特許第6932458号(P6932458)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6932458
(24)【登録日】2021年8月20日
(45)【発行日】2021年9月8日
(54)【発明の名称】ハンドリフト
(51)【国際特許分類】
   B62B 1/14 20060101AFI20210826BHJP
【FI】
   B62B1/14
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-140386(P2018-140386)
(22)【出願日】2018年7月26日
(65)【公開番号】特開2020-15445(P2020-15445A)
(43)【公開日】2020年1月30日
【審査請求日】2020年7月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】盛田 友和
【審査官】 久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−152037(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3069931(JP,U)
【文献】 実開平02−040711(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3064833(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 1/00−5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
盤を搬送し、前記盤をチャンネルベース上に設置するハンドリフトであって、
前記盤の両側から挟み込んで支持する第1支持部材と、
前記第1支持部材を昇降させるジャッキと、
前記盤を固定する第2吸着機構を含み、前記第1支持部材が前記盤を挟み込む方向に延伸して、前記第1支持部材とともに前記盤をコの字状に囲むように設けられ、前記第2吸着機構によって前記盤を挟み込む方向とは異なる方向から前記盤を支持する第2支持部材と、
を備え、
前記第1支持部材は、前記盤に押し付けて前記盤を固定し得る第1吸着機構を含み、前記第2支持部材によって端部を支持されて、前記第2支持部材が延伸している方向に沿って可動するハンドリフト。
【請求項2】
前記ジャッキは、油圧ジャッキを含む請求項1記載のハンドリフト。
【請求項3】
前記第1吸着機構は、吸着パッドと、前記吸着パッド内の空気を手動で排気するポンプと、を含む請求項1または2に記載のハンドリフト。
【請求項4】
前記第1吸着機構は、前記吸着パッドに接続され、回動自在に前記第1支持部材と接続する支持フレームを含み、
前記第1支持部材は、凹面を含み、
前記支持フレームは、前記凹面に沿って摺動する請求項記載のハンドリフト。
【請求項5】
前記第2支持部材に対向する位置に配置されて前記盤を固定し得る第3支持部材をさらに備えた請求項1〜のいずれか1つに記載のハンドリフト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、プラントに設置する盤を搬送するハンドリフトに関する。
【背景技術】
【0002】
プラントの電気室等に設置する制御盤や電源盤等の盤は、あらかじめ設けられたチャンネルベース上に設置される。チャンネルベースは、盤を設置室内のコンクリート床上に水平に設置するために設けられる。
【0003】
床上にチャンネルベースを設けたことによって、盤を搬送する床と搬送してきた盤を設置するチャンネルベースとの間に段差が生じる。そのため、あらかじめチャンネルベース上にチルローラ等を配置しておき、ハンドリフトによって搬送された盤をチルローラでコロ引きして、盤をチャンネルベース上の所望の位置に配置している。
【0004】
このように、プラントにおける盤の設置工事には、複数の段階を経る必要があるため、多大な工数がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−16366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
実施形態は、盤の設置工事を簡素化するハンドリフトを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係るハンドリフトは、盤を搬送し、前記盤をチャンネルベース上に設置するのに用いられる。このハンドリフトは、前記盤の両側から挟み込んで支持する第1支持部材と、前記第1支持部材を昇降させるジャッキと、前記盤を固定する第2吸着機構を含み、前記第1支持部材が前記盤を挟み込む方向に延伸して、前記第1支持部材とともに前記盤をコの字状に囲むように設けられ、前記第2吸着機構によって前記盤を挟み込む方向とは異なる方向から前記盤を支持する第2支持部材と、を備える。前記第1支持部材は、前記盤に押し付けて前記盤を固定し得る第1吸着機構を含み、前記第2支持部材によって端部を支持されて、前記第2支持部材が延伸している方向に沿って可動する
【発明の効果】
【0008】
本実施形態では、盤の設置工事を簡素化するハンドリフトが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係るハンドリフトの模式的な斜視図である。
図2】実施形態のハンドリフトの使用状態を例示する模式的な斜視図である。
図3】実施形態のハンドリフトの模式的な背面図である。
図4】実施形態のハンドリフトの動作を説明するための模式的な斜視図である。
図5図5(a)は、ハンドリフトの一部の模式的な断面図である。図5(b)は、ハンドリフトの一部の模式的な側面図である。
図6】実施形態のハンドリフトの動作を説明するための模式的な斜視図である。
図7】実施形態の変形例に係るハンドリフトの使用状態を例示する模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0011】
図1は、実施形態に係るハンドリフトの模式的な斜視図である。
図1に示すように、実施形態のハンドリフト1は、複数の台座2,4と、複数の支柱5,6と、複数のフレーム7,8と、を備える。台座2,4は、いずれもたとえば断面方形の柱状または筒状の部材である。2つの台座2は、延伸している方向でほぼ平行になるように離隔して配置されている。離隔して配置された2つの台座2のそれぞれの一端には、台座4が設けられている。台座4は、延伸している方向が、台座2の延伸している方向とほぼ直交するように配置されており、台座4は、台座2上に重ねて設けられている。後に詳述するように、2つの台座2は、台座4に対して、台座4が延伸している方向に可動する。
【0012】
以下の説明では、三次元座標を用いることがある。三次元座標は、台座2が延伸している方向に平行するX軸と、X軸に直交するY軸と、X軸およびY軸に直交するZ軸と、を含む。
【0013】
このような三次元座標によれば、3つの台座2,4は、XY平面視で「コ」の字状に配置されている。2つの台座2の下部には、車輪3がそれぞれ設けられている。車輪3は、台座2が延伸している方向に沿う方向に進行するように設けられている。ハンドリフト1は、台座2の下部に設けられた車輪3によって、Y軸に沿って走行することができる。
【0014】
台座2には、一端で台座2に接続され、Z軸方向に延伸している支柱6が設けられている。この例では、支柱6は1つの台座2にそれぞれ2つ設けられている。2つの支柱6は、台座2上でX軸に沿って離隔して設けられている。支柱6の他端には、フレーム(第1支持部材)7が設けられている。フレーム7は、たとえば断面方形の柱状あるいは筒状の部材である。2つのフレーム7は、それぞれの台座2とほぼ平行になるように設けられている。
【0015】
台座4にも、一端で台座4に接続され、Z軸方向に延伸している支柱5が設けられている。この例では、支柱5は、1つであり、台座4の延伸方向(X軸方向)のほぼ中央に設けられている。支柱5の他端には、フレーム(第2支持部材)8が設けられている。フレーム8は、たとえば断面方形の柱状あるいは筒状の部材である。フレーム8は、台座4とほぼ平行になるように設けられている。
【0016】
フレーム8は、2つのフレーム7のそれぞれの一端において、接続されている。2つのフレーム7は、支柱6によって2つの台座2にそれぞれ接続されている。また、フレーム8は、支柱5によって台座4に接続されている。フレーム7,8は、支柱6,5によって台座2,4と接続されており、XY平面視で、フレーム7,8は、台座2,4と同様に「コ」の状に配置されている。フレーム7は、台座2とともに、フレーム8および台座4に沿って(X軸方向に)可動する。
【0017】
台座2を台座4に接続しつつ可動させるために、台座4の両端付近には開口5aが設けられている。同様に、フレーム7をフレーム8に接続しつつ可動させるために、フレーム8の両端付近には開口8aが設けられている。台座2およびその上部構造である支柱6、フレーム7は、開口5a,8aのX軸方向の長さの範囲でX軸方向に可動する。
【0018】
台座4の開口5aは、台座2に収納されているジャッキ機構を、台座4上に設けられているジャッキ31に連結させるために設けられている。
【0019】
フレーム8の開口8aは、フレーム8に収納されている間隔調整機構をフレーム7と連結させるために設けられている。
【0020】
台座2,4、支柱5,6、およびフレーム7,8は、十分な強度を有する材料で形成されている。たとえば、これらは、鋼材によって形成される。後に詳述するように、台座2,4には、昇降動作のためのジャッキ機構が収納されるため、内部に収納空間を有する。また、支柱5およびフレーム7,8には、搬送物の固定のための吸着装置から空気を排出、導入するための配管を収納する収納空間を有する。したがって、台座2,4およびフレーム7,8は、たとえば断面方形の管材である。支柱6についても、軽量化のため、強度を確保できる範囲で、たとえば断面方形の筒状の管材を用いることが好ましい。
【0021】
ジャッキ31には、Z軸正方向に延伸しているジャッキレバー30がそれぞれ取り付けられており、ジャッキレバー30の他端には、ハンドル32が設けられている。ジャッキレバー30は、フレーム8との干渉をさけるために、ジャッキレバー30の中間付近からY軸正方向に一旦屈曲させ、さらにZ軸正方向に屈曲、延伸されている。ジャッキ31は、内部に支点が設けられており、この支点により前後(Y軸方向)に回動することができる。
【0022】
ハンドル32は、オペレータが、ジャッキレバー30を引いてジャッキアップしたり、ジャッキレバー30を介して、ハンドリフト1を押したりけん引したりするのに操作しやすい適切な形状とされる。この例では、X軸方向に延伸し、ほぼ平行に配置された横バー部分および2つの横バー部分をそれぞれの両端で連結する縦バー部分を有するほぼ方形環状体である。上側の横バー部分付近には、解放レバー33がそれぞれ設けられている。解放レバー33は、横バー部分にほぼ平行になるように設けられている。
【0023】
ジャッキ31は、図示しないジャッキ機構と連結されている。ジャッキ機構は、車輪3を支持する車輪支持部34(図2)と連結されており、オペレータがハンドル32を把持して操作することによって、車輪支持部を介して台座2を上方(Z軸正方向)に持ち上げることができる。オペレータによるハンドル32の操作は、たとえばハンドル32を手前(Y軸正方向)に引いてジャッキ31内の支点により回動させることである。
【0024】
上方に持ち上げられたジャッキ31は、オペレータが解放レバー33を操作することによって、降下させることができる。オペレータによる解放レバー33の操作は、たとえば上側の横バーとともに解放レバー33を握ることである。
【0025】
ジャッキ31は、好ましくは油圧ジャッキである。油圧ジャッキでは、油圧によって、台座を昇降することができるので、他の駆動エネルギーの供給を要することなく、台座2,4およびその上部構造を昇降させることができる。
【0026】
各フレーム7,8には、それぞれ複数の吸着パッド(第1吸着機構、第2吸着機構)10が設けられている。吸着パッド10の配置は、任意とすることができるが、この例では、複数の吸着パッド10は、フレーム7,8の延伸方向に沿って1列に配置されている。1列に限らず、2列に配置してもよく、2列配列の場合に千鳥状の配列としてもよい。吸着パッド10の配置個数も任意とすることができるが、搬送物に対する吸着の強度に応じて、適切な個数を配置することができる。
【0027】
吸着パッド10は、それぞれの吸着パッド10の吸着面がXY平面視でコの字状に配置されたフレーム7,8の内側を向くように設けられている。吸着パッド10が配置された側に搬送物が配置される。吸着パッド10は、吸着面を搬送する盤等の面に押し付けて押し付けられた面の空気を排気することによって、搬送物を吸着、固定する。
【0028】
吸着パッド10は、エアペダル22によって、空気を排気することができる。エアペダル22は、エア弁21とともに空気ポンプとして機能する。オペレータは、エアペダル22を踏むことによって、吸着パッド10の吸着面側の空気を排気することができる。エア弁21は、エアペダル22を踏み込んだときに開放される弁を含んでおり、吸着面側の空気は弁の開放によりエア弁21の外部に排気される。エアペダル22を踏み込んでいないときにエア弁21の吸気側の弁を開放することによって、吸着パッド10の吸着面側に空気を導入して、吸着パッド10に吸着された搬送物を開放することができる。
【0029】
このように、吸着パッド10の排気および吸気は、エア弁21およびエアペダル22からなる空気ポンプによって、電力等のエネルギーを要することなく行うことができる。
【0030】
図2は、実施形態のハンドリフトの使用状態を例示する模式的な斜視図である。
図2に示すように、ハンドリフト1は、台座2およびその上部構造(支柱6、フレーム7)の離隔間隔を調整することによって、搬送物である盤100を挟み込み、コの字状に盤100の3面に配置された吸着パッド10によって、盤100をハンドリフト1に支持、固定する。さらにジャッキ機構によって、支持、固定された盤100を持ち上げて、車輪3によって盤100を搬送する。
【0031】
盤100は、その奥行や幅に応じて設定された幅Wcおよび高さHcを有するチャンネルベース102上に搬送されて、所定の位置に設置される。
【0032】
実施形態のハンドリフト1の動作について説明する。
図3は、実施形態のハンドリフトの模式的な背面図である。
図4は、実施形態のハンドリフトの動作を説明するための模式的な斜視図である。
図3に示すように、フレーム8の背面には、ハンドル40が設けられている。ハンドル40は、2つのフレーム7の端部に対応する位置にそれぞれ設けられている。ハンドル40は、フレーム7,8を相互に連結する間隔調整機構(図示せず)に接続されている。間隔調整機構は、フレーム8に沿って、すなわちX軸方向に沿って、フレーム7を可動させる機構である。間隔調整機構は、たとえばギアボックスである。この例では、ハンドル40を時計回りに回すことによって、フレーム7は、X軸の負方向に移動し、ハンドル40を反時計回りに回すことによって、フレーム7は、X軸の正方向に移動する。
【0033】
たとえば、2つのハンドル40を一方は時計回り、他方は反時計回りに回すことによって、図4の矢印のように、2つのフレーム7および台座2の間隔Wを広げたり、狭めたりすることができる。この例では、左側(X軸の正側)のハンドル40を時計回りに回し、右側(X軸の負側)のハンドル40を反時計回りに回すと、2つのフレーム7の間隔が狭まる。
【0034】
図5(a)は、ハンドリフトの一部の模式的な断面図である。図5(b)は、ハンドリフトの一部の模式的な側面図である。
図5(a)は、図5(b)のAA線における模式的な矢視断面図であり、吸着パッド10およびフレーム7の接続の構造を簡略して表している。フレーム8に設けられた吸着パッド10についても同様であり、後述する変形例の補助フレームに設けられた吸着パッドについての接続構造は同様である。
【0035】
図5(a)および図5(b)に示すように、吸着パッド10は、この例では、フレーム7の延伸している方向に沿って複数個設けられている。吸着パッド10は、パッド本体12と、摺動フレーム14と、を含む。パッド本体12には、吸排気チューブ20の一端が接続されている。
【0036】
パッド本体12は、パッド本体12の外周面を含む球の半径よりも短い深さを有する凹面形状をなしている。パッド本体12は、ゴム等の弾性を有する材料により形成されている。つまり、パッド本体12は、吸盤である。吸排気チューブ20の一端は、たとえばパッド本体12の凸側頂部にパッド本体12を貫通して接続されている。吸排気チューブ20は、フレーム7,8内および支柱5内を延伸されてエア弁21に他端で接続されている。吸排気チューブ20は、可撓性のある材料、たとえばPVC(PolyVinyl Chloride)等で形成されている。
【0037】
パッド本体12が盤100の面に押し付けられて平面状に変形し、さらに吸排気チューブ20を介して、凹部形状内に残留する空気が廃棄されることによって、押し付けられた面との間で接続の強度が確保される。
【0038】
摺動フレーム(支持フレーム)14は、パッド本体12の凸側に接続されている。フレーム7,8の吸着パッド10が設けられている側には、パッド本体12の外周面を含む球の半径よりもやや長い長さの半径を有する球面の一部である凹面7aが形成されている。摺動フレーム14の外周は、凹面7aに滑らかに沿うような曲面を有している。摺動フレーム14がフレームに形成された凹面7aに沿って摺動することによって、摺動フレーム14を凹面7a上で回動させることができ、パッド本体12の向きを自在に設定することができる。パッド本体12が球状の凹面7aに沿って摺動することによって、搬送物の面にパッド本体12を十分に密着させることができ、搬送物を安定して固定することができる。
【0039】
図6は、実施形態のハンドリフトの動作を説明するための模式的な斜視図である。
ジャッキ31は、図示しないジャッキ機構に連結されている。ジャッキ機構は、車輪支持部34に接続されている。
図6に示すように、実施形態のハンドリフト1では、オペレータがハンドル32を握って、ジャッキレバー30を操作する(Y軸正方向に引きつつ、ジャッキ31内支点を中心に回動させる)ことによって、ジャッキ機構が作動し、車輪3を一端で支持している車輪支持部34がジャッキアップされて、車輪支持部34の他端に接続されている台座2を上方に持ち上げる。
【0040】
台座2の上部には、さらに台座4が接続され、それぞれの台座2,4には、支柱6,5を介してフレーム7,8が接続されている。台座2がジャッキアップされることによって、台座4および上部構造である支柱6,5およびフレーム7,8を上方に持ち上げることができる。
【0041】
ジャッキアップすることによって、車輪3の下端(設置面)から台座2の下面までの高さHを、チャンネルベース102の高さHc(図2)よりも高くすることができる。
【0042】
オペレータは、解放レバー33をハンドル32とともに握ることによって、ジャッキアップの状態を解放することができる。ジャッキアップの状態を解放することによって、台座2,4、その上部構造である支柱6,5およびフレーム7,8を元の高さに戻すことができる。
【0043】
実施形態のハンドリフト1の使用方法について説明する。
電気室等の設置床面には、チャンネルベース102が設けられている(図2)。チャンネルベース102は、Y軸方向に沿って複数の盤100を設置するために、Y軸方向の長さがX軸方向の長さよりも長く設定されている。盤100の設置の向きは任意とすることができるが、この例では、YZ平面にほぼ平行する面に操作盤等が配置される。設置後の盤100の操作者は、操作盤に向かって操作することができる。
【0044】
実施形態のハンドリフト1では、盤100の1つの面にフレーム8に設けられた吸着パッド10が密着するように、車輪3を動かして手動でハンドリフト1を移動させる。この例では、盤100の側面にフレーム8の吸着パッド10を押し付けるように、ハンドリフト1を、Y軸負方向に移動させる。
【0045】
2つのフレーム7の間隔は、盤100の寸法に応じて調整される。この例では、2つのフレーム7の間隔は、盤100の奥行の寸法にしたがって調整される。2つのフレーム7の間隔は、間隔調整機構のハンドル40を操作することによって設定される。
【0046】
2つのフレーム7の間隔を調整する際には、盤100の正面および背面に吸着パッド10をそれぞれ押し付け、吸着パッド10が盤100の面に密着するまで調整する。
【0047】
ここで、チャンネルベース102の幅Wcは、盤の奥行とほぼ等しく設定されている。フレーム7の間隔Wは、盤100の奥行の寸法と吸着パッド10の厚さ分(正確には、押し付けによってつぶれた厚さ分)との和にほぼ等しくなるように調整されているので、チャンネルベース102の幅Wcともほぼ等しく調整されていることとなる。なお、台座2の間隔を、フレーム7の間隔よりも、たとえば数cm〜数10cm程度広く設定しておくことによって、作業を容易にできるようになる。
【0048】
エアペダル22を踏み込んで、押し付けた吸着パッド10の吸着面内の空気を抜いて盤100の側面、正面および背面を吸着パッド10の吸着面にそれぞれ固定する。
【0049】
ジャッキ31によって、吸着パッド10を介してフレーム7,8に固定された盤100を持ち上げる。持ち上げる高さは、チャンネルベース102の高さHcよりも高くなるように設定する。
【0050】
ハンドリフト1は、盤100を持ち上げた状態で、Y軸方向に沿ってチャンネルベース102に進入する。このとき、フレーム7および台座2の幅Wは、チャンネルベース102の幅Wc程度とされているので、ハンドリフト1は、チャンネルベース102をまたぐことができる。
【0051】
ハンドリフト1は、盤100を設置する位置に移動されたら、ジャッキ31を開放して、設置位置に盤100を降ろす。
【0052】
エア弁21を操作することによって、吸着パッド10内に空気を導入して、吸着パッド10を盤100の面から解放する。
【0053】
間隔調整機構のハンドルを操作することによって、2つのフレーム7の間隔を広げて、吸着パッド10を介したフレーム7,8への盤100の固定状態を解除する。
【0054】
ハンドリフト1を、Y軸正方向に沿って移動させ、盤100の搬送作業を終了する。
【0055】
このように、実施形態のハンドリフト1では、フレーム7および台座2の幅Wがチャンネルベース102の幅Wc程度に調整され、その状態で盤100がジャッキアップされている。そのため、ハンドリフト1は、チャンネルベース102と設置床面との間に段差があっても、チャンネルベース102をまたいで所定の位置に盤100を搬送することができる。
【0056】
(変形例)
図7は、実施形態の変形例に係るハンドリフトの使用状態を例示する模式的な斜視図である。
図7に示すように、変形例のハンドリフト1は、補助フレーム50をさらに備えている。補助フレーム(第3支持部材)50は、搬送物をフレームおよび台座のコの字枠内に配置した後に、盤100のハンドリフト1に対する固定強度を補助するために用いられる。補助フレーム50の内側、すなわち盤100に向かう面には、図示しないが、上述した吸着パッド10と同様の吸着パッドが複数個設けられている。
【0057】
上述のように、補助フレーム50は、搬送物をコの字枠内に配置した後に用いるので、ハンドリフト1の吸排気システムから独立している。そのため、補助フレーム50は、自己の吸着パッドのための吸排気システムを有している。この例では、補助フレーム50は、吸排気用レバー52を有する。吸排気用レバー52は、補助フレーム50内に収納された図示しないエア弁を駆動して、吸着パッドの空気を排気する。吸排気用レバー52は、たとえば時計回りに回すことによって、吸着パッドの空気を排気するようにエア弁を駆動する。吸排気用レバー52は、たとえば反時計回りに回すことによって、吸着パッドに空気を導入するようにエア弁を駆動する。
【0058】
変形例における補助フレーム50の使用方法について説明する。
補助フレーム50は、台座2,4およびフレーム7,8のコの字枠内に盤100を配置した後に、2つの台座2上に載置される。
【0059】
台座2,4およびその上部構造を間隔調整機構によって盤100の位置を合わせて、盤100の3つの面を吸着パッド10に固定する。
【0060】
吸排気用レバー52を操作して、補助フレーム50の吸着パッドの空気を排気して、盤100の残りの面を吸着パッドに固定する。
【0061】
このように、補助フレーム50を追加的に用いることによって、盤100の周囲の4面を吸着パッドで固定することができる。補助フレーム50は、その両端付近で2つのフレーム7に支持されており、吸着パッドで搬送物に固定されているので、フレーム7に他の固定手段を用いることなく、安定して、搬送物を固定することができる。
【0062】
実施形態およびその変形例のハンドリフト1の効果について説明する。
ハンドリフト1は、搬送物の幅や奥行に合わせて可動する台座2、それらの上部構造である支柱6およびフレーム7を備えているので、搬送物を両側から挟み込んで支持することができる。
【0063】
ハンドリフト1は、フレーム7の搬送物側に空気を排気して搬送物に固定できる吸着パッド10を備えているので、挟み込んだ搬送物を他の動力を要することなくフレーム7に固定することができる。
【0064】
ハンドリフト1は、2の台座2にほぼ直交するように設けられた台座4をさらに備えており、台座4に支柱5を介して、ほぼ平行に設けられたフレーム8にも吸着パッド10を備えている。そのため、ハンドリフト1は、搬送物を3面で支持し、安定して固定することができる。
【0065】
フレーム7,8は、球の半径よりもやや長い長さの凹面7aを有しており、吸着パッド10は、パッド本体12に接続され、凹面7aに滑らかに沿うような曲面を有する摺動フレーム14を有している。そのため、摺動フレーム14を介して、パッド本体12がフレーム7,8に対して自在に回動することができる。したがって、搬送物の吸着面の向きに応じて、吸着パッド10を固定することできる。
【0066】
このように、実施形態のハンドリフト1では、2つのフレーム7で挟み込んで搬送物を支持、固定し、ジャッキアップするので、チャンネルベースの段差にかかわらず、チャンネルベース上に搬送物を搬送し、載置することができる。
【0067】
ハンドリフト1によって搬送する盤は、その重量が1トンを超える場合もあり、このような重量物でも安全、確実に搬送される必要がある。実施形態のハンドリフト1では、XY平面視でコの字状に配置されたフレームの内側に吸着パッド10を複数個配置している。ハンドリフト1では、多数の吸着パッド10を用い、搬送物の3面を支持して固定するので、重量の重い盤であっても、安全、確実に搬送することができる。
【0068】
さらに重量の重い搬送物を搬送する場合や、搬送物の形状等によって吸着力が不足する場合には、補助フレーム50を追加することによって、搬送物の4面を支持することができ、吸着力を向上させることができる。
【0069】
重量物を扱う場合以外にも、補助フレーム50を用いることができる。すなわち、搬送する盤は、すべての面が平坦な面であるとは限らず、盤の正面や背面が開放されていることがある。そのような場合に、盤の正面および背面をフレーム7で挟み込む場合には、吸着すべき面が確保できないこととなる。そこで、補助フレーム50を追加することによって、平坦面が確保できる盤の2つの側面を支持することによって、安全、確実に盤を固定することができる。
【0070】
なお、上述したハンドリフトの構成は、上述に限らず、適切に変更、修正することができるのは言うまでもない。たとえば、実施形態および変形例では、フレーム8を支持する1つの支柱5と、その両側にジャッキ31およびジャッキレバー30等が設けられているが、1組のジャッキおよびジャッキレバー等を台座4の中央付近に配置し、支柱をジャッキおよびジャッキレバー等の両側に配置するようにしてもかまわない。また、間隔調整機構のハンドルも1つのハンドルで、2つのフレーム7の間隔を調整できるようにしてもよい。
【0071】
以上説明した実施形態によれば、盤の設置工事を簡素化するハンドリフトを実現することができる。
【0072】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明およびその等価物の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 ハンドリフト、2,4 台座、3 車輪、5,6 支柱、7,8 フレーム、10 吸着パッド、12 パッド本体、14 摺動フレーム、20 吸排気チューブ、21 エア弁、22 エアペダル、30 ジャッキレバー、31 ジャッキ、32 ハンドル、33 解放レバー、34 車輪支持部、40 ハンドル、50 補助フレーム、52 吸排気用レバー、100 盤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7