(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1の実施形態]
本実施形態は、有機樹脂基板の製造方法に係るものである。かかる有機樹脂基板の製造方法(以下、本製造方法と示す。)は、以下の4つの工程をこの順に含むものである。第1の工程は、下地基板上に第1金属パターンを形成する工程である(以下、金属パターン形成工程と示す。)。第2の工程は、第1金属パターンを埋設する第1有機樹脂膜を形成する工程である(以下、有機樹脂膜形成工程と示す。)。第3の工程は、第1有機樹脂膜の全面を研磨して第1金属パターンの上面を露出させる工程である(以下、研磨工程と示す。)。第4の工程は、露出した第1金属パターン中の金属配線と接触するように導体部を形成する工程である(以下、導体部形成工程と示す。)。
【0014】
以下、上述した各工程について、
図1〜3を参照して説明する。なお、
図1〜3は、いずれも本実施形態に係る有機樹脂基板の製造方法の一例を説明するための図である。
【0015】
(金属パターン形成工程)
本実施形態に係る金属パターン形成工程について、
図1を参照して説明する。
まず、
図1(a)に示すように、下地基板10を準備する。かかる下地基板10は、後述する製造工程において、当該有機樹脂基板を構成する各層の平坦性を保持するための支持部材として使用するものである。そのため、下地基板10は、後述するように、最終的には、得られた有機樹脂基板から分離して除去される。このような下地基板10は、平坦性、剛直性および耐熱性等の特性を有するものであることが好ましい。また、下地基板10としては、たとえば、金属板を用いることができる。かかる金属板の具体例としては、銅板、アルミニウム板、鉄板、鋼鉄(スチール)板、ニッケル板、銅合金板、42合金板、ステンレス板等が挙げられる。なお、上記鋼鉄(スチール)板は、SPCC(Steel Plate Cold Commercial)などの冷間圧延鋼板の態様であってもよい。また、金属板は、フレーム形状に加工された枚葉のものであってもよく、フープ状の連続形状のものであってもよい。
【0016】
次に、
図1(b)に示すように、下地基板10上に絶縁層20(以下、絶縁性樹脂膜20とも示す。)を積層する。なお、上述した絶縁性樹脂膜20を形成する材料の詳細については後述するが、たとえば、感光性樹脂組成物等を上記材料として用いることができる。また、下地基板10上に絶縁性樹脂膜20を積層する方法は、絶縁性樹脂膜20を形成する材料の形態に応じた手法を適宜採用すればよい。上記絶縁性樹脂膜20を形成する材料が液状である場合、たとえば、コーターやスピンナー等を用いてかかる材料を下地基板10上に塗布した後、乾燥させることにより所望の絶縁性樹脂膜20を形成することができる。上記絶縁性樹脂膜20を形成する材料がペースト状である場合、たとえば、印刷処理等を施して下地基板10上にかかる材料を塗布した後、乾燥させることにより所望の絶縁性樹脂膜20を形成することができる。上記絶縁性樹脂膜20を形成する材料がドライフィルムの形態である場合、たとえば、ラミネーター等によりフィルムを下地基板10上に熱圧着させてラミネーションすることで所望の絶縁性樹脂膜20を形成することができる。
【0017】
次に、
図1(c)に示すように、下地基板10上の絶縁性樹脂膜20における所定の領域に開口部30を設ける。開口部30の形成方法としては、露光現像法やレーザー加工法等が挙げられる。ここで、開口部30の形成に上記露光現像法を用いる場合、絶縁性樹脂膜20を形成する材料中には感光剤を含有させる必要がある。露光現像法ではまず、絶縁性樹脂膜20のうち開口部30を形成する領域、もしくは開口部30を形成しない領域のいずれか一方に選択的に光を照射する露光を行う。その後、アルカリ性水溶液などの現像液を用いた現像を行うことで開口部30を形成することが出来る。その後、絶縁性樹脂膜20を熱硬化させる。上述した露光方法としては、マスクパターンを密着させて紫外線を照射する方法や、レーザー光を所望の領域に直接照射する方法等が挙げられる。一方、開口部30の形成に上記レーザー加工法を用いる場合、開口部30を設けたい領域に直接レーザー光を照射し、レーザー光のエネルギーで絶縁性樹脂膜20を部分的に除去する。この場合、絶縁性樹脂膜20を形成する材料中には感光剤を含有させる必要が無く、光の透過性にも制限が無い。
【0018】
次に、
図1(d)に示すように、絶縁性樹脂膜20に設けた開口部30を埋設するように上記絶縁性樹脂膜20上にめっき膜40を形成する。上記めっき膜40の形成方法としては、公知の方法を用いることが可能であり、電解めっき法または無電解めっき法等の手法を用いることができる。たとえば、電気銅めっきにて絶縁性樹脂膜20に設けた開口部30内を銅めっきで充填させる方法等を用いることが可能である。上記めっき膜40を形成する材料としては、銅、銅合金、42合金、ニッケル、鉄、クロム、タングステン、金、半田等が挙げられる。
【0019】
次に、
図1(e)に示すように、絶縁性樹脂膜20上に形成しためっき膜40を除去した後、絶縁性樹脂膜20に設けた開口部30内を埋設するように形成しためっき膜40上に金属箔を用いて金属配線を形成する(図示せず)。こうすることで、下地基板10における所定の領域に第1金属パターン50を形成することができる。なお、絶縁性樹脂膜20上に形成しためっき膜40の除去方法としては、化学的機械研磨(CMP)装置を用いてめっき膜40を研磨する手法等が挙げられる。
【0020】
次いで、
図1(f)に示すように、下地基板10上の絶縁性樹脂膜20を除去する。絶縁性樹脂膜20の除去方法としては、たとえば、剥離液を用いて上記絶縁性樹脂膜20を剥離する方法、アッシング処理を行って上記絶縁性樹脂膜20を除去する方法、アッシング処理を行った後に下地基板10上に付着している絶縁性樹脂膜20の残渣を剥離液により除去する方法等が挙げられる。中でも、有機樹脂基板の生産効率を向上させる観点から、剥離液を用いて上記絶縁性樹脂膜20を剥離する方法を採用することが好ましい。また、上記剥離液の具体例としては、アルキルベンゼンスルホン酸を含む有機スルホン酸系剥離液、モノエタノールアミン等の有機アミンを含む有機アミン系剥離液、水に対して有機アルカリやフッ素系化合物等を混合した水系レジスト剥離液等が挙げられる。
【0021】
(有機樹脂膜形成工程および研磨工程)
本実施形態に係る有機樹脂膜形成工程および研磨工程について、
図2を参照して説明する。
まず、
図2(a)に示すように、有機樹脂膜形成用樹脂組成物を用いて、下地基板10上に形成した第1金属パターン50を埋設するように上記下地基板10上の全域に第1有機樹脂膜200を形成する。なお、有機樹脂膜形成用樹脂組成物の詳細については後述するが、たとえば、熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物を用いることができる。本実施形態において第1有機樹脂膜200を形成する方法としては、特に限定されるわけではなく、トランスファー成形法、圧縮成形法、インジェクション成形法、ラミネーション法等が挙げられる。中でも、充填部分を残すことなく第1金属パターン50を埋設する観点から、トランスファー成形法または圧縮成形法、ラミネーション法により第1有機樹脂膜200を形成することが好ましい。そのため、有機樹脂膜形成用樹脂組成物の形態は、顆粒状、タブレット状またはシート状に加工されたものであることが好ましい。なお、圧縮成形して第1有機樹脂膜200を形成する場合には、粉粒状の形態に加工された樹脂組成物を用いてもよい。
【0022】
以下、顆粒状に加工された有機樹脂膜形成用樹脂組成物を用いて第1有機樹脂膜200を形成する場合を例に挙げて、有機樹脂膜形成工程を詳説する。
【0023】
具体的には、圧縮成形金型の上型と下型の間に、顆粒状の有機樹脂膜形成用樹脂組成物が収容された樹脂材料供給容器を設置する。次いで、第1金属パターン50を有する下地基板10を、クランプ、吸着のような固定手段により圧縮成型金型の上型と下型の一方に固定する。以下では、下地基板10上に形成した第1金属パターン50を有する面が樹脂材料供給容器に対面するように圧縮成型金型の上型に固定した場合を例に挙げて説明する。
【0024】
まず、減圧下、金型の上型と下型の間隔を狭めながら、樹脂材料供給容器の底面を構成するシャッター等の樹脂材料供給機構により、秤量された顆粒状の有機樹脂膜形成用樹脂組成物を下型が備える下型キャビティ内へ供給する。これにより、顆粒状の有機樹脂膜形成用樹脂組成物は、下型キャビティ内で所定温度に加熱され、溶融状態となる。次いで、金型の上型と下型を結合させることにより、溶融状態の有機樹脂膜形成用樹脂組成物を上型に固定された下地基板10に対して押し当てる。こうすることで、第1金属パターン50を有機樹脂膜形成用樹脂組成物で埋めることができるとともに、下地基板10において第1金属パターン50を形成した面を溶融状態の有機樹脂膜形成用樹脂組成物で覆うことができる。その後、金型の上型と下型を結合させた状態を保持しながら、有機樹脂膜形成用樹脂組成物を硬化させる。
【0025】
ここで、圧縮成形を行う場合には、金型内を減圧下にしながら樹脂封止を行うことが好ましく、真空条件下であるとさらに好ましい。こうすることで、充填部分を残すことなく第1金属パターン50を有機樹脂膜形成用樹脂組成物で埋設することができる。
【0026】
圧縮成形における成形温度は、特に限定されるわけではないが、50〜200℃が好ましく、80〜180℃が特に好ましい。また、成形圧力は、特に限定されるわけではないが、0.5〜12MPaであることが好ましく、1〜10MPaが特に好ましい。さらに、成形時間は30秒〜15分であることが好ましく、1〜10分が特に好ましい。成形温度、圧力、時間を上記範囲とすることで、溶融状態の有機樹脂膜形成用樹脂組成物が充填されない部分が発生することを防止することができる。
【0027】
また、上記方法により得られる第1有機樹脂膜200のガラス転移温度は、好ましくは、100℃以上250℃以下であり、さらに好ましくは、130℃以上220℃以下である。第1有機樹脂膜200のガラス転移温度が上記範囲内であると、得られた有機樹脂基板の反りを抑制することができる。
【0028】
次いで、
図2(b)に示すように、第1有機樹脂膜200の全面を研磨して第1金属パターン50の上面を露出させる。上述した第1有機樹脂膜200の全面を研磨する方法としては、化学的機械研磨(CMP)装置を用いてめっき膜40を研磨する手法等が挙げられる。また、CMP装置を用いてめっき膜40を研磨する場合、使用する研磨剤に含まれる砥粒や添加剤の種類、CMP装置に備わる研磨パッドの材質や硬度等の条件を最適化することにより、第1有機樹脂膜200の表面の平坦性を向上させることができる。
【0029】
(導体部形成工程)
本実施形態に係る導体部形成工程について、
図3を参照して説明する。本製造方法における導体部としては、金属配線、金属パッドまたは半田バンプ等が挙げられる。以下、導体部として金属パッドを採用する場合を例に挙げて、導体部形成工程を詳説する。
まず、
図3(a)に示すように、露出した第1金属パターン50の上面を覆うように、第1有機樹脂膜200および第1金属パターン50上に、絶縁性樹脂膜210を積層する。なお、上述した絶縁性樹脂膜210を形成する材料は、
図1(b)を参照して説明した絶縁性樹脂膜20を形成する材料と同じ材料を用いることができる。
【0030】
次に、
図3(b)に示すように、第1金属パターン50の一部を露出させるように、絶縁性樹脂膜210における所定の領域に開口部220を設ける。なお、開口部220の形成方法は、
図1(c)を参照して説明した開口部30の形成方法と同様の方法を用いることができる。
【0031】
次いで、
図3(c)に示すように、絶縁性樹脂膜210に設けた開口部220を埋設するように、第1導体部230を形成する。具体的には、絶縁性樹脂膜210に設けた開口部220内を、導電性材料を用いて埋設することにより、上記開口部220内に露出した第1金属パターン50中の金属配線と接触するように第1導体部230を形成する。ここで、上記導電性材料としては、銅、銅系合金、アルミ、アルミ系合金等の各種金属および各種合金が挙げられる。中でも、有機樹脂基板の電気的特性を良好なものとする観点から、上記導電性材料としては、銅あるいは銅系合金を用いることが好ましい。
【0032】
次いで、
図3(d)に示すように、絶縁性樹脂膜210を除去する。絶縁性樹脂膜210の除去方法としては、上述において
図1(f)を参照して説明した方法と同様の方法を用いることができる。
【0033】
次に、
図3(e)に示すように、有機樹脂膜形成用樹脂組成物を用いて、第1有機樹脂膜200および第1金属パターン50上に、第1導体部230を埋設するように第2有機樹脂膜300を形成する。第2有機樹脂膜300の形成方法は、上述において
図2(a)を参照して説明した方法と同様の方法を用いることができる。
【0034】
その後、
図3(f)に示すように、第2有機樹脂膜300の全面を研磨して第1導体部230の上面を露出させる。上述した第2有機樹脂膜300の全面を研磨する方法としては、化学的機械研磨(CMP)装置を用いてめっき膜40を研磨する手法等が挙げられる。
【0035】
次いで、
図3(g)に示すように、下地基板10を分離して選択的に除去することにより、2層構造の有機樹脂基板1000を得ることができる。なお、上述した選択的に除去するとは、下地基板10の一部又は全部を除去することを指す。酸性液やアルカリ性液を用いて化学的にエッチングする方法、物理的に研磨する方法、物理的に剥離する方法、プラズマ照射法、レーザーアブレーション法等の手法を採用することができる。中でも、酸性液やアルカリ性液を用いて化学的にエッチング除去する方法が好適である。なお、このとき使用する上記酸性液の具体例としては、混酸、塩化第二鉄水溶液等が挙げられる。
【0036】
以下、本製造方法により奏する作用効果について説明する。
本製造方法によれば、従来の製造プロセスと比べて、電気的接続性に優れ、かつ小型化された半導体装置の製造に使用可能な有機樹脂基板を歩留りよく製造できる。また、本製造方法によれば、金属パターンや導電部の形成に用いる材料の使用量を低減できるため、従来の製造プロセスと比べて、製造コストを低減することができる。くわえて、本製造方法によれば、有機樹脂膜の耐久性を向上させることが可能であるため、従来の製造プロセスと比べて、機械的強度に優れた配線基板を作製することができる。
また、本製造方法により作製した有機樹脂基板を使用した半導体装置は、信頼性に優れたものとすることができる。
【0037】
[第2の実施形態]
本実施形態は、多層配線基板の製造方法に係るものである。この製造方法は、
図3(f)に示した第1有機樹脂膜200、第1金属パターン50、第2有機樹脂膜300および第1導体部230からなる有機樹脂基板1000を下地基板10上に形成した構造体から出発して多層配線基板を製造するものである。具体的には、本実施形態に係る製造方法は、
図3(f)に示した構造体上に、第1の実施形態において上述した方法と同様の方法で第2金属パターン350、第3有機樹脂膜400、第2導体部450および第4有機樹脂膜500をこの順で形成するものである。本実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0038】
以下、本実施形態に係る製造方法について、
図4を参照して説明する。なお、4層構造の有機樹脂基板1200の製造方法について後述するが、本実施形態に係る製造方法は、4層構造の多層配線基板に限定されるものではない。
【0039】
まず、
図4(a)に示すように、
図3(f)に示した構造体上に第2金属パターン350を形成する。なお、第2金属パターン350の形成方法は、
図1を参照して説明した第1金属パターン50の形成方法と同様の方法を採用することができる。
【0040】
次に、
図4(b)に示すように、有機樹脂膜形成用樹脂組成物を用いて、第2金属パターン350を埋設するように
図3(f)に示した構造体上における下地基板10を有する面とは反対側の表面全域に第3有機樹脂膜400を形成する。第3有機樹脂膜400の形成方法は、
図2(a)を参照して説明した第1有機樹脂膜200の形成方法と同様の方法を用いることができる。
【0041】
次に、
図4(c)に示すように、第2金属パターン350中の金属配線と接触するように第2導体部450を形成する。第2導体部450の形成方法は、
図3(a)〜(c)を参照して説明した第1導体部230の形成方法と同様の方法を用いることができる。
【0042】
次いで、
図4(d)に示すように、有機樹脂膜形成用樹脂組成物を用いて、第3有機樹脂膜400および第2金属パターン350上に、第2導体部450を埋設するように第4有機樹脂膜500を形成する。第4有機樹脂膜500の形成方法は、
図2(a)を参照して説明した第1有機樹脂膜200の形成方法と同様の方法を用いることができる。
【0043】
その後、
図4(e)に示すように、下地基板10を分離して除去することにより、4層構造の有機樹脂基板1200を得ることができる。なお、4層構造よりも多層構造からなる有機樹脂基板を製造する場合には、
図4(d)に示す構造体上に
図1〜3を参照して説明した方法と同様の方法で各層に金属パターン、導体部および有機樹脂膜を形成すればよい。
【0044】
[第3の実施形態]
本実施形態は、半導体装置の製造方法に係るものである。この製造方法について、
図5を参照して説明する。以下、本実施形態に係る半導体装置の製造方法について、
図4(e)に示した有機樹脂基板1200から出発して半導体装置を製造する場合を例に挙げて説明する。本実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0045】
まず、
図5(a)に示すように、有機樹脂基板1200上に露出した第2導体部450に半田バンプ600の端部を溶融して融着させる。
【0046】
次に、
図5(b)に示すように、半田バンプ600を介して半導体素子650を有機樹脂基板1200上に配設し、固定する。また、有機樹脂基板1200上には、半導体素子650に加えて、たとえば抵抗や容量として機能する電子部品などがさらに配設されていてもよい。上記半導体素子650としては、半導体ウエハから切り出されたLSIチップ等を用いることができる。また、有機樹脂基板1200上に露出した第2導体部450と半導体素子650の接続パッドとは、半田バンプ600によって電気的に接続されている。また、第2導体部450と半導体素子650の接続パッドとの電気接続は、半田バンプ600の代わりに、ボンディングワイヤやリード線を用いて行ってもよい。
【0047】
次いで、
図5(c)に示すように、有機樹脂基板1200の上面、半田バンプ600、および半導体素子650において上記半田バンプ600と接続された面を覆うように、封止樹脂700を用いてモールドする。かかる封止樹脂700としては、たとえば、エポキシを含む樹脂組成物等を用いることができる。封止樹脂700でモールドする方法としては、トランスファー成形法、射出成形法、転写法、塗布法などを用いることができる。封止樹脂をたとえば150℃以上200℃以下で加熱することにより硬化させる。こうすることで、本実施形態に係る半導体装置1400を製造することができる。
【0048】
[第4の実施形態]
本実施形態は、有機樹脂基板の製造方法に係るものである。この製造方法は、第1金属パターン50を形成する方法が第1の実施形態と異なる。具体的には、本製造方法は、下地基板10上に第1金属膜110を形成した後、形成した第1金属膜110における所定の領域を残すように、上記第1金属膜110を選択的に除去して第1金属パターン50を形成する方法を採用する点で第1の実施形態と異なる。ただし、本実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、本製造方法によれば、金属パターンの製造工程を簡略化できるため、有機樹脂基板の製造効率を向上することも可能である。なお、本製造方法は、多層配線基板を作製する場合においても用いることができる。
【0049】
本製造方法に係る金属パターン形成工程について、
図6を参照して説明する。
まず、
図6(a)に示すように、下地基板10を準備する。ここで、準備する下地基板10は、第1の実施形態と同様の基板であればよい。次に、
図6(b)に示すように、下地基板10上に第1金属膜110を積層する。次いで、
図6(c)に示すように、下地基板10上に形成した第1金属膜110を選択的に除去する。その後、下地基板10上に残存している第1金属膜110上に金属配線を形成することにより、第1金属パターン50を形成することができる。
【0050】
[第5の実施形態]
本実施形態は、有機樹脂基板の製造方法に係るものである。この製造方法は、以下の4つの工程をこの順に含むものである。第1の工程は、下地基板上に第1金属パターンを形成する工程である(以下、第1金属パターン形成工程と示す。)。第2の工程は、第1金属パターン中の金属配線と接触するように導体部を形成する工程である(以下、導体部形成工程と示す。)。第3の工程は、第1金属パターンおよび第1導体部を埋設する第1有機樹脂膜である(以下、有機樹脂膜形成工程と示す。)。第4の工程は、第1有機樹脂膜の全面を研磨して第1導体部の上面を露出させる工程である(以下、研磨工程と示す。)。かかる製造方法は、第1金属パターンと第1導体部とを形成した後に第1有機樹脂膜を形成するという点で第1の実施形態と異なる。ただし、本実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、本実施形態に係る製造方法によれば、第1金属パターンと第1導体部とを、有機樹脂膜形成用樹脂組成物を用いて一体的に覆うことができるため、有機樹脂基板の機械的強度を向上させることも可能である。
【0051】
本製造方法について、
図7を参照して詳説する。なお、
図7は、本実施形態に係る有機樹脂基板の製造方法の一例を説明するための図である。
【0052】
まず、
図7(a)に示すように、下地基板10上に積層した絶縁性樹脂膜20における所定の領域に設けた開口部内を埋設するように第1金属パターン50を形成する。かかる第1金属パターン50の形成方法は、第1金属パターン50を形成した後に絶縁性樹脂膜20を除去せずに残すという点を除いて、
図1を参照して説明した方法と同様の方法を用いることができる。
【0053】
次に、
図7(b)に示すように、露出した第1金属パターン50中の金属配線と接触するように絶縁性樹脂膜210における所定の領域に設けた開口部内を埋設した第1導体部230を形成する。かかる第1導体部230の形成方法は、第1導体部230を形成した後に絶縁性樹脂膜210を除去せずに残すという点を除いて、
図3を参照して説明した方法と同様の方法を用いることができる。
【0054】
次に、
図7(c)に示すように、絶縁性樹脂膜20および210を除去する。絶縁性樹脂膜20および210の除去方法は、
図1(f)を参照して説明した絶縁性樹脂膜20の除去方法と同様の方法を用いることができる。
【0055】
次いで、
図7(d)に示すように、有機樹脂膜形成用樹脂組成物を用いて、第1金属パターン50および第1導体部230のそれぞれを埋設するように有機樹脂膜170を形成する。こうすることで、第1金属パターン50と第1導体部230とを、有機樹脂膜形成用樹脂組成物を用いて一体的に覆うことができる。なお、有機樹脂膜170の形成方法は、
図2(a)を参照して説明した第1有機樹脂膜200の形成方法と同様の方法を用いることができる。
【0056】
その後、
図7(e)に示すように、有機樹脂膜170の全面を研磨して第1導体部230の上面を露出させた後、
図7(f)に示すように、下地基板10を分離して除去することにより、2層構造の有機樹脂基板1100を得ることができる。
【0057】
[第6の実施形態]
本実施形態は、多層配線基板の製造方法に係るものである。この製造方法は、
図7(e)に示した有機樹脂膜170、第1金属パターン50および第1導体部230からなる有機樹脂基板1100を下地基板10上に形成した構造体から出発して上記構造体上に、第5の実施形態において上述した方法と同様の方法で第2金属パターン350と第2導体部450とを有機樹脂膜形成用樹脂組成物を用いて一体的に覆った層を形成した2層構造の有機樹脂基板を製造する方法であるという点で第2の実施形態とは異なる。かかる製造方法を採用した場合においても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0058】
[第7の実施形態]
本実施形態は、半導体装置の製造方法に係るものである。この製造方法について、
図8を参照して説明する。以下、本実施形態に係る半導体装置の製造方法について、
図4(e)に示した有機樹脂基板1200から出発して半導体装置を製造する場合を例に挙げて説明する。ただし、本実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0059】
本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、有機樹脂基板1200の第1金属パターン50に半田バンプ600を介して半導体素子650を配設する点で第3の実施形態と異なる。具体的には、本実施形態に係る半導体装置の製造方法によれば、まず、
図8(a)に示すように、有機樹脂基板1200上に露出した第1金属パターン50に半田バンプ600の端部を溶融して融着させる。次に、
図8(b)に示すように、半田バンプ600を介して半導体素子650を有機樹脂基板1200上に配設し、固定する。次いで、
図8(c)に示すように、有機樹脂基板1200の下面、半田バンプ600、および半導体素子650において上記半田バンプ600と接続された面を覆うように、封止樹脂700を用いてモールドする。こうすることで、本実施形態に係る半導体装置1500を製造することができる。
【0060】
[有機樹脂基板の製造プロセスに用いる材料]
以下、絶縁性樹脂膜20または210を形成する材料と、有機樹脂膜形成用樹脂組成物の構成について説明する。
【0061】
<絶縁性樹脂膜20または210を形成する材料>
絶縁性樹脂膜20または210を形成する材料としては、めっきレジストに使用される公知の材料を用いることができるが、たとえば、フォトレジスト、レジストインキ、ドライフィルム等の感光性材料が挙げられる。なお、上記感光性樹脂組成物は、ネガ型であってもポジ型であってもよい。
【0062】
<有機樹脂膜形成用樹脂組成物>
有機樹脂膜形成用樹脂組成物は、熱硬化性樹脂と、充填材とを含むものであることが好ましい。かかる熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂を用いることが好ましい。上記エポキシ樹脂としては、その分子量、分子構造に関係なく、1分子内にエポキシ基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を使用することが可能である。このようなエポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂(4,4'−(1,3−フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールP型エポキシ樹脂(4,4'−(1,4−フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂(4,4'−シクロヘキシジエンビスフェノール型エポキシ樹脂)などのビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェノール基エタン型ノボラック型エポキシ樹脂、縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂などのアラルキル型エポキシ樹脂;ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、2官能ないし4官能エポキシ型ナフタレン樹脂、ビナフチル型エポキシ樹脂、ナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂などのナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂;アントラセン型エポキシ樹脂;フェノキシ型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;ノルボルネン型エポキシ樹脂;アダマンタン型エポキシ樹脂;フルオレン型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレートなどの複素環式エポキシ樹脂;N,N,N',N'−テトラグリシジルメタキシレンジアミン、N,N,N',N'−テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジルアニリンなどのグリシジルアミン類や、グリシジル(メタ)アクリレートとエチレン性不飽和二重結合を有する化合物との共重合物、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノール類のグリシジルエーテル化物から選択される一種または二種以上を含むことができる。これらの中でも、金属パターンや導体部との密着性を向上させる観点から、トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂を含むことがより好ましい。これにより、有機樹脂基板の低線膨張化および高弾性率化を図ることもできる。また、有機樹脂基板の剛性を向上させて作業性の向上に寄与することや、半導体装置における耐リフロー性の向上および反りの抑制を実現することも可能である。
【0063】
エポキシ樹脂の含有量は、たとえば有機樹脂膜形成用樹脂組成物の全固形分に対して3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。エポキシ樹脂の含有量を上記下限値以上とすることにより、有機樹脂膜形成用樹脂組成物を用いて形成される有機樹脂膜と金属パターン、および導電体との密着性の向上に寄与することができる。一方で、エポキシ樹脂の含有量は、たとえば有機樹脂膜形成用樹脂組成物の全固形分に対して30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。エポキシ樹脂の含有量を上記上限値以下とすることにより、有機樹脂膜形成用樹脂組成物を用いて形成される有機樹脂膜の耐熱性や耐湿性の向上を図ることができる。なお、有機樹脂膜形成用樹脂組成物の全固形分とは、有機樹脂膜形成用樹脂組成物中に含まれる溶剤を除く成分全体を指す。以下、本明細書において同様である。
【0064】
また、上記有機樹脂膜形成用樹脂組成物には、硬化剤を含有させてもよい。具体的には、上記硬化剤として、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の炭素数2〜20の直鎖脂肪族ジアミン、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、パラキシレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルプロパン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4'−ジアミノジシクロヘキサン、ビス(4−アミノフェニル)フェニルメタン、1,5−ジアミノナフタレン、メタキシレンジアミン、パラキシレンジアミン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキサン、ジシアノジアミド等のアミノ類;アニリン変性レゾール樹脂やジメチルエーテルレゾール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert−ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;フェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂等のフェノールアラルキル樹脂;ナフタレン骨格やアントラセン骨格のような縮合多環構造を有するフェノール樹脂;ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレン;ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)などの脂環族酸無水物、無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)などの芳香族酸無水物などを含む酸無水物等;ポリサルファイド、チオエステル、チオエーテルなどのポリメルカプタン化合物;イソシアネートプレポリマー、ブロック化イソシアネートなどのイソシアネート化合物;カルボン酸含有ポリエステル樹脂などの有機酸類等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの内、信頼性等の点から、1分子内に少なくとも2個のフェノール性水酸基を有する化合物が好ましく、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert−ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;レゾール型フェノール樹脂;ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレン;フェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂、トリヒドロキシフェニルメタン型フェノール樹脂等が例示される。
【0065】
上記有機樹脂膜形成用樹脂組成物に含有させてもよい充填材の具体例としては、溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ、結晶シリカ、2次凝集シリカ等のシリカ;アルミナ;チタンホワイト;水酸化アルミニウム;タルク;クレー;マイカ;ガラス繊維等が挙げられる。これらの中でも、特に溶融球状シリカが好ましい。また、粒子形状は限りなく真球状であることが好ましい。また、粒子の大きさの異なるものを混合することにより無機充填量を多くすることができるが、その平均粒子径d50としては、金型キャビティ内での金属パターン周辺への充填性を考慮すると0.1μm以上20μm以下であることが望ましい。
なお、充填材の平均粒子径d50は、たとえばレーザー回折式粒度分布測定装置(HORIBA社製、LA−500)を用いて測定することが可能である。
【0066】
有機樹脂膜形成用樹脂組成物は、たとえばシアネート樹脂を含むことができる。これにより、有機樹脂膜について、低線膨張化や、弾性率および剛性の向上を図ることができる。また、得られる半導体装置の耐熱性や耐湿性の向上に寄与することも可能である。
シアネート樹脂は、たとえばノボラック型シアネート樹脂;ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂などのビスフェノール型シアネート樹脂;ナフトールアラルキル型フェノール樹脂と、ハロゲン化シアンとの反応で得られるナフトールアラルキル型シアネート樹脂;ジシクロペンタジエン型シアネート樹脂;ビフェニルアルキル型シアネート樹脂から選択される一種または二種以上を含むことができる。これらの中でも、有機樹脂膜の低線膨張化や、弾性率および剛性を向上させる観点からは、ノボラック型シアネート樹脂およびナフトールアラルキル型シアネート樹脂のうちの少なくとも一方を含むことがより好ましく、ノボラック型シアネート樹脂を含むことがとくに好ましい。
【0067】
シアネート樹脂の含有量は、たとえば有機樹脂膜形成用樹脂組成物の全固形分に対して3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。シアネート樹脂の含有量を上記下限値以上とすることにより、有機樹脂膜形成用樹脂組成物を用いて形成される有機樹脂膜のより効果的な低線膨張化、高弾性率化を図ることができる。また、有機樹脂膜形成用樹脂組成物を用いて形成される有機樹脂膜と金属パターン、および導電体との密着性の向上に寄与することができる。一方で、シアネート樹脂の含有量は、たとえば有機樹脂膜形成用樹脂組成物の全固形分に対して30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。シアネート樹脂の含有量を上記上限値以下とすることにより、有機樹脂膜形成用樹脂組成物を用いて形成される有機樹脂膜の耐熱性や耐湿性の向上を図ることができる。
【0068】
上記有機樹脂膜形成用樹脂組成物には、硬化促進剤を含有させてもよい。この硬化促進剤は、エポキシ基と硬化剤との硬化反応を促進させるものであればよい。具体的には、上記硬化促進剤として、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のジアザビシクロアルケン及びその誘導体;トリブチルアミン、ベンジルジメチルアミン等のアミン系化合物;2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物;トリフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類;テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラ安息香酸ボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラナフトイックアシッドボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラナフトイルオキシボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラナフチルオキシボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート;ベンゾキノンをアダクトしたトリフェニルホスフィン等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。より好ましいものとしては、顆粒状の有機樹脂膜形成用樹脂組成物が金型キャビティ内で溶融した後の急激な増粘が少ない潜伏性を有する硬化促進剤が挙げられる。
【0069】
上記有機樹脂膜形成用樹脂組成物には、上記各成分以外に、必要に応じてカップリング剤、レベリング剤、着色剤、離型剤、低応力剤、感光剤、消泡剤、紫外線吸収剤、発泡剤、酸化防止剤、難燃剤、およびイオン捕捉剤等から選択される一種または二種以上の添加物を添加してもよい。カップリング剤としては、たとえばエポキシシランカップリング剤、カチオニックシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランカップリング剤、フェニルアミノプロピルトリメトキシシランカップリング剤、メルカプトシランカップリング剤などのシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤およびシリコーンオイル型カップリング剤などが挙げられる。レベリング剤としては、アクリル系共重合物等が挙げられる。着色剤としては、カーボンブラック等が挙げられる。離型剤としては、天然ワックス、モンタン酸エステル等の合成ワックス、高級脂肪酸もしくはその金属塩類、パラフィン、酸化ポリエチレン等が挙げられる。低応力剤としては、シリコーンオイル、シリコーンゴム等が挙げられる。イオン捕捉剤としては、ハイドロタルサイト等が挙げられる。難燃剤としては、水酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0070】
有機樹脂膜形成用樹脂組成物の形態は、上述したように、顆粒状、タブレット状またはシート状に加工されたものであることが好ましい。
上述した顆粒状の樹脂組成物を得る方法としては、例えば、複数の小孔を有する円筒状外周部と円盤状の底面から構成される回転子の内側に、溶融混練された樹脂組成物を供給し、その樹脂組成物を、回転子を回転させて得られる遠心力によって小孔を通過させて得る方法(以下、「遠心製粉法」とも言う。);各原料成分をミキサーで予備混合後、ロール、ニーダー又は押出機等の混練機により加熱混練後、冷却、粉砕工程を経て粉砕物としたものを、篩を用いて粗粒と微紛の除去を行って得る方法(以下、「粉砕篩分法」とも言う。);各原料成分をミキサーで予備混合後、スクリュー先端部に小径を複数配置したダイを設置した押出機を用いて、加熱混練を行うとともに、ダイに配置された小孔からストランド状に押し出されてくる溶融樹脂をダイ面に略平行に摺動回転するカッターで切断して得る方法(以下、「ホットカット法」とも言う。)等が挙げられる。いずれの方法でも混練条件、遠心条件、篩分条件、切断条件等を選ぶことにより、所望の粒度分布や顆粒密度を得ることができる。特に好ましい製法としては、遠心製粉法であり、これにより得られる顆粒状の樹脂組成物は、所望の粒度分布や顆粒密度を安定して発現させることができるため、搬送路上での搬送性や固着防止の点で好ましい。また、遠心製粉法では、粒子表面をある程度滑らかにすることができるため、粒子同士が引っかかったり、搬送路面との摩擦抵抗が大きくなったりすることもなく、搬送路への供給口でのブリッジ(詰まり)の防止、搬送路上での滞留の防止の点でも好ましい。また、遠心製粉法では、溶融した状態から遠心力を用いて形成させるため、粒子内に空隙がある程度含まれた状態となり、顆粒密度をある程度低くできるため、圧縮成形における搬送性に関して有利である。
【0071】
一方、粉砕篩分法は、篩分により発生する多量の微粉及び粗粒の処理方法を検討する必要はあるものの、篩分装置等は半導体封止用樹脂組成物の既存製造ラインで使用されているものであるため、従来の製造ラインをそのまま使用できる点で好ましい。また、粉砕篩分法は、粉砕前に溶融樹脂をシート化する際のシート厚の選択、粉砕時の粉砕条件やスクリーンの選択、篩分時の篩の選択等、本発明の粒度分布を発現させるための独立して制御可能な因子が多いため、所望の粒度分布に調整するための手段の選択肢が多い点で好ましい。また、ホットカット法も、例えば、押出機の先端にホットカット機構を付加する程度で、従来の製造ラインをそのまま利用できる点で好ましい。
【0072】
上述したタブレット状の樹脂組成物を得る方法としては、たとえば各原料成分を、ミキサー等の混合機で混合し、さらにロール、ニーダーまたは押出機等の混練機で加熱溶融混練し、冷却した後に粉砕したものをタブレット状に打錠成型して得られる。
【0073】
上述したシート状の樹脂組成物を得る方法としては、例えば各原料成分または事前に各成分を混合した樹脂組成物を有機溶剤等に溶解又は分散したワニスを調整し、フィルム上に塗布・乾燥してシート状に形成する。塗布の方法は特に限定されず、コンマコーターやダイコーターのような塗工機を用いた塗工による方法、ステンシル印刷やグラビア印刷のような印刷による方法などが挙げられる。あるいは、樹脂組成物を直接ニーダー等で混練することにより混練物を調製し、このようにして得られた混練物を押し出してシート状に形成してもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、有機樹脂膜を形成する際に、顆粒状の樹脂組成物を用いて圧縮成形する場合を例に挙げて説明したが、シート状に加工された有機樹脂膜形成用樹脂組成物を用いて以下の方法により圧縮成形してもよい。
【0075】
第1金属パターン50を形成した下地基板10を、クランプ、吸着のような固定手段により圧縮成形金型の上型と下型の一方に固定する。以下では、下地基板10上に形成した第1金属パターン50を有する面が樹脂材料供給容器に対面するように圧縮成型金型の上型に固定した場合を例に挙げて説明する。
【0076】
次に、金型の上型に固定した下地基板10上に形成された第1金属パターン50に対応する位置となるように、金型の下型キャビティ内にシート状の有機樹脂膜形成用樹脂組成物を配置する。次いで、減圧下、金型の上型と下型の間隔を狭めることにより、シート状の有機樹脂膜形成用樹脂組成物は、下型キャビティ内で所定温度に加熱され、溶融状態となる。その後、金型の上型と下型を結合させることにより、溶融状態の有機樹脂膜形成用樹脂組成物を上型に固定された下地基板10上に形成された第1金属パターン50に対して押し当てる。こうすることで、第1金属パターン50を有機樹脂膜形成用樹脂組成物で埋めることができるとともに、下地基板10において第1金属パターン50を形成した面を溶融状態の有機樹脂膜形成用樹脂組成物で覆うことができる。その後、金型の上型と下型を結合させた状態を保持しながら、所定時間をかけて有機樹脂膜形成用樹脂組成物を硬化させる。こうすることで、第1有機樹脂膜200を形成することができる。
【0077】
また、シート状に加工された有機樹脂膜形成用樹脂組成物は例えば以下の方法によりラミネーションすることもできる。
まず、ロール形状で準備したシート状の有機樹脂膜形成用樹脂組成物を、真空加圧式ラミネーターの巻き出し装置に取り付け、巻き取り装置まで接続する。次に、第1金属パターン50を形成した下地基板10をダイアフラム(弾性膜)式ラミネーター部まで搬送する。次いで、減圧下、プレスを開始するとシート状の有機樹脂膜形成用樹脂組成物は、所定温度に加熱され、溶融状態となり、その後、溶融状態の有機樹脂膜形成用樹脂組成物を、ダイアフラムを介してプレスすることにより下地基板10上に形成された第1金属パターン50に対して押し当てることで、第1金属パターン50を有機樹脂膜形成用樹脂組成物で埋めることができるとともに、下地基板10において第1金属パターン50を形成した面を溶融状態の有機樹脂膜形成用樹脂組成物で覆うことができる。その後、所定時間をかけて有機樹脂膜形成用樹脂組成物を硬化させる。こうすることで、第1有機樹脂膜200を形成することができる。
なお、有機樹脂膜形成用樹脂組成物に対し、より高精度な平坦性が要求される場合は、ダイアフラム式ラミネーターでのプレスの後に、高精度に調整された平坦プレス装置によるプレス工程を追加して成型することもできる。
【0078】
また、第1有機樹脂膜200を形成する際に、タブレット状に加工された有機樹脂膜形成用樹脂組成物を用いて以下の方法によりトランスファー成形してもよい。
【0079】
まず、第1金属パターン50を形成した下地基板10を設置した成形金型を準備する。ここで準備する成形金型は、タブレット状の有機樹脂膜形成用樹脂組成物を仕込むポットと、その後、圧力をかけて有機樹脂膜形成用樹脂組成物を溶融させるためにポットに挿入する補助ラムを備えたプランジャーと、溶融させた有機樹脂膜形成用樹脂組成物を成形空間内に送り込むスプルーとが設けられているものである。
【0080】
次いで、成形金型を閉じた状態で、ポット内にタブレット状の有機樹脂膜形成用樹脂組成物を仕込む。ここで、ポット内に仕込む有機樹脂膜形成用樹脂組成物の形態は、予め、プレヒーター等によって予熱することにより半溶融の状態にされていてもよい。次に、ポット内に仕込んだ有機樹脂膜形成用樹脂組成物を溶融させるために、有機樹脂膜形成用樹脂組成物に対して、補助ラムを備えたプランジャーをポットに挿入して圧力をかける。その後、溶融した有機樹脂膜形成用樹脂組成物を、スプルーを介して成形空間内に導入する。次に、成形空間内に充填された有機樹脂膜形成用樹脂組成物は、加熱加圧されることにより硬化する。有機樹脂膜形成用樹脂組成物が硬化した後、成形金型を開くことにより、第1金属パターン50を有機樹脂膜形成用樹脂組成物で埋めることができるとともに、下地基板10において第1金属パターン50を形成した面を溶融状態の有機樹脂膜形成用樹脂組成物で覆った第1有機樹脂膜200を形成することができる。
【0081】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 下地基板上に第1金属パターンを形成する工程と、
前記第1金属パターンを埋設する第1有機樹脂膜を形成する工程と、
前記第1有機樹脂膜の全面を研磨して前記第1金属パターンの上面を露出させる工程と、
露出した前記第1金属パターン中の金属配線と接触するように第1導体部を形成する工程と、
をこの順に含む有機樹脂基板の製造方法。
2. 下地基板上に第1金属パターンを形成する工程と、
前記第1金属パターン中の金属配線と接触するように第1導体部を形成する工程と、
前記第1金属パターンおよび前記第1導体部を埋設する第1有機樹脂膜を形成する工程と、
前記第1有機樹脂膜の全面を研磨して前記第1導体部の上面を露出させる工程と、
をこの順に含む有機樹脂基板の製造方法。
3. 1.または2.に記載の有機樹脂基板の製造方法であって、
前記第1金属パターンを形成する工程は、
前記下地基板上に絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層の所定箇所に開口を設ける工程と、
前記開口を埋め込むように、前記絶縁層の全面に、金属めっき膜を形成する工程と、
前記金属めっき膜を研磨して、前記絶縁層上の前記金属めっき膜を除去するとともに、
前記開口に前記金属めっき膜を残すことにより、前記第1金属パターンを形成する工程と、
を含む有機樹脂基板の製造方法。
4. 1.または2.に記載の有機樹脂基板の製造方法であって、
前記第1金属パターンを形成する工程は、
前記下地基板上に第1金属膜を形成する工程と、
前記第1金属膜を選択的に除去して第1金属パターンを形成する工程と、
を含む有機樹脂基板の製造方法。
5. 1.乃至4.のいずれかに記載の有機樹脂基板の製造方法であって、
前記第1導体部を形成する工程の後、前記下地基板を選択的に除去する工程をさらに含む、有機樹脂基板の製造方法。
6. 1.乃至4.のいずれかに記載の有機樹脂基板の製造方法であって、
前記第1導体部を形成する工程または前記第1導体部の上面を露出させる工程の後、前記第1導体部を形成する工程において得られた当該有機樹脂基板における前記下地基板とは反対側の面上に、前記第1導体部と接触するように第2金属パターンを形成する工程と、
前記第2金属パターンを埋設する第2有機樹脂膜を形成する工程と、
前記第2有機樹脂膜の全面を研磨して前記第2金属パターンの上面を露出させる工程と、
露出した前記第2金属パターン中の金属配線と接触するように第2導体部を形成する工程と、
をこの順に含む有機樹脂基板の製造方法。
7. 1.乃至4.のいずれかに記載の有機樹脂基板の製造方法であって、
前記第1導体部を形成する工程または前記第1導体部の上面を露出させる工程の後、前記第1導体部の上面を露出させる工程において得られた当該有機樹脂基板における前記下地基板とは反対側の面上に、前記第1導体部と接触するように第2金属パターンを形成する工程と、
前記第2金属パターン中の金属配線と接触するように第2導体部を形成する工程と、
前記第2金属パターンおよび前記第2導体部を埋設する第2有機樹脂膜を形成する工程と、
前記第2有機樹脂膜の全面を研磨して前記第2導体部の上面を露出させる工程と、
をこの順に含む有機樹脂基板の製造方法。
8. 6.または7.に記載の有機樹脂基板の製造方法であって、
前記第2導体部の上面を露出させる工程または前記第2導体部の上面を露出させる工程の後、前記下地基板を選択的に除去する工程をさらに含む有機樹脂基板の製造方法。
9. 1.乃至8.のいずれかに記載の有機樹脂基板の製造方法であって、
前記第1有機樹脂膜を形成する工程または前記第2有機樹脂膜を形成する工程は、
熱硬化性樹脂と、充填材とを含む樹脂組成物を準備する工程と、
前記樹脂組成物を用いて前記第1金属パターンまたは前記第2金属パターンを埋設する工程と、
前記樹脂組成物を硬化させて前記第1有機樹脂膜または前記第2有機樹脂膜を形成する工程と、
を含む有機樹脂基板の製造方法。
10. 9.に記載の有機樹脂基板の製造方法であって、
前記樹脂組成物が、顆粒状、タブレット状またはシート状に加工されたものである有機樹脂基板の製造方法。
11. 9.または10.に記載の有機樹脂基板の製造方法であって、
前記充填材の平均粒子径d50が、0.1μm以上20μm以下である有機樹脂基板の製造方法。
12. 9.乃至11.のいずれかに記載の有機樹脂基板の製造方法であって、
前記樹脂組成物が、シランカップリング剤を含む有機樹脂基板の製造方法。
13. 1.乃至12.のいずれかに記載の有機樹脂基板の製造方法であって、
前記第1有機樹脂膜のガラス転移温度が、100℃以上250℃以下である有機樹脂基板の製造方法。
14. 1.乃至13.のいずれか一項に記載の有機樹脂基板の製造方法によって得られる有機樹脂基板。
15. 14.に記載の有機樹脂基板を含む半導体装置。
【実施例】
【0082】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0083】
<実施例1>
下記表1に示す配合量に従って各成分を配合した有機樹脂膜形成用樹脂組成物を用いて、第1および第2の実施形態(
図1〜4を参照)で述べた方法で有機樹脂基板を作製した後、第3の実施形態(
図5を参照)で述べた方法で半導体装置を作製した。
【0084】
【表1】
【0085】
上記表1に示した有機樹脂膜形成用樹脂組成物の原料成分の内、シリカ1〜3としては、それぞれ以下の特性を有したものを用いた。
・シリカ1:平均粒子径d50が4μmの粒子
・シリカ2:平均粒子径d50が0.5μmの粒子
・シリカ3:平均粒子径d50が1.5μmの粒子
【0086】
得られた有機樹脂基板について、電気チェッカーを用いて、有機樹脂基板における各接合点の導通を測定した。その結果、実施例1の有機樹脂基板は、電気的接続性に優れたものであった。また、有機樹脂基板中に形成した有機樹脂膜のガラス転移温度は、170℃であった。また、得られた半導体装置は、高温使用時においても上記有機樹脂基板が反ることのない、機械的強度および電気的接続性に優れたものであった。
【0087】
<実施例2>
下記表2に示す配合量に従って各成分を配合した有機樹脂膜形成用樹脂組成物を用いて、第1および第2の実施形態(
図1〜4を参照)で述べた方法で有機樹脂基板を作製した後、第3の実施形態(
図5を参照)で述べた方法で半導体装置を作製した。なお、下記表2に示したシリカ1〜3は、実施例1と同じものを使用した。
【0088】
【表2】
【0089】
得られた有機樹脂基板について、電気チェッカーを用いて、有機樹脂基板における各接合点の導通を測定した。その結果、実施例2の有機樹脂基板は、電気的接続性に優れたものであった。また、有機樹脂基板中に形成した有機樹脂膜のガラス転移温度は、170℃であった。また、得られた半導体装置は、高温使用時においても上記有機樹脂基板が反ることのない、機械的強度および電気的接続性に優れたものであった。