(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般に、シリンダ内に摺動可能に嵌挿されたピストンが、作動油給排装置から供給される作動油の圧力によって往復運動をする油圧シリンダ装置は、同様の往復運動をする機械式のアクチュエータ、例えばラックピニオン機構やボールねじ機構などに比べて、構造が簡素であり、出力が高く、かつ寿命が長い、などといった長所を有するので、種々の機械装置や土木建設用車両などのアクチュエータとして広く用いられている。
【0003】
ところで、このような作動油給排装置から油圧シリンダに供給される作動油には微細な気泡が混在することがある。そして、気泡を含む作動油が、ピストンより下側の油室(以下「下側油室」という。)に供給された場合、気泡は浮力により下側油室の上端部近傍に滞留する。このように下側油室の上端部近傍に滞留する気泡は、下側油室から作動油が排出されるときに作動油には随伴せず、下側油室の上端部近傍に蓄積される。
【0004】
このように、下側油室の作動油中に気泡が滞留すると、気泡は圧縮性を有するので、ピストンの円滑な動作が妨げられるおそれがある。また、気泡が断熱圧縮により高温となり、その周囲の作動油が過熱状態となって劣化するおそれがある。なお、ピストンより上側の油室(以下「上側油室」という。)の作動油中に混在する気泡は、上側油室から作動油が排出される際に作動油に随伴し、作動油とともにシリンダ外に排出される。
【0005】
そこで、下側油室内の気泡をシリンダ外に排出する気泡排出機構をピストンに付設した油圧シリンダが種々提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。例えば、特許文献1〜4に開示された油圧シリンダでは、下側油室と上側油室とを連通させる連通路をピストンの内部に設ける一方、ピストンがその往復移動行程の最上位置近傍に上昇したときに開弁する制御弁を連通路に設け、ピストンが最上位置近傍に上昇したときに下側油室に滞留している気泡を、連通路を経由して上側油室ひいてはシリンダ外に排出するようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで一方、油圧シリンダ装置においては、シリンダ内周面とピストン外周面の間に、ピストンの円滑な移動を確保するための適度な間隙(以下「シリンダ・ピストン間隙」という。)が存在する。そして、ピストンの往復移動時に、シリンダ・ピストン間隙を通って、下側油室と上側油室との間で作動油が流れるのを防止するため、ピストンの外周部に、シリンダ・ピストン間隙を封止(シール)する環状のピストンパッキンが配設される。このようなピストンパッキンは、通常、合成ゴムや合成樹脂などの弾性体で作成され、ピストンの外周面に形成された環状溝に収容されている。
【0008】
ピストンパッキンを備えた油圧シリンダでは、ピストンパッキン近傍のシリンダ・ピストン間隙あるいは環状溝に気泡が滞留するおそれがあるが、例えば特許文献1〜4に開示された従来の気泡排出機構では、このようにシリンダ・ピストン間隙又は環状溝に滞留している気泡を上側油室ないしはシリンダ外に排出することができない。このため、シリンダ・ピストン間隙又は環状溝に気泡が滞留する場合、ピストンの上昇時に気泡が断熱圧縮により高温となり、その周囲の作動油ないしはピストンパッキンの過熱を生じさせ、ピストンパッキンの熱劣化を生じさせるといった問題がある。なお、このような問題は、作動油以外の作動液を用いる液圧シリンダ装置でも生じうる。
【0009】
本発明は、上記従来の問題を解決するためになされたものであって、ピストンパッキン近傍のシリンダ・ピストン間隙、あるいはピストンパッキンを収容する環状溝に気泡が滞留するのを防止することができ、気泡の断熱圧縮に起因するピストンパッキンの熱劣化を防止することができる液圧シリンダ装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するためになされた本発明に係る液圧シリンダ装置は、(a)円柱形の中空部(以下「シリンダ中空部」という。)を有するシリンダと、(b)シリンダ中空部に嵌挿され、作動液給排装置からシリンダ中空部に供給される作動液(例えば、作動油、作動水)によりシリンダ中心軸が伸びる方向に往復移動するピストンと、(c)ピストンに結合され、シリンダ中空部からシリンダの下側端板を貫通してシリンダ外に伸びるピストンロッドとを備えている。この液圧シリンダ装置では、シリンダ中空部におけるピストンより上側の部分が上側作動液室をなす一方、ピストンより下側の部分が下側作動液室をなす。そして、ピストンの外周部に、ピストン円周方向に伸びる環状溝が形成され、この環状溝に、シリンダ・ピストン間隙(シリンダとピストンの間隙)を封止するピストンパッキンが収容されている。
【0011】
本発明に係る液圧シリンダ装置において、ピストンは、作動液通路と、第1逆止弁と、第2逆止弁と、開弁部材とを有する。ここで、作動液通路は、ピストン内に形成され、環状溝に開口する第1開口部と、ピストンの上端面に開口する第2開口部とを有する。第1逆止弁は、作動液通路に配設され、上側作動液室側から下側作動液室側へ作動液が流れるのを阻止する。第2逆止弁は、第1逆止弁より上側の位置において作動液通路に配設され、下側作動液室側から上側作動液室側へ作動液が流れるのを阻止する。開弁部材は、第2開口部から上側に突出するようにして作動液通路内に配置され、ピストンがその往復移動行程の最上位置近傍に上昇したときに、シリンダの上側端板と当接して下方に変位し、下側作動液室側の作動液圧に抗して第2逆止弁を開弁させる。
【0012】
本発明に係る液圧シリンダ装置においては、作動液通路は、第2開口部から下方に伸びる直線状通路部を有しているのが好ましい。この場合、第2逆止弁は、直線状通路部に配設された弁座と、直線状通路部に配設され弁座を開閉する弁体と、弁体を閉弁方向に付勢する付勢部材とを有しているのが好ましい。また、開弁部材は、下端部が弁体に連結もしくは接合され又は当接し、第2逆止弁の閉弁時には上部が第2開口部から上側作動液室内に突出するように形成された棒状部材であるのが好ましい。
【0013】
本発明に係る液圧シリンダ装置においては、環状溝は、ピストンの下端部近傍に形成されているのが好ましい。そして、ピストンパッキンは、縦断面が略U字状又は略V字状のリップパッキンであって、そのリップ部が下方を向くようにして環状溝に収容されているのが好ましい。この場合、ピストンの上端部近傍においてピストンの外周部に、ピストン円周方向に伸びるもう1つの環状溝が形成され、このもう1つの環状溝に、シリンダ・ピストン間隙を封止するもう1つのピストンパッキンが収容されているのが好ましい。ここで、もう1つのピストンパッキンは、縦断面が略U字状又は略V字状のリップパッキンであって、そのリップ部が上方を向くようにしてもう1つの環状溝に収容されているのが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る液圧シリンダ装置によれば、下側作動液室に加圧された作動液が供給され、ピストンが上昇してその移動行程の最上位置近傍に達したときに、開弁部材によって第2逆止弁が開かれる。その結果、下側作動液室内の加圧状態にある作動液が、ピストンパッキン近傍のシリンダ・ピストン間隙と、環状溝と、作動液通路とを経由して、高速で上側作動液室に流入する。その際、ピストンパッキン近傍のシリンダ・ピストン間隙又は環状溝に気泡が存在していたとしても、この気泡は作動液によって押し流されて上側作動液室に入り、この後作動液とともにシリンダ外に排出される。このため、ピストンパッキン近傍のシリンダ・ピストン間隙又は環状溝に気泡が滞留することはなく、気泡の断熱圧縮に起因する作動液ないしはピストンパッキンの過熱ないしは熱劣化を防止することができる。また、ピストンの下側に気泡が存在していたとしても、この気泡も作動液によって押し流されて上側作動液室に入り、この後作動液とともにシリンダ外に排出される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の実施形態を具体的に説明する。なお、この実施形態では、典型的な液圧シリンダ装置である油圧シリンダ装置について説明を行うが、本発明は油圧シリンダ装置以外の液圧シリンダ装置(例えば、水圧シリンダ装置)にも適用することができるのはもちろんである。
【0017】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る片ロッド形複動式の油圧シリンダ装置1は、略円筒形のシリンダ2と、シリンダ2の円柱形空間部(中空部)に嵌挿された略円柱形のピストン3と、ピストン3の下側に取り付けられた細長い円柱形のピストンロッド4とを備えている。油圧シリンダ装置1は、シリンダ2、ピストン3又はピストンロッド4の中心軸が上下方向(鉛直方向)を向くように配置された縦置き型の油圧シリンダ装置である。そして、ピストンロッド4の下端部は、油圧シリンダ装置1によって、例えば上下方向に移動させられる負荷5(例えば、水門の扉体等)に連結されている。
【0018】
ピストン3は、シリンダ2の円柱形空間部内で上下方向に摺動ないしは滑動することができ、シリンダ2の円柱形空間部は、ピストン3によって上下に仕切られ、ピストン3の上側に上側油室6が形成される一方、ピストン3の下側に下側油室7が形成されている。そして、油圧シリンダ装置1においては、加圧された作動油が上側油室6に供給されたときには、作動油の圧力によってピストン3及びピストンロッド4が下向きに移動させられ、加圧された作動油が下側油室7に供給されたときには、作動油の圧力によってピストン3及びピストンロッド4が上向きに移動させられ、これによって負荷5が下向き又は上向きに移動させられる。なお、ピストン3は、後で詳しく説明するように、シリンダ2内の作動油中の気泡ないしは異物をシリンダ外に排出する気泡排出機構(
図3〜
図5参照)を備えている。
【0019】
油圧シリンダ装置1に対して、加圧された作動油を該油圧シリンダ装置1の任意の一方の油室(すなわち、上側油室6又は下側油室7)に供給するとともに、他方の油室(すなわち、下側油室7又は上側油室6)から作動油を排出するために、作動油給排装置10が設けられている。作動油給排装置10には、4ポート3位置方向制御弁である電磁式の油路切換弁11が設けられている。油路切換弁11の第1ポートP1及び第2ポートP2は、それぞれ、第1油路12及び第2油路13を介して、油圧シリンダ装置1の上側油室6及び下側油室7に接続されている。また、油路切換弁11の第3ポートP3及び第4ポートP4には、それぞれ第3油路14及び第4油路15が接続され、第3油路14及び第4油路15の先端(油路切換弁11に接続されていない方の端部)は、作動油を貯留する作動油タンク16内に導入されている。
【0020】
第3油路14の先端には、該第3油路14に吸入される作動油中の異物を除去するオイルフィルタ17が取り付けられ、このオイルフィルタ17は、常時、作動油タンク16内に貯留された作動油に浸漬されている。さらに、第3油路14には、電動機18(又はガソリンエンジン等の原動機)によって駆動される油圧ポンプ19が介設されている。油圧ポンプ19は、作動油タンク16内の作動油を吸入し、加圧して油路切換弁11の第3ポートP3に供給する。作動油の流れ方向に関して、油圧ポンプ19より下流側(油路切換弁側)の第3油路14と第4油路15とを接続する第1バイパス油路20が設けられている。そして、第1バイパス油路20に、油圧ポンプ19から吐出された作動油の圧力を設定値以下に調整するリリーフ弁21が介設されている。
【0021】
油路切換弁11は、油圧シリンダ装置1への作動油の給排経路を切り換える。詳しくは図示していないが、油路切換弁11は制御装置(図示せず)によって制御されるソレノイド弁であり、油圧ポンプ19によって加圧され第3ポートP3に供給される作動油を、第1油路12を介して上側油室6に供給する第1の状態と、第2油路13を介して下側油室7に供給する第2の状態と、油圧シリンダ装置1には作動油を供給しない第3の状態のいずれかにセットすることができる。
【0022】
第1の状態では、下側油室7内の作動油は、第2油路13と第4油路15とを介して作動油タンク16に還流する。第2の状態では、上側油室6内の作動油は、第1油路12と第4油路15とを介して作動油タンク16に還流する。第3の状態では、第1油路12及び第2油路13の油路切換弁側の端部は閉止される。なお、油路切換弁11を、第3の状態では第3油路14と第4油路15とが連通するように構成してもよい。また、油路切換弁11を、第3の状態では第1油路12及び第2油路13が第4油路15と連通するように構成してもよい。
【0023】
第1油路12には、油路切換弁側から油圧シリンダ装置側に向かって順に、基本的には油圧シリンダ装置側から油路切換弁側への作動油の流れを阻止する第1パイロット操作式逆止弁25と、互いに並列に接続された流量調整弁26aと逆止弁26bとで構成される第1逆止弁付流量調整弁26とが直列に介設されている。第1逆止弁付流量調整弁26は、油路切換弁側から油圧シリンダ装置側への作動油の流れはとくには規制しないが、油圧シリンダ装置側から油路切換弁側への作動油の流量を調整する。なお、第2油路13に設定圧以上の油圧(パイロット圧)がかかっているときには、第1パイロット操作式逆止弁25は、第1油路12における油圧シリンダ装置側から油路切換弁側への作動油の流れを許容する。
【0024】
また、第2油路13には、油路切換弁側から油圧シリンダ装置側に向かって順に、基本的には油圧シリンダ装置側から油路切換弁側への作動油の流れを阻止する第2パイロット操作式逆止弁27と、互いに並列に接続された流量調整弁28aと逆止弁28bとで構成される第2逆止弁付流量調整弁28とが直列に介設されている。第2逆止弁付流量調整弁28は、油路切換弁側から油圧シリンダ装置側への作動油の流れはとくには規制しないが、油圧シリンダ装置側から油路切換弁側への作動油の流量を調整する。なお、第1油路12に設定圧以上の油圧(パイロット圧)がかかっているときには、第2パイロット操作式逆止弁27は、第2油路13における油圧シリンダ装置側から油路切換弁側への作動油の流れを許容する。
【0025】
さらに、第1逆止弁付流量調整弁26より油圧シリンダ装置側において、第1油路12に第1開閉弁30が設けられる一方、第2逆止弁付流量調整弁28より油圧シリンダ装置側において、第2油路13に第2開閉弁31が設けられている。そして、第1、第2開閉弁30、31より油路切換弁側であり、かつ第1、第2逆止弁付流量調整弁26、28より油圧シリンダ装置側の位置において、第1油路12と第2油路13とを接続する第2バイパス油路32が設けられ、この第2バイパス油路32に第3開閉弁33が介設されている。
【0026】
なお、第1逆止弁付流量調整弁26を、第1油路12ではなく、第2油路13に介設してもよい。この場合、第1逆止弁付流量調整弁26は、第2パイロット操作式逆止弁27と第2逆止弁付流量調整弁28の間に介設し、かつ逆止弁26bは、油路切換弁側から油圧シリンダ装置側への作動油の流れを阻止するように配置される。
【0027】
図2に示すように、シリンダ2は、その本体をなす円筒部材40と、円筒部材40の上側(キャップ側)の開口端を閉止する略円柱形の上側端板41と、円筒部材40の下側(ロッド側)の開口端を閉止する略円柱形の下側端板42とを備えている。なお、以下では油圧シリンダ装置1の各構成要素の位置関係を簡明に示すため、上下方向(シリンダ2、ピストン3又はピストンロッド4の中心軸の伸びる方向)と垂直な方向を、適宜「横方向」ということにする。
【0028】
そして、上側端板41の内部に、横方向(上側端板41の径方向)に直線状に伸びる横穴43aと、横穴43aから下向きに伸び上側油室6に開口する複数の縦穴43bとで構成される上側端板内油路43が形成されている。ここで、横穴43aの一方の端部は第1油路12に接続され、他方の端部は閉止されている。なお、下側油室7は、円筒部材40の下端部近傍に形成された孔部45を介して第2油路13に接続されている。
【0029】
ピストン3の下端部よりやや上側(例えば、ピストン3の上下方向の寸法が100mmの場合、5〜30mm上側)においてピストン外周部に、ピストン3の上方への移動時に下側油室7内の油圧により横方向に膨出してシリンダ・ピストン間隙(ピストン3と円筒部材40の間隙)を封止(シール)する第1ピストンパッキン46が装着されている。第1ピストンパッキン46は、可撓性ないしは弾力性を有する材料(例えば、ニトリルゴム、ポリウレタンゴム、フッ素ゴム等)で形成された、縦断面が略U字状又は略V字状である環形のリップパッキンである。第1ピストンパッキン46は、ピストン3を円周方向に一周するようにしてピストン外周部に形成された第1環状溝47に、リップ部が下側に位置し(下方に向く)、ヒール部が上側に位置するような姿勢で収容(嵌入)されている。
【0030】
また、ピストン3の上端部よりやや下側(例えば、ピストン3の上下方向の寸法が100mmの場合、5〜30mm下側)においてピストン外周部に、ピストン3の下方への移動時に上側油室6内の油圧により横方向に膨出してシリンダ・ピストン間隙を封止する第2ピストンパッキン48が装着されている。第2ピストンパッキン48は、第1ピストンパッキン46と同様の、可撓性ないしは弾力性を有する材料で形成され縦断面が略U字状又は略V字状である環形のリップパッキンである。第2ピストンパッキン48は、ピストン3を円周方向に一周するようにしてピストン外周部に形成された第2環状溝49に、リップ部が上側に位置し、ヒール部が下側に位置するような姿勢で収容(嵌入)されている。
【0031】
シリンダ2の下端壁42には、ピストンロッド4を上下方向に摺動可能に支持する略円筒形の支持部材51が取り付けられている。そして、ピストンロッド4は、支持部材51の中心部に形成されたロッド挿通孔52を通り抜けて下方に突出している。なお、ピストンロッド4とロッド挿通孔52の間隙は、第1ロッドパッキン53及び第2ロッドパッキン54によって封止(シール)されている。
【0032】
ところで一方、油圧シリンダ装置1には、ピストン3がその往復移動行程の最上位置又は最上位置近傍に上昇したときに、第1ピストンパッキン46ないしは第1環状溝47の近傍あるいはピストン3の下端面近傍において作動油中に滞留している気泡をシリンダ外に排出する気泡排出機構が設けられている。以下、この気泡排出機構の具体的な構成及び機能を説明する。
【0033】
図3に示すように、ピストン3の中心部ないしは中心軸近傍には、その上端がピストン上端面に開口し、上下方向に直線状に伸びる鉛直作動油通路60が形成されている。さらに、ピストン3には、それぞれ、一端が鉛直作動油通路60の下端部に接続され、ピストン径方向(横方向)に放射状に伸びて他端が第1環状溝47の円環状の底部に開口する複数(例えば、2〜8本)の水平作動油通路61が形成されている。
【0034】
そして、鉛直作動油通路60の下端部近傍には、上側油室6の油圧によりピストン3が下降するときに、鉛直作動油通路60と水平作動油通路61とを経由して、上側油室6から下側油室7へ作動油が流れるのを阻止する第1逆止弁62が設けられている。第1逆止弁62は、鉛直作動油通路60に配設された弁座63と、鉛直作動油通路60内において弁座63の上側に配置され上下方向に移動して弁座63を開閉する弁体64と、弁体64を下向きに、すなわち弁体64が弁座63を閉止する方向に付勢するコイルばね65とを有する。なお、コイルばね65の付勢力は、ピストン3の姿勢が上下逆転した場合でも、弁体64が重力で下方に移動することなく弁座63を軽く閉止できる程度の強さでよい。
【0035】
一方、鉛直作動油通路60の上端部近傍には、下側油室7の油圧によりピストン3が上昇するときに、水平作動油通路61と鉛直作動油通路60とを経由して、下側油室7から上側油室6へ作動油が流れるのを阻止する第2逆止弁66が設けられている。第2逆止弁66は、鉛直作動油通路60に配設された弁座67と、鉛直作動油通路60内において弁座67の下側に配置され上下方向に移動して弁座67を開閉する弁体68と、弁体68を上向きに、すなわち弁体68が弁座67を閉止する方向に付勢するコイルばね69とを有する。弁座67は、鉛直作動油通路60の上端開口部(以下「作動油通路開口部」という。)との間に若干の間隔(例えば、5〜15mm)をあけて、作動油通路開口部の下方に配置されている。なお、コイルばね69の付勢力は、弁体68が重力で下方に移動することなく弁座67を軽く閉止できる程度の強さでよい。
【0036】
そして、第2逆止弁66の弁体68の上側には、ピストン3がその往復移動行程の最上位置又は最上位置近傍に上昇したときに、弁体68を下方に移動させて第2逆止弁66を強制的に開弁させる棒状部材71(開弁部材)が配設されている。以下、第2逆止弁66及び棒状部材71の具体的な構成及び機能を説明する。
【0037】
図4(a)、(b)に示すように、第2逆止弁66において、コイルばね69の下端部は、鉛直作動油通路60の内周面に固定された円環状の係止部材72によって係止(支持)される一方、上端部は弁体68を支持している。ここで、弁体68及びコイルばね69は、その大半が円筒形の筒状部材73の中空部に配置され、弁体68は横方向にほとんどずれることなく、上下方向に移動することができるようになっている。なお、詳しくは図示していないが、円筒部材73は、鉛直作動油通路60の内周面に固定されている。コイルばね69は、上側油室6内の油圧又は棒状部材71の押圧力により弁体68に下向きの強い力が作用するとき以外は、弁体68を弁座67に軽く押しつけて、第2逆止弁66を閉弁させている。
【0038】
棒状部材71は、その下端部が弁体68に連結もしくは接合され、又はその下端部が弁体68に常時当接するようにして弁体68の上側に載置されている。そして、弁座67より上側において、鉛直作動油通路60の内周面には、棒状部材71を横方向にずれさせることなく上下方向に移動可能に支持するガイド部材74が固定されている。なお、ガイド部材74には、作動油を流通させるための下側穴部75及び上側穴部76が形成されている。棒状部材71は、上下方向に移動することができ、下方に移動したときには弁体68を押し下げて弁座67と弁体68との間に適当な間隙を生じさせ、第2逆止弁66を強制的に開弁させる。
【0039】
棒状部材71の長さ(すなわち、長手方向ないしは上下方向の寸法)は、弁体68が弁座67を閉止している状態、すなわち弁体68が最上位置にあるときに、棒状部材71が作動油通路開口部から上方に若干の距離だけ突出するように設定される。この棒状部材71の突出量は、例えば、棒状部材71が、その上端部が作動油通路開口部近傍に位置するように下方に移動したときに、弁座67と弁体68の間隙を作動油が円滑に流れることができるような値(例えば、ピストン3の上下方向の寸法が100mmの場合、5〜10mm)に設定される。
【0040】
下側油室7に加圧された作動油が供給されてピストン3が上昇している場合において、ピストン3がその最上位置ないしはその近傍に到達していないときには、棒状部材71は、その自重による力以外は、弁体68に下向きの力を加えないので、
図4(a)に示すように、弁体68は下側油室側の油圧及びコイルばね69の付勢力により弁座67を閉止する。このとき、棒状部材71は、作動油通路開口部から最大限に上方に突出している。この状態においては、第2逆止弁66は逆止弁としての通常の機能を発揮し、下側油室側から上側油室側に作動油が流れるのを阻止する。
【0041】
そして、ピストン3がその最上位置ないしはその近傍に到達したときには、
図4(b)に示すように、棒状部材71はシリンダ2の上端壁41に当接してこれを上向きに押圧するが、上端壁41は変位しないので、その反力ないしは反作用により棒状部材71は下向きに移動する。その結果、棒状部材71は、下側油室側の油圧及びコイルばね73の付勢力に抗して、弁体68を下方に移動させる。この状態においては、第2逆止弁66は逆止弁としての通常の機能を喪失し、下側油室側から上側油室側に作動油が流れることができる状態となる。
【0042】
このように下側油室7に加圧された作動油が供給されてピストン3が上昇し、その最上位置ないしはその近傍に到達したときには、下側油室7内の加圧された作動油は、ピストン下端部近傍のシリンダ・ピストン間隙と、第1環状溝47と、複数の水平作動油通路61と、鉛直作動油通路60とを高速で流通して上側油室6に流入する。その際、第1ピストンパッキン46の近傍のシリンダ・ピストン間隙又は第1環状溝47に存在する気泡ないしは異物、あるいはピストン3の下端部近傍に存在する気泡は、作動油に随伴して上側油室6に流入する。この後、上側油室6内の気泡は、作動油とともに、上端壁ない油路43を経由して第1油路12に排出される。
【0043】
したがって、第1ピストンパッキン46の近傍のシリンダ・ピストン間隙又は第1環状溝47、あるいはピストン3の下端部近傍の下側油室7に気泡が滞留することはなく、気泡の断熱圧縮に起因する作動液ないしは第1ピストンパッキン46の過熱ないしは熱劣化を防止することができる。
【0044】
図3に示す油圧シリンダ装置1では、鉛直作動油通路60内において、第1逆止弁62と第2逆止弁66とに、それぞれ、弁体64、68を弁座63、67に向かって付勢するコイルばね65、69が配設されている。しかしながら、このように2つのコイルばね65、69を配設するのではなく、弁体64と弁体68との間に、弁体64、68をそれぞれ弁座63、67に向かって付勢する単一のコイルばね(図示せず)を配設してもよい。この場合は、両逆止弁62、66に、コイルばねを係止ないしは固定する係止部材を設ける必要はない。
【0045】
ところで、
図3に示す油圧シリンダ装置1では、前記のとおりピストン3内に、ピストン中心部に位置する1つの鉛直作動油通路60と、鉛直作動油通路60に接続された複数の水平作動油通路61とが形成されている。しかしながら、鉛直作動油通路60及び水平作動油通路61の構成は、このようなものに限定されるものではない。
【0046】
例えば、
図5に示すように、ピストン3の周縁部近傍に1つの鉛直作動油通路60aを設けるとともに、鉛直作動油通路60aと第1環状溝47とを直線状に接続する1つの水平作動油通路61aとを形成してもよい。あるいは、
図5に示す鉛直作動油通路60a及び水平作動油通路61aを、平面視で、ピストン中心に対して等しい角度間隔で複数組形成してもよい。
【0047】
以上、本発明の実施形態に係る油圧シリンダ装置1によれば、第1ピストンパッキン46の近傍のシリンダ・ピストン間隙、あるいは第1ピストンパッキン46を収容する第1環状溝47に気泡が滞留するのを防止することができ、気泡の断熱圧縮に起因する第1ピストンパッキ46ンの熱劣化を防止することができる。