(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
地盤に形成された第1及び第2ボアホールの内壁を撮影して得られた展開画像を解析して前記展開画像から亀裂に基づいた正弦波形を抽出し、抽出された前記正弦波形から、前記第1及び第2ボアホールにおける前記亀裂を検出すると共に前記亀裂の走向及び傾斜を取得する亀裂検出装置と、
前記亀裂検出装置により検出された前記第1及び第2ボアホールにおける前記亀裂どうしの連続性を判定するための指標を算出する指標算出部と、
前記指標算出部により算出された前記指標に基づいて、前記第1及び第2ボアホールにおける前記亀裂どうしの連続性を判定する連続性判定部と、を備える
亀裂連続性判定システム。
前記指標は、前記第1ボアホールの前記亀裂の走向及び傾斜に基づいて前記第1ボアホールの前記亀裂を前記第2ボアホールに延長したときに前記第2ボアホールに形成される仮想亀裂と前記第2ボアホールの前記亀裂との深度差を含む
請求項1に記載の亀裂連続性判定システム。
前記指標は、前記第1ボアホールの前記亀裂の走向及び傾斜から求められる法線ベクトルと、前記第2ボアホールの前記亀裂の走向及び傾斜から求められる法線ベクトルと、の交差角度を含む
請求項1又は2に記載の亀裂連続性判定システム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る亀裂検出装置100、亀裂連続性判定システム1000、亀裂検出方法及び亀裂検出プログラムについて説明する。
【0012】
図1は、ダム等における基礎地盤1を示す断面図である。ダム工事では、基礎地盤1の遮水性を高めるために、基礎地盤1にボアホール2を複数形成しグラウトを注入して基礎地盤1中の亀裂3を塞ぐグラウチングが行われる。グラウチングでは、まず、1次ボアホール2を基礎地盤1に所定間隔で複数形成し、必要に応じて、1次ボアホール2どうしの間に2次ボアホール、3次ボアホールといった高次ボアホールを追加で形成する。高次ボアホールの位置や数は、基礎地盤1中における亀裂3の大きさや数に応じて決定されることが望ましい。
【0013】
本実施形態に係る亀裂連続性判定システム1000(
図12参照)は、予め形成されたボアホール2の内壁における亀裂3の情報に基づいて亀裂3を推定するものである。亀裂連続性判定システム1000により亀裂3を推定することにより、追加の高次ボアホール2の数や位置を容易に決定することが可能になる。また、亀裂検出装置100は、基礎地盤1に形成されたボアホール2の内壁における亀裂3を検出すると共に亀裂3の走向及び傾斜等の亀裂3の情報を取得するものである。亀裂検出装置100によりボアホール2における亀裂3の情報を取得することにより、亀裂連続性判定システム1000における亀裂3の推定精度を向上させることができる。
【0014】
まず、亀裂検出装置100及び亀裂検出方法について、
図1〜
図11を参照して説明する。亀裂検出装置100は、画像作成手段としてのボアホールカメラ10により得られた展開画像を解析する解析手段としてのコンピュータ20を備える。ボアホールカメラ10は、ボアホール2の内壁を撮影して展開画像を作成する。コンピュータ20は、演算処理を行うCPU(central processing unit)と、CPUにより実行されるプログラムが予め記憶されたROM(read−onlY memorY)と、ボアホールカメラ10から入力されるデータやCPUの演算結果等を記憶するRAM(random access memorY)と、を含む。
【0015】
ボアホールカメラ10は、ボアホール2の内壁を周方向に360度カラー撮影可能に形成される。ボアホールカメラ10は、ウインチ11に巻きつられたワイヤ12の一端に取り付けられ、ウインチ11の駆動によりボアホール2内を上下に移動する。ボアホールカメラ10を上下に移動させながらボアホール2の内壁を撮影することにより、ボアホール2の全深度に渡るカラーの展開画像(
図2(b)参照)が得られる。
【0016】
図2(a)は、2つの亀裂3a,3bを貫通するボアホール2を示す斜視図であり、
図2(b)は、
図2(a)に示すボアホール2の壁面を撮影して展開することにより得られる展開画像である。
図2(a)に示すように、亀裂3a,3bは、ボアホール2の内壁では走向及び傾斜に応じた楕円に似た形状を描く。
【0017】
図3は、亀裂3の「走向」及び「傾斜」を説明するための図である。「走向」とは、亀裂3と仮想水平面HSとの交差によりできる交線ILが延びる方向である。ここでは、「走向」を、交線ILと南北方向に延びる軸との間の角度θ[deg]として表し、北(N)を基準に西(W)回りを正方向とする。また、「傾斜」とは、交線ILと直交する垂線PLが亀裂3に沿って延びる方向である。ここでは、「傾斜」を、垂線PLと仮想水平面HSとの間の角度φ[deg]として表す。
【0018】
図2(b)に示すように、展開画像では、亀裂3a,3bは、正弦波に似た形状を描く。具体的には、亀裂3aの走向θaに応じて、展開画像での亀裂3aの上側ピーク点PUaと下側ピーク点PLaの方位が定まり、亀裂3aの傾斜φaとボアホール2の半径Rに応じて、展開画像での亀裂3aの振幅Aaが定まる。亀裂3bについても亀裂3aと同様に、展開画像では亀裂3bの走向θb及び傾斜φbに応じた正弦波に近い形状を描く。亀裂検出装置100(
図1参照)は、展開画像での亀裂3a,3bの形状に基づいて、亀裂3a,3bの走向θa,θb及び傾斜φa,φbを取得する。
【0019】
図4に示すように、コンピュータ20は、画像を取り込む画像取込部21と、展開画像から亀裂3a,3bに近似する正弦波形を抽出する正弦波形抽出部22と、亀裂3a,3bの走向θa、θb及び傾斜φa,φbを取得する走向傾斜取得部23と、を備える。コンピュータ20は、信号線13を介してボアホールカメラ10に接続され、ボアホールカメラ10により作成されたカラーの展開画像は、画像取込部21によりコンピュータ20に取り込まれる。以下、正弦波形抽出部22及び走向傾斜取得部23によって行われる処理について、具体的に説明する。
【0020】
まず、正弦波形抽出部22によって行われる正弦波形抽出処理について、
図2〜
図6を参照して説明する。
【0021】
図5に示すように、まず、ステップS501にて、取り込まれたカラーの展開画像をグレースケール画像に変換する。具体的には、カラーの展開画像における各画素に対して赤(R)、緑(G)、青(B)の輝度の重み付け平均を算出する。この重み付け平均が、グレースケール画像における各画素のGray輝度となる。カラーの展開画像をグレースケール画像に変換することにより、各画素の輝度がGray輝度のみになり、後述する亀裂判定用閾値と展開画像の輝度との比較が容易になる。
【0022】
次に、ステップS502〜ステップS506にて、グレースケール画像から、亀裂3a,3b(
図2(b)参照)に近似する正弦波形を求める。具体的には、次の式(1)の関数F(Y)により表される正弦波形をグレースケール画像に重ね、この正弦波形が通過する複数の画素のGray輝度の平均値に基づいて、関数F(Y)により表される正弦波形が亀裂3a,3bに近似しているか否かを判定する。
【0023】
F(Y)=Z+R×tanφ×sin(Y−θ) ・・・・式(1)
ここで、Y:北(N)を基準として任意の方位を表す角度[deg]
Z:深度[m]
R:ボアホール2の半径[m]
θ:走向[deg]
φ:傾斜[deg]
【0024】
以下、ステップS502〜S506にて行われる亀裂3a,3bに近似する正弦波形を求める処理について、より詳細に説明する。
【0025】
図2には、関数F(Y)における深度ZをZ1とし、正弦波形の振幅を表すR×tanφをA1とし、走向θをθ1としたときの正弦波形SW1を鎖線で示している。通常、亀裂3a,3bのGray輝度は、亀裂3a,3b以外の部分のGray輝度よりも小さい。そのため、正弦波形SW1が通過する複数の画素のGray輝度の平均値が小さいほど、正弦波形SW1が亀裂3a,3bに近似していることになる。つまり、正弦波形SW1が通過する複数の画素のGray輝度の平均値に基づいて、正弦波形SW1が亀裂3a,3bに近似しているか否かを判定することが可能である。
【0026】
展開画像における亀裂3a,3bに近似する正弦波形SW1を得るために、まず、ステップS502にて、深度Zを一定値とし、走向θを−180〜+180[deg]の範囲で変化させる(例えば1[deg]毎)と共に傾斜φを0〜90[deg]の範囲で変化させる(例えば1[deg]毎)。このとき、走向θ及び傾斜φの各条件下での正弦波形をグレースケール画像に重ね、正弦波形が通過する複数の画素のGray輝度の平均値をそれぞれ算出する。
【0027】
次に、ステップS503にて、算出された複数のGray輝度平均値の最小値と、Gray輝度平均値の最小値が算出される走向θ及び傾斜φと、を取得する。Gray輝度平均値の最小値が算出される正弦波形は、その深度Zに亀裂がある場合にその亀裂に最も近似する正弦波形である。以下において、その深度ZにおけるGray輝度平均値の最小値を、その深度Zにおける「代表Gray輝度値」と称する。
【0028】
次に、ステップ504にて、予め定められた深度範囲に渡って代表Gray輝度値を取得したか否かを判断する。予め定められた深度範囲は、例えば、ボアホール2の全深度である。予め定められた深度範囲は、操作者によって変更可能であってもよい。
【0029】
ステップS504にて、予め定められた深度範囲に渡って代表Gray輝度値を取得していないと判断した場合には、ステップS505にて深度Zを例えば0.01[m]変化させ、ステップS502,S503を再び実行する。これにより、予め定められた深度範囲に渡って代表Gray輝度値が取得される。ステップS504にて、予め定められた深度範囲に渡って代表Gray輝度値を取得したと判断した場合には、ステップS506を実行する。
【0030】
図6(b)に、ステップS502,S503を予め定められた深度範囲に渡って実行することによって得られる代表Gray輝度値を示すグラフを示す。
図6(a)及び(b)に示すように、通常、代表Gray輝度値は、亀裂3a,3bが存在する深度区間において、他の深度区間よりも小さくなる。そこで、亀裂検出装置100では、代表Gray輝度値に基づいて、亀裂3a,3bの有無を判定する。
【0031】
図5及び
図6に示すように、ステップS506にて、各深度Zにおける代表Gray輝度値と予め定められた亀裂判定用閾値とを比較し、代表Gray輝度値が亀裂判定用閾値以下の場合に亀裂3a,3bが有ると判定する。また、亀裂判定用閾値以下の代表Gray輝度値が算出される正弦波形SWa,SWbを、亀裂3a,3bに近似する正弦波形であると判定する。亀裂判定用閾値は、操作者によって変更可能であってもよい。
【0032】
以上により、展開画像から亀裂3a,3bに基づいて正弦波形が抽出され、亀裂抽出処理が終了する。
【0033】
次に、走向傾斜取得部23により行われる走向傾斜取得処理について、
図6及び
図7を参照して説明する。
【0034】
図6(a),(b)に示すように、亀裂3a,3bには、ボアホール2の深さ方向に幅がある。そこで、まず、ステップS701(
図7参照)にて、亀裂3a,3bの代表の深度Za,Zbを求める。具体的には、亀裂3a,3bがあると判定された各深度区間ZRa,ZRbにおいて、代表Gray輝度値が最小となる深度Zを求め、その深度Zを、亀裂3a,3bの代表の深度Za,Zbとする。以上により、亀裂3a,3bの代表の深度Za,Zbが求められる。
【0035】
次に、ステップS702(
図7参照)にて、代表の深度Za,Zbにおいて亀裂3a,3bに近似すると判定された正弦波形から、走向θ及び傾斜φを求める。具体的には、ステップS503(
図5)にて各深度Zに対して代表Gray輝度値を算出する走向θ及び傾斜φが取得されているので、代表の深度Za,Zbで取得された走向θ及び傾斜φを読み出す。
【0036】
前述のように、関数F(Y)における走向θ及び傾斜φは、ボアホール2の内壁に描かれる楕円形状の走向及び傾斜に相当する。したがって、代表の深度Zaで取得された走向θ及び傾斜φを亀裂3aの走向θa及び傾斜φa(
図2参照)と見なすことにより、亀裂3aの走向θa及び傾斜φaを取得することができる。同様に、代表の深度Zbで取得された走向θ及び傾斜φを亀裂3bの走向θb及び傾斜φb(
図2参照)と見なすことにより、亀裂3bの走向θb及び傾斜φbを取得することができる。
【0037】
以上により、正弦波形抽出部22により抽出された正弦波形から、ボアホール2の内壁での亀裂3a,3bの走向θa,θb及び傾斜φa,φb(
図2参照)が取得され、走向傾斜取得処理が終了する。
【0038】
なお、本実施形態では、ステップS502にて、深度Zを一定値とし、走向θを変化させると共に傾斜φを変化させてGray輝度の平均値をそれぞれ算出しているが、走向θ及び傾斜φを一定値とし、深度Zを変化させてGray輝度の平均値を算出してもよい。この場合、ステップS503では、Gray輝度値の平均値が深度方向に所定の深度以上連続して閾値を下回る区間を亀裂候補区間として抽出し、亀裂候補区間におけるGray輝度平均値の最小値(代表Gray輝度)と、代表Gray輝度が算出される深度Zと、を取得する。そして、予め定められた走向範囲及び傾斜範囲に渡って亀裂候補区間及び代表Gray輝度値を取得する。解析精度分異なる走向θ、傾斜φの亀裂候補区間を比較して、深度分布が所定の深度以上重なっておりかつ走向θ及び傾斜φの一方が同じで他方が解析精度分違う場合には、同一亀裂区間と判定する。同一亀裂区間の判定に用いられなかった亀裂候補区間は、全て個別の亀裂区間として判定する。このようにして、走向傾斜取得処理を行ってもよい。
【0039】
亀裂検出装置100では、コンピュータ20の処理によって、ボアホールカメラ10により作成されたカラーの展開画像から、亀裂3a,3bに近似する正弦波形が抽出され、抽出された正弦波形から、亀裂3a,3bの走向θa,θb及び傾斜φa,φbが取得される。したがって、迅速かつ一定の精度で亀裂3a,3bを検出することができると共に亀裂3a,3bの走向θa,θb及び傾斜φa,φbを取得することができる。
【0040】
取得された亀裂3a,3bの走向θa,θb及び傾斜φa,φbは、後述する亀裂連続性判定処理にて使用される。
【0041】
後述の亀裂連続性判定処理では、亀裂3a,3bの走向θa,θb及び傾斜φa,φbに加え、亀裂3a,3bの幅及び色情報が使用される。亀裂3a,3bの幅及び色情報は、それぞれ、亀裂検出装置100の亀裂幅取得部24及び亀裂色情報取得部25(
図4参照)によって取得される。以下では、亀裂3a,3bの幅及び色情報を取得する処理についてそれぞれ説明する。
【0042】
まず、亀裂幅取得部24により行われる亀裂3aの幅を取得する処理について、
図2、
図8から
図10を参照して説明する。
【0043】
図2に示すように、展開画像における亀裂3aの幅は、方位軸に関して一定ではない。そこで、ここでは、上側ピーク点PUaにおける亀裂3aの幅WUaと、下側ピーク点PLaにおける亀裂3aの幅WUbと、に基づいて算出される幅を、亀裂3aの代表幅として取得する。
【0044】
まず、ステップS801(
図8参照)にて、亀裂3aの代表の深度Zaにおいて亀裂3aに近似する正弦波形を取得する。具体的には、ステップS503(
図5参照)にて各深度Zに対して代表Gray輝度値を算出する走向θ及び傾斜φが取得されているので、代表の深度Zaで取得された走向θ及び傾斜φを読み出し、関数F(Y)に代入することにより正弦波形を取得する。
【0045】
次に、ステップS802(
図8参照)にて、上側ピーク点PUaにおける亀裂3aの幅WUaを、Gray輝度に基づいて求める。亀裂3aの幅WUaを求める処理について、
図9を参照してより具体的に説明する。
【0046】
図9(a)は、グレースケール画像の拡大図であり、亀裂3aの上側ピーク点PUaの近傍を示す。
図9(a)では、代表の深度Zaにおいて亀裂3aに近似する正弦波形SWaが亀裂3aに重ねられ、正弦波形SWaの上側ピーク点Pを通りボアホール2の深さ方向に延びる直線Lが鎖線で示されている。また、
図9(b)は、直線Lに沿う深度毎のGray輝度を示すグラフである。
【0047】
図9(a)及び(b)に示すように、通常、直線Lに沿うGray輝度は、亀裂3aが存在する深度区間において、他の深度区間よりも小さくなる。そこで、ステップS802(
図8参照)では、直線Lに沿うGray輝度と予め定められた亀裂幅取得用閾値とを比較し、Gray輝度が亀裂幅取得用閾値以下となる深度区間の長さを亀裂3aの幅WUaとして取得する。亀裂幅取得用閾値は、操作者によって変更可能であってもよい。
【0048】
以上の処理により、亀裂3aの幅WUaが求められる。
【0049】
次に、ステップS803(
図8参照)にて、
図2に示す下側ピーク点PLaにおける亀裂3aの幅WLaを、Gray輝度に基づいて求める。ステップS803における処理は、ステップS802における処理と略同じであるため、ここではその説明を省略する。
【0050】
次に、ステップS804にて、亀裂3aの幅WUaと幅WLaとの平均値を算出する。
【0051】
ここで、展開画像から求められる亀裂3aの幅WUa及び幅WLaと、亀裂3aの傾斜φaと、の関係について、
図10を参照して説明する。
図10は、ボアホール2における亀裂3aを、その走向に平行に透視した模擬拡大図である。
図10には、亀裂3aの傾斜φaを小さくした仮想の亀裂3a’を示している。
【0052】
ステップS803,S804(
図8参照)にて求められる幅WUa,WLaは、ボアホール2の内壁での亀裂3aの幅、つまりボアホール2の深度方向における亀裂3aの幅に相当する。そのため、亀裂3aの幅WUaと幅WLaとの平均値は、ボアホール2の中心での深度方向における亀裂3aの幅WAaに相当する。亀裂3aの幅WAaは、亀裂3aと仮想の亀裂3a’とを比較すると明らかなように、傾斜φが大きいほど大きくなる。そのため、後述する亀裂連続性判定処理において、亀裂3aの幅WAaを用いて亀裂の連続性を判定すると、亀裂3aの傾斜φaの影響により判定精度が低下するおそれがある。
【0053】
そこで、亀裂検出装置100では、S805(
図8参照)にて、亀裂3aの傾斜φaに基づいて、亀裂3aの幅WUaと幅WLaとの平均値(幅WAa)を補正する。具体的には、幅WAaに傾斜φaの余弦値(cosφa)を乗じて、幅WAaを補正する。これにより、ボアホール2の中心での亀裂3aの法線方向における幅WNaが得られる。以下において、幅WNaを「代表幅WNa」とも称する。
【0054】
以上により、展開画像から亀裂3aの代表幅WNaが取得され、亀裂幅取得処理が終了する。亀裂3bの代表幅を取得する処理は、亀裂3aの代表幅WNaを取得する処理と略同じであるため、ここではその説明を省略する。
【0055】
なお、本実施形態では、亀裂3aの幅WUaと幅WLaとの平均値(幅WAa)を算出し更に亀裂3aの傾斜φaの余弦値(cosφa)を乗じて幅WAaを補正して代表幅WNaを取得しているが、亀裂区間の区間長(見かけ亀裂幅)を算出し傾斜φaで補正して代表幅WNaを取得してもよい。この場合、代表幅WNaは、実際の割れ目幅ではなく、平均的な亀裂幅として算出される。
【0056】
亀裂検出装置100では、コンピュータ20の処理によって、展開画像から亀裂3aの代表幅WNaを取得する。したがって、亀裂3aの代表幅WNaを迅速かつ一定の精度で取得することができる。
【0057】
また、亀裂検出装置100では、ボアホール2の深さ方向における亀裂3aの幅WAaを、傾斜φの余弦値を乗じて補正することにより、亀裂3aの法線方向における代表幅WNaを取得する。したがって、亀裂3aの傾斜φaの影響を受けない幅を取得することができる。
【0058】
次に、亀裂色情報取得部25により行われる亀裂色情報取得処理について、
図11を参照して説明する。図示を省略するが、亀裂3aの色は、
図2に示す亀裂3aの幅と同様に、方位軸に関して一定ではない。そこで、ここでは、上側ピーク点PUaにおける亀裂3aの色情報と、下側ピーク点PLaにおける亀裂3aの色情報と、の平均値を、亀裂3aの代表色情報として取得する。
【0059】
まず、
図11に示すように、ステップS1101にて、亀裂3aの代表の深度Zaにおいて亀裂3aに近似する正弦波形を取得する。具体的には、ステップS503(
図5参照)にて各深度Zに対して代表Gray輝度値を算出する走向θ及び傾斜φが取得されているので、代表の深度Zaで取得された走向θ及び傾斜φを読み出し、関数F(Y)に代入することにより正弦波形を取得する。
【0060】
次に、ステップS1102にて、
図9(A)に示す上側ピーク点PUaにおける亀裂3aのRGB輝度を、カラーの展開画像から抽出する。具体的には、直線Lに沿うRGB輝度を、ステップS802(
図8参照)にて求められる幅WUaの深度区間で抽出する。
【0061】
次に、ステップS1103にて、RGB表色系からL*a*b*表色系へ変換する。これにより、上側ピーク点PUaにおけるL*値、a*値及びb*値が算出される。
【0062】
次に、ステップS1104にて、
図2に示す下側ピーク点PLaにおける亀裂3aのRGB輝度を、カラーの展開画像から抽出する。次に、ステップS1105にて、下側ピーク点PLaにおけるRGB輝度に基づいて、L*値、a*値及びb*値を算出する。ステップS1104,S1105における処理は、ステップS1102,S1103における処理と略同じであるため、ここではその説明を省略する。
【0063】
次に、ステップS1106にて、上側及び下側ピーク点PUa,PLaにおけるL*値、a*値、b*値の平均値をそれぞれ算出し、これらの平均値を、亀裂3a,3bの代表色情報として取得する。
【0064】
以上により、展開画像から亀裂3aの代表色情報が取得され、亀裂色情報取得処理が終了する。亀裂3bの代表色情報を取得する処理は、亀裂3aの代表色情報を取得する処理と略同じであるため、ここではその説明を省略する。
【0065】
なお、本実施形態では、上側ピーク点PUaにおける亀裂3aのRGB輝度と、下側ピーク点PLaにおける亀裂3aのRGB輝度と、の平均値を求めているが、正弦波上の全ての画素でのRGB輝度の平均値を求めてもよい。
【0066】
このように、亀裂検出装置100では、コンピュータ20の処理によって、カラーの展開画像から亀裂3a,3bの色情報を取得する。したがって、亀裂3a,3bの色情報を迅速かつ一定の精度で取得することができる。
【0067】
また、亀裂検出装置100では、RGB輝度を、S802(
図8参照)にて求められる深度区間で抽出する。そのため、亀裂3a,3b以外の部分での色情報を抽出するのを防止することができ亀裂3a,3bにおける色情報をより正確に取得することができる。
【0068】
亀裂検出装置100の以上の処理により、亀裂3a,3bの深度、走向、傾斜、亀裂幅及び色情報が取得される。
【0069】
次に、亀裂連続性判定システム1000について、
図12から
図20を参照して説明する。亀裂連続性判定システム1000は、亀裂検出装置100により取得される亀裂情報(亀裂の深度、走向、傾斜、幅及び色情報)を用いて算出される指標や、いわゆるルジオン試験を実施することによって得られるルジオン値(Lu値)を用いて算出される指標に基づいて、亀裂どうしの連続性を判定し、その結果を表示する。
【0070】
なお、各指標について連続性判定用閾値を予め設定し、連続性判定用閾値を越える指標又は連続性判定用閾値よりも小さい指標をエラー値として排除してもよい。
【0071】
図12に示すように、亀裂連続性判定システム1000は、亀裂検出装置100から亀裂情報を取り込む亀裂情報取込部31と、亀裂どうしの連続性を判定するための指標を算出する指標算出部33と、亀裂どうしの連続性を判定する連続性判定部34と、を備える。指標算出部33により算出される指標は、亀裂どうしの見かけの深度差、法線ベクトルの交差角度、幅差、色情報差、及びルジオン値差と、を含む。連続性判定部34は、これらの指標を用いて算出される連続性判定スコアに基づいて、亀裂どうしの連続性を判定する。
【0072】
以下、亀裂どうしの連続性を判定するための指標を算出する処理、及びこれらの指標を用いて算出される連続性判定スコアに基づいて亀裂どうしの連続性を判定する処理について、
図13から
図18を参照して具体的に説明する。
図13は、第1及び第2ボアホール2c,2dを示す斜視図である。ここでは、第1ボアホール2cにおいて検出される複数の亀裂のうちの1つの亀裂3cと、第2ボアホールにおいて検出される複数の亀裂のうちの1つの亀裂3dと、の連続性を判定する指標の算出について説明する。
【0073】
まず、指標として亀裂3c,3dどうしの見かけ深度差を算出する場合について説明する。
【0074】
ここで、「見かけの深度差」について、
図13を参照して説明する。「見かけの深度差」とは、例えば、第1ボアホール2cにおける亀裂3cを第2ボアホール2dまで直線的に延長した仮想亀裂3c’が第2ボアホール2dと交差する交点Pcでの深度と、亀裂3dの深度と、の差Dcである。亀裂は、通常、基礎地盤1(
図1参照)中において略直線状に延びるので、見かけの深度差Dcが小さいほど亀裂3c,3dどうしは連続している可能性が高くなる。換言すれば、亀裂3c,3dどうしの見かけの深度差を指標として用いることにより亀裂3c,3dどうしの連続性を判定することが可能である。以下、亀裂3c,3dどうしの見かけの深度差を算出する場合について、
図13及び
図14を参照して具体的に説明する。
【0075】
まず、ステップS1401にて、亀裂3cの代表深度、走向及び傾斜に基づいて、亀裂3cを第2ボアホール2dまで直線的に延長する。次に、ステップS1402にて、延長された仮想亀裂3c’と第2ボアホール2dの中心軸との交点Pcの深度を算出する。次に、ステップS1403にて、交点Pcと亀裂3dとの深度差(見かけの深度差)Dcを算出する。
【0076】
ステップS1401,S1402,S1403は、第2ボアホール2dにおける亀裂3dに対しても行なわれる。ステップS1401,S1402,S1403が両方の亀裂3c,3dに対して行われたかは、ステップS1404にて判断される。ステップS1401,S1402,S1403を亀裂3dに対して実行することにより、仮想亀裂3d’と第1ボアホール2cの中心軸との交点Pdの深度が算出され、交点Pdと亀裂3cとの深度差(見かけの深度差)Ddが算出される。
【0077】
次に、ステップS1405にて、2つの見かけの深度差Dc,Ddの平均値を算出する。次に、ステップS1406にて、見かけの深度差Dc,Ddの平均値を、亀裂3c,3d間の距離で除す。以上により、正規化された見かけの深度差が得られる。
【0078】
本実施形態では、深度差Dc、Ddの平均値を見かけの深度差として算出しているが、見かけの深度差をいわゆる面間距離で算出してもよい。面間距離の算出方法を、
図21を参照して具体的説明する。まず、亀裂3cの代表深度、走向及び傾斜に基づいて、亀裂3cを平面的に延長する。次に、延長された仮想亀裂平面3c’’に、亀裂3dの中心から垂線NLdを延ばし、垂線NLdの長さLdを算出する。同様に、亀裂3dを平面的に延長した仮想亀裂平面3d’’に、亀裂3cの中心から垂線NLcを延ばし、垂線NLcの長さLcを算出する。垂線NLc,NLdの長さLc,Ldの平均値を算出し、亀裂3c,3d間の距離で除す。以上により、正規化された面間距離が得られる。
【0079】
次に、指標として、亀裂3cの単位法線ベクトルと、亀裂3dの単位法線ベクトルと、の交差角度を算出する場合について説明する。亀裂は、通常、基礎地盤1(
図1参照)中において略直線状に延びる。そのため、亀裂3c,3dの法線ベクトルの方向が近いほど、つまり亀裂3c,3dどうしの単位法線ベクトルの交差角度が0に近いほど亀裂3c,3dどうしは連続している可能性が高くなる。換言すれば、亀裂3c,3dどうしの単位法線ベクトルの交差角度を指標として用いることにより亀裂3c,3dどうしの連続性を判定することが可能である。以下、亀裂3c,3dどうしの単位法線ベクトルの交差角度を算出する場合について、
図13及び
図15を参照して具体的に説明する。
【0080】
まず、ステップS1501にて、亀裂3cの走向及び傾斜に基づいて、亀裂3cの平面の方程式を算出する。次に、ステップS1502にて、平面の方程式から亀裂3cにおける単位法線ベクトルVcを算出する。
【0081】
ステップS1501,S1502は、亀裂3dに対しても行われる。ステップS1501,S1502が両方の亀裂3c,3dに対して行われたかは、ステップS1503にて判断される。ステップS1501,S1502を亀裂3dに対して実行することにより、亀裂3dにおける単位法線ベクトルVdが算出される。
【0082】
次に、ステップS1504にて、亀裂3c,3dどうしの単位法線ベクトルVc,Vdの交差角度を算出する。以上により、亀裂3c,3dの単位法線ベクトルVc,Vdの交差角度が得られる。
【0083】
次に、指標として、亀裂3c,3dどうしの幅差を算出する場合について説明する。連続する1つの亀裂においては、通常、第1ボアホール2cでの幅と、第2ボアホール2dでの幅と、は略一致する。したがって、亀裂3c,3dどうしの幅差が小さいほど亀裂3c,3dどうしは連続している可能性が高くなる。換言すれば、亀裂3c,3dどうしの幅差を指標として用いることにより亀裂3c,3dどうしの連続性を判定することが可能である。以下、亀裂3c,3dどうしの幅差を算出する場合について、
図13及び
図16を参照して具体的に説明する。
【0084】
まず、ステップS1601にて、亀裂3cの代表幅WNcと、亀裂3dの代表幅WNdと、を取得する。次に、S1602にて、代表幅WNcと代表幅WNdとのうち大きい方の幅を小さい方の幅で除す。以上により、亀裂3c,3dどうしの相対的な幅差が得られる。
【0085】
ステップS1601で取得される代表幅WNc,WNdは、それぞれ、亀裂3c,3dの傾斜φにより補正されている。したがって、亀裂3c,3dの傾斜φの影響を受けない幅差を取得することができ、後述する亀裂連続性の判定精度が向上する。
【0086】
次に、指標として、亀裂3c,3dどうしの色情報差を算出する場合について説明する。連続する1つの亀裂においては、通常、第1ボアホール2cでの亀裂の色情報と、第2ボアホール2dでの亀裂の色情報と、は略一致する。したがって、亀裂3c,3dどうしの色情報差が小さいほど亀裂3c,3dどうしは連続している可能性が高くなる。換言すれば、亀裂3c,3dどうしの色情報差を指標として用いることにより亀裂3c,3dどうしの連続性を判定することが可能である。以下、亀裂3c,3dどうしの色情報差を算出する場合について、
図13及び
図17を参照して具体的に説明する。
【0087】
まず、ステップS1701にて、亀裂3c,3dの色情報(L*値、a*値及びb*値)を取得する。次に、ステップS1702にて、亀裂3cのL*値と、亀裂3dのL*値とのうち大きい方のL*値を小さい方のL*値と比較して、L*値の差を算出する。a*値及びb*値についても同様に、ステップS1503,S1504にて、a*値及びb*値の差をそれぞれ算出する。次に、S1505にて、L*値、a*値及びb*値の差の平均値を算出する。以上により、亀裂3c,3dの色情報差が得られる。
【0088】
なお、色情報差を相対差とした場合は、正の値のみならず、負の値をとることもあるので、便宜、相対差、絶対差を選択してもよい。
【0089】
次に、指標として、亀裂3c,3dどうしのルジオン値差を算出する場合について説明する。ルジオン値とは、地盤が高い水圧の作用下にあるときの水の通しやすさを示す指標であり、ルジオン値が高いほど水の通りやすい(透水性の高い)亀裂があることを意味する。ルジオン値は、いわゆるルジオン試験により求められる。ルジオン試験とは、地盤に形成されたボアホールに1[MPa]の水圧をかける試験であり、1[MPa]の水圧をかけた状態で1分間に地盤に浸透する水の量がルジオン値である。ルジオン試験は、ボアホールの所定の深度毎(例えば1m毎)に行われ、ルジオン値は、ボアホールの所定の深度毎に求められる。ルジオン試験により求められたルジオン値は、ルジオン値取込部32(
図12参照)により亀裂連続性判定システム1000に取り込まれる。
【0090】
連続する1つの亀裂においては、通常、第1ボアホール2cでのルジオン値と、第2ボアホール2dでのルジオン値と、は略一致する。したがって、亀裂3c,3dどうしのルジオン値差が小さいほど亀裂3c,3dどうしは連続している可能性が高くなる。換言すれば、亀裂3c,3dどうしのルジオン値差を指標として用いることにより亀裂3c,3dどうしの連続性を判定することが可能である。以下、亀裂3c,3dどうしのルジオン値差を算出する場合について、
図18を参照して具体的に説明する。
【0091】
まず、ステップS1801にて、亀裂3c,3dの代表深度を取得する。次に、ステップS1802にて、亀裂3c,3dの代表深度におけるルジオン値を取得する。次に、ステップS1803にて、亀裂3cのルジオン値と、亀裂3dのルジオン値とを比較し、大きい方のルジオン値を小さい方のルジオン値で除す。これにより、ルジオン値の相対差が算出される。
【0092】
以上により、亀裂3c,3dどうしの見かけの深度差、法線ベクトルの交差角度、幅差、色情報差及びルジオン値差が指標として算出される。
【0093】
次に、亀裂3c,3dどうしの見かけの深度差、法線ベクトルの交差角度、幅差、色情報差及びルジオン値差を用いて亀裂どうしの連続性を判定する処理について、
図19を参照して説明する。連続性を判定する処理は、連続性判定部34(
図12参照)にて行われる。
【0094】
まず、ステップS1901にて、亀裂3c,3dどうしの見かけの深度差、法線ベクトルの交差角度、幅差、色情報差及びルジオン値差の累積相対度数分布を作成する。次に、ステップS1902にて、各亀裂3c,3dの各指標について累積度を算出する。次に、ステップS1903にて、累積度の重み付け平均値を算出し、連続性判定スコアとして取得する。
【0095】
次に、ステップS1904にて、連続性判定スコアに基づいて、亀裂3c,3dどうしの連続性を判定する。具体的には、連続性判定スコアが予め定められた連続性判定用閾値以上の場合には、亀裂3c,3dどうしが連続していると判定し、連続性判定用閾値未満の場合には、亀裂3c,3dどうしは連続していないと判定する。
【0096】
以上により、亀裂3c,3dどうしの連続性を判定する処理が終了する。
【0097】
判定結果出力部35(
図12参照)は、亀裂どうしの連続性を判定した結果を、モニターや紙といった媒体に表示する。
図20は、表示の一例を示す。
図20に示す例では、ボアホール2eにおいて検出された亀裂3e1,3e2,3e3,3e4,3e5と、ボアホール2fにおいて検出された亀裂3f1,3f2,3f3,3f4の連続性の判定結果を表示している。具体的には、亀裂3e2,3f3どうしは連続していると判定され、亀裂3e1,3e3,3e4,3e5,3f1,3f2,3f4は他のどの亀裂とも連続していないと判定された結果を表示している。
【0098】
まず、連続していないと判定された亀裂3e1,3e3,3e4,3e5,3f1,3f2,3f4に関する表示について、亀裂3e1を代表して説明する。判定結果出力部35は、亀裂3e1に関する連続性判定の結果として、亀裂3e1の代表深度において円板状の亀裂が存在すると仮想して、円板状の仮想亀裂4eを表示する。仮想亀裂4eの中心、走向及び傾斜は、亀裂3e1の中心、走向及び傾斜と一致するように設定される。仮想亀裂4eの半径は、仮想亀裂4eの外周がボアホール2eの内壁を超えボアホール2fに達しない大きさに設定される。
【0099】
亀裂3e3,3e4,3e5,3f1,3f2,3f4に関する連続性判定の結果についても、仮想亀裂4eと同様に表示される。
【0100】
次に、互いに連続すると判定された亀裂3e2,3f3に関する表示について説明する。判定結果出力部35は、亀裂3e2,3f3に関する連続性判定の結果として、ボアホール2eからボアホール2fに渡る円板状の亀裂が存在すると仮想して、円板状の仮想亀裂4efを表示する。仮想亀裂4efの中心は、亀裂3e2の中心と亀裂3f3の中心を結ぶ線分の中点に設定される。仮想亀裂4efの走向及び傾斜は、それぞれ、亀裂3e2と亀裂3f3の走向及び傾斜のそれぞれの平均に設定される。仮想亀裂4efの半径は、仮想亀裂4efの外周がボアホール2e,2fを超え他のボアホール(図示省略)には達しない大きさに設定される。
【0101】
このように、互いに連続すると判定された亀裂3e2,3f3に関しては、ボアホール2eからボアホール2fに渡る仮想亀裂4efが表示されるので、連続する亀裂の大きさ及び位置を容易に把握することができる。
【0102】
図示を省略するが、3つ以上のボアホールにおいて検出される3つ以上の亀裂が連続すると判定された場合には、これらの亀裂を含むように円板状の仮想亀裂を表示する。仮想亀裂は、円板状に限られず、矩形曲面として表示してもよい。
【0103】
以上のように、亀裂連続性判定システム1000では、コンピュータ20の処理によって、亀裂検出装置100により検出された亀裂どうしの連続性が判定される。したがって、ボアホール2における亀裂どうしの連続性を迅速かつ一定の精度で検出することができ、基礎地盤1(
図1参照)中の亀裂を推定することができる。これにより、より確実に基礎地盤1中の亀裂を塞ぐようにグラウチングの仕様を決定することが可能になる。
【0104】
例えば、
図20に示す例において、ボアホール2e,2fの間に新たにボアホールを形成してグラウトを注入することによって、仮想亀裂4efに相当する亀裂を塞ぐといったグラウチングの仕様を提案することができるようになる。これにより、ボアホール2e,2fの間に存在すると推定される透水性の高い仮想亀裂4efに相当する亀裂をグラウトにより塞ぐことができ、基礎地盤1の遮水性を高めることができる。
【0105】
以上の実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0106】
亀裂検出装置100では、展開画像から亀裂に基づいて正弦波形が抽出され、ボアホール2の内壁での亀裂の走向及び傾斜が正弦波形から取得される。そのため、迅速かつ一定の精度で亀裂を検出することができると共に亀裂の走向及び傾斜を取得することができる。
【0107】
また、亀裂連続性判定システム1000では、亀裂どうしの連続性を判定するための指標に基づいて、亀裂どうしの連続性が判定される。したがって、迅速かつ一定の精度で亀裂の連続性を判定することができる。これにより、グラウチングの仕様を容易に決定することができる。
【0108】
また、亀裂連続性判定システム1000では、亀裂どうしの連続性を判定するための指標に、亀裂検出装置100により取得された走向及び傾斜に基づいて算出される見かけの深度差及び法線ベクトルの交差角度が含まれる。亀裂の走向及び傾斜を迅速かつ一定の精度で検出できるため、見かけの深度差及び法線ベクトルの交差角度を迅速かつ一定の精度で算出することが可能になる。したがって、亀裂の連続性を迅速に判定できると共にその精度を高めることができる。
【0109】
また、亀裂連続性判定システム1000では、亀裂幅取得部24により取得される亀裂の幅に基づいて算出される幅差が指標に含まれる。亀裂の幅を亀裂検出装置100により迅速かつ一定の精度で検出できるため、幅差を迅速かつ一定の精度で算出することが可能になる。したがって、亀裂の連続性を迅速に判定できると共にその精度を高めることができる。
【0110】
また、亀裂連続性判定システム1000では、亀裂幅取得部24により取得される亀裂の幅は、走向傾斜取得部23により取得される傾斜を用いて補正された幅である。そのため、亀裂の傾斜の影響を受けない幅差を取得することができ、亀裂連続性の判定性の精度が向上する。
【0111】
また、亀裂連続性判定システム1000では、亀裂色情報取得部25により取得される亀裂の色情報の差が指標に含まれる。亀裂の色情報を亀裂検出装置100により迅速かつ一定の精度で検出できるため、色情報の差を迅速かつ一定の精度で算出することが可能になる。したがって、亀裂の連続性を迅速に判定できると共にその精度を高めることができる。
【0112】
また、亀裂連続性判定システム1000では、亀裂の深度におけるルジオン値差が指標に含まれる。したがって、連続しかつ透水性の高い亀裂を容易にかつ高い精度で判定することができる。
【0113】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0114】
亀裂連続性判定システム1000では、亀裂どうしの見かけの深度差、法線ベクトルの交差角度、幅差、色情報差、及びルジオン値差の全てを用いて亀裂の連続性を判定しているが、これらの指標のうち少なくとも1つに基づいて亀裂の連続性を判定してもよい。