(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
1回の前記フラッシングにおける液滴の噴射回数、前記フラッシングにおける液滴の1滴当たりの重量、及び、前記フラッシングのタイミングから選択される2つの前記条件を変更し、変更した2つの前記条件によって実行した前記フラッシングを用いて前記複数のテストパターンを前記媒体上にマトリックス状に配置して出力することを特徴とする請求項2又は3記載の液体噴射装置のフラッシング調整方法。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置の概略構成を示す斜視図である。
図1に示すように、本実施形態の液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置Iは、液体としてインクをインク滴として噴射するインクジェット式記録ヘッド1(以下、単に記録ヘッド1とも言う)を具備する。記録ヘッド1は、キャリッジ3に搭載され、キャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に当該キャリッジ軸5の軸方向に移動可能に設けられている。また、キャリッジ3には、液体供給手段を構成するインクカートリッジ2が着脱可能に設けられている。本実施形態では、キャリッジ3には、4つの記録ヘッド1が搭載されており、4つの記録ヘッド1からは異なるインク、例えば、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)及びブラック(K)の各インクが噴射される。すなわち、キャリッジ3には、異なるインクを保持したインクカートリッジ2が合計4つ装着されている。
【0021】
そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッド1を搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って往復移動される。一方、装置本体4には搬送手段としての搬送ローラー8が設けられており、インクが着弾される紙などの被噴射媒体である記録シートSが搬送ローラー8により搬送されるようになっている。なお、記録シートSを搬送する搬送手段は、搬送ローラーに限られずベルトやドラム等であってもよい。本実施形態では、キャリッジ3のキャリッジ軸5に沿った移動方向を第1の方向Xと称し、キャリッジ軸5の一端部側をX1、他端部側をX2と称する。また、記録シートSの搬送方向を第2の方向Yと称し、記録シートSの搬送方向の上流側をY1、下流側をY2と称する。また、本実施形態では、さらに第2の方向Y及び第1の方向Xの双方に交差する方向を本実施形態では、第3の方向Zと称し、記録シートSに対して記録ヘッド1側をZ1、記録ヘッド1に対して記録シートS側をZ2、と称する。なお、本実施形態では、各方向(X、Y、Z)の関係を直交とするが、各構成の配置関係が必ずしも直交するものに限定されるものではない。
【0022】
ちなみに、キャリッジ3は、キャリッジ軸5の一端部側であるX1がホームポジションとなっており、ホームポジションには、記録ヘッド1からフラッシング時に吐出されたインク滴を受けるインク受けであるフラッシングボックス9と、記録ヘッド1の液体噴射面22等をクリーニングする図示しないクリーニング手段と、が設けられている。なお、クリーニング手段としては、記録ヘッド1のノズルからインクを吸引する吸引手段や、ノズルが開口する液体噴射面22をワイパーブレードによってワイピングするワイピング手段等が挙げられる。また、フラッシングとは、印刷開始前又は印刷中に記録シートSにインクを着弾させないように記録ヘッド1からインク滴を吐出させるものであり、予備吐出とも言う。記録ヘッド1にフラッシングを行わせることで、増粘したインクをノズルから排出させて、印刷時のインク滴の飛翔方向のずれやノズルの目詰まりなどの吐出不良を抑制して、インク滴の吐出不良による着弾位置ずれや着弾しないといった着弾不良を抑制することができる。ちなみに、本実施形態では、X1のみにフラッシングボックス9を設けるようにしたが、特にこれに限定されず、X2にフラッシングボックス9を設けるようにしてもよく、X1及びX2の両方にフラッシングボックス9を設けるようにしてもよい。このようにX1及びX2の両方にフラッシングボックス9を設けることにより、キャリッジ3を第1の方向Xに往復移動させる所謂1パスの間にフラッシングを2回行わせることができる。
【0023】
このようなインクジェット式記録装置Iでは、記録ヘッド1に対して記録シートSを第2の方向Yに搬送し、キャリッジ3を記録シートSに対して第1の方向Xに往復移動させながら、記録ヘッド1からインク滴を噴射させることで記録シートSの略全面に亘って印刷が実行される。
【0024】
ここで、このようなインクジェット式記録装置Iに搭載される記録ヘッド1の一例について
図2及び
図3を参照して説明する。なお、
図2は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドを示す分解斜視図であり、
図3は、第2の方向に沿った記録ヘッドの断面図である。また、本実施形態では、記録ヘッドの各方向について、インクジェット式記録装置Iに搭載された際の方向、すなわち、第2の方向Y、第1の方向X及び第3の方向Zに基づいて説明する。もちろん、記録ヘッド1のインクジェット式記録装置I内の配置は以下に示すものに限定されるものではない。
【0025】
図2及び
図3に示すように、本実施形態の記録ヘッド1を構成する流路形成基板10は、シリコン単結晶基板からなり、その一方の面には振動板50が形成されている。振動板50は、二酸化シリコン層や酸化ジルコニウム層から選択される単一層又は積層であってもよい。
【0026】
流路形成基板10には、複数の圧力発生室12が第2の方向Yに沿って並設されている。また、流路形成基板10の圧力発生室12の第1の方向Xの外側の領域には連通部13が形成され、連通部13と各圧力発生室12とが、圧力発生室12毎に設けられたインク供給路14及び連通路15を介して連通されている。連通部13は、後述する保護基板のマニホールド部31と連通して各圧力発生室12の共通のインク室となるマニホールド100の一部を構成する。インク供給路14は、圧力発生室12よりも狭い幅で形成されており、連通部13から圧力発生室12に流入するインクの流路抵抗を一定に保持している。
【0027】
また、流路形成基板10の第3の方向ZのZ2側の面には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側の端部近傍に連通するノズル21が穿設されたノズルプレート20が、接着剤や熱溶着フィルム等によって固着されている。なお、ノズルプレート20は、例えば、ガラスセラミックス、シリコン単結晶基板、ステンレス鋼等からなる。また、ノズルプレート20のノズル21が開口するZ2側の面が、本実施形態の液体噴射面22となっている。
【0028】
一方、このような流路形成基板10のZ1側の面には、振動板50が形成され、この振動板50上には、第1電極60と、圧電体層70と、第2電極80とが、成膜及びリソグラフィー法によって積層されて圧電アクチュエーター300を構成している。本実施形態では、圧電アクチュエーター300が圧力発生室12内のインクに圧力変化を生じさせる駆動素子となっている。ここで、圧電アクチュエーター300は、圧電素子300ともいい、第1電極60、圧電体層70及び第2電極80を含む部分をいう。一般的には、圧電アクチュエーター300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を圧力発生室12毎にパターニングして構成する。本実施形態では、第1電極60を圧電アクチュエーター300の共通電極とし、第2電極80を圧電アクチュエーター300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。なお、上述した例では、振動板50、第1電極60が、振動板として作用するが、勿論これに限定されるものではなく、例えば、振動板50を設けずに、第1電極60のみが振動板として作用するようにしてもよい。また、圧電アクチュエーター300自体が実質的に振動板を兼ねるようにしてもよい。
【0029】
また、このような各圧電アクチュエーター300の第2電極80には、リード電極90がそれぞれ接続され、このリード電極90を介して各圧電アクチュエーター300に選択的に電圧が印加されるようになっている。
【0030】
また、流路形成基板10の圧電アクチュエーター300側の面には、マニホールド100の少なくとも一部を構成するマニホールド部31を有する保護基板30が接着剤35を介して接合されている。このマニホールド部31は、本実施形態では、保護基板30を第3の方向Zに貫通して圧力発生室12の幅方向に亘って形成されており、上述のように流路形成基板10の連通部13と連通されて各圧力発生室12の共通のインク室となるマニホールド100を構成している。
【0031】
また、保護基板30の圧電アクチュエーター300に対向する領域には、圧電アクチュエーター300の運動を阻害しない程度の空間を有する圧電アクチュエーター保持部32が設けられている。圧電アクチュエーター保持部32は、圧電アクチュエーター300の運動を阻害しない程度の空間を有していればよく、当該空間は密封されていても、密封されていなくてもよい。
【0032】
このような保護基板30としては、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料、例えば、ガラス、セラミック材料等を用いることが好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料のシリコン単結晶基板を用いて形成した。
【0033】
また、保護基板30には、保護基板30を第3の方向Zに貫通する貫通孔33が設けられている。そして、各圧電アクチュエーター300から引き出されたリード電極90の端部近傍は、貫通孔33内に露出するように設けられている。
【0034】
また、保護基板30のZ1側の面には、圧電アクチュエーター300を駆動するための駆動回路120が設けられている。この駆動回路120としては、例えば、回路基板や半導体集積回路(IC)等を用いることができる。そして、駆動回路120とリード電極90とは、ボンディングワイヤー等の導電性ワイヤーからなる接続配線121を介して電気的に接続されている。
【0035】
また、保護基板30のZ1側の面には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料からなり、この封止膜41によってマニホールド部31の一方面が封止されている。また、固定板42は、比較的硬質の材料で形成されている。この固定板42のマニホールド100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、マニホールド100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
【0036】
このような本実施形態の記録ヘッド1では、
図1に示すインクカートリッジ2からインクを取り込み、マニホールド100からノズル21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動回路120からの駆動信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの第1電極60と第2電極80との間に電圧を印加し、振動板50及び圧電アクチュエーター300をたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル21からインク滴が吐出する。
【0037】
また、
図1に示すように、インクジェット式記録装置Iは、制御装置200を具備する。ここで、本実施形態のインクジェット式記録装置Iの電気的構成について
図4を参照して説明する。なお、
図4は、本発明の実施形態1に係るインクジェット式記録装置の電気的構成を示すブロック図である。
【0038】
図4に示すように、インクジェット式記録装置Iは、本実施形態の制御部であるプリンターコントローラー210と、プリントエンジン220と、操作パネル216と、を備えている。
【0039】
プリンターコントローラー210は、インクジェット式記録装置Iの全体の制御をする要素であり、本実施形態では、インクジェット式記録装置Iに設けられた制御装置200内に設けられている。
【0040】
また、プリンターコントローラー210は、CPU等を含んで構成した制御処理部211と、記憶部212と、駆動信号生成部213と、外部I/F(interface)214と、内部I/F215と、操作パネル216と、を有する。
【0041】
記録シートSに印刷される画像を示す印刷データがホストコンピューターなどの外部装置230から外部I/F214に送信され、内部I/F215にはプリントエンジン220が接続される。プリントエンジン220は、プリンターコントローラー210による制御のもとで記録シートSに画像を記録する要素であり、記録ヘッド1、搬送ローラー8やこれを駆動する図示しないモーター等の紙送り機構221、駆動モーター6やタイミングベルト7等のキャリッジ機構222を有する。
【0042】
記憶部212は、制御プログラム等を記録するROMと、画像の印刷に必要な各種のデータを一時的に記録するRAMとを含む。
制御処理部211は、記憶部212に記録された制御プログラムを実行することによりインクジェット式記録装置Iの各要素を統括的に制御する。また、制御処理部211は、外部装置230から外部I/F214に送信される印刷データを、記録ヘッド1の各ノズル21からのインク滴の噴射/非噴射を圧電アクチュエーター300毎に指示するヘッド制御信号、例えば、クロック信号CLK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、画素データSI、設定データSP等に変換し、内部I/F215を介して記録ヘッド1に送信する。また、駆動信号生成部213は、駆動信号(COM)を生成し内部I/F215を介して記録ヘッド1に送信する。すなわち、ヘッド制御データや駆動信号等の噴射データは、送信部である内部I/F215を介して記録ヘッド1に送信される。
【0043】
プリンターコントローラー210からヘッド制御信号及び駆動信号等の噴射データが供給された記録ヘッド1は、ヘッド制御信号及び駆動信号から印加パルスを生成し、印加パルスを圧電アクチュエーター300に印加する。
【0044】
また、制御処理部211は、外部装置230から外部I/F214を介して受信した印刷データから紙送り機構221及びキャリッジ機構222の移動制御信号を生成し、内部I/F215を介して紙送り機構221及びキャリッジ機構222に送信し、紙送り機構221及びキャリッジ機構222の制御を行う。これにより、記録シートSへの印刷が実行される。
【0045】
操作パネル216は、表示装置217と操作装置218とを具備する。表示装置217は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDランプ等で構成され、各種情報を表示する。操作装置218は、各種スイッチやタッチパネル等で構成される。
【0046】
また、制御処理部211は、操作パネル216及び外部装置230の何れか一方又は両方に、フラッシングの条件をインクジェット式記録装置Iの使用者であるユーザーが変更可能に提示する。そして、制御処理部211は、ユーザーによって変更された条件に基づいてフラッシングが行われるように制御する。すなわち、
図5に示すように、制御処理部211は、記憶部212に記憶された制御プログラムを実行することにより、操作パネル216及び外部装置230の何れか一方又は両方にフラッシングの条件をユーザーが変更可能に提示する提示部211Aとしての機能を実現する。また、制御処理部211は、記憶部212に記憶された制御プログラムを実行することにより、提示部211Aを介して変更された条件に基づいてフラッシングが行われるように制御するフラッシング制御部211Bとしての機能を実現する。なお、このような制御プログラムは、外部I/F214を介して直接接続された、又は、ホストコンピューターを介して接続されたフロッピィディスクやCDROM、DVDROM、USBメモリー等の記録媒体から読み込まれる。もちろん、制御プログラムは、ホストコンピューターにプリンタードライバーとして備えられていてもよい。このように制御プログラムがホストコンピューターに備えられた場合には、特許請求の範囲に記載のフラッシング制御部及び提示部は、制御プログラムを具備するホストコンピューターとなる。なお、提示部211Aがフラッシングの条件をユーザーが変更可能に提示する対象は、操作パネル216及び外部装置230の何れか一方のみであってもよく、両方であってもよい。もちろん、提示部211Aが提示する対象をユーザーに選択させるようにしてもよい。
【0047】
ここで、プリンターコントローラー210には、初期状態において標準のインクの物性に合わせてインク滴の吐出不良を発生させないための最適なフラッシングの条件が設定されている。しかしながら、実際の使用態様においては、ユーザーのニーズにより、標準となるインク以外のインクが使用される場合がある。なお、標準となるインク以外のインクとは、標準のインクと同じ製造者が製造した成分の異なるインクや、他社が製造したインクなどである。そして、標準のインクとは異なるインクを用いた場合、同じ乾燥時間であってもインクの単位時間当たりに増粘する割合に違いがあるため、例えば標準のインクよりも増粘する割合が高いインクであった場合は、初期状態のフラッシングの条件では増粘したインクを完全に排出することができない。このため、完全に排出されずに残留した増粘インクによってインク滴の飛翔方向にばらつきが生じることや、ノズル21の目詰まりが生じるなどのインク滴の吐出不良が発生する虞がある。そこで、本実施形態のインクジェット式記録装置Iは、標準のインクとは異なるインクが使用された際に、異なるインクに対して標準となるインクに合わせて設定された標準のフラッシングの条件をユーザーに変更させることができるフラッシング調整モードを実行可能とした。このフラッシング調整モードは、例えば、ユーザーが操作装置218を操作することによって実行させることができる。
【0048】
ここで、フラッシングの条件としては、1回のフラッシングにおけるインク滴の噴射回数(条件1)、フラッシングにおけるインク滴の1滴当たりの重量(条件2)、及び、フラッシングのタイミング(条件3)が挙げられる。
【0049】
なお、条件1である1回のフラッシングにおけるインク滴の噴射回数とは、1回のフラッシングにおいて、同一のノズル21から連続して噴射されるインク滴の噴射回数のことである。フラッシングは、ノズル21内及びノズル21近傍の増粘したインクがフラッシングによって外部に排出されるまで行う必要があるため、増粘し易いインクの場合には、1回のフラッシングにおけるインク滴の噴射回数を多くする。これによりフラッシングにおけるインクの排出量を多くして、増粘したインクを確実に排出することができる。これに対して、増粘し難いインクの場合には、1回のフラッシングにおけるインク滴の噴射回数を少なくすることで、フラッシングにおけるインクの排出量を少なくして無駄なインクの消費を抑制することができる。
【0050】
また、条件2であるフラッシングにおけるインク滴の1滴当たりの重量とは、1回のフラッシングにおいて複数のインク滴が噴射される際のインク滴の1滴当たりのインク重量のことである。例えば、増粘し易いインクの場合には、1滴当たりのインク重量を大きくする。これによりフラッシングにおけるインクの排出量を多くして、増粘したインクを確実に排出することができる。これに対して、増粘し難いインクの場合には、1滴当たりのインク重量を小さくすることで、フラッシングにおけるインクの排出量を少なくして無駄なインクの消費を抑制することができる。
【0051】
なお、インク滴の重量の調整は、例えば、圧電アクチュエーター300を駆動する駆動信号を示す駆動パルスを調整することで実現することができる。ここで、フラッシングを行う駆動パルスの一例について
図6を参照して説明する。
図6は、本実施形態の駆動パルスを示す波形図である。
駆動信号生成部213が生成する駆動信号(COM)は、1記録周期T(周波数1/T)内にノズル21からインク滴を吐出させる駆動パルスを有する。
【0052】
図示するように、駆動パルスは、圧電アクチュエーター300の共通電極である第1電極60を基準電位(Vbs)として、個別電極である第2電極80に供給されるものである。すなわち、駆動波形によって第2電極80に印加される電圧は、基準電位(Vbs)を基準としての電位として示される。
【0053】
具体的には、駆動パルス400は、中間電位Vmが印加された状態から第1電位V
1まで印加して圧力発生室12の容積を基準容積から膨張させる膨張要素P1と、膨張要素P1によって膨張した圧力発生室12の容積を一定時間維持する膨張維持要素P2と、第1電位V
1から第2電位V
2まで電位差Vhを印加して圧力発生室12の容積を収縮させる収縮要素P3と、収縮要素P3によって収縮した圧力発生室12の容積を一定時間維持する収縮維持要素P4と、第2電位V
2の収縮状態から中間電位Vmの基準容積まで圧力発生室12を復帰させる膨張復帰要素P5と、を具備する。
【0054】
条件2のフラッシングにおけるインク滴の1滴当たりのインク重量を調整する場合には、例えば、駆動パルス400の電位差Vhを変更すればよい。例えば、1滴当たりのインク重量を大きくする場合には、電位差Vhを大きくし、1滴当たりのインク重量を小さくする場合には、電位差Vhを小さくすればよい。なお、インク重量の調整は、例えば、インク重量と電位差Vhとの相関を示すテーブル等に基づいて、ユーザーがインク重量を指定することで、指定されたインク重量から電位差Vhを参照すればよい。もちろん、ユーザーにインク重量を選定させる代わりに、電位差Vhを選定させてもよい。また、本実施形態では、インク滴の重量の調整を圧電アクチュエーター300に印加する電位差Vhを変更するようにしたが、インク滴の重量が変更できればその他の要素を変更するものであってもよい。例えば、収縮要素P3の単位時間当たりの電位変化率、すなわち傾きや、中間電位Vmと第1電位V
1との電位差や、膨張維持要素P2の維持時間等であってもよい。また、印刷時に大ドット、中ドット、小ドット等で打ち分けている場合には、これら打ち分けで使用する異なる駆動パルスを選択してフラッシングを行うようにすれば、インク滴の重量を調整することができる。
【0055】
さらに、条件3のフラッシングのタイミングとは、印刷中にフラッシングを行うタイミングのことである。例えば、増粘し易いインクの場合には、印刷中においてキャリッジ3が第1の方向Xに1往復(1パス)する毎にフラッシングを行うようにすれば、フラッシングの間隔を短くして、増粘したインクを確実に排出することができる。これに対して、印刷中においてキャリッジ3が第1の方向Xに2往復(2パス)以上する毎にフラッシングを行うようにすれば、フラッシングの間隔を長くして、フラッシングにおけるインクの排出量を少なくして無駄なインクの消費を抑制することができる。
【0056】
そして、提示部211Aは、これらフラッシングの3つの条件1〜3のうちの少なくとも1つをユーザーに変更可能に操作パネル216や外部装置230に提示する。提示部211Aは、条件1〜3の1つのみをユーザーに変更可能に提示するようにしてもよく、条件1〜3から選択される2つ以上をユーザーに変更可能に提示するようにしてもよい。また、提示部211Aは、ユーザーに条件1〜3を選択させて、選択された条件1〜3をユーザーに変更可能に提示してもよい。
【0057】
ここで、提示部211Aが操作パネル216にユーザーにフラッシングの条件を変更可能に表示する一例を
図7〜
図11に示す。なお、
図7〜
図11は、選択画面を示す図である。
図7に示すように、提示部211Aは、操作パネル216にユーザーが条件1〜3を選択可能に提示する。ユーザーが条件1を選択した場合には、
図8に示すように、提示部211Aは、フラッシングの条件1の値をユーザーが変更可能に提示する。なお、
図8に示す例では、予め条件1の異なる値を5つ用意し、ユーザーが条件1の異なる5つの値の中から所望の値を選択することで変更できるようにしている。もちろん、これに限定されず、
図9に示すように、ユーザーが1回のフラッシングにおけるインク滴の吐出回数(条件1)を直接入力して変更できるようにしてもよい。なお、
図8及び
図9に示す例では、標準のインクに適した標準のフラッシングの条件1がユーザーに分かるように表示している。このため、標準のインクに対する条件1に対して条件1を変更することができるため、標準のインクに対する条件1と同じ条件1を選択することができると共に、変更した際の変更量を容易に把握することができる。
【0058】
また、
図7に示す画面においてユーザーが条件2を選択した場合には、
図10に示すように、フラッシングの条件2の値を変更可能に提示する。なお、
図10に示す例では、予め条件2の異なる値を5つ用意し、ユーザーが条件2の異なる5つの値の中から所望の値を選択することで変更できるようにしている。もちろん、
図9と同様に、条件2についてもユーザーが条件2の値を直接入力して指定できるようにしてもよい。
【0059】
さらに、
図7に示す画面においてユーザーが条件3を選択した場合には、
図11に示すように、フラッシングの条件3の値を変更可能に提示する。なお、
図11に示す例では、予め条件3の異なる値を5つ用意し、ユーザーが条件3の異なる5つの値の中から所望の値を選択することで変更できるようにしている。もちろん、
図9と同様に、条件3についてもユーザーが条件3の値を直接入力して指定できるようにしてもよい。
【0060】
このようなフラッシングの条件1〜3を設定するフラッシング調整方法について
図12を参照してさらに説明する。なお、
図12は、本発明の実施形態1に係るフラッシング調整方法を示すフローチャートである。
【0061】
図12に示すように、ステップS1で、提示部211Aによって上述した
図7に示すように条件1〜3をユーザーに選択可能に提示する。ステップS2で、条件1が選択されたか判別し、条件1が選択されたら(ステップS2:Yes)、ステップS3において、提示部211Aによって
図8又は
図9に示すようにフラッシングの条件1の値を変更可能な状態で表示する。そして、提示部211Aによって提示された条件1の値をユーザーが選択したら、ステップS4で、フラッシング制御部211Bが提示部211Aを介して変更された条件1を設定する。
【0062】
また、ステップS2で、条件1が選択されていない場合には(ステップS2:No)、ステップS5で、条件2が選択されたか判別し、条件2が選択されたら(ステップS5:Yes)、ステップS6において、提示部211Aによって
図10に示すようにフラッシングの条件2の値を変更可能に提示する。そして、提示部211Aによって提示された条件2の値をユーザーが選択したら次に、ステップS7で、フラッシング制御部211Bが提示部211Aを介して変更された条件2を設定する。
【0063】
さらに、ステップS5で、条件2が選択されていない場合には(ステップS5:No)、ステップS8で、条件3が選択されたか判別し、条件3が選択されたら(ステップS8:Yes)、ステップS9において、提示部211Aによって
図11に示すようにフラッシングの条件3の値を変更可能に提示する。そして、提示部211Aによって提示された条件3の値をユーザーが選択したら次に、ステップS10で、フラッシング制御部211Bが提示部211Aを介して変更された条件3を設定する。なお、ステップS8で条件3が選択されていない場合には(ステップS8:No)、条件1〜3を変更することなく標準のフラッシング条件1〜3のままとなる。
【0064】
なお、本実施形態では、フラッシング調整モードにおいて、ユーザーが条件1〜3を選択し、選択した条件1〜3の値を変更するようにしたが、特にこれに限定されず、条件1〜3を選択することなく、条件1〜3から選択される少なくとも1つを常にユーザーに変更させるようにしてもよい。
【0065】
以上説明したように、本実施形態のインクジェット式記録装置Iでは、提示部211Aによって操作パネル216や外部装置230に、1回のフラッシングにおけるインク滴の吐出回数(条件1)、フラッシングにおけるインク滴の1滴当たりの重量(条件2)、及び、フラッシングのタイミング(条件3)から選択される少なくも1つの条件をユーザーに変更可能に提示し、フラッシング制御部211Bが提示部211Aを介して変更された条件に基づいてフラッシングが行われるように制御するようにした。このため、標準とは異なるインクであっても最適なフラッシングを行わせることができ、増粘したインクを確実に排出させることができると共に、インクの無駄な消費を抑制することができる。すなわち、通常、フラッシングの条件は、標準となるインクの特性に合わせてノズル21内及びノズル21近傍の増粘したインクが排出されるように最適化されているため、想定し得る環境の変化だけではなく、標準となるインク以外の他のインクに変更されることによって、標準となるインクに最適化されたフラッシングでは、他のインクを安定して吐出させることができない。本実施形態では、ユーザーが、標準のインクとは異なるインクに対して最適なフラッシングの条件を設定することができるので、増粘したインクを確実に排出してインクの吐出不良が発生するのを抑制することができる。
【0066】
また、ユーザーがインク毎にフラッシングの条件を設定することができるため、多岐に亘るインクの種類に対応した全てのフラッシング条件を用意する必要がなく、設定を容易に行うことができる。
さらに、本実施形態では、標準とは異なるインクに最適なフラッシング条件を設定することができるため、例えば、最も増粘し易いインクに合わせたフラッシングの条件を設定する必要がない。したがって、インクの無駄な消費が増大するのを抑制することができる。
【0067】
(実施形態2)
図13は、本発明の実施形態2に係るインクジェット式記録装置のテストパターンを示す図である。なお、上述した実施形態と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
本実施形態では、フラッシング制御部211Bは、フラッシングの条件1〜3の少なくとも1つを変更し、変更した条件で実行されたフラッシングを用いてテストパターンを複数出力、すなわち、印刷する。
【0068】
ここで、変更した条件で実行されたフラッシングを用いてテストパターンを印刷するとは、基準となるテストパターンに対して変更した条件でフラッシングを実行した後にテストパターンを印刷することを言う。テストパターンの印刷方法については詳しくは後述するが、本実施形態では、増粘していないインクで基準となるテストパターンを印刷し、ノズル21内のインクを増粘させた後、変更した条件でフラッシングを行い、その後、基準となるテストパターンと同じ位置にテストパターンを印刷する。そして、基準となるテストパターンと変更した条件でフラッシングした後のテストパターンとの印刷位置を比較する。このとき、変更した条件でフラッシングすることで増粘したインクが完全に排出されている場合には、基準となるテストパターンと、フラッシング後のテストパターンとの印刷位置が同じとなる。これに対して、変更した条件でフラッシングしても増粘したインクが完全に排出されていない場合には、フラッシング後のテストパターンの印刷時にインク滴の飛翔方向にずれが生じるため、基準となるテストパターンとフラッシング後のテストパターンとの印刷位置にズレが生じる。したがって、基準となるテストパターンと変更した条件でフラッシングした後のテストパターンとの印刷位置を比較するだけで、変更した条件のフラッシングによって増粘したインクが確実に排出されているか判別することができる。
【0069】
本実施形態では、フラッシングの条件1〜3のうち、条件1と条件2とを変更し、これら変更した条件1及び2のフラッシングを用いてテストパターンを複数印刷するようにした。
つまり、フラッシングの条件1は、1回のフラッシングにおけるインク滴の吐出回数であるため、例えば、回数が異なる複数の条件1を用意する。本実施形態では、異なる条件1として例えば、10回、50回、100回、500回、1000回の5つの条件1を用意した。もちろんこれに限定されず、例えば、標準のインクに最適なフラッシングの条件1を規定する基準となる回数tに対して、変更量(振り幅)Δt、変更する範囲(振る数)n(整数)とすると、変更した回数t′=t+n×Δtで表すこともできる。
【0070】
同様に、フラッシングの条件2は、フラッシングにおける1滴のインク滴の重量であるため、例えば、インク滴の重量が異なる複数の条件2を用意する。本実施形態では、異なる条件2として、例えば、標準のインクに最適なフラッシングの条件2を規定する基準となる電位差Vhに対して、変更量(振り幅)Δv、変更する範囲(振る数)m(整数)とすると、変更した電位差Vh′=Vh+m×Δvで表される。本実施形態では、変更する範囲mを±2とすれば、変更した電位差Vh′は4個形成されるため、異なる複数の条件2としては、基準となる条件2の電位差Vhと合わせて合計5個形成することができる。
【0071】
そして、これら5つの条件1と5つの条件2とを組み合わせることで、合計25個の異なる条件のフラッシングを実行することができる。したがって、25個の異なる条件のフラッシングに対応してテストパターンを複数印刷する。本実施形態では、複数のテストパターンは、1枚の記録シートSにマトリックス状に印刷するようにした。つまり、基準となるテストパターンと、条件を変更したフラッシングを実行させた後のテストパターンとを対として、この対となるテストパターンをマトリックス状に配置するようにした。このようなテストパターンの一例を
図13に示す。
【0072】
本実施形態では、
図13に示すように、記録シートSには、基準となるフラッシングの条件1及び2で印刷したテストパターンを中心として、横軸である第1の方向Xに条件1を変更したテストパターン、縦軸である第2の方向Yに条件2を変更したテストパターンがマトリックス状に配置されるように印刷する。なお、記録シートSの各方向は、インクジェット式記録装置Iで印刷される際に配置された方向、すなわち、インクジェット式記録装置Iの第1の方向X、第2の方向Y及び第3の方向Zに基づいて規定している。
【0073】
ここで、複数のテストパターンをマトリックス状に印刷する方法についてさらに詳細に説明する。本実施形態では、1パス毎に複数の基準となるテストパターン500と複数の条件1を変更してフラッシングした後のテストパターン501とを第1の方向Xに並設して印刷するようにした。すなわち、1パス目で複数の基準となるテストパターン500と複数の条件1を変更してフラッシングしたテストパターン501とを第1の方向Xに並設して印刷した後、記録シートSを第2の方向Yに紙送りしてから、2パス目で、複数の基準となるテストパターン500と、1パス目とは異なる条件2で、複数の条件1を変更してフラッシングした後のテストパターン501とを第1の方向Xに並設して印刷する。つまり、紙送り毎にフラッシングの条件2を変更するようにしている。
【0074】
基準となるテストパターン500の印刷は、記録ヘッド1のノズル21内及びノズル21近傍のインクをリフレッシュした後に行われる。本実施形態では、1パスによって基準となるテストパターン500を第1の方向Xに5個並設して印刷する。
【0075】
このように5つの基準となるテストパターン500を印刷した後は、記録ヘッド1のノズル21内及びノズル21近傍のインクを再度リフレッシュし、その後、ノズル21内のインクを増粘させる。ノズル21内のインクを増粘させる方法としては、例えば、記録ヘッド1を第1の方向Xに数秒間空走、すなわち、記録ヘッド1からインク滴を吐出させることなく第1の方向Xに移動させることによって、ノズル21内のインクを増粘させる。もちろん、ノズル21内のインクを増粘する方法は、特にこれに限定されず、例えば、記録ヘッド1を空走させずに、記録ヘッド1がホームポジションに位置する状態でノズル21を数秒間露出させるようにしてもよい。ちなみに、ホームポジションでは、ノズル21は、図示しない吸引手段の吸引キャップや、密着キャップ等によって覆われて、インクの増粘が抑制されているため、ノズル21内のインクを増粘させるには、ノズル21から吸引キャップや密着キャップを外して当該ノズル21を露出させる必要がある。ただし、記録ヘッド1を空走させた方がノズル21内のインクが短時間で乾燥して増粘し易い。したがって、記録ヘッド1を空走させてノズル21内のインクを増粘させるのが好ましい。これにより、複数のテストパターンの印刷を短時間で行うことができる。
【0076】
このようにノズル21内のインクを増粘させた後は、条件2を変更することなく、条件1を変更してフラッシングを実行し、その後、基準となる1つのテストパターン500と同じ位置にテストパターン501を印刷する。なお、リフレッシュ、ノズル21内のインクの増粘、条件1を変更したフラッシング、テストパターン501の印刷は、条件1の異なる値毎に繰り返し行う。つまり、本実施形態の条件1は、5つの異なる値であるため、基準となるテストパターン500を第1の方向Xに5個印刷した後、5個の基準となるテストパターン500毎に、リフレッシュ、インクの増粘、条件1を変更したフラッシング、テストパターン501の印刷を繰り返し行う。これにより、記録シートSには、5つの基準となるテストパターン毎に5つの異なる条件1でフラッシングを行った後のテストパターンが第1の方向Xに並設される。
【0077】
このような基準となるテストパターン500の印刷と、条件1を変更してフラッシングした後の複数のテストパターン501の印刷とを、条件2を変更しながら繰り返し行うことで、
図13に示すように基準となるテストパターン500と複数のテストパターン501とを対として、この対をなすテストパターン500、501をマトリックス状に配置することができる。
【0078】
この結果、
図14に示すように、基準となるテストパターン500に対して印刷位置がずれたテストパターン501と、基準となるテストパターン500と同じ位置に印刷されたテストパターン501とが形成される。本実施形態では、記録シートS内のテストパターン501の位置について、横軸は条件1の回数tを振った範囲x、縦軸は条件2のインク滴の重量、本実施形態では、電位差Vhを振った範囲yとして(x,y)で表す。ここでは、横軸の条件1の回数tが、100回である位置が±0とし、50回である位置が−1とし、10回である位置が−2とし、500回である位置が+1とし、1000回である位置が+2としている。例えば、標準のインクに最適なフラッシングの条件1が±0で条件2が100回である位置を(0,0)とすると、標準の条件1及び2(0,0)の横軸xにおいて1つ右側である条件1が±0で条件2が500回である位置が(1,0)、標準の条件1及び2(0,0)の1つ左側である条件1が±0で条件2が50回である位置が(−1,0)となる。同様に、基準となる条件1及び2(0,0)の縦軸yにおいて1つ上である条件1が−1で条件2が100回である位置が(0,−1)、標準の条件1及び2(0,0)の1つ下である条件1が+1で条件2が100回である位置が(0,1)となる。このように条件1の回数tを振った範囲x及び条件2のインク滴の重量(電位差)Vhを振った範囲yと、テストパターン501の位置とを関連づけて把握する。これにより、インクに最適なテストパターン501を選択する際に、テストパターン501の識別と、識別したテストパターン501に関連付けられた条件1及び2の把握とを容易に行うことができる。なお、
図14に示す結果では、複数のテストパターン501のうち(1,−2)〜(2,−2)、(0,−1)〜(2,−1)、(−1,0)〜(2,0)、(−1,1)〜(2,1)、(−2,2)〜(2,2)のテストパターン501が、インクの吐出不良が発生していない、すなわち、増粘したインクを確実に排出することができたフラッシングの条件1及び2となる。このように、複数のテストパターン501をマトリックス状に配置して印刷することで、複数のテストパターン501の比較を容易に行うことができる。本実施形態では、記録ヘッド1を記録シートSに対する移動方向である第1の方向Xに移動させながら、フラッシングの条件1を変更した複数のテストパターンを並設し、紙送り方向である第2の方向Yにフラッシングの条件2を変更したテストパターンを複数並設することで、第1の方向Xにフラッシングの条件2を変更したテストパターンを並設するのに比べて、印刷時間を短縮することができる。つまり、フラッシングの条件2であるインク滴の重量Vhの変更は、駆動パルスを変更しなくてはならず、駆動パルスの変更にはフラッシングの条件1である回数tの変更に比べて時間がかかるため、変更に時間のかかる条件2を変更したテストパターン501を第2の方向Yに並設することで、印刷時間を短縮することができる。
【0079】
このような記録シートSに印刷された基準となるテストパターン500と複数のテストパターン501からユーザーが、最適なテストパターン、つまり該当する条件1及び2でのフラッシング後のテストパターンのうち基準となるテストパターン500とほぼ重なり合っているテストパターン501を選択する。選択したテストパターン501は、例えば、操作パネル216の操作装置218から入力する。本実施形態では、提示部211Aが、
図15に示すように、表示装置217に複数のテストパターン501をブロックとしてマトリックス状に配置した模式図を提示させて、テストパターン501の印刷結果に基づいて表示装置217に提示されたブロックの中から選択したテストパターン501に対応するブロックを操作装置218によって選択する。表示装置217に提示されたブロックの中から操作装置218によって選択したテストパターン501に該当するブロックを選択したら、提示部211Aは、
図16に示すように、確認画面を表示装置217に提示するようにすればよい。すなわち、
図16に示す確認画面において、選択されたテストパターン501で間違いないか確認し、「OK」が選択されたら選択されたテストパターン501に関連付けられた条件1及び2を設定する。「Cancel」が選択されたら
図15の画面に戻って最適なテストパターン501を再選択させればよい。もちろん、表示装置217に提示する選択画面は、これに限定されず、例えば、選択したテストパターンの位置を上述した(x,y)に直接数値で入力するようにしてもよい。
【0080】
最適なテストパターン501が選択されたらフラッシング制御部211Bは、選択されたテストパターン501に対応する設定値、すなわち、フラッシングの条件1及び2を記憶部212に記憶させる。または、フラッシング制御部211Bは、標準の条件1及び2からのオフセット量として記憶部212に記憶させる。そして、フラッシング制御部211Bは、テストパターン501以外の印刷時においても、フラッシングが設定された条件1及び2で実行されるように制御する。
【0081】
なお、本実施形態のインクジェット式記録装置Iは、4色のインクを噴射するため、フラッシング調整モードでは、色毎に複数のテストパターンを印刷し、全ての色で吐出不良が生じていないテストパターン501を選択する。つまり、本実施形態では、インクの色毎にフラッシングの条件1〜3を変更せずに、全ての色で同じフラッシングの条件1〜3で印刷する。このため、インクの色毎に複数のテストパターン501を印刷し、全ての色において最適となるテストパターンを選定する。ここでこのような例を
図17〜
図26に示す。なお、
図17〜
図20は、初期状態で想定した標準のインクを用いた場合の各色のテストパターンであり、塗りつぶされた部分が吐出不良が生じていない部分を示す。また、
図21は、各色のテストパターンの結果を複合、すなわち、吐出不良が発生していないテストパターンが重複した位置を示す図である。また、
図22〜
図25は、A社製インクA1を用いた場合の各色のテストパターンであり、
図26はA社製インクA1のテストパターンを複合した結果を示す図である。
【0082】
図17〜
図20に示すように、標準インクを用いた場合の各色のテストパターンにおいて吐出不良が発生していないものを複合すると、
図21に示すように全ての色においてテストパターン(0,0)は最もインクの消費量が少ないものとなる。したがって、標準インクを用いた初期状態では、テストパターン(0,0)の条件1及び2が基準値として設定されている。
【0083】
これに対して、
図22〜
図25に示すように、A社製インクA1を用いた場合の各色のテストパターンにおいて安定して印刷が行われたものを複合すると、
図26に示すように、全ての色においてテストパターン(1,1)が最もインクの消費量が少ないものとなる。したがって、A社製インクA1を用いた場合には、テストパターン(1,1)を印刷した際のフラッシングの条件1及び2を用いることで、A社製インクA1の全ての色において増粘したインクを排出して安定した印刷を実現することができると共にインクの無駄な消費を抑制することができる。
【0084】
ここで、このような液体噴射ヘッドのフラッシング調整方法について
図27を参照して説明する。なお、
図27は、フラッシング調整方法を示すフローチャートである。
図27に示すように、ステップS11でフラッシング調整モードになるとフラッシングの条件1の回数及び条件2のインク滴の重量の初期値を読み込む。次に、ステップS12で印刷を行う色、本実施形態では、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)及びブラック(B)のうちから1つを選択する。次に、ステップS13で現在の設定を中心に条件2のインク滴の重量の値を変更量及び変更する範囲に基づいて変更する。本実施形態では、例えば、条件2のインク滴の重量を最初に−2にオフセットする。次に、ステップS14でフラッシングの条件1の回数を変更量及び変更する範囲に基づいて変更する。本実施形態では、条件1の回数を最初に−2にオフセットする。次に、ステップS15で変更された条件2のインク滴の重量と、変更された条件1の回数とのフラッシングを用いたテストパターンを印刷する。
【0085】
次に、ステップS16で条件1の変更する範囲におけるテストパターンを全て印刷したか判定する。ステップS16で条件1の変更する範囲におけるテストパターンを全て印刷していないと判定したら(ステップS16;No)、ステップS17で、条件1の回数を変更量及び変更する範囲に基づいて変更する。本実施形態では、条件1の変更された回数をさらに+1オフセットする変更を行う。つまり、基準となる回数に対して−1オフセットした回数とする。そして、ステップS15〜ステップS17を繰り返し行って変更した条件2において条件1を振った複数のテストパターンを印刷する。なお、ステップS15〜ステップS17では、記録シートSを紙送りすることなく、複数のテストパターンを印刷するため、複数のテストパターンは、キャリッジ3の移動方向である第1の方向Xに併設される。
【0086】
また、ステップS16で条件1の変更する範囲におけるテストパターンを全て印刷したと判定したら(ステップS16;Yes)、ステップS18で搬送手段によって記録シートSを搬送する。次に、ステップS19で、条件2を振ったパターンを全て印刷したか判定し、ステップS19で条件2を振ったパターンを全て印刷していないと判定した場合には(ステップS19;No)、ステップS20で、条件2を変更量及び変更する範囲に基づいて変更する。本実施形態では、変更された条件2をさらに+1オフセットする変更を行う。つまり、基準となる条件2のインク滴の重量に対して−1オフセットした重量とする。その後はステップS15〜ステップS20を繰り返し行うことで、変更した条件2のそれぞれにおける条件1を振ったテストパターンを全て印刷する。
【0087】
ステップS19で条件2を振ったテストパターンを全て印刷したと判定した場合には(ステップS19;Yes)、ステップS21で、最適なテストパターンを入力する。次に、ステップS22で、全ての色について最適なテストパターンが入力されたか判定し、全ての色で最適なテストパターンが入力されていないと判定したら(ステップS22;No)、ステップS23で異なる色を設定して、ステップS13〜ステップS22を繰り返し行う。すなわち、ステップS11〜ステップS22によって全ての色に対して、条件1を振った値と条件2を振った値とを組み合わせたテストパターンを全て印刷する。
【0088】
次に、ステップS22で全ての色で最適なテストパターンが入力されたと判定したら(ステップS22;Yes)、ステップS24で、全色から最適なテストパターンを決定する。そして、ステップS25で、全色に最適テストパターンに関連付けられた条件1及び条件2をインクジェット式記録装置Iに記憶させる。
【0089】
以上説明したように、本実施形態では、変更した条件で実行されたフラッシングを用いてテストパターンを複数出力するようにしたため、複数のテストパターンを比較して、特定のテストパターンを選択し易くすることができる。そして、テストパターンを選択することでフラッシングの変更された条件を選択及び設定することができるので、フラッシングの条件を直接設定するのに比べて容易に且つ短時間で最適なフラッシングの条件を選定することができる。
【0090】
また、本実施形態では、フラッシングの条件1〜3の中から選択される2つの条件を変更し、変更した2つの条件によって実行したフラッシングを用いてテストパターン501を記録シートS上にマトリックス状に配置して印刷するようにした。このように複数のテストパターン501をマトリックス状に配置して印刷することで、複数のテストパターン501同士の比較を容易に行うことができる。
【0091】
なお、本実施形態では、全ての色について、同じ条件1及び2のフラッシングを行うようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、色毎に異なる条件1及び2のフラッシングを行うようにしてもよい。
【0092】
さらに、本実施形態では、フラッシングの条件1及び条件2を変更した複数のテストパターンをマトリックス状に印刷するようにしたが、特にこれに限定されず、条件1〜3から選択される2つの条件を変更した複数のテストパターンをマトリックス状に印刷してもよい。もちろん、条件1〜3の何れか1つの条件のみを変更した複数のテストパターンを印刷するようにしてもよい。つまり、複数のテストパターンは、マトリックス状に印刷するものに限定されるものではない。
【0093】
(他の実施形態)
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明の基本的な構成は上述したものに限定されるものではない。
例えば、上述した各実施形態において、ユーザーがインクジェット式記録装置Iのフラッシング調整モードを選択することにより、フラッシングの調整が開始されるようにしたが、特にこれに限定されず、インクジェット式記録装置Iが所定の状況を検知した場合に、フラッシングの調整を開始するようにしてもよい。本実施形態では、
図28に示すように、インクジェット式記録装置Iは、インク検知部219を有する。
【0094】
制御処理部211は、インク検知部219によって標準のインク以外のインクが使用されていることを検知した際に、フラッシングの調整を開始することができる。つまり、制御処理部211は、表示装置217にフラッシング調整モードを実施するか否かの選択画面を提示すればよい。
【0095】
例えば、インクカートリッジ2に設けられたバーコード、QRコード(登録商標)等の二次元コード、ICチップ等の識別部を装着しておき、インク検知部219が識別部から読み取った情報に基づいて標準のインク以外のインクが使用されていることを検知するようにしてもよい。
【0096】
また、インクカートリッジ2のICチップ等の識別部から、インクカートリッジ2内のインク残量を読み取ることができる場合がある。この場合には、インク検知部219が、ICチップ等の識別部から読み取ったインク残量に基づいてインクの交換又は継ぎ足しを検知した際に、フラッシングの調整を開始するようにしてもよい。
【0097】
さらに、例えば、上述した実施形態のようにフラッシング調整方法によって複数のテストパターンを印刷した後、提示部211Aがフラッシングの条件1〜3の値の変更量及び変更する範囲を選択する選択画面を表示装置217に表示し、選択画面からユーザーが選択した結果に基づいて、条件1〜3の変更量及び変更する範囲を変化させるようにしてもよい。ここで、選択画面の一例を
図29に示す。
【0098】
図29に示すように、操作パネル216に選択画面として、「改善なし」と「改善あり」とを一方が選択可能な状態で表示させる。「改善なし」は、安定して印刷されたテストパターン、すなわち、基準となるテストパターンとフラッシング後のテストパターンとの印刷位置が一致するものが全くないか、少ない場合に選択させる。「改善なし」が操作パネル216によって選択されると、条件1〜3の変更量及び変更する範囲の何れか一方又は両方を大きくして、複数のテストパターンを再度印刷させる。すなわち、「改善なし」が選択された場合には、安定したテストパターンが印刷されるように条件1〜3が最初のテストパターンよりも基準値からより離れた値となるように修正する。これにより、安定したテストパターンが印刷されるようにして、安定したテストパターンを印刷した際の値に設定することができる。
【0099】
また、「改善あり」が選択された場合には、フラッシング調整モードを終了してもよいが、さらに安定した印刷を実現するために、最初のテストパターンを印刷する際の条件1〜3の変更量及び変更する範囲の何れか一方又は両方を小さくして、複数のテストパターンを再度印刷する。これにより、安定した印刷の値をより詳細に設定することができる。
【0100】
また、フラッシング調整方法によって条件1〜3を設定した後、さらにインクを変更することでフラッシングの調整を実施する場合には、
図30に示すように、提示部211Aは操作パネル216に標準インクの条件1〜3の値を基準値として変更した条件1〜3のテストパターンを複数印刷するか、現在の設定を基準値として変更した条件1〜3のテストパターンを複数印刷するか選択可能な提示を行って、ユーザーが選択できるようにしてもよい。ちなみに、交換前と交換後でインクの成分が似ている場合には、現在の設定を基準値として変更する方が短時間で安定したテストパターンを特定することが可能となる。
【0101】
また、異なるインク毎に、当該インクの物性に適したフラッシングの条件1〜3を実験等によって予め調べることが可能な場合には、インクの種類とこれに対応する条件1〜3の基準値に対する補正値とを
図31に示すような補正情報テーブルとして予め記憶させておく。そして、提示部211Aによって
図32に示すようなインクの選択画面を操作パネル216に提示させてユーザーに選択させることにより、条件1及び2の基準値に対する補正値を補正情報テーブルに基づいて設定してもよい。ちなみに、
図31に示す補正情報テーブルは、条件1及び2に関するものであるが、条件3についても同様である。このように補正情報テーブルに基づいて補正したフラッシングの条件1〜3を基準値とし、基準値に対して条件1〜3を変更したフラッシングを用いて複数のテストパターンを印刷すればよい。もちろん、補正情報テーブルを用いて、テストパターンを印刷することなく、インクに最適な条件1〜3を決定してもよい。また、インクを特定することによって、テストパターンの条件1〜3の変更量や変更する範囲を補正してもよい。例えば、A社製インクA1に対する条件1の回数の変更量が200回とすると、B社製インクB1に対する条件1の回数の変更量を50回とする。このようにインクによって補正情報テーブルを用いて条件1〜3を変更する変更量を補正することで、より細かな条件1〜3の設定を行うことができる。したがって、増粘したインクを確実に排出しつつ、よりインクの消費量が少ないフラッシングの条件を設定することができる。同様に、補正情報テーブルによって、条件1〜3の変更する範囲を補正するようにしてもよい。なお、条件2及び3についても同様に補正情報テーブルに基づいて変更する量及び変更する範囲を補正するようにしてもよい。
【0102】
さらに、フラッシングの条件1〜3の過去の設定値を記憶しておき、所望のタイミングで設定値を呼び戻せるようにしてもよい。これにより誤った設定をした際などに、任意の設定値に戻すことができる。
【0103】
また、上述した各実施形態では、表示装置217に複数のテストパターンから特定のテストパターンを選択可能な選択画面を表示させるようにしたが、特にこれに限定されず、複数のテストパターンをスキャナーで読み取り、画像処理によって特定のテストパターンを選択するようにしてもよい。
【0104】
さらに、上述した実施形態1では、キャリッジ3が記録シートSに対して第1の方向Xに相対移動するものを例示したが、特にこれに限定されず、記録ヘッド1が装置本体4に固定されて、記録シートSを第2の方向Yに移動させるだけで印刷を行う、所謂ライン式記録装置にも本発明を適用することができる。
【0105】
また、上述した各実施形態では、プリンターコントローラー210が、フラッシングを調整する機能を実現する構成を例示したが、これに限定されない。例えば、ホストコンピューター等の外部装置230において、フラッシングを調整する機能を実現する制御プログラムが格納された記録媒体からこの制御プログラムを読み出して実行させるようにしてもよい。すなわち、外部装置230のプリンタードライバー等でフラッシングを調整する構成とすることができる。この場合、外部装置230がフラッシングを調整する機能を実現するフラッシング制御部となる。また、1つの外部装置230に接続された複数の同一機種のインクジェット式記録装置Iにおいて同一のインクを用いる場合には、外部装置230においてフラッシングの調整を行うことで、各々のインクジェット式記録装置Iでフラッシングの調整を行う必要がなく、複数のインクジェット式記録装置Iに対してフラッシングの調整を同時に行うことができ、作業性を向上することができる。
【0106】
また、上述した実施形態1では、圧力発生室12に圧力変化を生じさせる駆動素子として、薄膜型の圧電アクチュエーター300を用いて説明したが、特にこれに限定されず、例えば、グリーンシートを貼付する等の方法により形成される厚膜型の圧電アクチュエーターや、圧電材料と電極形成材料とを交互に積層させて軸方向に伸縮させる縦振動型の圧電アクチュエーターなどを使用することができる。また、駆動素子として、圧力発生室内に発熱素子を配置して、発熱素子の発熱で発生するバブルによってノズルから液滴を吐出するものや、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズルから液滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターなどを使用することができる。
【0107】
また、上述した例では、インクジェット式記録装置Iは、液体貯留手段であるインクカートリッジ2がキャリッジ3に搭載された構成であるが、特にこれに限定されず、例えば、インクタンク等の液体貯留手段を装置本体4に固定して、液体貯留手段と記録ヘッド1とをチューブ等の供給管を介して接続してもよい。また、液体貯留手段がインクジェット式記録装置に搭載されていなくてもよい。
【0108】
さらに、本発明は、広く液体噴射ヘッドを具備する液体噴射装置全般を対象としたものであり、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種のインクジェット式記録ヘッド等の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等を用いた液体噴射装置にも用いることが可能である。