(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の金属担持高分子は、リンカーLを介して高分子主鎖と結合したイミダゾリル基を有する、一般式(I)で示される高分子化合物と、亜鉛又はコバルト化合物とを反応させて得られる。
【0018】
リンカー部位Lで示される2価の原子団としては、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基、炭素数3〜8のシクロアルキレン基、炭素数2〜20の直鎖状又は分岐鎖状アルケニレン基、炭素数3〜20のシクロアルケニレン基、炭素数2〜20の直鎖状又は分岐鎖状アルキニレン基、炭素数6〜20のアリーレン基、炭素数7〜20のアラルキレン基、炭素数1〜20のヘテロアルキレン基、炭素数2〜20のヘテロアリーレン基、炭素数3〜20のヘテロアラルキレン基、フェニレンビニレン基、ポリフルオレンジイル基、ポリチオフェンジイル、ジアルキルシランジイル基及びジアリールシランジイル基並びにその誘導体から派生された基である。これらの2価の原子団は、置換基を有していてもよく、また、これらの原子団の二つ以上が、それぞれ組合せられてもよい。
【0019】
炭素数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基としては、例えば、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレン、ウンデカメチレン、ドデカメチレン、トリデカメチレン、テトラデカメチレン、ペンタデカメチレン、ヘキサデカメチレン基等の直鎖状アルキレン基;プロピレン、メチルプロパンジイル、1,2−ブタンジイル、1,2−ジメチルエチレン、1,1−ジメチルエチレン、1−エチルプロピレン、2−エチルプロピレン、1,2−ジメチルプロピレン、2,2−ジメチルプロピレン、1−プロピルプロピレン、2−プロピルプロピレン、1−メチル−1−エチルプロピレン、1−メチル−2−エチル−プロピレン、1−エチル−2−メチル−プロピレン、2−メチル−2−エチル−プロピレン、1−メチルブチレン、2−メチルブチレン、3−メチルブチレン、2−エチルブチレン、メチルペンチレン、エチルペンチレン、メチルヘキシレン、メチルヘプチレン、メチルオクチレン、メチルノニレン、メチルデシレン、メチルウンデシレン、メチルドデシレン、メチルテトラデシレン、メチルオクタデシレン基等の分岐鎖状アルキレン基等を挙げることができる。好ましくは、炭素数1または2の直鎖状アルキレン基であり、より好ましくはメチレン基である。また、これらのアルキレン基は、後述する置換基を有してもよい。
【0020】
炭素数3〜8のシクロアルキレン基としては、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基、1,2−シクロヘキシレンビスメチレン、1,3−シクロヘキシレンビスメチレン、1,4−シクロヘキシレンビスメチレン等が挙げられる。これらのシクロアルキレン基は、後述する置換基を有してもよい。
【0021】
炭素数2〜20の直鎖状又は分岐鎖状アルケニレン基としては、例えば、ビニレン、1−メチルエテンジイル、プロペニレン、2−ブテニレン、2−ペンテニレン、3−ペンテニレン等を挙げることができる。これらのアルケニレン基は、後述する置換基を有してもよい。
【0022】
炭素数3〜20のシクロアルケニレン基としては、例えば、シクロプロペニレン、シクロブテニレン、シクロペンテニレン、シクロヘキセニレン、シクロオクテニレン基等を挙げることができる。これらのシクロアルケニレン基は、後述する置換基を有してもよい。
【0023】
炭素数2〜20の直鎖状又は分岐鎖状アルキニレン基としては、例えば、エチニレン、プロピニレン、3−メチル−1−プロピニレン、ブチニレン、1、3−ブタジイニレン、ペンチニレン、2−ペンチニレン、2,4−ペンタジイニレン、2−ヘキシニレン、1,3,5−ヘキサトリイニレン、3−ヘプチニレン、4−オクチニレン、4−ノニニレン、5−デシニレン、6−ウンデシニレン、6−ドデシニレン基等を挙げることができる。これらのアルキニレン基は、置換基を有してもよい。
【0024】
炭素数6〜20のアリーレン基としては、例えば、フェニレン(o−フェニレン、m−フェニレン、p−フェニレン)、ビフェニレン、ナフタレンジイル、ビナフタレンジイル、アントラセンジイル、フェナントレンジイル基等を挙げることができる。これらのアリーレン基は、後述する置換基を有してもよい。
【0025】
炭素数7〜20のアラルキレン基としては、−CH
2−Z−(CH
2−)aで表される基であり、基中のZはフェニレン、ナフタレンジイル、ビフェニレンを表し、aは0又は1を表す。具体的な基としては、例えばフェニレンメチレン(o−フェニレンメチレン、m−フェニレンメチレン、p−フェニレンメチレン)、フェニレンビスメチレン(1,2−フェニレンビスメチレン、1,3−フェニレンビスメチレン、1,4−フェニレンビスメチレン)、ナフタレンジイルビスメチレン、ビフェニレンビスメチレンなどが挙げられる。これらのアラルキレン基は、後述する置換基を有してもよい。
【0026】
炭素数1〜20のヘテロアルキレン基としては、前記アルキレン基の主鎖における炭素原子のうち一つ以上、望ましくは、1〜5個の炭素原子が酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子のようなヘテロ原子に置換されたものを意味する。例えば、アルキレンオキシ、アルキレンジオキシ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノが挙げられる。これらのヘテロアルキレン基は、後述する置換基を有してもよい。
【0027】
炭素数2〜20のヘテロアリーレン基としては、前記アリーレン基の炭素原子のうち一つ以上、望ましくは、1〜5個の炭素原子が酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子のようなヘテロ原子に置換されたものを意味する。これらのヘテロアリーレン基は、後述する置換基を有してもよい。
【0028】
炭素数3〜20のヘテロアラルキレン基としては、前記アラルキレン基の炭素原子のうち一つ以上、望ましくは、1〜5個の炭素原子が酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子のようなヘテロ原子に置換されたものを意味する。好ましい例としては、−CH
2−Z−CH
2−のような構造のものが挙げられ、基中Zはフラン、ピロール、チオフェン、ピリジン、ピラゾールまたはイミダゾールから誘導された二価の基である。これらのヘテロアリールアルキレン基は、後述する置換基を有してもよい。
【0029】
リンカー部位Lで示される上記で例示された2価の原子団のなかでも、好ましくは、直鎖状、分岐鎖状いずれでもよく置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基、置換基を有していてもよいヘテロアルキレン基、置換基を有していてもよいアラルキレン基または置換基を有していてもよいヘテロアラルキレン基が挙げられる。さらに好ましくは置換基を有していてもよいアラルキレン基または置換基を有していてもよいヘテロアラルキレン基が挙げられ、最も好ましくは置換基を有していてもよいアラルキレン基がある。さらに好ましくはメチレン基、p−フェニレンメチレン基が挙げられる。
【0030】
前述した2価の原子団が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、脂肪族複素環基、芳香族複素環基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基(例えば、アルコキシ基、アルキレンジオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ヘテロアリールオキシ基)、保護基で保護されていてもよいヒドロキシメチル基、アシル基、置換アミノ基(例えば、アルキルで置換されたアミノ基、アリールで置換されたアミノ基、アラルキルで置換されたアミノ基、アシルで置換されたアミノ基、アルコキシカルボニルで置換されたアミノ基)、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基(例えば、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基)、スルホ基、オキソ基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子等を挙げることができる。保護基としては有機合成の分野で慣用の保護基を使用できる。
【0031】
アルキル基としては、直鎖状でも、分岐状でも或いは環状でもよい、例えば炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、2−ペンチル基、tert−ペンチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、2,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、2−メチルペンタン−3−イル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。アルケニル基としては、直鎖状でも分岐状でもよい、例えば炭素数2〜15、好ましくは炭素数2〜10、より好ましくは炭素数2〜6のアルケニル基が挙げられ、具体的にはビニル基、1−プロペニル基、アリル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、ヘキセニル基等が挙げられる。
【0032】
アルキニル基としては、直鎖状でも分岐状でもよい、例えば炭素数2〜15、好ましくは炭素数2〜10、より好ましくは炭素数2〜6のアルキニル基が挙げられ、具体的にはエチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、3−ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基等が挙げられる。
【0033】
アリール基としては、例えば炭素数6〜14のアリール基が挙げられ、具体的にはフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナンスレニル基、ビフェニル基等が挙げられる。
【0034】
脂肪族複素環基としては、例えば炭素数2〜14で、少なくとも1個、好ましくは1〜3個の例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいる、5〜8員、好ましくは5又は6員の単環の脂肪族複素環基、多環又は縮合環の脂肪族複素環基が挙げられる。脂肪族複素環基の具体例としては、例えば、ピロリジル−2−オン基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、モルホリノ基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチエニル基等が挙げられる。
【0035】
芳香族複素環基としては、例えば炭素数2〜15で、少なくとも1個、好ましくは1〜3個の窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいる、5〜8員、好ましくは5又は6員の単環式芳香族複素環基、多環式又は縮合環式の芳香族複素環基が挙げられ、具体的にはフリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジル基、ピリダジル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基、フタラジル基、キナゾリル基、ナフチリジル基、シンノリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基等が挙げられる。
【0036】
アルコキシ基としては、直鎖状でも分岐状でも或いは環状でもよい、例えば炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられ、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、2−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、2−メチルブトキシ基、3−メチルブトキシ基、2,2−ジメチルプロピルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、2−メチルペンチルオキシ基、3−メチルペンチルオキシ基、4−メチルペンチルオキシ基、5−メチルペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
アルキレンジオキシ基としては、例えば炭素数1〜3のアルキレンジオキシ基が挙げられ、具体的にはメチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基、プロピレンジオキシ基等が挙げられる。
【0037】
アリールオキシ基としては、例えば炭素数6〜14のアリールオキシ基が挙げられ、具体的にはフェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントリルオキシ基、ベンジルオキシ基等が挙げられる。
【0038】
アラルキルオキシ基としては、例えば炭素数7〜12のアラルキルオキシ基が挙げられ、具体的にはベンジルオキシ基、2−フェニルエトキシ基、1−フェニルプロポキシ基、2−フェニルプロポキシ基、3−フェニルプロポキシ基、1−フェニルブトキシ基、2−フェニルブトキシ基、3−フェニルブトキシ基、4−フェニルブトキシ基、1−フェニルペンチルオキシ基、2−フェニルペンチルオキシ基、3−フェニルペンチルオキシ基、4−フェニルペンチルオキシ基、5−フェニルペンチルオキシ基、1−フェニルヘキシルオキシ基、2−フェニルヘキシルオキシ基、3−フェニルヘキシルオキシ基、4−フェニルヘキシルオキシ基、5−フェニルヘキシルオキシ基、6−フェニルヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0039】
ヘテロアリールオキシ基としては、例えば少なくとも1個、好ましくは1〜3個の窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいる、炭素数2〜14のヘテロアリールオキシ基が挙げられ、具体的には、2−ピリジルオキシ基、2−ピラジルオキシ基、2−ピリミジルオキシ基、2−キノリルオキシ基等が挙げられる。
アルコキシカルボニル基としては、直鎖状でも分岐状でも或いは環状でもよい、例えば炭素数2〜19のアルコキシカルボニル基が挙げられ、具体的にはメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基、ラウリルオキシカルボニル基、ステアリルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0040】
アリールオキシカルボニル基としては、例えば炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基が挙げられ、具体的にはフェノキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等が挙げられる。アラルキルオキシカルボニル基としては、例えば炭素数8〜15のアラルキルオキシカルボニル基が挙げられ、具体的にはベンジルオキシカルボニル基、フェニルエトキシカルボニル基、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル等が挙げられる。
【0041】
アラルキルオキシカルボニル基としては、例えば炭素数8〜15のアラルキルオキシカルボニル基が挙げられ、具体的にはベンジルオキシカルボニル基、フェニルエトキシカルボニル基、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0042】
アシル基としては、直鎖状でも分岐状でもよい、例えば、脂肪酸カルボン酸、芳香族カルボン酸等のカルボン酸由来の炭素数1〜18のアシル基が挙げられ、具体的には、例えばホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、アクリロイル基、ブチリル基、ピバロイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ラウロイル基、ステアロイル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
【0043】
置換アミノ基としては、アミノ基の1個又は2個の水素原子が上記アルキル基、上記アリール基又はアミノ基の保護基等の置換基で置換されたアミノ基が挙げられる。保護基としては、アミノ保護基として用いられるもの(例えば、PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS THIRD EDITION(JOHN WILEY & SONS、INC.(1999))参照)であれば何れも使用可能である。アミノ保護基の具体例としては、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数1〜8のアシル基、炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基、素数6〜20のアリールオキシカルボニル基及び炭素数7〜12のアラルキルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0044】
アルキル基で置換されたアミノ基の具体例としては、N−メチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N,N−ジイソプロピルアミノ基、N−シクロヘキシルアミノ基等のモノ又はジアルキルアミノ基が挙げられる。
アリール基で置換されたアミノ基の具体例としては、N−フェニルアミノ基、N−(3−トリル)アミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N,N−ジ(3−トリル)アミノ基、N−ナフチルアミノ基、N−ナフチル−N−フェニルアミノ基等のモノ又はジアリールアミノ基が挙げられる。
【0045】
アラルキル基で置換されたアミノ基、即ちアラルキル基置換アミノ基の具体例としては、N−ベンジルアミノ基、N,N−ジベンジルアミノ基等のモノ又はジアラルキルアミノ基が挙げられる。
【0046】
アシル基で置換されたアミノ基の具体例としては、ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ペンタノイルアミノ基、ヘキサノイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等が挙げられる。
【0047】
アルコキシカルボニル基で置換されたアミノ基の具体例としては、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、n−プロポキシカルボニルアミノ基、n−ブトキシカルボニルアミノ基、tert−ブトキシカルボニルアミノ基、ペンチルオキシカルボニルアミノ基、ヘキシルオキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。
【0048】
アリールオキシカルボニル基で置換されたアミノ基の具体例としては、フェノキシカルボニルアミノ基、ナフチルオキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。
アラルキルオキシカルボニル基で置換されたアミノ基の具体例としては、ベンジルオキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。
【0049】
ハロゲン化アルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基の水素原子が後述するハロゲン原子で置換された基が挙げられ、例えばフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基等が挙げられる。
【0050】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0051】
式(I)中のPolymerは高分子主鎖を示す。高分子主鎖は、リンカーLと結合することができるものであれば、いかなるモノマーから形成された高分子主鎖でも良い。
【0052】
具体的な高分子主鎖としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル、アルキド樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセンやポリビニレン等及びこれらの共重合体等の高分子化合物に由来するものが挙げられる。
【0053】
好ましい高分子化合物としては、少なくとも1種 、好ましくは2種以上のビニル系モノマーを主たる原料モノマーとする重合反応によって得られる架橋性高分子が好ましく、スチレン系モノマーから形成される架橋性高分子が好ましい。
スチレン系モノマーとしては、芳香族ビニルモノマー、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、1,1−ジフェニルエチレン、p−(N,N−ジエチルアミノエチル)スチレン、p−(N,N−ジエチルアミノメチル)スチレン、ビニルピリジン、ビニルナフタレンなどが挙げられる。
【0054】
また、スチレン系モノマーと共重合可能なビニルモノマーを併用しても良い。このようなビニルモノマーの例としては、アクリル酸エステルやメタクリル酸エステル、アクリロニトリル、マレイン酸エステル、酢酸ビニル及びオレフィンなどが挙げられる。また、架橋構造を形成させる目的で、2官能型のモノマーを併用することも可能である。その例としては、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0055】
一般式(1)で表される高分子化合物の自然数nは、Polymerとして示している高分子主鎖におけるモノマーの反復単位として表される自然数に対して小さい自然数を示す。少なくとも1種のモノマー中にリンカーLと結合することができるモノマーを含む高分子によって形成されることによって生じる自然数を示す。
【0056】
一般式(1)で表される高分子化合物は、上述の高分子主鎖及びリンカー部位を有するポリマー(例えばクロロメチル基を有するスチレンとジビニルベンゼンとの共重合体)とイミダゾールとを、塩基存在下で適当な溶媒を用い、50〜100℃程度の反応温度で反応させることにより得ることができる。
【0057】
塩基としては、無機塩基及び有機塩基等が挙げられる。好ましい無機塩基としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩、水素化ナトリウム等の金属水素化物が挙げられる。好ましい有機塩基としては、リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウム−tert−ブトキシド及びカリウム−tert−ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム及びプロピオン酸ナトリウム等のアルカリ金属カルボン酸塩、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、ピペリジン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、トリ−n−ブチルアミン及びN−メチルモルホリン等のアミン等が挙げられる。
【0058】
溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ウンデカン、シクロヘキサン及びデカリン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン、メシチレン、p−シメン及びジイソプロピルベンゼン等の芳香族炭化水素、クロロベンゼン及びo−ジクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、エチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン及び1,4−ジオキサン等のエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン、N,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミド等のアミド、アセトニトリル、マロノニトリル及びベンゾニトリル等のニトリル、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド等が挙げられる。これらの溶媒は、夫々単独で用いても二種以上適宜組み合わせて用いてもよい。より好ましい溶媒の具体例としては、デカン、ドデカン、ウンデカン及びデカリン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン、メシチレン、p−シメン及びジイソプロピルベンゼン等の芳香族炭化水素、エチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン及び1,4−ジオキサン等のエーテル、N,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミド等のアミド、ベンゾニトリル等のニトリル、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド等が挙げられる。より好ましい溶媒としては、テトラヒドロフラン及び1,4−ジオキサン等のエーテルが挙げられる。さらに好ましい溶媒としては、テトラヒドロフランが挙げられる。
溶媒の使用量は反応が十分に進行できる量であれば特に制限はないが、上述の高分子主鎖及びリンカー部位を有するポリマー(例えばクロロメチル基を有するスチレンとジビニルベンゼンとの共重合体)とイミダゾールに対して通常1〜500倍容量、好ましくは2〜200倍容量、より好ましくは2〜100倍容量の範囲から適宜選択される。
【0059】
本発明の亜鉛又はコバルト担持高分子の合成法としては、一般式(II)
MX
2・xH
2O (II)
(一般式(II)中、Xは、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜5のアルカノイルオキシ基、ハロゲン原子、及びトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を示す。xは整数を表す。Mは亜鉛又はコバルト原子を表す。)
で表される亜鉛又はコバルト化合物を、一般式(I)
【0061】
(式(I)中、Polymerは高分子主鎖を表し、Lはリンカー部位を表す。nは自然数を表す。)
で示される高分子化合物と反応させることで金属担持高分子を合成する方法が挙げられる。
【0062】
一般式(II)において、Xで表されるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。また、Xで表されるハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜5のアルカノイルオキシ基としては、例えば、トリクロロアセトキシ基、トリブロモアセトキシ基、トリフルオロアセトキシ基、ペンタフルオルプロパノイルオキシ基、ヘプタフルオロブチリルオキシ基、ヘプタフルオロイソプロパノイルオキシ基等のパーフルオロアルカノイルオキシ基が挙げられる。この中でも好ましい基としては、トリフルオロアセトキシ基が挙げられる。亜鉛及びコバルト化合物は、水和物でも無水和物でも良い。即ち、一般式(II)のxが0では、無水物であり、xが1以上の整数を示す場合は、亜鉛及びコバルト化合物が水和物であることを示す。一般式(II)における亜鉛及びコバルト化合物においては安定な結晶の水和物が異なることから、xは1から10を示すことが多い。
【0063】
また、本発明の亜鉛担持高分子の合成法としては、下記一般式(III)
Zn
4O(OCOR)
6(RCOOH)
n (III)
(一般式(III)中、Rはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基を表し、nは0〜1を表す。)
で表される亜鉛四核クラスターを、一般式(I)で示される高分子と反応させることで亜鉛担持高分子を合成する方法が挙げられる。
【0064】
式(III)中におけるRで表されるハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、トリクロロメチル基、トリブロモメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオルエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基等のパーフルオロアルキル基が挙げられる。この中でも好ましい基としては、トリフルオロメチル基が挙げられる。
【0065】
本発明の金属担持高分子製造に用いられる溶媒としては、本発明の金属担持高分子形成に影響しない溶媒であれば、いずれも使用可能である。また、原料として用いる金属無機塩もしくは亜鉛カルボキシレート化合物が溶解できる溶媒が好ましい。例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどを使用することが出来る。好ましくは、トルエン、キシレン、THFなどの溶媒が挙げられるが、THFがより好ましい。
【0066】
反応温度は、金属無機塩又は金属カルボキシレートが溶解できる温度以上であることが好ましく、30℃から250℃、より好ましくは30℃から150℃である。
【0067】
反応時間は、特に限定されないが、通常約1〜45時間、好ましくは約2〜24時間程度で行うことができる。
【0068】
多くの場合、反応中に得られた金属担持高分子は、溶媒に不溶であり、沈殿することから反応終了後は、ろ過等で得ることができる。
【0069】
上記条件で得られた本発明の金属担持高分子は空気中で安定であるが、不活性ガス存在下で取り扱うことが好ましい。不活性ガスとしては、好ましくは窒素又はアルゴン等が挙げられる。
【0070】
本発明の金属担持高分子を触媒として使用する場合、適当な溶媒(例えば、THF)の存在下に上記のように予め調製した金属担持高分子を触媒として反応系に添加しても良く、また反応系に原料である一般式(II)で示される亜鉛及びコバルト化合物、又は一般式(III)で表される亜鉛四核クラスターと、一般式(I)で表される高分子化合物を添加すること(in situ法)で反応を行っても良い。この場合、反応中または反応後に本発明の金属担持高分子が形成されている。
【0071】
本発明の金属担持高分子を触媒として使用する場合、含窒素芳香族化合物を触媒量添加しても良い。含窒素芳香族化合物添加により、活性が高まり、反応時間及び転化率の向上が見られる。添加しても良い含窒素化合物は、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、キノリン、N‐メチルイミダゾール(NMI)などが挙げられる。好ましくは、DMAP、NMIであり、さらに好ましくは、NMIが挙げられる。
【0072】
本発明の金属担持高分子を触媒として用いることにより、求核性官能基であるアミノ基とアルコール性水酸基とが同時に反応系に存在している場合においても、アルコール性水酸基の選択的アシル化反応又はカーボネート化反応が可能である。
【0073】
アミノ基のような求核性官能基とアルコール性水酸基とが反応系に同時に存在している場合とは、当該アミノ基とアルコール性水酸基を同一分子内に有する化合物であってもよく、また異なる化合物であってもよい。アミノ基とアルコール性水酸基と同一分子内に有する化合物としては、アミノアルコールが挙げられる。また、アミノ基を有する化合物とアルコール性水酸基を有する化合物が異なる場合としては、アミンとアルコールが同時に反応系に存在している場合が挙げられる。
【0074】
アミノ基としては、第一級アミノ基又は第二級アミノ基であり、また、アルコール性水酸基としては、第一級水酸基、第二級水酸基、第三級水酸基のいずれであってもよい。アミノアルコールとしては、アミノ基と、アルコール性水酸基を有する化合物であれば特に制限は無く、例えば鎖状、分岐状、環状又は縮合環状の、脂肪族又は芳香族の、アミノアルコールなどが挙げられる。
通常、アシル化反応は、ピリジンやトリエチルアミンなどの塩基存在下、塩化アシルや酸無水物を作用させることで行われるが、本発明の金属担持高分子を触媒として用いることにより、中性条件下でカルボン酸エステルとアルコール性水酸基を有する化合物とのエステル交換反応によるアシル化反応が可能である。
【0075】
本発明の金属担持高分子を触媒として用いることにより、炭酸エステルとアルコール性水酸基を有する化合物とのエステル交換反応によるカーボネート化反応が可能である。カーボネート化反応に用いる炭酸エステルとしては、炭酸(H
2CO
3) の2つの水素原子のうち、1つ又は2つの水素原子をアルキル基またはアリール基で置換した化合物の総称であるが、取り扱いの点から2つの水素原子が置換されたジアルキルカーボネート又はジアリールカーボネートが好ましい。具体例としては、ジメチルカーボネート、ジエチルメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、メチルフェニルカーボネート、エチルフェニルカーボネート、ジフェニルカーボネートが用いられる。この中でも、炭酸ジメチルが好ましい。
【0076】
アルコール性水酸基を有する化合物としては、直鎖または環状の脂肪族炭化水素の一価、二価又は多価水酸基を有する化合物が挙げられる。また、二価以上の水酸基を有する化合物として、例えばジオール化合物と炭酸エステルとを本触媒を用いて反応させることで環状カーボネート化合物を得ることができる。
アルコール性水酸基を有する化合物は、不飽和結合を有してもよく、置換基を有してもよい。置換基を有する場合、この置換基は、反応を阻害しないものであれば特に限定されず、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族基、水酸基、メルカプト基、アミノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ホルミル基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、水素原子等を示すことができ、これらの置換基上に別種の置換基を有していてもよい。
具体的には、次のような化合物が例示される。ベンジルアルコール、1−ナフチルメタノール、2−ナフチルメタノール、1−(1−ナフチル)エタン−1−オール、1−(1−ナフチル)プロパン−1−オール、1−(1−ナフチル)ブタン−1−オール、9−フルオレニルメタノール、テトラリン−1−オール、2−ピリジンメタノール、3−ピリジンメタノールなどの水酸基と結合するα 位炭素に芳香族置換基を有するアルコール。プロペン−3−オール、1−ブテン−3−オール、シクロヘキセン−3−オールなどのオレフィン系アルコール。D−グルカール、D−ガラクタール、L−ランナールなどの分子内に不飽和結合を有する糖類。3−ヒドロキ−4−アンドロステン−11,17−ジオン、4−アンドロステン−3,17−ジオール、5−エストレン−3,17−ジオールなどの分子内に不飽和結合と水酸基を有するステロイド。
【0077】
上記アシル化反応又はカーボネート化反応は、通常、溶媒中で行われ、使用される溶媒としては特に限定されないが、例えば、トルエン、キシレン又は塩化ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;ヘキサン、ヘプタン又はオクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン又は1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒;ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)又はN−メチルピロリドン(NMP)等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド(DMSO)等が挙げられる。
【0078】
本発明の金属担持高分子を触媒として用いることにより、エステル基を有する化合物の脱アシル化反応が可能である。本反応に用いるエステル基を有する化合物とは、脂肪族カルボン酸エステル又は芳香族カルボン酸エステルを含むカルボン酸エステル等が挙げられる。該エステルはモノカルボン酸由来でもポリカルボン酸由来のエステルでも良い。
【0079】
本反応に用いるエステル基を有する化合物としては、下記のカルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、ヘキシルエステル、オクチルエステル等のアルキルエステル;フェニルエステル、ビフェニルエステル、ナフチルエステル等のアリールエステル;ベンジルエステル、1−フェネチルエステル等のアラルキルエステル等が挙げられる。好ましくは、下記のカルボン酸のメチルエステルが挙げられる。
脂肪族カルボン酸としては、炭素数2〜30のモノ−又はポリカルボン酸が挙げられ、具体的には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、シュウ酸、プロパンジカルボン酸、ブタンジカルボン酸、ヘキサンジカルボン酸、セバシン酸、アクリル酸等が挙げられる。
【0080】
また、これら脂肪族カルボン酸は、前記したようなアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、シリルオキシ基、水酸基等で置換されていてもよい。
【0081】
芳香族カルボン酸としては、安息香酸、ナフタレンカルボン酸、ピリジンカルボン酸、キノリンカルボン酸、フランカルボン酸、チオフェンカルボン酸等が挙げられる。
また、これら芳香族カルボン酸は前記したようなアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、水酸基等で置換されていてもよい。本反応は溶媒中で通常行われ、溶媒としてはアルコール、即ちメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、3-ブタノールが挙げられる。また、驚くことに本発明の触媒を用いた場合、水を用いることでも脱アシル化が可能である。また、上記アルコールも含めた有機溶媒と水の混合溶媒においても反応が行うことが可能である。
【0082】
本発明の各反応における金属担持高分子の触媒としての使用量は、特に限定されないが、通常、各反応の原料1モルに対して、亜鉛又はコバルト原子が0.001〜0.9モル、より好ましくは0.001〜0.3モル、さらに好ましくは0.001〜0.1モルの割合である。
本発明の金属担持高分子を触媒として用いた種々の反応は、大気下、空気中又は窒素ガス若しくはアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で行うことができる。
本発明の金属担持高分子を触媒として用いた種々の反応時間は、特に限定されないが、通常約1〜45時間、好ましくは約6〜18時間程度で行うことができる。反応温度は、特に限定されないが、室温〜約180℃、好ましくは50〜150℃、より好ましくは80〜150℃程度で行われる。これらの条件は使用される原料等の種類及び量により適宜変更される。
【0083】
本発明の金属担持高分子は、高分子に亜鉛又はコバルトが担持された不均一触媒であることから、各反応終了、ろ過によって簡単に回収することができる。回収した金属担持高分子は、反応前と同じ構造を有し、触媒活性の低下がなく再利用を繰り返して行うことが可能である。
【0084】
回収・再利用の手段として、濾過のほかに、低沸点の基質及び目的物の場合には、反応終了後に反応液を直接濃縮することもできる。すなわち、反応溶媒及び反応原料又は反応物を減圧又は不活性な大気圧中において留去することで触媒(金属担持高分子)を容易に回収し再利用することができる。
【0085】
このように、本発明の金属担持高分子は、既報の触媒のように反応進行とともに分解して失活してしまうようなことはなく、きわめて安定であり、さらに高い活性を示す。また、反応によって金属担持高分子から金属が流出すること(リーチング)が少ないことが特徴であり、回収・再利用も容易な新規な金属担持高分子である。また、従来の亜鉛触媒よりも水分の影響を受けることが少ない。
【実施例】
【0086】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、分析機器は以下の通りである。また、全ての実施例の操作は、窒素雰囲気下で行なった。
・熱分析:EXSTAR 6000 TG/DTA 6200 (SII)、測定範囲:30〜600℃、加熱速度:6℃/min、測定量:約5mg、サンプルパン:アルミニウム、雰囲気:窒素(10mL/min)又は真空中(2Torr)
・金属含量は滴定法によって求めた(「キレート滴定」上野景平著(南江堂出版))。
・クロロメチルポリスチレン樹脂1%DVB(ジビニルベンゼン)架橋樹脂(Merrifield Resin cross-linked with 1% DVB (200-400mesh))(以下、CH2−Polymerと略す)
・トリフルオロ酢酸亜鉛水和物(Alfa Aesar社製、亜鉛含量21.24%(亜鉛滴定測定))(以下、Zn(OAc
F)
2と略す)
・核磁気共鳴スペクトル(NMR);Bruker Advanced III
・高分解能質量分析装(HRMS);ACQITY UPLC−LCT−Premier/XE, Bruker MicroTOF II
【0087】
(参考例1)イミダゾリル基を有する高分子(以下、im−CH2−Polymer)の合成
イミダゾリル基を有する高分子の合成に関しては、Journal of Molecular Catalysis A: Chemical, 2012, 353-354, 178-184を参照した。
【0088】
Ar雰囲気下、1,2−ジメトキシエタン溶媒においてイミダゾール3等量、水素化ナトリウム3.0等量、CH2−Polymerを混合して、攪拌子を入れずに3日間60℃で加熱した。反応後、余剰の水素化ナトリウムを氷浴中において水と反応させた後、反応液を吸引濾過した。濾物を水、ジエチルエーテル、ジクロロメタンで洗浄し、余剰のイミダゾール、金属イオン等を除去した後に真空乾燥を行い、目的のim−CH2−Polymerを得た。このものの元素分析を行い、N値からイミダゾール含有量の算出を行った(1回目合成:1.85mmol/g,2回目合成:1.99mmol/g)。この結果より原料の樹脂に含まれる反応点である塩素原子(2.4mmol/g)に対して90%ほどがイミダゾリル基に置換したことが確認できた。
【0089】
(参考例2)im−CH2−Polymerの合成
イミダゾール5.3g(78mmol)とヨウ化カリウム78mg(0.47mmol)を10mLトルエンに溶解して、窒素下40℃で加熱攪拌した。反応溶液にナトリウムメトキシドメタノール溶液(MeONa 4.2g(78mmol,1当量)、メタノール15mL)を滴下した。その後、CH2−Polymerとアセトニトリル30mLを加えた。65℃で12時間加熱攪拌を行った後、冷却濾過した。濾物をメタノールで洗浄後、真空下、60℃で乾燥を行なった。
得られた高分子は、窒素ガス10mL/min中において示差熱重量同時測定(TG/DTA)を行なった。イミダゾリル基を有する高分子im−CH2−Polymerは、約3wt%の溶媒等を含んでいたが、340℃付近まで重量減少が観測されなかった340℃付近でポリマーの分解が起きることが確認できた。
【0090】
(実施例1)トリフルオロ酢酸亜鉛担持高分子合成
参考例1で合成したim−CH2−Polymer1.00gにZn(OAc
F)
20.30g(亜鉛原子63.3mg)を加えた。テトラヒドロフラン10mL中で、窒素下、5時間還流した後に室温まで冷却、濾過し、濾物をテトラヒドロフラン10mLで3回、さらにヘプタン30mLで洗浄を行い、得られた固体物をシュレンク管に入れ、65℃、真空中で加熱乾燥を行い、目的の高分子1.16gが得られた。
上記で濾過した反応溶液及び洗浄液を減圧留去した後に溶液中に含まれる亜鉛含量を上記滴定法によって求めたところ、1.4mgの亜鉛原子が含まれることが分かった。上記結果より、ポリマーに吸着された亜鉛原子は61.9mgであり、高分子中に亜鉛原子を53.4mg/g(0.83mmol/g)含有されていた。
この亜鉛担持高分子を窒素ガス10mL/min中において示差熱重量同時測定(TG/DTA)を行ったところ(
図1)、340℃付近でポリマー分解が起きる前に210℃付近で重量減少が観測された(Δ7.2%)。
原料であるトリフルオロ酢酸亜鉛水和物のTG/DTA測定を行ったところ、同温度でトリフルオロ酢酸基に相当する重量比が減少した。210℃付近の重量減少はトリフルオロ酢酸基の脱離現象であることが分かった。
【0091】
(実施例2-6)
実施例1と同様にトリフルオロ酢酸亜鉛担持高分子を種々の条件で合成した。以下の表1に実施例1〜6の結果を示す。
【0092】
【表1】
【0093】
(実施例7〜12)他の金属無機塩担持高分子合成
他の金属無機塩担持高分子合成を行った。参考例1で合成したim−CH2−Polymerにそれぞれの金属無機塩を加え、反応溶媒中で窒素下5時間還流した後に室温まで冷却、濾過し、濾物をテトラヒドロフランで3回、ヘプタンでさらに1回洗浄を行った。得られた固体物をシュレンク管に入れ、65℃、真空中で加熱乾燥を行い、金属無機塩担持高分子が得られた。以下の表2に実施例7〜12の合成結果を示す。
【0094】
【表2】
【0095】
得られた金属担持高分子は、窒素ガス10mL/min中において示差熱重量同時測定(TG/DTA)を行なった(
図2)。トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛担持高分子(実施例10)及びヨウ化亜鉛担持高分子(実施例8)では、ポリマー分解前に重量変化が観測されなかった。一方、塩化コバルト及び酢酸コバルト担持高分子(実施例11)並びに塩化コバルト担持高分子(実施例12)では、トリフルオロメタンスルホン酸又はヨウ素イオンよりもアニオンの分子量が小さいことからポリマー分解前にそれぞれのアニオンの脱離に伴う重量減少が観測された。
【0096】
(実施例13)エステル交換反応
安息香酸メチル1等量とベンジルアルコール1.2等量にトリフルオロ酢酸亜鉛5mol%(亜鉛原子換算)と参考例1で合成したim−CH2−Polymerを亜鉛原子に対して種々の割合で加え、トルエン溶媒中で、6時間還流し、エステル交換反応を行った。その際の安息香酸メチルの転化率はガスクロマトグラフィー(GC)により測定した結果を以下の表3に示す。亜鉛原子に対してイミダゾリル担持樹脂中のイミダゾリル基の割合(im/Zn)が、4以上において転化率が高いことが分かった。
【0097】
【表3】
【0098】
(実施例14)イミダゾリル基含有量による触媒活性比較
イミダゾール担持量の異なる3種類のim−CH2−Polymerを用いトリフルオロ酢酸亜鉛添加効果を比較した結果を表4に示す。安息香酸メチル1等量とベンジルアルコール1.2等量にトリフルオロ酢酸亜鉛5mol%(亜鉛原子換算)と参考例1で合成したim−CH2−Polymerを亜鉛原子に対して種々の割合で加え、トルエン溶媒中(0.5M)で、2時間還流し、エステル交換反応を行った。その際の安息香酸メチルの収率はガスクロマトグラフィー(GC)により測定した結果を以下の表4に示す。亜鉛原子に対してイミダゾリル担持樹脂中のイミダゾリル基の割合(im/Zn)が、4以上において転化率が高いことが分かった。1.25mmol/gと1.85mmol/gのイミダゾリル基含有量であるim−CH2−Polymerに対して、4.98mmol/gとイミダゾリル基を多く含有しているものでは活性が低くなることが分かった。
【0099】
【表4】
【0100】
(実施例15)酢酸エチルによるアセチル化
ベンジルアルコール0.50mmol及び実施例1で合成した亜鉛担持高分子(亜鉛原子換算5mol%)を酢酸エチル(0.50M)中で1時間還流を行い、反応液を濾過して濾液を分析したところ、99%以上の転化率でベンジルアルコールの酢酸ベンジル化が進行した。触媒の亜鉛担持高分子は濾物として回収した。
【0101】
(実施例16)炭酸ジメチルによるメトキシカルボニル化
ベンジルアルコール0.50mmol及び実施例1で合成した亜鉛担持高分子(亜鉛原子換算5mol%)を炭酸ジメチル(0.50M)中で30分間還流を行ったところ、99%以上の転化率でベンジルアルコールのメトキシカルボニル化が進行した。
1H NMR (500MHz、CDCl3、27℃): δ 7.40-7.33(m、5H、Ph),5.17(s、2H,CH2)、3.80(s、3H,CH3);13C NMR(125MHz、CDCl3、27℃): δ 155.7、135.3、128.6、128.5、128.3、69.7,54.9
【0102】
(実施例17)メタノールによる脱アセチル化
酢酸ベンジル0.50mmol及び実施例1で合成した亜鉛担持高分子(亜鉛原子換算5mol%)をメタノール(0.50M)中で2時間還流を行ったところ、78%の転化率で酢酸ベンジルの脱アセチル化が進行した。
【0103】
(実施例18)エステル交換後における亜鉛担持高分子合成
ゲラニオール0.99gに対してZn
4(OCOCF
3)
6O88.0mg(亜鉛含量24wt%(亜鉛滴定測定)、亜鉛原子21.1mg相当、5.03mol%)を加え、酢酸ブチルを溶媒として1時間還流を行った。GC測定によるゲラニオールの転化率は90.2%であった。続いて、参考例1で合成したim−CH2−Polymer204.4mgを加えた後に、さらに1時間 同温度で撹拌した。室温まで冷却した後に濾過を行った。反応物ゲラニルアセテートを含む濾液中に3.2mgの亜鉛原子が亜鉛滴定測定法により検出された。上記反応条件において使用した亜鉛原子量は21.0mgであることから、17.9mg亜鉛原子が高分子に吸着したことが確認できた。即ち、1gのim−CH2−Polymerに対して87.6mgの亜鉛が吸着された。
【0104】
(実施例19)リサイクル実験
実施例15で濾過して回収した亜鉛担持高分子を用いてエステル交換反応を行った。ゲラニオール1.00g(6.48mmol)、実施例15で濾過して得られた亜鉛担持高分子204.0mgに1−ブタノール5mLを加えて、還流温度で撹拌した。GC分析により、反応時間8時間でゲラニオールの転化率が87.6%であった。冷却後に反応溶液を濾過して、反応物ゲラニルアセテートを得た。この濾液中に含まれる亜鉛含量を滴定法によって求めた。0.196mgの亜鉛が検出された。触媒は濾過により回収した。上記で濾過して得られた亜鉛担持高分子を用いて同様に、ゲラニオール0.99g(6.41mmol)、亜鉛担持高分子196.29mgに1−ブタノール5mLを加えて、還流温度で撹拌した。GC分析により、反応時間8時間でゲラニオールの転化率が79.8%であった。冷却後に反応溶液を濾過して、反応物ゲラニルアセテートを得た。この濾液中に含まれる亜鉛含量を滴定法によって求めた。0.16mgの亜鉛が検出された。このように本発明の亜鉛担持高分子は、エステル交換の触媒能を有しており、さらに2回、3回とリサイクル使用を行っても、反応活性を有しており、かつ亜鉛の流出(リーチング)が少ない事がわかった。
【0105】
(実施例20)エステル交換時における亜鉛担持高分子合成
ゲラニオール1.0gに対してZn(OAc
F)
2108.6mg(0.353mmol)、さらに参考例1で合成したim−CH2−Polymer204mgを添加して、酢酸ブチル5mL中で5時間、還流温度にて反応を行った。GC測定によりゲラニオールの転化率は78.3%であった。室温まで冷却した後に濾過を行った。濾物として触媒を回収した。
濾液中には4.53mgの亜鉛原子が亜鉛滴定測定法により検出された。上記反応において使用した触媒の亜鉛原子量は23.1mgであることから、18.5mg亜鉛原子が高分子に吸着したことが確認できた。即ち、1gのim−CH2−Polymerに対して87.6mgの亜鉛が吸着された。吸着後の高分子を減圧乾燥後にTGA熱分析測定を行ったところ、実施例1のポリマー担持亜鉛錯体合成時の触媒と同様な分析結果を得た。
【0106】
(比較例1)
ゲラニオール1.0gに対して参考例1で合成したim−Ch2−Polymer214.8mgを添加して、酢酸ブチル5mL中で8時間、還流温度にて反応を行った。しかし、エステル交換反応はほとんど生じなかった。これより参考例2で合成したim−CH2−Polymerには、エステル交換活性が無いことを確認した。
【0107】
(実施例21)エステル交換反応
安息香酸メチル0.2gとシクロヘキシルメタノール0.202g(1.2当量)及びクロロベンゼン4mLに、触媒として実施例1で合成した亜鉛担持高分子(4mol%)を添加した。空気中、5時間還流後、GCで転化率(Conv.)を測定したところ、安息香酸メチルの転化率が99.8%以上であった。反応後、冷却した反応溶液を濾過、濾物である触媒をヘプタン洗浄し、室温、真空中で乾燥した。回収した亜鉛触媒を用いてリサイクル実験を上記反応条件と同様に行い、GCで反応の転化率を測定した(
図3)。
図3のように9回リサイクル反応を行っても80%以上の転化率を示した。このことより坦持した亜鉛は反応によってほとんど流出することなく、反応活性を保持することが確認できた。本触媒はフロー反応などにも有用と考える。
【0108】
(実施例22)エステル交換反応
安息香酸メチル0.2g、シクロヘキシルメタノール0.202g(1.2当量)及びクロロベンゼン4mLに、触媒として種々の亜鉛担持高分子を添加して比較を行った。空気中、5時間還流後、GCで転化率変化を求めた結果、トリフルオロ酢酸基を有する触媒が最も高い活性を示した。ハロゲン原子又はトリフラート基を有する触媒は、トリフルオロ酢酸を有する触媒よりも活性が低かった。
また、一番触媒活性の高かったトリフルオロ酢酸コバルト担持高分子を用いて、上記エステル交換反応のリサイクル実験を行った。3回反応に使用しても転化率が90%以上を示した。金属滴定測定により反応液中のコバルト流出(リーチング)は少ないことも確認した。
【0109】
(実施例23)In−situ法によるエステル交換
参考例2で合成したim−CH2−Polymer410mg、Zn
4(OCOCF
3)
6O19.4mg(1.0mol%)、N−メチルイミダゾール20.1mg(3.4mmol)及びL−メントール0.2gを酢酸ブチル中で、窒素下、23時間還流しエステル交換反応を行った。GCでL−メントールの転化率を測定したところ98.4%であった。反応後、ヘプタン投入、濾過、溶媒留去のみで得られたエステル化合物が回収できた(GC純度 96.0%、4%は原料のl−メントールであった)。N−メチルイミダゾールを添加することで触媒活性が高まることを確認できた。
反応中に亜鉛担持高分子触媒から反応液中に流出した亜鉛含量を、濾液の滴定測定によって分析したところ、亜鉛含量が分析限界以下(1ppm以下)であった。亜鉛担持高分子は、反応中に亜鉛原子が留出することがほとんどないことが確かめられた。
【0110】
(実施例24)in−situ法によるエステル交換
参考例2で合成したim−CH2−Polymer210mgとZn
4(OCOCF
3)
6O6.7mg(0.34mol%)及びN−メチルイミダゾール3.1mg(0.52mmol)及びL−メントール0.2gを酢酸ブチル中で窒素下、34時間還流を行った。GCでL−メントールの転化率を測定したところ93.8%であった。
反応後にヘプタンを加えずに反応液を濾過して、亜鉛担持高分子触媒を除去した。貧溶媒であるヘプタンを加えずに濾過した場合における反応物中の亜鉛含量を亜鉛滴定測定で分析した。亜鉛含量は30ppmであり、この結果からも亜鉛金属の反応による留出が少ない事が明らかとなった。
【0111】
(実施例25)繰返し反応
上記実施例24で反応を行った後に濾過することで回収した亜鉛担持高分子触媒を用いて、実施例24と同じ基質を用い、再度アセチル化反応を行った(反応時間19時間)。GCでL−メントールの転化率を測定したところ75.7%であった。
【0112】
(実施例26)in situ法によるエステル交換
参考例2で合成したim−CH2−Polymer77.1mgとZn
4(OCOCF
3)
6O49.0mg及びN−メチルイミダゾール24.7mgを加えてエステル交換反応を行った。反応時間9時間で転化率99.8%を示した。
【0113】
(実施例27)in situ法によるエステル交換
参考例2で合成したim−CH2−Polymer210mgとZn
4(OCOCF
3)
6O19.4mg(1mol%)、N−メチルイミダゾール20.1mg(3.4mmol%)及びL−メントール0.2gを酢酸ブチル中で窒素下、23時間還流を行った。GCでL−メントールの転化率を測定したところ98.4%であった。反応後、ヘプタン5mL添加後、濾過、溶媒留去を行い、生成物を得た。
1H−NMR測定結果から純度96.0%であった。濾液である反応液には亜鉛は含まれていなかった。このことから高い転化率ながら亜鉛原子は流出していないことを確認した。
上記の結果より、im−CH2−Polymerを用いて系中で錯体合成を行う(in situ法)場合、亜鉛原子を完全に担持させるには、im−CH2−Polymerを多めに添加することが必要であることが分かった。適切な比率で反応を行うことで、高い転化率で、かつ、亜鉛流出が無く反応を完結することが確認できた。
【0114】
(実施例28)メタノールによる脱アセチル化
酢酸シンナミル及び酢酸ゲラニル各0.2gを用い、メタノール溶媒中(0.50M)に実施例1で合成したトリフルオロ酢酸亜鉛担持高分子(触媒比5mol%亜鉛換算)を加え、還流温度、反応時間6時間で脱アセチル化反応を行った。両化合物とも濾過と溶媒留去のみで目的物を得た(両化合物とも収率99%以上)。
【0115】
(比較例2)メタノールによる脱アセチル化
酢酸シンナミル0.50mmolに対して、参考例2で合成したim−CH2−Polymer1mol%を加えて、メタノール溶媒中(0.50M)で還流温度、反応時間6時間で反応を行ったが、反応は進行しなかった。このことから、参考例2で合成したim−CH2−Polymerには、エステル交換活性が無いことを確認した。
【0116】
(実施例29)4−アセトキシスチレンを用いたメタノールによる脱アセチル化
4−アセトキシスチレンに対して、実施例1で合成したトリフルオロ酢酸担持高分子1.0mol%を用いて反応を行ったところ、反応時間6時間で4−ビニルフェノールが得られた(転化率95.3%)。また、上記反応条件にN−メチルイミダゾール(NMI)4.0mol%を添加することで反応が加速した(転化率97.8%、反応時間5時間)。
【0117】
(実施例30)4−アセトキシスチレンを用いた水における脱アセチル化
4−アセトキシスチレン0.20g(1.04mmol)と実施例1で合成したトリフルオロ酢酸亜鉛担持高分子52.7mgに溶媒として水4mLを用いて加水分解を行なった(反応時間9時間、転化率43.7%)。反応時間に対して転化率は、比例関係を示すことからも亜鉛触媒は活性が消失することなく、反応が進行することが分かった。従来の亜鉛触媒は、水中で分解することで活性を失うが、本発明の触媒は活性が消失することなく反応が進行することが確認できた。
【0118】
(実施例31)メタノール溶媒における脱アセチル化
酢酸ラウリル0.2g(0.88mmol)に参考例2で合成したim−CH2−Polymerにトリフルオロ酢酸亜鉛を担持した触媒(実施例1で合成した亜鉛担持高分子)1mol%及びメタノール4mL及びメタノール4mLを用いてメタノリシス反応の検討を行った(反応時間15時間、68.7%転化率)。同様にNMI添加(4mol%)効果により転化率向上が見られた(反応時間7時間、転化率91.4%)。
【0119】
(実施例32)炭酸ジメチル溶媒におけるメトキシカルボニル化
シンナミルアルコール及びゲラニオール各0.2gを基質として、実施例1で合成した亜鉛担持高分子にトリフルオロ酢酸亜鉛を担持した触媒5mol%を用いて、炭酸ジメチル(0.50M)中でメトキシカルボニル化反応の検討を行った。反応時間3時間で、シンナミルメチルカーボネートが収率99%以上、ゲラニルメチルカーボネートが収率97%でそれぞれ得られた。濾過と溶媒留去のみで目的物が得られた。
シンナミルメチルカーボネート;1H NMR (500MHz、CDCl3、27℃): δ 7.40-7.39(m, 2H,Ph)、7.28-7.25(m, 1H,Ph)、6.68(d, 1H,J = 16.0、PhCH)、6.30(dt, 1H,J = 16.0、6.5、PhCHCH)、4.79(m、2H、CH2),3.81(s、3H、CH3);13C NMR(125MHz、CDCl3、27℃): δ 155.7、135.3,128.6、128.5、128.3、69.7、54.9
ゲラニルメチルカーボネート;;1H NMR (500MHz、CDCl3、27℃): δ 5.37(m, 1H,OCH2CH)、5.07(m, 1H,CH3CH)、4.66(d、2H,J = 7.0、OCH2)、3.78(s, 3H,OCH)、;13C NMR(125MHz、CDCl3、27℃): δ 155.9、143.2、131.9、123.7.117.7、64.7、54.6、39.5、26.2、25.7、17.7,16.5
【0120】
(実施例33) 1,2−ジオールの環状カーボネート化、脱カーボネート化
1−フェノキシエタンー1,2−ジオール0.2g及び実施例1で合成したトリフルオロ酢酸担持高分子5mol%を、炭酸ジメチル中(0.5M)、で3時間還流したところ、単離収率95%で4−フェノキシ−1,3−ジオキソラン−2−オンを得た。
1H NMR (500MHz、CDCl3、27℃): δ 7.31 (t, 2H,J = 7.5、Ph)、7.02(t, 1H,J = 7.5、Ph)、6.91(d, 2H,J =8.0、Ph)、5.03(m, 1H,OCH)、4.62((t, 1H,J =8.5、OCH)、4.55(t, 1H,J = 8.5、OCH)、4.24(m, 1H,OCH)、4.17(m, 1H,OCH);13C NMR(125MHz、CDCl3、27℃): δ 157.8、154.7、129.7、122.0、114.6、74.1
また、メタノール溶媒中(0.5M)、4−フェノキシ−1,3−ジオキソラン−2−オン0.2g及び実施例1で合成したトリフルオロ酢酸担持高分子5mol%を加え、6時間還流を行い、単離収率97%で1−フェノキシエタンー1,2−ジオールを得た。両反応において濾過と溶媒留去のみで目的物を得た。
【0121】
(実施例34)炭酸ジメチル溶媒におけるメトキシカルボニル化
プロパルギルアルコール(0.1g、1.78mmol)を炭酸ジメチル溶媒(4mL)中、種々の亜鉛担持高分子5mol%を触媒として加え、空気中、還流を行いメトキシカルボニル化を行った。結果を表5に示す。
【0122】
【表5】
【0123】
反応後、触媒濾過及び溶媒留去してH−NMR測定を行なったが、重合体は観測されなかった。
【0124】
(実施例35)官能基選択的エステル化
実施例1で合成したトリフルオロ酢酸亜鉛担持高分子5mol%を、6−アミノ−1−ヘキサノール0.6mmol及び安息香酸メチル0.7mmolのトルエン溶液0.8mL中に加えて、5時間還流を行なった。反応後、触媒を濾過した後に溶媒を留去し、塩化メチレンを加え、二炭酸ジ−tert−ブチル(0.30mL、1.3mmol)とトリエチルアミン(0.18ml、1.3mmol)を加えた後、中室温で1時間反応させた。反応後、有機層を蒸留水10mlで2回洗浄後、分液し、得られた有機層を濃縮した後にフラッシュカラムクロマトグラフィーを行ったところ、安息香酸6−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)ヘキシル0.46mmolを得た。収率91%。水酸基/アミノ基 選択率=>20/1
1H NMR (500MHz、CDCl3、27℃): δ 8.04(m、2H, Ph),7.55(m、1H、Ph)、7.43(m、2H,Ph),4.50(br、1H,CONH),4.32(t、2H,J=6.5、OCH2),3.12(br、2H,NCH2)、1.78(m、2H,CH2)、1.53−1.37(m、15H,CH2、Boc);13C NMR(125MHz、CDCl3、27℃): δ 166.7、156.0、132.8、130.5、129.5、128.3、79.1、64.9、 40.5、30.0、28.7、28.4、26.5、25.8
【0125】
(実施例36)炭酸ジメチル溶媒における化学選択的メトキシカルボニル化
シクロヘキシルアルコールとシクロヘキシルアミン等量を炭酸ジメチル溶媒4mL中、亜鉛触媒5.5mol%を加え、空気中、5時間還流を行いメトキシカルボニル化反応を行った。ほぼアルコール体のみ反応が起きた(転化率99.9%以上、選択率96%)。
【0126】
(実施例37)酢酸エチル溶媒におけるアセチル化
実施例1で合成したトリフルオロ酢酸担持高分子5mol%を、酢酸エチル(AcOEt)溶媒中(0.5M)、還流温度にて反応を行った。各アルコールから以下のアセチル体が高収率で得られた。
【化5】
酢酸4−ニトロベンジル;1H NMR (500MHz、CDCl3、27℃): δ 8.23(dd、2H,J=7.0、2.0、Ar),7.52(d、2H、J=9.0、Ar),5.20(s、2H,ArCH2),2.15(s、3H,CH3),;13C NMR(125MHz、CDCl3、27℃): δ 170.5、147.7、143.2、128.4、123.8
酢酸4−ブロモベンジル;1H NMR (500MHz、CDCl3、27℃): δ 7.48(d、2H,J=8.5、Ar),7.23(d、2H、J= 8.5、Ar),5.05(s、2H,ArCH2),2.10(s、3H,CH3);13C NMR(125MHz、CDCl3、27℃): δ 170.7,135.0,131.7、129.9、122.3、65.5、20.9
酢酸4−((メトキシメトキシ)メチル)ベンジル;1H NMR (500MHz、CDCl3、27℃): δ 7.35(m、4H,Ar),5.10(s、2H,OCH2),4.70(s、2H,OCH2)、4.59(s、2H,OCH2),3.41(s、3H,CH3)、2.09(s、3H,CH3);13C NMR(125MHz、CDCl3、27℃): δ 170.8,138.0,135.4,128.4、128.0、95.7、68.8、66.0、55.4、21.0;HRMS(EI) m/z cald. for C12H15O4 223.0976 found 223.0985
酢酸4−(((トリエチルシリル)オキシ)メチル)ベンジル;1H NMR (500MHz、CDCl3、27℃): δ 7.32(m、4H,Ar)、5.09(s、2H,OCH2)、4.73(s、2H,OCH2)、2.09(s、3H,CH3)、0.98(t、9H,J=8.0、SiCH2CH3)、0.65(q、6H、J=8.0、SiCH2);13C NMR(125MHz、CDCl3、27℃): δ 170.9、141.6、128.9.126.3、66.2、64.4、21.0、6.8、4.5
ピバル酸4−(アセトキシメチル)ベンジル;1H NMR (500MHz、CDCl3、27℃): δ 7.36−7.26(m、4H、Ar),5.10(s、4H,OCH2)、2.10(s、3H、CH3)、1.23(s、9H、Piv);13C NMR(125MHz、CDCl3、27℃): δ 178.3、170.8、136.6、135.7、128.4、127.9、66.0、65.7.38.8、27.2、21.0
酢酸コレステリル;1H NMR (500MHz、CDCl3、27℃): δ 5.38(d、1H,J=5.0、CCH)、4.61(m、1H、OCH)、2.32(m、2H),2.03−1.95(m、5H)、1.87−1.84(m、3H)、1.60−0.92(m、27H),0.87(m、6H、CH3);13C NMR(125MHz、CDCl3、27℃): δ 170.5、139.7、122.7、74.0、56.7、56.1、50.0、42.3、39.7、39.5、38.1、37.0、36.6、36.2、35.8、31.9、28.2、27.8、24.3、23.8、22.8、22.6、21.4、21.0、19.3、18.7、11.9
酢酸((1S,4R)−4−(2−アミノ−6−(シクロプロピルアミノ)−9H−プリン−9−イル)シクロペンタ−2−エン−1−イル)メチル;1H NMR (500MHz、CDCl3、27℃): δ 7.51(s、1H、CCH)、5.90(m、1H,CCH),5.66(br、1H、ArNH),5.55(m、1H,NCH)、4.79(br、2H,ArNH2)、4.19−4.10(m、2H、cyclopropyl)、0.61(m、2H、cyclopropyl);13C NMR(125MHz、CDCl3、27℃): δ 171.0、160.0、156.3、151.0、136.9、135.3、130.8、115.0、66.5、58.7、44.4、35.2、23.7、20.9,7.4
【0127】
(実施例38)リサイクル実験
実施例1で合成したトリフルオロ酢酸担持高分子5mol%を用い、ベンジルアルコールを酢酸エチル溶媒中(0.5M)で反応させた。反応時間1時間での収率を下表に示す。触媒を濾過して繰返し反応を行っても、触媒活性の低下は見られなかった。
【0128】
【表6】