】
なお、本実施形態では、車載装置3が、ユーザが運転する車両により他の車両の追い越しが行われたか否かを判定する構成であるが、推奨車線提供サーバ2の追越傾向速度算出部33が、車両関連情報、その他の情報を分析して追い越しが行われたか否かを算出するとと共に、被追越車両速度を取得する構成でもよい。
【0083】
次いで、追越傾向速度算出部33は、処理の対象となっている一のユーザの追越傾向データベースDB2を参照して当該一のユーザのユーザ最適速度情報を取得し、取得したN個の被追越車両速度情報と、ユーザ最適速度情報との差(以下、「追越速度差」という)を算出する。上述したように、ユーザ最適速度情報は、処理対象となっているグループに係る一の環境パターンに対応する環境で当該一のユーザが安定して車両を走行させる場合における車両のだいたいの速度である。追越傾向速度算出部33は、ユーザ最適速度情報の値から、被追越車両速度情報の値を減算することによって、追越速度差を算出する。
【0084】
N個の追越速度差を算出した後、追越傾向速度算出部33は、N個の追越速度差の平均値(以下、「平均追越速度差」という)を算出する。ここで算出される平均追越速度差は、一のユーザが自車両によって他の車両の追い越しを行う場合の、自車両と他の車両との速度差のだいたいの上限値とみなすことができ、当該一のユーザは、自車両の前方に他の車両が存在する場合において、これら車両の速度差が平均追越速度差を上回っているときに、追い越しを行う傾向があるとみなすことができる。
【0085】
平均追越速度差を算出した後、追越傾向速度算出部33は、対応するユーザ最適速度情報の値から、平均追越速度差を減算した値を算出し、算出した値を追越傾向速度とする。以上の方法で算出される追越傾向速度は、一のユーザが走行する車両の前方に他の車両が存在する場合において、当該一のユーザが追い越しを行う傾向にある他の車両の速度の上限値とみなすことができる。従って、ユーザは、前方の車両が追越傾向速度以下の速度で走行している場合には、自車両によってその車両を追い越す傾向がある一方、前方の車両が追越傾向速度を上回る速度で走行している場合には、自車両によってその車両の追い越しを行わない傾向がある。
【0086】
なお、追越傾向速度を算出する際に、現時点から過去に遡って一定の期間に登録された車両関連情報を使用する構成でもよい。また、被追越車両速度情報の平均値を算出する際に、現時点に近いタイミングで登録された車両関連情報の被追越車両速度情報ほど、算出される値に影響を与えるような重みづけを行ってもよい。
【0087】
一の環境パターンに係るグループに属する車両関連情報に基づいて一のユーザに係る追越傾向速度を算出した後、追越傾向速度算出部33は、当該一のユーザに係る追加傾向データベースDB2を参照し、当該データベースが有するレコードのうち当該一の環境パターンに係るレコードを特定する。次いで、追越傾向速度算出部33は、特定したレコードに含まれる追越傾向速度情報の値を、算出した追越傾向速度情報により更新する。
【0088】
追越傾向速度算出部33によって以上の処理が行われる結果、各追越傾向データベースDB2の各レコードの追越傾向速度情報の値は、随時、追越傾向速度算出部33により算出された追越傾向速度により更新される。上述したように、追越傾向速度算出部33により算出された一のユーザに係る一の環境パターンについての追越傾向速度は、当該一の環境パターンに対応する環境で、当該一のユーザが走行する車両の前方に他の車両が存在する場合において、当該一のユーザが追い越しを行う傾向にある他の車両の速度の上限値である。
【0089】
なお、本実施形態では、ユーザのそれぞれについて、道路属性と天候と制限速度との組み合わせよりなる環境パターンごとに追越傾向速度算出部33により追越傾向速度が算出される。これは、ユーザが、自車両の前方を走行する車両がどの程度の速度のときに追い越しを実行するかは、車両が走行する道路の道路属性と、車両が走行する道路の制限速度と、車両が走行しているときの天候との組み合わせによって変化するからである。
【0090】
誘導経路取得部34は、車両関連情報取得部31から入力した車両関連情報を取得する。誘導経路取得部34は、取得した車両関連情報の案内中フラグを参照し、案内中フラグがオンの場合には、車両関連情報に含まれるユーザIDと誘導経路情報との組み合わせを追越可能車両有無判定部38に出力する。上述したように、推奨車線提供サーバ2には、異なる複数の車載装置3から、随時、車両関連情報が送信されてくるが、誘導経路取得部34は、取得した車両関連情報のそれぞれについて案内中フラグの状態を判定し、案内中フラグがオンの場合には、ユーザIDと誘導経路情報との組み合わせを追越可能車両有無判定部38に出力する。
【0091】
車両位置取得部35は、車両関連情報取得部31から入力した車両関連情報を取得する。車両位置取得部35は、取得した車両関連情報の案内中フラグを参照し、案内中フラグがオンの場合には、車両関連情報に含まれるユーザIDと自車位置情報との組み合わせを追越可能車両有無判定部38に出力する。上述したように、推奨車線提供サーバ2には、異なる複数の車載装置3から、随時、車両関連情報が送信されてくるが、車両位置取得部35は、取得した車両関連情報のそれぞれについて案内中フラグの状態を判定し、案内中フラグがオンの場合には、ユーザIDと自車位置情報との組み合わせを追越可能車両有無判定部38に出力する。
【0092】
車両速度取得部36は、車両関連情報取得部31から入力した車両関連情報を取得する。車両速度取得部36は、取得した車両関連情報の案内中フラグを参照し、案内中フラグがオンの場合には、車両関連情報に含まれるユーザIDと自車両速度情報との組み合わせを追越可能車両有無判定部38に出力する。上述したように、推奨車線提供サーバ2には、異なる複数の車載装置3から、随時、車両関連情報が送信されてくるが、車両速度取得部36は、取得した車両関連情報のそれぞれについて案内中フラグの状態を判定し、案内中フラグがオンの場合には、ユーザIDと自車両速度情報との組み合わせを追越可能車両有無判定部38に出力する。
【0093】
環境パターン取得部37は、車両関連情報取得部31から入力した車両関連情報を取得する。環境パターン取得部37は、取得した車両関連情報の案内中フラグを参照し、案内中フラグがオンの場合には、車両関連情報に含まれるユーザIDと、道路属性情報、天候情報および制限速度情報との組み合わせを追越可能車両有無判定部38に出力する。以下、道路属性情報、天候情報および制限速度情報との組み合わせを、「環境パターン情報」という。上述したように、推奨車線提供サーバ2には、異なる複数の車載装置3から、随時、車両関連情報が送信されてくるが、環境パターン取得部37は、取得した車両関連情報のそれぞれについて案内中フラグの状態を判定し、案内中フラグがオンの場合には、ユーザIDと環境パターン情報との組み合わせを追越可能車両有無判定部38に出力する。
【0094】
誘導経路取得部34、車両位置取得部35、車両速度取得部36および環境パターン取得部37により以上の処理が行われる結果、一のユーザが運転する車両に搭載された車載装置3により誘導経路の案内が行われている場合、当該一のユーザのユーザIDと対応づけて、その誘導経路を示す誘導経路情報、その車両の位置を示す自車位置情報、その車両の速度を示す自車両速度情報、および、その車両が走行する道路の環境を示す環境パターン情報が、周期S1で、追越可能車両有無判定部38に出力される。
【0095】
道路データ記憶部52は、道路データを記憶する。上述したように、道路データは、ノードに関するノードテーブル、および、リンクに関するリンクテーブルを含んでいる。
【0096】
追越可能車両有無判定部38は、ユーザに係る車両の前方であって、その車両の現在位置から一定距離以上離間した位置を含む所定の範囲内に、追越傾向速度以下の速度で走行する追越可能車両が存在するか否かを判定する。以下、一のユーザについての追越可能車両有無判定部38の処理について詳述する。以下の説明では、処理対象の一のユーザが運転する車両に搭載された車載装置3の経路案内部12が、誘導経路の案内を実行中であるものとする。
【0097】
上述したように、一のユーザが運転する車両に搭載された車載装置3により誘導経路の案内が行われている間、追越可能車両有無判定部38に、周期S1で、当該一のユーザのユーザIDと対応づけて、その誘導経路を示す誘導経路情報、その車両の位置を示す自車位置情報、その車両の速度を示す自車両速度情報、および、その車両が走行する道路の環境を示す環境パターン情報が、周期S1で、追越可能車両有無判定部38に出力される。追越可能車両有無判定部38は、周期S1で、当該一のユーザに係る誘導経路情報、自車両速度情報、自車位置情報および環境パターン情報を入力し、これら情報に基づいて以下の処理を実行する。
【0098】
追越可能車両有無判定部38は、入力した自車位置情報、道路データ記憶部52が記憶する道路データ、および、車両関連情報記憶部50が記憶する車両関連情報データベースDB1に基づいて以下の判定を行う。すなわち、追越可能車両有無判定部38は、一のユーザに係る車両が走行する片側道路において、当該一のユーザに係る車両の前方であって、当該一のユーザに係る車両を基点として距離K1だけ離間した範囲H1(特許請求の範囲の「所定の範囲」に相当)内に他の車両が存在するか否かを判定する。
【0099】
片側道路とは、1つの道路において、1又は複数の車線を有し、一の方向への通行が許可された部分を便宜的に表現したものである。例えば、高速道路や一般道において、上り線、下り線がそれぞれ、片側道路である。
【0100】
本実施形態では、追越可能車両有無判定部38は、処理対象となっている一のユーザに係る車両以外の車両の位置については、車両関連情報データベースDB1が記憶するユーザごとの車両関連情報データベースDB1に基づいて特定する。なお、車両関連情報取得部31は、リアルタイムで、走行中の車両から車両関連情報を取得する構成であるため、車両関連情報種東部31が車両関連情報を取得するたびに追越可能車両有無判定部38に車両関連情報を出力し、追越可能車両有無判定部38が、車両関連情報取得部31から入力した車両関連情報に基づいて、各車両の位置を取得する構成でもよい。
【0101】
距離K1の値は、一定距離(例えば、1キロメートル)より大きい値とされる。距離K1が一定距離より大きい値とされることの意義については後述する。
【0102】
図6は、追越可能車両有無判定部38の処理を説明するため、一のユーザが運転する車両の周辺の地図の一例を模式的に示す図である。
図6において、方位は、図中で示す方位に従うものとする。
図6で例示する地図では、片側道路D1が南北に延びると共に、分岐点B1で、北東に延びる片側道路D2と、北西に延びる片側道路D3とに分岐している。片側道路D1は、北へ向かう方向への通行が許可された片側道路である。片側道路D1には、北へ向かって左から順番に車線D1a、車線D1bおよび車線D1cが設けられている。車線D1cは「追越車線」であり、車線D1aおよび車線D1bは「走行車線」である。
【0103】
図6で示す地図において、処理対象の一のユーザが運転する車両が、図中の位置P1に位置し、誘導経路が、位置P1から片側道路D1を北上し、分岐点B1を経由して片側道路D3へ進入し、片側道路D3を進行する経路であるものとする。この場合において、追越可能車両有無判定部38は、位置P1から前方に向かって距離K1だけ離間した範囲H1内に、他の車両が存在するか否かを判定する。
【0104】
処理対象となっている一のユーザに係る車両が走行する片側道路において範囲H1内に他の車両が存在する場合、追越可能車両有無判定部38は、当該他の車両の現時点の車速を認識する。
【0105】
本実施形態では、追越可能車両有無判定部38は、処理対象となっている一のユーザに係る車両以外の車両の車速については、車両関連情報データベースDB1が記憶するユーザごとの車両関連情報データベースDB1に基づいて認識する。なお、車両関連情報取得部31は、リアルタイムで、走行中の車両から車両関連情報を取得する構成であるため、車両関連情報種東部31が、車両関連情報を取得するたびに、追越可能車両有無判定部38に車両関連情報を出力し、追越可能車両有無判定部38が、車両関連情報取得部31から入力した車両関連情報に基づいて、各車両の車速を認識する構成でもよい。
【0106】
次いで、追越可能車両有無判定部38は、処理対象となっている一のユーザに係る追越傾向データベースDB2を参照し、当該データベースが有するレコードのうち、環境パターン取得部37から入力した環境パターン情報を有するレコードを特定する。次いで、追越可能車両有無判定部38は、特定したレコードの追越傾向速度情報を取得する。ここで取得した追越傾向速度情報は、処理対象となっている一のユーザが、現時点の環境において、追い越しを行う傾向がある他の車両の速度を示す情報である。
【0107】
次いで、追越可能車両有無判定部38は、取得した追越傾向速度情報が示す追越傾向速度と、範囲H1内に存在する他の車両の車速とを比較し、追越傾向速度以下の速度で走行する他の車両が、範囲H1内に存在するか否かを判定する。
【0108】
追越可能車両有無判定部38は、範囲H1内に追越傾向速度以下の速度で走行する他の車両が存在する場合は、当該他の車両のそれぞれについて、処理対象となっている一のユーザに係る車両が誘導経路上の次の案内地点に至るまでに追い越し可能か否かを判定する。
【0109】
詳述すると、案内地点とは、誘導経路上に存在する交差点または分岐点のことである。
図6で例示した地図では、分岐点B1は案内地点に相当する。後述するように、車載装置3の経路案内部12は、案内地点と自車両との離間距離が所定の距離となったときに、案内地点で車両が進行する方向に基づいて、推奨車線を提示する。ここで提示される推奨車線は、案内地点を車両がスムーズに経由するために走行することが強く求められる車線であるため、片側道路において追い越しが行われる場合は、案内地点から所定の距離だけ離間した位置に車両が至る前に、その車両の追い越しが完了していることが求められる。
【0110】
これを踏まえ、本実施形態では、追越可能車両有無判定部38は、追越傾向速度以下の速度で走行する他の車両のそれぞれについて、案内地点から当該所定の距離だけ離間した位置から更に所定のマージンを加えた位置(以下、「判定対象地点」という)に当該一のユーザに係る車両が至る前に、当該一のユーザに係る車両が追い越し可能か否かを判定する。なお、所定のマージンは、案内地点から当該所定の距離だけ離間した位置に至るまでに余裕をもって追い越しが完了するように設けられたマージンである。
【0111】
追越可能車両有無判定部38は、処理対象となっている一のユーザに係る車両の速度と、追越傾向速度以下の速度で走行する他の車両の速度との関係や、当該一のユーザが運転する車両と当該他の車両と判定対象地点との位置関係等を踏まえ、上記判定を行う。以下、処理対象となっている一のユーザが運転する車両が走行する片側道路において、範囲H1内に位置し、追越傾向速度以下の速度で走行し、かつ、判定対象地点に至るまでに追い越し可能な他の車両を「追越可能車両」という。
【0112】
追越可能車両有無判定部38は、追越可能車両が存在する場合、その旨を推奨車線提供部39に通知する。一方、追越可能車両有無判定部38は、追越可能車両が存在しない場合、その旨を推奨車線提供部39に通知する。追越可能車両有無判定部38により以上の処理が実行される結果、一のユーザに係る車両に搭載された車載装置3により誘導経路の案内が実行されている間、周期S1で、当該一のユーザに係る車両の前方に追越可能車両が存在するか否かが判定され、判定結果が推奨車線提供部39に通知される。
【0113】
推奨車線提供部39は、追越可能車両有無判定部38により追越可能車両が存在すると判定された場合、追越可能車両が走行する車線よりも右側の車線を推奨車線として提供する一方、追越可能車両が存在しないと判定された場合、左側寄りの車線を推奨車線として提供する。以下、推奨車線提供部39の処理について詳述する。
【0114】
ここで、車載装置3の経路案内部12は、誘導経路の案内中、誘導経路上に存在する案内地点(上述したように、誘導経路上に存在する交差点または分岐点)と自車両との離間距離が所定の距離(例えば、300メートル)となった場合、案内地点で車両が進行する方向(直進や、右折、左折、右分岐、左分岐等)に基づいて、片側道路に設けられた車線のうち、走行することを推奨する推奨車線を提示する。例えば、車載装置3の経路案内部12は、案内地点が交差点の場合において、案内地点で右折が行われる場合、案内地点と自車両との離間距離が所定の距離となったときに、右折に適した右端の車線を推奨車線として提示する。
【0115】
そして、本実施形態に係る推奨車線提供サーバ2の推奨車線提供部39は、一のユーザについて、当該一のユーザが運転する車両の現在位置と案内地点とが、上述した所定の距離を超えて離間した状態のときに、車両が走行する片側道路における複数の車線の中から、後述する観点で当該一のユーザにとって適切な車線を推奨車線として車載装置3に提供する。後述するように、車載装置3の経路案内部12は、案内地点と自車位置とが上述した所定の距離を超えて離間している場合は、推奨車線提供サーバ2から提供された推奨車線を当該一のユーザに提示する。以上を踏まえ、以下、一のユーザが運転する車両と案内地点とが十分に離間しているものとして、当該一のユーザに係る車載装置3に推奨車線を提供するときの推奨車線提供部39の処理について詳述する。
【0116】
推奨車線提供部39は、追越可能車両が存在する場合、その追越可能車両が走行する車線を特定した上で、特定した車線よりも右側の車線を推奨車線として決定する。一のユーザが運転する車両が、追越可能車両が走行する車線よりも右側の車線を走行すれば、追越可能車両を通過することができる。
【0117】
図7は、追越可能車両が存在する場合に推奨車線提供部39が推奨車線を決定するときの処理の説明に用いる図である。
図7で示す地図は、
図6で示す地図の一部と同じであり、片側道路、各車線に、
図6と同じ符号を付している。
図7および後述する
図8において、符号Q1は、処理対象となっている一のユーザが運転する車両を示し、符号Aは、追越傾向速度以下の速度で走行する車両を示し、符号Bは、追越傾向速度を上回る速度で走行する車両を示している。
図7、
図8において、車両Q1から範囲H1内に車両Aが位置している場合、車両Q1は判定対象地点に至る前に、その車両Aを追い越すことができるものとする。上述したように、追越傾向速度以下の速度で走行する車両(
図7、
図8の車両A)が、一のユーザが運転する車両(
図7、
図8の車両Q1)から範囲H1内に位置し、かつ、当該一のユーザが運転する車両が判定対象地点に至る前に追い越しを完了できる場合、「追越可能車両」に相当する。
【0118】
図7(A)は、車両Aが、範囲H1内で、左端の車線D1aを走行しているケースC1を示している。このケースC1の場合、推奨車線提供部39は、車両Aが走行する車線D1aの右側の車線D1b(中央の車線)を推奨車線として決定する。なお、ケースC1の場合、車線D1aの右側には、車線D1bだけでなく、追越車線である車線D1c(右端の車線)も存在するが、追越車線は不必要に走行しないことが求められる車線であるため、推奨車線提供部39は、車線D1cではなく、車線D1bを推奨車線として決定する。つまり、推奨車線提供部39は、追越車線よりも走行車線を優先的に推奨車線として決定する。
【0119】
図7(B)は、車両Aが、範囲H1内で、左端の車線D1aおよび中央の車線D1bのそれぞれを走行しているケースC2を示している。このケースC2の場合、推奨車線提供部39は、車両Aが走行する車線D1a、車線D1bのうち最も右に位置する車線D1bよりも右側の車線D1cを推奨車線として決定する。このように、推奨車線提供部39は、複数の異なる車線に追越可能車両が存在する場合は、追越可能車両が走行する車線のうち最も右に位置する車線よりも右側の車線を推奨車線として決定する。
【0120】
図7(C)は、車両Aが、範囲H1内で、左端の車線D1aを走行し、車両Bが、中央の車線D1bを走行しているケースC3を示している。このケースC3の場合、推奨車線提供部39は、車両Aが走行する車線D1aの右側の車線D1b(中央の車線)を推奨車線として決定する。
【0121】
なお、推奨車線提供部39は、処理対象となっている車両の前方において全ての車線に追越可能車両が存在する場合は、その車両が走行中の車線を、その車両についての推奨車線として決定する。この点に関し、処理対象となっている車両のから一番離間している追越可能車両が走行する車線を、推奨車線として決定する構成でもよい。
【0122】
一方、推奨車線提供部39は、追越可能車両が存在しない場合、処理対象の一のユーザが運転する車両が走行可能な車線のうち、できるだけ左側寄りの車線を推奨車線として決定する。
【0123】
図8は、追越可能車両が存在しない場合に推奨車線提供部39が推奨車線を決定するときの処理の説明に用いる図である。
図8で示す地図は、
図6で示す地図の一部と同じであり、片側道路、車線に、
図6と同じ符号を付している。
【0124】
図8(A)は、範囲H1内に、追越可能車両か否かにかかわらず、他の車両が存在しないケースC4を示している。このケースC4の場合、推奨車線提供部39は、走行可能な車線のうち、できるだけ左側寄りの車線である車線D1aを推奨車線として決定する。
【0125】
図8(B)は、左端の車線D1aおよび中央の車線D1bのそれぞれを、追越傾向速度を右回る速度で車両Bが走行しているケースC5を示している。このケースC5の場合、推奨車線提供部39は、推奨車線提供部39は、走行可能な車線のうち、できるだけ左側寄りの車線である車線D1aを推奨車線として決定する。
【0126】
以上のように、本実施形態では、推奨車線提供部39は、一のユーザに係る車両の前方に追越可能車両が存在するか否かを判定し、存在する場合は、追越可能車両が走行する車線よりも右側の車線を推奨車線として決定する一方、存在しない場合は、できるだけ左側寄りの車線を推奨車線として決定する。これにより以下の効果を奏する。
【0127】
すなわち、本実施形態によれば、処理対象の一のユーザに係る車両を基点として、一定距離(例えば、1キロメートル)より大きい値の距離K1だけ離間した範囲H1内に、追越傾向速度以下の速度で走行する他の車両が存在する場合には、その車両が走行する車線の右側の車線が推奨車線として決定される。このため、決定された推奨車線を認識したユーザは、運転する車両が他の車両に接近したときに車線変更を行うのではなく、当該他の車両との距離が一定距離以上離間している段階で、当該他の車両を通過可能な車線への車線変更を行うことができる。これにより、追い越しに伴って短期間で複数回の車線変更が行われることを抑制できる。
【0128】
例えば、本実施形態では、
図7(A)で示すケースC1の場合、車両Aと車両Q1とが十分に離れている段階で、車両Q1についての推奨車線として車線D1bが決定され、後述する方法で提供される。このため、車両Q1を運転するユーザは、自身が運転する車両Q1と、自身が追い超す傾向にある速度で走行する車両Aとが十分に離れている段階で、余裕をもって車線D1bへの車線変更を行うことができる。従って、ユーザは、車両Q1が車両Aに接近したときに、短期間の間に、車線D1aから車線D1bへの車線変更、および、車線D1bから車線D1aへの車線変更を実行する必要がない。
【0129】
また例えば、本実施形態では、
図7(B)で示すケースC2の場合、車両Q1と車両Aのそれぞれとが十分に離れている段階で、車両Q1についての推奨車線として車線D1cが決定され、後述する方法で提供される。このため、車両Q1を運転するユーザは、自身が運転する車両Q1と、自身が追い超す傾向にある速度で走行する車両Aのそれぞれとが十分に離れている段階で、余裕をもって車線D1cへの車線変更を行うことができる。特にケースC2の場合、推奨車線として決定される車線は、車両Q1の前方に位置する追越可能車両の全てを通過可能な車線であるため、ユーザは、決定された推奨車線を車両に走行させれば、複数の追越可能車両に接近するたびに車線変更を行う必要がなく、効果的にユーザの負担を小さくできる。
【0130】
さらに、本実施形態によれば、一のユーザが運転する車両の前方に、追越傾向速度以下の速度で走行する車両が存在する場合にのみ、換言すれば、当該一のユーザが追い越しを行う可能性が高い車両が存在する場合にのみ、その車両が走行する車線よりも右側の車線(その車両を通過可能な車線)が推奨車線として決定される一方、このような車両が存在しない場合には、左側寄りの車線が推奨車線として決定される。このため、右側寄りの車線が不必要に推奨車線として決定されることを抑制できる。
【0131】
さらに、本実施形態によれば、以下のケースの場合に、ユーザが運転する車両について追い越しに伴って行われる車線変更の回数を低減できる。
図9は、追い越しに伴って行われる車線変更の回数が低減されるケースC5の説明に用いる図である。
図9で示す地図は、
図6で示す地図の一部と同じであり、片側道路、車線に、
図6と同じ符号を付している。
【0132】
図9(A)に示すように、車両Q1が車線D1aに位置し、車線D1aにおいて車両Q1の前方に追越傾向速度以下の速度で走行する車両Aaが位置し、さらに車線D1aにおいて車両Aaの前方に追越傾向速度以下の速度で走行する車両Abが位置しているものとする。なお、
図9(A)において、車両Aaは、車両Q1を基点として範囲H1内に存在している。
【0133】
図9(A)に示す状態の場合、推奨車線提供部39は、車線D1bを推奨車線として決定する。そして、車両Q1が、推奨車線として決定された車線D1bへと車線変更し、車線D1bを走行した場合、いずれ、車両Q1は車両Aaを通過し、車両Q1、車両Aaおよび車両Abの位置関係は、
図9(B)に示す状態となる。なお、
図9(B)において、車両Abは、車両Q1を基点として範囲H1内に存在している。
【0134】
図9(B)の状態において、推奨車線提供部39は、車両Q1についての推奨車線について、車線D1aではなく、車線D1bを推奨車線として決定する。上述したように、推奨車線提供部39は、車両Q1の前方の範囲H1内に、追越傾向速度以下の速度で走行する車両が存在する場合は、その車両が走行する車線よりも右側の車線を、推奨車線として決定するからである。なお、仮に、
図9(B)の状態において、車両Abが存在しなかったとした場合、推奨車線提供部39は、車線D1aを推奨車線として決定する。上述したように、このような場合、推奨車線提供部39は、できるだけ左側寄りの車線を推奨車線として決定するからである。
【0135】
車両Q1が、推奨車線として決定された車線D1bを走行した場合、いずれ、車両Q1は車線D1bにおいて車両Abを通過し、車両Q1、車両Aaおよび車両Abの位置関係は、
図9(C)に示す状態となる。ユーザは、車両Q1が車両Abを通過した後、適切なタイミングで車線変更を行って、車両Q1が走行する車線を車線D1aへと変更する。以上のケースの場合、車両Q1が車両Aaおよび車両Abの双方の車両を通過するために行う車線変更は1回である。従って、車両Q1が車両Aaに接近したときに追い越しのための車線変更が行われ、さらに、車両Q1が車両Abに接近したときに追い越しのための車線変更が行われる場合と比較して、車線変更の回数を低減できる。
【0136】
また、上述したように、本実施形態では、追越可能車両有無判定部38は、追越可能車両の有無の判定に際し、判定対象地点に至る前に、処理対象の一のユーザに係る車両が追い越し可能であること、という条件を満たすか否かを判定する。この構成のため、対象地点地点に至る前に実際には他の車両を追い越すことができないのにもかかわらず、その他の車両を追い越すための車線が推奨車線として提示され、車線変更が行われてしまうことを防止できる。
【0137】
さて、推奨車線提供部39は、一のユーザについての推奨車線を決定した後、サーバ側通信部30を制御して、決定した推奨車線を示す情報を、当該一のユーザに係る車載装置3に送信する。推奨車線を示す情報の送信が、「推奨車線を提供すること」に相当する。推奨車線を示す情報は、車載装置3が推奨車線を特定できるような情報であればよい。
【0138】
車載装置3の経路案内部12は、車載装置側通信部10を介して、推奨車線を示す情報を受信し、取得する。経路案内部12は、受信した情報に基づいて、推奨車線を提示する。推奨車線の提示は、どのような態様で行われてもよい。例えば、タッチパネル8に表示された地図に、推奨車線を明示する画像を表示してもよく、地図上にポップアップにより、自車両が走行する道路の周辺の拡大地図を表示して、当該拡大地図に推奨車線を明示する画像を表示してもよく、音声により推奨車線を提示してもよい。
【0139】
図10は、本実施形態に係る追越傾向速度算出部33の処理の一例を示すフローチャートである。特に、
図10のフローチャートは、一のユーザについて追越傾向速度を算出する際に、環境パターンに応じて車両関連情報をグループ分けした後、一の環境パターンに属する車両関連情報に基づいて追越傾向速度を算出するときの追越傾向速度算出部33が実行する処理を示している。上述したように、本実施形態では、追越傾向速度算出部33は、
図10のフローチャートの処理を、一定期間ごとに実行する。
【0140】
図10のフローチャートに示すように、追越傾向速度算出部33は、一の環境パターンに係るグループに属する車両関連情報のうち、追越フラグがオンの車両関連情報を特定する(ステップSA1)。次いで、追越傾向速度算出部33は、追越フラグがオンの車両関連情報のうち、被追越車両速度情報の値が大きい順から、N個(例えば、5個)の車両関連情報を特定する(ステップSA2)。次いで、追越傾向速度算出部33は、特定したN個の車両関連情報のそれぞれに含まれる被追越車両速度情報を取得する(ステップSA3)。上述したように、ステップSA3で取得されるN個の被追越車両速度情報は、処理の対象となっている一のユーザが一の環境パターンに対応する環境において過去に実際に追い越しを行ったときの他の車両の速度を示す情報であって、値が大きい上位N個の速度を示す情報である。
【0141】
次いで、追越傾向速度算出部33は、処理の対象となっている一のユーザの追越傾向データベースDB2を参照して当該一のユーザのユーザ最適速度情報を取得する(ステップSA4)。次いで、追越傾向速度算出部33は、取得したN個の被追越車両速度情報と、ユーザ最適速度情報との差である追越速度差を算出する(ステップSA5)。上述したように、追越傾向速度算出部33は、ユーザ最適速度情報の値から、被追越車両速度情報の値を減算することによって、追越速度差を算出する。
【0142】
次いで、追越傾向速度算出部33は、N個の追越速度差の平均値である平均追越速度差を算出する(ステップSA6)。次いで、追越傾向速度算出部33は、対応するユーザ最適速度情報の値から、平均追越速度差を減算した値を算出し、算出した値を追越傾向速度とする(ステップSA7)。
【0143】
図11は、本実施形態に係る推奨車線提供サーバ2の処理の一例を示すフローチャートである。
図11のフローチャートは、一のユーザが運転する車両に搭載された車載装置3から車両関連情報を受信し、当該一のユーザについての推奨車線を決定し、提供するときの推奨車線提供サーバ2の処理を示している。
【0144】
図11のフローチャートに示すように、一のユーザに係る車両関連情報の受信に応じて、誘導経路取得部34は誘導経路情報を取得し、車両位置取得部35は自車位置情報(ユーザに係る車両の現在位置)を取得し、車両速度取得部36は自車両速度情報を取得し、環境パターン取得部37は環境パターン情報を取得する(ステップSB1)。
【0145】
次いで、追越可能車両有無判定部38は、ステップSB1で各機能ブロックにより取得された情報に基づいて、上述した処理を行って、追越可能車両が存在するか否かを判定する(ステップSB2)。上述したように、追越可能車両は、処理対象となっている一のユーザが運転する車両が走行する片側道路において、範囲H1内であって判定対象地点に至るまでに追い越し可能な位置に存在し、追越傾向速度以下の速度で走行する他の車両のことである。
【0146】
次いで、推奨車線提供部39は、追越可能車両有無判定部38の判定結果に基づいて、推奨車線を決定する(ステップSB3)。次いで、推奨車線提供部39は、サーバ側通信部30を制御して、ステップSB3で決定した推奨車線を示す情報を、当該一のユーザに係る車載装置3に送信する(ステップSB4)。上述したように、車載装置3の経路案内部12は、推奨車線を示す情報の受信に応じて、車両を運転するユーザに対して推奨車線を提示する。
【0147】
以上詳しく説明したように、本実施形態に係る推奨車線提供サーバ2は、ユーザが車両を運転したときに追い越す傾向にある他の車両の速度である追越傾向速度を記憶する。その上で、本実施形態に係る推奨車線提供サーバ2は、ユーザに係る車両の現在位置を取得し、ユーザに係る車両の前方であって、その車両の現在位置から一定距離以上離間した位置を含む所定の範囲内に、追越傾向速度以下の速度で走行する追越可能車両が存在するか否かを判定し、存在する場合は、追越可能車両が走行する車線よりも右側の車線を推奨車線として提供する一方、存在しない場合は、左側寄りの車線を推奨車線として提供する。
【0148】
この構成によれば、上述したように、右側寄りの車線を車両が不必要に走行することを抑制した上で、追い越しに伴って短期間で複数回の車線変更が行われることを抑制可能な車線を推奨車線として提供できる。
【0149】
<第1変形例>
上述した実施形態では、推奨車線提供サーバ3が推奨車線を提供する(推奨車線を示す情報を送信する)対象の車載装置3は、運転手の操作に従って走行が行われる車両に搭載された装置であった。この点に関し、推奨車線提供サーバ3が、加速、操舵、制動等の車両の走行に関する制御を自動で行う自動運転を実行可能な自動運転車に搭載された車載装置3に推奨車線を提供する構成でもよい。
【0150】
なお、本例において、自動運転は、いわゆる自動運転レベルのうち、レベル3およびレベル4の自動運転であるものとする。レベル3は、加速・操舵・制動の全ての制御が自動で行われる一方、緊急時等の所定の場合には、運転手が車両の運転を行う必要がある自動運転レベルである。また、レベル4は、加速・操舵・制動の全ての制御が自動で行われ、かつ、運転手が車両の運転に関与しない自動運転レベルである。なお、レベル3、4の自動運転レベルで自動運転が行われるために必要な法整備や、道路の整備、その他の環境の整備は、適切になされているものとする。
【0151】
さて、車載装置3が搭載された自動運転車において、自動運転ではなく、ユーザによって運転が行われている間は、推奨車線提供サーバ2、および、一のユーザに係る車載装置3は、上述した実施形態と同様の処理を実行する。一方、車載装置3が搭載された自動運転車において、自動運転が行われている間、推奨車線提供サーバ2は、上述した実施形態と同様の処理を実行して、推奨車線を決定し、推奨車線を示す情報を車載装置3に送信する。なお、自動運転が行われている間に、車載装置3から受信した車両関連情報は、ユーザ最適速度の算出や、追越傾向速度の算出に用いられないように管理される。
【0152】
推奨車線を示す情報を受信した車載装置3は、自動運転を実行する自動運転実行装置に、推奨車線を示す情報を出力する。自動運転実行装置は、自動運転を実行する装置であり、車両の環境(車両の位置や、車両が走行する周囲の状況、車車間距離等)を検出する各種センサや、車両の状態(車速や、相対方位、ギアの状態等)を検出する各種センサ、車両の推進に関する各種機構(エンジンや、トランスミッション、ブレーキ、ステアリング等)を制御する各種ECU等に接続され、車両の環境および車両の状態に応じて各種ECUを制御して自動運転を実行する。
【0153】
自動運転実行装置は、推奨車線を示す情報を入力し、自動運転において、車両が走行する車線を決定する際に、有益な情報として活用する。例えば、自動運転実行装置は、推奨車線への車線変更を安全に実行できる場合には、自動運転により、車両が走行する車線を推奨車線へ車線変更する。
【0154】
上述したように、推奨車線提供サーバ2が提供する推奨車線を車両が走行した場合、短期間の間に複数の車線変更が行われることが抑制される。これを踏まえ、自動運転に、推奨車線提供サーバ2が提供する推奨車線が利用されることにより、自動運転が行われている間、短期間の間に複数の車線変更が行われることを抑制することができ、自動運転実行装置、その他の自動運転を制御する制御装置の処理負荷の増大等を抑制することができる。
【0155】
<第2変形例>
上述した実施形態では、追越可能車両の有無を判定する機能(追越可能車両有無判定部38の機能)、および、推奨車線を決定し提供する機能(推奨車線提供部39の機能)を推奨車線提供サーバ2が備える構成であった。この点に関し、これら機能、および、これら機能に付随する機能の全部を車載装置3が有する構成であってもよい。この場合、車載装置3が特許請求の範囲における「推奨車線提供装置」に相当する。また、これら機能、および、これら機能に付随する機能の一部を車載装置3が有する構成であってもよい。この場合、車載装置3および推奨車線提供サーバ2が協働して「推奨車線提供装置」として機能する。
【0156】
<第3変形例>
上述した実施形態では、追越傾向速度算出部33は、追越傾向速度を算出する際、ユーザ最適速度を算出すると共に平均追越速度差を算出し、ユーザ最適速度情報の値から平均追越速度差を減算することによって追越傾向速度を算出した。この点に関し、追越傾向速度を算出する方法は、上述の実施形態で説明した方法に限らない。例えば、追越傾向速度算出部33が、以下の方法で追越傾向速度を算出する構成でもよい。以下、一の環境パターンに係るグループに属する車両関連情報に基づいて、一のユーザについての追越傾向速度を算出するときの追越傾向速度算出部33の処理の変形例について説明する。
【0157】
追越傾向速度算出部33は、当該一の環境パターンに係るグループに属する当該一のユーザについての車両関連情報のうち、追越フラグがオンの車両関連情報を特定する。次いで、追越傾向速度算出部33は、追越フラグがオンの車両関連情報のうち、被追越車両速度情報の値が大きい順から、N個(例えば、5個)の車両関連情報を特定する。次いで、追越傾向速度算出部33は、特定したN個の車両関連情報のそれぞれに含まれる被追越車両速度情報を取得する。次いで、追越傾向速度算出部33は、取得したN個の被追越車両速度情報の平均値を算出し、算出した平均値を追越傾向速度とする。なお、被追越車両速度情報の平均値を算出する際に、現時点から過去に遡って一定の期間に登録された車両関連情報の被追越車両速度情報を使用する構成でもよい。また、被追越車両速度情報の平均値を算出する際に、現時点に近いタイミングで登録された車両関連情報の被追越車両速度情報ほど、算出される値に影響を与えるような重みづけを行ってもよい。
【0158】
このような方法で追越傾向速度を算出した場合であっても、適切に、追越傾向速度の値を、ユーザが追い越しを行う傾向にある他の車両の速度の上限値とみなすことができるような値とすることができる。
【0159】
以上、3つの変形例について説明した。これら変形例のほか、上述した実施形態では、追越可能車両有無判定部38は、追越可能車両の有無の判定に際し、案内地点に至る前(厳密には、案内地点より手前の判定対象地点に至る前)に、処理対象のユーザに係る車両が追い越し可能であること、という条件を満たすか否かを判定していた。この点に関し、当該条件を満たすか否かを判定しない構成でもよい。この場合であっても、推奨車線提供サーバ2は、推奨車線に関する有益な情報を提供することができる。例えば、上記処理によれば、誘導経路が設定されていない場合であっても、推奨車線に関する有益な情報を提供することが可能となる。
【0160】
また、上述した実施形態では、追越傾向速度記憶部51は、ユーザのそれぞれについて、道路属性、制限速度および天候の組み合わせごとに追越傾向速度を記憶していた。また、追越可能車両有無判定部38は、追越可能車両が存在するか否かの判定に際し、範囲H1内に、ユーザに係る車両が走行する道路に係る道路属性、制限速度および現在の天候の組み合わせに対応する追越傾向速度以下の速度で走行する車両が存在するか否かを判定した。この点に関し、追越傾向速度記憶部51は、道路属性、制限速度もしくは天候の何れか1つ、または、何れか2つ以上の組み合わせごとに追越傾向速度を記憶する構成であればよい。この場合、追越可能車両有無判定部38は、追越可能車両の有無の判定に際し、ユーザに係る車両が走行する道路に係る道路属性、制限速度もしくは現在の天候の何れか1つ、または、何れか2つ以上の組み合わせに対応する追越傾向速度以下の速度で走行する車両が存在するか否かを判定する。
【0161】
また、追越傾向速度記憶部51が、道路区間、または、道路区間と天候との組み合わせごとに追越傾向速度を記憶する構成であってもよい。この場合、追越可能車両有無判定部38は、追越可能車両の有無の判定に際し、ユーザに係る車両が走行する道路に係る道路区間、または、当該道路区間と現在の天候との組み合わせに対応する追越傾向速度以下の速度で走行する車両が存在するか否かを判定する。
【0162】
また、上述した実施形態では、推奨車線提供サーバ2による推奨車線の提供は、車載装置3の経路案内部12により誘導経路が案内されている場合に行われていた。この点に関し、推奨車線提供サーバ2は、誘導経路の案内中ではない場合に、推奨車線を決定し提供してもよい。
【0163】
また、上述した実施形態では、追越傾向データベースDB2において、ユーザ最適速度情報は、値として、具体的な速度を示す値を有していた。この点に関し、ユーザ最適情報を、対応する道路の制限速度に対する割合を示す値としてもよい。また、上述した実施形態では、追越傾向データベースDB2において、追越傾向速度情報は、値として、具体的な速度を示す値を有していた。この点に関し、追越傾向速度情報を、対応するユーザ最適速度情報に対する割合を示す値としてもよい。
【0164】
また、上述した実施形態において、追越可能車両が存在するか否かの判定に際し、追越傾向速度に一定のマージンを加え、処理対象となっているユーザの車両の前方に、マージンを加えた追越傾向速度以下の速度で走行する他の車両が存在するか否かを判定する構成でもよい。
【0165】
また、上述した実施形態では、追い越しを、自車両が、同一車線を走行する他の車両よりも右側の車線に一旦車線変更し、車線変更後の車線において当該他の車線を通過し、その後、元の車線に車線変更する態様で行われる自車両の移動と定義した。この点について、同一車線を走行する他の車両よりも右側の車線に一旦車線変更し、車線変更後の車線において当該他の車線を通過する態様で行われる自車両の移動も「追い越し」に含める構成でもよい。
【0166】
また、上述した実施形態において、推奨車線提供部39が推奨車線を決定する際に以下の処理を実行する構成でもよい。すなわち、推奨車線提供部39は、処理対象となっている一のユーザに係る車両が、道路の左端の車線を走行している場合、その左端の車線(一のユーザに係る車両が走行する車線と同一の車線)において、当該一のユーザに係る車両の前方の範囲H1内に他の車両が存在するか否かを判定する。そして、その左端の車線に他の車両が存在しない場合は、その左端の車線を推奨車線として決定する。ここで、一のユーザに係る車両が左端の車線を走行している場合、その左端の車線に他の車両が存在しなければ、その左端の車線よりも右側の車線に追越傾向速度以下で走行する車両が存在している場合であっても、当該一のユーザに係る車両は、車線変更を伴うことなく、その左端の車線を走行できる。これを踏まえ、推奨車線提供部39が上述した処理を実行することにより、追い越しに伴って行われる車線変更を低減することが可能となる。
【0167】
その他、上記各実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。